説明

保水性ブロックおよび保水性構造体

【課題】表面を湿潤させるために必要な給水量を少なくするとともに、保水性能を確保しつつ強度を大きくすることができる保水性ブロックおよび保水性構造体を提供することを課題とする。
【解決手段】保水性ブロック20であって、基層21と、基層21の表側に積層された表層22とを備え、表層22は保水性を有し、基層21は表層22よりも曲げ強度および圧縮強度が大きくなっている。さらに、保水性ブロック20を用いた保水性舗装体1(保水性構造体)は、支持層10と、支持層10の表面に敷設された複数の保水性ブロック20とを備え、隣り合う保水性ブロック20の間に目地部25が形成されており、目地部25に給水する給水手段3a,3bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の舗装や建物の外壁に用いられる保水性ブロックおよび保水性構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部の気温が周辺部に比較して高くなる所謂「ヒートアイランド現象」が問題になっている。その原因の一つとして、アスファルト舗装や建物の外壁の蓄熱作用が挙げられている。そこで、舗装や外壁の蓄熱(温度上昇)を抑制するために、舗装や外壁の表面を湿潤にして、水分蒸発に伴う気化熱によって、舗装や外壁の表面温度を低下させる保水性構造体の開発が行われている。
【0003】
保水性を有する舗装ブロックを用いた保水性構造体としては、複数の舗装ブロックを支持層の表面に敷設し、隣り合う舗装ブロックの間に形成された目地部に給水手段が配置されているものがある(例えば、特許文献1参照)。この構成では、給水手段から目地部を通じて舗装ブロックに水を供給することで、舗装ブロック全体を湿潤させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−274603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来の保水性構造体のように、舗装ブロック全体を湿潤させるためには、大量に水が必要となり、それに伴って大量に余剰水が発生するという問題がある。また、舗装ブロックの保水量を増やすために、舗装ブロック内の連続空隙を大きくすると、舗装ブロックの曲げ強度や圧縮強度が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、前記した問題を解決し、表面を湿潤させるために必要な給水量を少なくするとともに、表面の保水性能を確保しつつ強度を大きくすることができる保水性ブロックおよび保水性構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、保水性ブロックであって、基層と、前記基層の表側に積層された表層と、を備え、前記表層は保水性を有し、前記基層は前記表層よりも曲げ強度および圧縮強度が大きいことを特徴としている。
また、前記保水性ブロックを用いた保水性構造体としては、支持層と、前記支持層の表面に敷設された複数の前記保水性ブロックと、を備え、隣り合う前記保水性ブロックの間に目地部が形成され、前記目地部に水を供給する給水手段を設けることで、目地部を通じて各保水性ブロックに水を供給するように構成されているものがある。
【0008】
前記した保水性ブロックおよび保水性構造体では、保水性ブロックの表面を湿潤させるときに、基層を湿潤させる必要がないため、ブロック全体を湿潤させる構成と比較して給水量を少なくすることができ、余剰水の発生を少なくすることができる。
また、表層によって保水性ブロックの保水性能を確保しつつ、基層によって保水性ブロックの強度を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の保水性ブロックおよび保水性構造体によれば、表面を湿潤させるために必要な給水量を少なくするとともに、保水性能を確保しつつ強度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の保水性舗装体を示した平面図である。
【図2】本実施形態の保水性舗装体を示した図1のA−A断面図である。
【図3】他の実施形態の保水性舗装体を示した図で、支持層に給水管を埋設した構成の側断面図である。
【図4】他の実施形態の保水性舗装体を示した図で、支持層がコンクリートである場合の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の保水性ブロックおよび保水性構造体は、道路の舗装や建物の外壁を構成するものであり、本実施形態では、道路を構成する保水性舗装体に適用した場合を例として説明する。
【0012】
本実施形態の保水性舗装体1は、図1に示すように、歩道や車道となる舗装体層2と、舗装体層2の側縁部に沿って延設された縁石3と、を備えている。
なお、保水性舗装体1の適用対象は、歩道や車道のみならず、例えば、遊歩道、広場、駐車場などであってもよい。
【0013】
舗装体層2は、図2に示すように、舗装表面2aから順に、保水性ブロック20、支持層10、遮水層30、路盤40を備えている。
【0014】
支持層10は、図2に示すように、保水性ブロック20を支持する層であり、後記する給水路3aから供給された水が全体に浸透するように、透水性素材によって構成されている。本実施形態では、透水性素材として所定粒径の砂(細骨材)を使用している。
路盤40は、支持層10からの荷重を分散させて路床(図示せず)に伝える役割を果たす層である。
支持層10と路盤40との間には、遮水層30が設けられている。遮水層30は、支持層10から路盤40に水が流出するのを防ぐための層であり、例えば、遮水シートで構成されている。
【0015】
保水性ブロック20は、図2に示すように、自動車や歩行者などの踏み圧を受ける部材であり、支持層10の表面(上面)に敷設されている。本実施形態の保水性ブロック20は、長方体形状を呈する平板ブロックによって構成されている(図1参照)。また、保水性ブロック20は、基層21と表層22が一体化された構造となっている。
【0016】
基層21は、支持層10側に配置された層であり、例えば、砂とセメントを混合させたモルタルによって構成されている。基層21は、必要な強度に応じて、公知の舗装材の中から適宜選択して用いることができ、例えば、砂とセメントの他に発泡スチロール骨材や発泡ウレタンなどのような発泡樹脂系骨材を混合してもよい。
【0017】
表層22は、基層21の表側に積層された層である。表層22は、複数の骨材22aと、骨材22a同士の間の連続空隙に充填された保水性グラウト材22bと、を含んで構成されている。
骨材22aは、所望の強度を発揮できるように、材質、粒径、粗粒率、開粒度などが選択されている。骨材22aは、開粒度アスファルト混合物の他に、例えば、天然石、レンガ、高炉スラグなどの各種廃材によって構成される。
保水性グラウト材22bは、保水性を有するグラウト材であり、例えば、セメントと水とからなる通常のグラウト材に、保水性を有する鉱物や樹脂を含有して構成されている。
なお、表層22は、必要な保水性能や強度に応じて、公知の保水性舗装材の中から適宜選択して用いることができる。
【0018】
保水性ブロック20は、基層21を形成する材料を振動成形装置の型枠内に投入し、型枠全体に均等に振動をかけて仮成形した後に、その上に表層22を形成する材料を投入して、加圧または型枠の自重で押さえつつ振動をかけて成形することで、基層21と表層22とを一体化している。
【0019】
本実施形態の保水性ブロック20では、基層21の厚さ(高さ)が表層22の厚さよりも大きくなっている。例えば、表層22が0.5〜1.0cm程度の厚さである場合には、基層21は5.0cm程度に設定するとよい。
また、表層22においては、保水性を0.15g/cm3以上、吸水性は30分後の吸い上げ高さが70%以上となるように設定することが望ましい。
さらに、基層21は、表層22よりも曲げ強度および圧縮強度が大きくなっている。表層22においては、曲げ強度を3.0MPa以上、圧縮強度を17.0MPa以上とし、基層21においては、曲げ強度を5.0MPa以上、圧縮強度を32.0MPa以上に設定することが望ましい。
【0020】
図1に示すように、支持層10の表面には、複数の保水性ブロック20が道路の延長方向に沿って平行に並べられているとともに、道路の幅方向には互い違い(千鳥状)に並べられている。
隣り合う保水性ブロック20の間には、目地部25が形成されている。また、目地部25内には、保水性ブロック20が動かないように導水材26が充填されている。導水材26は、吸水性を有しており、例えば、硅砂やグラウト材によって構成されている。
【0021】
縁石3は、図1に示すように、舗装体層2の側縁部に沿って延設されている。縁石3は、図2に示すように、支持層10に支持されており、例えば、コンクリートによって構成されている。
縁石3の下部には、道路の延長方向に沿って給水路3aが延設されている。給水路3aには、縁石3の舗装体層2側の側面に開口した複数の給水口3bが形成されている。各給水口3bは、遮水層30よりも高い位置で支持層10に接しており、道路の延長方向に並べられている(図1参照)。本実施形態の給水路3aおよび給水口3bは、特許請求の範囲における「給水手段」に相当するものである。
【0022】
次に、本実施形態の保水性ブロック20および保水性舗装体1の作用について説明する。
図1に示す保水性舗装体1では、図示しない給水装置から給水路3aに水が供給されると、図2に示すように、給水口3bを通じて支持層10に水が供給される。これにより、支持層10全体に水が浸透する。
【0023】
さらに、目地部25内の導水材26が支持層10の表面から吸水することで、目地部25を通じて各保水性ブロック20の表層22に水が供給される。
このようにして、表層22の保水性グラウト材22bに保水され、舗装表面2aが湿潤になる。そして、舗装表面2aの水分蒸発に伴う気化熱によって、舗装表面2aの温度が低下する。
なお、舗装表面2aに散水することで表層22に水を供給してもよい。また、降雨による雨水も表層22に供給されることになる。
【0024】
以上のような保水性ブロック20および保水性舗装体1では、図2に示すように、舗装表面2aを湿潤させるときに、基層21を湿潤させる必要がないため、保水性ブロック20全体を湿潤させる構成と比較して、給水量を少なくすることができ、余剰水の発生を少なくすることができる。
具体的には、表層22の厚さが0.5cmで、基層21の厚さが5.5cmである場合には、保水性ブロック20全体が表層22と同じ保水性能を有する構成と比較して、約10分の1の保水量となるため、舗装表面2aを湿潤させるために使用する水を大幅に節約することができる。
【0025】
また、表層22によって舗装表面2aの保水性能を確保しつつ、基層21によって保水性ブロック20の強度を大きくすることができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、本実施形態では、図2に示すように、縁石3内に給水路3aが形成されているが、図3に示す保水性舗装体1Aのように、支持層10内に給水管3cを埋設し、給水管3cの穴部3dから支持層10に水を供給してもよい。この構成では、複数の給水管3cを道路に均等間隔に並べることで、支持層10全体に水を均等に供給することができる。
【0027】
また、図4に示す保水性舗装体1Bのように、支持層10をコンクリートによって構成してもよい。この構成では、支持層10に水が浸透し難いため、支持層10と路盤40との間に遮水層を設けなくてもよくなり、施工コストを低減することができる。なお、保水性舗装体1Bでは、縁石3に形成された給水口3bが、支持層10よりも高い位置で目地部25に通じており、支持層10を湿潤させる必要がないため、目地部25への給水効率を高めることができる。
【0028】
また、本実施形態では、図1に示すように、本発明の保水性構造体によって道路を構成しているが、本発明の保水性構造体によって建物の外壁を構成し、外壁表面の温度を低下させることもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 保水性舗装体(保水性構造体)
2 舗装体層
2a 舗装表面
3 縁石
3a 給水路(給水手段)
3b 給水口(給水手段)
10 支持層
20 保水性ブロック
21 基層
22 表層
22a 骨材
22b 保水性グラウト材
25 目地部
26 導水材
30 遮水層
40 路盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層と、前記基層の表側に積層された表層と、を備え、
前記表層は保水性を有し、前記基層は前記表層よりも曲げ強度および圧縮強度が大きいことを特徴とする保水性ブロック。
【請求項2】
支持層と、前記支持層の表面に敷設された複数の保水性ブロックと、を備え、
隣り合う前記保水性ブロックの間に目地部が形成され、前記目地部に水を供給する給水手段が設けられており、
前記保水性ブロックは、基層と、前記基層の表側に積層された表層と、を備え、
前記表層は保水性を有し、前記基層は前記表層よりも曲げ強度および圧縮強度が大きいことを特徴とする保水性構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−102530(P2012−102530A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251799(P2010−251799)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】