説明

保護キャップ付き光コネクタ、及び保護キャップ

【課題】相手側の光コネクタが備えているフェルールを挿着するための挿着部が、ホコリ等の異物から保護される保護キャップ付き光コネクタの提供。
【解決手段】本発明の保護キャップ付き光コネクタ1は、挿着部34を含み光信号を電気信号等に変換する光モジュール13と、挿込口17aを含み挿着部34の先端が挿込口17aに向かいかつ挿込口17aよりも奥側に配されるように挿着部17aの周りを囲む筒状の壁部40を有し、光モジュール13を収容するハウジング12とを備える光コネクタ10と、先端面に窪み部6を含む軸部5と、軸部5の後端に設けられ挿込口17aよりも大きな蓋状頭部3とを有し、弾性材料からなる保護キャップ2を備える。軸部5が挿込口17aから壁部40の内側に挿し込まれて保護キャップ2が光コネクタ10に取り付けられると、蓋状頭部3が挿込口17aを塞ぐと共に窪み部17aが挿着部34と嵌合して挿着部34の先端を塞ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護キャップ付き光コネクタ、及び保護キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
光信号と電気信号とを相互に変換する光電変換素子が搭載されている光コネクタが知られている。この種の光コネクタは、例えば特許文献1に示されるように、筒状の挿着部を備えており、この挿着部において相手側の光コネクタが備えている光ファイバの先端と光学的に接続している。相手側の光コネクタが備えている光ファイバの先端には、円筒状のフェルールが取り付けられており、このフェルールが、前記挿着部内に挿し込まれて挿着される。なお、前記光コネクタは、一般的に、メス型光コネクタとして知られている。
【0003】
上述したメス型光コネクタは、その挿着部が、特許文献1等に示されるように、ハウジングで取り囲まれている。またハウジングの前方は開口しており、その開口した部分が相手側の光コネクタが挿し込まれる挿込口となっている。前記挿着部は、その先端が、前記挿込口に向かうようにハウジング内で配されている。
【0004】
なお、前記光コネクタは、特許文献1等に示されるように、例えば、電気回路が形成されている基板上に直接実装された状態で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−330757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記基板等に取り付けて使用される前の光コネクタは、その挿込口が開放した状態で、保管、搬送等が行われている。挿込口が開放したままの状態であると、その挿込口からハウジングの内部にホコリ等の異物が入り込むことがある。ホコリ等の異物が、例えば、前記挿着部の内部に入り込んでしまうと、その異物が光(光信号)の通過を妨げてしまい、問題となっている。
【0007】
本発明の目的は、相手側の光コネクタが備えているフェルールを挿着するための挿着部が、ホコリ等の異物から保護される保護キャップ付き光コネクタ、及びその保護キャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る保護キャップ付き光コネクタは、先端に相手側光コネクタが備えるフェルールを挿着するための筒状の挿着部を含み、光信号を電気信号に又は電気信号を光信号に変換する光モジュールと、先端に挿込口を含み、前記挿着部の先端が前記挿込口に向かいかつ前記挿込口よりも奥側に配されるように前記挿着部の周りを囲む筒状の壁部を有し、前記光モジュールを収容するハウジングとを備える光コネクタと、先端面に窪み部を含む軸部と、この軸部の後端に設けられ前記挿込口よりも大きな蓋状頭部とを有し、弾性材料からなる保護キャップと、を備え、前記軸部が前記挿込口から前記壁部の内側に挿し込まれて前記保護キャップが前記光コネクタに取り付けられると、前記蓋状頭部が前記挿込口を塞ぐと共に、前記窪み部が前記挿着部と嵌合して前記挿着部の先端を塞ぐことを特徴とする。前記保護キャップ付き光コネクタは、前記軸部が前記挿込口から前記壁部の内側に挿し込まれて前記保護キャップが光コネクタに取り付けられると、前記蓋状頭部が前記挿込口を塞ぐと共に、前記窪み部が前記挿着部と嵌合して前記挿着部の先端を塞ぐため、ハウジングの前記壁部の内側だけでなく、挿着部内にホコリ等の異物の進入を抑制できる。
【0009】
前記保護キャップ付き光コネクタにおいて、前記窪み部の大きさは、前記保護キャップが前記光コネクタに取り付けられた際に、前記窪み部の内面が前記挿着部と当接しないように設定されていることが好ましい。前記保護キャップ付き光コネクタは、このように窪み部の大きさが設定されていると、保護キャップが光コネクタに取り付けられる際、又は取り付けられた後に、保護キャップがスリーブ部と接触(当接)して、予め設定されているスリーブ部の軸(光軸)が位置ずれすることが抑制される。
【0010】
前記保護キャップ付き光コネクタにおいて、前記先側壁部が、その内周面上に係止突起部を含み、前記軸部が、その表面上に隆起部を含み、前記保護キャプが前記光コネクタに取り付けられる際に、前記係止突起部が前記隆起部を乗り越え、その後、前記保護キャップが前記光コネクタに取り付けられると、前記係止突起部の後方で前記隆起部が引っ掛かるように構成されてもよい。前記保護キャップ付き光コネクタは、前記突起部の後方で前記隆起部が引っ掛かるため、光コネクタに取り付けられた保護キャップが不必要に外れることが抑制される。
【0011】
前記保護キャップ付き光コネクタにおいて、前記保護キャップの表面が、防塵処理されてもよい。前記保護キャップ付き光コネクタは、このような防塵処理が施されているため、保護キャップに対するホコリ等の異物の付着が抑制されると共に、ホコリ等の異物と共に、光コネクタに対して、保護キャップが取り付けられることも抑制される。
【0012】
前記保護キャップ付き光コネクタにおいて、前記壁部が、先側に配される筒状の先側壁部と、その後側に配される筒状の後側壁部とに分けられ、前記ハウジングが、前記先側壁部と、この先側壁部の後側に接続され上方が開口しかつ内側に前記光モジュールを収容する箱部とを有する本体部と、先端が前記先側壁部の後端と隣接しつつ前記箱部の上方を塞ぐ蓋部とを備え、前記先側壁部の後端と隣接する前記蓋部の部分と、この部分と対向する前記箱部の部分とが前記後側壁部となるように構成されてもよい。
【0013】
また、本発明に係る保護キャップは、先端に相手側光コネクタが備えるフェルールを挿着するための筒状の挿着部を含み、光信号を電気信号に又は電気信号を光信号に変換する光モジュールと、先端に挿込口を含み、前記挿着部の先端が前記挿込口に向かいかつ前記挿込口よりも奥側に配されるように前記挿着部の周りを囲む筒状の壁部を有し、前記光モジュールを収容するハウジングとを備える光コネクタに取り付けられる保護キャップであって、先端面に窪み部を含む軸部と、この軸部の後端に設けられ前記挿込口よりも大きな蓋状頭部とを有し、かつ弾性材料からなり、前記軸部が前記挿込口から前記壁部の内側に挿し込まれて前記保護キャップが前記光コネクタに取り付けられると、前記蓋状頭部が前記挿込口を塞ぐと共に、前記窪み部が前記挿着部と嵌合して前記挿着部の先端を塞ぐことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれは、相手側の光コネクタが備えているフェルールを挿着するための挿着部が、ホコリ等の異物から保護される保護キャップ付き光コネクタ、及びその保護キャップ
を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る保護キャップ付き光コネクタの断面図
【図2】光コネクタの斜視図
【図3】光コネクタの分解斜視図
【図4】外部基板に取り付けられた光コネクタの断面図
【図5】保護キャップの平面図
【図6】保護キャップの側面図
【図7】保護キャップの背面図
【図8】保護キャップの正面図
【図9】図8に示されるA−A線に沿って仮想的に切断された保護キャップの断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
〔保護キャップ付き光コネクタ〕
本発明の一実施形態を図1ないし図9を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る保護キャップ付き光コネクタ1の断面図である。図1に示されるように、保護キャップ付き光コネクタ1は、光コネクタ10と、保護キャップ2とからなる。光コネクタ10は、前方に相手側の光コネクタ(不図示)が挿し込まれる挿込口17aを備えており、後述する外部基板に取り付けられて使用される前は、この挿込口17aに相手側の光コネクタではなく、保護キャップ2が挿し込まれている。ここで、先ず光コネクタ10について説明する。
【0017】
(光コネクタ)
図2は、光コネクタ10の斜視図であり、図3は、光コネクタ10の分解斜視図であり、図4は、外部基板11に取り付けられた光コネクタ10の断面図である。光コネクタ10は、その使用時に、プリント配線技術により導電路(不図示)が形成された外部基板11に取り付けられる(図4参照)。この光コネクタ10は、図3に示されるように、主として、合成樹脂製のハウジング12と、このハウジング12の内部に収容される光モジュール13と、ハウジング12に外嵌される金属製の外部シールド20とを備える。
【0018】
<ハウジング>
ハウジング12は、上方に開口部14を有しており全体として箱状のハウジング本体部15と、このハウジング本体部15に組み付けられて開口部14を塞ぐ蓋部16とを備えている。ハウジング本体部15は、その前方に角筒状(筒状)のフード部(先側壁部)17を備えており、このフード部17の先端には相手側の光コネクタ等が挿し込まれる挿込口17aが設けられている。相手側の光コネクタは、この挿込口17aから挿し込まれて、光コネクタ10のハウジング本体部15に取り付けられる。なお、ハウジング本体部15からフード部17を除いた残りの部分が、上方に開口部14を有する箱部15bとなっている。
【0019】
また、フード部17の上側の内壁には、下側に向けて突き出した2つの案内凸部17b,17bが設けられている。これらの案内凸部17b,17bは、ハウジング12の前後方向に沿って真っ直ぐに配置されており、それらは互いに所定の間隔を保ちつつ並んでいる。そして、案内凸部17b,17bで挟まれた部分のフード部17の内壁には、下側に突出した突起部(係止突起部)17cが設けられている。この突起部17cは、案内凸部17b,17bよりも高さ(下側に突出した長さ)が低く(短く)なるように設定されている。また、突起部17cは、前方から後方に向かって徐々に高さ(長さ)が高く(長く)なり、かつ途中から高さ(長さ)が一定となるように設定されている。
【0020】
図1及び図4に示されるように、ハウジング12は、その前方に筒状の壁部40を備えている。この壁部40は、先側に配される筒状の先側壁部40aと、その後側に配される後側壁部40bとに分けられる。先側壁部40aは、ハウジング本体部15に設けられている角筒状(筒状)のフード部17からなる。これに対して、後側壁部40bは、蓋部16の先端部16aと、この先端部16aと対向する箱部15bの底部15cとからなる。蓋部16の先端部16aは、先側壁部40aの後端と隣接するように配置されており、これらの間には隙間が生じ得る状態になっている。
【0021】
<外部シールド>
外部シールド20は、フード部17を除いた部分の表面を覆うように、ハウジング12に取り付けられる。外部シールド20は、金属板材を所定形状にプレス加工したものからなり、図3等に示されるように、その前面と下面とがそれぞれ開口している。この外部シールド20をハウジング12に外嵌することによって、ハウジング12における前面と下面とを除いた残りの面が電磁的にシールドされる。
【0022】
なお、図3等に示されるように、外部シールド20の下端縁には、下方に向かって突出するように設けられた爪部21があり、この爪部21がハウジング12の下面側に折り返されることによって、外部シールド20がハウジング12に組み付けられるように構成されている。また、外部シールド20の下端縁には、下方に向かって突出するように設けられた複数の接続脚部22が形成されている。この接続脚部22は、外部基板11に貫通されて、はんだ付け等の公知の手法によって外部基板11の導電路に接続される。
【0023】
<光モジュール>
光モジュール13は、光信号を電気信号に、又は電気信号を光信号に変換する光電変換素子を備えるものからなり、ハウジング12の内部に収納される。このような光モジュール13は、主として、光電変換部30と、内部基板23と、接続部26と、端子金具24とを備える。
【0024】
光電変換部30には2種類あり、一方が光信号を電気信号に変換するための光電変換部30aであり、他方が電気信号を光信号に変換するための光電変換部30bである。各々の光電変換部30は、主として、挿着ユニット32と、光電変換回路基板36とを備える。なお、光電変換回路基板36としては、光電変換部30a用の受光回路基板36aと、光電変換部30b用の発光回路基板36bとがある。ここで先ず、一方の光電変換部30aを例に挙げて、光電変換部30について説明する。
【0025】
光電変換部30aは、光電変換素子として受光素子(フォトダイオード)を備えており、この受光素子が受光回路基板36aに実装されている。この受光回路基板36aには、更に前記受光素子に電気的に接続されるトランスインピーダンスアンプが実装されている。そして、その実装面が覆われるように、挿着ユニット32aが受光回路基板36aに取り付けられている。
【0026】
挿着ユニット32aは、主として、受光回路基板36aに取り付けられる箱状の基部33aと、この基部33aから前方に突出するように形成されると共に略円筒状をなすスリーブ部(挿着部)34aとからなる。なお、図4に示されるように、相手側の光コネクタには、光ファイバ18が取り付けられており、この光ファイバ18の端部には、フェルール19が外嵌されている。相手側の光コネクタが備えるフェルール19は、スリーブ部34aの内側に設けられている挿着孔31aに挿入される。そして、この挿着孔31aにフェルール19が挿入された状態で、フェルール19がスリーブ部34bに取り付けられる。
【0027】
基部33aは、スリーブ部34aの径方向外方に突出して形成されており、外観は概ね直方体状をなしている。挿着ユニット32aは、光透過性を有する合成樹脂(例えば、PEI、PC、PMMA)の成型物からなる。
【0028】
基部33aの内側には、レンズ(不図示)が形成されている。このレンズは、スリーブ部(挿着部)34aの軸線上であって、かつ受光回路基板36a上に実装されている受光素子と対向するように、挿着ユニット32a内に設けられている。このレンズは、挿着ユニット32aの一部分として一体的に形成されており、スリーブ部(挿着部)34aに挿着された状態の光ファイバ18から発せられた光出力を受光素子に集光させるように設定されている。
【0029】
次いで、他方の光電変換部30bについて説明する。光電変換部30bは、光電変換素子として発光素子(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)を備えており、この発光素子が発光回路基板36bに実装されている。この発光回路基板36bには、更に前記発光素子に電気的に接続されるドライバが実装されている。そして、その実装面が覆われるように、挿着ユニット32bが発光回路基板36bに取り付けられている。
【0030】
挿着ユニット32bは、主として、発光回路基板36bに取り付けられる箱状の基部33bと、この基部33bから前方に突出するように形成されるとともに略円筒状をなすスリーブ部(挿着部)34bとからなる。このスリーブ部34bの内側には、相手側の光コネクタが備えるフェルール19が挿入される挿着孔31bがある。基部33bは、スリーブ部34bの径方向外方に突出して形成されており、外観は概ね直方体状をなしている。挿着ユニット32bは、上述した挿着ユニット32aと同様、光透過性を有する合成樹脂(例えば、PEI、PC、PMMA)の成型物からなる。
【0031】
基部33bの内側には、レンズ(不図示)が形成されている。このレンズは、スリーブ部(挿着部)34bの軸線上であって、かつ発光回路基板36b上に実装されている発光素子と対向するように、挿着ユニット32b内に設けられている。このレンズは、挿着ユニット32bの一部分として一体的に形成されており、発光素子から発せられた光出力を、スリーブ部(挿着部)34bに挿着された状態の光ファイバ18の端面に集光させるように設定されている。
【0032】
上述した2つの光電変換部30(30a,30b)は、それぞれ接続部26を介して1つの内部基板23に接続されている。この内部基板23は、絶縁基板の表面にプリント配線技術により導電路が形成された回路基板と、フレキシブル基板とが積層されたものからなる。そしてこのフレキシブル基板には、その前端から二股に分かれた部分があり、この二股に分かれた部分が、前記接続部26として、それぞれ光電変換回路基板36(受光回路基板36a,発光回路基板36b)に接続されている。つまり接続部26は、フレキシブル基板の一部からなる。
【0033】
接続部26は、上述したようにフレキシブル基板からなるため可撓性を備えている。したがって、図1及び図4等に示されるように、光モジュール13は、内部基板23と光電変換回路基板36とが互いの板面が90°で交わるように、ハウジング12内に収容できる。なお、内部基板23は、その板面が、ハウジング本体部15の底面に対して平行になるように配置されており、光電変換回路基板36は、その板面が、ハウジング本体部15の底面に対して垂直になるように配置されている。
【0034】
図1及び図4等に示されるように、光モジュール13が備えているスリーブ部(挿着部)34は、その先端が挿込口17aに向かうように設定されている。つまり、スリーブ部(挿着部)34の軸線上に、挿込口17aが配置されるように光モジュール13がハウジング12内に収容される。スリーブ部(挿着部)34を含む挿着ユニット32は、蓋部16の裏面に突設されているホルダ部16dと、ハウジング本体部15の底面に突設されているホルダ部15dとの間で挟まれ、その挟まれた状態でハウジング12内に固定されている。
【0035】
スリーブ部(挿着部)34は、その先端が挿込口17aよりも奥側に配されるように、筒状の壁部40によって囲まれている。スリーブ部34と、壁部40との間には、スリーブ部34の周りを取り囲むような隙間がある。
【0036】
内部基板23の後端寄りの位置には、棒状をなす複数の端子金具24が、その一方の端部を内部基板23に貫通させた状態で取り付けられており、その状態で、内部基板23に形成された導電路と接続されている。これに対して、端子金具24の他方の端部は、ハウジング本体部15(箱部15b)の底に形成さている端子挿通穴25内に圧入されており、ハウジング本体部15(箱部15c)の底から下方に向かって突出している。更に、端子金具24の他方の端部は、外部基板11を貫通した状態で、外部基板11に形成されている導電路に、はんだ付け等の公知の手法により接続されている。
【0037】
(保護キャップ)
次いで、保護キャップ2について説明する。図5は、保護キャップの平面図であり、図6は、保護キャップの側面図であり、図7は、保護キャップの背面図であり、図8は、保護キャップの正面図であり、図9は、図8に示されるA−A線に沿って仮想的に切断された保護キャップの断面図である。
【0038】
保護キャップ2は、シリコーンゴム等の弾性材料を所定形状に加工したものからなり、軸部5と、その後端に接続されている蓋状頭部3とからなる。軸部5は、光コネクタ10が備えている筒状の壁部40の内側に挿し込まれる部分であり、その外観は概ね角柱状となっている。また、軸方向と垂直な方向から見た軸部5の形状は、図8に示されるように、概ね矩形状となっている。この軸部5の大きさは、壁部40の内側を、隙間なく充填できる程度に設定されている。軸部5の先端面には、2つの窪み部6,6が設けられている。この窪み部6は、軸部5の先端面から円柱状に掘り下げられたような形状であり、その大きさは、スリーブ部(挿着部)の先端を、覆うことができる程度に設定されている。
【0039】
軸部5の上面には、2本の溝部7,7が形成されている。これらの溝部7は、軸方向に沿って互いに間隔を保ちつつ並ぶように設けられている。これらの溝7,7は、光コネクタ10のフード部17に設けられている案内凸部17a,17bとそれぞれ嵌合させるために設けられている。また、これらの溝部7,7で挟まれた部分の上面9には、隆起部4が設けられている。この隆起部4は、軸部5の先端側と、その後端側とがそれぞれ傾斜しており、図9等に示されるように、側方から見た形状は、概ね台形となっている。なお、隆起部4と、蓋状頭部3との間には、光コネクタ10のフード部17に設けられている突起部17cが入り込むための隙間がある。
【0040】
図8に示されるように、溝部7,7で挟まれた部分の上面9の位置は、溝部7,7の外側にある軸部5の上面8,8よりも低く設定されている。そして、上面9に設けられている隆起部4の頂上の位置は、上面8,8の位置と同じになるように設定されている。
【0041】
蓋状頭部3は、扁平状であり、上述したように軸部5の後端に接続されている。この蓋状頭部3は、光コネクタ10の挿込口17aよりも大きく設定されており、保護キャップ2が光コネクタ10に取り付けられた際に、挿込口17を塞ぐように設定されている。図8等に示されるように、蓋状頭部3は、軸方向から見た場合、概ね矩形状を有している。そして、蓋状頭部3の中央部に軸部5が設けられている。なお、軸部5と蓋状頭部3とは連続しており、一体的に形成されている。
【0042】
保護キャップ2には、ホコリ等の異物の付着を抑制するための表面処理が施されてもよい。表面処理としては、例えば、保護キャップ2の表面に、フッ素樹脂をコーティングする防塵処理等が挙げられる。保護キャップ2の表面が、このような防塵処理が施されていると、保護キャップ2に対するホコリ等の異物の付着が抑制される。また、ホコリ等の異物と共に、光コネクタ10に対して、保護キャップ2が取り付けられることも抑制される。
【0043】
保護キャップ2は、光コネクタ10のフード部(先側壁部)17が備えている挿込口17から筒状の壁部40の内側に挿し込まれる。保護キャップ2が挿し込まれると、その軸部5の先端から壁部40の内側に入り、そして、軸部5が奥側にあるスリーブ部(挿着部)34に向かって進行する。その後、壁部40(フード部17)の先端面が、蓋状頭部3と当接することによって、筒状の壁部40内における軸部5の位置が決定される。
【0044】
このように位置決めされた保護キャップ2は、その蓋状頭部3が、フード部17の先端面に密着して挿込口17aを塞いでいる。このように、蓋状頭部3が挿込口17aを塞ぐことによって、外部から挿込口17aを通ってハウジング12内にホコリ等の異物が進入することが抑制される。更に、壁部40(フード部17)の先端面が、蓋状頭部3と当接すると、保護キャップ2の軸部5が、その先端面に備えられている窪み部6を利用して、光モジュール13が備えているスリーブ部34の挿着孔31を塞ぐ。
【0045】
図1に示されるように、光コネクタ10の壁部40内に保護キャップ2が取り付けられると、その軸部5の先端面にある窪み部5が、前記スリーブ部34と嵌合し、その窪み部5の中に、前記スリーブ部34の先端側の部分が入る。なお、本実施形態においては、2つのスリーブ部34,34が、対応する2つの窪み部6,6内にそれぞれ収容されている。このように、スリーブ部34の先端が、軸部5の先端にある窪み部5によって塞がれると、スリーブ部34内にホコリ等の異物が進入することが抑制される。
【0046】
本実施形態の場合、上述したように、ハウジング12が備えている筒状の壁部40は、2つの部分に分かれており、互いに連結していないため、先側壁部40aと蓋部16の先端部16aとの間には、隙間が生じ得る状態になっている。すると、これらの間に、ある程度の大きさ(幅)の隙間が生じた場合、この隙間からホコリ等の異物がハウジング12内に入り込むことも考えられる。しかしながら、上述したように、本実施形態では、スリーブ部34の先端は、保護キャップ2の軸部5が備えている窪み部6によって塞がれているため、たとえハウジング12の前記隙間からホコリ等の異物が入り込んだとしても、その異物はスリーブ部34の内側にある挿着孔31までは入り込まない。
【0047】
図1に示されるように、壁部40(フード部17)の先端面が、蓋状頭部3と当接した状態において、スリーブ部34の先端と、それに対向する窪み部6の底(内面の一部)とは、互いに接触しないように設定されている。つまり、窪み部6の底と、スリーブ部34の先端との間には、隙間がある。なお、スリーブ部34の外周面と、窪み部6の内周面(内面の一部)との間にも隙間がある。このように、保護キャップ2を光コネクタ10に取り付けた際に、軸部5がスリーブ部34と接触しないように、窪み部6の大きさが設定されている。このように窪み部6の大きさが設定されていると、保護キャップ2が光コネクタ10に取り付けられる際、又は取り付けられた後に、保護キャップ2がスリーブ部34と接触(当接)して、予め設定されているスリーブ部34の軸(光軸)が位置ずれすることが抑制される。
【0048】
なお、保護キャプ2が光コネクタ10に取り付けられる際、軸部5の上面に設けられている溝部7,7内に、それぞれフード部17の上側の内壁に設けられている案内凸部17b,17bが嵌められ、その案内凸部17b,17bに沿って案内されながら、軸部5が筒状の壁部40の奥側に進む。このように案内凸部17b,17bによって案内されると、スリーブ部34,34の各先端が、窪み部6以外の軸部5の部分と衝突することが回避され、窪み部6,6内に確実に収容される。
【0049】
また、上述したように、案内凸部17b,17bで挟まれた部分のフード部17の内壁には、下側に突出した突起部(係止突起部)17cが設けられている。この突起部17cは、保護キャップ2が光コネクタ10のハウジング12に取り付けられる際に、軸部5をその先端側から後端側に向かってなぞるように移動する。そして、突起部17cは、その際に、軸部5に設けられている隆起部4を乗り越えるように移動する。保護キャップ2の蓋状頭部3が、壁部40(フード部17)の先端面と当接すると、その突起部17cは、隆起部4と蓋状頭部3との間にある隙間に納まる。すると、突起部17cの後方で隆起部4が引っ掛かるため、光コネクタ10に取り付けられた保護キャップ2が不必要に外れることが抑制される。なお、上述したように、突起部17cは、前方から後方に向かって徐々に高さ(長さ)が高く(長く)なり、かつ途中から高さ(長さ)が一定となるように設定されている。そして、その後端は、軸方向に対して垂直になっている。そのため、保護キャップ2は、その隆起部4が、垂直になっている突起部17cの後端と引っ掛かるため、光コネクタ10のハウジング12(壁部40)から不要に外れることが抑制される。
【0050】
また、本実施形態においては、ハウジング12の壁部40の途中に、上述したような隙間(切れ目)があり、その部分を境界として、先側壁部40aと後側壁部40bとが互いに上下方向等に復元可能に若干移動できる。そのため、隆起部4を備えた保護キャップ2を、突起部17cを備えた光コネクタ10内に挿し込みやすく、更に取り付けやすい。また、保護キャップを引き抜くように所定値以上の力を加えれば、上述したようにハウジング12の壁部40(40a,40b)が復元可能に若干移動できるため、保護キャップ2を光コネクタ10から取り外しやすくもなっている。
【0051】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態においては、光コネクタが挿着部を2個備えていたが、他の実施形態においては、1個備えるものでもよいし、又は3個以上備えるものでもよい。
【0052】
(2)本実施形態においては、ハウジングの壁部は、先側壁部と後側壁部との2つの部分からなるものであったが、他の実施形態においては、例えば、一体的に形成されたものであってもよい。
【0053】
(3)本実施形態においては、ハウジングの挿込口、及び保護キャップの軸部が共に軸方向から見た断面が共に矩形状であったが、他の実施形態においては、例えば、正方形、円形等であってもよい。
【0054】
(4)本実施形態においては、外部基板に取り付ける前の光コネクタに対して、保護キャップが取り付けられていたが、他の実施形態においては、例えば、外部基板に取り付けられた状態であって相手側の光コネクタが挿し込まれる前の状態の光コネクタに対して、保護キャップが取り付けられてもよい。この場合、保護キャップの外縁部分が外部基板等と接触しないように、適宜、蓋状頭部の形状が設定される。
【0055】
(5)本実施形態においては、保護キャップの表面に対して防塵処理が施されていたが、他の実施形態においては、例えば、保護キャップの表面を、艶消し状に処理してもよい。このように保護キャップの表面を、艶消し状に処理しておくと、光コネクタに保護キャップを取り付ける前等に、保護キャップに付着しているホコリ等の異物を発見し易くなる。そのため、例えば、保護キャプの表面を洗浄した後に、ホコリ等の異物の洗い残しが発生することが抑制される。その結果、ホコリ等の異物が付着していない状態の保護キャップを、光コネクタに取り付けることができる。
【0056】
(6)本実施形態においては、光コネクタは外部基板に取り付けられて使用されるものであったが、他の実施形態においては、例えば、光ファイバコードの端部に取り付けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…保護キャップ付き光コネクタ
2…保護キャップ
3…蓋状頭部
4…隆起部
5…軸部
6…窪み部
7…溝部
10…光コネクタ
11…外部基板
12…ハウジング
13…光モジュール
14…開口部
15…ハウジング本体部
16…蓋部
17…フード部
17a…挿込口
18…光ファイバ
19…フェルール
20…外部シールド
30…光電変換部
31…挿着孔
32…挿着ユニット
33…基部
34…スリーブ部(挿着部)
36…光電変換回路基板
36a…受光回路基板
36b…発光回路基板
40…壁部
40a…先側壁部
40b…後側壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に相手側光コネクタが備えるフェルールを挿着するための筒状の挿着部を含み、光信号を電気信号に又は電気信号を光信号に変換する光モジュールと、先端に挿込口を含み、前記挿着部の先端が前記挿込口に向かいかつ前記挿込口よりも奥側に配されるように前記挿着部の周りを囲む筒状の壁部を有し、前記光モジュールを収容するハウジングとを備える光コネクタと、
先端面に窪み部を含む軸部と、この軸部の後端に設けられ前記挿込口よりも大きな蓋状頭部とを有し、弾性材料からなる保護キャップと、を備え、
前記軸部が前記挿込口から前記壁部の内側に挿し込まれて前記保護キャップが前記光コネクタに取り付けられると、前記蓋状頭部が前記挿込口を塞ぐと共に、前記窪み部が前記挿着部と嵌合して前記挿着部の先端を塞ぐことを特徴とする保護キャップ付き光コネクタ。
【請求項2】
前記窪み部の大きさは、前記保護キャップが前記光コネクタに取り付けられた際に、前記窪み部の内面が前記挿着部と当接しないように設定されている請求項1に記載の保護キャップ付き光コネクタ。
【請求項3】
前記先側壁部が、その内周面上に係止突起部を含み、
前記軸部が、その表面上に隆起部を含み、
前記保護キャプが前記光コネクタに取り付けられる際に、前記係止突起部が前記隆起部を乗り越え、その後、前記保護キャップが前記光コネクタに取り付けられると、前記係止突起部の後方で前記隆起部が引っ掛かることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の保護キャップ付き光コネクタ。
【請求項4】
前記保護キャップの表面が、防塵処理されている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の保護キャップ付き光コネクタ。
【請求項5】
前記壁部が、先側に配される筒状の先側壁部と、その後側に配される筒状の後側壁部とに分けられ、
前記ハウジングが、前記先側壁部と、この先側壁部の後側に接続され上方が開口しかつ内側に前記光モジュールを収容する箱部とを有する本体部と、先端が前記先側壁部の後端と隣接しつつ前記箱部の上方を塞ぐ蓋部とを備え、前記先側壁部の後端と隣接する前記蓋部の部分と、この部分と対向する前記箱部の部分とが前記後側壁部となることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の保護キャップ付き光コネクタ。
【請求項6】
先端に相手側光コネクタが備えるフェルールを挿着するための筒状の挿着部を含み、光信号を電気信号に又は電気信号を光信号に変換する光モジュールと、先端に挿込口を含み、前記挿着部の先端が前記挿込口に向かいかつ前記挿込口よりも奥側に配されるように前記挿着部の周りを囲む筒状の壁部を有し、前記光モジュールを収容するハウジングとを備える光コネクタに取り付けられる保護キャップであって、
先端面に窪み部を含む軸部と、この軸部の後端に設けられ前記挿込口よりも大きな蓋状頭部とを有し、かつ弾性材料からなり、
前記軸部が前記挿込口から前記壁部の内側に挿し込まれて前記保護キャップが前記光コネクタに取り付けられると、前記蓋状頭部が前記挿込口を塞ぐと共に、前記窪み部が前記挿着部と嵌合して前記挿着部の先端を塞ぐことを特徴とする保護キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−230319(P2012−230319A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99700(P2011−99700)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】