説明

保護テープ

【課題】はんだリフロー工程を流れる基板を保護し、且つ、はんだリフロー工程中における熱でも粘着力が上昇せず、剥がし易さを良好に保つことができる保護テープを提供する。
【解決手段】保護テープは、基板上に貼り付けられる粘着層と、金属層と、樹脂層と、を有し、粘着層上には、少なくとも前記金属層と前記樹脂層が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだリフロー工程を流れる基板を保護する保護テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抵抗やコンデンサ、ICなどの電子部品を基板に接続する際、先ず基板上の接続部にはんだを塗布し、その上に該当する電子部品を載せてはんだリフロー工程に流していた。はんだリフロー工程においては、熱によってはんだを融解させ、その後はんだが冷え固まることによって、基板上の接続部と電子部品が接続される。
【0003】
ここで、上記のはんだリフロー工程に基板を流す際、融解したはんだが飛び散る場合がある。このとき、基板上における電子部品が接続される接続部以外の箇所、特に接続部の近辺には、飛び散ったはんだが付着しがちとなり、電気的な障害の原因になったり、見栄えが悪くなったりする。そこで、はんだリフロー工程中に、飛び散ったはんだが付着することを防止するため、接続部の近辺に予め保護テープを貼り付けていた。これにより、万一、接続部の近辺にはんだが飛び散った場合でも、保護テープの表面に付着するだけで、その下面に位置する接続部の近辺に付着することを防止することができた。
【0004】
しかしながら、従来の保護テープは、ポリイミド(PI)に耐熱性の高い粘着層としてシリコン系樹脂などが積層された構成であるため、はんだリフロー工程中における熱で保護テープの温度が上昇した場合、基板に貼り付く側の粘着層の粘着力が初期状態より強くなってしまうことがあった。このような場合、後工程において、保護テープを基板から剥がしにくくなったり、保護テープを剥離した後に粘着層ののり残りが生じてしまったりするなどした。その結果、保護テープの剥離作業に時間が掛かるなど、作業性が悪化する問題があった。そのため、はんだリフロー工程を流れる基板を保護する保護テープには、熱をかけても粘着力が上昇せず、剥がし易いことが求められていた。
【0005】
さらに、上述した従来の保護テープの場合、粘着層としてのシリコン系樹脂が電子部品に悪影響を及ぼす恐れがあり、また、ポリイミドは高価であった。そのため、実際には、従来の保護テープを用いずに、はんだリフロー工程後に飛び散ったはんだを取り除くなどして対応していた。
【0006】
ここで、剥がし易さという観点から、特許文献1には、薄型でありながらリワーク性に優れた粘着テープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3902162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された粘着テープは、LCDモジュールのLCDパネルとバックライト筐体との間に貼り付けられて使用されるものであり、光源からの光に対する光反射性と遮光性とを併有する粘着テープである。そのため、はんだリフロー工程を流れる基板を保護する保護テープとは、用途や使用状態が全く異なる。従って、特許文献1に開示された粘着テープを基板に貼り付けてはんだリフロー工程に流した場合、工程中における熱で粘着テープが劣化して、剥がしにくくなったり、のり残りが生じてしまったりするなどの不具合が生じた。
【0009】
本発明は、上記の問題を鑑みてされたものであり、はんだリフロー工程を流れる基板を保護し、且つ、はんだリフロー工程中における熱でも粘着力が上昇せず、剥がし易さを良好に保つことができる保護テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の保護テープは、はんだリフロー工程を流れる基板に貼り付けられ、当該基板の少なくとも一部を保護する保護テープであって、前記基板上に貼り付けられる粘着層と、金属層と、樹脂層と、を有し、前記粘着層上には、少なくとも前記金属層と前記樹脂層が設けられている。
【0011】
上記の構成によれば、基板の少なくとも一部を保護する保護テープが有する金属層によって、はんだリフロー工程中における熱を外部に反射および放熱することができる。このように、金属層によって、基板上に貼り付く粘着層に対して熱を伝わりにくくすることができるため、粘着層の温度上昇を緩和することができる。これにより、はんだリフロー工程後に基板から剥がしにくくなったり、剥がした後にのり残りが生じてしまったりすることがなく、作業性の悪化を防ぐことができる。また、保護テープが曲げられても、保護テープが有する樹脂層の弾性によって、曲げによる金属層に対する影響を緩和することができる。従って、保護テープを基板から剥離する際の金属層の引き裂けを、樹脂層によって防止することができる。
【0012】
また、本発明の保護テープにおいて、前記樹脂層および前記金属層は、前記粘着層上において、当該樹脂層、当該金属層の順に設けられていてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、粘着層上において、樹脂層、金属層の順に設けられた場合でも、金属層によって、基板上に貼り付く粘着層に対して熱を伝わりにくくすることができ、さらに、樹脂層の弾性によって、曲げによる金属層に対する影響を緩和することができる。
【0014】
また、本発明の保護テープにおいて、前記樹脂層および前記金属層は、前記粘着層上において、当該金属層、当該樹脂層の順に設けられていてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、粘着層上において、金属層、樹脂層の順に設けられた場合でも、金属層によって、基板上に貼り付く粘着層に対して熱を伝わりにくくすることができ、さらに、樹脂層の弾性によって、曲げによる金属層に対する影響を緩和することができる。
【0016】
また、本発明の保護テープにおいて、前記金属層の厚さは、6μm〜30μmであってもよい。
【0017】
上記の構成によれば、金属層の厚さが好適になるため、熱を効果的に反射および放熱しやすくなる。また、金属層の厚さによって保護テープが硬くなりすぎて剥がしにくくなったり、また多量の材料が必要になり高コストになったりすることがない。
【0018】
また、本発明の保護テープにおいて、前記金属層はアルミニウムで形成されていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、金属層が好適な材料で形成されるため、より効果的に熱を外部に反射および放熱することができる。これにより、さらに、粘着層の温度上昇を緩和することができ、剥離作業において保護テープを剥がし易くなり、作業効率を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の保護テープにおいて、前記はんだリフロー工程中において前記基板における温度が最大で270℃となってもよい。
【0021】
上記の構成によれば、はんだリフロー工程において、基板における温度が最大で270℃となる場合でも、保護テープを適用することができる。
【0022】
また、本発明の保護テープにおいて、前記はんだリフロー工程は、赤外線を熱源としてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、赤外線を熱源とするはんだリフロー工程中における熱を金属層によって外部に反射および放熱することができる。このように、赤外線を熱源とするはんだリフロー工程にも保護テープを適用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の保護テープによると、金属層によって、基板上に貼り付く粘着層に対して熱を伝わりにくくすることができるため、粘着層の温度上昇を緩和することができる。これにより、はんだリフロー工程後に基板から剥がしにくくなったり、剥がした後にのり残りが生じてしまったりすることがなく、作業性の悪化を防ぐことができる。また、保護テープを基板から剥離する際の金属層の引き裂けを、樹脂層によって防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係る保護テープの外観および横断面を示す説明図である。
【図2】本実施形態に係る保護テープが基板に貼り付けられた状態を示す説明図である。
【図3】本実施形態に係るはんだリフロー工程を示す説明図である。
【図4】本実施形態に係る保護テープの実施例1および比較例1を用いた剥離試験結果を示す説明図である。
【図5】本実施形態に係る保護テープの実施例2〜4および比較例2を用いた剥離試験結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
(保護テープ)
図1および図2を用いて、本実施形態に係る保護テープ1の概要を説明する。本実施形態に係る保護テープ1は、はんだリフロー工程を流れる基板30に貼り付けられ、基板30の少なくとも一部を保護する保護テープであって、基板30上に貼り付けられる粘着層11と、金属層14と、樹脂層13と、を有し、粘着層11上には、少なくとも金属層14と樹脂層13が設けられている。また、図1および図2に示す保護テープ1は、樹脂層13および金属層14が、粘着層11上において、樹脂層13、金属層14の順に設けられている。なお、これに限らず、樹脂層13および金属層14は、粘着層11上において、金属層14、樹脂層13の順に設けられていてもよい。ここで、本実施形態に係るはんだリフロー工程中において基板30における温度は、最大で270℃となる。
【0028】
図1に示すように、保護テープ1は、通常のテープのように長尺状のものがロール状に巻かれて収納されており、使用時は、作業者の手などによって所望の大きさに切り取れるようになっている。また、切り取られた保護テープ1は、基板30上の保護したい箇所に、粘着層11を基板30の表面側にして貼り付けられるようになっている。
【0029】
保護テープ1は、基板30に貼り付けられる側から、粘着層11、樹脂層13、および金属層14が順次積層されて形成されている。なお、金属層14は、接着剤層12によって樹脂層13上に貼り付けられている。また、保護テープ1の最外層に位置する金属層14は、はんだリフロー工程の熱70を反射すると共に、金属層14にかかる熱70aを外部に放熱することができる。そのため、保護テープ1は、金属層14の下面に位置する粘着層11へ熱を伝わりにくくすることができる。なお、保護テープ1は、基板30に貼り付けられる側から、粘着層11、金属層14、および樹脂層13が順に積層されていた場合でも、金属層14によって、樹脂層13を透過した熱70を反射すると共に、掛かる熱70aを外部に放熱することができる。
【0030】
(保護テープの使用方法)
具体的に、図2を参照して保護テープ1の使用方法を説明する。本実施形態に係る基板30は、フレキシブルプリント基板(FPC)と呼称されるものを用いる。この基板30は、後述する図3のはんだリフロー工程において用いられる支持板20上に配置される。また、基板30上には、電子部品40などが接続される接続部35a、35bが設けられている。図2の場合、接続部35aには、はんだ45を介して電子部品40が接続されており、接続部35bには、保護テープ1が貼り付けられている。このようにして基板30に貼り付けられた保護テープ1は、同時に支持板20の表面にも貼り付けられており、保護テープ1によって基板30が支持板20に固定されるようになっている。このように、電子部品40が接続されない接続部35bに保護テープ1が貼り付けられることによって、はんだリフロー工程においてはんだ45が融解し、飛び散ったはんだ45が基板30上に付着してしまうことを防いでいる。なお、保護テープ1は、基板30の接続部35bに限らず、基板30上の保護したい部分に適宜貼り付けることができる。
【0031】
ここで、上述したように、本実施形態に係る基板30のようなフレキシブルプリント基板は、作業時に頻繁に曲げられる場合が多い。それに伴い、基板30を保護する保護テープ1も曲げられる場合がある。また、保護テープ1を基板30から剥がす際にも、保護テープ1は曲げられるため、保護テープ1は、はんだリフロー工程による熱対策と共に、曲げても破れにくい柔軟性と強度を有することも考慮に入れて、各構成の材料や厚さなどが設定されている。
【0032】
本実施形態に係る保護テープ1の各構成を説明する。
【0033】
(金属層)
先ず、保護テープ1の金属層14について説明する。金属層14は、後述する樹脂層13上に接着剤層12によって貼り付けられて、保護テープ1の最外層に配置されており、はんだリフロー工程中における熱を反射したり、放熱したりする役割を有する。また、この金属層14の厚さは、6μm〜30μmである方がよい。これは、金属層14の厚さが6μmよりも薄いと、剥離作業の際に破れ易くなったり、放熱しにくくなるためである。一方、金属層14の厚さが30μmよりも厚いと、厚さによって保護テープ1が硬くなりすぎて剥がしにくくなったり、また多量の材料が必要になり高コストになるためである。また、金属層14は、アルミニウム、銀、銅などの金属めっきでもよいし、金属箔を利用してもよい。その中でも、はんだリフロー工程中における熱を反射し、且つ、放熱しやすい特性から金属層14にアルミニウムを用いる方がよい。
【0034】
この構成によると、より効果的に熱を外部に反射および放熱することができるため、粘着層11の温度上昇を緩和することができ、剥離作業において保護テープを剥がし易くなり、作業効率を向上させることができる。
【0035】
また、金属層14の厚さが好適になるため、熱を効果的に反射および放熱しやすくなる。さらに、金属層14の厚さによって保護テープ1が硬くなりすぎて剥がしにくくなったり、また多量の材料が必要になり高コストになったりすることがない。
【0036】
(接着剤層)
接着剤層12は、金属層14と樹脂層13との間に介在し、樹脂層13上に金属層14を貼り付ける役割を有する。この接着剤層12は、ポリウレタン系接着剤やポリエステル系接着剤によって形成されており、その厚みは、1〜6μmである。
【0037】
(樹脂層)
次に、保護テープ1の樹脂層13について説明する。樹脂層13は、接着剤層12によって貼り付けられた金属層14と共に後述する粘着層11上に設けられている。図1の場合、樹脂層13は、金属層14と粘着層11との間に介在し、接着剤層12によって金属層14に張り合わされている。そして、樹脂層13は、保護テープ1を剥がす際の金属層14の引き裂けを防止している。
【0038】
樹脂層13は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、エポキシなどの樹脂によって形成されている。その中でも、保護テープ1を剥がす際の金属層14の引き裂けを防止し、且つコストがあまり掛からない点から、ポリエチレンテレフタレートが用いられている方がよい。また、樹脂層13の厚さは6μm〜50μmである。これは、樹脂層13の厚さが6μmよりも薄いと、金属層14の曲げに対する影響を緩和することが難しくなるためである。一方、樹脂層13の厚さが50μmよりも厚いと、厚さによって保護テープ1が硬くなりすぎて剥がしにくくなったり、また多量の材料が必要になり高コストになるためである。なお、樹脂層13に用いられるポリエチレンテレフタレートは、約180℃の温度で黄色に変色して熱変形を始め、約240℃の温度で縮み出す。そのため、本実施形態に係る金属層14は、樹脂層13の温度が変色し始める180℃にならないように、熱を反射および放熱している。
【0039】
なお、図1の場合、樹脂層13は、金属層14と粘着層11との間に介在しているが、金属層14の表面上(保護テープ1の最外層)に設けられていてもよい。この場合、金属層14の曲げに対する影響を緩和する役割を有すると共に、酸性の薬品などから金属層14を保護する役割も有することができる。
【0040】
上記のような樹脂層13の構成によると、保護テープ1が曲げられても、樹脂層13の弾性によって、曲げによる金属層14に対する影響を緩和することができる。従って、保護テープ1を基板30から剥離する際の金属層14の引き裂けを、樹脂層13によって防止することができる。
【0041】
(粘着層)
次に、保護テープ1の粘着層11について説明する。粘着層11は、基板30に接する側に配置され、金属層14に積層された樹脂層13に積層されると共に、基板30に貼り付けられる。粘着層11は、アクリル系、ゴム系、シリコン系、およびウレタン系などの樹脂によって形成されている。このうち、透明性や粘着力の安定性などを考慮すると、粘着層11は、アクリル系樹脂を用いて形成される方がよい。また、粘着層11の厚さは5μm〜20μmである。これは、粘着層11の厚さが5μmよりも薄いと、基板30に貼りづらくなり、20μmよりも厚いと、保護テープ1を剥がした際にのり残りが生じやすくなるためである。なお、アクリル系樹脂で形成された粘着層11の場合、250℃以上の熱が加わると劣化を始めるため、粘着層11に加わる熱の温度は少なくとも250℃以下にする必要がある。
【0042】
(基板)
次に、上記のような構成を有する保護テープ1が貼り付けられる基板30について説明する。本実施形態に係る基板30は、フレキシブルプリント基板(FPC)である。基板30は、図示しない信号用配線パターンやグランド用配線パターンなどの複数の配線パターンが、ポリイミドから形成されたベース部材上に設けられており、その表面には、絶縁層などによって覆われている。このような構成を有する基板30には接続部35aおよび接続部35bが設けられており、接続部35aに配された接続端子と電子部品40に配された接続端子とが、はんだ45によって接着されて双方が電気的に接続されるようになっている。なお、ポリイミドで形成された基板30は、300℃以上の熱にも耐えられるようになっている。また、図2に示すように、基板30の電子部品40が接続されない接続部35bには保護テープ1が貼り付けられるようになっており、はんだリフロー工程において飛び散ったはんだ45が基板30に付着することを防止する。なお、本実施形態において基板30にフレキシブルプリント基板(FPC)を用いているが、他種類の基板を用いていてもよい。
【0043】
(はんだリフロー工程)
次に、図3を用いて、本実施形態に係るはんだリフロー工程について説明する。先ず、はんだリフロー工程で用いられるはんだリフロー装置50について説明する。はんだリフロー装置50は、土台部51と、ベルトコンベア52と、熱炉部55と、を有している。土台部51は、長尺状の筐体を有し、はんだリフロー装置50の土台となる。ベルトコンベア52は、土台部51上に設置されており、一定の距離を保って同じ方向に並列に配列された複数のローラ53を内部に設置して、各ローラ53の上下面を覆うようにしてベルトが架設されている。ローラ53は、断面が円となる細長い円柱状であり、円の中心を軸に夫々のローラ53が回転することによって、ベルトコンベア52のベルトが左右方向に移動するようになっている。熱炉部55は、全長が2mで、その内部に赤外線照射部56が設けられており、赤外線をベルトコンベア52上に向けて照射することができるようになっている。また、赤外線照射部56は、ベルトコンベア52との間に一定の隙間を隔てて設置されている。これにより、ベルトコンベア52上を流れる基板30に対して、赤外線照射部56から赤外線を照射することができるようになっている。
【0044】
ここで、はんだリフロー工程前においては、支持板20上に複数の基板30を配列し、電子部品40が接続されない接続部35bに保護テープ1を貼り付ける。この時、保護テープ1は基板30を支持板20に固定するように、支持板20にも同時に貼り付けられる。なお、保護テープ1の粘着層11は基板30に接するようにして保護テープ1が貼り付けられる。そして、基板30の接続部35aにクリームはんだを塗布し、その上に電子部品40を置いてはんだリフローの準備をする。
【0045】
次に、図3(a)に示すように、上記のように準備した基板30が配列された支持板20がベルトコンベア52上に置かれる。そして、ベルトコンベア52の各ローラ53が回転することによって、ベルトコンベア52が図の右方向に移動し、基板30が配列された支持板20も一緒に移動される。ベルトコンベア52によって右方向に移動した基板30は、図3(b)に示すように、熱炉部55の下方位置にやがて達し、基板30上に赤外線照射部56から赤外線が照射される。この時、熱炉部55の下方を移動する基板30は、全長2mの熱炉部55内を3分かけて移動する。そして、移動中に基板30上の温度は、熱炉部55の最初の位置から徐々に温度が上昇し、やがて最大で温度が270℃に達し、熱炉部55の最後の位置に移動するにつれて徐々に温度が下降するようになっている。この温度(270℃)の熱によって、接続部35aに塗布されたはんだ45が融解し、接続部35aと電子部品40に配された接続端子とが、はんだ45によって接着されて双方が電気的に接続されるようになっている。なお、図3(b)に示すように、保護テープ1に加わる熱は、金属層14によって支持板20上の温度の低い箇所へと伝熱される。このように、保護テープ1の粘着層11の温度は、金属層14によって赤外線が外部に反射され、赤外線によって生じた熱が放熱されるため、少なくとも粘着層11が劣化を始める250℃以下に収まっている。なお、図3において、本実施形態に係るはんだリフロー工程は、赤外線を熱源としているが、これに限定される必要はない。例えば、熱風を吹きつけることによってはんだ付けをする工程であってもよい。保護テープ1の金属層14によって熱を反射および放熱できるものであれば何れの手段を用いてもよい。
【0046】
このように、基板30の少なくとも一部を保護する保護テープ1が有する金属層14によって、はんだリフロー工程中における熱を外部に反射および放熱することができる。このように、金属層14によって、基板30上に貼り付く粘着層11に対して熱を伝わりにくくすることができるため、粘着層11の温度上昇を緩和することができる。これにより、はんだリフロー工程後に基板30から剥がしにくくなったり、剥がした後にのり残りが生じてしまったりすることがなく、作業性の悪化を防ぐことができる。
【0047】
また、赤外線を熱源とするはんだリフロー工程中における熱を金属層14によって外部に反射および放熱することができる。このように、赤外線を熱源とするはんだリフロー工程にも保護テープ1を適用することができる。
【0048】
また、はんだリフロー工程において、基板30における温度が最大で270℃となる場合でも、本実施形態に係る保護テープ1を適用することができる。
【0049】
(実施例1と比較例1)
次に、本実施形態に係る保護テープ1の実施例1および比較例1を用いて、本発明を具体的に説明する。
【0050】
実施例1では、図1に示す本実施形態に係る保護テープ1を用い、金属層14、樹脂層13、および粘着層11から構成される。具体的に、金属層14は、アルミニウム(Al)箔から形成され、その厚さは9μmである。また、樹脂層13は、ポリエチレンテレフタレート(PET)から形成され、その厚さは12μmである。さらに、粘着層11は、アクリル系樹脂によって形成されており、その厚さは10μmである。一方、比較例としては、金属層14を用いずに、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる樹脂層13およびアクリル系樹脂からなる粘着層11のみの構成で先ず実験を行ったが、保護テープが収縮して測定不可能になった。そのため、比較例1では、エポキシ樹脂からなる樹脂層13およびアクリル系樹脂からなる粘着層11のみの構成を用いた。
【0051】
次に、評価方法としては、JIS Z 0237に規定する粘着テープ・粘着シート試験方法を用いた剥離試験を行った。具体的には、10mm幅で100mmの長さに切った保護テープ1をステンレス材からなる試験板に貼り付け、引っ張り試験機によって試験板から180°方向に保護テープ1を引き剥がした時の引張力を測定した。
【0052】
上記のような剥離試験を図3に示したはんだリフロー工程の前後で実施した。つまり、赤外線で基板30における温度が270℃となるはんだリフロー工程の前、はんだリフロー工程の実施1回目の後、はんだリフロー工程の実施3回目の後において夫々剥離試験を実施した。なお、試験は実施例1および比較例1ともに試験品を4試料準備し、夫々の引張力を測定した。その結果を図4に示す。
【0053】
図4に示す試験結果によると、はんだリフロー工程前の測定値は、実施例1、比較例1ともに引張力の平均値が0.27Nと同じ値であり、差がなかった。次に、はんだリフロー工程を1回通した後に試験を実施すると、実施例1の引張力の平均値が0.30N、比較例1の引張力の平均値が0.61Nとなり、双方の引張力に差が出てきた。そして、はんだリフロー工程を3回通した後に試験を実施すると、実施例1の引張力の平均値が0.33Nに対し、比較例1の引張力の平均値が1.04Nとなり、双方の引張力に大きく差が出てきた。また、実施例1では、はんだリフロー工程を1回通すと、引張力が1.1倍、はんだリフロー工程を3回通すと、1.22倍とあまり変わらずに推移していたが、比較例1では、はんだリフロー工程を1回通すと、引張力が2.25倍、はんだリフロー工程を3回通すと、3.85倍と大きく上昇していることが分かった。これは、比較例1の場合、金属層14を有していないため、熱を反射および放熱できずに、その下面の粘着層11の温度を上昇させたためと考えられる。つまり、はんだリフロー工程の熱によって粘着層11が劣化を始める250℃以上に粘着層11の温度が上昇してしまい、粘着層11の材料が分解して粘着力が強くなり、その結果、試験板60から剥がす際の引張力が大きくなってしまったと考えられる。一方、実施例1の場合は、最外層が金属層14であるため、金属層14によって熱が反射および放熱され、粘着層11に熱が伝わりにくく、粘着層11の温度が250℃以上まで上昇することがない。そのため、粘着層11の粘着力は当初のままであり、基板30から保護テープ1を剥がす際の引張力もあまり変化せず、試験板60から剥がした際に粘着層11ののり残りが生じてしまうこともない。以上より、実施例1は全ての試験品において『○』、比較例は『×』となる総合評価を得ることができた。
【0054】
(実施例2〜4と比較例2)
次に、本実施形態に係る保護テープ1の実施例2〜4および比較例2を用いて、本発明を具体的に説明する。
【0055】
実施例2、3および比較例2は、共に本実施形態に係る保護テープ1と同じ構成を有しているが、金属層14の厚さのみが夫々異なる。具体的に、実施例2における金属層14の厚さは6μm、実施例3における金属層14の厚さは9μm、比較例2における金属層14の厚さは0.1μmである。なお、その他の厚さは図4に示した実施例1と同様である。また、実施例4は、粘着層11上に厚さ9μmの金属層14が設けられ、さらに、金属層14の上に、12μmのポリイミド(PI)からなる樹脂層13が積層されている。この実施例4の場合、ポリイミド(PI)からなる樹脂層13によって、保護テープ1を基板から剥離する際の金属層14の引き裂けを防止している。さらに、ポリイミド(PI)からなる樹脂層13が保護テープ1の最外層に位置しているため、酸性の薬品などから金属層14を保護することもできる。
【0056】
上記のような構成を有する実施例2〜4および比較例2を用いて、はんだリフロー工程を実施する前、はんだリフロー工程の実施1回目の後、はんだリフロー工程の実施3回目の後、において夫々前述の剥離試験を実施した。また、温度の異なる熱風乾燥機に実施例2〜4および比較例2の保護テープを3分間投入し、その後に剥離試験を実施した。なお、熱風乾燥機の試験においては、200℃の温度で3分間熱した試験と、270℃の温度で3分間熱した試験と、を夫々実施した。その結果を図5に示す。
【0057】
図5に示す試験結果によると、はんだリフロー工程前の測定値は、実施例2が0.38N、実施例3が0.45N、実施例4が0.32N、比較例2が0.17Nであった。次に、はんだリフロー工程を1回通した後に試験を実施すると、実施例2が0.43N、実施例3が0.51N、実施例4が0.39N、比較例2が0.52Nとなった。また、はんだリフロー工程を3回通した後に試験を実施すると、実施例2が0.49N、実施例3が0.55N、実施例4が0.36N、比較例2が0.62Nとなった。このように、金属層14の厚さの違い、および金属層14上での樹脂層13の有無では、はんだリフロー工程を3回実施してもさほど引張力に差が無かった。
【0058】
また、200℃の温度で3分間熱した熱風乾燥機の試験においては、実施例2が0.44N、実施例3が0.48N、実施例4が0.35N、比較例2が0.34Nであった。しかしながら、270℃の温度で3分間熱した熱風乾燥機の試験においては、実施例2が0.41N、実施例3が0.38N、実施例4が0.37Nとなり、200℃の温度で3分間熱した熱風乾燥機の試験とさほど変化がなかったのに対し、比較例2の場合は、保護テープが収縮して測定不可能になった。これは、比較例2の場合、金属層14の厚さが薄いために、270℃の温度の熱風乾燥機試験では金属層14が耐えることができなかったと考えられる。この結果から、少なくとも金属層14の厚さが6μm以上の場合は、3回のはんだリフロー工程の実施後でも、270℃の温度で3分間熱した熱風乾燥機に投入した後でも、粘着層11の粘着力はあまり向上することがないことが分かった。
【0059】
このように、実施例および比較例を用いた試験によると、保護テープ1が有する金属層14によって、はんだリフロー工程中における熱を外部に反射および放熱することができる。このように、金属層14によって、基板30上に貼り付く粘着層11に対して熱を伝わりにくくすることができるため、粘着層11の温度上昇を緩和することができる。これにより、はんだリフロー工程後に基板30から剥がしにくくなったり、剥がした後にのり残りが生じてしまったりすることがなく、作業性の悪化を防ぐことができる。
【0060】
また、金属層14の厚さは、6μm以上であると、金属層14の厚さが好適なものになるため、熱を効果的に反射および放熱しやすくなる。
【0061】
また、はんだリフロー工程において、基板30における温度が最大で270℃となる場合でも、本実施形態に係る保護テープ1を適用することができる。
【0062】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、はんだリフロー工程を流れる基板を保護する保護テープに適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 保護テープ
11 粘着層
13 樹脂層
14 金属層
70 熱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだリフロー工程を流れる基板に貼り付けられ、当該基板の少なくとも一部を保護する保護テープであって、
前記基板上に貼り付けられる粘着層と、金属層と、樹脂層と、
を有し、
前記粘着層上には、少なくとも前記金属層と前記樹脂層が設けられていることを特徴とする保護テープ。
【請求項2】
前記樹脂層および前記金属層は、前記粘着層上において、当該樹脂層、当該金属層の順に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の保護テープ。
【請求項3】
前記樹脂層および前記金属層は、前記粘着層上において、当該金属層、当該樹脂層の順に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の保護テープ。
【請求項4】
前記金属層の厚さは、6μm〜30μmであることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の保護テープ。
【請求項5】
前記金属層はアルミニウムで形成されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の保護テープ。
【請求項6】
前記はんだリフロー工程中において前記基板における温度が最大で270℃となることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の保護テープ。
【請求項7】
前記はんだリフロー工程は、赤外線を熱源とすることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の保護テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−186240(P2012−186240A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47111(P2011−47111)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000108742)タツタ電線株式会社 (76)
【Fターム(参考)】