説明

保護フィルム、および保護フィルム付き成形体

【課題】表面に微細凹凸構造を有する成形体に貼着しやすく、かつ粘着剤が微細凹凸構造の内部に浸透しにくい保護フィルム、およびこれを備えた保護フィルム付き成形体を提供する。
【解決手段】微細凹凸構造を有する凹凸部23が表面に形成された成形体20の該表面を保護する、基材フィルム11と粘着剤層12を備えた保護フィルム10であって、当該保護フィルム10が前記成形体20の表面に貼着した際に、前記粘着剤層12が成形体20の凹凸部23以外の部位に貼着するように、前記基材フィルム11上に粘着剤層12が積層した、保護フィルム10、および該保護フィルム10が前記成形体20の表面に貼着され、前記粘着剤層12が成形体20の凹凸部23以外の部位に貼着している、保護フィルム付き成形体1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細凹凸構造を有する機能性フィルムなどの成形体の表面を保護するのに好適な保護フィルム、および保護フィルム付き成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、反射防止性、防曇性、防汚性、撥水性等を付与することを目的として、表面に微細凹凸構造を有する機能性フィルム等の成形体が提案されている。特に、Moth−Eye構造と呼ばれる微細凹凸構造は、優れた反射防止性を発現することが知られている。
【0003】
成形体の表面に微細凹凸構造を形成する方法として、例えば特許文献1には、シート状体の表面に放射線硬化樹脂を塗布して塗布層を形成し、エンボスローラを用いて該エンボスローラ表面の凹凸を塗布層に転写した後に、放射線を照射して塗布層を硬化する方法が開示されている。特許文献1では、塗布層を硬化した後、微細凹凸構造が形成された側のシートの表面に保護フィルムをラミネートする。
【0004】
特許文献1に記載のように、微細凹凸構造が形成された成形体の表面を保護フィルムで貼着すれば、成形体の表面に汚れが付着したり、微細凹凸構造の形状を維持(保護)したりできる。なお、保護フィルムが貼着した成形体は、通常、保護フィルムを剥離してから使用される。
【特許文献1】特開2007−112129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように、成形体の表面に微細凹凸構造を形成した後、該成形体の表面に保護フィルムを貼着すると、微細凹凸構造表面に保護フィルムが貼着することになる。そして、表面にMoth−Eye構造の微細凹凸構造を有する成形体では、通常の微細凹凸構造に比べて凸部間の間隔が狭いため成形体と保護フィルムとの貼着面積が小さく、貼着力が低下しやすい。そのため、表面にMoth−Eye構造の微細凹凸構造を有する成形体に保護フィルムを貼着するのは困難であった。
【0006】
また、特にMoth−Eye構造の微細凹凸構造の表面に保護フィルムを貼着すると、例えば、保管中や輸送中に熱を受けた場合、粘着剤が溶けて微細凹凸構造を構成する凹部に粘着剤が浸透し、反射防止性能が損なってしまい製品としての価値が低下しやすかった。
そのため、Moth−Eye構造の微細凹凸構造を有する成形体に保護フィルムを貼り付けるには、貼付力が低く、また微細凹凸形状内部への粘着剤浸透を防ぐ必要があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、表面に微細凹凸構造を有する成形体に貼着しやすく、かつ粘着剤が微細凹凸構造の内部に浸透しにくい保護フィルム、およびこれを備えた保護フィルム付き成形体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、保護フィルムの構成を以下のものとすることで、成形体の表面に貼着できると共に、例えば、保管中や輸送中に熱を受けた場合でも保護フィルムの粘着剤が微細凹凸構造の内部に浸透しにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の保護フィルムは、微細凹凸構造を有する凹凸部が表面に形成された成形体の該表面を保護する、基材フィルムと粘着剤層を備えた保護フィルムであって、当該保護フィルムが前記成形体の表面に貼着した際に、前記粘着剤層が成形体の凹凸部以外の部位に貼着するように、前記基材フィルム上に粘着剤層が積層したことを特徴とする。
また、本発明の保護フィルム付き成形体は、前記保護フィルムの前記粘着剤層が、前記成形体の凹凸部以外の部位に貼着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の保護フィルムによれば、表面に微細凹凸構造を有する成形体に貼着しやすく、かつ保護フィルムの粘着剤が微細凹凸構造の内部に浸透しにくい。
また、本発明の保護フィルム付き成形体によれば、保護フィルムを貼着しやすく、かつ保護フィルムの粘着剤が微細凹凸構造の内部に浸透しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の保護フィルム10が成形体20の表面に貼着した保護フィルム付き成形体1の一例を示す縦断面図である。
なお、図2〜3において、図1と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する場合がある。また、図1〜4においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材に毎に縮尺を異ならせてある。
ここで、本発明に用いる成形体20について、具体的に説明する。
【0012】
<成形体>
図1に示す成形体20は、基材21と、該基材21の表面に形成された、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物の硬化物22とを有する。
基材21を構成する材料としては、光を透過するものが好ましく、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリエステル、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、脂乾式ポリオレフィン等が挙げられる。
基材21は射出成形、押し出し成形、キャスト成形のいずれの方法によって作製してもよい。
【0013】
基材21の形状には特に制限はなく、製造する成形体20に応じて適宜選択できるが、例えば成形体20が反射防止フィルムなどの機能性フィルムである場合には、シート状またはフィルム状が好ましい。また、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物との密着性や、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性等の改良のために、基材21の表面には例えば各種コーティングやコロナ放電処理、UVオゾン処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0014】
図2(a)に示すように、成形体20は、微細凹凸構造を有する凹凸部23と、微細凹凸構造を有さない非凹凸部24が表面に形成されている。この例の場合、硬化物22の表面に、凹凸部23と非凹凸部24が形成されていているが、本発明はこれに限定されず、例えば図2(b)に示すように、凹凸部23が硬化物22の表面に、非凹凸部24が露出した基材21の表面に相当していてもよい。
なお、本明細書において、成形体の面のうち微細凹凸構造が形成されている側の面を「成形体の表面」とし、これに対向した面を「成形体の裏面」とする。
【0015】
凹凸部23の微細凹凸構造は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物の硬化物22からなる複数の凸部を有するもので、微細凹凸構造を有する金型(モールド)を用いて該微細凹凸構造を転写することで形成される。
【0016】
活性エネルギー線硬化樹脂としては、例えば、ポリエステル類、エポキシ系樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系樹脂等が挙げられる。このような活性エネルギー線硬化樹脂に使用される活性エネルギー線硬化性組成物としては、取扱い性や硬化性等の点で、多官能アクリレートおよび/または多官能メタクリレート(以下、「多官能(メタ)アクリレート」と記載する。)、モノアクリレートおよび/またはモノメタクリレート(以下、「モノ(メタ)アクリレート」と記載する。)、活性エネルギー線による光重合開始剤を主成分とするもの等が好ましい。
代表的な多官能(メタ)アクリレートとしては、ポリオールポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、エポキシポリ(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上の混合物として使用される。
また、モノ(メタ)アクリレートとしては、モノアルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリオールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0017】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートを意味する。
また、活性エネルギー線とは、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線)等を意味する。
【0018】
熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ガラス強化ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性ポリマー、フッ素樹脂、ポリアレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアミドビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール等が挙げられる。
【0019】
微細凹凸構造としては、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるMoth−Eye構造が好ましい。表面に、微細凹凸構造を有する凹凸部13を備えることで、防汚性に優れた成形体20が得られる。特に、凸部間の間隔が可視光の波長以下であるMoth−Eye構造は、空気の屈折率から材料の屈折率に連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となる。
なお、Moth−Eye構造の微細凹凸構造は、陽極酸化アルミナモールドの表面の微細凹凸構造を転写して形成される。
【0020】
微細凹凸構造の凸部間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下が好ましい。陽極酸化アルミナモールドを用いてMoth−Eye構造の微細凹凸構造を形成する場合、凸部間の平均間隔は100nm程度となることから、凸部間の平均間隔は200nm以下が好ましく、150nm以下が特に好ましい。凸部間の平均間隔が400nm以下であれば、反射率が低く、かつ反射率の波長依存性が少ない成形体20が得られる。
【0021】
凸部間の平均間隔は、凸部の形成のしやすさの点から、20nm以上が好ましい。
凸部間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する凸部間の間隔(凸部25の中心から隣接する凸部25の中心までの距離W25)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0022】
凸部の高さは、平均間隔が100nm程度の場合は、80〜500nmが好ましく、120〜400nmがより好ましく、150〜300nmが特に好ましい。凸部の高さが80nm以上であれば、反射率が十分に低くなり、かつ反射率の波長依存性が少なくなる。凸部の高さが500nm以下であれば、凸部の耐擦傷性が良好となる。
凸部の高さは、電子顕微鏡観察によって50個の凸部25の高さH25を測定し、これらの値を平均したものである。
【0023】
凸部のアスペクト比(凸部の高さ/凸部間の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。凸部のアスペクト比が0.8以上であれば、反射率が十分に低くなる。凸部のアスペクト比が5.0以下であれば、凸部の耐擦傷性が良好となる。
【0024】
凸部の形状は、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最表面から深さ方向に連続的に増加する形状、すなわち、凸部の高さ方向の断面形状が、三角形、台形、釣鐘型等の形状が好ましい。
【0025】
本発明においては、図2(a)、(b)に示すように、非凹凸部24は少なくとも成形体20の表面の両端部に設けられていればよい。非凹凸部24が両端部に設けられれば、保護フィルム付き成形体とした際に、成形体の表面の両端が保護フィルムによって十分な密着強度で貼着されることになるので、成形体と保護フィルムとの界面にゴミ等の不純物がより侵入しにくく、成形体の表面に汚れ等がより付着しにくくなる。非凹凸部24は、両端部以外の箇所に複数設けられていてもよいが、成形体20が反射防止性などの特性を十分に発揮するためには、両端部のみに設けられているのが好ましい。
【0026】
非凹凸部24の幅W24は、20〜40mmが好ましく、25〜30mmがより好ましい。非凹凸部24の幅W24が20mm以上であれば、保護フィルム10との貼着面積を確保でき、保護フィルム10が貼着しやすくなる。
【0027】
成形体は、表面に微細凹凸構造を有する凹凸部を備えるので、光学用途成形体、特に反射防止フィルムや立体形状の反射防止体などの反射防止物品として好適である。
成形体が反射防止フィルムである場合には、例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、陰極管表示装置のような画像表示装置、レンズ、ショーウィンドー、眼鏡レンズ、1/2波長板、ローパスフィルター等の対象物の表面に貼り付けて使用される。
成形体が立体形状の反射防止体である場合には、あらかじめ用途に応じた形状の透明基材を用いて反射防止体を製造しておき、これを上記対象物の表面を構成する部材として使用することもできる。
また、対象物が画像表示装置である場合には、その表面に限らず、その前面板に対して反射防止フィルムを貼り付けてもよいし、前面板そのものを本発明の成形体から構成することもできる。
【0028】
その他にも、このような成形体の用途としては、光導波路、レリーフホログラム、レンズ、偏光分離素子、1/2波長板、ローパスフィルター、水晶デバイスなどの光学用途成形体や、細胞培養シート、超撥水性フィルム、超親水性フィルムなどが挙げられる。
【0029】
<保護フィルム>
本発明の保護フィルムは、図1に示すように、微細凹凸構造を有する凹凸部23が表面に形成された成形体20の該表面を保護するものであり、基材フィルム11上に粘着剤層12が積層している。
基材フィルム11を構成する材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、セロハン、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリブテン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、アセチルセルロース等が挙げられる。
中でも柔軟性、透明性などの観点から、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0030】
基材フィルム11の厚さD11は特に限定しないが、20〜100μmが好ましい。基材フィルム11の厚さD11が20μm未満であると、保護フィルム10の弾力性が低下し、成形体20に貼着した際に基材フィルム11が撓む恐れがある。一方、基材フィルム11の厚さD11が100μmを超えると、フィルムの柔軟性が低下し、保護フィルム付き成形体を製造する過程でロール状に巻き取る際に影響が出ることがある。
【0031】
粘着剤層12を構成する材料としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合(EVA)系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられる。
中でも耐水性、耐候性、柔軟性の観点から、EVA系粘着剤が好ましい。
【0032】
粘着剤層12の厚さD12は特に限定しないが、1〜50μmが好ましい。粘着剤層12の厚さD12が1μm未満であると、成形体20に保護フィルム10が十分に貼着しにくくなる。一方、粘着剤層12の厚さD12が50μmを超えても、粘着性の効果は頭打ちとなる。さらに、保護フィルム付き成形体を製造する過程でロール状に巻き取って保管等をする場合、粘着剤がはみ出し、成形体の表面の微細凹凸構造の凹部に浸透する場合がある。
【0033】
図1に示すように、保護フィルム10は、成形体20の表面に貼着した際に、前記粘着剤層12が成形体20の凹凸部23以外の部位、すなわち非凹凸部24に貼着するように、前記基材フィルム11上に粘着剤層12が積層している。そして、粘着剤層12と非凹凸部24とが貼着することで、保護フィルム10が成形体20の表面に貼着する。
【0034】
粘着剤層12は、成形体20の表面に形成される非凹凸部24の設置場所に対応させて、基材フィルム11上に積層するが、保護フィルム10の両端部に粘着剤層12が配置されるように基材フィルム11上に積層するのが好ましい。
粘着剤層12の幅W12は、図2(a)に示す非凹凸部24の幅W24に応じて適宜設定される。粘着剤層12は、凹凸部23と接しないのが好ましいので、図1に示すように空隙部Sが設けられるように、かつ保護フィルム10が成形体の表面に貼着できるように、粘着剤層12の幅W12を設定すればよい。具体的には15〜30mmが好ましく、20〜25mmがより好ましい。
【0035】
保護フィルム10は、例えば基材フィルム11上に、粘着剤層12を構成する材料を含む塗布液を塗布する方法によって製造できる。具体的には、基材フィルム11の一方の面上に、粘着剤層12を構成する材料と、必要に応じて水等の溶媒とを含有する塗布液を所定の位置に塗布し、乾燥して、基材フィルム11上に粘着剤層12を形成することで製造できる。
塗布液の塗布には、刷毛やローラー等の器具、またはダイ、グラビア、ロールコーター等の各種塗工機を用いればよい。
【0036】
本発明の保護フィルム10は、成形体20の表面に貼着した際に、粘着剤層12が成形体20の凹凸部23以外の部位(非凹凸部24)に貼着することで、成形体20に貼着する。非凹凸部24は微細凹凸構造を有さないので、平坦で貼着面積が大きい。従って、必要以上に粘着力の強い粘着剤を含有した粘着剤層を備えることなく、成形体20の表面に貼着できる。
【0037】
さらに、本発明の保護フィルム10は、粘着剤層12が凹凸部23には貼着しないので、例えば保護フィルム付き成形体1が保管中や輸送中に熱を受けた場合でも、粘着剤層12中の粘着剤が溶けて微細凹凸構造を構成する凹部に粘着剤が浸透せず、成形体20から保護フィルム10を容易に剥離できる。
よって、本発明の保護フィルムは、表面に微細凹凸構造を有する成形体に貼着しやすく、かつ不用意に剥がれず、さらに意図的に剥がそうとすれば容易に剥離できる。
【0038】
<保護フィルム付き成形体>
本発明の保護フィルム付き成形体1は、本発明の保護フィルムの粘着剤層12が、成形体20の凹凸部23以外の部位、すなわち非凹凸部24に貼着している。
【0039】
上述したように、陽極酸化ポーラスアルミナの表面の微細凹凸構造を転写して形成された、いわゆるMoth−Eye構造と呼ばれる微細凹凸構造は、通常の微細凹凸構造よりも凸部間の間隔が狭いため、微細凹凸構造が形成された面は保護フィルムとの貼着面積が小さく、保護フィルムが貼着されにくい。従って、成形体の表面に保護フィルムを貼着するには、通常の微細凹凸構造が形成された成形体の表面に貼着する保護フィルムに比べて粘着力の強い粘着剤を含有する粘着剤層を備えた保護フィルム(強粘着保護フィルム)を用いる必要があった。
【0040】
ところで、微細凹凸構造の表面に保護フィルムを貼着すると、貼着力が弱く貼付にくく、また保管中や輸送中に熱を受けた場合、粘着剤が溶けて微細凹凸構造を構成する凹部に粘着剤が浸透し、微細凹凸部による機能性が低下してしまうことがあった。
従って、特にMoth−Eye構造の微細凹凸構造が形成された成形体に保護フィルムを貼着する際には、貼着時の貼着力が低く、また粘着剤の微細凹凸構造内部への浸透を防ぐ必要があった。
【0041】
しかし、本発明の保護フィルム付き成形体であれば、保護フィルムの粘着剤層が成形体の凹凸部以外の部位、すなわち非凹凸部に貼着することで、微細凹凸構造表面に貼り付けるよりも容易に保護フィルムと成形体と貼着する。
さらに、本発明の保護フィルム付き成形体であれば、保護フィルムの粘着剤層は成形体の凹凸部には貼着しないので、保管中や輸送中に熱を受けた場合でも、粘着剤層中の粘着剤が溶けて微細凹凸構造を構成する凹部に粘着剤が浸透せず、微細凹凸構造による機能性を低下させることがない。よって、本発明の保護フィルム付き成形体は、保護フィルムを貼着しやすく、かつ微細凹凸構造の内部への粘着剤浸透による機能性低下の影響が少ない。
【0042】
本発明の保護フィルム付き成形体は、例えば図3に示す保護フィルム付き成形体の製造装置30を用いて製造される。
<保護フィルム付き成形体の製造装置>
図3は、保護フィルム付き成形体の製造装置30の一例を示す概略構成図であり、この例の製造装置30は、表面に微細凹凸構造を有するロール状モールド31と、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’を収容するタンク32と、空気圧シリンダ33を備えたニップロール34と、活性エネルギー線照射装置35と、剥離ロール36と、空気圧シリンダ37を備えた一対のニップロール38とを具備する。
なお、図3に示す保護フィルム付き成形体の製造装置30は、成形体20を作製した後に、連続して保護フィルム付き成形体1を製造する装置である。
【0043】
(ロール状モールド)
ロール状モールド31は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’に微細凹凸構造を転写させるモールドであり、表面に陽極酸化アルミナを有する。表面に陽極酸化アルミナを有するモールドは、大面積化が可能であり、ロール状モールドの作製が簡便である。
陽極酸化アルミナは、アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト)であり、表面に複数の細孔(凹部)を有する。
【0044】
表面に陽極酸化アルミナを有するモールドは、例えば、下記(a)〜(e)工程を経て製造できる。
(a)ロール状のアルミニウムを電解液中、定電圧下で陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)ロール状のアルミニウムを電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)細孔の径を拡大させる工程。
(e)前記(c)工程と(d)工程を繰り返し行う工程。
【0045】
(a)工程:
図4に示すように、アルミニウム39を陽極酸化すると、細孔40を有する酸化皮膜41が形成される。
アルミニウムの純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に、不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりすることがある。
電解液としては、硫酸、シュウ酸、リン酸等が挙げられる。
【0046】
シュウ酸を電解液として用いる場合:
シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
化成電圧が30〜60Vの時、周期が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0047】
硫酸を電解液として用いる場合:
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
化成電圧が25〜30Vの時、周期が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がよりに好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0048】
(b)工程:
図4に示すように、酸化皮膜41を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点42にすることで細孔の規則性を向上できる。
【0049】
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
【0050】
(c)工程:
図4に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム39を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔40を有する酸化皮膜41が形成される。
陽極酸化は、(a)工程と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0051】
(d)工程:
図4に示すように、細孔40の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
【0052】
(e)工程:
図4に示すように、(c)工程の陽極酸化と、(d)工程の細孔径拡大処理を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔40を有する陽極酸化アルミナが形成され、表面に陽極酸化アルミナを有するモールド(ロール状モールド31)が得られる。
繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を有する陽極酸化アルミナを用いて製造された硬化物22の反射率低減効果は不十分である。
【0053】
陽極酸化アルミナの表面は、硬化物22との分離が容易になるように、離型剤で処理されていてもよい。処理方法としては、例えば、シリコーン樹脂またはフッ素含有ポリマーをコーティングする方法、フッ素含有化合物を蒸着する方法、フッ素含有シランカップリング剤またはフッ素含有シリコーン系シランカップリング剤をコーティングする方法等が挙げられる。
【0054】
細孔40の形状としては、略円錐形状、角錐形状、円柱形状等が挙げられ、円錐形状、角錐形状等のように、深さ方向と直交する方向の細孔断面積が最表面から深さ方向に連続的に減少する形状が好ましい。
細孔40間の平均間隔は、400nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下が好ましい。
【0055】
細孔40の深さは、細孔40間の平均間隔が100nm程度の場合、80〜500nmが好ましく、120〜400nmがより好まし、150〜300nmが好ましい。
細孔40のアスペクト比(細孔の深さ/細孔間の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。
【0056】
(タンク)
タンク32は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’を収容し、ロール状モールド31と、ロール状モールド31の表面に沿って移動する帯状の基材21との間に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’を供給する。
【0057】
(ニップロール)
ニップロール34は、ロール状モールド31に対向して配置される。ニップロール34は、ロール状モールド31と共に基材21および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’をニップする。
ニップ圧は、ニップロール34に備わる空気圧シリンダ33によって調整する。
【0058】
(活性エネルギー線照射装置)
活性エネルギー線照射装置35は、ロール状モールド31の下方に設置され、活性エネルギー線を照射して、基材21とロール状モールド31の間に充填された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’を硬化させる。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’が硬化されることにより、基材21上に、ロール状モールド31の微細凹凸構造が転写された硬化物22が形成される。
活性エネルギー線照射装置35としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を使用できる。この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cmが好ましい。
【0059】
(剥離ロール)
剥離ロール36は、活性エネルギー線照射装置35よりも下流側に配置され、表面に硬化物22が形成された基材21をロール状モールド31から剥離する。
【0060】
(一対のニップロール)
一対のニップロール38は、剥離ロール36の下流側に配置され、成形体20に保護フィルム10を貼着させる。
一対のニップロール38は、外周面がゴム等の弾性部材で形成された弾性ロール38aと、外周面が金属等の剛性が高い部材で形成された剛性ロール38bとからなる。
ニップ圧は、弾性ロール38aに備わる空気圧シリンダ37によって調整する。
【0061】
なお、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の代わりに熱可塑性樹脂組成物を用いる場合は、活性エネルギー線照射装置の代わりに、加熱ロールを用いてモールドを加熱すればよい。
【0062】
<保護フィルム付き成形体の製造>
上述した保護フィルム成形体の製造装置30を用いて、保護フィルム成形体1を製造する方法の一例を説明する。
(成形体の作製)
まず、成形体20を作製する。
具体的には、図3に示すように、回転するロール状モールド31の表面に沿うように帯状の基材21を搬送させ、基材21とロール状モールド31との間に、タンク32から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’を供給する。
【0063】
さらに、ロール状モールド31と、空気圧シリンダ33によってニップ圧が調整されたニップロール34との間で、基材21および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’を、基材21とロール状モールド31との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド31の微細凹凸構造の凹部内に充填する。
【0064】
ついで、ロール状モールド31の下方に設置された活性エネルギー線照射装置35から、基材21を通して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’を硬化させることによって、ロール状モールド31の表面の微細凹凸構造が転写された硬化物22を形成する。
【0065】
ついで、剥離ロール36により、表面に硬化物22が形成された基材21を剥離することによって、成形体20を得る。
図4に示すような細孔40を転写して形成された硬化物22の表面は、いわゆるMoth−Eye構造となる。
【0066】
図2(a)に示すような、硬化物22の表面に凹凸部23と非凹凸部24が形成した成形体20を得るためには、例えば、基材21の表面全域に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’が行渡るように、タンク32からの供給量を調整し、かつ、周縁部に微細凹凸構造が形成されていないロール状モールドを用いたり、ロール状モールドの周縁部にカバーなどを設けたりすればよい。周縁部の領域を適宜設定することで、非凹凸部24の幅Wを調節できる。
【0067】
また、図2(b)に示すような、凹凸部23が硬化物22の表面に相当し、非凹凸部24が露出した基材21の表面に相当する成形体20を得るためには、例えば、基材21の表面全域に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’が行渡らないように、タンク32からの供給量を調整すればよい。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’はタンク32から供給されると基材21上に広がるが、供給量が多いほど基材21上に広がる範囲が増える。従って、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’が基材21の表面全域に行渡らないように供給量を調整することで、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’が行渡った部分のみにロール状モールド31の表面の微細凹凸構造が転写され、凹凸部23と非凹凸部24が表面に形成された成形体20が得られる。非凹凸部24の幅Wは、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’の供給量で調節できる。
【0068】
このようにして製造された成形体20は、陽極酸化アルミナの表面の微細凹凸構造を転写して形成された微細凹凸構造を有する凹凸部と、該微細凹凸構造を有さない非凹凸部とが表面に形成される。
【0069】
(保護フィルムの貼着)
次に、得られた成形体20の表面に、保護フィルム10を貼着する。
具体的には、先に得られた成形体20を一対のニップロール38の間に通過させると同時に、保護フィルム繰り出し機(図示略)から繰り出される保護フィルム10を、微細凹凸構造が形成された側の表面に貼着するように、成形体20と一対のニップロール38の間に供給する。
このとき、成形体20は、成形体20の裏面(微細凹凸構造が形成されていない側の面)が剛性ロール38bに接触するように、弾性ロール38aと剛性ロール38bとの間に成形体20を送り込まれる。
一方、保護フィルム10は、粘着剤層12が成形体20の表面(微細凹凸構造が形成された側の面)の非凹凸部に接触し、基材フィルム11が弾性ロール38aと接触するようにして、弾性ロール38aと成形体20の間に送り込まれる。
【0070】
ついで、成形体20の表面の非凹凸部に保護フィルム10の粘着剤層12が接触した状態で、成形体20と保護フィルム10を弾性ロール38aと剛性ロール38bとの間で挟持し、空気圧シリンダ37によって一対のニップロール38のニップ圧を調整しながら、成形体20に保護フィルム10を貼着する。こうして、図1に示すような、成形体20の表面の非凹凸部に保護フィルム10の粘着剤層12が貼着した保護フィルム付き成形体1を得る。
なお、成形体20の表面は、保護フィルム10を介して弾性ロール38aと接触することになるので、微細凹凸構造が変形したり破損したりしにくい。
保護フィルムとしては、上述したような方法で別途作製したものを用いる。
【0071】
保護フィルム付き成形体は、上述したように成形体を作製した後に連続して保護フィルムを貼着して製造するのが、保護フィルムの貼着目的(汚れ付着の防止や、微細凹凸構造の形状維持)や製造コストを考慮すると好ましいが、これに限定されず、成形体を作製した後、成形体を一旦回収し、別の製造ラインに移して保護フィルムを貼着してもよい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
<各種測定>
(1)モールドの細孔の測定
表面に陽極酸化アルミナが形成されたモールドの破断面を1分間プラチナ蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM−7400F」)を用いて、加速電圧3.00kVの条件にて、断面を観察し、細孔間の間隔および細孔の深さを測定した。各測定は、それぞれ50点について行い、平均値を求めた。
【0074】
(2)微細凹凸構造の測定
成形体の破断面を10分間プラチナ蒸着し、(1)と同様にして微細凹凸構造の凸部間の間隔および凸部の高さを測定した。各測定は、それぞれ50点について行い、平均値を求めた。
【0075】
[実施例1]
<ロール状モールドの作製>
純度99.99%のアルミニウムからなる、直径200mmの円筒状ロールを、過塩素酸、エタノール混合溶液(体積比1:4)中で電解研磨した。
ついで、電解研磨したロールを、0.5Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件下で30分陽極酸化を行い、厚さ25μmの酸化皮膜を形成した(工程(a))。酸化皮膜が形成されたロールを6質量%のリン酸と1.8質量%のクロム酸混合水溶液に6時間浸漬し、酸化皮膜を一旦溶解除去した(工程(b))。その後、再び0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件下で30秒間陽極酸化を行い、酸化皮膜を形成した(工程(c))。その後、ロールを32℃の5質量%リン酸水溶液中に8分間浸漬して、酸化皮膜の細孔を拡径する孔径拡大処理(工程(d))を施した。
さらに工程(c)と工程(d)を繰り返し、これらを合計で5回追加実施することで(工程(e))、平均間隔:100nm、深さ:240nmの略円錐形状のテーパー状細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール状モールドを得た。
ついで、離形剤(ダイキン化成品販売社製、「オプツールDSX(商品名)」)を0.1質量%に希釈した溶液にロール状モールドを10分間浸漬させ、24時間風乾して離形処理し、酸化皮膜表面のフッ素化処理を行った。
【0076】
<保護フィルム付き成形体の製造>
得られたロール状モールドを図3に示す保護フィルム付き成形体の製造装置30に設置し、以下のようにして成形体を作製し、連続して保護フィルム付き成形体を製造した。
まず、図3に示すように、ロール状モールド31を冷却水用の流路を内部に設けた機械構造用炭素鋼製の軸芯にはめ込んだ。ついで、下記の組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’をタンク32から室温で供給ノズルを介して、ニップロール34とロール状モールド31の間にニップされている基材(東洋紡社製PETフィルム、「A4300(商品名)」、フィルム幅350mm、長さ400m、厚み188μm)21の表面全域に行渡るように供給した。この際、空気圧シリンダ33によりニップ圧が調整されたニップロール34によりニップされ、ロール状モールド31の凹部内にも活性エネルギー線硬化性組成物22’が充填される。
なお、硬化物22の表面に形成される凹凸部と非凹凸部のうち、非凹凸部の幅が35mmになるように、かつ、非凹凸部が硬化物の両端部、すなわち成形体20の両端部に設けられるように、ロール状モールド31の周縁部には予めカバーを設けておく。
【0077】
ついで、毎分7.0mの速度でロール状モールド31を回転させながら、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’がロール状モールド31と基材21の間に挟まれた状態で、紫外線照射装置35から400mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22’を硬化・賦型して硬化物22とした後、剥離ロール36によりでロール状モールド31から剥離して、図2(a)に示すような、表面に微細凹凸構造を有する凹凸部23と、微細凹凸構造を有さない非凹凸部24を備えた成形体(機能性フィルム)20を得た。
【0078】
別途、基材フィルム(東洋紡社製PETフィルム、「E5107(商品名))、フィルム幅350mm、長さ400m、厚み25μm」の一方の面の両端部に、粘着剤(DIC社製EVA系ホットメルト粘着剤「DX−36(商品名)」)を、乾燥後の粘着剤層の厚みが5μmになるように、かつ、粘着剤層の幅が基材フィルムの端部から内側方向に20mmになるように、グラビアコーターを用いて塗布し、保護フィルム10を作製した。
【0079】
ついで、成形体20の裏面(微細凹凸構造が形成されていない側の面)が剛性ロール38bに接触するように、成形体20を弾性ロール38aと剛性ロール38bの間に送り込んだ。
一方、保護フィルム10の粘着剤層12が、成形体20の表面(微細凹凸構造が形成された側の面)の非凹凸部に接触するようにして、保護フィルム10を弾性ロール38aと成形体20の間に送り込んだ。
そして、空気圧シリンダ37によって一対のニップロール38のニップ圧を調整しながら、成形体20の表面に保護フィルム10を貼着し、図1に示すような保護フィルム付き成形体1を得た。
【0080】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物)
トリメチロールエタンアクリル酸・無水コハク酸縮合エステル:45質量部
ヘキサンジオールジアクリレート:45質量部
信越化学社製商品名「x−22−1602」:10質量部
チバ・スペシャリティケミカルズ社製商品名「イルガキュア184」:2.7質量部
チバ・スペシャリティケミカルズ社製商品名「イルガキュア819」:0.18質量部
【0081】
<評価>
微細凹凸構造を有する成形体に本発明の保護フィルムを貼り付けた所、容易に貼付および剥離することができた。
また保護フィルムを貼り付けて剥離した後、微細凹凸表面における粘着剤の有無を電子顕微鏡(HIROX社製、「KH−3000」にて確認したが、微細凹凸構造部に粘着剤が無い事が確認できた。
【0082】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の保護フィルム付き成形体の一例を示す縦断面図である。
【図2】(a)は本発明の保護フィルムを貼着する成形体の一例を示す縦構成図であり、(b)は成形体の他の例を示す縦構成図である。
【図3】本発明の保護フィルム付き成形体に用いる成形体の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】表面に陽極酸化アルミナを有するモールドの製造工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 保護フィルム付き成形体
10 保護フィルム
11 基材フィルム
12 粘着剤層
20 成形体
21 基材
22 硬化物
23 凹凸部
24 非凹凸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細凹凸構造を有する凹凸部が表面に形成された成形体の該表面を保護する、基材フィルムと粘着剤層を備えた保護フィルムであって、
当該保護フィルムが前記成形体の表面に貼着した際に、前記粘着剤層が成形体の凹凸部以外の部位に貼着するように、前記基材フィルム上に粘着剤層が積層した、保護フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の保護フィルムの前記粘着剤層が、前記成形体の凹凸部以外の部位に貼着している、保護フィルム付き成形体。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−120348(P2010−120348A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298503(P2008−298503)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】