説明

保護フィルム貼付半導体基板の裏面研削方法

【課題】 半導体基板の裏面研削砥石の寿命を低下させない保護フィルム貼付半導体基板の裏面研削方法の提供。
【解決手段】 保護フィルム貼付半導体基板のエッジ部を20〜87度の傾斜角度(θ)で研磨テープFを用いてエッジトリミングした後、この保護フィルム貼付半導体基板をブラシスクラブ水洗浄し、しかる後にカップホイール型砥石を用いて裏面研削加工して半導体基板の厚みを減じる。保護フィルムFのエッジトリミング残滓や裏面研削残滓がカップホイール型砥石刃先に融着することがないので基板wの裏面研削加工に連続して使用するカップホイール型砥石の研削機能は低下しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面にプリント配線が施された半導体基板のプリント配線面に保護フィルムを貼付し、この保護フィルム貼付半導体基板の基板裏面を上方に向け、保護フィルム面を吸着チャックに吸着させてカップホイール型研削砥石を用いて基板裏面を裏面研削加工して厚み20〜100μmまで基板厚みを減じる裏面研削方法において、先ず保護フィルム貼付半導体基板のベベル部およびエッジ部をトリミングして半導体基板のチッピングを防止し、ついでこのエッジトリミングされた保護フィルム貼付半導体基板の基板裏面を上方に向け、保護フィルム面を吸着チャックに吸着させてカップホイール型研削砥石を用いて基板裏面を裏面研削加工して厚み20〜100μmまで基板厚みを減じる裏面研削する際に生じる前記カップホイール型砥石の使用寿命が減じる欠点を改良した保護フィルム貼付半導体基板の裏面研削方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の裏面(シリコン基盤面)を研削する方法において、裏面研削中の基板のチッピング防止のため、あるいは裏面研削された基板の搬送パッドによる搬送途中でのチッピング防止のため、半導体基板の裏面研削加工前の工程もしくは裏面研削と一緒に半導体基板のベベル部およびエッジ部を砥石ローラや研磨テープを用いてトリミングすることが行われている。
【0003】
特開平11−33887号公報(特許文献1)は、半導体基板を保持するチャックテーブルと、前記チャックテーブルに保持された前記半導体基板の片面に押し付けられて、該半導体基板の片面を研削加工する研削用砥石と、前記チャックテーブルに保持された前記半導体基板のエッジに押し付けられて、該半導体基板のエッジを面取り加工する面取り用砥石とを備え、前記研削用砥石による研削加工と、前記面取り用砥石による面取り加工とを同時に行うことが可能な半導体基板の研削装置を提案する。
【0004】
また、特開2003−273053号公報(特許文献2)は、保護フィルムが貼付された半導体基板の裏面を平面研削する平面研削方法であって、前記半導体基板の周縁部を周方向に沿って砥石で切断して前記裏面に対して略垂直な垂直切断面または前記裏面側から表面側にかけて外側に傾斜した傾斜切断面を形成する周縁部切断工程と、前記周縁部が砥石により切断された半導体基板の裏面を前記垂直切断面または前記傾斜切断面を残存させながら平面研削する裏面研削工程、とを含む平面研削方法を提案する。
【0005】
また、特許第4125148号明細書(特許文献3)は、研磨テープを基板の所定の箇処に押圧し、該研磨テープと基板との摺接により基板の研磨を行なう基板処理装置において、研磨テープを弾性部材で支持し前記弾性部材を延ばして張力を発生させ、この張力により一定の力で前記研磨テープの砥粒バインダー塗工層を基板のベベル部に押圧して該ベベル部を研磨するベベル部研磨部と、前記基板の研磨中に、基板の被研磨面に摺接して研磨を行なう研磨テープに加わるテンションまたは基板の被研磨面に研磨テープを押圧する機構部に加わるテンションを計測し被研磨面の研磨状態を判断する制御部とを備えた基板処理装置を提案する。
【0006】
さらに、本願特許出願人は、特開2010−23119号公報(特許文献4)において、基板収納ステージを室外に、多関節型搬送ロボット、位置合わせ機能付エッジ面取りテープ研磨機器、研削加工ステージ、一対の天井吊り下げ型移動型搬送パッド、研磨加工ステージ、基板薬剤洗浄ステージおよびを室内に備える基板用平坦化装置において、 該平坦化装置の正面側から背面側に向かって、室外の右側に基板収納ステージを設け、 室内においては、室内の前列目に前記基板収納ステージ近傍の右側位置に多関節型搬送ロボットを、その多関節型搬送ロボットの左側の中央位置に研磨ステージを、その研磨ステージの左側の左側位置に基板薬剤洗浄ステージを設け、および前記多関節型搬送ロボットと研磨ステージの間に第一の乾燥空気吹きつけ機器を設け、前記多関節型搬送ロボットの後列右側に位置合わせ機能付エッジ面取りテープ研磨機器を、および前記多関節型搬送ロボットの後列中央側に時計廻り方向に基板ローディング/基板アンローディングステージ、粗研削ステージ、および、仕上げ研削ステージの3つのステージを構成する3台の基板ホルダーテーブルを第1インデックス型回転テーブルに同心円上に配置した研削加工ステージを設けるとともに、前記関節型搬送ロボットおよび基板ローディング/基板アンローディングステージを挟む位置に天井吊り下げ型基板搬送パッドの一対を設け、かつ、前記基板薬剤洗浄ステージの後列であって前記研磨ステージの左側位置に第三の基板搬送パッドと第二の乾燥空気吹きつけ機器を並設させ、 前記基板ローディング/基板アンローディングステージを構成する基板ホルダーテーブル上方に、基板ホルダーテーブル上面を洗浄する回転式チャッククリーナおよび仕上げ研削加工された基板面を洗浄する回転式洗浄ブラシ一対を備える洗浄機器を基板ホルダーテーブル上面に対し垂直方向および平行方向に移動可能に設け、 前記粗研削ステージを構成する基板ホルダーテーブル上方に粗研削カップホイール型ダイヤモンド砥石を備えるスピンドルを基板ホルダーテーブル上面に対し昇降可能に設け、および、前記仕上げ研削ステージを構成する基板ホルダーテーブル上方に仕上研削カップホイール型ダイヤモンド砥石を備えるスピンドルを基板ホルダーテーブル上面に対し昇降可能に設け、 前記基板ホルダーテーブルと多関節型搬送ロボットと一対の天井吊り下げ型基板搬送パッドと回転式チャッククリーナおよび回転式洗浄ブラシを備える洗浄機器とで基板ローディング/基板アンローディングステージを構成し、前記基板ホルダーテーブルと前記粗研削カップホイール型ダイヤモンド砥石と2点式インプロセスゲージとで粗研削ステージを構成し、前記基板ホルダーテーブルと前記仕上げ研削カップホイール型ダイヤモンド砥石と非接触型基板厚み測定機器とで仕上研削ステージを構成し、 前記研磨ステージは、基板ローディング/基板アンローディング/仕上げ研磨ステージを構成する基板ホルダーテーブルと、粗研磨ステージを構成する基板ホルダーテールを第2インデックス型回転テーブルに同心円上に配置した研磨加工ステージとして設け、 前記仕上げ研磨ステージを構成する基板ホルダーテーブル上方に、洗浄液供給機構および研磨パッドを回転可能に軸承するスピンドルを前記基板ホルダーテーブル上面に対し昇降可能および平行に揺動可能に設け、この基板ホルダーテーブルと研磨パッドと洗浄液供給機構と前記移動型搬送パッドと多関節型搬送ロボットまたは別の搬送パッドまたは多関節型搬送ロボットとで基板ローディング/基板アンローディング/仕上げ研磨ステージを構成し、 前記粗研磨ステージを構成する基板ホルダーテーブル上方に、研磨剤スラリー液供給機構および研磨パッドを回転可能に軸承するスピンドルを前記基板ホルダーテーブルと研磨パッドとで基板粗研磨ステージを構成する半導体基板の平坦化加工装置を提案する。
【0007】
この半導体基板用平坦化加工装置を用い、以下の工程を経て半導体基板裏面の平坦化を行う方法も提案する。1)基板収納ステージの収納カセット内に保管されている半導体基板を多関節型搬送ロボットの吸着パッドに吸着し、位置合わせ機能付エッジ面取りテープ研磨機器のチャックテーブル上に搬送し、そこで半導体基板のセンタリング位置調整およびエッジ研磨加工を行う。前記多関節型搬送ロボットのアームは、待機位置へ戻る。 2)位置合わせされた半導体基板のシリコン基盤上面を第一天井吊り下げ型搬送パッドに吸着させ、ついで、第1インデックス型回転テーブルに設けられた基板ローディング/基板アンローディングステージを構成する基板ホルダーテーブル上へと移送する。 3)第1インデックス型回転テーブルを回転させることにより、基板ローディング/基板アンローディングステージ位置の基板ホルダーテーブルに真空チャックされている半導体基板を粗研削ステージの基板ホルダーテーブル位置へと移送する。 4)粗研削ステージで砥番170〜330のカップホイール型ダイヤモンドレジンボンド砥石を用いて半導体基板のシリコン基盤面を粗研削する。この間に、多関節型搬送ロボットと第一天井吊り下げ型搬送パッドと位置合わせ機能付エッジ面取りテープ研磨機器を用い前記第1工程と第2工程を行い、新たな半導体基板が基板ローディング/基板アンローディングステージ上に搬送される。 5)第1インデックス型回転テーブルを回転させることにより、粗研削された基板を仕上げ研削ステージの基板ホルダーテーブル位置へと移送するとともに基板ローディング/基板アンローディングステージ位置の基板ホルダーテーブル上の半導体基板を粗研削ステージへと移送する。 6)仕上げ研削ステージで砥番1,800〜8,000のカップホイール型ダイヤモンドレジンボンド砥石またはカップホイール型ダイヤモンドビトリファイドボンド砥石を用いて粗研削加工された半導体基板のシリコン基盤面を仕上げ研削する。この間に、粗研削ステージでは砥番170〜330のカップホイール型ダイヤモンドレジンボンド砥石を用いて半導体基板のシリコン基盤面が粗研削されるとともに、多関節型搬送ロボットと第一天井吊り下げ型搬送パッドと位置合わせ機能付エッジ面取りテープ研磨機器を用い前記第1工程と第2工程を行うことにより新たな半導体基板が基板ローディング/基板アンローディングステージ位置の基板ホルダーテーブル上に搬送される。 7)第1インデックス型回転テーブルを回転させることにより、仕上げ研削された半導体基板を基板ローディング/基板アンローディングステージの基板ホルダーテーブル位置へと移送するとともに粗研削された半導体基板を仕上げ研削ステージへと移送する。 8)第1インデックス型回転テーブルの基板ローディング/基板アンローディングステージ位置にある基板ホルダーテーブル上の仕上げ研削された半導体基板のシリコン基盤面に回転洗浄ブラシを下降させ、洗浄液をシリコン基盤面に供給しながらシリコン基盤面を洗浄し、次いで第二天井吊り下げ型搬送パッドの吸着パッド面に研削・洗浄された半導体基板のシリコン基盤面を吸着したのち、第二天井吊り下げ型搬送パッドを第一の乾燥空気吹きつけ機器上を通過させて半導体基板面を空気洗浄させ、しかる後に第2インデックス型回転テーブルに設けられた基板ローディング/アンローディング/仕上げ研磨ステージに位置する基板ホルダーテーブル上へと移送する。この半導体基板の移送の間に第1インデックス型回転テーブルの基板ローディング/基板アンローディングステージ位置にある基板ホルダーテーブル上面は回転式セラミック製チャッククリーナにより洗浄される。その後、多関節型搬送ロボットと第一天井吊り下げ型搬送パッドと位置合わせ機能付エッジ面取りテープ研磨機器を用い前記第1工程と第2工程を行うことにより新たな半導体基板が第1インデックス型回転テーブルの基板ローディング/基板アンローディングステージ位置の基板ホルダーテーブル上に搬送される。また、この間に、第1インデックス型回転テーブルの粗研削ステージに位置する基板ホルダーテーブル上の半導体基板には、前述の第4工程の粗研削加工が行われるとともに、第1インデックス型回転テーブルの仕上げ研削ステージに位置する基板ホルダーテーブル上の基板には前述の第6工程の仕上げ研削加工が行われる。 9)第2インデックス型回転テーブルに設けられた粗研磨ステージに位置する基板ホルダーテーブル上に保持された基板上面に回転する粗研磨パッドが下降され、基板面を摺擦する。この基板と粗研磨パッド摺擦の際、研磨砥粒を水に分散させた研磨剤スラリー液が研磨剤スラリー液供給機構から直接基板上面にまたは粗研磨パッドを経由して半導体基板のシリコン基盤面に供給されるとともに粗研磨パッドは該シリコン基盤面上で前後に摺擦揺動される。同時平行して前述の第8工程が実行される。 10)第2インデックス型回転テーブルは時計回り方向または逆時計回り方向に180度回転され、粗研磨加工された半導体基板は第2インデックス型回転テーブルの基板ローディング/基板アンローディング/仕上げ研磨ステージ位置へと移動される。同時平行して第1インデックス型回転テーブルを回転させることにより、仕上げ研削された半導体基板を基板ローディング/基板アンローディングステージ上へと移送、粗研削された半導体基板を仕上げ研削ステージへと移送する。 11)第2インデックス型回転テーブルの基板ローディング/基板アンローディング/仕上げ研磨ステージでは、基板ホルダーテーブル上に保持された粗研磨加工基板上面に仕上げ研磨パッドが回転しつつ下降され、半導体基板のシリコン基盤面を摺擦する。このシリコン基盤と仕上げ研磨パッドを摺擦する際、研磨砥粒を含有しない洗浄液が洗浄液供給機構から直接半導体基板のシリコン基盤面にまたは仕上げ研磨パッドの研磨布またはウレタン発泡製シートパッドを経由して半導体基板のシリコン基盤面に供給されるとともに仕上げ研磨パッドは前後に摺擦揺動される。一方、同時平行して第2インデックス型回転テーブルの粗研磨ステージおよび第1インデックス型回転テーブルの基板ローディング/基板アンローディングステージ、粗研削ステージおよび仕上げ研削ステージでは、前述の第9工程が実行される。 12)仕上げ研磨加工された半導体基板は、第三の基板搬送パッドにより把持され、ついで薬剤洗浄機器のチャックテーブル上へ移送される。ついで、チャックテーブル上の半導体基板のシリコン基盤面を薬剤洗浄、リンス洗浄した後、第三の基板搬送パッドにより再び把持され、第二の乾燥空気吹きつけ機器上を通過させて半導体基板を空気洗浄したのち、次工程の加工ステージへと移送される。一方、前記第1インデックス型回転テーブルの各ステージおよび第2インデックス型回転テーブルの各ステージでは、前述の第10工程が実行される。 13)以後、前述の第11工程および第12工程を繰り返し、半導体基板のシリコン基盤面を研削・洗浄・研磨・洗浄する半導体基板の薄肉化・平坦化作業を連続的に行う。
【0008】
また、特開2005−305586号公報(特許文献5)は、テープ体Tを被研磨体Wに接触させるための研磨ヘッド5と、該研磨ヘッド5に移動可能に設けられ、テープ体Tを被研磨体Wに押し付けるためのパッド手段と、テープ体Tと被研磨体Wとの接触部分の方向にそって、研磨ヘッド5に連結された回転軸と、研磨ヘッド5を、回転軸の軸線を中心に回転させるため、および研磨ヘッド5をその軸線にそって往復移動させるための回転および往復移動手段と、被研磨体Wを支持したまま、被研磨体Wの面に対して垂直方向に往復移動するための移動手段とを含む。被研磨体Wの面を研磨するときは、パッドにより突き出たテープ体Tが被研磨体Wの面と接するように、回転および往復移動手段により、研磨ヘッド5を回転させるとともに、移動手段により、被研磨体Wを移動させるウエハのベベル部用研磨装置を開示する。
【0009】
一方、研削または研磨加工された半導体基板をスピナー上に載置し、半導体基板の表裏面に純水供給ノズルより洗浄水を供給しつつ、半導体基板の表裏面の一方または表裏面をブラシスクラブ洗浄する水洗洗浄装置は、特開平10−163144号公報(特許文献6)、特開2000−208461号公報(特許文献7)、特開2000−260740号公報(特許文献8)、特開2003−100684号公報(特許文献9)および特開2003−142444号公報(特許文献10)で提案されるように公知の技術であり、実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−33887号公報
【特許文献2】特開2003−273053号公報
【特許文献3】特許第4125148号明細書の図7
【特許文献4】特開2010−23119号公報
【特許文献5】特開2005−305586号公報
【特許文献6】特開平10−163144号公報の図1
【特許文献7】特開2000−208461号公報の図2
【特許文献8】特開2000−260740号公報の図3
【特許文献9】特開2003−100684号公報の図2
【特許文献10】特開2003−100684号公報の図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
半導体基板のシリコン基盤厚み720〜770μmを厚み20〜100μmにまで減らす半導体基板の裏面研削加工において、裏面研削加工された半導体基板の割れやチッピングを防止するため、半導体基板のプリント配線面に光硬化性アクリル系樹脂粘着剤や熱分解型発泡樹脂粘着剤をフィルムに塗布した保護フィルムを貼付し、エッジトリミングおよび裏面研削加工が行われる。
【0012】
本願特許出願人が上記特許文献4記載の半導体基板の平坦化加工装置を半導体基板製造メーカーに供給したところ、半導体基板製造メーカーから「保護フィルムを貼付しない半導体基板のシリコン基盤の厚みを減らす裏面研削加工においては、2200枚程度の半導体基板を裏面研削してから新しいカップホイール型研削砥石に交換していたが、このたびの新しい平坦化加工装置では500枚程度の半導体基板を裏面研削してから新しいカップホイール型研削砥石に交換する羽目に陥っている。カップホイール型研削砥石の交換寿命が短くなったのは、カップホイール型研削砥石がこの平坦化加工装置に適合していないのでないか。新しい砥石を開発せよ。」との苦情が寄せられた。
【0013】
本願発明者らが、テープ研磨トリミング条件、裏面研削加工条件を追試し、および裏面研磨加工後、交換に至るカップホイール型研削砥石の砥石刃先を分析したところ、テープ研磨トリミングされた半導体基板の断面は、図4の(a)に示されるように半導体基板のエッジ部と保護フィルム端間に隙間があること、テープ研磨トリミング後の半導体基板の裏面研削加工時にカップホイール型研削砥石が保護フィルム端も研削加工し、フィルム残滓および粘着剤残滓がカップホイール型研削砥石の刃先に接着し、その接着が積もり重なってカップホイール型研削砥石が半導体基板裏面を研削加工する際に刃先がシリコン基盤面を滑り易くなり研削機能が低下することに起因すると発明者らは結論づけた。
【0014】
前記特許文献1記載の半導体基板の研削装置では、裏面研削加工とエッジトリミングが同時に行われるため、カップホイール型研削砥石の刃先に保護フィルムの残滓が接着することが予測される。
【0015】
前記特許文献2記載の半導体基板の砥石を用いる半導体基板のエッジ垂直またはエッジ傾斜トリミングする研削方法においては、エッジトリミングされた半導体基板と保護フィルム間に隙間が生じない利点があるが、エッジトリミングに用いた砥石に保護フィルム残滓が付着し、この砥石の交換寿命が短くなる欠点がある。
【0016】
前記特許文献3および特許文献5記載の研磨テープを利用する基板のベベル部トリミング方法は、保護フィルム残滓が基板と研磨テープの砥粒バインダー塗工層との摩擦熱で保護フィルム残滓が溶け研磨テープに付着して取り除かれ、この使用済み研磨テープは再使用されずに廃棄されるので半導体基板の裏面研削加工ステージに保護フィルム残滓が混入することがない利点がある。しかし、半導体基板のベベル部がトリミングされるので、次工程の裏面研削加工ステージで裏面研削加工された半導体基板のエッジ部が傾斜し尖った薄い厚みのシリコン基盤エッジ構造となり薄肉のシリコン基盤にチッピング発生の危惧が残る。
【0017】
本願発明者らは、研磨テープ利用の保護フィルム残滓が次工程の裏面研削加工工程に影響を及ぼさない利点を活かし、研磨テープ利用の半導体基板のエッジ傾斜トリミングを行って半導体基板エッジ部と保護フィルム端間に隙間がない保護フィルム貼付半導体基板構造となし、このエッジトリミングされた保護フィルム貼付半導体基板を洗浄して保護フィルム残滓が次工程の裏面研削加工工程に混入する危惧を払拭し、ついで、半導体基板の裏面研削加工を行う方法に想到した。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明は、次の工程を経て保護フィルム貼付半導体基板の裏面研削加工を行う方法を提供するものである。
1)基板表面にプリント配線が施された半導体基板のプリント配線面に保護フィルムを貼付し、この保護フィルム貼付半導体基板の基板裏面を上方に向け、保護フィルム面を吸着チャックに吸着させる。
2)次いで、研磨テープ利用のエッジトリミング装置より繰り出され走行する研磨テープのフィルム基材面(背面)に断面凹形状のエンジニアリングプラスチック製背当てを前進させて研磨テープの砥粒バインダー塗工層を回転している吸着チャック上の保護フィルム貼付半導体基板のエッジ部に傾斜して押し当てて研磨テープによる基板エッジトリミング加工を開始し、前記断面凹形状のエンジニアリングプラスチック製背当ての前進と研磨テープの繰り出しを続けて保護フィルム貼付半導体基板のエッジ部を垂直面に対して傾斜が20〜87度の角度で除去し半導体基板と保護フィルム間に隙間が生じない保護フィルム貼付半導体基板構造とする。
3)次いで、このトリミング加工された吸着チャック上のエッジトリミング加工された保護フィルム貼付半導体基板を搬送吸着パッドにより吸着し、水洗洗浄装置のスピナー上に搬送し、そこで前記保護フィルム貼付半導体基板をブラシスクラブ水洗浄する。
4)基板搬送装置を用いて水洗洗浄装置のスピナー上でブラシスクラブ水洗浄された保護フィルム貼付半導体基板を裏面研削装置のバキュームチャック上にこの保護フィルム貼付半導体基板の基板裏面を上方に向け、保護フィルム面をバキュームチャックに吸着させる。
5)回転駆動するバキュームチャックに固定されている上記保護フィルム貼付半導体基板の基板裏面面に回転駆動するカップホイール型研削砥石の刃先を当接・摺擦させて裏面研削加工を行い、前記半導体基板の基板裏面の厚みを減ずる裏面研削加工を行う。
【発明の効果】
【0019】
保護フィルム貼付半導体基板のエッジ部を傾斜角度(θ)が20〜87度に研磨テープを利用してトリミング加工し、保護フィルムと半導体基板間の隙間が無い保護フィルム貼付半導体基板構造とし、ついで、ブラシスクラブ水洗浄した後に保護フィルム貼付半導体基板を裏面研削加工するので保護フィルム残滓がカップホイール型研削砥石の刃先に付着する危惧が解消されるので、新しいカップホイール型砥石に交換するまでのカップホイール型砥石の使用期間(寿命)が減ることはない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は保護フィルム貼付半導体基板のエッジトリミング・水洗浄装置の平面図を示す。
【図2】図2は保護フィルム貼付半導体基板の研磨テープによるエッジトリミング加工状態を示す一部を切り欠いた正面図を示す。
【図3】図3はエッジトリミングされた保護フィルム貼付半導体基板の一部を切り欠いた断面図で、図3aは従来技術のトリミング方法で得られた保護フィルム貼付半導体基板の部分断面図(公知)、図3bは本願発明の研磨テープトリミング方法で得られた保護フィルム貼付半導体基板の部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1、図2および図3を用いて保護フィルム貼付半導体基板のエッジトリミング工程およびブラシスクラブ水洗浄工程を説明する。
【0022】
図1に示す保護フィルム貼付半導体基板のエッジトリミング・水洗洗浄装置10は、
保護フィルム貼付半導体基板の収納カセット1,1、
前記収納カセット1,1内の保護フィルム貼付半導体基板wをエッジトリミング装置3の吸着チャック3a上へ搬送する、および、水洗洗浄装置5のスピナー5a上の水洗洗浄された保護フィルム貼付半導体基板を収納カセット1内へ搬入する若しくは裏面研削装置のバキュームチャック上へ搬送する多関節型基板搬送装置2、
回転駆動可能な吸着チャック3a、研磨テープ送り出し機構3b、断面凹形状のエンジニアリングプラスチック製背当て3cの前後駆動機構(エアーシリンダ利用)3dおよび傾斜機構(背当ての固定板の回転部が取り付けられた回転軸3rとこの回転軸の軸線に対し垂直に取り付けられた2枚の回転板3f,3gとこの両回転板間に接して設けられたカム3hと駆動モータ3mと駆動モータ3mのシャフト3iと前記回転軸3rと間に張り巡されたベルト3vを具備する)3、研磨テープ巻き取り回収機構3z、並びに、前記背当て3cを回動可能に取り付けたコラム3kをボールネジとサーボモーター3mの駆動機構でレール3y上を吸着チャック3aに対し前後方向に移動させる前後駆動機構、を備えるエッジトリミング装置3、
上記吸着チャック3a上のエッジトリミング加工された保護フィルム貼付半導体基板を吸着パッド4のパッド面に吸着し、ブラシスクラブ水洗浄装置5のスピナー5a上へと搬送する吸着パッド4、
および、
スピナー5a、スピナー上の保護フィルム貼付半導体基板の表面に純水を供給する供給ノズルおよび保護フィルム貼付半導体基板の裏面に純水を供給する供給ノズル、スピナー回転機構、並びに、スピナー5a上の保護フィルム貼付半導体基板の表面に回動して当接・摺擦するブラシ5d、必要により更に保護フィルム貼付半導体基板の表面に回動して当接・摺擦するブラシを備えるブラシスクラブ水洗浄装置5、
を具備する。
【0023】
このブラシスクラブ水洗浄装置5の構造は、既に基板のブラシスクラブ水洗浄装置技術を示す先行特許文献として挙げた特許文献6、特許文献8、または特許文献9に記載されている。なお、ブラシは不連続気泡構造のポリビニールアルコール発泡体を素材とするブラシが親水性に優れ、水保持率に優れるので好ましい。
【0024】
前記保護フィルムFの基材フィルム素材は、直鎖線状低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等が使用されており、そのフィルム厚みは20〜200μmが一般である。前記保護フィルムFは、古河電工株式会社、リンテック株式会社、積水化学工業株式会社、三井化学株式会社、日立化成株式会社、東亞合成株式会社、東レ株式会社などから入手できる。
【0025】
前記保護フィルムFは半導体基板wのプリント配線面に保護フィルムF外周縁Fgが1〜3mm幅半導体基板の外周縁よりはみ出る寸法で貼付される。よって、保護フィルム貼付半導体基板の研磨テープによるエッジトリミング加工の際、エッジトリミング加工された保護フィルム貼付半導体基板の断面において図3bに示すように保護フィルムFと半導体基板w間に隙間が生じないよう、および半導体基板の外周縁から外み出す保護フィルムFgが存在しないよう20〜87度の傾斜角度(θ)でトリミング加工する必要が生じる。この傾斜角度(θ)は半導体基板の直径に依存する。直径が300,,または450mmの半導体基板では、傾斜角度(θ)は85〜87度、直径が200mmの半導体基板では、傾斜角度(θ)は82〜85度、直径が4〜6インチのサファイヤを基盤とする半導体基板では傾斜角度(θ)は20〜30度が最適である。
【0026】
前記研磨テープ利用エッジトリミング装置3は、特許文献5図7、図8記載の断面凹状研磨バー30を特許文献5図6および図8記載の貼合ウエハのトップウエハエッジトリミング装置の揺動バー30を本発明では剛性および耐熱性の高いエンジニアプラスチック、例えばポリアセタール、ポリエーテル・エーテルケトン樹脂(PEEK)、ナイロン6,12などを素材とした断面凹形状のエンジニアリングプラスチック製背当て3cとし、この背当て3cを特許文献3と同じく前後移動可能および特許文献5と同じく傾斜揺動できるように改造したものである。
【0027】
1)収納カセット2内に収納されたシリコン基盤w表面にプリント配線が施された半導体基板wのプリント配線面に保護フィルムFを貼付した保護フィルム貼付半導体基板は、多関節型搬送ロボット装置2に把持または吸着され、前記保護フィルム貼付半導体基板のシリコン基盤w面を上方に向け、保護フィルムF面を吸着チャック3a面に向けて移送し、そこで吸着チャック3aにバキューム吸着させ固定する。
【0028】
2)次いで、研磨テープ利用のエッジトリミング装置3より繰り出され走行する研磨テープTの基材フィルム背面Tに断面凹形状のエンジニアリングプラスチック製背当て3cを傾斜機構3eで傾斜させ、ついで前後駆動機構3dにより前進させて研磨テープの砥粒バインダー塗工層面Tを回転している吸着チャック3a上の保護フィルム貼付半導体基板のエッジ部に傾斜して押し当てつつ研磨テープとエッジが摺擦する研磨加工作業面に冷却水を供給し続けて研磨テープによる基板エッジトリミング加工を開始し、前記断面凹形状のエンジニアリングプラスチック製背当て3cの前進と研磨テープの繰り出しを続けて保護フィルム貼付半導体基板のエッジ部を傾斜角度(θ)が20〜87の角度となるよう除去し半導体基板と保護フィルム間に隙間が生じない保護フィルム貼付半導体基板構造とする(図2および図4b参照)。このエッジトリミングの際の吸着チャック3aの回転数は、1,800〜5,000min−1が好ましい。
【0029】
研磨テープTとしては、日本ミクロコーティング株式会社が市販している厚みが100〜150μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材(T)表面に砥番#4,000〜#10,000の炭化珪素砥粒および/または砥番#4,000〜#12,000のダイヤモンド砥粒の分散した砥粒バインダー塗工剤を5〜10μmの厚みで塗布し、乾燥して砥粒バインダー塗工層(T)を設けた研磨テープが好ましい。
【0030】
3)次いで、このトリミング加工された吸着チャック3c上のエッジトリミング加工された保護フィルム貼付半導体基板を搬送吸着パッド4により吸着し、水洗洗浄装置5のスピナー5a上に搬送し、そこでスピナー5aを5,000〜20,000min−1の回転数で回転させながら前記保護フィルム貼付半導体基板の表裏に純水供給ノズルより純水を供給しつつ、ブラシを保護フィルム貼付半導体基板の表裏に回動当接させ、摺擦するブラシスクラブ水洗浄を行う。
【0031】
4)基板搬送ロボット装置2を用いて水洗洗浄装置のスピナー5a上で水洗洗浄された保護フィルム貼付半導体基板を裏面研削装置(図示しない)のバキュームチャック上にこの保護フィルム貼付半導体基板のシリコン基盤面を上方に向け、保護フィルム面をバキュームチャックに吸着させる。
【0032】
5)回転駆動するバキュームチャックに固定されている上記保護フィルム貼付半導体基板のシリコン基盤面に回転駆動するカップホイール型研削砥石の刃先を当接・摺擦させて裏面研削加工を行い、前記半導体基板のシリコン基盤面の厚みを500〜700μm減ずる裏面研削加工を行う。
【0033】
上記は、図1に示すエッジトリミング・水洗浄装置を特許文献4記載の半導体基板平坦化加工装置にインライン化して用いる加工工程を記述したが、図1に示すエッジトリミング・水洗洗浄装置を半導体基板平坦化加工装置とは独立して単独で用いる場合は、上記4)工程は、4)基板搬送ロボット装置2を用いて水洗洗浄装置のスピナー5a上で水洗洗浄された保護フィルム貼付半導体基板を把持し、基板収納カセット2内へ搬送すると書き直される。
【0034】
また、背当て3cの前後移動機構3dとしてエアーシリンダー3dを例示したが、ボールネジ、サーボモーターm駆動によるコラム3kを前後移動する機構も背当て3cの前後移動機構に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の保護フィルム貼付半導体基板の裏面研削方法は、保護フィルムのエッジング残滓が半導体基板に付着することもなく、また、半導体基板の裏面研削加工においてカップホイール型研削砥石の刃先に保護フィルムが融着することも無いので、カップホイール型研削砥石の交換時期(寿命)が従来の裏面研削装置のカップホイール型研削砥石の交換時期(寿命)より短くなることもない。
【符号の説明】
【0036】
1 収納カセット
2 多関節型基板搬送ロボット装置
3 エッジトリミング装置
3a 吸着チャック
3c エンジニアリングプラスチック製背当て
4 吸着パッド
5 ブラシスクラブ水洗浄装置
5a スピナー
w 半導体基板
シリコン基盤
F 保護フィルム
T 研磨テープ
砥粒バインダー塗工層
フィルム基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を経て保護フィルム貼付半導体基板の裏面研削加工を行う方法。
1)基板表面にプリント配線が施された半導体基板のプリント配線面に保護フィルムを貼付し、この保護フィルム貼付半導体基板の基板裏面を上方に向け、保護フィルム面を吸着チャックに吸着させる。
2)次いで、研磨テープ利用のエッジトリミング装置より繰り出され走行する研磨テープのフィルム基材面に断面凹形状のエンジニアリングプラスチック製背当てを前進させて研磨テープの砥粒バインダー塗工層を回転している吸着チャック上の保護フィルム貼付半導体基板のエッジ部に傾斜して押し当てて研磨テープによる基板エッジトリミング加工を開始し、前記断面凹形状のエンジニアリングプラスチック製背当ての前進と研磨テープの繰り出しを続けて保護フィルム貼付半導体基板のエッジ部を傾斜が20〜87度の角度(θ)で除去し半導体基板と保護フィルム間に隙間が生じない保護フィルム貼付半導体基板構造とする。
3)次いで、このトリミング加工された吸着チャック上のエッジトリミング加工された保護フィルム貼付半導体基板を搬送吸着パッドにより吸着し、水洗洗浄装置のスピナー上に搬送し、そこで前記保護フィルム貼付半導体基板をブラシスクラブ水洗浄する。
4)基板搬送装置を用いて水洗洗浄装置のスピナー上でブラシスクラブ水洗浄された保護フィルム貼付半導体基板を裏面研削装置のバキュームチャック上にこの保護フィルム貼付半導体基板の基板裏面を上方に向け、保護フィルム面をバキュームチャックに吸着させる。
5)回転駆動するバキュームチャックに固定されている上記保護フィルム貼付半導体基板の基板裏面に回転駆動するカップホイール型研削砥石の刃先を当接・摺擦させて裏面研削加工を行い、前記半導体基板の基板の厚みを減ずる裏面研削加工を行う。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−74545(P2012−74545A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218295(P2010−218295)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(391011102)株式会社岡本工作機械製作所 (161)
【Fターム(参考)】