説明

保護層転写シート用フィルム、および、これを用いた保護層転写シート

【課題】本発明は、基材と剥離層との剥離性に優れ、かつ、低コストで製造可能な保護層転写シート、および、これに用いられる保護層転写シート用フィルムを提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、基材と、上記基材上に形成され、イソシアネート化合物および水酸基含有樹脂を含有する耐熱滑性層と、上記基材の上記耐熱滑性層が形成された面とは反対面上に形成され、透明樹脂材料を含有する剥離層と、を有する保護層転写シート用フィルムであって、上記透明樹脂材料が活性水素を有する官能基を実質的に有さないことを特徴とする保護層転写シート用フィルムを提供することにより上記課題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇華型熱転写方式により印画された画像を保護する保護層を形成するために用いられる保護層転写シート、および、これに用いられる保護層転写シート用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カラーまたはモノクロ画像形成技術の一つとして、感熱転写方式による画像形成方法が知られており、簡易的に高画質な画像を得ることができる手段として広く用いられるに至っている。感熱転写方式とは、特定の熱物性を示す染料を有する熱転写シートをサーマルヘッドやレーザー等の加熱印字手段を用いて、熱転写シートから熱転写受像シートへ転写することにより画像形成する方法である。このような感熱転写方式は、装置の小型化が可能で低コストであるという利点を有するものである。
【0003】
一般的に感熱転写方式は、熱転写シートから熱転写受像シートへの染料の転写機構によって熱溶融転写方式と、熱拡散転写方式(昇華型熱転写方式)との2種類に大別される。熱溶融転写方式とは、熱溶融性染料を有する熱転写シートを用い、加熱処理により当該熱溶融性染料を溶融転写機構により熱転写受像シートへ転写することによって画像形成する方式である。一方、熱拡散転写方式(昇華型熱転写方式)とは、熱拡散性染料(昇華性染料)を有する熱転写シートを用い、加熱処理により当該熱拡散性染料(昇華性染料)を熱拡散転写機構(昇華転写機構)により、熱転写受像シートへ転写することによって画像形成する方式である。後者の熱拡散転写方式(昇華型熱転写方式)は、熱転写シートの加熱の程度を制御することにより、熱転写受像シートへの熱拡散性染料の転写量を任意に調整することができることから、中間色の再現性に優れた高階調の画像を形成することが可能であり、フルカラーの画像形成に有利であるといった特徴を有している。このような利点から、熱拡散転写方式の感熱転写技術は、営業写真、パーソナルコンピューター用プリンター、およびビデオプリンター等に広く用いられている。
【0004】
また、上記昇華型熱転写方式により印刷された画像の表面には、画像の耐久性を向上し、長期保存を可能とすることを目的として、通常、保護層が形成されることとなる。このような保護層は、基材上に剥離層が形成された保護層転写シートを用い、受像シートに画像を印画した後、その受像シートの印画領域全面に、上記剥離層を熱転写することによって形成されるものである。
【0005】
ここで、図3に例示するように上記保護層転写シート100の一般的な構成としては、基材101上に形成された剥離層102と、上記剥離層102上に形成され、剥離層102を熱転写受像シート上に熱融着させるヒートシール層103とを有し、さらに上記基材101の上記剥離層102が形成された面とは反対面上に形成され、上記剥離層102を熱転写受像シート上に熱転写する際に、上記基材101に熱損傷が生じること等を防止する耐熱滑性層104とを有するものが知られている。このような構成を有する保護層転写シートとしては、上記耐熱滑性層にイソシアネート化合物を含有させ、かつ、上記剥離層にアクリル系樹脂を用いたものが一般的であり、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0006】
ところで、上記構成を有する保護層転写用シートは、通常、Roll to Rollプロセスにより、長尺の基材上に耐熱滑性層を形成して、一旦ロール状に巻き取った後、次に、当該ロールから基材を巻き出しながら、上記基材上に剥離層およびヒートシール層を積層することにより製造されるものである。このような製造方法によれば、高生産性で保護層転写シートを連続的に製造することが可能だからである。
しかしながら、このような方法で上記構成を有する保護層転写シートを形成した場合、上記剥離層と上記基材との剥離性が損なわれてしまうという問題点があり、工業的生産工程においてこのような方法を用いるのは望ましくないということが指摘されている。
【0007】
このような問題点に対し、特許文献3には、上記基材と上記剥離層との間に離型層を形成し、上記剥離性の問題点を改善する方法が開示されている。このような方法によれば、上記剥離性の問題点を改善でき、高生産性で保護層転写シートを製造できるという利点を有する。しかしながら、このような方法では離型層という新しい層を追加する必要があるため、製造コストが増大したり、また、品質の設計が困難となるという新たな問題がある。
このようなことから、従来、上記基材と上記剥離層との剥離性に優れた保護層転写シートを低コストで製造することは困難であった。
【0008】
【特許文献1】特開平4−35988号公報
【特許文献2】特開平4−142988号公報
【特許文献3】特開平11−277899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、基材と剥離層との剥離性に優れ、かつ、低コストで製造可能な保護層転写シート、および、これに用いられる保護層転写シート用フィルムを提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、基材と、上記基材上に形成され、イソシアネート化合物および水酸基含有樹脂を含有する耐熱滑性層と、上記基材の上記耐熱滑性層が形成された面とは反対面上に形成され、透明樹脂材料を含有する剥離層と、を有する保護層転写シート用フィルムであって、上記透明樹脂材料が活性水素を有する官能基を実質的に有さないことを特徴とする保護層転写シート用フィルムを提供する。
【0011】
本発明によれば、上記剥離層に含有される透明樹脂材料として、上記イソシアネート化合物に対して反応性を示す活性水素を有する官能基を実質的に有さないものを用いることにより、例えば、本発明の保護層転写シート用フィルムをRoll to Rollプロセスにより製造する場合であっても、上記基材と上記剥離層との剥離性が損なわれることを防止できる。
また本発明によれば、上記透明樹脂材料として、上記イソシアネート化合物に対して反応性を示す活性水素を有する官能基を実質的に有さないものを用いることにより、従来のように離型層等の新しい構成を追加することなく、上記基材と上記剥離層との剥離性に優れた保護層転写シート用フィルムを得ることができる。
このようなことから、本発明の保護層転写シート用フィルムによれば、基材と剥離層との剥離性に優れ、かつ、低コストで製造可能な保護層転写シートを得ることができる。
【0012】
本発明においては、上記透明樹脂材料が、Tgが90℃以上である第1の透明樹脂を含有することが好ましい。このような第1の透明樹脂が含有されていることにより、本発明の保護層転写シート用フィルムを用いて、基材と剥離層との剥離性がさらに優れた保護層転写シートを得ることが可能になるからである。
【0013】
また本発明においては、上記透明樹脂材料が、上記第1の透明樹脂と、Tgが40℃〜80℃の範囲内である第2の透明樹脂とを含有することが好ましい。これにより、本発明の保護層転写シート用フィルムを用いて作成される保護層転写シートを、熱転写時においては上記基材と上記剥離層との剥離性に優れ、かつ、常温においては上記基材と上記剥離層との密着性に優れたものにできるからである。
【0014】
さらに本発明においては、上記透明樹脂材料中の上記第1の透明樹脂の含有量が60質量%以上であることが好ましい。これにより上記剥離層が熱転写受像シート上に転写されることによって形成される保護層を、耐可塑剤性に優れたものにできるからである。
【0015】
さらにまた、本発明においては、上記第1の透明樹脂がポリメタクリル酸メチル(PMMA)であることが好ましい。ポリメタクリル酸メチル(PMMA)は耐可塑剤性に優れるため、このようなポリメタクリル酸メチルが用いられていることにより、上記剥離層が熱転写受像シート上に転写されることによって形成される保護層を、さらに耐可塑剤性に優れたものにできるからである。
【0016】
また上記課題を解決するために、本発明は、上記本発明に係る保護層転写シート用フィルムと、上記剥離層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層と、を有することを特徴とする、保護層転写シートを提供する。
【0017】
本発明によれば、上記保護層転写シート用フィルムとして上記本発明に係る保護層転写シート用フィルムが用いられていることにより、基材と剥離層との剥離性に優れ、かつ、低コストで製造可能な保護層転写シートを得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、基材と剥離層との剥離性に優れ、かつ、低コストで製造可能な保護層転写シートを提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は昇華型熱転写方式により印刷された画像を保護する保護層を形成するために用いられる保護層転写シート、および、これに用いられる保護層転写シート用フィルムに関するものである。
以下、本発明の保護層転写シート、および、保護層転写シート用フィルムについて順に説明する。
【0020】
A.保護層転写シート用フィルム
まず、本発明の保護層転写シート用フィルムについて説明する。本発明の保護層転写シート用フィルムは、基材と、上記基材上に形成され、イソシアネート化合物および水酸基含有樹脂を含有する耐熱滑性層と、上記基材の上記耐熱滑性層が形成された面とは反対面上に形成され、透明樹脂材料を含有する剥離層とを有するものであって、上記透明樹脂材料が活性水素を有する官能基を実質的に有さないことを特徴とするものである。
【0021】
このような本発明の保護層転写シート用フィルムについて図を参照しながら説明する。図1は本発明の保護層転写シート用フィルムの一例を示す概略図である。図1に例示するように本発明の保護層転写シート用フィルム10は、基材1と、上記基材1上に形成され、イソシアネート化合物および水酸基含有樹脂を含有する耐熱滑性層3と、上記基材1の上記耐熱滑性層3が形成された面とは反対面上に形成され、透明樹脂材料を含有する剥離層2とを有するものである。
このような例において、本発明の保護層転写シート用フィルム10は、上記剥離層2に含有される上記透明樹脂材料が、活性水素を有する官能基を実質的に有さないことを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の保護層転写シート用フィルムは、上記剥離層上にヒートシール層が形成されることにより、保護層転写シートとして用いられるものである。
【0023】
本発明によれば、上記剥離層に含有される透明樹脂材料として、上記イソシアネート化合物に対して反応性を示す活性水素を有する官能基を実質的に有さないものを用いることにより、例えば、本発明の保護層転写シート用フィルムをRoll to Rollプロセスにより製造する場合であっても、上記基材と上記剥離層との剥離性が損なわれることを防止できる。
また、本発明によれば、上記このため透明樹脂材料として、上記イソシアネート化合物に対して反応性を示す活性水素を有する官能基を実質的に有さないものを用いることにより、従来のように離型層等の新しい構成を追加することなく、基材と剥離層との剥離性に優れた保護層転写シート用フィルム得ることができる。
このようなことから、本発明の保護層転写シート用フィルムを用いることにより、基材と剥離層との剥離性に優れ、かつ、低コストで製造可能な保護層転写シートを得ることができる。
【0024】
ここで、本発明において上記剥離層に用いられる透明樹脂材料として、活性水素を有する官能基を実質的に有さないものを用いることにより、基材と剥離層との剥離性に優れ、かつ、低コストで製造可能な保護層転写シートを得ることができる理由についてより具体的に説明する。
一般的に、本発明のような構成を有する保護層転写シート用フィルムを製造する方法としては、長尺状の基材を用い、上記基材上にイソシアネート化合物および水酸基含有樹脂を含有する耐熱滑性層を形成した後、上記基材および上記耐熱滑性層からなる積層体をロール状に巻き取る耐熱滑性層形成工程と、上記積層体を巻き出し、上記基材の上記耐熱滑性層が形成された面とは反対面上に、透明樹脂材料を含有する剥離層を形成した後、これをロール状に巻き取る剥離層形成工程とからなる方法が用いられる。このような、いわゆるRoll to Rollプロセスは高生産性で保護層転写シート用フィルムを製造できるという利点を有するものである。
ここで、上記耐熱滑性層形成工程において形成される耐熱滑性層は、上記イソシアネート化合物および水酸基含有樹脂が硬化されてなるものであるが、通常、上記耐熱滑性層中には、一部未反応のイソシアネート化合物が残存することになる。そして、このように上記耐熱滑性層中に未反応のイソシアネート化合物が残存すると、上記耐熱滑性層形成工程において上記積層体がロール状に巻き取られた際に、上記未反応のイソシアネート化合物が、上記剥離層形成工程において剥離層が形成される基材表面に付着してしまうということが起こる。そして、上記剥離層に用いられる透明樹脂材料が、上記イソシアネート化合物に対して反応性を示すものである場合、上記未反応のイソシアネート化合物が付着した基材表面に剥離層が形成されると、上記基材表面において上記透明樹脂材料と上記イソシアネート化合物とが作用してしまい、上記基材と上記剥離層との密着性が著しく向上する結果、剥離性が低下してしまうことになる。
この点、本発明においては、上記透明樹脂材料として上記イソシアネート化合物に対して反応性を示す活性水素を有する官能基を実質的に有さないものを用いることにより、仮に剥離層を形成する基材の表面に未反応のイソシアネート化合物が付着していたとしても、上記透明樹脂材料と上記未反応のイソシアネート化合物とが作用することがないため、形成される剥離層を基材に対する剥離性に優れたものにできるのである。
また、このように上記透明基材として活性水素を有する官能基を実質的に有さないものを用いることにより、離型層のような新たな構成を追加することなく、剥離性に優れた剥離層を形成することができるため、低コストで保護層転写シート用フィルムを得ることができる。
このようなことから本発明の保護層転写シート用フィルムは、基材と剥離層との剥離性に優れ、かつ、低コストで製造可能な保護層転写シートを得ることができるのである。
【0025】
本発明の保護層転写シート用フィルムは、少なくとも耐熱滑性層、基材、および、剥離層を有するものである。
以下、このような本発明の保護層転写シートに用いられる各構成について順に説明する。
【0026】
1.剥離層
まず、本発明に用いられる剥離層について説明する。本発明に用いられる剥離層は、活性水素を有する官能基を実質的に有さない透明樹脂材料を含有するものである。また、本発明に用いられる剥離層は、熱転写受像シート上に転写されることにより保護層となるものである。
本発明の保護層転写シート用フィルムは、上記透明樹脂材料として活性水素を有する官能基を実質的に有さない透明樹脂材料が用いられていることにより、基材と剥離層との剥離性に優れ、かつ、低コストで製造可能な保護層転写シートを得ることができるのである。
以下、このような剥離層について詳細に説明する。
【0027】
本発明に用いられる上記透明樹脂材料としては、上記活性水素を有する官能基を実質的に有さないものであれば特に限定されるものではない。
ここで、本発明において「上記活性水素を含有する官能基を実質的に有さない」とは、上記透明樹脂材料中に存在する上記官能基の量が、基材と剥離層との剥離性を所定の範囲内にできる程度であることを意味するものである。ここで、上記「所定の範囲」は、本発明の保護層転写シート用フィルムの具体的な用途等に応じて決定すればよい。
【0028】
また、上記活性水素を有する官能基は、後述する耐熱滑性層に含有されるイソシアネート化合物に対して反応性を示すものを意味するものである。このような官能基の例としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、アジド基、および、ウレア基等を挙げることができる。本発明に用いられる透明樹脂材料は、これらすべての官能基を実質的に有さないものであることが好ましいものである。
【0029】
本発明における剥離層は、後に基材から熱転写受像シート上へ熱転写されることにより保護層を構成するものである。したがって、本発明に用いられる透明樹脂材料は、加熱された際に、上記基材から剥離しやすいものであることが好ましい。このような観点からすると、本発明に用いられる透明樹脂材料はガラス点移転(Tg)が90℃以上である第1の透明樹脂を含むものであることが望ましい。このような第1の透明樹脂を含むことにより、本発明における剥離層を加熱時に基材から剥離しやすいものとすることができるからである。なかでも本発明に用いられる第1の透明樹脂は、Tgが80℃以上であることが好ましく、特に85℃以上であることが好ましく、さらに85℃〜100℃の範囲内であることが好ましい。これにより本発明における剥離層を、さらに基材からの剥離性に優れたものにできるからである。
【0030】
このような第1の透明樹脂の例としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート等の上記活性水素を含有する官能基を有さないものや、メタクリル酸メチルやスチレン等と、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2−カルボキシ−1−ブテン、2−カルボキシ−1−ペンテン、2−カルボキシ−1−ヘキセン、2−カルボキシ−1−ヘプテン等の上記活性水素を有するモノマーとを、共重合させたポリマー等の、上記剥離性を損なわない程度に上記活性水素を含有する官能基を有するものを挙げることができ、より具体的には、メタクリル酸メチルやスチレン等と、上記活性水素を有するモノマーとが、上記活性水素を有するモノマーの重合比が10%以下で共重合されたものを挙げることができる。なかでも、本発明に用いられる第1の透明樹脂は、上記活性水素を含有する官能基を有さないものが好ましい。このような第1の透明樹脂を用いることにより、本発明に用いられる剥離層の上記剥離性が損なわれることがないからである。
ここで、上記第1の透明樹脂が上記活性水素を含有する官能基を有さないことは、例えば、GC−MS法、NMR法等により上記透明樹脂材料を特定し、特定された材料の構造式を参照することにより評価することができる。
【0031】
また、本発明に用いられる第1の透明樹脂は、上記活性水素を含有する官能基を有さないもののなかでも、特にポリメタクリル酸メチルを用いることが好ましい。ポリメタクリル酸メチルは耐可塑剤性に優れるため、本発明における剥離層を、熱転写印画物の長期保存性に優れた保護層を形成可能なものにできるからである。
【0032】
上記透明樹脂材料に、上記第1の透明樹脂が含有される態様としては、上記第1の透明樹脂と、他の樹脂とが混合されて含有される態様であってもよく、または、上記透明樹脂材料が上記第1の透明樹脂のみからなる態様であってもよい。なかでも本発明においては前者の態様が好ましく、なかでも上記他の樹脂として上記第1の透明樹脂よりもTgが低い第2の透明樹脂が用いられる態様が好ましい。その理由は次の通りである。
すなわち、本発明における剥離層は加熱時に基材から容易に剥離できるという特性を有するのみではなく、常温においては上記基材と良好な密着性を示すことが求められるものである。この点、上記第1の透明樹脂よりもTgが低い第2の透明樹脂を用いることにより、本発明における剥離層に上記密着性を付与することが容易になるからである。
【0033】
本発明に用いられる上記第2の透明樹脂としては、上記第1の透明樹脂よりもTgが低く、本発明における剥離層に所望の密着性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる第2の透明樹脂は、Tgが40℃〜90℃の範囲内であるものが好ましく、特に60℃〜90℃の範囲内であるものが好ましく、さらに60℃〜80℃の範囲内であるものが好ましい。Tgがこのような範囲内である第2の透明樹脂を用いることにより、本発明における剥離層に任意の密着性を付与することが容易になるからである。
【0034】
このような第2の透明樹脂の具体例としては、例えば、メタクリル酸メチルとアクリレート化合物とが共重合した樹脂を挙げることができる。上記アクリレート化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0035】
なお、本発明に用いられる透明樹脂材料として、上記第1の透明樹脂と、上記第2の透明樹脂とが含有されたものを用いる場合、上記透明樹脂材料中に含有される第1の透明樹脂の量としては、上記第1の透明樹脂および上記第2の透明樹脂の種類等に応じて、本発明における剥離層に所望の剥離性を付与できる範囲であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記第1の透明樹脂の含有量が60質量%以上であることが好ましく、なかでも65質量%〜95質量%の範囲内であることが好ましく、特に70質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましい。上記第1の透明樹脂の含有量がこのような範囲内であることにより、本発明の剥離層が転写されることによって形成される保護層を、耐可塑剤性に優れたものにできるからである。
【0036】
なお、本発明に用いられる透明樹脂材料に、上記第1の透明樹脂と上記第2の透明樹脂とが含有される態様としては、上記第1の透明樹脂と上記第2の透明樹脂とが別個独立に含有される態様であってもよく、または、上記第1の透明樹脂と第2の透明樹脂との共重合物が含有される態様であってもよい。なかでも本発明においては、上記第1の透明樹脂と第2の透明樹脂との共重合物が含有される態様であることが好ましい。上記第1透明樹脂と上記第2透明樹脂とが共重合物として上記透明樹脂材料に含有されることにより、上記第1透明樹脂と上記第2透明樹脂とが別個独立に含有される場合よりも、上記剥離層が熱転写受像シート上に転写されることによって形成される保護層の耐可塑剤性を向上することができる場合が多いからである。
【0037】
本発明に用いられる剥離層は、上記透明樹脂材料以外の他の材料が含まれるものであってもよい。このような他の材料としては、本発明に用いられる剥離層に所望の機能を付与できるものであれば特に限定されるものではない。
【0038】
なお、本発明に用いられる剥離層の厚みは特に限定されるものではない、通常、0.5μm〜4.0μmの範囲内、好ましくは0.8μm〜2μmの範囲内とされる。
【0039】
2.基材
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材としては、上記剥離層および後述する耐熱滑性層を形成可能なものであり、かつ、所定の耐熱性と強度を有するものであれば特に限定されるものではない。このような基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等を挙げることができる。なかでも本発明においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に用いられる。
【0040】
なお、本発明に用いられる基材の厚みは、通常、0.5μm〜50μmの範囲内、好ましくは1μm〜10μmの範囲内とされる。
【0041】
3.耐熱滑性層
次に、本発明に用いられる耐熱滑性層について説明する。本発明に用いられる耐熱滑性層は、イソシアネート化合物と水酸基含有樹脂とを含有するものである。本発明においては、上記剥離層に用いられる透明樹脂材料として、活性水素を含有する官能基を実質的に有さないものが用いられていることにより、耐熱滑性層にイソシアネート化合物が用いられていても、Roll to Rollプロセスにより基材と剥離層との剥離性に優れた保護層転写シート用フィルムを製造することが可能になるのである。
以下、このような耐熱滑性層について詳細に説明する。
【0042】
本発明に用いられるイソシアネート化合物としては、本発明における耐熱滑性層に所望の滑り性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。このようなイソシアネート化合物としては、例えば、従来公知の塗料、接着剤、ポリウレタンの合成等に使用されているものであれば特に限定されるものではない。このようなイソシアネート化合物としては、ジイソシアネートおよびトリイソシアネート等のポリイソシアネートを挙げることができる。本発明に用いられるポリイソシアネートの具体例としては、パラフェニレンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニルジイソシアネート、2−クロロ−1,4−フェニルジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、4,4',4''−トリメチル−3,3’,2’−トリイソシアネート−2,4,6−トリフェニルシアヌレート等を挙げることができる。
【0043】
また、本発明に用いられる水酸基含有樹脂としては、水酸基を含有し、上記イソシアネート化合物と反応できるものであれば特に限定されるものではない。このような水酸基含有樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ウレタンポリオール、ポリエステル等を挙げることができる。なかでも本発明においては、ポリビニルブチラールが好適に用いられる。
【0044】
なお、本発明に用いられる耐熱滑性層に含有される上記イソシアネート化合物および上記水酸基含有樹脂は、通常、互いに重合された重合物として存在する。
【0045】
また、本発明に用いられる耐熱滑性層には、上記イソシアネート化合物および上記樹脂以外に他の化合物が含有されていてもよい。このような他の化合物としては、本発明における耐熱滑性層に所望の機能を付与できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に好適に用いられる上記他の化合物としては、例えば、リン酸エステル系界面活性剤、アルカリ性物質、および、粒子等を挙げることができる。このようなリン酸エステル系界面活性剤、アルカリ性物質、および、粒子としては、例えば、特開平6−247066号公報、特開昭63−218395号公報に記載されたものを挙げることができる。
【0046】
本発明に用いられる耐熱滑性層の厚みは、通常、0.5μm〜5μmの範囲内であることが好ましく、なかでも1μm〜2μmの範囲内であることが好ましい。
【0047】
4.その他の構成
本発明の保護層転写シート用フィルムは、上記基材、剥離層、および、耐熱滑性層以外の他の構成を有するものであってもよい。このような他の構成としては、本発明の保護層転写シート用フィルムに所望の機能を付与できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に好適に用いられる上記他の構成としては、上記基材と上記剥離層との間に形成される離型層を挙げることができる。
【0048】
ここで、本発明の保護層転写シート用フィルムは、上記剥離層に用いられる透明樹脂材料として、活性水素を有する官能基を実質的に有さないものを用いることにより、上記離型層を用いることなく、上記基材と上記剥離層との剥離性を良好なものにできるものである。したがって、通常、このような離型層を用いる必要性は少ないが、例えば、剥離層にさらに高い剥離性が求められる場合には、そのような剥離性を実現するために離型層を用いてもよい。
【0049】
上記離型層を形成する材料としては、上記基材と上記剥離層との剥離性を所望の範囲にできるものであれば特に限定されるものではない。このような材料としては、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、エマルジョン型、溶剤型、無溶剤型のいずれも使用することができる。
【0050】
5.保護層転写シート用フィルムの製造方法
本発明の保護層転写シート用フィルムを製造する方法としては、上記構成を有する保護層転写シート用フィルムを製造できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、長尺状の基材を用い、上記基材上に耐熱滑性層を形成した後、上記基材および上記耐熱滑性層からなる積層体をロール状に巻き取る耐熱滑性層形成工程と、上記積層体を巻き出し、上記基材の上記耐熱滑性層が形成された面とは反対面上に剥離層を形成した後、これをロール状に巻き取る剥離層形成工程とからなる方法を挙げることができる。このような、いわゆるRoll to Rollプロセスによれば高生産性で本発明の保護層転写シート用フィルムを製造できる。また、本発明においては、上記透明樹脂材料として、活性水素を有する官能基を実質的に有さないものを用いることにより、このようなRoll to Rollプロセスを用いる場合であっても、基材と剥離層との剥離性に優れた保護層転写シート用フィルムを製造することができる。
【0051】
上記耐熱滑性層形成工程において、上記基材上に耐熱滑性層を形成する方法としては、例えば、上述したイソシアネート化合物および水酸基含有樹脂を含有する耐熱滑性層を含有する耐熱滑性層形成用塗工液を調製し、これを、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により上記基材上に塗工し、乾燥する方法を挙げることができる。このとき、上記耐熱滑性層形成用塗工液の塗工量は、固形分で0.1g/m〜3.0g/mとされることが好ましい。
【0052】
また、上記剥離層形成工程において、上記基材上に剥離層を形成する方法としては、例えば、上述した透明樹脂材料を含有する剥離層形成用塗工液を調製し、これを、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の手段により基材上に塗布し、乾燥させた後、紫外線等を照射する方法を挙げることができる。このとき、上記剥離層形成用塗工液の塗工量は、乾燥時で0.5g/m〜4.0g/mとされることが好ましい。
【0053】
B.保護層転写シート
次に、本発明の保護層転写シートについて説明する。本発明の保護層転写シートは、上記本発明に係る保護層転写シート用フィルムが用いられたものである。
すなわち、本発明の保護層転写シートは、上記本発明に係る保護層転写シート用フィルムと、上記保護層転写シート用フィルムの剥離層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層と、を有することを特徴とするものである。
【0054】
このような本発明の保護層転写シートについて図を参照しながら説明する。図2は本発明の保護層転写シートの一例を示す概略図である。図2に例示するように、本発明の保護層転写シート20は、基材1、剥離層2および耐熱滑性層3からなる本発明の保護層転写シート用フィルム10と、上記剥離層2上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層21とを有するものである。
【0055】
本発明の保護層転写シートは、上記保護層転写シート用フィルムとして上記本発明に係る保護層転写シート用フィルムが用いられていることにより、基材と剥離層との剥離性に優れ、かつ、低コストで製造可能な保護層転写シートを得ることができる。
【0056】
本発明の保護層転写シートは、少なくとも上記保護層転写シート用フィルムと、上記ヒートシール層とを有するものである。
以下、このような本発明の保護層転写シートに用いられる各構成について順に説明する。
【0057】
なお、本発明に用いられる上記保護層転写シート用フィルムについては、上記「A.保護層転写シート用フィルム」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0058】
1.ヒートシール層
まず、本発明に用いられるヒートシール層について説明する。本発明に用いられるヒートシール層は、上記本発明の保護層転写シート用フィルムが備える剥離層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するものである。また、本発明に用いられるヒートシール層は、本発明の保護層転写シートを用いて、熱転写受像シート上に保護層を形成する際に、上記剥離層と上記熱転写受像シートの受容層とを接着する機能を有するものである。
以下、このようなヒートシール層について詳細に説明する。
【0059】
本発明におけるヒートシール層に用いられる熱可塑性樹脂としては、上記剥離層と、熱転写、受像シートの受容層とを接着可能なものであれば特にその種類等は限定されるものではない。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニルおよびその共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系・メタクリル系などの(メタ)アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメチルメタクリレート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニル系樹脂、マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン・アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等の熱可塑性樹脂を用いることができる。なかでも本発明においては、上記の中でも180℃以下の温度でヒートシールが可能な組成物が用いられることが好ましい。
【0060】
また、上記ヒートシール層には、上記熱可塑性樹脂以外にヒートシール層の切れ性を良好なものとする微粒子が含有されていてもよい。上記微粒子の平均粒径としては、0.05μm〜10μm、中でも0.05μm〜6μmであることが好ましい。上記微粒子の平均粒子径が、上記範囲内より小さい場合には、ヒートシール層の切れ性を向上させることが難しく、また上記範囲より大きい場合には、分散性が悪くヒートシール層の平滑性が損なわれる可能性があるからである。
なお、上記平均粒子径はレーザー法によって測定される値を用いるものとする。レーザー法とは、微粒子を溶媒に分散させて、その分散溶媒にレーザー光線を照射し、その微粒子により散乱された光を解析することにより得られるものである。本発明においては、特にリーズ&ノースラップ(Leeds & Northrup)社製粒度分析計 マイクロトラックUPA Model−9230を使用して算出した値を用いるものとする。
【0061】
上記微粒子の含有量としては、本発明におけるヒートシール層に所望の切れ性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においてはヒートシール層を構成する上記樹脂100質量部に対して10質量部〜500質量部の範囲内であることが好ましく、なかでも20質量部〜200質量部であることが好ましい。上記微粒子の含有量が上記範囲より少ない場合には、ヒートシール層に所望の切れ性を付与することが困難となる可能性があるからである。また、上記範囲より多い場合には、ヒートシール層内における微粒子の分散性が低下し、ヒートシール層の切れ性が不安定となる恐れがあるからである。
【0062】
本発明に用いられる微粒子としては、有機微粒子及び/または無機微粒子、すなわち、有機微粒子、無機微粒子、有機物と無機物との混合物、または無機物の周囲に有機物をコーティングしたもの等を用いることができる。
【0063】
上記無機微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ、ガラス、珪藻土、雲母粉、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン等が適用できる。
【0064】
一方、上記有機微粒子としては、ガラス転移点温度が120℃以上の熱可塑性樹脂であることが好ましく、例えばWAX、ポリエチレン、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、メタアクリル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリスチレン、スチレン及び/又はα−メチルスチレンと他の単量体(例えば無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えばAS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、耐熱ABS樹脂等)等の微粒子が適用できる。
【0065】
ここで、上記微粒子として有機微粒子を用いた場合には、ヒートシール層を構成する合成樹脂との屈折率が比較的近いことから、ヒートシール層により透明性を持たせることができる。また、無機微粒子と比較して粒子表面の官能基を制御することで容易にヒートシール層の切れ性を改善できるという利点も有している。
【0066】
本発明に用いられる微粒子の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば球状、直方状、板状、燐片状、針状、中空体等であってもよい。
【0067】
また本発明におけるヒートシール層には、必要に応じて分散剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。
ここで、上記帯電防止剤としては、非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤等や、ポリアミドやアクリル酸誘導体等が適用できる。
【0068】
本発明に用いられるヒートシール層の厚みは、保護層転写シートの種類や、受像シートの種類等によって適宜選択されるものであるが、通常0.5μm〜11μm程度、好ましくは0.5μm〜6μm程度とされる。厚みが上記範囲よりも薄いと、熱転写受像シートの受容層との接着が不十分となる可能性があるからである。また、上記範囲よりも厚いとヒートシール層の切れ性が低下したり、保護層を転写する際の加熱温度が高温になってしまう恐れがあるからである。
【0069】
2.その他の構成
本発明の保護層転写シートは、上記保護層転写シート用フィルム、および、ヒートシール層以外に、他の構成を有するものであってもよい。このような他の構成としては、本発明の保護層転写シートに所望の機能を付与することができるものであれば特に限定されるものではない。なかでも上記他の構成として本発明に好適に用いられるものとしては、例えば、画像を印画するための染料転写層等を挙げることができる。
【0070】
上記染料転写層としては、単色からなるものであってもよく、また例えばイエロー、シアン、マゼンタの3色からなるもの等であってもよい。このような染料転写層については、一般的な昇華型熱転写シートに用いられる染料転写層と同様とすることができる。
【0071】
3.保護層転写シートの製造方法
本発明の保護層転写シートを製造する方法としては、上記構成を有する保護層転写シートを製造できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、上記本発明の保護層転写シート用フィルムとして長尺状のものを用い、上記保護層転写シート用フィルムを巻き出しながら、当該保護層転写シート用フィルムの剥離層上にヒートシール層を形成した後、これをロール状に巻き取るヒートシール層形成工程を有する方法を挙げることができる。このような、いわゆるRoll to Rollプロセスによれば高生産性で本発明の保護層転写シートを製造することができる。
【0072】
上記ヒートシール層形成工程において、上記剥離層上にヒートシール層を形成する方法としては、例えば、上記熱可塑性樹脂と、上記微粒子とを、溶媒へ分散または溶解させることによりヒートシール層形成用塗工液を調製した後、これを、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ロッドコート、キスコート、ナイフコート、ダイコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート等のコーティング法で上記剥離層上に塗布し、乾燥および/または硬化させる方法を挙げることができる。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を示すことによって本発明をさらに具体的に説明する。
【0075】
1.実施例1
(1)保護層転写シート用フィルムの作製
a.耐熱滑性層の形成
厚み6μmのポリエチレンテレフタレート長尺フィルム(商品名 ルミラー : 東レ社製)の片面に、以下の組成を有する耐熱滑性層形成用塗工液をグラビアコーターを用いて塗布・乾燥することにより耐熱滑性層を形成し、ロール状に巻き取った。このとき、上記耐熱滑性層形成用塗工液の塗工量は乾燥時に1.0g/mとなるようにした。次に、ロール状に巻き取った状態で60℃にて5日間オーブン中で加熱熟成することにより硬化処理を行った。
【0076】
<耐熱滑性層形成用塗工液の組成>
・ポリビニルブチラール樹脂 3.6重量部
(商品名 エスレックBX−1 : 積水化学工業社製)
・ポリイソシアネート 8.4重量部
(商品名 バーノックD750 : 大日本インキ社製)
・リン酸エステル系界面活性剤 2.8重量部
(商品名 プライサーフA208S : 第一工業製薬社製)
・タルク 0.6重量部
(商品名 ミクロエースP−3 : 日本タルク社製)
・溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1) 190重量部
【0077】
b.染料転写層の形成
次に、上記ポリエチレンテレフタレート長尺フィルムの上記耐熱滑性層が形成された面とは反対面上に、以下の組成を有するインキをグラビアコーターで塗工することにより、各色が縦8cm、横4cmの大きさになるように3色を1セットとして染着転写層を形成した。このとき、各セット間は10cmとした。
【0078】
<イエローインキの組成>
・染料 5.5重量部
(FORON BRILLIANT YELLOW S−6GL)
・ポリビニルアセタール樹脂 4.5重量部
(商品名 KS−5 : 積水化学工業社製)
・ポリエチレンワックス 0.1重量部
・溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1) 89重量部
【0079】
<マゼンタインキの組成>
・染料1 1.5重量部
(MS RED−G)
・染料2 2.0重量部
(MACROLEX RED VIORET R)
・ポリビニルアセタール樹脂 4.5重量部
(商品名 KS−5 : 積水化学工業社製)
・ポリエチレンワックス 0.1重量部
・溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1) 89重量部
【0080】
<シアンインキの組成>
・染料 1.5重量部
(カヤセットブルー714)
・ポリビニルアセタール樹脂 4.5重量部
(商品名 KS−5 : 積水化学工業社製)
・ポリエチレンワックス 0.1重量部
・溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1) 89重量部
【0081】
c.剥離層の形成
ポリメタクリル酸メチル(70重量部)(MMA:Tg=105℃)と、メタクリル酸メチル(MMA)−エチルアクリレート(EA)共重合体(30重量部)(MMA−EA=85−15:Tg=80℃)とからなる透明樹脂材料を、溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に固形分が20質量%となるように溶解することにより剥離層形成用塗工液をした。次いで、当該剥離層形成用塗工液をバーコーターによって塗工することにより、上記染料転写層の各セット間に厚み1.2±0.2μmの剥離層を形成した。このようにして、保護層転写シート用フィルムを作製した。
【0082】
(2)保護層転写シートの作製
塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体(商品名 1000ALK : 電気化学工業社製)を溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に溶解することにより、ヒートシール層形成用塗工液を調製した。次いで、これを上記保護層転写シート用フィルムの剥離層上に塗工し、厚み1μmのヒートシール層を形成することにより、保護層転写シートを形成した。
【0083】
2.実施例2
剥離層形成用塗工液として、ポリメタクリル酸メチルのみからなる透明樹脂材料を、溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に固形分が20質量%となるように溶解したものを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により保護層転写シートを形成した。
【0084】
3.実施例3
剥離層形成用塗工液として、ポリスチレン(Tg=100℃)のみからなる透明樹脂材料を、溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に固形分が20質量%となるように溶解したものを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により保護層転写シートを形成した。
【0085】
4.実施例4
剥離層形成用塗工液として、メタクリル酸メチル‐2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(MMA−HEMA:90−4)共重合体からなる透明樹脂材料(Tg=103℃)を、溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に固形分が20質量%となるように溶解したものを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により保護層転写シートを形成した。
【0086】
5.比較例
剥離層形成用塗工液として、メタクリル酸メチル(MMA)−アクリル酸(AA)(MMA−AA:93−7)共重合体からなる透明樹脂材料(Tg=105℃)、溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)に固形分が20質量%となるように溶解したものを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により保護層転写シートを形成した。
【0087】
<評価>
上記実施例および比較例おいて作製した保護層転写シートの剥離層を、画像が形成された熱転写受像シートの受容層上に転写することによって保護層を形成し、その際の剥離性、および、保護層の耐可塑剤性を評価した。
また、上記実施例および比較例における保護層転写シートにおける上記基材と上記剥離層との密着性評価を行った。
それぞれの評価方法は次の通りである。
【0088】
(1)剥離性
(印画条件)
・発熱体平均抵抗値;4885Ω
・主走査方向印字密度;300dpi
・副走査方向印字密度;300dpi
・印画電圧;18V
・1ライン周期;2msec/line
・印字開始温度;27℃
・階調値;255/255
・印画幅;3cm
・印加パルス(階調制御方法);1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長をもつ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのDuty比を90%に固定し、イエロー、マゼンダ、シアンの各色を、この順で、熱転写受像シートの受容層に転写してブラック画像を形成した。次いで、剥離層をパルス数255個で印画することにより保護層を形成した。
【0089】
(剥離条件)
180°剥離する時の剥離力を下記装置にて測定した。
・剥離装置:インストロン社製 万能型材料試験機 5565
・剥離速度:300mm/分
【0090】
(2)密着性評価
保護層の密着性をテープ(Scotch メンディングテープ MP−18)を貼合し、90°方向に0.6m/分の速度で剥離し、剥離がないかを確認した。評価基準は、以下の通りとした。
○:基材からの剥がれはない。
△:一部剥がれる。
×:基材から完全に剥がれる。
【0091】
(3)耐可塑剤性評価
上記保護層を転写した印画物と、可塑剤入り軟質塩ビシート(三菱化学社製アルトロン♯480、厚み400μm)とを重ね合わせ、荷重を70.2g/cmとなるようにかけ、50℃環境下に48時間保存した。その後、可塑剤による画像の劣化を下記の評価基準により、目視にて評価した。
○:塩化ビニルシートへの画像の転移が全く認められない。
△:塩化ビニルシートへの画像の転移が一部認められた。
×:塩化ビニルシートへの画像の転移が全体にわたって認められた。
【0092】
これらの評価結果を以下の表1に示す。なお、比較例については保護層を形成することができなかったため、耐可塑剤性の評価を行うことができなかった。
【0093】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の保護層転写シート用フィルムの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の保護層転写シートの一例を示す概略図である。
【図3】一般的な保護層転写シートの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0095】
1 … 基材
2 … 剥離層
3 … 耐熱滑性層
10 … 保護層転写シート用フィルム
20 … 保護層転写シート
21 … ヒートシール層
100 … 保護層転写シート
101 … 基材
102 … 剥離層
103 … ヒートシール層
104 … 耐熱滑性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成され、イソシアネート化合物および水酸基含有樹脂を含有する耐熱滑性層と、前記基材の前記耐熱滑性層が形成された面とは反対面上に形成され、透明樹脂材料を含有する剥離層と、を有する保護層転写シート用フィルムであって、
前記透明樹脂材料が活性水素を有する官能基を実質的に有さないことを特徴とする、保護層転写シート用フィルム。
【請求項2】
前記透明樹脂材料が、Tgが90℃以上である第1の透明樹脂を含有することを特徴とする、請求項1に記載の保護層転写シート用フィルム。
【請求項3】
前記透明樹脂材料が、Tgが40℃〜80℃の範囲内である第2の透明樹脂を含有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の保護層転写シート用フィルム。
【請求項4】
前記透明樹脂材料中の前記第1の透明樹脂の含有量が60質量%以上であることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の保護層転写シート用フィルム。
【請求項5】
前記第1の透明樹脂がポリメタクリル酸メチル(PMMA)であることを特徴とする、請求項2から請求項4までのいずれかの請求項に記載の保護層転写シート用フィルム。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の保護層転写シート用フィルムと、前記保護層転写シート用フィルムの剥離層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層と、を有することを特徴とする、保護層転写シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−87290(P2008−87290A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269615(P2006−269615)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】