説明

信号の複数コピーを保護するための透かしの埋め込み

本発明は、メディア信号(x)のさまざまなコピーへの透かしの埋め込みを単純化することに関連する方法、装置および信号に関する。透かし入れプロセスは、信号依存属性に基づく部分と透かし固有属性に基づく部分という二つの部分に分割される。メディア信号(x)の信号依存透かし入れ属性(p)は属性決定ユニット(14)において決定され、信号属性記憶(16)に保存され、信号依存属性は二つ以上の透かし(WA,WB,WC)をメディア信号のさまざまなコピーに埋め込むために使うことができるようになる。この方法により、同一のメディア信号の複数のコピーに透かしを埋め込むことがわずかな時間的遅延で可能になる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にはメディア信号への透かし入れの分野に、より詳細にはメディア信号の異なるコピーへの透かしの埋め込みを単純化するための方法、装置およびメディア信号に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メディア信号の不法なコピーおよび頒布を防止するためにメディア信号に透かしを入れることは広く知られている。この方法によりメディア信号の正当な所有権者はたとえばメディア信号のコピーが不法に作成されたものであるかどうかを検出できる。
【0003】
インターネットの導入によって、電子コンテンツ配送システム(Electronic Content Delivery Systems)を通じてメディア信号がダウンロードできるようになることで、メディアコンテンツの頒布の分野において革命があった。それによりコンテンツ提供者はさまざまなメディア信号のデータベースを持ち、そのコピーをインターネットを通じて様々なユーザーに頒布することができる。その際、コンテンツの購入者はしばしば、当該コンテンツへのアクセス権の配送が瞬時に、あるいは直接に行われることを期待する。これらのメディア信号を不法コピーから守るためには頒布されるコピーのそれぞれに一意的な透かしを入れておくことが必要になる。
【0004】
しかし、透かし入れは多くの場合比較的時間がかかり、複雑な計算処理を伴う。これはすなわち、コンテンツ提供者があるメディア信号の多くのコピーを同時にさまざまな顧客に配送する場合、メディア信号の各コピーのための透かし入れプロセスが長い時間がかかるということであり、多くの顧客が注文したメディア信号をかなりの遅れののちに受け取るということにつながりうる。これは多くの場合、受け入れられない。
【0005】
したがって、より高速で、それでいて透かし入れした各コピーについての一意的な透かしを保証するような、メディア信号のさまざまなコピーへの透かし入れを提供することが必要とされている。
【0006】
ミヒャエル・アルノルト、オリファー・ロビシュ「ブロックベースの透かし入れ方式のためのリアルタイム概念」、WEDELMUSIC会議、2002年、ドイツ国ダルムシュタット、pp.156〜160という文書は使われる計算時間を削減するための一つのシステムを記載している。ここではメディア信号は二つの異なる透かしを用いて透かし入れされる。次いでメディア信号の二つの透かし入れされたコピーが保存される。次いで、その信号をさまざまな顧客に頒布する直前に、透かし入れされた信号が顧客に依存した仕方で混合され、さまざまな顧客のための一意的な透かしを提供する。この技法はメディア信号がフレームとして提供される場合に最もよく機能する。その場合、フレーム境界のたびに二つの透かし入れ信号のうちの一方が出力信号に混合して取り入れられる。この方法により、フレーム毎ベースで二つの透かしのシーケンスが提供されるような形で出力メディア信号が提供されうる。その特定のシーケンスがある顧客の透かしを表すのである。前記文書はさらに、二つの透かしが与えられる順序を決定する秘密鍵の使用を記載している。同様のシステムは文書WO00/56059においても記載されている。
【0007】
多くの種類の透かし入れではフレームを使わない。たとえばマスクコーディング(mask coding)では、連続的なシンボルのシーケンスがある。この環境において透かしの混合は可能である。しかし、混合は実行が難しく、そのようにして混合した透かしはさらに検出も難しい。さらにペイロード容量が透かし入れシーケンスにおける可能な変化の最大数によって制限される。透かし入れアルゴリズムの特性が透かしにおける比較的高速な変化を許さないか、コンテンツサイズが比較的小さいか、あるいはその両方であれば、全ペイロードは限定されうる。さらに、二つの透かしのための記憶スペースの要求のため、透かしを記憶するための記憶容量を著しく増す必要がある。
【0008】
このように、より高速で、それでいて透かし入れした各コピーについての一意的な透かしを保証するような、そしてさらに特に小さなサイズのメディアコンテンツについて必要とされる記憶容量を制限し、一意的な透かしのより大きな多様性を許容するような、そしてさらにフレームを使用しない他の透かし入れ技術についても使用できるような、メディア信号のさまざまなコピーへの透かし入れを提供する代替的な方法が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、高速で、それでいて透かし入れした各コピーについての一意的な透かしを保証し、必要とされる記憶容量を制限し、一意的な透かしのより大きな多様性を許容し、そしてさらにフレームを使用しない透かし入れ技術についても使用できるような、メディア信号のさまざまなコピーへの透かし入れを提供することが本発明の一つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の側面によれば、この目的は、メディア信号のさまざまなコピーへの透かしの埋め込みを単純化する方法であって:
・メディア信号に依存する透かし入れ属性を決定し、
・前記信号依存属性を保存して、該信号依存属性が当該メディア信号のさまざまなコピーに一意的な透かしを埋め込む際に使用できるようにする、
ステップを有する方法によって達成される。
【0011】
本発明の第二の側面によれば、この目的はまた、メディア信号に透かしを埋め込む方法であって:
・メディア信号を、該メディア信号に依存するある透かし入れ属性とともに受信し、
・メディア信号のコピーに前記信号依存属性に基づいて透かしを埋め込む、
ステップを有する方法によって達成される。
【0012】
本発明の第三の側面によれば、この目的はさらに、メディア信号のさまざまなコピーへの透かしの埋め込みを単純化するための装置であって:
・メディア信号の信号依存透かし入れ属性を決定するための属性決定ユニットと、
・前記信号依存属性を保存して、該信号依存属性が当該メディア信号のさまざまなコピーに一意的な透かしを埋め込むために使用できるようにするための信号属性記憶、
とを含むサーバーユニットを有する装置によって達成される。
【0013】
本発明の第四の側面によれば、この目的はさらに、メディア信号に透かしを埋め込む装置であって:
・メディア信号を、該メディア信号に依存するある透かし入れ属性とともに受信するための受信ユニットと、
・メディア信号のコピーに前記信号属性に基づいて透かしを埋め込むよう構成された透かし入れユニット、
とを有する装置によって達成される。
【0014】
本発明の第五の側面によれば、この目的はまた、メディアコンテンツを受信者に提供するための信号であって、メディア信号とともに該メディア信号に依存するある透かし入れ属性を有する信号によって達成される。
【0015】
請求項のいくつかは、メディア信号を信号依存属性に少なくとも基づく情報とともに受信者に送ることに向けられている。
【0016】
請求項のいくつかは、信号依存属性を使ってメディア信号のコピーに透かしを埋め込み、次いで一意的な透かしを含むメディア信号を受信者に送ることに向けられている。この方法では、受信者への配送前に透かしが埋め込まれる。
【0017】
請求項のいくつかは、メディア信号のコピーに透かしを混合して取り込むことに向けられている。これにより、限られた数の原透かしに基づいてメディア信号の複数のコピーへの一意的な透かしの提供が限られた追加処理で可能となる。
【0018】
請求項のいくつかは、メディア信号および信号依存属性を受信者に送ることに向けられている。この方法により、信頼された顧客は自分でメディア信号に一意的な透かしを埋め込むことができる。これはまた、透かし入れのメディア信号に対する影響を事前に検査することを可能にし、それにより埋め込み前に透かしの信号依存属性を修正することを可能にする。
【0019】
請求項のいくつかは、メディア信号における信号依存属性の無損失なエンコードおよびデコードに向けられている。これは、信号依存属性の伝送のために追加的な帯域幅を要求しないという利点がある。
【0020】
請求項のいくつかは、信号依存属性を決定するための人間の感覚系の知覚モデルを使うことに向けられている。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、同一のメディア信号の複数のコピーに透かしを埋め込むことをわずかな時間的遅延で可能にするという効果がある。さらに、必要な記憶容量もいくつかの並列透かしが保存される場合に比べて少ない。
【0022】
本発明の背後にある一般的な発想は、このように、透かし入れプロセスを、信号依存属性に基づく部分と透かし固有属性に基づく部分という二つの部分に分割することである。信号依存属性は前もって決定される一方、透かし固有属性はメディア信号の配送の時点で決定される。
【0023】
これらのことを含む本発明のさまざまな側面は、以下に記載される諸実施形態から明らかとなり、またそれを参照することで明確に説明されることであろう。
【0024】
これから本発明について、例としての同封の図面との関連でより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、メディア信号に透かしを与える分野に関係するものであり、特に電子メディア信号配送システムにおける透かし提供のために構成されている。
【0026】
図1は、本発明の第一の実施形態に基づく、メディア信号のコピーへの透かしの埋め込みを単純化するための装置のブロック概略図である。当該装置はサーバーユニット10およびメディア信号配送ユニット20を含んでおり、これらは互いに接続されている。当該装置の機能についてもこれから図2との関連で説明する。図2は、当該装置の動作の基礎となる方法のフローチャートを示している。サーバーユニットは、たとえば複数の楽曲のような複数のオーディオ信号といった複数のメディア信号を含むメディア記憶MS(media store)12を含んでいる。メディア記憶12は解析ユニット14に接続されている。この解析ユニット14が透かしを入れるべきメディア信号xに基づく透かし入れ属性pを決定する(ステップ30)。これらの属性を決定したのち、解析ユニット14はこれらの属性pを属性記憶PS(property store)16に保存する(ステップ32)。この決定はメディア記憶12における全信号について実行されるものであり、さらにオフラインで、すなわちメディア信号の顧客または受信者への配送や配送要求に先立って実行される。
【0027】
当該装置があるメディアコンテンツへの要求を受信すると、サーバーユニットはメディア記憶からのメディア信号xおよび該信号に対応する属性pを前記信号配送ユニット20内の複数の透かし入れユニット22、24、26に転送する(ステップ34)。図1では、そのようなユニットは3つ示されており、それぞれが一意的な透かしwa、wb、wcをメディア信号xに埋め込む(ステップ36)。透かしwa、wb、wcはここで透かし依存属性と見ることができる。この埋め込みを実行する際、透かし入れユニットは信号依存属性pを使う。どのようにしてできるかはのちにより詳細に述べる。その後、透かし入り信号xa、xb、xcは送信ユニット28に与えられ、これがこのようにして透かしの入れられたメディア信号xa、xb、xcを受信者に送る(ステップ38)。この送信は図1では太い矢印で示されている。ここでは実際の透かし入れはオンラインで、すなわち当該信号が配送されようとしているときに行われるので、透かし入れは信号が配送されようとしている直前に起こる。これにより多数の顧客がメディア信号を受信したがってもオンデマンドでの配送が可能となる。送信ももちろんオンラインで与えられる。送信ユニットは、問題の伝送媒体(今の例ではインターネット)のために使うべく適応された通常のインターフェースである。
【0028】
この装置に関していくつかの利点が得られる。信号依存属性が事前に決定されているため、わずかな時間的遅延で透かしを同一のメディア信号の複数のコピーに埋め込むことが可能である。さらに、これらの信号属性は単一のコピーのみを保存しておき、その後当該メディア信号のコピーに埋め込まれるあらゆる透かしに使用されるので、必要な記憶容量もいくつかの並列透かしが保存される場合に比べて少ない。
【0029】
この第一の実施形態にはいくつかの明らかな変形がある。まず第一に、透かし入れユニットは三つでなく一つだけとしてすべての透かし入れを提供することも可能である。その場合、入力情報として異なる透かしを有することになる。したがって、並列して使用されうる透かし入れユニットがより多かったりより少なかったりしてもよいことも認識するべきである。もう一つの明らかな修正は、ユニット10および20を単一のユニットに組み合わせることができるということである。それらはネットワーク内に設けることもできる。その際、そのネットワークは当該信号が顧客に送られるネットワークとは別個のネットワークであることが好ましいが、これは必要条件ではない。また、それぞれがサーバー10と通信するいくつかのユニット20を設けることも可能である。
【0030】
実際の透かし入れユニットをどのようにして動作させられるかについてこれから図3を参照しつつ述べる。図3は、包絡線変調透かし入れユニット22のブロック概略図を示している。当該装置は、PCM標本値などのオーディオ信号標本値のような信号標本値の透かし入れのための装置である。ただし、前記信号は本発明に基づく透かし入れを実行することのできる信号の種類のほんの一例であり、本発明の透かし入れの原理は圧縮されたオーディオ信号や、圧縮または非圧縮の画像もしくはビデオ信号に対してもまさに同じように適用できることを認識しておくべきである。透かし入れユニット22は帯域通過フィルタ44を含んでおり、これはメディア信号x[n]をフィルタ処理してフィルタ処理された信号xb[n]を乗算ユニット42に渡し、乗算ユニット42は透かしwa[n]をも受信して該透かしwa[n]とフィルタ処理されたメディア信号xb[n]の乗算をする。乗算ユニット42の出力は倍率ユニット46に接続され、そこで乗算ユニット42からの出力信号は倍率パラメータαで伸縮され、加算ユニット48に渡される。加算ユニット48はメディア信号x[n]も受信する。すると加算ユニット48の出力が透かし入りメディア信号xA[n]となる。倍率因子αは当該メディア信号に依存する透かし入れ属性から構成される信号p[n]によって制御される。これらの属性は、この例では、人間の聴覚系の音響心理学的モデルに基づいて、透かしがユーザーまたは顧客に知覚されない、すなわち当該信号x[n]のマスキング閾値未満で与えられることを保証するように決定される。そこで、メディア信号xに高度に依存するこれらの属性は事前に計算され、図1の属性記憶に保存される。これらの属性の計算はきわめて複雑で時間がかかるものであるが、各信号について一度行うだけでいいものである。また、帯域通過フィルタ処理された信号xb[n]は、透かしによって影響されないという意味で固定されており、事前に計算して属性記憶に保存しておくこともできる。これにより透かし入れユニットの構造がより単純になるが、サーバーにおいて追加的な記憶スペースが必要とされることになる。メディア信号に依存する透かし入れ属性は人間の聴覚系の音響心理学的モデルに基づくものに限定されないことを認識しておくべきである。メディア信号が静止画像またはビデオ信号である場合には、人間の視覚系の適切な視覚心理学的モデルが使われる。したがって、前記のモデルは人間の感覚系のモデルである。図3に示した特定の透かし入れ技術についてのさらなる詳細は、アウェケ・ネガシュ・レンマ、ハビエル・アプレア、ウェルネル・オーメン、レオン・ヴァンデケルクホフによる文書「時間領域オーディオ透かし入れ技術」、IEEEトランザクションズ・オン・シグナル・プロセシング、2003年4月、第51巻、pp.1088〜1097に見出すことができ、該文書はここに参照によって組み込まれる。
【実施例1】
【0031】
本発明の第二の実施形態によれば、透かしのペイロード容量を増すために二つの透かしを混合することも可能である。本発明のこの第二の実施形態に基づく、メディア信号のコピーへの透かしの埋め込みを単純化するための装置がブロック概略図として図4に示されている。ここで、サーバーユニット10は図1のサーバーユニットと同一である。ここでの顕著な違いは、信号配送ユニット20が、三つではなく二つの透かし入れユニット22および24、ならびに送信ユニット28と該透かし入れユニット22、24との間に設けられている混合ユニット50を含んでいるということである。サーバーユニット10はここでは図1のサーバーユニットと同じように動作し、したがってこれ以上詳細に述べることはしない。また、透かし入れユニット22および24は図1との関連で述べたのと同じように動作するのでこれ以上詳細に述べることはしない。混合器50は当該信号xの二つの透かし入りコピーxaおよびxbを受信し、それらを混合して信号xのさまざまなセクションに、当該混合器によって決定されるシーケンスで、前記二つの透かしの一方の透かしがはいっているようにする。図4では混合器からの出力信号には四つのセクションしか示されていないが、与えられるセクションの数がより多かったり少なかったりしてもよいことは理解しておくべきである。このように、混合器はメディア信号のコピーに埋め込まれた透かしwaおよびwbのさまざまな組み合わせを出力する。図示した例では組み合わせの数は16が可能であるが、図ではxA,B,A,B、xA,B,B,A、xB,A,A,Bの3つしか示していない。使われるセクションの数が増えれば可能な組み合わせの数が増えることも理解しておくべきである。別の可能な変形は、3つ以上の透かし入り信号を混合するというものである。このようにして混合された信号が次いでさまざまな顧客に送信するために送信ユニット28に与えられる。この混合がどのように実行されうるかについては、ミヒャエル・アルノルト、オリファー・ロビシュによる文書「ブロックベースの透かし入れ方式のためのリアルタイム概念」、WEDELMUSIC会議、2002年、ドイツ国ダルムシュタット、pp.156〜160においてより詳細に記載されている。
【0032】
図4の装置を用いることでペイロード容量が増加する。当該装置はさらに、限られた数の原透かしに基づいてメディア信号の複数のコピーへの一意的な透かしの提供が限られた追加処理で、よって透かし入れスピードのわずかな低下で可能になる。
【実施例2】
【0033】
第一および第二の実施形態はメディア信号を顧客に配送するシステムとの関連で述べた。そこでは当該システムは顧客への提供前に透かしを埋め込んでいた。このシステムは顧客が信頼された当事者ではない消費者システムである。しかし、本発明は顧客がたとえば企業のような信頼される種類の顧客であるようなシステムにおいても適用可能である。このシステムはたとえば映画情報を担うビデオ信号を映画館に配送するために使うことができる。
【0034】
本発明の第三の実施形態はこの種の環境に向けられている。本発明のこの第三の実施形態に基づく、メディア信号のコピーへの透かしの埋め込みを単純化するためのサーバー装置が、透かし埋め込みを実行するクライアント装置とともにブロック概略図として図5に示されている。このシステムの機能についてこれから、当該サーバー装置およびクライアント装置の動作の基礎となる方法のフローチャートを示す図6および図7との関連で説明する。
【0035】
上述したように、サーバーユニットは、複数のメディア信号を含むメディア記憶MS12を含んでいる。該メディア記憶12は解析ユニット14に接続されており、この解析ユニット14が透かしを入れるべきメディア信号xに基づく透かし入れ属性pを決定する(ステップ58)。これらの属性を決定したのち、解析ユニット14はこれらの属性pを属性記憶PS16に保存する(ステップ60)。この決定はメディア記憶12における全信号について実行されるものであり、さらにオフラインで、すなわちメディア信号の顧客への配送に先立って実行される。サーバーユニット10はまた送信ユニット52を含んでおり、これがメディア信号xおよび該メディア信号に依存する透かし属性pを送信する。この送信は図5では太い矢印で示されている。その情報は好ましくはさらに暗号化を使って送信される。
【0036】
クライアント装置54は受信ユニット56を含んでおり、そこでメディア信号および属性が受信される(ステップ64)。クライアント装置はまた透かし入れユニット22を含んでおり、したがって、受信ユニット56はこの透かし入れユニットにメディア信号xおよび属性pを与える(ステップ66)。透かし入れユニットはその後、信号依存属性pを使ってメディア信号中に一意的な透かしを埋め込む(ステップ68)。するとメディア信号は、もしビデオ信号であれば映画館において観客に見せるために使うことができる。その際、異なるさまざまな顧客が、自分が受信するメディア信号に自分の一意的な透かしを埋め込むことができる。当該透かし入れユニットはさらに、日時に依存する透かしを埋め込み、表示されるメディア信号のコピーの透かしは日によって、また時刻によって変わるよう構成することもできる。この方法により、違法なコピーおよび頒布を追跡することがより容易になる。
【0037】
この方法では、単純で信頼された透かし入れユニットが信頼される顧客のところに置かれることができる。その顧客が事前に決められている属性に基づいてローカルにメディア信号に透かしを入れる。コンテンツ所有権者はさらに、透かしのコンテンツへの影響を検査し、次いで手動で特定の特徴pを修正して透かしのエネルギーが当該信号のさまざまなフレームでより弱く、あるいはより強くなるようにすることができる。この方法により、透かしが知覚できないことを保証することができる。
【実施例3】
【0038】
メディア信号とともに属性を与えることで、情報を顧客に伝送するために必要とされる帯域が広がることになる。本発明の第四の実施形態はこの問題を解決し、属性のために余計な帯域幅が必要とされないようにすることに向けられたものである。
【0039】
本発明の第四の実施形態に基づくシステムが図8のブロック概略図に示されている。図8は図5と同様であり、ここでは相違点のみ詳細に述べる。サーバーは無損失のエンコードユニット(lossless encoding unit)LE72を含んでいる。これがメディア信号および属性pを受信し、該属性をメディア信号x内に無損失に符号化して修正信号x′を出力する。修正信号x′は次いで送信ユニット52に与えられ、顧客に送信される。したがって、クライアント装置も無損失デコードユニット74を含んでおり、これがメディア信号から損失なしに属性pを抽出し、これらの属性を透かし入れユニット22において適用する。この無損失な埋め込みがいかにしてできるかについては、欧州特許出願第03100093.8号においてより詳細に記載されており、該文献はここに参照によって組み込まれる。
【0040】
この第四の実施形態を用いることで、属性を送信するために余計な帯域幅は必要なくなる。
【0041】
本発明はすでに述べたこととは別に多くの利点を有する。本発明に基づく透かし埋め込みは、法的追跡のために特に好適である。その場合、透かしは電子コンテンツ配送システムを通じて頒布されるファイルに埋め込まれ、たとえばインターネット上の不法にコピーされたコンテンツを追跡するために使われる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第一の実施形態に基づく、メディア信号のコピーへの透かしの埋め込みを単純化するための装置のブロック概略図である。
【図2】図1の装置の動作の基礎となる、メディア信号への透かしの埋め込みを単純化する方法のフローチャートである。
【図3】図1の装置において使用されうる透かし入れユニットのブロック概略図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に基づく、メディア信号のコピーへの透かしの埋め込みを単純化するための装置のブロック概略図である。
【図5】本発明の第三の実施形態に基づく、メディア信号のコピーへの透かしの埋め込みを単純化するためのサーバー装置を対応するクライアント装置とともに示すブロック概略図である。
【図6】図5のサーバー装置の動作の基礎となる、メディア信号への透かしの埋め込みを単純化する方法のフローチャートである。
【図7】図5のクライアント装置の動作の基礎となる、メディア信号への透かしの埋め込みを単純化する方法のフローチャートである。
【図8】本発明の第四の実施形態に基づく、メディア信号のコピーへの透かしの埋め込みを単純化するためのサーバー装置を対応するクライアント装置とともに示すブロック概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディア信号のさまざまなコピーへの透かしの埋め込みを単純化する方法であって:
・メディア信号に依存する透かし入れ属性を決定し、
・前記信号依存属性を保存して、該信号依存属性が当該メディア信号のさまざまなコピーに一意的な透かしを埋め込む際に使用できるようにする、
ステップを有する方法。
【請求項2】
前記メディア信号を前記信号依存属性に少なくとも基づく情報とともに少なくとも一受信者に送信するステップをさらに有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
保存されている信号依存属性を使ってメディア信号のさまざまなコピーに一意的な透かしを埋め込むステップをさらに有する請求項2記載の方法であって、前記送信ステップが、埋め込まれた一意的透かしをもつメディア信号のコピーを各受信者に送信することを有することを特徴とする方法。
【請求項4】
メディア信号のコピーに透かしの一意的な混合を与えるための透かし混合ステップをさらに有することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記送信ステップが、受信者による透かしの埋め込みを可能にするためにメディア信号を前記信号依存属性とともに送信することを有することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記信号依存属性をメディア信号中に無損失にエンコードするステップをさらに有することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記信号依存属性が人間の感覚系の知覚モデルに基づくことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記決定して保存するステップがオフラインで実行され、前記送信ステップがオンラインで実行されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
メディア信号に透かしを埋め込む方法であって:
・メディア信号を、該メディア信号に依存するある透かし入れ属性とともに受信し、
・メディア信号のコピーに前記信号依存属性に基づいて透かしを埋め込む、
ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、信号属性がメディア信号中に無損失にエンコードされ、さらに該メディア信号から信号属性を無損失にデコードするステップを有することを特徴とする方法。
【請求項11】
メディア信号のさまざまなコピーへの透かしの埋め込みを単純化するための装置であって:
・メディア信号の信号依存透かし入れ属性を決定するための属性決定ユニットと、
・前記信号依存属性を保存して、該信号依存属性が当該メディア信号のさまざまなコピーに一意的な透かしを埋め込むために使用できるようにするための信号属性記憶、
とを含むサーバーユニットを有することを特徴とする装置。
【請求項12】
前記メディア信号を前記信号依存属性に少なくとも基づく情報とともに少なくとも一受信者に送るよう構成された送信ユニットをさらに有することを特徴とする、請求項11記載の装置。
【請求項13】
一意的に透かし入れされたメディア信号の各受信者への送信を可能にするために、保存されている信号依存属性を使ってメディア信号のさまざまなコピーに一意的な透かしを埋め込むための少なくとも一つの透かし入れユニットをさらに有することを特徴とする、請求項12記載の装置。
【請求項14】
受信者に送られる前記一意的な透かしが生成された透かしの一意的な混合であるように透かしを混合するよう構成されている混合ユニットを前記送信ユニットがさらに有することを特徴とする、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記送信ユニットが、受信者による透かしの埋め込みを可能にするためにメディア信号を前記信号依存属性とともに送信するよう構成されていることを特徴とする、請求項12記載の装置。
【請求項16】
前記信号依存属性をメディア信号中に無損失にエンコードするための無損失エンコードユニットをさらに有することを特徴とする、請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記属性決定ユニットが人間の感覚系の知覚モデルに基づいて前記信号依存属性を決定するよう構成されていることを特徴とする、請求項11記載の装置。
【請求項18】
メディア信号に透かしを埋め込む装置であって:
・メディア信号を、該メディア信号に依存するある透かし入れ属性とともに受信するための受信ユニットと、
・メディア信号のコピーに前記信号依存属性に基づいて透かしを埋め込むよう構成された透かし入れユニット、
とを有することを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項18記載の装置であって、信号属性がメディア信号中に無損失にエンコードされており、さらにメディア信号から信号属性を無損失にデコードするための無損失デコードユニットを有することを特徴とする装置。
【請求項20】
メディアコンテンツを受信者に提供するための信号であって、メディア信号とともに該メディア信号に依存するある透かし入れ属性を有することを特徴とする信号。
【請求項21】
前記属性が無損失にメディア信号に埋め込まれていることを特徴とする、請求項22記載の信号。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−528143(P2007−528143A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518468(P2006−518468)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051103
【国際公開番号】WO2005/006325
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】