説明

信号伝送回路及び半導体集積回路

【課題】長距離伝送路を有する場合であっても伝送路の容量を抑えたり電源電圧を下げたりすることなく、消費電力を下げることができる信号伝送回路及びそれを備えた半導体集積回路を提供すること。
【解決手段】入力されるデジタル信号Sig1を伝送路20に送信する送信部10と、伝送路20に送信されたデジタル信号Sig2を受信する受信部30とを有する信号伝送回路1において、送信部10は、電源電圧VCCと接地電圧GNDとの間に直列に接続した2つのNMOSトランジスタN0,N1を有し、これらのNMOSトランジスタN0,N1を入力されるデジタル信号Sig1に基づいて交互に動作させて2つNMOSトランジスタN0,N1の接続点からデジタル信号Sig2を伝送路20に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路間や半導体集積回路内で伝送路を介してデジタル信号を送受信する信号伝送回路及びそれを備えた半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体集積回路(IC)間や半導体集積回路内で信号配線である伝送路を介して信号を送受信するデジタル信号伝送回路がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図2に従来の信号伝送回路100を示す。この従来回路においては、伝送路110にデジタル信号を送信する送信部101にPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタからなるCMOSインバータ回路Inv100を用いている。この回路では伝送路に伝送するデジタル信号のレベルがHレベルのときVCCなる電源電圧レベルとなり、LレベルのときGNDなる接地電圧レベルとなる。
【0004】
このように、従来の信号伝送回路では、伝送路に伝送するHレベルのデジタル信号を電源電圧に、Lレベルのデジタル信号を接地電圧にするように駆動していたため、伝送路に存在する容量成分の影響により、伝送路で電力を消費していた。
【0005】
例えば、伝送路の容量成分をC1(F)、電源電圧をV1(V)、デジタル信号の遷移サイクル(LレベルからHレベルになるまでの時間或いは、HレベルからLレベルになるまでの時間)をT1(sec)とすると、この伝送路で消費される電力P1(P)は以下の式(1)で表される。
P1=C1×V1/T1 ・・・(1)
【0006】
従って、半導体集積回路内に伝送路として長距離配線が多数存在すると、伝送路の容量成分C1が大きくなることから電力消費が大きくなる。
【0007】
そこで、従来では、伝送路での電力消費を抑制するために、半導体集積回路において伝送路の容量成分C1を小さくしたり、電源電圧を低くしたり、或いは半導体集積回路の動作周波数を低くする等の方法が採用されていた。
【0008】
【特許文献1】特開平10−93414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、伝送路の容量成分C1を小さくするために隣接配線との間隔を広めに確保すると、半導体集積回路中の配線占有領域が増加するため、半導体集積回路の面積が増加してしまう。また、配線自体を細くして伝送路の容量成分C1を小さくしようとすると、配線自体の持つ抵抗が増加するため、伝送路における時定数が増加し半導体集積回路の動作スピードが遅くなる。
【0010】
また、半導体集積回路の電源電圧を小さくして電力消費を低減させると、回路全体の動作スピードが遅くなってしまい、結果として半導体集積回路を用いた製品の仕様を満足できなくなる恐れがある。そこで、半導体集積回路において電流消費が著しく大きな部分に別電源を用いて、この部分の電源電圧のみを下げることにより、半導体集積回路全体の動作スピードの低下を阻止することが考えられるが、これらの電源間の素子分離や各電源の電源配線を必要とするため、結果として面積が増大してしまう。
【0011】
また、半導体集積回路の動作周波数を低くすることで、電力消費を低減することができるが、回路全体の動作スピードが遅くなってしまい、結果として半導体集積回路を用いた製品の仕様を満足できなくなる恐れがある。
【0012】
そこで、本発明は、長距離伝送路を有する場合であっても伝送路の容量を抑えたり電源電圧を下げたりすることなく、消費電力を下げることができる信号伝送回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、入力されるデジタル信号を伝送路に送信する送信部と、前記伝送路に送信されたデジタル信号を受信する受信部とを有する信号伝送回路において、前記送信部は、電源電圧と接地電圧との間に直列に接続した2つのNMOSトランジスタを有し、これらのNMOSトランジスタを前記入力されるデジタル信号に基づいて交互に動作させて前記2つNMOSトランジスタの接続点からデジタル信号を前記伝送路に送信することを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記受信部は、増幅器と、この増幅器と前記伝送路との間に配置したNMOSトランジスタと、前記増幅器の入力をこの増幅器の出力に基づいて前記電源電圧にラッチするラッチ回路とを有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記ラッチ回路は、前記増幅器の出力をゲートに接続し、前記電源電圧にソースを接続し、前記増幅器の入力をドレインに接続したPMOSトランジスタにより構成したことを特徴とする。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記送信部のNMOSトランジスタの閾値電圧と前記受信部のNMOSトランジスタの閾値電圧を略同一としたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の発明において、前記送信部のNMOSトランジスタによる電流能力は、前記受信側のPMOSトランジスタの電流能力よりも大きくしたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか一項に記載の発明において、前記送信部から送信されるデジタル信号のHレベルの電圧が、前記受信部のNMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタの閾値電圧よりも大きいことを特徴とする。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、入力されるデジタル信号を伝送路に送信する送信部と、この送信回路から送信されたデジタル信号を受信する受信部とを有する信号送信回路を備えた半導体集積回路において、前記送信部は、電源電圧と接地電圧との間に直列に接続した2つのNMOSトランジスタを有し、これらのNMOSトランジスタを前記入力されるデジタル信号に基づいて交互に動作させて前記2つNMOSトランジスタの接続点からデジタル信号を前記伝送路に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1,7に記載の発明によれば、入力されるデジタル信号を伝送路に送信する送信部と、伝送路に送信されたデジタル信号を受信する受信部とを有する信号伝送回路において、送信部は、電源電圧と接地電圧との間に直列に接続した2つのNMOSトランジスタを有し、これらのNMOSトランジスタを入力されるデジタル信号に基づいて交互に動作させて前記2つNMOSトランジスタの接続点からデジタル信号を伝送路に送信するので、長距離伝送路を有する場合であっても伝送路の容量を抑えたり電源電圧を下げたりすることなく、消費電力を下げることができる。
【0021】
また、請求項2に記載の発明によれば、増幅器と、この増幅器と伝送路との間に配置したNMOSトランジスタと、増幅器の入力を増幅器の出力に基づいて電源電圧にラッチするラッチ回路とを有するので、電源電圧から接地電圧への貫通電流を抑制することができる。
【0022】
また、請求項3に記載の発明によれば、ラッチ回路をPMOSトランジスタ一つで構成しているので、ラッチ回路の実装面積が少なくて済む。
【0023】
また、請求項4に記載の発明によれば、送信部のNMOSトランジスタの閾値電圧と受信部のNMOSトランジスタの閾値電圧を略同一としたので、伝送路の容量成分への余分な電荷の充電や、増幅器の動作スピードの劣化を防止することができる。
【0024】
また、請求項5に記載の発明によれば、送信部のNMOSトランジスタによる電流能力は、受信側のPMOSトランジスタの電流能力よりも大きいものとしたので、PMOSトランジスタで構成されるラッチ回路のラッチ状態を反転させることが出来なくなるという問題を回避することができる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明によれば、送信部から送信されるデジタル信号のHレベルの電圧が、受信部のNMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタの閾値電圧よりも大きいものとしたので、増幅器において、Hレベルのデジタル信号の認識漏れを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本実施形態にかかる半導体集積回路(IC)は、入力される2値論理信号であるデジタル信号(入力信号)をドライブして伝送路に送信する送信部と、信号配線である伝送路に送信されたデジタル信号を受信する受信部とを有する信号伝送回路を備えている。
【0027】
送信部は、電源電圧であるVCCと接地電圧であるGNDとの間に直列に接続した2つのNMOSトランジスタを有しており、これらのNMOSトランジスタを入力信号に基づいて交互に動作させてこれら2つNMOSトランジスタの接続点からデジタル信号を伝送路に送信するようにしている。
【0028】
かかる信号伝送回路においては、伝送路を伝送するデジタル信号のHレベルのときの電圧がVCC(電源電圧)−Vth(NMOSトランジスタの閾値電圧)なる電圧レベルとなり、LレベルのときGNDなる接地電圧レベルとなる。
【0029】
従来の信号伝送回路では、VCCとGNDとの間に直列に接続するトランジスタを、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタで構成していたため、伝送路を伝送するHレベルのデジタル信号の電圧がVCCとなっていたが、本実施形態における信号伝送回路では上述のように伝送路を伝送するHレベルの信号の電圧がVCC−Vthとなる。
【0030】
従って、伝送路を伝送するHレベルのデジタル信号の電圧をVth分だけ電圧を低減させることができ、信号伝送回路のVCCの電圧を下げることなく、伝送路での電力消費を低減することができる。なお、消費電力の低減を行う目的で、他の回路の駆動電圧とは別に電圧を下げた信号伝送回路用電源を新たに加えることも考えられるが、このように信号伝送回路用電源を別途設けるとその電源を配置するための面積が必要となってしまうことになってしまう。一方、本実施形態のおける信号伝送回路では信号伝送回路用電源を配置する必要がないため、そのための面積が不要である。
【0031】
このように伝送路へ送信するHレベルのデジタル信号の電圧を低減することができるため、特に長距離伝送路が多数存在する半導体集積回路にこの回路構成を各々適用することで、消費電力の低減効果が大きなものとなる。
【0032】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を詳説する。図1は、本実施形態の信号伝送回路1の概略構成図である。本実施形態における信号伝送回路1は、一つの半導体集積回路A(IC)内に配置されるものであるが、2以上の半導体集積回路間(例えば、実装基板やインターポーザにおける2以上の半導体素子間)で信号伝送を行うものであってもよい。
【0033】
図1に示すように、信号伝送回路1は、入力されるデジタル信号Sig1を伝送路20に送信する送信部10と、信号配線である伝送路20に送信されたデジタル信号Sig2を受信する受信部30とを備えている。
【0034】
送信部10は、NMOSトランジスタN0、NMOSトランジスタN1、CMOSインバータ回路Inv1を備えている。
【0035】
NMOSトランジスタN0のドレインは電源電圧であるVCCに接続され、そのソースは送信部10の出力ノードXに接続される。また、NMOSトランジスタN1のドレインは送信部10の出力ノードXに接続され、そのソースは接地電圧であるGNDに接続される。また、NMOSトランジスタN0,N1のバックゲートは、GNDに接続される。
【0036】
また、デジタル信号である入力信号Sig1をNMOSトランジスタN0のゲートに入力し、入力信号Sig1をCMOSインバータ回路Inv1によって信号レベルを反転したデジタル信号Sig1’をNMOSトランジスタN1のゲートに入力している。なお、CMOSインバータ回路Inv1はVCC及びGNDを基準電圧として動作する。
【0037】
すなわち、信号伝送回路1は、電源電圧であるVCCと接地電圧であるGNDとの間に直列に接続したNMOSトランジスタN0及びNMOSトランジスタN1を有しており、入力信号Sig1をNMOSトランジスタN0のゲートに入力し、入力信号Sig1をCMOSインバータ回路Inv1によって反転したデジタル信号Sig1’をNMOSトランジスタN1のゲートに入力することにより、NMOSトランジスタN0,N1を入力信号Sig1に基づいて交互に動作させてこれら2つNMOSトランジスタN0,N1の接続点(出力ノードX)からデジタル信号Sig2を伝送路20に送信するようにしている。
【0038】
このように信号伝送回路1においては、Hレベルの信号を伝送路20に出力する駆動ドライバとしてNMOSトランジスタN0を用いており、Lレベルのデジタル信号を伝送路20に出力する駆動ドライバとしてNMOSトランジスタN1を用いている。つまり、NMOSトランジスタN0がHレベルの信号送信用の駆動ドライバとなり、NMOSトランジスタN1がLレベルの信号送信用の駆動ドライバとなる。
【0039】
従って、NMOSトランジスタN0の閾値電圧をVth0とすると、送信部10が出力するデジタル信号Sig2のHレベルのときの電圧がVCC−Vth0となり、出力するHレベルのデジタル信号Sig2の電圧をVCCからNMOSトランジスタN0の閾値電圧Vth0分低減させることができる。
【0040】
このように伝送路を伝送するHレベルのデジタル信号Sig2の電圧をVth0だけ低減させることができるため、VCCの電圧を下げることなく、伝送路20での電力消費を低減することができる。なお、消費電力低減を行う目的で、他の回路の駆動電圧とは別に電圧を下げた信号伝送回路用電源を新たに加えることも考えられるが、このように信号伝送回路用電源を別途設けるとその電源を配置するための面積が必要となってしまう。しかし、本実施形態における信号伝送回路1ではそのようなことがない。
【0041】
特に、長距離伝送路が多数存在する半導体集積回路において、この信号伝送回路1の回路構成を各々適用することで、消費電力の低減効果が大きなものとなる。
【0042】
ところで、受信部30において受信するデジタル信号Sig2のHレベルの電圧は上述のようにVCC−Vth0となる。
【0043】
しかし、このデジタル信号Sig2を受信する受信部を従来の信号伝送回路と同様にVCC及びGNDを基準電圧とするCMOSインバータ回路のみで構成すると、このCMOSインバータ回路を構成するPMOSトランジスタを完全にOFF状態にすることが出来ない状態が発生することがある。
【0044】
その結果、CMOSインバータ回路を構成するPMOSトランジスタのソース側からCMOSインバータ回路を構成するNMOSトランジスタのソース側へ向けて貫通電流が流れてしまう。この貫通電流はCMOSインバータ回路へ入力するデジタル信号Sig2の信号レベルがHレベルの期間中に流れる電流である。
【0045】
そこで、本実施形態における信号伝送回路1の受信部30では、この貫通電流を抑制するため、CMOSインバータ回路Inv2にさらに、NMOSトランジスタN2とPMOSトランジスタP0を加えることとし、受信部30を、NMOSトランジスタN2、PMOSトランジスタP0、CMOSインバータ回路Inv2,Inv3により構成した。なお、CMOSインバータ回路Inv2,Inv3はVCC及びGNDを基準電圧として動作する。
【0046】
PMOSトランジスタP0は、CMOSインバータ回路Inv2の出力をゲートに接続し、Vccにソースを接続し、CMOSインバータ回路Inv2の入力をドレインに接続しており、CMOSインバータ回路Inv2へ入力するデジタル信号Sig2をこのCMOSインバータ回路Inv2から出力されるデジタル信号Sig3に基づいてHレベルの信号をVCCにラッチするラッチ回路として機能する。なお、PMOSトランジスタP0のバックゲートは、VCCに接続する。
【0047】
このようにPMOSトランジスタP0をラッチ回路として動作させることによって、CMOSインバータ回路Inv2にデジタル信号Sig2のHレベル(VCC−Vth0)の電圧が入力されとき、これをVCCなる電源電圧レベルへと持ち上げて、上述したVCCからGNDへの貫通電流を抑制している。
【0048】
また、NMOSトランジスタN2は、伝送路20とCMOSインバータ回路Inv2との間に配置される。すなわち、伝送路20にNMOSトランジスタN2のドレインを接続し、CMOSインバータ回路Inv2の入力にNMOSトランジスタN2のソースを接続する。また、NMOSトランジスタN2のゲートはVCCに接続しており、これによりNMOSトランジスタN2は、常に動作状態(Normally ON)状態となり、所謂トランスファーゲートとして機能することになる。なお、NMOSトランジスタN2のバックゲートは、GNDに接続する。
【0049】
このNMOSトランジスタN2によって、PMOSトランジスタP0によりVCCレベルにしたCMOSインバータ回路Inv2の入力の電圧が送信部10側に伝送されることを抑制することができる。
【0050】
すなわち、このNMOSトランジスタN2がない場合、PMOSトランジスタP0によって、伝送路に伝送されるデジタル信号Sig2の電圧レベルがVCC−Vth0からVCCへと時間と共に上昇してしまうことになる。そうすると、低消費電力化を実現するためNMOSトランジスタN0の閾値電圧Vth0分だけ低下させて長距離伝送路にHレベルのデジタル信号Sig2を送信させる意味が無くなってしまうことになる。
【0051】
そこで、本実施形態における受信部30は、伝送路20とCMOSインバータ回路Inv2との間にNMOSトランジスタN2を配置することによって、PMOSトランジスタP0によってVCCレベルにしたCMOSインバータ回路Inv2の入力の電圧をNMOSトランジスタN2によってその閾値電圧Vth1分だけ減少させ、CMOSインバータ回路Inv2の入力に印加されるVCCレベルの電圧が送信部10側に伝送されることを抑制している。
【0052】
ここで、NMOSトランジスタN0の閾値電圧Vth0よりもNMOSトランジスタN2の閾値電圧Vth1が低いと、Vth0−Vth1の差分電圧によって受信部30から伝送路20の容量成分へ余分な電荷の充電が発生してしまい、一方で、閾値電圧Vth0よりも閾値電圧Vth1が高いと、CMOSインバータ回路Inv2の反転スピードが劣化してしまう。そこで、本実施形態における信号伝送回路1は、送信部10のNMOSトランジスタN0の閾値電圧Vth0と受信部のNMOSトランジスタN2の閾値電圧Vth1を略同一(Vth0≒Vth1)とすることによって、かかる問題を回避するようにしている。
【0053】
また、本実施形態における信号伝送回路1は、送信部10から送信されるHレベルのデジタル信号Sig2の電圧を、受信部30のNMOSトランジスタN2及びPMOSトランジスタP0の閾値電圧よりも大きくしている。すなわち、閾値電圧Vth0,Vth1がVCCの半分未満となるようなNMOSトランジスタN0,N2を用いる。閾値電圧Vth0,Vth1が電源電圧VCCの半分未満でなければ、CMOSインバータ回路Inv2において、Hレベルのデジタル信号Sig2を認識することができなくなるからである。なお、CMOSインバータ回路Inv2を構成するNMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタの閾値電圧の絶対値は0.5×VCCよりも十分に低いものが用いることが望ましい。
【0054】
また、送信部10のNMOSトランジスタN1及び受信部30のNMOSトランジスタN2による電流能力は、受信部30のPMOSトランジスタP0の電流能力よりも大きいものを選択する。PMOSトランジスタP0の電流能力がNMOSトランジスタN1,N2の電流能力に比べて大きいと、CMOSインバータ回路Inv2への入力がHレベルからLレベルに変化した場合に、PMOSトランジスタP0で構成されるラッチ回路のラッチ状態を反転させることが出来なくなるからである。
【0055】
このようにPMOSトランジスタP0の電流能力は、NMOSトランジスタN1,N2の電流能力に比べて十分に小さいことが望ましいが、PMOSトランジスタP0からなるラッチ回路のラッチ状態を反転させるための条件は、以下の式(2)を満たす必要がある。ここで、PMOSトランジスタP0のゲート幅をWp0、ゲート長をLp0とし、NMOSトランジスタN1のゲート幅をWn1、ゲート長をLn1とし、NMOSトランジスタN2のゲート幅をWn2、ゲート長Ln2とする。
(Lp0/Wp0)>{(Ln1/Wn1)+(Ln2/Wn2)} ・・・(2)
【0056】
以上のように、本実施形態においては、入力されるデジタル信号を伝送路に送信する送信部と、伝送路に送信されたデジタル信号を受信する受信部とを有する信号伝送回路において、送信部は、電源電圧と接地電圧との間に直列に接続した2つのNMOSトランジスタを有し、これらのNMOSトランジスタを入力されるデジタル信号に基づいて交互に動作させて前記2つNMOSトランジスタの接続点からデジタル信号を伝送路に送信するので、長距離伝送路を有する場合であっても伝送路の容量を抑えたり電源電圧を下げたりすることなく、消費電力を下げることができる。
【0057】
また、受信部30を上述のように構成することにより送信部10から長距離伝送路にVCC−Vth0なるHレベルを送信する際に、VCCからGNDへの貫通電流を抑制でき、長距離伝送路における信号レベルもVCC−Vth0へと保つことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態における信号伝送回路の構成を示す図である。
【図2】従来の信号伝送回路の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 信号伝送回路
10 送信部
20 伝送路(信号配線)
30 受信部
N0 送信部側のHレベル駆動用NMOSトランジスタ
N1 送信部側のLレベル駆動用NMOSトランジスタ
N2 受信部側のNMOSトランジスタ
P0 PMOSトランジスタ(ラッチ回路)
Inv1 送信部側のCMOSインバータ回路
Inv2 受信部側のCMOSインバータ回路(増幅器の一例に相当)
Inv3 受信部側のCMOSインバータ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるデジタル信号を伝送路に送信する送信部と、前記伝送路に送信されたデジタル信号を受信する受信部とを有する信号伝送回路において、
前記送信部は、電源電圧と接地電圧との間に直列に接続した2つのNMOSトランジスタを有し、これらのNMOSトランジスタを前記入力されるデジタル信号に基づいて交互に動作させて前記2つNMOSトランジスタの接続点からデジタル信号を前記伝送路に送信することを特徴とする信号伝送回路。
【請求項2】
前記受信部は、増幅器と、この増幅器と前記伝送路との間に配置したNMOSトランジスタと、前記増幅器の入力をこの増幅器の出力に基づいて前記電源電圧にラッチするラッチ回路とを有することを特徴とする請求項1に記載の信号伝送回路。
【請求項3】
前記ラッチ回路は、前記増幅器の出力をゲートに接続し、前記電源電圧にソースを接続し、前記増幅器の入力をドレインに接続したPMOSトランジスタにより構成したことを特徴とする請求項2に記載の信号伝送回路。
【請求項4】
前記送信部のNMOSトランジスタの閾値電圧と前記受信部のNMOSトランジスタの閾値電圧を略同一としたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の信号伝送回路。
【請求項5】
前記送信部のNMOSトランジスタによる電流能力は、前記受信側のPMOSトランジスタの電流能力よりも大きいことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の信号伝送回路。
【請求項6】
前記送信部から送信されるデジタル信号のHレベルの電圧が、前記受信部のNMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタの閾値電圧よりも大きいことを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の信号伝送回路。
【請求項7】
入力されるデジタル信号を伝送路に送信する送信部と、この送信回路から送信されたデジタル信号を受信する受信部とを有する信号送信回路を備えた半導体集積回路において、
前記送信部は、電源電圧と接地電圧との間に直列に接続した2つのNMOSトランジスタを有し、これらのNMOSトランジスタを前記入力されるデジタル信号に基づいて交互に動作させて前記2つNMOSトランジスタの接続点からデジタル信号を前記伝送路に送信することを特徴とする半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−228167(P2008−228167A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66698(P2007−66698)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】