説明

信号処理装置、および測定機

【課題】 適切な重み因子に基づくフィルタ処理により、データに適切に追従するフィルタ出力値を得る信号処理装置を提供する。
【解決手段】 ディジタル信号値を経路に沿った複数の区間に分割する。それぞれの区間ごとに、ディジタル信号値とこのディジタル信号値に対するフィルタ出力値との成分ごとの自乗和に基づく離隔量について中間値を算出する。区間内のディジタル信号値について、各区間における中間値に基づいて重み因子を算出するとともに更新する。算出された重み因子を用いたフィルタ演算を実行してディジタル信号値に対するフィルタ出力値を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、および測定機に関する。例えば、二次元的あるいは三次元的に取得された測定データに対してフィルタ処理を行う信号処理装置、および測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の三次元形状を測定する三次元測定機、二次元の輪郭形状を測定する輪郭形状測定機や画像測定機、真円度を測定する真円度測定機、更に被測定物表面のうねりや粗さ等を測定する表面粗さ測定機など、被測定物表面の輪郭形状、粗さ、うねりなどを測定する表面性状測定機が知られている。これらは接触式あるいは非接触式のセンサーと被測定物とを相対的に移動させて被測定物表面の測定データを収集する。
【0003】
このようにして収集された測定データには、通常、ノイズなどの外乱成分が含まれている。
この外乱成分としては、高周波成分を含む電気・磁気的な誘導ノイズなどが多いが、例えば、被測定物表面の輪郭形状を求めたい場合には、表面粗さやうねりなどの成分は外乱成分となり得る。
このような外乱成分を必要に応じて除去するために、測定データをアナログ信号からディジタル信号に変換し、このディジタル信号に対して、コンピュータのフィルタ処理プログラムによってフィルタ処理を行う方法がある。このフィルタ処理により例えば高周波成分が除去される。
【0004】
このようなフィルタリングを行うフィルタとしては、ガウシアン回帰フィルタが知られている(例えば、非特許文献1)。これは、被測定物表面をx軸方向に沿って所定のサンプリングピッチΔxで測定したときの測定データyi(i=1,2,3・・・)に対してガウス分布関数型の重み付けを行うフィルタである。
ガウス分布関数をs'ikとすると、測定データyiに対するフィルタ出力gkは次のように表される。
【0005】
【数1】

【0006】
ただし、ガウス分布関数s'ikは規格化され、次の式で表される。
【0007】
【数2】

【0008】
ここで、Δxはx軸に沿ったサンプリングピッチであり、λcはカットオフ波長である。
【0009】
さらに、測定データyiとフィルタ処理後データgkとの残差dkの大きさに応じて各測定データの重み因子を調整することにより、ロバスト性を備えたロバストガウシアン回帰フィルタが知られている(例えば、非特許文献1、2、3)。
【0010】
このようなガウシアン回帰フィルタおよびロバストガウシアン回帰フィルタによれば、測定データを削除したり、擬似データを加える処理などを行うことなく、総てのデータに対するフィルタ処理を行うことができる。特に、測定領域の両端部における歪の発生を抑えたフィルタ処理を行うことができる。
また、ロバストガウシアン回帰フィルタでは、異常データによる影響を抑えたフィルタ処理結果を得ることができる。
【0011】
ここで、重み因子の更新を行うロバストガウシアン回帰フィルタにおいて、各データ値と初期的に行ったフィルタ処理の出力値との残差に基づいて重み因子を更新する方法が知られ、重み因子の更新にあたっては、前記残差の中間値に基づいて各データの重み付けが行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ISO/TR 16610-10:2000(E) Geometrical Product Specification (GPS)-Data extraction techniques by sampling and filtration-Part10: Robust Gaussian regression filter, 1999
【非特許文献2】S. Brinkmann et al., Accessing roughness in three-dimensions using Gaussian regression filtering, International Journal of Machine Tools & Manufacture 41(2001)2153-2161
【非特許文献3】S. Brinkmann et al., Development of a robust Gaussian regression filter for three -dimensional surface analysis, Xth International Colloquiun on Surface, 2000, pp122-132
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、総ての測定データに対して一つの中間値を求めて、この中間値を全データに適用すると、データの局所的な変動を捕らえることができないという問題が生じる。
例えば、図11に示されるように、ノイズレベルが非常に小さいデータの場合、データとフィルタ出力との残差の中間値が非常に小さくなる。したがって、中間値に基づいて重みを更新すると、異常データと判定されて重みが0になってしまうデータが増えることになる。特に、初期処理により両端の歪みがでるので、重みの更新を行うロバスト的処理によって、両端部の歪みが非常に大きくなるという問題が生じる。
また、図12に示されるように、データ中にステップ形状の急激な変動がある場合、初期処理によってカットオフ波長相当の鈍りが生じる。したがって、中間値に基づいて重みを更新すると、ステップ形状の変化点においてデータの重みが0になり、結果として重み更新を行うロバスト的処理によって形状追随性の損なわれたフィルタ出力波形になってしまう。
【0014】
本発明の目的は、適切な重み因子に基づくフィルタ処理により、データに適切に追従するフィルタ出力値を得る信号処理装置、および測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の信号処理装置は、所定の経路に沿って測定された所定次元のディジタル信号値に対してフィルタ処理を行う信号処理装置において、前記ディジタル信号値の各信号値に対する重み因子を算出するとともにこの重み因子を再計算して更新する重み因子算出部と、前記重み因子算出部にて算出された前記重み因子と、重み付きスプラインフィルタと、前記重み付きスプラインフィルタのカットオフ波長に応じた係数とに基づいて、前記各信号値に対してフィルタ演算を実行して前記ディジタル信号値に対するフィルタ出力値を得るフィルタ演算実行部と、を備え、前記重み因子算出部は、前記ディジタル信号値を前記経路に沿った複数の区間に分割して複数の第1区間を生成する第1区間生成部と、それぞれの前記第1区間ごとに、前記ディジタル信号値とこのディジタル信号値に対する前記フィルタ出力値との成分ごとの自乗和に基づく離隔量について中間値を算出する中間値算出部と、を備え、前記重み因子算出部は、それぞれの前記第1区間内の前記ディジタル信号値の各信号値に対する重み因子を、それぞれの前記第1区間における前記中間値と、所定の係数とに基づいて再計算し、前記各重み因子が収束するまで更新することを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、ディジタル信号値は第1区間生成部によって複数の区間(第1区間)に分割され、中間値算出部により区間ごとに中間値が算出される。そして、区間ごとに算出された中間値がその区間に適用され、その区間内のディジタル信号値の重み因子が重み因子算出部により算出され更新される。このように求められた重み因子に基づいてフィルタ演算実行部によりフィルタ演算が実行される。すると、各区間で入力のディジタル信号値に対する重み因子が適切に求められるので、全体としてディジタル信号値の形状に適切に追従したフィルタ出力値が得られる。
例えば、全体として比較的揃った信号値を一体的に処理して一つの中間値を適用すると、全体から僅かに外れている信号値であっても異常データと扱われ、そのデータの寄与が全くないフィルタ出力となってしまうが、本発明では区間ごとに信号値の重み付けが判断されるので、各区間の特徴が適切に反映されたフィルタ出力が得られる。
【0017】
本発明の信号処理装置は、所定の経路に沿って測定された所定次元のディジタル信号値に対してフィルタ処理を行う信号処理装置において、前記ディジタル信号値の各信号値に対する重み因子を算出するとともにこの重み因子を再計算して更新する重み因子算出部と、前記重み因子算出部にて算出された前記重み因子と、重み付きスプラインフィルタと、前記重み付きスプラインフィルタのカットオフ波長に応じた係数とに基づいて、前記各信号値に対してフィルタ演算を実行して前記ディジタル信号値に対するフィルタ出力値を得るフィルタ演算実行部と、を備え、前記重み因子算出部は、前記ディジタル信号値を前記経路に沿った複数の区間に分割して複数の第1区間を生成する第1区間生成部と、前記ディジタル信号値の前記経路に沿って前記第1区間に対応する複数の第2区間を生成する第2区間生成部と、それぞれの前記第2区間ごとに、前記ディジタル信号値とこのディジタル信号値に対する前記フィルタ出力値との成分ごとの自乗和に基づく離隔量について中間値を算出する中間値算出部と、を備え、前記重み因子算出部は、それぞれの前記第1区間内の前記ディジタル信号値の各信号値に対する重み因子を、それぞれの前記第1区間に対応した前記第2区間の前記中間値と、所定の係数とに基づいて再計算し、前記各重み因子が収束するまで更新することを特徴とする。
【0018】
このような構成において、ディジタル信号値は第1区間生成部によって複数の区間(第1区間)に分割される。また、第2区間生成部によって、第1区間に対応する第2区間が生成される。第2区間としては、第1区間に対応し、第1区間内の信号値について重み付けを判断するのに適した中間値を算出できる区間とすることが例として挙げられる。続いて、中間値算出部により第2区間について中間値が算出される。そして、対応する第1区間内の各信号値の重み付けがこの中間値に基づいて行われる。
信号値の重み付けを判断するための区間(第2区間)と、算出された中間値が適用される区間(第1区間)とを別に考えることにより、各第1区間内の各信号値に対して適切な重み付けの判断を行うことができる。その結果、各区間(第1区間)で各信号値の重み付けがより適切に行われるので、全体として入力のディジタル信号値の特徴をより適切に反映したフィルタ出力値が得られる。
【0019】
本発明では、前記第2区間生成部は、前記第1区間よりも広い区間幅を有する前記第2区間を生成することが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、一例として、第1区間内の信号値を含めて、さらに、その前後の信号値の動きを反映する第2区間がとられる。すると、区間(第2区間)ごとの中間値に基づいて区間(第1区間)ごとの特徴が反映されつつも、全体としての傾向を十分に反映したフィルタ出力値が得られる。
例えば、ある区間(ある第1区間)で特異的に信号値の変動が大きいディジタル信号値に対してこの第1区間内の信号値のみに基づく中間値が求められると、全体から見て本来は異常データとみなされるべき信号値も削除されないこととなり、かえって全体の様子が反映されない事態も憂慮される。しかし、本発明によれば、前後の様子を含めた中間値に基づいて第1区間内の信号値に重み付けが行われるので、全体の傾向から外れることがない。
【0021】
本発明では、前記第1区間生成部は、隣接する前記第1区間同士の前記ディジタル信号値が連続的に接続される前記第1区間を生成し、前記第2区間生成部は、少なくとも対応する前記第1区間のディジタル信号値を含むとともに、隣接する区間同士で重複部分を有する前記第2区間を生成することが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、各第1区間は隣りと連続しているので、各第1区間ごとのフィルタ出力値が接続されれば、全体のディジタル信号値に対するフィルタ出力値が得られる。また、第2区間として、隣りあう区間同士に重複する部分を有する区間がとられるので、各第2区間について算出される中間値は前後の信号値の変化を反映した値となる。その結果、全体がなめらかに接続されるとともに、全体の傾向を十分に反映したフィルタ出力値が得られる。
【0023】
本発明の測定機は、上記に記載の信号処理装置と、前記信号処理装置でフィルタ処理された結果を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0024】
このような構成によれば、測定機は、上記に記載の信号処理装置を備えるので、上記に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1参考技術にかかる三次元測定機の構成を示す図である。
【図2】半径10mmの円に振幅1mmの正弦波を重ね合わせた二次元データにガウシアンフィルタ処理を行った結果を示す図である。
【図3】対数螺旋に標準偏差0.1mmのガウスノイズを重ねた二次元データに対してガウシアンフィルタ処理を行った結果を示す図である。(A)はカットオフ波長0.5mmの場合、(B)はカットオフ波長1.0mmの場合である。
【図4】正葉線に標準偏差0.1mmのガウスノイズを重ねた二次元データに対してガウシアンフィルタ処理を行った結果を示す図である。(A)はカットオフ波長0.5mmの場合、(B)は、カットオフ波長1.0mmの場合である。
【図5】エアフォイルの設計データに標準偏差0.1mmのガウスノイズを重ねた二次元データに対してガウシアンフィルタ処理を行った結果を示す図である。(A)はカットオフ波長0.5mmの場合、(B)はカットオフ波長1.0mmの場合である。
【図6】本発明の第2参考技術において、演算処理部の機能ブロック図である。
【図7】前記第2参考技術において測定データをロバストガウシアン回帰処理する工程を示すフローチャートである。
【図8】二次元データに対してロバストガウシアンフィルタ処理を行った結果を示す図である。(A)は正葉線にスパイクノイズを付加したデータについてカットオフ波長0.1mmとした場合、(B)はエアフォイルの設計データにスパイクノイズを付加したデータについてカットオフ波長0.5mmとした場合である。
【図9】ISOに準拠してBeaton-Functionを用いたフィルタ処理と適合型biweight法を用いた本発明のロバストガウシアンフィルタ処理との比較を示す図である。
【図10】分布関数の参考変形例としての箱型関数を示す図である。
【図11】ノイズが少ないデータに対して初期処理およびロバスト的信号処理を行った結果を示す図である。
【図12】ステップ状の変化を有するデータに対して初期処理およびロバスト的信号処理を行った結果を示す図である。
【図13】本発明の第1実施形態において、所定ピッチの区間に分割してロバスト的信号処理を行う様子を示した図である。
【図14】前記第1実施形態において、所定ピッチの区間に分割してロバスト的信号処理を行う場合に、中間値データを算出する範囲と、この中間値データを用いて処理する信号値の範囲が異なる場合の様子を示す図である。
【図15】前記第1実施形態を二次元データに適用した場合を示す図である。
【図16】前記第1実施形態を二次元データに適用した場合の拡大図である。
【図17】前記第1実施形態をステップ状の変化を有するデータに適用した様子を示す図である。
【図18】本発明の信号処理方法に係る第3参考技術において、信号処理手順を示すフローチャートである。
【図19】前記第3参考技術において、信号処理を行う装置の機能ブロック図である。
【図20】前記第3参考技術において、一次元時系列データに対してスプライン処理の結果とロバストスプライン処理との結果とを比較する図である。
【図21】本発明の第5参考技術において、スプライン処理の結果とロバストスプライン処理の結果とを比較する図である。
【図22】本発明の参考技術に係る伝達特性を示す図である。
【図23】本発明の参考変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
本発明の信号処理装置および方法は、主として、ロバスト処理における重み因子の計算方法にあるが、本発明を説明する前提として、ガウシアンフィルタおよびロバストガウシアンフィルタを参考技術として示す。
(第1参考技術)
本発明の第1参考技術にかかる測定機としての三次元測定機を図1に示す。
この三次元測定機1は、被測定物10の表面を接触ないし非接触で走査する測定子(測定部)21を先端に有するスタイラス(検出部)2と、測定子21を三次元的にx方向、y方向およびz方向に移動させる移動手段3と、測定子21の位置を検出して測定データとして出力する位置検出部4と、測定子21の移動を指令しかつ得られた測定データを演算処理する制御部5と、演算処理された結果を表示する出力部としての表示部6とを備えて構成されている。
制御部5は、測定子21を被測定物10の表面に沿って移動させる制御信号を移動手段3に出力する移動制御部51と、測定データに関して演算処理を行う信号処理装置としての演算処理部52とを備えている。
【0027】
演算処理部52は信号処理フィルタとしてのガウシアン回帰フィルタ(フィルタ演算実行部)521で構成されている。位置検出部4により検出された測定子21の座標が測定データとして演算処理部52に入力され、演算処理部52は測定データに対してガウシアン回帰処理を行う。
【0028】
一般に測定データは、三次元空間内の任意の平面上に分布する平面曲線データや、三次元空間内に立体的に分布する空間曲線データとして測定あるいは定義されるが、ここでは説明の都合上、x、y、z軸の3軸の直交座標系によって測定あるいは定義されたデータのうち、z軸座標値が一定なxy平面上の平面曲線データを二次元データと称する。また、この直交座標系内において三次元的に立体的に存在する空間曲線データを三次元データと称する。
二次元データは、例えば三次元測定機のz軸をクランプしてx軸とy軸とのみを可動とし、測定子21を被測定物平面上に沿って移動させ、所定のピッチΔlでサンプリングして取得することができる。この場合、測定データのz座標値はすべて同一となるので、便宜的に測定データを(xi,yi)で表すことができる。
また、平面的に描かれた曲線をスキャナで読み込み、直交xy平面上で所定のピッチΔlごとの座標を読み取って測定データ(xi,yi)として取得したものでもよい。
【0029】
演算処理部52は、二次元データである測定データ(xi,yi)に対してガウシアン回帰処理を行う。演算処理部52によるフィルタ出力(gx,k,gy,k)は、ガウス分布関数s'ikを用いて次の式で表される。
【0030】
【数3】

【0031】
ここで、ガウシアン分布関数s'ikは、サンプリングピッチを測定経路に沿った長さΔlとし、また、カットオフ波長についても測定経路に沿った波長λ'cとして次の式で表される。
【0032】
【数4】

【0033】
すなわち、演算処理部52は、入力される二次元データに対して式(3)に従う演算を行うことにより、測定経路に沿って移動するガウス分布関数s'ikと測定データとの積和演算の結果を出力する。
【0034】
このような構成を備える三次元測定機1において測定データをガウシアン回帰処理する動作について説明する。
まず、z座標を一定として測定子21が被測定物表面に沿って走査される。このとき、位置検出部4により測定子21の座標が測定経路に沿った所定のピッチΔlでサンプリングされ、サンプリングされた測定データ(xi,yi)は演算処理部52に送られる。演算処理部52で測定データ(xi,yi)はガウシアン回帰フィルタ521によりフィルタ処理される。すなわち、式(3)による演算が実行されフィルタ出力(gx,k,gy,k)が得られる。得られたフィルタ出力は、表示部6にて表示される。
【0035】
図2、図3、図4および図5に、二次元データに対してガウシアンフィルタ処理を行った結果を示す。
図2は、半径10mmの円の上にカットオフ波長と同じ波長を有する振幅1mmの正弦波を重ね合わせた二次元データにガウシアンフィルタ処理を行った結果である。図2より、フィルタリングによって正弦波の振幅が0.5mmに減衰していることが確認できる。すなわち、50%に減衰されていることがわかる。
【0036】
図3は、対数螺旋に標準偏差0.1mmのガウスノイズを重ねた二次元データに対してガウシアンフィルタ処理を行った結果である。図3(A)は、カットオフ波長0.5mmの場合であり、図3(B)は、カットオフ波長1.0mmの場合である。
図4は、正葉線に標準偏差0.1mmのガウスノイズを重ねた二次元データに対してガウシアンフィルタ処理を行った結果である。図4(A)は、カットオフ波長0.5mmの場合であり、図4(B)は、カットオフ波長1.0mmの場合である。
図5は、エアフォイルの設計データに標準偏差0.1mmのガウスノイズを重ねた二次元データに対してガウシアンフィルタ処理を行った結果である。図5(A)は、カットオフ波長0.5mmの場合であり、図5(B)はカットオフ波長1.0mmの場合である。
図3〜図5の結果に示されるように、二次元データに対するガウシアンフィルタによって、スプラインフィルタに比べて同等に平滑化された結果を得ることができる。
【0037】
このような第1参考技術によれば、次の効果を奏することができる。
(1)測定データが二次元データである場合についてもガウシアン回帰処理を行うことができる。したがって、被測定物10を平面内で倣い測定して測定経路に沿った所定ピッチで得られた測定データについてフィルタ処理を行うことができる。すると、測定経路に沿った所定ピッチでの測定データに基づいて形状解析を行うことができるので、例えば、x軸方向に沿った所定ピッチで測定データを得る場合に比べて、形状変化点をより正確に捉えることができる。例えば、直線領域から円弧領域への変化点や、段差の境界点などをより正確に捉えることができ、形状解析の精度を向上させることができる。
【0038】
(2)二次元データに対してガウシアン回帰処理が可能となるので、測定領域の端部における歪の発生を抑えたフィルタ処理を行うことができる。
【0039】
(参考変形例1)
次に、本発明の参考変形例1について説明する。参考変形例1の基本的構成は第1参考技術と同様であるが、参考変形例1が特徴とする点は、演算処理部52が三次元的に測定された三次元データ(x、y、z)に対してフィルタ処理を行う点にある。
このような三次元データに対するフィルタ処理を行う演算処理部52において、ガウシアン回帰フィルタ521からのフィルタ出力(gx,k,gy,k,gz,k)は次の式で表される。
【0040】
【数5】

【0041】
ガウス分布関数は、第1参考技術と同様に、測定経路に沿ったサンプリングピッチΔlおよび測定経路に沿ったカットオフ波長λ'cを用いて式(4)と同様に表される。
このような参考変形例1によれば、第1参考技術の効果と同様の効果を奏することができる。すなわち、測定データが三次元データである場合についてもガウシアン回帰処理によって適切なフィルタ処理を施すことができる。
【0042】
(第2参考技術)
次に、本発明の第2参考技術について説明する。
この第2参考技術が特徴とするところは、フィルタ処理において各測定データに対する重み因子を導入したロバスト推定法によるロバスト回帰処理を行う点にある。
第2参考技術の基本的構成は第1参考技術と同様であるが、演算処理部52の構成に異なる点を有する。図6に、演算処理部52の機能ブロック図を示す。
演算処理部52は、ロバストガウシアン回帰フィルタ(信号処理フィルタ)53で構成され、ロバストガウシアン回帰フィルタ53は、測定データに対して初期的に非ロバスト的なフィルタ処理を行う初期設定部54と、重み因子を算出する繰り返し計算を行ってロバスト的にフィルタ処理を行うロバスト回帰フィルタ処理部55とを備えている。
【0043】
初期設定部54は、ガウシアン回帰処理を初期的に行うものであり、第1参考技術のガウシアン回帰フィルタ521と同様に構成されている。これは、初期設定部54において総ての重み因子δが“1”に設定されることと同義である。
【0044】
ロバスト回帰フィルタ処理部55は、重み因子δを算出する重み因子算出部56と、演算処理を実行してフィルタ処理による出力値(gx,k,gy,k)を算出するフィルタ演算実行部57と、重み因子δの収束を判定する収束判定部58と、を備えて構成されている。
【0045】
重み因子算出部56は、各測定データに対する重み因子を算出する。
ここで、測定点(xi,yi)とこの測定点に対するフィルタ出力(gx,k,gy,k)との距離をdkとし、また、m回目の処理によるフィルタ演算実行部からのフィルタ出力(離散化点)を (gmx,k,gmy,k)とする。
【0046】
【数6】

【0047】
このとき、重み因子算出部56は、重み因子δmkを適合型バイウェイト(Biweight)法を用いて、標準偏差σで規格化された中間値データβと所定係数cとにより次の式で算出する。
【0048】
【数7】

【0049】
ここで、標準偏差で規格化された中間値データβは次の式で表される。
【0050】
【数8】

【0051】
ただし、σは、dmkの標準偏差である。
また、係数cは、次の式で決定される。
【0052】
【数9】

【0053】
重み因子算出部56は、式(7)に従って重み因子δを算出し、算出した重み因子δをフィルタ演算実行部57および収束判定部58に出力する。また、収束判定部58による判定により、重み因子δが収束していないと判断される場合、重み因子算出部56は重み因子δを更新する。すなわち、フィルタ演算実行部57での次段のステップ処理によるフィルタ出力(gm+1x,k,gm+1y,k)に基づいて重み因子δm+1kを式(7)により算出することで重み因子を更新する。
【0054】
フィルタ演算実行部57は、重み因子算出部56で算出された重み因子δを用いてロバストガウシアン回帰処理を実行する。
すなわち、測定データ(xi,yi)に対して、重み因子δm-1kを用いたロバストガウシアン回帰フィルタ53の出力(gmx,k,gmy,k)は、次の式で表される。
【0055】
【数10】

【0056】
なお、ガウス分布関数s'ikは、測定経路に沿ったサンプリングピッチΔlと測定経路に沿ったカットオフ波長λ'cとにより式(4)と同様に表される。ただし、次の式で規格化される。
【0057】
【数11】

【0058】
フィルタ演算実行部57は、収束判定部58での判定により重み因子δmkの収束が指令されると、収束した重み因子δmkによりフィルタ演算を式(10)に従って実行する。このときのフィルタ出力(gm+1x,k,gm+1y,k)はフィルタ演算実行部57から表示部6に出力される。
また、フィルタ演算実行部57は、収束判定部58での判定により重み因子δmkが収束していないことを指令された場合、重み因子δmkによりフィルタ演算を実行して、このフィルタ出力を重み因子算出部56に出力する。
【0059】
収束判定部58は、重み因子算出部56で更新された重み因子δmの収束を判定する。すなわち、(m−1)回目のステップ処理によるフィルタ出力(gm-1k)から決定される重み因子δm-1kと、m回目のステップ処理によるフィルタ出力(gmk)から決定される重み因子δmkと、を比較する。この比較において次の式で表される収束条件により重み因子δmkの収束を判定する。
【0060】
【数12】

【0061】
収束判定部58は、重み因子δmkの収束判定の結果をフィルタ演算実行部57に出力する。
【0062】
このような構成を備える第2参考技術において測定データをロバストガウシアン回帰処理する動作について説明する。図7に、ロバストガウシアン回帰処理の工程を示す。
まず、z座標を一定として測定子21が被測定物表面に沿って走査される。このとき、位置検出部4により測定子21の座標が測定経路に沿った所定のピッチΔlでサンプリングされ、サンプリングされた測定データ(xi,yi)は演算処理部52に送られる(ST1)。
演算処理部52において、まず、初期設定部54によりガウシアン回帰処理が実行され、この出力(g0x,k,g0y,k)は重み因子算出部56に送られる(ST2)。
重み因子算出部56は、式(10)により重み因子δ0kを算出し(ST3)、算出結果をフィルタ演算実行部57および収束判定部58に出力する(重み因子算出工程)。
フィルタ演算実行部57は、重み因子δ0kを用いて式(10)による演算を実行し、フィルタ出力(g1x,g1y)を得る(ST4、フィルタ演算実行工程)。
【0063】
一方、収束判定部58は、重み因子算出部56で算出された重み因子δ0kを初期的に設定された重みである“1”と式(12)により比較して収束を判定する(ST5、収束判定工程)。
収束判定部58における判定において重み因子δ0kが収束判定式(12)を満たさない場合(ST6:NO)、フィルタ演算実行部57で得られたフィルタ出力(g1x,g1y)は重み因子算出部56に出力される。
重み因子算出部56は、次のステップ処理(ST8)として重み因子δ1kを算出する(ST3)。
以後、収束判定部58において重み因子δmkが収束するまでステップ処理(ST3〜ST6)が繰り返される。
【0064】
収束判定部58において、重み因子δmkが収束したと判定されると(ST6:YES)、フィルタ演算実行部57によるフィルタ演算の出力(gm+1x,k,gm+1y,k)が表示部6で表示される。
【0065】
図8に、二次元データに対してロバストガウシアンフィルタ処理を行った結果を示す。図8(A)に、正葉線にスパイクノイズを付加したデータについてカットオフ波長0.1mmとするロバストガウシアンフィルタ処理を行った結果を示す。図8(B)に、エアフォイルの設計データにスパイクノイズを付加したデータについてカットオフ波長0.5mmとするロバストガウシアンフィルタ処理を行った結果を示す。
図8(A)(B)の結果に示されるように、ロバストガウシアンフィルタ処理によれば、ガウシアンフィルタ処理に比べてスパイクノイズの影響を抑えて平滑化された結果を得ることができる。
【0066】
このような構成を備える第2参考技術によれば、上記参考技術の効果(1)(2)に加えて、次の効果を奏することができる。
(3)二次元データに対してロバストガウシアンフィルタ処理を行うことができる。従って、局所的に離隔するような特異点データに影響されることなく、被測定物10の形状解析を行うことができる。
【0067】
(4)重み因子δの算出において、測定データ(xi,yi)とこの測定データに対するフィルタ処理による出力値(gx,k,gy,k)との二点間距離dkに基づいて測定データとフィルタ処理による出力値との離隔量を評価する。このように二点間距離dkを用いることにより、演算量を少なくし、出力応答速度を向上させることができる。例えば、単純に、測定データとフィルタ処理により得られる曲線との最短距離に基づいて計算を行う場合に比べて演算負荷を軽減することができる。
【0068】
(5)収束判定において、式(12)を用いることにより、ステップ処理間における重み因子δの変化量から収束を判定する。ロバスト推定法における収束判定において、重み因子δの変化が所定量以下となったところでフィルタ出力の収束を判定することができるので、不必要な繰り返しループを行うことがなく、フィルタ処理時間を短縮することができる。
また、例えば、残差(二点間距離)dkの中間値(メディアン)の変化量に基づいて収束判定を行うこともできるが、中間値の収束がフィルタ出力全体の収束を反映しない場合もありうる。そこで、総ての重み因子δの変化量に基づく収束判定を行うことにより、総ての測定データに対して適切に収束したフィルタ出力値を得ることができる。その結果、形状解析の精度を向上させることができる。
【0069】
ここで、図9に、ISOに準拠してBeaton-Functionを用いたフィルタ処理と適合型biweight法を用いた本発明のロバストガウシアンフィルタ処理との比較を示す。なお、ISOに準拠するBeaton-Functionを用いた重み因子の算出およびフィルタ処理の収束判定については、一次元時系列データの場合について非特許文献1、非特許文献2および非特許文献3に記載されている。
図9(A)(B)に示される結果からわかるように、ISO準拠型のBeaton-Functionを用いた場合ではスパイクノイズの影響を抑えきれていないのに対して、適合型Biweight法を用いた本参考技術によれば、スパイクノイズの影響を抑えてロバストな結果を得ることができる。
【0070】
(参考変形例2)
次に、本発明の参考変形例2について説明する。
参考変形例2の基本的構成は第2参考技術と同様であるが、参考変形例2が特徴とする点は、演算処理部52が三次元的に測定された三次元データ(xi,yi,zi)に対してフィルタ処理を行う点にある。
このような三次元データに対するフィルタ処理を行う演算処理部52において、ロバストガウシアン回帰フィルタからのフィルタ出力(gx,k,gy,k,gz,k)は次の式で表される。
【0071】
【数13】

【0072】
重み因子δmkは、第2参考技術に倣って式(7)によって算出される。ここで、測定点(xk,yk,zk)とこの測定点に対するフィルタ出力値(gmx,k,gmy,k,gmz,k)との距離dmkは次の式で表される。
【0073】
【数14】

【0074】
また、ガウス分布関数s'ikは、第1参考技術と同様に、測定経路に沿ったサンプリングピッチΔlおよび測定経路に沿ったカットオフ波長λ'cを用いて式(4)と同様に表される。
【0075】
このような参考変形例2によれば、第2参考技術と同様の効果を奏することができる。すなわち、測定データが三次元データである場合についてもロバストガウシアン回帰処理を行うことができる。したがって、被測定物の立体形状の形状解析を正確に行うことができる。
【0076】
(参考変形例3)
次に、本発明の参考変形例3について説明する。
この参考変形例3の基本的構成は第1参考技術、第2参考技術、参考変形例1および参考変形例2と同様であるが、ガウス分布関数sikに代えて他の分布関数を用いる点に特徴を有する。
すなわち、上記参考技術において、ガウス分布関数に代えて、図10に示される箱型関数を用いてもよい。この箱型関数は、区間[−W/2、W/2]においてf(l)=1/W、かつ、区間[−W/2、W/2]を除く領域においてf(l)=0である。
このような箱型関数を用いることにより、移動平均フィルタを構成することができる。
なお、分布関数は次の規格化の式を満たすものであればよい。
【0077】
【数15】

【0078】
(第1実施形態)
次に、本発明の信号処理装置に係る第1実施形態について説明する。第1実施形態の基本的構成は、第2参考技術と同様であるが、本第1実施形態は、重み因子δを更新するにあたって中間値データβを求める方法に特徴を有する。
【0079】
上記第2参考技術においては、重み因子の更新を(式7)〜(式9)によって行い、(式12)によって、重み因子δの収束を判定した。
ここで、第2参考技術において、総てのデータに対して一つの中間値データβを求めていた(式8参照)。
しかしながら、一つの中間値データβを全領域に適用すると、データの局所的な変動を捕らえることができない。
例えば、図11に示されるように、ノイズレベルが非常に小さいデータの処理を例にして考える。この場合、測定データとフィルタ出力との残差のメディアン(中間値データβ)が非常に小さくなる。したがって、(式7)によって重みを更新すると、異常データと判定されて重みが0になってしまうデータが増えることになる。特に、初期処理により両端の歪みがでるので、重みの更新を行うロバスト的処理によって、両端部の歪みが非常に大きくなるという問題が生じる。
また、図12に示されるように、データ中にステップ形状の急激な変動がある場合、初期処理によってカットオフ波長相当の鈍りが生じる。したがって、(式7)により、重みを更新すると、ステップ形状の変化点においてデータの重みが0になり、結果として重み更新を行うロバスト的処理によって形状追随性の損なわれたフィルタ出力波形になってしまう。
【0080】
そこで、第1実施形態では、データ領域を複数の部分領域に分割して、各部分領域ごとに中間値データβを求める。
【0081】
例えば、図13に示されるように、測定データを所定ピッチLの区間(第1区間)に分割し、この区間で中間値データβを(式8)から算出する。そして、この区間内の測定データについて(式7)により重み因子δを算出してもよい。
【0082】
あるいは、図14に示されるように、測定データを所定ピッチLの区間(第2区間)に分割し、この区間で中間値データβを(式8)から算出する。そして、中間値データβを算出する区間よりも狭い所定ピッチDの区間(第1区間)内に存在する測定データについて(式7)により重み因子δを算出してもよい。すなわち、中間値データβの算出には広めの区間を用い、この中間値データβを適用する区間を狭くする。中間値データβを算出する区間(所定ピッチL)と、この中間値データβを適用する区間(所定ピッチD)との関係を図14中に帯グラフとして示す。
【0083】
なお、各区間の長さLは同一であるとして説明したが、必ずしも区間の長さは同一ではなくてもよく、測定データに応じて個々に最適な長さとすればよい。
【0084】
このような第1実施形態によれば、区間ごとに算出された中間値データβに基づいてこの区間内のデータの重み付けを決定するので、区間ごとにデータに追従したフィルタ出力を得ることができる。
なお、中間値データβを算出する区間の所定ピッチLとしては、カットオフ波長と同程度にすることが例として挙げられる。
【0085】
以上の処理は、ロバストガウシアン回帰フィルタ、あるいは、参考変形例3に説明したように他の分布関数を用いたロバスト的処理を行うフィルタ処理に適用可能である。さらには、ロバストスプラインフィルタにも適用できる。
また、測定データ(ディジタル信号値)に対する重み因子に基づいて、ロバスト推定法によってフィルタ出力値を得るロバストフィルタであれば、ロバストスプラインフィルタあるいはロバストガウシアンフィルタ以外であっても適用できる。
図15〜図17に、本第1実施形態に従って求めた中間値データβを用いて重み更新を行ったロバストスプラインフィルタの結果を示す。
図15に示されるようなノイズが小さい二次元曲線にロバストスプラインフィルタを適用し、その繋ぎ目部分を拡大した図を図16に示す。図16から、部分領域に区分して算出された中間値データβを用いると、入力データに追従したフィルタ出力が得られることがわかる。
図17に、ステップ状の変化を有する入力データにロバストスプラインフィルタを適用した場合を示す。図17より、部分領域に区分して算出された中間値データβを用いると、入力データに追従したフィルタ出力が得られることがわかる。
【0086】
以下に参考技術として、ロバストスプラインフィルタによる信号処理方法について説明する。
【0087】
〔参考技術〕
(第3参考技術)
まず、重み付きスプラインフィルタを説明する。
一例として、nをデータ数、yk(k=0,1,・・・,n-1)を測定データ、スプライン関数をs、としたとき、測定データとの残差の二乗和、
【数16】

を、スプラインのエネルギー、
【数17】

を最小にするという条件下で、最小にすることで実現する。すなわち、スプラインフィルタは、
【数18】

としたとき、I(s)を最小にするスプライン関数sを求めることによって実現される。ただし、λはラグランジェの未定乗数である。
【0088】
いま、wk(k=0,1,・・・,n-1)を各測定点における残差に対する重みとすれば、重み付きのスプラインフィルタに対応した式、
【数19】

が得られる。
【0089】
ここで、スプライン関数sを定ピッチで離散化し、第2項を、
【数20】

とすると、
【数21】

【0090】
となる。ただし、
【数22】

とする。したがって、I(s)を最小にする離散化スプラインの値skは、
【数23】

を満足する。
【0091】
式(21)においてI(s)を最小にするスプライン関数で重み付きスプラインフィルタを定義する。
【0092】
ここで、非周期的測定データに対する重み付きスプラインフィルタの行列表現を考えると、非周期的な測定データにおいては、境界条件を
【数24】

とすると、
【数25】

であるので、
【数26】

とおくことにより、非周期的データに対する重み付きスプラインフィルタの行列表現は、
【数27】

で与えられる。
【0093】
但し、
【数28】

である。
【0094】
次に、周期的測定データに対する重み付きスプラインフィルタの行列表現を考えると、周期的な測定データにおいては、周期境界条件の式を
【数29】

とすると、
【数30】

であるから、
【数31】

として、周期データに対する重み付きスプラインフィルタの行列表現は、
【数32】

で与えられる。
【0095】
ここで、スプラインフィルタの振幅特性と位相特性を検討する。
重みW=I(単位行列)としたスプラインフィルタの式、
【数33】

を、z-1がΔx分の遅延を意味することに注意し、z変換で表現すると、
【数34】

となる。
【0096】
スプラインフィルタの伝達関数H(z)は、
【数35】

で与えられる。振幅特性と位相特性を調べるために、
【数36】

とおくと、
【数37】

となる。
【0097】
ここで、
【数38】

であるから、
【数39】

となり、振幅特性は、
【数40】

となる。
【0098】
一方、位相特性は、
【数41】

となり、スプラインフィルタは、位相補償フィルタであることがわかる。
【0099】
一例として、カットオフ波長ω=ωCで50%減衰のフィルタを実現する場合、振幅特性において、
【数42】

とすれば良く、これにより定数αが次式で与えられる。
【数43】

カットオフ波長ω=ωCで50%減衰のフィルタの伝達特性(振幅特性、位相特性)を図22に示す。
【0100】
次に、このように定義された重み付きスプラインフィルタの解法を検討する。
重み付きスプラインフィルタの行列表現、
【数44】

の左辺係数行列、
【数45】

は、対称行列である。
【0101】
そこで、Mを修正コレスキー(Choleskey)法により下三角行列Lと対角行列Dに分解すると(行列Mが疎行列であることを利用すれば、行列の分解は非常に効率的に行うことが出来る。)、
【数46】

となり、重み付きスプラインフィルタは、
【数47】

と表される。
【0102】
ここで、
【数48】

とすれば、
【数49】

となる。
【0103】
ここで、Lは下三角行列であるから容易にXを求めることが出来る。さらに、
【数50】

なる関係より、求まったXから容易にSを求めることができる。
実際の適用にあたっては、
【数51】

となる場合が有り得ることから、行列Mが特異になる可能性がある。
【0104】
従って、理想的には特異値分解法により解くことが好ましいが、特異値分解法を使った場合、大容量の記憶装置と多大の計算処理時間が必要となる。ところが、現実の測定データに適用することを考えた場合、行列Mが特異になることは非常にまれであり、行列Mが特異になっている状態では測定データ自体に問題を抱えていると推測される。そこで、本件発明においては、行列Mが特異になっている場合でも、なんらかの解答を出力可能な、ギルとマーレイ(Gill-Murray)の修正コレスキー(Choleskey)法を適用することで、計算効率の確保と特異行列対策を両立させる。
【0105】
以上のように解法に裏付けられた重み付きスプラインフィルタが導出されたので、以下、重みWを更新しながら収束条件を満足するまで繰り返し計算処理を行うことによって、ロバストスプラインフィルタが実現される。
図18は、その第1の処理手順を示すフローチャートであり、図19は、ロバストスプライン処理を実行する装置の機能ブロック図である。この処理にあたっては、まず、測定データを入力する測定データ入力ステップと、重み付きスプラインフィルタ式を選定する選定ステップ(ST103)が実行される。
【0106】
測定データ入力ステップでは、測定機などから入力手段101により測定データを入力してコンピュータなどの記憶装置102に格納するステップST101と、記憶された測定データの内、局所的に離隔した特異点データを特異点データ削除手段103にて削除するステップST102が実行される。
ここでは、測定データは粗さ測定機で測定された一次元時系列データであるとする。すなわち、例えば、表面粗さ測定機などにおいて、測定子を一方向(x方向)に移動させた場合に、x方向の所定ピッチで粗さデータyを取得したような場合を意味する。また、特異点データであるか否かの判定としては、測定データの最小二乗曲線からの離隔量が所定値以上、かつ、所定区間巾以下、であるか否かで容易に判定することが出来る。
【0107】
その後、選定ステップST103において、判定手段104にて測定データが非周期的であるか周期的であるかを判定し、この判定に従って重み付きスプラインフィルタ式を選定する。より具体的には、測定データが非周期的であるか周期的であるかによって(27)式を用いるか、(32)式を用いるかを判定する。
次に初期化処理(ST104)を行うが、ここでは、図示したように、W=I(単位行列)としたスプラインフィルタ処理の出力値の初期値S0を求める(非ロバストなスプラインフィルタ計算)。
次に、測定データYとSm(mは繰り返しのステップを示す。)とから後述する方法で重み調整手段105により重みWmを調整して決める(ST105)。
【0108】
その後、スプラインフィルタ出力算出手段106において重み付きスプラインフィルタ、
【数52】

からスプラインフィルタ出力Sm+1を求める(ST106)。
ここで、後述する重みの収束判定(ST107)を収束判定手段151にて行って、収束条件が成立していなければ、mを更新して(m=m+1)(ST110)、再度重みWmを調整する(ST105)。
【0109】
収束条件が成立していれば(ST107:YES)、繰り返し処理を終了して、ロバストスプラインフィルタの出力値Smを得て(ST108)、スプライン曲線が出力手段107に出力される。
以上の処理において、重みWmを調整して決める方法として(ST105)、適合型バイウエイト(Biweight)法を用いて次のように決定する。
【数53】

【0110】
ここで、σを残差の標準偏差として、
【数54】

【数55】

とする。
【0111】
また、ST107における収束条件としては、重みの変化が十分小さくなり、以下に示す式を満足した時点で繰り返し処理を打ち切る。
【数56】

【0112】
一次元時系列データに対して、この第3参考技術におけるロバストスプラインフィルタ処理による信号処理方法を実施した例を図20に示す。ここではスパイクノイズを付加した測定データを対象として、通常のスプラインフィルタ処理を施した結果のスプライン曲線と、本件発明のロバストスプラインフィルタ処理を施した結果のスプライン曲線の両方を重ねて表示したものである。この図から明らかなように、スプラインフィルタによる結果が、スパイクノイズによる変化を受けているのに対して、ロバストスプラインフィルタによる結果では、本来の形状に沿ったスプライン曲線が得られている。また、図20(A)からもわかるように、ゆるやかなうねりをもった形状に対する追随性も良好である。
【0113】
この方法によれば、次の効果が期待できる。
スプラインフィルタのロバスト化が容易に実現できるので、測定データ始点あるいは測定データ終点領域における変形を防止でき、測定データに含まれる周期の長いうねり成分に対する追随性あるいはノイズ成分に影響されずに測定データに含まれる形状を抽出できるので形状追随性も良好なフィルタ処理が可能となり、測定データの信頼性がより向上する。
測定データに含まれた局所的に離隔した特異点データを削除できるので、ロバストスプラインフィルタ処理の信頼性が更に向上する。
【0114】
重み付きスプラインフィルタ式により算出されるスプライン曲線からの測定データの離隔量が大きいほどその重みが小さくなるので、測定データに含まれる異常データの影響を受けないロバストスプラインフィルタ処理が可能となる。
繰り返しループ処理における重みの変化が所定値以下となった場合に、重みが収束したと判定できるので、不必要な繰り返しループによる処理を防止でき、ロバストスプラインフィルタ計算処理時間を短縮できる。
【0115】
(第4参考技術)
次に、ロバストスプラインフィルタを実現する第2の処理手順を説明する。この処理手順は、前記第1の処理手順と同一であるが、用いる計算式が異なる。
すなわち、重み付きスプラインフィルタの式、
【数57】

を変形して、
【数58】

とする。
【0116】
ここで、繰り返しステップmにおいて、
【数59】

を用いる。
この第2の処理手順の特徴は、前記第1の処理手順の効果に加えて更に次の効果が期待できる。
【0117】
左辺の係数行列、
【数60】

が繰り返しステップにおいて常に同値となるので、全体としてロバストスプラインフィルタ計算処理時間が短縮化される場合がある。
【0118】
(第5参考技術)
次に、本発明の信号処理方法にかかる第5参考技術として、二次元的に測定された二次元データである測定データに対する信号処理方法について説明する。ここで、二次元データである測定データとは、例えば、三次元測定機などにおいて、Z座標一定のもとで被測定物の輪郭曲面を所定ピッチで測定して取得された(x、y)座標値等を意味する。あるいは、平面的に描かれた図形をスキャナで読み込んだ場合のデータ等を意味する。つまり、第1参考技術においては、処理の対象はy座標だけであったのに対して、第5参考技術では、x座標およびy座標の両者を処理の対象とする。
第5参考技術の基本的構成は第3参考技術と同様であるが、スプライン曲線sを求めるための出発の式である式(21)に対応する式に特徴がある。
【0119】
第5参考技術では、スプラインのエネルギーを最小にする条件のもとで、測定データ(xk、yk)と、この測定データ(xk、yk)に対応するスプライン曲線s上の点(sx(xk、yk)、sy(xk、yk))とのX方向およびY方向の距離の二乗和を最小にするスプライン曲線を求める。すなわち、前記の付帯条件のもとで次の式で表されるI(s)を最小にするスプライン関数sを求める。
【0120】
【数61】

【0121】
ただし、右辺第2項において、ラプラシアンの2次近似を次のように表す。
【0122】
【数62】

【0123】
そして、x成分、y成分ごとにそれぞれ第3参考技術で説明した重み付きスプラインフィルタを実行する((式52)を参照)。
ここで、定数αについては、測定経路に沿ったサンプリングピッチΔlおよびカットオフ波長λc’から次の式で与えられる。
【0124】
【数63】

【0125】
すると、二次元測定データに関する各区間におけるスプライン曲線を導出するスプラインフィルタが実現される。
さらに、重みWを更新して収束条件(式56)を満たすまで処理を繰り返すロバストスプラインフィルタにおいては、(式53)における(yk−skm)を次の式で与えられる二点間距離とする。すなわち、測定データ(xk、yk)と、この測定データ(xk、yk)に対応するスプライン曲線s上の点(sx(xk、yk)、sy(xk、yk))との距離とする。
【0126】
【数64】

【0127】
(式64)を準用した(式53)により算出された重みWの収束を(式56)で収束判定する。重みWが収束したところで、出力値Sm(スプライン関数)から測定データに対応するスプライン曲線を得る。このスプライン曲線は、出力手段に出力される。
【0128】
図21(A)に、正葉線にスパイクノイズを付加した入力データに対して、スプライン処理を施したものと、ロバストスプライン処理を施したものとを比較して示す。図21(A)より、単なるスプライン処理では、スパイクノイズに引きずられてしまっているのに対して、ロバストスプライン処理では、スパイクノイズを抑えたロバスト(頑健)な結果が得られることがわかる。図21(B)に、エアフォイルにスパイクノイズを付加した入力データに対して、スプライン処理を施したものと、ロバストスプラインを施したものとを示すところ、結果は図21(A)と同様である。
【0129】
この第5参考技術においては、前記第3参考技術と第4参考技術における効果に加えて、更に次の効果を奏する。
測定データが直交座標における二次元データである場合に、スプライン曲線からの測定データの離隔量は、各軸毎の成分(例えば、X軸成分、Y軸成分など)の自乗和に基づいて決定するので、離隔量の算出が容易に行える。従って、各測定データの重みを決定することが容易になる。
【0130】
測定データが二次元データの場合であっても、各軸の成分毎(例えばX軸成分、Y軸成分など)に重み付きスプラインフィルタ計算を行った結果に基づいてスプラインフィルタ出力を得ることが出来るので、複雑な曲線であっても計算処理が単純化でき、測定データに対するロバストスプラインフィルタ計算処理時間の短縮化が可能になる。
【0131】
被測定物を二次元平面内で倣い測定して二次元データを得て、これを測定データとして入力する場合においても、測定経路に沿って所定間隔で測定データが入力されるので、例えばX軸方向に所定間隔で測定データを入力する場合などに比べて形状変化点(例えば直線から円弧への変化点や段差の境界点など)をより正確に捉えることが出来る。つまり、形状判断の誤りなどを防止でき、信頼性の高い測定データ入力が可能になる。
【0132】
(第6参考技術)
次に、本発明の信号処理方法にかかる第6参考技術として、三次元的に測定された三次元データである測定データに対する信号処理方法について説明する。ここで、三次元データである測定データとは、例えば、三次元測定機などにおいて、被測定物表面を所定ピッチで測定して取得された(x、y、z)座標値等を意味する。つまり、第3参考技術においては、処理の対象はy座標だけであったのに対して、第6参考技術では、x座標、y座標およびz座標の三者を処理の対象とする。
第6参考技術の基本的構成は第3参考技術と同様であるが、スプライン曲線sを求めるための出発の式である式(21)に対応する式に特徴がある。
【0133】
第6参考技術では、スプラインのエネルギーを最小にする条件のもとで、測定データ(xk、yk、zk)と、この測定データ(xk、yk、zk)に対応するスプライン曲線s上の点(sx(xk、yk、zk)、sy(xk、yk、zk)、sz(xk、yk、zk))とのX方向、Y方向およびZ方向の距離の二乗和を最小にするスプライン曲線を求める。すなわち、前記の付帯条件のもとで次の式で表されるI(s)を最小にするスプライン関数sを求める。
【0134】
【数65】

【0135】
ただし、右辺第2項において、ラプラシアンの2次近似は、第5参考技術に倣って表される。
そして、x成分、y成分、z成分ごとにそれぞれ第3参考技術で説明した重み付きスプラインフィルタを実行する((式52)を参照)。なお、定数αについては、三次元空間における測定経路に沿ったサンプリングピッチΔlおよびカットオフ波長λc’により(式63)に倣って定義される。
【0136】
すると、三次元測定データに関する各区間におけるスプライン曲線を導出するスプラインフィルタが実現される。
さらに、重みWを更新して収束条件(式56)を満たすまで処理を繰り返すロバストスプラインフィルタにおいては、(式53)における(yk−skm)を次の式で与えられる二点間距離とする。すなわち、測定データ(xk、yk、zk)と、この測定データ(xk、yk、zk)に対応するスプライン曲線s上の点(sx(xk、yk、zk)、sy(xk、yk、zk)、sz(xk、yk、zk))との距離とする。
【0137】
【数66】

【0138】
そして、(式66)を準用した(式53)により算出された重みWの収束を(式56)で収束判定する。重みWが収束したところで、出力値Sm(スプライン関数)から測定データに対応するスプライン曲線を得る。このスプライン曲線は、出力手段に出力される。
【0139】
この第6参考技術においては、前記第3参考技術と第4参考技術における効果に加えて、次の効果を奏する。
第5参考技術における効果を更に三次元データに対して奏することができる。従って、測定データが三次元データであっても、ロバストスプラインフィルタの計算処理時間を増大させることなく、計算負荷を低減することができる。
【0140】
(参考変形例4)
本発明の信号処理方法の参考変形例4について説明する。第3参考技術においては、収束判定された時点におけるスプライン曲線をそのまま信号処理結果として出力する例を示したが、この参考変形例4では、もう一度スプライン曲線を求め直し、その結果を信号処理結果として出力する。
【0141】
図23に、図18のスプライン曲線出力(ST109)の変形例を示す。
ここでは、まず取得した出力値Smを入力する(ST191)。その後、再計算を行うか否かを判定する(ST192)。例えば、高精度で信号処理結果を得たい場合はYESを、既に充分な精度で結果が得られたと判断するときはNOを、オペレータがその時点で指定すれば良い。あるいは、前もって指定しておくことも出来る。
再計算を行わない場合は(NO)、出力値Smのスプライン曲線を出力手段7によって出力する。再計算を行う場合は(YES)、前もって設定された所定値を超える重みを1に更新する(ST193)。つまり、所定値を超えた重みを持つ測定データは有効データであると判断して、スプライン計算処理への寄与度を100%とする。
その後、更新された重みに基づいて重み付きスプラインフィルタ計算を行って出力を得る(ST194)。ここで得られたスプライン曲線を信号処理結果として出力手段7から出力する(ST195)。
【0142】
この参考変形例4は、第3参考技術から第6参考技術においても実施できるので、上記効果の他、次の効果を奏することができる。
収束判定ステップにおいて重みが収束したと判定された時点の重みが所定値を超える場合にその重みを1に更新し、再度スプラインフィルタ出力を得て、その結果を信号処理結果として出力することができる。つまり、重み調整ステップとスプラインフィルタ出力算出ステップとを繰り返して重みが収束したと判定された時点において、その重みが所定値を超える点の測定データは有効データと見做してその重みを1に更新した後、再度スプラインフィルタ出力を得ることができるので、測定データに対するロバストスプラインフィルタ計算が、より確実に行える。そして、その結果を信号処理結果として出力するので、測定データに含まれる本来の形状成分に対して十分誤差の小さいスプライン曲線を求めることができるので、形状追随性の良いロバストスプラインフィルタ処理が可能となる。
【0143】
〔本発明のその他の態様〕
本発明の態様は、所定次元の測定データに対してフィルタ処理を施す信号処理方法において、前記測定データを測定経路に沿って入力する測定データ入力ステップと、前記測定データの種類に応じて、重み付きスプラインフィルタ式を選定する選定ステップと、前記測定データに対する重みを単位行列で与えてスプラインフィルタ出力の初期値を得る初期化ステップと、前記測定データに対する重みを調整して決定する重み調整ステップと、前記重み調整ステップで決定された重みを用いてスプラインフィルタ出力を得るスプラインフィルタ出力算出ステップと、前記重みの収束を判定する収束判定ステップと、前記スプラインフィルタ出力に基づいて信号処理結果を出力する出力ステップとを備え、前記収束判定ステップにおいて前記重みが非収束と判定された場合には、前記重みを更新して、前記重み調整ステップと前記スプラインフィルタ出力算出ステップとを繰り返し、前記測定データに対してロバストスプラインフィルタ処理を施すことが好ましい。
【0144】
この態様によれば、重み付きスプラインフィルタ式を選定し、選定されたスプラインフィルタ式に基づいてその重みを順次更新しながらスプラインフィルタ出力であるスプライン曲線を繰り返し算出し、その重みが収束した段階のスプライン曲線を信号処理結果であるフィルタ出力とするロバストスプラインフィルタ処理を測定データに対して容易に施すことができる。よって、測定データの始点あるいは測定データの終点領域における変形(end-effect)を防止でき、測定データに含まれる周期の長いうねり成分に対する追随性あるいはノイズ成分に影響されずに測定データに含まれる形状を抽出できる。その結果、形状追随性も良好なフィルタ処理が可能となり、測定データの信頼性がより向上する。
【0145】
ここで、所定次元の測定データとは、一次元時系列データ(例えば直交するX軸とY軸について、X軸方向に所定間隔毎にY軸の変位を測定したデータ)、二次元データ(例えば直交するX軸とY軸で定義されるXY平面内の自由曲線データ)、三次元データ(例えば直交するX軸、Y軸、Z軸で定義されるXYZ空間内の自由空間曲線データ)あるいは、半径と角度で定義される極座標などの測定データをいう。
また、測定データを測定経路に沿って入力するとは、あらかじめ決められた走査方向に沿って測定データを入力する他、被測定物の表面を倣い測定して測定データを入力することも含めていう。
【0146】
また、本態様では、前記重み調整ステップにおいて決定される重みは、前記重み付きスプラインフィルタ式により算出されるスプライン曲線からの測定データの離隔量が大きいほど、小さく調整されることが好ましい。
【0147】
この態様によれば、重み付きスプラインフィルタ式により算出されるスプライン曲線からの測定データの離隔量が大きいほどその重みが小さくなるので、測定データに含まれる異常データの影響を受けないロバストスプラインフィルタ処理が可能となる。つまり、スプライン曲線から離れた測定データの重みは小さく、スプライン曲線に近い測定データの重みを大きくして、繰り返し、スプライン曲線を求める。すると、スプライン曲線が徐々に測定データに含まれる本来の形状成分(例えば被測定物の形状真値など)に近づいて行く。そして重みが収束したと判断された時点の最後のスプライン曲線は、本来の形状成分に対して十分に誤差の小さい形状成分として求められる。その結果、極めて良好なロバストスプラインフィルタ処理が行えることになる。
【0148】
また、本態様では、前記測定データの前記所定次元が直交2次元以上の成分を含み、前記測定データの離隔量は、前記各成分毎の自乗和に基づいて決定されることが好ましい。
【0149】
この態様によれば、測定データが直交座標における二次元データあるいは三次元データである場合に、スプライン曲線からの測定データの離隔量は、各軸毎の成分(例えば、X軸成分、Y軸成分、Z軸成分など)の自乗和に基づいて決定するので、離隔量の算出が容易に行える。従って、各測定データの重みを決定することが容易になる。
【0150】
また、本態様は、前記収束判定ステップは、前記重み調整ステップにおいて決定された前記重みの変化が所定値以下となった場合に、前記重みが収束したと判定することが好ましい。
【0151】
この態様によれば、繰り返しループ処理における重みの変化が所定値以下となった場合に、重みが収束したと判定できるので、不必要な繰り返しループによる処理時間の増大を防止でき、ロバストスプラインフィルタ計算処理時間を短縮できる。さらに、重みの変化が所定値以下となった時点のスプライン曲線は、測定データに含まれる本来の形状成分との誤差が十分小さくなったものと判断できるので、極めて良好なロバストスプラインフィルタ処理が行えることになる。
【0152】
また、本態様では、前記出力ステップは、前記測定データに対する重みが所定値を超える場合にその重みを1に更新する重み更新ステップと、前記更新された重みに基づいてスプラインフィルタ出力を得るスプラインフィルタ再出力算出ステップと、前記スプラインフィルタ再出力算出ステップにおける前記スプラインフィルタ出力を信号処理結果として出力する信号処理結果出力ステップと、を含むことが好ましい。
【0153】
この態様によれば、収束判定ステップにおいて重みが収束したと判定された時点の重みが所定値を超える場合にその重みを1に更新し、再度スプラインフィルタ出力を得て、その結果を信号処理結果として出力することができる。つまり、重み調整ステップとスプラインフィルタ出力算出ステップとを繰り返して重みが収束したと判定された時点において、その重みが所定値を超える点の測定データは有効データとみなしてその重みを1に更新した後、再度スプラインフィルタ出力を得る。すると、測定データに対するロバストスプラインフィルタ計算が、より確実に行える。そして、その結果を信号処理結果として出力するので、測定データに含まれる本来の形状成分に対して十分誤差の小さいスプライン曲線を求めることができる。その結果、形状追随性の良いロバストスプラインフィルタ処理が可能となる。
【0154】
また、本態様では、前記測定データの前記所定次元が直交2次元以上の成分を含み、前記スプラインフィルタ出力を得るときに、前記各成分毎に重み付きスプラインフィルタ計算を行った結果に基づいて前記スプラインフィルタ出力を得ることが好ましい。
【0155】
この態様によれば、測定データが二次元データや三次元データの場合であっても、各軸の成分毎(例えばX軸成分、Y軸成分など)に重み付きスプラインフィルタ計算を行った結果に基づいてスプラインフィルタ出力を得ることが出来るので、複雑な曲線であっても計算処理が単純化でき、測定データに対するロバストスプラインフィルタ計算処理時間の短縮化が可能になる。
【0156】
また、本態様では、前記測定データ入力ステップにおいて、前記測定データは前記測定経路に沿って所定間隔で入力されることが好ましい。
【0157】
この態様によれば、あらかじめ決められた走査方向に沿って測定データを入力する他、被測定物の表面を倣い測定して測定データを入力する場合においても、測定経路に沿って所定間隔で測定データが入力されるので、例えばX軸方向に所定間隔で測定データを入力する場合などに比べて形状変化点(例えば直線から円弧への変化点や段差の境界点など)をより正確に捉えることが出来る。つまり、形状判断の誤りなどを防止でき、信頼性の高い測定データ入力が可能になる。
【0158】
また、本態様では、前記測定データ入力ステップは、前記測定データに対する局所的に離隔した特異点データを削除するステップを含むことが好ましい。
【0159】
この態様によれば、例えば、工場内などの動力機器をノイズ源とする強力な誘導ノイズの発生によって、測定データに含まれた局所的に突出して離隔したデータ(例えば、両側のデータに対して1箇所だけが極端に値の異なるデータ)を明らかな特異点データとして前もって削除できるので、ロバストスプラインフィルタ処理の信頼性が更に向上する。
【0160】
本態様の信号処理プログラムは、上記の信号処理方法をコンピュータに実行させることが好ましい。また、本発明の記録媒体は、上記信号処理プログラムをコンピュータ読み出し可能に記録していることが好ましい。そして、本発明の信号処理装置は、上記の信号処理プログラムをコンピュータに実行させることが好ましい。
【0161】
このような構成によれば、CPU(中央処理装置)やメモリ(記憶装置)を有するコンピュータを組み込んでこのコンピュータに各工程を実行させるようにプログラムを構成すれば、例えば、重み調整や収束判定などの他、測定データの次元に従った離隔量の決定などを含めて各種のパラメータを容易に変更することができる。そして、このプログラムを記録した記録媒体をコンピュータに直接差し込んでプログラムをコンピュータにインストールしてもよく、記録媒体の情報を読み取る読取装置をコンピュータに外付けし、この読み取り装置からコンピュータにプログラムをインストールしてもよい。なお、プログラムは、インターネット、LANケーブル、電話回線等の通信回線や無線によってコンピュータに供給されてインストールされてもよい。
【0162】
本発明の態様は、所定の経路に沿って測定された所定次元のディジタル信号値に対して所定の分布関数に関する積和演算により信号処理を行う信号処理フィルタを備え、前記分布関数は、前記所定の経路に沿ったサンプリングピッチおよび前記所定の経路に沿ったカットオフ波長によって規定され、前記信号処理フィルタは、前記ディジタル信号値に対して成分ごとに前記分布関数を乗算することにより成分ごとのフィルタ出力値を得るフィルタ演算実行部を有することが好ましい。
【0163】
このような構成によれば、所定次元のディジタル信号値、例えば二次元、三次元のディジタル信号値に対して成分ごとに信号処理が行われる。この信号処理において、フィルタ演算実行部は、入力されたディジタル信号に分布関数を乗算して線形に足し合わせてフィルタ出力値を得る。ここで、分布関数が、ディジタル信号を抽出する経路に沿ったサンプリングピッチおよびカットオフ波長で規定されている。つまり、分布関数がディジタル信号の抽出経路に沿って移動しながらディジタル信号の積和演算が行われる。その結果、信号を抽出する経路に従った忠実な信号処理が行われる。
このようにサンプリング経路に沿った分布関数でディジタル信号の成分ごとに信号処理を行うことにより、一次元時系列データのみならず、二次元、三次元のディジタルデータについても適切に信号処理を行うことができる。その結果、例えば、被測定物表面の形状データについて信号処理を行う場合でも、測定経路に沿った形状解析を行うことができるので、形状の変化点をより正確に捉えるなど形状解析の精度を向上させることができる。
【0164】
本態様では、前記信号処理フィルタは、前記ディジタル信号値の各信号値に対する重み因子を算出する重み因子算出部を備え、前記フィルタ演算実行部は、前記ディジタル信号に対して、成分ごとに前記分布関数と前記重み因子算出部にて算出された重み因子とに関する積和演算を実行することが好ましい。
【0165】
このような構成によれば、重み因子算出部により各ディジタル信号値に対して重み因子が設定される。この重み因子により各ディジタル信号値の重みを調整して、さらに、分布関数による積和演算が行われる。
ディジタル信号値の各信号値に対して重みを調整することにより、例えば、異常なデータの影響を排除することができる。
【0166】
本態様では、前記重み因子算出部は、前記ディジタル信号値とこのディジタル信号値に対する前記フィルタ出力値との成分ごとの自乗和に基づく離隔量に応じて前記重み因子を決定することが好ましい。
【0167】
このような構成によれば、重み因子算出部は、ディジタル信号値とフィルタ出力値との成分ごとの自乗和を計算するだけでよいので、演算負荷が軽減される。例えば、ディジタル信号とフィルタ処理によって得られる曲線との最短距離に基づいて重み因子を決定することも可能であるが、高次元のデータである場合には演算負荷が飛躍的に大きくなる。しかし、本発明によれば、演算量が少ないので、出力応答速度を向上させることができる。
【0168】
本態様では、前記重み因子算出部は、フィルタ演算実行部によるフィルタ出力値を用いて前記重み因子の再計算を行い、前記信号処理フィルタは、前記重み因子算出部で算出された重み因子と前回のステップにおいて算出された前記重み因子との変化量に基づいて前記重み因子の収束状態を判定する収束判定部を有し、前記フィルタ演算実行部は、前記収束判定部による判定により収束したと判定された重み因子を用いたフィルタ出力値を外部出力することを特徴とする。
【0169】
このような構成によれば、収束判定部により、重み因子の変化量に基づいて信号処理の収束が判定される。重み因子が収束したと判定されたところで重み因子の計算が終了され、収束した重み因子によりフィルタ出力が得られる。したがって、重み因子の変化量に基づいて収束が判定されるので、総てのディジタル信号値に対して適切に収束した結果を得ることができる。
【0170】
本態様では、前記ディジタル信号値は、二次元以上のデータであることが好ましい。
このような構成によれば、二次元あるいは三次元のディジタル信号値に対して信号処理を行うことができる。
【0171】
本態様では、前記分布関数は、ガウス分布関数であることが好ましい。
このような構成によれば、ガウシアンフィルタあるいはロバストガウシアンフィルタを構成することができる。
なお、分布関数としては、移動平均フィルタを構成する箱型関数であってもよい。
【0172】
本態様では、前記信号処理フィルタは、前記ディジタル信号値の各信号値に対する重み因子を算出する重み因子算出部を備え、前記重み因子算出部は、前記ディジタル信号値を経路に沿って所定ピッチの区間に分割するとともに、前記区間ごとに、前記ディジタル信号値とこのディジタル信号値に対する前記フィルタ出力値との成分ごとの自乗和に基づく離隔量について中間値を算出し、前記区間内の各信号値について、この区間の前記中間値に基づいた重み因子の決定式によって各信号値の重みを決定することが好ましい。
【0173】
このような構成によれば、区間ごとに算出された中間値データに基づいてこの区間内のデータの重み付けを決定するので、区間ごとにデータに追従したフィルタ出力を得ることができる。なお、区間ごとに算出された中間値に基づく重み決定の式を区間内の総ての信号値に適用してもよいし、区間内の一部の信号値について適用してもよい。そして、区間のピッチはカットオフ波長程度にすることが例として挙げられる。
【0174】
本態様は、所定の経路に沿って測定された所定次元のディジタル信号値に対して所定の分布関数に関する積和演算により信号処理を行う信号処理方法であって、前記分布関数は、前記所定の経路に沿ったサンプリングピッチおよび前記所定の経路に沿ったカットオフ波長によって規定され、前記ディジタル信号値の各信号値に対する重み因子を算出する重み因子算出工程と、前記ディジタル信号に対して、成分ごとに前記重み因子算出工程にて算出された重み因子と前記分布関数とに関する積和演算を実行するフィルタ演算実行工程とを備えていることが好ましい。
【0175】
このような構成によれば、上記発明と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、ディジタル信号値の各信号値に対して重みを調整することにより、例えば、異常なデータの影響を排除することができる。
【0176】
本態様では、前記重み因子算出工程は、前記ディジタル信号値とこのディジタル信号値に対する前記フィルタ出力値との成分ごとの自乗和に基づく離隔量に応じて前記重み因子を決定することが好ましい。
このような構成によれば、上記発明と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、ディジタル信号値とフィルタ出力値との成分ごとの自乗和を計算するだけでよいので、演算負荷が軽減される。
【0177】
本態様では、前記重み因子算出工程は、フィルタ演算実行工程によるフィルタ出力値を用いて前記重み因子の再計算を行い、前記重み因子算出工程で算出された重み因子と前回のステップにおいて算出された前記重み因子との変化量に基づいて前記重み因子の収束状態を判定する収束判定工程を有し、前記フィルタ演算実行工程は、前記収束判定工程による判定により収束したと判定された重み因子を用いたフィルタ出力値を外部出力することが好ましい。
【0178】
このような構成によれば、上記発明と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、重み因子の収束が判定されるので、無駄に繰り返し計算を行う必要がなく、また、重み因子の変化量に基づいて収束が判定されるので、総てのディジタル信号値に対して適切に収束した結果を得ることができる。
【0179】
本態様の信号処理方法は、所定次元の測定データに対してフィルタ処理を施す信号処理方法において、前記測定データを測定経路に沿って入力する測定データ入力ステップと、前記測定データの種類に応じて、重み付きスプラインフィルタ式を選定する選定ステップと、前記測定データに対する重みを単位行列で与えてスプラインフィルタ出力の初期値を得る初期化ステップと、前記測定データに対する重みを調整して決定する重み調整ステップと、前記重み調整ステップで決定された重みを用いてスプラインフィルタ出力を得るスプラインフィルタ出力算出ステップと、前記重みの収束を判定する収束判定ステップと、前記スプラインフィルタ出力に基づいて信号処理結果を出力する出力ステップとを備え、前記収束判定ステップにおいて前記重みが非収束と判定された場合には、前記重みを更新して、前記重み調整ステップと前記スプラインフィルタ出力算出ステップとを繰り返し、前記測定データに対してロバストスプラインフィルタ処理を施し、前記重み調整ステップは、前記測定データを経路に沿って所定ピッチの区間に分割するとともに、前記区間ごとに、前記重み付きスプラインフィルタ式により算出されるスプライン曲線からの前記各測定データの離隔量について中間値を算出し、前記区間内の前記各測定データについて、この区間の前記中間値に基づいた重み因子の決定式によって各測定データの重みを決定することを特徴とする。
【0180】
この発明によれば、重み付きスプラインフィルタ式を選定し、選定されたスプラインフィルタ式に基づいてその重みを順次更新しながらスプラインフィルタ出力であるスプライン曲線を繰り返し算出し、その重みが収束した段階のスプライン曲線を信号処理結果であるフィルタ出力とするロバストスプラインフィルタ処理を測定データに対して容易に施すことができる。よって、測定データの始点あるいは測定データの終点領域における変形(end-effect)を防止でき、測定データに含まれる周期の長いうねり成分に対する追随性あるいはノイズ成分に影響されずに測定データに含まれる形状を抽出できる。その結果、形状追随性も良好なフィルタ処理が可能となり、測定データの信頼性がより向上する。
そして、区間ごとに算出された中間値データに基づいてこの区間内のデータの重み付けを決定するので、区間ごとにデータに追従したフィルタ出力を得ることができる。なお、区間ごとに算出された中間値に基づく重み決定の式を区間内の総ての信号値に適用してもよいし、区間内の一部の信号値について適用してもよい。そして、区間のピッチはカットオフ波長程度にすることが例として挙げられる。
【0181】
なお、本発明の信号処理装置、信号処理方法、信号処理プログラム、記録媒体および測定機は、上記実施形態、参考技術、参考変形例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることはもちろんである。
例えば、演算処理部52をCPU(中央処理装置)やメモリ(記憶装置)等を備えたコンピュータで構成して、フィルタ演算実行部57や重み因子算出部56、収束判定部58としての各機能を実現させてもよい。この際、このコンピュータにフィルタ演算実行部57や重み因子算出部56、収束判定部58として機能させるための信号処理プログラムをインターネット等の通信手段や、CD-ROM,メモリカード等の記録媒体を介してインストールしてもよい。あるいは、記録媒体を読み取る機器を外付けで接続してもよい。このように、演算処理部52をコンピュータで構成し、信号処理をソフト的に行う構成とすれば、所定のパラメータ、例えば、サンプリングピッチやカットオフ波長、収束条件などを適宜変更することが容易となる。
【0182】
例えば、第2参考技術において、重み因子は適合型Biweight法により算出され、係数cは式(9)に従って中間値データβにより決定されるとして説明したが、係数cは、所定値で固定されていてもよい。
また、重み因子は、適合型Biweight法によらず、例えば、Beaton関数を用いて決定されてもよい。
【符号の説明】
【0183】
1 三次元測定機(測定機)
2 スタイラス
3 移動手段
4 位置検出部
5 制御部
6 表示部(出力部)
10 被測定物
21 測定子
51 移動制御部
52 演算処理部(信号処理装置)
53 ロバストガウシアン回帰フィルタ(信号処理フィルタ)
54 初期設定部
55 ロバストガウシアン回帰フィルタ処理部
56 重み因子算出部
57 フィルタ演算実行部
58 収束判定部
521 ガウシアン回帰フィルタ(信号処理フィルタ、フィルタ演算実行部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の経路に沿って測定された所定次元のディジタル信号値に対してフィルタ処理を行う信号処理装置において、
前記ディジタル信号値の各信号値に対する重み因子を算出するとともにこの重み因子を再計算して更新する重み因子算出部と、
前記重み因子算出部にて算出された前記重み因子と、重み付きスプラインフィルタと、前記重み付きスプラインフィルタのカットオフ波長に応じた係数とに基づいて、前記各信号値に対してフィルタ演算を実行して前記ディジタル信号値に対するフィルタ出力値を得るフィルタ演算実行部と、を備え、
前記重み因子算出部は、前記ディジタル信号値を前記経路に沿った複数の区間に分割して複数の第1区間を生成する第1区間生成部と、
それぞれの前記第1区間ごとに、前記ディジタル信号値とこのディジタル信号値に対する前記フィルタ出力値との成分ごとの自乗和に基づく離隔量について中間値を算出する中間値算出部と、を備え、
前記重み因子算出部は、それぞれの前記第1区間内の前記ディジタル信号値の各信号値に対する重み因子を、それぞれの前記第1区間における前記中間値と、所定の係数とに基づいて再計算し、前記各重み因子が収束するまで更新する
ことを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
所定の経路に沿って測定された所定次元のディジタル信号値に対してフィルタ処理を行う信号処理装置において、
前記ディジタル信号値の各信号値に対する重み因子を算出するとともにこの重み因子を再計算して更新する重み因子算出部と、
前記重み因子算出部にて算出された前記重み因子と、重み付きスプラインフィルタと、前記重み付きスプラインフィルタのカットオフ波長に応じた係数とに基づいて、前記各信号値に対してフィルタ演算を実行して前記ディジタル信号値に対するフィルタ出力値を得るフィルタ演算実行部と、を備え、
前記重み因子算出部は、前記ディジタル信号値を前記経路に沿った複数の区間に分割して複数の第1区間を生成する第1区間生成部と、
前記ディジタル信号値の前記経路に沿って前記第1区間に対応する複数の第2区間を生成する第2区間生成部と、
それぞれの前記第2区間ごとに、前記ディジタル信号値とこのディジタル信号値に対する前記フィルタ出力値との成分ごとの自乗和に基づく離隔量について中間値を算出する中間値算出部と、を備え、
前記重み因子算出部は、それぞれの前記第1区間内の前記ディジタル信号値の各信号値に対する重み因子を、それぞれの前記第1区間に対応した前記第2区間の前記中間値と、所定の係数とに基づいて再計算し、前記各重み因子が収束するまで更新する
ことを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の信号処理装置において、
前記第2区間生成部は、前記第1区間よりも広い区間幅を有する前記第2区間を生成する
ことを特徴とする信号処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の信号処理装置において、
前記第1区間生成部は、隣接する前記第1区間同士の前記ディジタル信号値が連続的に接続される前記第1区間を生成し、
前記第2区間生成部は、少なくとも対応する前記第1区間のディジタル信号値を含むとともに、隣接する区間同士で重複部分を有する前記第2区間を生成する
ことを特徴とする信号処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の信号処理装置と、
前記信号処理装置でフィルタ処理された結果を出力する出力部と、を備える
ことを特徴とする測定機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−204624(P2009−204624A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142933(P2009−142933)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【分割の表示】特願2004−10921(P2004−10921)の分割
【原出願日】平成16年1月19日(2004.1.19)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】