説明

信号機の点灯状態判断システム及び車両の走行支援システム

【課題】交差点において安全且つドライバーの意思に沿った信号機の点灯状態の判断を行う。
【解決方法】信号機の点灯状態判断システム(1)は、赤色、黄色及び青色の灯器並びに矢灯器を有する信号機の点灯状態を判断し、点灯状態を検出する手段(3、10)と、矢灯器に付随して黄色の灯器が点灯する場合、当該黄色の灯器の点灯タイミングの前後における点灯状態に基づいて、当該黄色の灯器を青色又は赤色の灯器であると判断する手段(10)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号機の点灯状態を判断可能な信号機の点灯状態判断システム及び当該信号機の点灯状態判断システムを具備する車両の走行支援システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両の走行支援システムでは、交差点における車両の挙動を学習し、その学習内容に従ってドライバーの運転を支援するものがある。つまり、過去の交差点における走行履歴に基づいて、車両の挙動が制御される。このような走行支援は、ドライバー自身の過去の走行履歴に基づいて行われるため、交差点における車両の挙動を安全且つ自然に(即ちドライバーに違和感を覚えさせることなく)サポートすることが可能とされている。
【0003】
例えば特許文献1には、交差点に設置された路側機から、当該信号機の点灯状態に関する情報を受信する受信装置を車両に搭載することによって、信号機の点灯状態に適した走行支援を行う技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、交差点に設置された信号機が矢灯器を備える場合、当該矢灯器が表示する進行方向によって、走行支援の開始タイミングを変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2004−252718号公報
【特許文献2】特願2009−042823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術では、特定のタイミングで信号機の点灯状態を認識することによって、交差点における走行支援を好適に行うことができるとされている。しかしながら、信号機の点灯状態は時間の経過と共に刻々と変化するため、当該特定のタイミングで信号機の点灯状態を把握したとしても、実際に車両が交差点に差し掛かった際に点灯状態が変化することにより、好適な走行支援が実施されないおそれがあるという問題点がある。例えば、交差点から相当の距離だけ離れたある地点で信号機の点灯状態が青色であったとしても、車両が交差点に接近した際には点灯状態が赤色に変化している可能性がある。このような場合、あるタイミングにおける点灯状態のみに基づいて走行支援を行う上記技術では対応することは困難である。特に、矢灯器を備える信号機の場合、矢灯器が表示する方向、点灯時間及び矢灯器の数などに依存して、信号機の点灯サイクルが複雑になるため、このような問題点はより一層顕著となる。
【0007】
本発明は、例えばこのような問題点に鑑みてなされたものであり、交差点において安全且つドライバーの意思に沿った車両の走行支援を実現させ得る信号機の点灯状態判断システム及び車両の走行支援システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため本発明に係る信号機の点灯状態判断システムは、赤色、黄色及び青色の灯器並びに矢灯器を有する信号機の点灯状態を判断するための信号機の点灯状態判断システムであって、前記点灯状態を検出する点灯状態検出手段と、前記矢灯器に付随して前記黄色の灯器が点灯する場合、当該付随して点灯する黄色の灯器の点灯タイミングの前後における前記点灯状態に基づいて、前記付随して点灯される黄色の灯器を前記青色又は赤色の灯器であると判断する判断手段とを備える。
【0009】
本発明に係る信号機の点灯状態判断システムは、交差点に設置された信号機の点灯状態を判断することができる。本発明において判断対象となる信号機は、信号機の最も基本的な構成要素である3色(即ち、赤色、黄色及び青色)の灯器に加え、これらの灯器と独立又は連動して車両の進行可能な方向を表示可能な矢灯器を備える。ここで、本発明における「点灯状態」とは、信号機が備える各種灯器(即ち、3色(即ち、赤色、黄色及び青色)の灯器並びに矢灯器を含む)のうち点灯している灯器の数、種類及び矢灯器が点灯している場合には表示されている進行方向によって規定される信号機の表示状態である。尚、信号機に歩行者用信号が備えられている場合にはその表示の有無及び表示内容が含まれてもよいし、赤信号が点灯するまでの残り時間等を含んでもよい。
【0010】
本発明に係る点灯状態検出手段は、信号機の点灯状態を検出する。ここで「検出する」とは、3色の灯器及び矢灯器の点灯状態を当該システムに読み込むことを意味する。例えば、車載カメラ等から取りこまれた画像を解析したり、交差点付近にインフラ設備として設置され、信号機の点灯状態に関する情報を発信可能な路側機からの信号を受信することによって行うとよい。いずれにせよ、点灯している灯器の数及び種類が検出され、特に、矢灯器が点灯している場合には、表示されている進行方向も検出される。
【0011】
本発明に係る判断手段は、前記矢灯器に付随して前記黄色の灯器が点灯する場合、当該付随して点灯する黄色の灯器の点灯タイミングの前後における前記点灯状態に基づいて、前記付随して点灯される黄色の灯器を青色又は赤色の灯器であると判断する。
【0012】
ここで、「矢灯器に付随して前記黄色の灯器が点灯する場合」とは、矢灯器が点灯するタイミングの前後において黄色の灯器が点灯される場合を意味する。3色の灯器によってのみ構成される基本的な信号機に比べて、本発明に係る信号機の点灯状態判断システムの対象となる信号機は、矢灯器を備えるため、その表示パターンは複雑になる傾向がある。この種の信号機では、矢灯器が点灯するタイミングに先じて、これから矢灯器が点灯することを暗示するために黄色の灯器を点灯する場合がある。また、矢灯器の点灯が急に終了すると、矢灯器の点灯内容に従って走行しようとしていたドライバーに急な判断の変更を強いることになるため、矢灯器の点灯が終了した後に黄色の灯器を点灯する場合がある。
【0013】
このように、矢灯器に付随して黄色の灯器が点灯する場合には、ドライバーは当該黄色の灯器が点灯するタイミングの前後において、信号機が如何なる点灯状態をとっているかに基づいて、車両の走行を続行すべきか(即ち、この場合、ドライバーは付随して点灯される黄色の灯器を実質的に青色の灯器と解釈する)或いは走行を中断して停車すべきか(即ち、この場合、ドライバーは付随して点灯される黄色の灯器を実質的に赤色の灯器と解釈する)を判断すると考えられる。本発明に係る信号機の点灯状態判断システムでは、黄色の灯器が点灯するタイミングの前後における点灯状態に基づいて、付随して点灯される黄色の灯器を青色又は赤色の灯器であると判断することによって、このような場合にドライバーの感覚に極めて近い基準に基づいて判断を行うことができる。
【0014】
補足して説明すると、黄色の灯器は「車両の走行は基本的に不可であるものの、停止することが困難である場合にはそのまま進行してもよい」という意味であるため、最終的な車両の進行の可否はドライバーの判断にゆだねられることとなる。そのため、黄色の灯器が点灯している状況においては、周辺環境等の各種条件を考慮して黄色の灯器を、実質的に青色又は赤色の灯器のいずれとみなすべきかを判断する必要がある。本発明では特に、矢灯器に付随して点灯する黄色の灯器を、その前後のタイミングにおける点灯状態によって、実質的に青色又は赤色の灯器のいずれとみなすべきかを判断することができる。
【0015】
以上説明したように、本発明に係る信号機の点灯状態判断システムによれば、矢灯器を備えるために複雑な点灯状態を有する信号機においても、その点灯状態を、実際のドライバーの感覚に極めて近い基準に基づいて判断を行うことができる。その結果、例えば、信号機の点灯状態に基づいて車両の走行状態を支援可能な走行支援システムに組み込んだ場合に、ドライバーにとって違和感が少なく、且つ安全な走行支援を実現することができる。
【0016】
本発明に係る信号機の点灯状態判断システムの一の態様では、前記判断手段は、前記付随して点灯する黄色の灯器が点灯するタイミングの前後において夫々第1閾値より長い期間において前記青色の灯器が点灯していた場合に、当該付随して点灯する黄色の灯器を前記青色の灯器であると判断する。
【0017】
この態様によれば、矢灯器に付随して黄色の灯器が点灯する場合、当該黄色の灯器が点灯するタイミングの前後において、車両が進行可能であることを意味する青色の灯器が十分長い期間点灯していた場合に、当該黄色の灯器を実質的に青色の灯器であるとみなす。黄色の灯器は、「車両の走行は基本的に不可であるものの、停止することが困難である場合にはそのまま進行してもよい」という意味であるため、その前後において進行可能を意味する青色の灯器が点灯されているのであれば、黄色の灯器においても車両を進行させようと意図することが、通常のドライバーの意思であると考えられる。この場合に、仮に黄色の灯器を、進行不可を意味する赤色の灯器であると実質的にみなすことは、ドライバーの意思に反すると考えられる。
【0018】
ここで、黄色の灯器が点灯する前後において青色の灯器が点灯する場合に、黄色の灯器を実質的に青色の灯器としてみなしてもよいか否かを判断するための基準となる第1閾値は、例えば、青色の灯器がどの程度の期間点灯される場合に、矢灯器に付随して点灯する黄色の灯器を実施に車両のドライバーが実質的に青色の灯器とみなすかについて統計を取ることによって、実験的、理論的或いはシミュレーション的な各種手法で算出するとよい。
【0019】
このように、本態様によれば、付随して点灯する黄色の灯器をドライバーの意思に極めて近い基準に基づいて判断することが可能となる。
【0020】
本発明に係る信号機の点灯状態判断システムの他の態様では、前記判断手段は、前記付随して点灯する黄色の灯器が点灯するタイミングの前後において夫々第2閾値より長い期間において前記赤色の灯器が点灯していた場合に、当該付随して点灯する黄色の灯器を前記赤色の灯器であると判断する。
【0021】
この態様によれば、矢灯器に付随して黄色の灯器が点灯する場合、当該黄色の灯器が点灯するタイミングの前後において、車両が進行不可であることを意味する赤色の灯器が十分長い期間点灯していた場合に、当該黄色の灯器を実質的に赤色の灯器であるとみなす。黄色の灯器は、「車両の走行は基本的に不可であるものの、停止することが困難である場合にはそのまま進行してもよい」という意味であるため、その前後において進行不可を意味する赤色の灯器が点灯されているのであれば、黄色の灯器においても車両の進行を中断して停車しようと意図することが、通常のドライバーの意思であると考えられる。この場合に、仮に黄色の灯器を、進行可能を意味する青色の灯器であると実質的にみなすことは、ドライバーの意思に反すると考えられる。
【0022】
ここで、黄色の灯器が点灯する前後において赤色の灯器が点灯する場合に、黄色の灯器を実質的に赤色の灯器としてみなしてもよいか否かを判断するための基準となる第2閾値は、例えば、赤色の灯器がどの程度の期間点灯される場合に、矢灯器に付随して点灯する黄色の灯器を実施に車両のドライバーが実質的に赤色の灯器とみなすかについて統計を取ることによって、実験的、理論的或いはシミュレーション的な各種手法で算出するとよい。
【0023】
このように、本態様によれば、付随して点灯する黄色の灯器をドライバーの意思に極めて近い基準に基づいて判断することが可能となる。
【0024】
本発明に係る信号機の点灯状態判断システムの他の態様では、前記判断手段は、前記信号機の設置された交差点を走行する車両の走行状態に基づいて、前記矢灯器が点灯されている状態を、前記赤色、黄色及び青色の灯器のいずれか一つが点灯された状態であると判断する。
【0025】
この態様によれば、信号機を認識するドライバーが運転する車両の走行状態を考慮して、矢灯器の点灯状態を判断する。ここで、「走行状態」とは、車両の挙動、例えば車両の位置、速度、加速度、舵角及び進行方向等を意味する。矢灯器は3色の灯器とは独立又は連動して車両の進行可能な方向を指示するため、矢灯器が表示する方向、矢灯器の点灯期間、点灯している矢灯器の数などを認識したドライバーは、車両の位置、速度、加速度、舵角及び進行方向等によって、状況に応じて適宜矢灯器を解釈する必要がある。つまり、矢灯器自身は3色の灯器とは別の灯器であるが、ドライバーは矢灯器の点灯状態及び車両の走行状態に基づいて、実質的に矢灯器が3色の灯器のいずれに該当するかを判断していると考えられる。本態様では、点灯している矢灯器を走行状態に基づいて3色の灯器のいずれとみなし得るかを判断することができるので、ドライバーの感覚に極めて近い基準に基づいて行うことが可能である。
【0026】
上述の車両の走行状態に基づいて矢灯器の点灯状態を判断する態様では、前記判断手段は、前記矢灯器が点灯している期間が第3閾値より長い場合に、当該矢灯器点灯期間において前記青色の灯器が点灯していたと判断するとよい。
【0027】
この態様によれば、矢灯器が十分長い期間点灯している場合に、当該矢灯器を実質的に青色の灯器であると判断する。矢灯器の点灯は、「表示されている方向に進行してもよい」ことを意味するため、当該方向に進行しようとする車両にとっては、その点灯期間が十分に長ければ、実質的に青色の灯器と同等とみなすことができる。
【0028】
ここで、矢灯器を青色の灯器とみなしてもよいか否かを判断するための基準となる第3閾値は、例えば、矢灯器がどの程度の期間点灯される場合に、実際のドライバーが矢灯器を青色の灯器とみなすかについて統計を取ることによって、実験的、理論的或いはシミュレーション的な各種手法で算出するとよい。
【0029】
このように、本態様によれば、矢灯器の点灯状態をドライバーの意思に極めて近い基準で判断することが可能となる。
【0030】
この場合、前記判断手段は、前記矢灯器が点灯している帰還が第3閾値より短い場合に、当該矢灯器点灯期間において前記黄色の灯器が点灯していたと判断するとよい。
【0031】
この態様によれば、矢灯器が店頭している期間が十分長いとは言えない場合に、点灯している矢灯器を実質的に黄色の灯器であると判断する。矢灯器の点灯は、「表示されている方向に進行してもよい」ことを意味するため、当該方向に進行しようとする車両であっても、その点灯期間が短い場合には、実質的に黄色の灯器と同等とみなすことができる。
【0032】
また、前記判断手段は、前記矢灯器が表示する方向と前記車両の進行方向が異なる場合に、前記矢灯器が表示している期間において前記赤色の灯器が点灯していたと判断するとよい。
【0033】
この態様によれば、矢灯器が表示する方向が車両の進行方向と異なる場合には、点灯している矢灯器を実質的に赤色の灯器であると判断する。矢灯器の点灯は、「表示されている方向に進行してもよい」ことを意味するため、進行方向の異なる車両にとっては、実質的に赤色の灯器と同等とみなすことができる。
【0034】
本発明の車両の走行支援システムは上記課題を解決するために、上述した本発明に係る信号機の点灯状態判断システム(但し、その各種態様を含む)と、前記信号機の設置された交差点を走行する車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、前記交差点を特定するための情報である交差点情報を検出する交差点情報検出手段と、前記検出された走行状態を、前記検出された交差点情報及び前記判断手段によって判断された前記点灯状態に関連付けて走行パターンとして記憶することにより学習を行う学習手段と、前記記憶された走行パターンに同一又は類似の前記交差点情報及び前記点灯状態が検出された場合に、当該走行パターンに追従するように前記車両を制御する制御手段とを備える。
【0035】
本発明に係る車両の走行支援システムは、上述の信号機の点灯状態判断システム、走行状態検出手段、交差点情報検出手段、学習手段及び制御手段を備える。
【0036】
本発明に係る「走行状態検出手段」は、車両の走行状態を検出する。走行状態検出手段は、例えば、車速センサやGPSシステム等を介して車両の位置、速度、加速度、舵角及び進行方向等の各種のパラメータを計測することによって走行状態を検出する。
【0037】
本発明に係る「交差点情報検出手段」は、交差点情報を検出する。「交差点情報」とは、交差点を特定するための情報であり、例えば、交差点における道幅、車線数、勾配、曲率、十字路かT字路か否か、路肩の有無及び大きさ、並びに見通し等の道路線形情報を始めとする各種のパラメータである。
【0038】
本発明に係る「学習手段」は、走行状態検出手段によって検出された走行状態を、前記検出された交差点情報及び前記判断手段によって判断された前記点灯状態に関連付けて走行パターンとして記憶することにより学習を行う。ここで、「学習を行う」とは、検出された交差点情報及び走行状態に基づいて、当該交差点情報に対応する走行パターンを特定し、記憶すること意味する。例えば、特定の交差点情報に対応する走行パターンとして、特定の走行パターンが複数回検出された場合には、当該走行パターンが、当該交差点に対する適切な走行パターンであるとして記憶するとよい。走行パターンは、例えば、後述する制御手段により適宜読み出すことができるように、メモリ等の記憶手段に記憶するとよい。ここで、「関連付けて」とは、「対応するように」との意味であり、走行状態検出手段によって検出された走行状態が、交差点情報検出手段によって検出された交差点情報に対応することが明確である限りにおいて限定されない。
【0039】
本発明に係る「制御手段」は、前記記憶された走行パターンに同一又は類似の前記交差点情報及び前記点灯状態が検出された場合に、当該走行パターンに追従するように前記車両を制御する。つまり、制御手段は、学習手段によって学習が行われた内容を参照し、当該学習が行われた内容に同一又は類似の走行条件が整った場合に、当該走行パターンを再現するように車両を制御することによって、ドライバーの運転をサポートする。ここで、「類似である」とは、交差点情報検出手段によって検出された交差点情報と、過去に学習された走行パターンに含まれる交差点情報との差が、当該過去に学習された走行パターンに基づいて車両の走行を支援した場合に、安全且つドライバーにとって違和感がない走行状態が実現可能な程度に、小さいことを意味する。つまり、制御手段は、走行パターンに基づいて車両の走行状態を制御した場合に、安全且つドライバーにとって違和感がない走行状態が実現可能か否かによって、同一又は類似であるか否かを判断するとよい。
【0040】
このような走行支援は、過去にドライバーが実際に行った走行パターンに基づいて行われるため、ドライバーにとって極めて自然で違和感が少なく、且つ安全である。
【0041】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態に係る走行支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る走行支援システムによって実行される学習制御のフローチャート図である。
【図3】第1実施形態に係る走行支援システムの実行する支援制御のフローチャート図である。
【図4】第2実施形態に係る走行支援システムによって実行される学習制御のフローチャート図である。
【図5】第2実施形態に係る走行支援システムによる実行される学習制御のステップS203及びS206において判断される信号機の点灯状態を、現実の信号機の点灯状態と比較して示す概念図である。
【図6】第2実施形態に係る走行支援システムによる実行される学習制御のステップS208において判断される信号機の点灯状態を、現実の信号機の点灯状態と比較して示す概念図である。
【図7】第2実施形態に係る走行支援システムによる実行される学習制御のステップS209及びS212において判断される信号機の点灯状態を、現実の信号機の点灯状態と比較して示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して本発明に係る信号機の点灯状態判断システムを具備する車両の走行支援システムの好適な実施の形態について説明する。
<第1実施形態>
図1から図3を参照して、本発明に係る信号機の点灯状態判断システムを具備する車両の走行支援システムの一例である車両に組み込まれた走行支援システム1の構成及び動作について説明する。
【0044】
図1は、第1実施形態に係る走行支援システム1の概略構成を示すブロック図である。尚、図1において、各ブロック間の実線は、信号の入出力が可能なラインを示している。
【0045】
走行支援システム1は、GPS受信機2、前方カメラ3、ミリ波レーダ4、インフラ通信装置5、車速センサ6、ディスプレイ7、ACCスイッチ8、コントローラ10、地図情報データベース11、カーナビゲーション12、ブレーキアクチュエータ13、アクセルアクチュエータ14及びスピーカ15を備える。
【0046】
GPS受信機2は、複数のGPS衛星から、測位用データを含む下り回線データを搬送する電波を受信する。受信された電波は、電気信号としてコントローラ10に供給されることによって、緯度及び経度情報等から当該走行支援システム1を備える車両の位置を検出することができる。
【0047】
前方カメラ3は、車両の前部に設置されており、車両の進行方向の様子(例えば道路、交差点及び交差点に設置された信号機の点灯状態等)を画像として取り込むことが可能である。前方カメラ3によって取り込まれたこれらの画像は電気信号として、コントローラ10に供給される。コントローラ10はこの供給された電気信号を分析することによって、車両の走行状態、交差点情報及び信号機情報等を含む各種情報を取得することができる。また、車両の前方に別の車両が存在する場合には、コントローラ10は前方カメラ3から取得した画像に基づいて、当該別の車両との車間距離を算出することも可能である。
【0048】
ミリ波レーダ4は、ミリ波を射出することで対象物から反射してきた電波を受信し、伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数差に基づいて、対象物との距離や相対速度を測定することが可能である。例えば、電波が車両の進行方向に射出されるようにミリ波レーダ4を設置することによって、車両の進行方向に他の走行車両や障害物が存在するか否か、及び走行車両や障害物と当該車両との距離を把握することができる。
【0049】
インフラ通信装置5は、インフラ設備として交差点に設置されている路側機(図不示)から発信された交差点情報を受信可能な通信装置である。路側機は、当該交差点における道幅、車線数、勾配、曲率、十字路かT字路か否か、路肩の有無及び大きさ、並びに見通し等に関する道路線形情報を含む交差点情報を発信しており、インフラ通信装置5は当該交差点情報を受信することにより、コントローラ10は当該交差点情報を取得することができる。
【0050】
車速センサ6は、車両の速度を検知可能なセンサである。速度センサ6は、車両の速度に対応する電気信号をコントローラ10に対して供給する。コントローラ10は供給された電気信号に応じて、車両の速度を検出することができる。
【0051】
ディスプレイ7は、車速センサ6が検出した車両の速度を表示する表示装置である。ディスプレイ7は、例えばアナログメータやデジタルメータなどによって構成され、運転者から見やすい場所に設置される。
【0052】
ACCスイッチ8は、車両を運転するドライバーがオンオフを切り替えることによって、本実施形態に係る走行支援システム1を作動させるか否かを選択可能なスイッチである。つまり、ACCスイッチ8がオフに設定されている場合、走行支援システム1は機能しない。以下の説明では、ACCスイッチ8がオンに設定されていることによって、走行支援システム1が機能している状態について説明を進める。
【0053】
コントローラ10は、図不示のCPU、ROM、RAM、及びA/D変換器等を含んで構成される。コントローラ10は、走行支援システム1を構成する各ブロックから入出力される信号に基づいて、種々の制御・処理を行う。即ち、本発明に係る各種手段は、コントローラ10によって走行支援システム1の各部位が制御されることによって実現されている。尚、コントローラ10は、車両内のECU(Engine Control Unit)として構成されていてもよい。
【0054】
地図データベース11は、地図情報や、道路形状、車線、高速道路、建物などの道路環境情報に関するデータベースであり、メモリ等の記憶手段(図不示)に記憶されている。コントローラ10は、地図データベース11を参照することにより、そこに記憶されている地図情報等を取り込むことができる。
【0055】
カーナビゲーション12は、前述の地図データベース11やVICS(Vehicle Information Communication System)等からの交通情報を利用して、道路状況や走行時間帯などの環境に応じて車両の位置を算出することができる。
【0056】
ブレーキアクチュエータ13は、車両の減速手段の一例であるブレーキ(図不示)を駆動させるためのアクチュエータであり、コントローラ10によって制御することが可能である。基本的にブレーキはドライバーがブレーキペダルを踏み込むことによって制御されるが、ブレーキアクチュエータ13を介してコントローラ10によっても制御することが可能である。つまり、コントローラ10はブレーキアクチュエータ13の操作を介して車両の走行支援を実現することができる。このような車両の走行支援は、コントローラ10によって指定された所定の制御量及び制御タイミングでブレーキアクチュエータ13を駆動させることによって、好適に実行することができる。
【0057】
アクセルアクチュエータ14は、車両の動力源の一例であるエンジン(図不示)の出力量を制御するためのアクチュエータであり、コントローラ10によって制御することが可能である。基本的にエンジンの出力量はドライバーがアクセルペダルを踏み込むことによって制御されるが(アクセルペダルの踏み込み具合によって、例えば、エンジンの吸気量を調整し、出力を制御することができる)、アクセルアクチュエータ14を介してコントローラ10によっても制御することが可能である。つまり、コントローラ10はアクセルアクチュエータ14の操作を介して車両の走行支援を実現することができる。
【0058】
スピーカ15は、走行支援システム1によって行われる走行支援内容を、ドライバーに報知する装置である。後述するように、走行支援システム1によって実行される走行支援がドライバーの意思と完全に一致すれば問題はないが、多少のずれがあったとしても、実際に走行支援が行われるに先じて予めドライバーに支援内容を報知することによって、ドライバーの心理的な不安を軽減することができる。
<実施形態の動作>
以下、適宜図面を参照し、本実施形態の動作について詳細に説明する。
<学習制御>
始めに、図2を参照して、走行支援システム1により実行される学習制御について説明する。学習制御は、交差点においてドライバーによって行われる車両の減速行動を走行パターンとして学習するための制御である。図2は、本実施形態に係る走行支援システム1によって実行される学習制御のフローチャート図である。
【0059】
車両が交差点に進入する際、先ず、コントローラ10は当該交差点において、学習制御の実行に必要な交差点情報が取得可能か否かを判断する(ステップS101)。具体的には、例えば、道路線形情報、即ち当該交差点における道幅、車線数、勾配、曲率、十字路かT字路か否か、路肩の有無及び大きさ、見通し等に関するパラメータ、停止線から交差点の中央部分までの距離、並びに道路線形情報等を発信するためのインフラ設置位置から車両までの距離等をコントローラ10が把握可能か否かによって判断するとよい。
【0060】
交差点情報が取得不能であると判断された場合(ステップS101:NO)、コントローラ10は学習制御の実行に必要な情報を得ることができなので、学習制御の実行を断念し、処理を終了する(END)。
【0061】
一方、交差点情報を取得可能であると判断された場合(ステップS101:YES)、コントローラ10は、当該交差点に備えられた信号機の点灯状態に関する情報(以下、適宜「信号機情報」という)が把握可能か否かを判断する(ステップS102)。具体的には、前方カメラ3によって取得した画像を解析することによって当該画像中に含まれる信号機の点灯状態を認識することが可能であるか否か、交差点にインフラ設備としての路側機が設置されている場合には、当該路側機から発信される信号機情報をインフラ通信装置5によって受信可能することによって取得することが可能であるか否か、或いはメモリ等の記憶手段(図不示)に記録された過去の走行データを参照することによって経験的に当該交差点における信号機情報を取得することが可能であるか否か等を総合的に考慮することによって、信号機情報の取得の可否が判断される。
【0062】
信号機情報が取得不能である場合(ステップS102:NO)、コントローラ10は学習制御に必要な信号機情報を得ることができないので、学習制御の実行を断念し、処理を終了する(END)。
【0063】
一方、信号機情報を取得可能である場合(ステップS102:YES)、コントローラ10は車両が減速行動を開始したか否かを判断する(ステップS103)。この判断は、車速センサ6を介してコントローラ10が車両の速度を把握することによって行われる。例えば、車両の速度が所定の時間或いは走行距離の間に、予め規定された範囲を超えて減少したか否かによって判断するとよい。
【0064】
車両が減速行動を開始していない判断された場合(ステップ103:NO)、コントローラ10は処理をステップS101に戻し、上述の各ステップを繰り返す。
【0065】
車両が減速行動を開始している場合(ステップ103:YES)、コントローラ10は当該交差点における車両の減速行動を走行パターンとしてメモリ等の記憶手段に記録する(ステップS104)。この車両の減速行動の記録は、例えば、車両の速度、位置、加速度、それらの経時変化及びジャーク等の種々のパラメータが記録されることによって行われるとよい。
【0066】
減速行動が記録されると、コントローラ10は車両の減速行動が終了したか否か、或いは車両が交差点を通過したか否かを判断する(ステップS105)。ここで、車両の減速行動がまだ終了していない、或いは車両がまだ交差点を通過していない場合には(ステップS105:NO)、コントローラ10は再びステップS104を実行する。一方、車両の減速行動が終了、或いは車両が交差点を通過した場合には(ステップS105:YES)、コントローラ10は当該ループ処理を終了する(ステップS106)。このようにして、ステップS104における減速行動の記録は、減速行動が終了するか或いは交差点を通過するまで繰り返し実行される。
【0067】
続いて、コントローラ10は、当該交差点に設置された信号機に矢灯器が備えられているか否かを判断する(ステップS106)。この判断は、ステップS102において取得された信号機情報に矢灯器に関する情報が含まれているか否かを判別することにより行われる。
【0068】
当該交差点に設置された信号機に矢灯器が備えられていない場合(ステップS106:NO)は、コントローラ10はステップS104において記録した減速行動を、ステップS101及びステップS102において取得した交差点情報及び信号機情報と関連付けて学習を行う(ステップS107)。この場合、信号機は矢灯器を備えていないので、信号機情報には矢灯器に関する情報が含まれていない。そのため、ステップS104において記録された減速行動は、実際の信号機の灯色そのものに関連づけられることによって、学習が行われる。例えば、ステップS102において取得した信号機情報が信号機の灯色が青色であることを示す場合には、当該減速行動は青色の信号灯色に関連づけられて学習される。即ち、信号機の灯色がコントローラ10によって別の灯色であると実質的にみなされることはなしに、学習される。このように学習された走行パターンは、後述する制御手段によって適宜参照されることによって、好適な走行支援が実行される。
【0069】
一方、当該交差点に設置された信号機に矢灯器が備えられている場合(ステップS106:YES)、コントローラ10は当該減速行動が開始された際に、矢灯器が点灯していたか否かを判断する(ステップS108)。ここで、車両が減速行動を開始した際に、信号機に供えられている矢灯機が点灯していない場合には(ステップS108:NO)、信号機情報に矢灯器に関する情報が含まれていないので、上述のステップS107が実行される(ステップS108)。
【0070】
一方、車両が減速行動を開始した際に、信号機に供えられている矢灯機が点灯していた場合には(ステップS108:YES)、車両が減速行動を開始した際の車両から当該交差点の停止線までの距離が所定の閾値Lに比べて大きいか否かが判断される(ステップS109)。ここで、所定の閾値Lは、例えば、ドライバーが交差点に向かって進行している際に、当該交差点において矢灯器の表示に基づいて減速行動の要否の判断を開始する距離として統計をとることにより、予め理論的、実験的、経験的及びシミュレーション的な手法によって規定するとよい。
【0071】
車両から停止線までの距離が閾値値Lより大きい場合(ステップS109:YES)、コントローラ10は、当該減速行動は、ドライバーが「交差点の前方において(即ち交差点の停止線から十分距離がある状態で)矢灯器の表示が終了したために、交差点を通過することが困難である」と判断したことから行われたものであるとして、ステップS104において記録された減速行動を黄色の信号灯色に対応する走行パターンであると分類して学習を行う(ステップS110)。即ち、この場合、信号機の表示状態そのものに対応づけて学習を行うステップS107とは異なり、コントローラ10は、矢灯器の表示状態を黄色の灯色であると実質的にみなして学習を行う。
【0072】
一方、車両から停止線までの距離が閾値値L以下である場合(ステップS109:NO)、コントローラ10は、当該減速行動は、ドライバーが「交差点の前方においては(即ち交差点の停止線から十分距離がある状態では)矢灯器が点灯していたことから交差点を通過できると思っていたが、停止線付近に車両が接近した段階で矢灯器の表示が終了する等の事情により通過することが困難である」と判断したために行われたものであるとして、ステップS104において記録された減速行動を青色の信号灯色に対応する走行パターンであると分類して学習する(ステップS111)。即ち、この場合、信号機の表示状態そのものに対応づけて学習を行うステップS107とは異なり、コントローラ10は、矢灯器の表示状態を青色の灯色であると実質的にみなして学習を行う。
【0073】
ステップS107、S110及びS111において学習が完了すると、コントローラ10は学習制御を終了する(END)。
【0074】
尚、本実施形態に係る学習制御では、減速行動をとった場合に走行パターンとして学習を行うように制御されるが、減速行動をとらない場合であっても交差点を通過する際の一連の車両の走行状態を走行パターンとして学習するように制御を行ってもよい。
【0075】
尚、上述の例ではステップS109において、車両の減速行動が開始された時点における車両から当該交差点の停止線までの距離Lが、所定の閾値値Lより大きいか否かによって判断を行っているが、それに代えて、矢灯器の点灯が開始されてからの経過時間を基準に判断を行ってもよい。例えば、矢灯器の点灯が開始されてからの経過時間が所定の閾値Tよりも小さい場合には、コントローラ10は「車両が停止線に至るまでの間に矢灯器の点灯が終了する可能性が高い」と判断し、ステップS104において記録された減速行動を黄色の信号灯色に対応する走行パターンであると分類して学習するとよい。一方、矢灯器が点灯されてからの経過時間が所定の閾値Tよりも大きい場合には、コントローラ10は、「ステップS102において把握した信号機情報に基づいて当初は通過できると思っていたが、停止線付近に車両が接近した段階で矢灯器の点灯がドライバーの意図に反して終了する等の事情により通過することが困難である」と判断し、ステップS104において記録された減速行動を青色の信号灯色に対応する走行パターンであると分類して学習するとよい。
【0076】
尚、このような学習制御は、上述のような減速行動に関して実行される他に、ドライバーのステアリング操作やシフト操作等にも適用してもよい。
【0077】
以上説明したように走行支援システム1によって実行される学習制御では、交差点において車両がとる減速行動が走行パターンとして学習される。
<支援制御>
続いて、図3を参照し、走行支援システム1により実行される支援制御について説明する。支援制御は、上述の学習制御において学習された走行パターンに基づいて車両の走行状態を支援することにより、ドライバーの運転負担を軽減することができる。図3は、本実施形態に係る走行支援システム1の実行する支援制御のフローチャート図である。
【0078】
車両が交差点に進入する際、先ず、コントローラ10は当該交差点において、支援制御の実行に必要な交差点情報を取得することが可能であるか否かを判断する(ステップS121)。具体的には、例えば、道路線形情報、即ち当該交差点における道幅、車線数、勾配、曲率、十字路かT字路か否か、路肩の有無及び大きさ、見通し等に関するパラメータ、停止線から交差点の中央部分までの距離、並びに道路線形情報等を発信するためのインフラ設置位置から車両までの距離等をコントローラ10が把握可能か否かによって判断するとよい。
【0079】
交差点情報が取得不能であると判断された場合(ステップS121:NO)、コントローラ10は、車両の走行支援を行う際に参照する走行パターンとして、デフォルト走行パターンを選択する(ステップ122)。ここで、デフォルト走行パターンは、上述の学習制御によって学習される走行パターンではなく、予めメモリ等の記憶手段に記録されているものである。デフォルト走行パターンは、例えば、安全且つ確実に車両を減速可能な車両の走行パターンとして、予め理論的、実験的、経験的及びシミュレーション的な手法によって規定するとよい。
【0080】
一方、交差点情報を取得可能であると判断された場合(ステップS121:YES)、コントローラ10は、当該交差点に備えられた信号機の点灯状態、即ち信号機情報が取得可能か否かを判断する(ステップS123)。具体的には、前方カメラ3によって取得した画像を解析することによって当該画像中に含まれる信号機の点灯状態を認識することが可能であるか否か、交差点にインフラ設備としての路側機が設置されている場合には、当該路側機から発信される信号機情報をインフラ通信装置5によって受信可能することによって信号機情報を把握することが可能であるか否か、或いはメモリ等の記憶手段(図不示)に記録された過去の走行データを参照することによって経験的に当該交差点における信号機情報を取得することが可能であるか否か等を総合的に考慮することによって、信号機情報の取得の可否が判断される。
【0081】
信号機情報が取得不能である場合(ステップS123:NO)、上述のステップS122を実行することにより、車両の走行支援を行う際に参照する走行パターンとして、デフォルト走行パターンを選択する(ステップ122)。
【0082】
信号機情報が取得可能である場合(ステップS123:YES)、コントローラ10は、学習制御によって学習された走行パターンのなかに、現在の車両の進行しようとしている交差点に関する交差点情報及び信号機情報と同一又は類似の交差点情報を有する走行パターンがあるか否かを判断する(ステップS124)。具体的には、コントローラ10は、走行パターンが記憶されているメモリ等の記憶手段を参照し、同一又は類似の交差点情報及び信号機情報に関連付けられて記録された走行パターンがないか検索を行う。
【0083】
同一又は類似の交差点情報及び信号機情報を有する走行パターンがない場合(ステップS124:NO)、上述のステップS122を実行し、車両の走行支援を行う際に参照する走行パターンとして、デフォルト走行パターンを選択する(ステップS122)。
【0084】
一方、同一又は類似の交差点情報及び信号機情報を有する走行パターンがある場合(ステップS124:YES)、車両の走行支援を行う際に参照する走行パターンとして、当該同一又は類似の交差点情報及び信号機情報を有する走行パターンを選択する(ステップS125)。
【0085】
このようにステップS122及びS125において、夫々の条件に応じた走行パターンが選択されると、コントローラ10は、当該選択された走行パターンに基づいて、ブレーキアクチュエータ13及びアクセルアクチュエータ14を制御し、車両の走行支援を実行する(ステップS126)。このような走行支援は、車両の置かれている条件にマッチングした走行パターンに基づいて行われるため、当該交差点における車両の挙動はユーザの意思に沿ったものになる。コントローラ10は、走行支援を実行した後、支援制御を終了する(END)。
【0086】
尚、このような支援制御は、上述のような車両の減速行動に関して実行される他に、ドライバーのステアリング操作やシフト操作等にも適用してもよい。
<第2実施形態>
本実施形態では、信号機の矢灯器に表示されている方向、及び矢灯器の点灯期間に基づいて走行パターンを分類して学習を行う点において、上述の第1実施形態と異なる。尚、本実施形態における支援制御は、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略し、学習制御に関して詳細に説明することとする。
【0087】
ここで、図4を参照して、本実施形態に係る走行支援システム1により実行される学習制御について説明する。学習制御は、交差点においてドライバーによって行われる車両の減速行動を走行パターンとして学習するための制御である。図4は、本実施形態に係る走行支援システム1によって実行される学習制御のフローチャート図である。尚、上述の第1実施形態と共通するステップについては、共通の符号を付し、説明を省略することとする。
【0088】
ステップS106において当該交差点に設置された信号機に矢灯器が備えられている場合(ステップS106:YES)、コントローラ10は更に、矢灯器の表示方向が当該車両の進行方向(即ちドライバーが車両の進行方向として意図する方向)と一致するか否かを判断する(ステップS201)。
【0089】
当該車両の進行方向が、矢灯器の表示方向と一致している場合(ステップS201:YES)、コントローラ10は矢灯器の点灯期間が所定の閾値であるT1より長いか否かを判断する(ステップS202)。
【0090】
ここで、矢灯器の点灯期間が所定の閾値T1より長い場合(ステップS202:YES)、コントローラ10は、矢灯器の点灯期間における信号機の点灯状態を青色であると判断する(ステップS203)。 矢灯器の点灯は、「表示されている方向に進行してもよい」ことを意味するため、当該方向に進行しようとする車両にとっては、その点灯期間が十分に長ければ、実質的に青色の灯器と同等とみなすことができる。ここで、所定の閾値T1は本発明に係る「第3閾値」の一例であり、例えば、矢灯器がどの程度の期間点灯される場合に、実際のドライバーが矢灯器を青色の灯器とみなすかについて統計を取ることによって、実験的、理論的或いはシミュレーション的な各種手法で算出するとよい。
【0091】
この場合、コントローラ10は更に、当該矢灯器が点灯する前の信号機の灯色が黄色であるか否かを判断する(ステップS204)。ここで、当該矢灯器が点灯する前の信号機の灯色が黄色であり(ステップS204:YES)、且つ、当該黄色の信号が点灯する前に所定の閾値T2よりも長い時間青色の信号が点灯していた場合(ステップS205:YES)、矢灯器が点灯される前に点灯されていた黄色の信号を青色と判断する(ステップS206)。黄色の灯器は、「車両の走行は基本的に不可であるものの、停止することが困難である場合にはそのまま進行してもよい」という意味であるため、その前後において進行可能を意味する青色の灯器が点灯されているのであれば、黄色の灯器においても車両を進行させようと意図することが、通常のドライバーの意思であると考えられる。ここで、所定の閾値は本発明に係る「第1閾値」の一例であり、例えば、青色の灯器がどの程度の期間点灯される場合に、矢灯器に付随して点灯する黄色の灯器を実施に車両のドライバーが実質的に青色の灯器とみなすかについて統計を取ることによって、実験的、理論的或いはシミュレーション的な各種手法で算出するとよい。
【0092】
ここで、図5を参照して、現実の信号機の点灯状態と、上述のステップS203及びS206においてコントローラ10によって判断される信号機の点灯状態とを比較する。図5は、現実の信号機の点灯状態と、上述のステップS203及びS206においてコントローラ10によって判断される信号機の点灯状態とを比較して示す概念図である。
【0093】
図5では、矢灯器が車両の進行方向と同じ方向を表示している期間Tが第1閾値T1より大きいため、コントローラ10は、当該期間Tにおける点灯状態を青色であると解釈する。また、矢灯器が点灯されている期間Tの前に黄色が点灯しており、当該黄色の点灯前に、第2閾値T2より長い期間青色の灯器が点灯しているため、コントローラ10は、当該黄色の灯器の点灯期間を青色であると解釈する。
【0094】
このように、ステップS203及びS206において判断された結果、信号機の表示サイクルが決定される。決定された表示サイクルは、ステップS104において記憶された減速行動と関連づけられることによって学習が行われる(ステップS207)。
【0095】
一方、矢灯器の点灯時間Tが所定の時間T1より短い場合(ステップS202:NO)、コントローラ10は、「矢灯器が点灯している間に車両が交差点を通過できる可能性が少ない」と判断したとして、矢灯器の点灯期間における点灯状態を黄色であると判断する(ステップS208)。
【0096】
ここで、図6を参照して、現実の信号機の点灯状態と、上述のステップS208においてコントローラ10によって判断される信号機の点灯状態とを比較する。図6は、現実の信号機の点灯状態と、上述のステップS208においてコントローラ10によって判断される信号機の点灯状態とを比較して示す概念図である。
【0097】
図6では、車両の進行方向と同じ方向の矢灯器が点灯されている期間Tが第1閾値T1より短いため、コントローラ10は、当該期間における点灯状態を黄色であると解釈する。
【0098】
尚、図4において、矢灯器の点灯前の灯色が黄色でない場合(ステップS204:NO)、及び、黄色の点灯前に点灯される青色の点灯期間が第2閾値T2より短い場合(ステップS205:NO)の場合には、矢灯器が点灯されている期間が青色であると判断される他、信号機の表示状態をそのまま表示サイクルとして採用する。
【0099】
このように、決定された表示サイクルは、ステップS104において記憶された減速行動と関連づけられることによって学習が行われる(ステップS207)。
【0100】
続いて、矢灯器に表示されている方向が、車両の進行方向と一致しない場合(ステップS201:NO)、車両は進行方向に進むことはできないので、コントローラ10は、矢灯器が点灯されている信号機の灯色を赤色であるとみなす(ステップS209)。
【0101】
その後、コントローラ10は、矢灯器の後に点灯される灯色が黄色であるか否かを判断する(ステップS210)。
【0102】
矢灯器の点灯後に黄色が点灯する場合(ステップS210:YES)、当該黄色の点灯後に赤色が第3閾値T3より長い間点灯されるか否かを判断する(ステップS211)。ここで、当該黄色の点灯後に赤色が第3閾値T3より長い間点灯される場合(ステップS211:YES)、コントローラ10は、矢灯器の点灯後に点灯される黄色の信号を赤色と判断する(ステップS212)。
【0103】
ここで、図7を参照して、現実の信号機の点灯状態と、上述のステップS209及びS212においてコントローラ10によって判断される信号機の点灯状態とを比較する。図7は、現実の信号機の点灯状態と、上述のステップS209及びS212においてコントローラ10によって判断される信号機の点灯状態とを比較して示す概念図である。
【0104】
図7では、車両の進行方向と同じ方向の矢灯器が点灯されている期間Tが第1閾値T1より短いため、コントローラ10は、当該期間における点灯状態を赤色であると解釈される。また、矢灯器の点灯されている期間Tの後に黄色が点灯しており、当該黄色の点灯後に、第3閾値T3より長い期間赤色が点灯しているため、コントローラ10は、当該黄色の点灯期間を赤色であると解釈する。
【0105】
尚、再び図4に戻って、矢灯器の後に表示される灯色が黄色でない場合(ステップS210:NO)、及び、矢灯器の後に表示される灯色が黄色であっても黄色の後に第3閾値T3より長い期間赤色が点灯されない場合(ステップS211:NO)は、矢灯器が点灯されている期間が赤色であると判断される他、信号機の表示状態をそのまま表示サイクルとして採用する。
【0106】
このように、ステップS209乃至S212における処理の結果、信号機の表示サイクルが決定される。決定された表示サイクルは、ステップS104において記憶された減速行動と関連づけられることによって学習が行われる(ステップS207)。
【0107】
以上説明したように、本実施形態では、信号機の矢灯器に表示される方向、及び矢灯器の点灯時間に基づいて走行パターンを学習するので、よりドライバーの意図に沿った違和感の少ない走行支援を実現することが可能となる。
【0108】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の運転支援装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、例えば、交差点において車両を安全に停止させるための車両の運転支援装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0110】
1…走行支援システム1、2…GPS受信機、3…前方カメラ、4…ミリ波レーダ、5…インフラ通信装置、5…車速センサ、7…ディスプレイ、8…ACCスイッチ、9…PCSスイッチ、10…コントローラ、11…地図情報データベース、12…カーナビゲーション、13…ブレーキアクチュエータ、14…アクセルアクチュエータ、15…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色、黄色及び青色の灯器並びに矢灯器を有する信号機の点灯状態を判断するための信号機の点灯状態判断システムであって、
前記点灯状態を検出する点灯状態検出手段と、
前記矢灯器に付随して前記黄色の灯器が点灯する場合、当該付随して点灯する黄色の灯器の点灯タイミングの前後における前記点灯状態に基づいて、前記付随して点灯される黄色の灯器を前記青色又は赤色の灯器であると判断する判断手段と
を備えることを特徴とする信号機の点灯状態判断システム。
【請求項2】
前記判断手段は、前記付随して点灯する黄色の灯器が点灯するタイミングの前後において夫々第1閾値より長い期間において前記青色の灯器が点灯していた場合に、当該付随して点灯する黄色の灯器を前記青色の灯器であると判断することを特徴とする請求項1に記載の信号機の点灯状態判断システム。
【請求項3】
前記判断手段は、前記付随して点灯する黄色の灯器が点灯するタイミングの前後において夫々第2閾値より長い期間において前記赤色の灯器が点灯していた場合に、当該付随して点灯する黄色の灯器を前記赤色の灯器であると判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の信号機の点灯状態判断システム。
【請求項4】
前記判断手段は、前記信号機の設置された交差点を走行する車両の走行状態に基づいて、前記矢灯器が点灯されている状態を、前記赤色、黄色及び青色の灯器のいずれか一つが点灯された状態であると判断することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の信号機の点灯状態判断システム。
【請求項5】
前記判断手段は、前記矢灯器が点灯している期間が第3閾値より長い場合に、当該矢灯器点灯期間において前記青色の灯器が点灯していたと判断することを特徴とする請求項4に記載の信号機の点灯状態判断システム。
【請求項6】
前記判断手段は、前記矢灯器が点灯している期間が第3閾値より短い場合に、当該矢灯器点灯期間において前記黄色の灯器が点灯していたと判断することを特徴とする請求項4に記載の信号機の点灯状態判断システム。
【請求項7】
前記判断手段は、前記矢灯器が表示する方向と前記車両の進行方向が異なる場合に、前記矢灯器が表示している期間において前記赤色の灯器が点灯していたと判断することを特徴とする請求項4に記載の信号機の点灯状態判断システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の信号機の点灯状態判断システムと、
前記信号機の設置された交差点を走行する車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記交差点を特定するための情報である交差点情報を検出する交差点情報検出手段と、
前記検出された走行状態を、前記検出された交差点情報及び前記判断手段によって判断された前記点灯状態に関連付けて走行パターンとして記憶することにより学習を行う学習手段と
前記記憶された走行パターンに同一又は類似の前記交差点情報及び前記点灯状態が検出された場合に、当該走行パターンに追従するように前記車両を制御する制御手段と
を備える車両の走行支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−70358(P2011−70358A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220245(P2009−220245)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】