説明

個別化された、光学的に可変な素子を製造するプロセス及びフィルムシステム

【課題】偏光特性を有する個別化された、光学的に可変な素子の製造方法及びこの方法を実施するフィルムシステムに関する。
【解決手段】
前記光学的に可変な素子を製造するために、二層またはそれ以上の層(31、32)を有し且つ液晶材料からなるLPC層(32)を有するフィルム本体を液晶配向のための配向層(41)を有する基板本体に適用する。
前記フィルム本体を基板本体に適用する前に、前記基板本体の前記配向層(41)を個別化する。フィルム本体のLCP層(32)の液晶の配向のために、前記フィルム本体のLCP層(32)が基板本体の個別化された配向層上に位置するように、フィルム本体を基板本体の個別化された配向層(41、43)に適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光特性を有する個別化された、光学的に可変な素子を製造するためのプロセスと、偏光特性を有する個別化された、光学的に可変な素子を提供するための基板本体及びフィルム本体を備えるフィルムシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
EP1227347 A1には偏光特性を有する個別化された、光学的に可変な素子のための製造プロセスが記載されている。
【0003】
このプロセスは、第一配向層をインクジェットプリンターにより基板上に印刷することを提供するもので、第一配向層は偏光の照射により所定の配向方向に整列されることができる。次に、液晶材料からなる層がインクジェットプリンターによりこの配向層に設けられ、さらに液晶材料が整列される条件が提供される。その次に、この液晶層を紫外線により硬化する。
【0004】
異なる偏光特性を有する個別化された領域を形成するため、感光性高分子からなる配向層と液晶材料からなる層は、コンピュータの制御により、ある領域のみで、それぞれの個々の領域内に、インクジェットプリンターにより前記基板層に塗布される。さらに、下記の手順はその目的のため提案されている。
【0005】
第一配向層がインクジェットプリンターによりパターン形状で基板上に印刷されている。次に、基板には線形偏光が照射され、その結果、パターン形状において感光性高分子(ポトポリマー)層の適切、均一な配向が得られる。次いで、第二感光性高分子層がインクジェットプリンターにより、第二パターンに従って設けられ、且つ線形偏光が照射される。第一および第二照射の偏光方向が異なるため、結果として配向層は互いに重畳関係で配置された異なる配向を有する。この多重のコーティング手順と互いに重畳関係で配置された個別化されたポリマー層の適切なパターン形状の構成との組合せにより、異なる配向を有する領域を作り出すことが可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、偏光特性を有する個別化された、光学的に可変な素子の製造を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、以下のような偏光特性を有する個別化された、光学的に可変な素子を製造するためのプロセスにより達成される。すなわち、この光学的可変な素子を製造するため、二層またはそれ以上の層を有し且つ液晶材料からなるLCP層を有するフィルム本体を液晶配向のための、配向層を有する基板本体に適用し、フィルム本体を基板本体に適用する前に、基板本体の配向層を個別化し、フィルム本体のLCP層の液晶の配向のため、フィルム本体のLCP層が基板本体の個別化された配向層上に位置するように、フィルム本体を該基板本体の個別化された配向層に適用する。
また、本発明の目的は、基板本体とフィルム本体とを備えるフィルムシステムによりさらに達成される。すなわち、フィルムシステムのフィルム本体は二層またはそれ以上の層を備え且つ液晶材料からなるLCP層を有し、フィルムシステムの基板本体は液晶配向のための配向層を有し、フィルム本体のLCP層の液晶の配向のため、基板本体の配向層が個別化された後、フィルム本体のLCP層が個別化された配向層上に位置するように、フィルム本体を個別化された配向層に適用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、LCセキュリティー素子(LC=液晶)の安価な、分散した個別化が可能となる利点を達成する。光学的に可変な素子の個別化を分散したモードにおいて装置の簡素化及び低経費でできる。その場合、同時に個性化された、光学的に可変セキュリティー素子を製造し、そのコピー安全性、磨耗耐久性及び取扱性に関して、大量生産で製造された光学的に可変セキュリティー素子の全ての方法において同様である。セキュリティー素子の分散した個性化のための既に存在する装置を用い、再装備(refitment)の簡素化及び低経費で、本発明によるプロセスを作用させるため、さらなるコスト上の利点が達成されることにより、更なる利点が得られる。
【0009】
本発明の構成はクレームに記載されている。
【0010】
フィルム本体は好ましくはキャリアー層及び物理的に乾燥されるが架橋されないLCP層を有する。それが本発明によるプロセスは迅速且つスムーズに行われることを保証する。基板本体にフィルム本体を塗布した直後に、基板本体の個別化された配向層にフィルム本体のLCP層の液晶材料の整列を行うことができる。この目的のために、フィルム本体のLCP層は好ましくは加熱によりフィルム本体の塗布後に液化され、それにより基板本体の個別化された配向層にフィルム本体のLCP層の液晶材料の整列は行われる。非架橋の物理的に乾燥したLCP層は粘着性であるため、フィルム本体及び基板本体の間の接着を接着剤により達成する。
【0011】
このLCP層の液晶分子の整列後に、このLCP層を例えば紫外線硬化により定着する。熱架橋可能なシステムまたは温度の影響下で、液化したシステムでも可能である。
【0012】
その面において、基板本体の配向層はUV官能基を有する場合、さらなる利点を達成することができる。LCP層が紫外線硬化により定着した後、それらUV官能基はフィルム本体と基板本体との間を例えば化学結合形成により、均一なより強い結合を形成する。
【0013】
本発明の好適な実施例に従って、基板本体は光学セキュリティー特性を作り出す一つまたはそれ以上の層を有する。そのような層は例えば、光回折セキュリティー特性を提供する回折構造、例えばホログラムを有することができる。さらに、それらの層は干渉現象により、視角に依存する色変化を形成する薄フィルム層であることができる。その場合、基板本体以外に、フィルム本体または基板本体及びフィルム本体はそのような層を有することもできる。
【0014】
光学的可変セキュリティー素子偽造に対する保護手段は、LCP層の上に好適に配置したそれら附加層により著しく改良される。換言すれば、附加層は観察者及びこのLCP層との間に配置された。これらセキュリティー素子は例えばインクジェットプリンター及び偏光素子を有するUVランプのような単純装置によりもはやコピーされたり、または模造されたりすることができない。基板本体とフィルム本体はともにその性質の層を持つ場合、その点に関して、このセキュリティー基準は特に高い。この個別化されたセキュリティー特性は両側に保護されているので、セキュリティー素子操作への任意の試みはほかの一つのセキュリティー素子を影響させ、かつそれにより明らかである。
【0015】
特に、基板本体及びフィルム本体が相互補助光学セキュリティー特性を作り出す一つまたはそれ以上の層をそれぞれ有する場合、高度のセキュリティーは実現される。
【0016】
そのため、基板本体の配向層をさまざまな方法により個別化することができる。
【0017】
基板本体の配向層をその配向層上に部分的印刷(print)することにより、個別化する点にあたり、特に効果的であることが明らかである。その印刷操作が配向層の複数の溝を部分的に充填するため、印刷されたリージョン(領域)にLCP層の配向が生じない。その手順は、特に配向層を個別化する装置の簡素化と低経費という利点を有する。その方法において、さらに、個人ドキュメント(例えばデータカード)の製造のため、低いレベルの改良費用で、かつての複数の装置が容易に再利用できる。
【0018】
個別化のため選択できる利点は、さらに、基板本体の配向層上に配置の異なる配向の配向層の部分転写による基板本体の配向層を個別化することである。この配向層上に、異なる配向を有する領域が生じ、それにより、より複雑な個別化したセキュリティー特性が作り出される。
【0019】
配向層を個別化するさらなる可能な方法は、配向層の部分的化学除去により、レーザー切除により、配向層の部分加熱変型により、配向層での凹凸構造の部分複製により、または配向層の部分露出により、この配向層を個別化する方法である。
【0020】
フィルム本体としてスタンピングフィルム、積層フィルムまたはステッカー・フィルムを用いることが特に好適である。そのようなフィルムは例えば従来の熱スタンピングまたは積層処理により基板に塗布することができる。フィルム本体としてそのようなフィルムを用い、このプロセスの迅速かつ安全な作用を確保する。さらに、既存の装置、例えば積層装置を再び用いることができる。
【0021】
基板本体として、スタンピング、積層またはステッカーフィルムを用いてもよいので、上述に示された利点が得られる。その点に関して、基板本体にフィルム本体を塗布する前に、基板本体を形成するスタンピング、積層またはステッカー・フィルムが例えばパスポート、預金手帳、クレジットカードまたはチケットのようなセキュリティー素子に塗布される。
【0022】
なお、最も単純な例では、例えば基板本体がセキュリティー・ドキュメントを形成するキャリアー層、(部分的に)塗布される配向層を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、添付図面を参照して、幾つかの実施例により以下のように例示されている。
【0024】
図1は個別化された光学的に可変な素子を製造するプロセスのフローチャートを示す。このプロセスは複数のプロセス・ステップ11〜18を有する。この場合において、個別のプロセス11〜18は図2a〜5を参照して後述する。プロセス・ステップ11〜14は中央サブプロセス1におけるプロセス・ステップを示し、プロセス・ステップ15〜18は中央サブプロセス2におけるプロセス・ステップを示す。この中央サブプロセス1はフィルム本体及び基板本体を提供し、次いでこのプロセス1から個別化された光学的に可変な素子が分散サブプロセス2により作り出されている。
【0025】
中央サブプロセス1のプロセス・ステップは工業製造手順で実施される。
【0026】
図2aに示すように、3つの層31、32と33を有するフィルム本体3がプロセス・ステップ11及び12により製造される。フィルム本体3はスタンピングフィルムであるが、積層フィルムまたはステッカー・フィルムであることが可能である。
【0027】
フィルム本体3は3つの層31、32と33を有する。この層31は例えば厚さ19μm〜23μmのポリエステル・フィルムにより形成されたキャリアー層である。層32はプロセス・ステップ11において、例えば凹版処理(プロセス)によりキャリアー層31に適用する。この層32は放射または別の方法により硬化する液晶材料を有するLCP層(LCP:液晶ポリマー)である。この液晶材料としてUS特許5389698A、US5602661A、EP0689084A、EP0689065A1、WO98/52077及びWO00/29878に記載された液晶材料を用いることができる。この点に関して、好ましくはMerck RMM 129またはOPALVA(Vantico-Basel)が層32の液晶材料として用いられる。
【0028】
その点に関して、液晶材料は望ましくは適用重量0.5〜3g/m2で、キャリアーフィルム31に塗布される。次に、プロセス・ステップ12において、層32の溶媒ベアリングLCP材料の物理的な乾燥が行われる。その場合において、乾燥は乾燥路中で例えば100〜200℃の温度で行われる。
【0029】
その点に関して、この層31に塗布されるLCP層32は、適切に成形された凹グラビアシリンダ(intaglio gravure cylinder)により、その全表面領域にわたるのではなく、部分のパターン状の構成でも可能である。そのように、附加セキュリティー機能として提供することができる複雑パターンを、まだ個別化されていないLCP層内にすでに形成することは可能である。
【0030】
次に、層33を乾燥層32に付与する。層33はLCP層32の粘着面を保護するシリコーン・ペーパーである。
【0031】
LCP層32からキャリアー層31の剥離或は層32の物理的な保護をより確実にするため、層31、32の間に剥離と/または保護ラッカー層を設けてもよい。
【0032】
図2bに示される基板本体4がプロセス・ステップ13、14により製造される。基板本体4は勿論、ステッカーフィルムであり、ステッカーフィルムは複数の層を有し得る。しかし、基板本体4はスタンピングフィルムまたは積層フィルムでも可能である。
【0033】
基板本体4、すなわち、この層42は例えばレーザー切断により直接に製造されてもよい。さらに、基板本体4はPCVカードにより形成することも出来る。
【0034】
基板本体4は凹凸構造40を有する配向層41と、キャリアー層42とを備える。キャリアー層42は例えば厚さ10μm〜50μmのBETまたはBOPPフィルム層である。配向層41をプロセス・ステップ13において、例えば凹版グラビア・シリンダーでキャリアーフィルム42の全体の表面領域に付与する。
【0035】
層41は凹凸構造40がスタンピング工具によりエンボス加工された複製(replication)層である。この場合の層41は、望ましくは少なくとも透明熱可塑性材料からなる。例えば、層31に用いられる複製ラッカーは下記の組成からなる:
成分 重量部
高分子PMMA樹脂 2000
シリコーン アルキル、オイルフリー 300
非イオン湿潤剤 50
低粘性ニトロセルロース 750
メチルエチルケトン 1200
トルエン 2000
ジアセトンアルコール 2500
【0036】
複製層は例えば乾燥後2.2g/m2の塗布重量のライン・グリッド凹版シリンダーにより塗布される。乾燥は乾燥路において100〜200℃温度で行われる。
【0037】
プロセス・ステップ14において、液晶を配向させる機能を有する凹凸構造40は例えば少なくともニッケルを含む金型により約130℃で層41にエンボスされる。凹凸構造40をスタンピングする際に、金型を好ましくは電気的に加熱する。スタンピング操作の後、層41から金型を外す直前に、金型を再び冷却することもできる。凹凸構造40をスタンピングする操作後に、架橋またはなにか他の方法によりこの複製ラッカーを硬化させる。
【0038】
ここで、例えば凹凸構造40は、相互に並列関係に配置されるともに液晶分子の配向を可能にする複数の平行溝を有する。この場合、凹凸構造40の空間頻度は望ましくは300〜3000ライン/mm、溝の断面深さは望ましくは200〜600nmである。
【0039】
しかし、配向層41は露光した感光性高分子層により形成することもできる。原則的に、その目的のために、偏光した光を照射することにより配向特性が形成可能であればあらゆる感光性高分子を用いることができる。感光性高分子(LPP=線形光重合ポリマー)等の例が、例えば、EP0611786A、WO96/10049及びEP0763552Aに記載されている。また、EP1227347A1に記載された感光性高分子はこのような目的に用いられることもできる。
【0040】
プロセス・ステップ13において、感光性高分子層をウェット化学処理によりキャリアー層42に付与する。その場合において、望ましくは感光性高分子層を塗布する操作は凹版処理により行われる。その次に、プロセス・ステップ14において、この感光性高分子樹脂層は偏光したUV光で乾燥されかつ露光され、それにより凹凸構造40を液晶分子の配向を可能にする配向層41上に形成する。
【0041】
この場合、この配向層を個別化する前に、配向層41は整列にキャリアー層42上にパターン形態に予め上述方法で印刷し、よりセキュリティー(安全)な特徴として作動するコンプレックス・パターンを配向層41に付与する。また、凹凸構造40に適切な凹形状を形成することによりそのような効果を達成することも可能である。
【0042】
分散サブ処理2において、個別された、光学的に可変素子が基板本体4及びフィルム本体3によってシンプル装置を用いて、分散して製造される。そのため、基板本体4の配向層41をプロセス・ステップ15において個別化する。
【0043】
次に図3aを参照して、配向層41を個別化する第1の可能な方法を述べる。
図3aはキャリアー層42及び配向層41とともに基板本体4を示す。印刷層43を配向層41に局所的に付与する。印刷層43は凹凸構造40の溝を埋める。例えばTTFプリンターまたはインクジェットプリンターにより、その種類の有色または無色の印刷を行うことによって、特に狙いを定めた態様で充填することにより配向層41の複数の領域を被覆し或いは消失させる。以降、印刷により不活性化された感光性高分子領域すなわち印刷により充填された表面構造領域では液晶材料の配列は生じせず、それによりそれら領域では液晶分子の等方分布が優勢となる。偏光装置の下に、液晶材料の配向により非印刷領域で「YES/NO」情報が得られるが、印刷によって不活性化すなわち充填された領域において液晶はなんら好適な配向も示さず、それによりいずれの光学活性情報も有しない。
【0044】
同様に、配向層41の個別化は配向層41部分的に(一部)除去されることにより行うことができる。従って、プロセス・ステップ15において、凹凸構造40は例えば研削ヘッド(milling head)または他の材料除去工具により部分的に除去することができ、それにより、その後、材料除去した領域に液晶分子を等方分布させ光学情報を消去させる。そのような消去は例えばレーザー等の加熱除去により達成することもできる。
【0045】
さらなる可能な選択としては、配向層41の表面を部分的に加熱処理することにより凹凸構造40を部分的に元のレトロ形状にすることが含まれ、それにより凹凸構造の液晶配向特性を部分的に消滅させる。
【0046】
また、配向層41として無感光または部分的のみ感光されたLPP層を用い、次にプロセス・ステップ15においてその層をひとつまたはそれ以上の露光ステップにより個別化することも可能である。その場合、前者のプロセスを図3aに関して述べるプロセスと組み合わせ、例えば無感光または部分のみ露光した感光性高分子層の上にある層を印刷し、塗布により以後の配向を防止し、次に偏光した光により照射することも出来る。
【0047】
さらに、配向層41の凹凸構造40をスタンピング・パンチにより部分的に消失し得る。凹凸構造40は容易に消滅するが、さらにスタンピング・パンチングを行うことによって配向層41内において異なる配向を有する新たな凹凸構造をエンボスする可能性もある。その場合、その方法では、異なる配向を有する液晶分子をもつ領域を形成することも可能である。
【0048】
必要な場合は偏光特性をもつ遅延(retarder)層と組み合わせることによりコントラスト変化を有するLCを生成することもできる。その場合、この遅延層は基板本体の部分としてもよいし、例えば配向層41のすぐ下に配置することができる。基板本体に残っているフィルム本体30の部分の一部分であってもよいし、かつ例えばLCP層32の上に直接配置することができる。
【0049】
遅延層は例えば、附加の適切に配向されかつ固定されたLC層により形成されている。しかし、遅延層は偏光された光に対して複屈折を示すような適当なキャリアー材料からなる層であってもよい。すなわち、遅延層は方向によって異なる屈折率を有する。従って、キャリアー層42が適切な材料で作られる場合、遅延層は例えばキャリアー層42で形成することもできる。さらに、遅延層は偏光特性または偏光依存特性を有する他の材料から作ってもよい。
【0050】
配向LC層32により生成された偏光効果及び遅延層により生成された偏光効果は重層され、このLC層32が配向層41の個別化により何ら偏光特性をもたない領域においては、光の偏光は遅延層により決められるか、光のその他の偏光は遅延層及びLC層32の特性により決められる。この遅延の偏光方向は、液晶分子の配向層に対し45度の角度となるように選択するのが望ましい。例えば、部分的に配向LC層上に渡り透明オーバーレイの形で配置された附加遅延層は、個別化により不活性化された配向層の領域内にも光活性情報(光/暗効果)が生成されることを可能とする。このLC層による「YES/NO」情報とともに、偏光装置を回転させて、偏光装置で見た場合にコントラスト変化を現す(exhibits)LCベース素子が得られる。この場合、遅延層と組み合わせたLC素子は屈折または透過性質をもつことができる。
【0051】
次に、配向層41の個別化の更なる可能な形式を、図3b及び3cを参照して述べる。それに関して、図3b及び3cに示すプロセスにおいて、配向層41の個別配向は予めすでに配向させた感光樹脂層また複製層を配向層41上に部分転写により達成される。
【0052】
図3bはキャリアー46、剥離層47、複製層48及び粘着層49をもつ転送フィルム44(transfer film)を示している。
【0053】
キャリアー46はキャリアーフィルム461及び複製構造をもつ複製ラッカー層(replication lacquer layer)462を有する。
【0054】
複製層41は例えば図2bを参照して述べた複製層のように形成され、液晶分子の配向を可能とするエンボス加工の凹凸構造を有する。粘着層49は例えば熱活性化粘着剤である。この転写フィルム44は例えば適切なスタンピング・パンチにより部分的に配向層41に付与される。従って、図3cは転写フィルムが適用される配向層41をもつ基板本体4を示し、領域45においては配向層41の配向に対して垂直配向し、また領域50において、配向層41の配向に対し45度の角度に回転した方向となっている。キャリアーフィルム46は転写フィルム44を適用した後に除去され、それにより領域45及び50において、複製層48の凹凸構造は作動(operative)表面構造を形成する。図3cから分かるように、この異なる配向の配向層を含む複数の領域はそのような更に新たな配向層を部分的に適用することにより個別に形成することができる。その方法で、コントラストを逆転させた(control reversal)複数の画像を作り出すことも可能である。
【0055】
エンボス加工した凹凸構造をもつ複製層の代わりに、層48に対して露光された感光性高分子層を用いることもできる。
【0056】
フィルム本体3はプロセス・ステップ16において、基板本体4に適用される。そのために、少なくともシリコーン・ペーパーからなる保護層33はフィルム本体3から剥離され、次に残存フィルム本体は基板本体44上に相互に積層される。ここで、物理的に乾燥されたLCP層32は良質な粘着性を有するので、さらなる対策をとらなくても、すでに基板本体及びフィルム本体の間をしっかり結合することができる。図4はプロセス・ステップ16の実施後に得られるフィルム本体を示す。フィルム本体はキャリアー層42、部分印刷層43をもつ配向層41、LCP層32及びキャリアー層31を有する。
【0057】
図4に示す多層本体に対してプロセス・ステップ17において熱を付与し、個別化された配向層41にてLCP層32の複数の液晶分子の配向を行う。LCP層32は加熱下で溶け、それによりLCP層32の液晶分子の整列は個別化された配向層41にて行われる。
【0058】
今、配向されたLCP層32はプロセス・ステップ18においてキャリアー層31を介してUV光で露光される。望ましくは波長領域280〜365nmのUV光を使用して露光を行う。そのUV露光によって液晶材料をUV光により定着させる。
【0059】
その場合には、このキャリアーは酸素による阻害を防止することで、不活性条件の下、LCPを処理する際に通常必要な放射線硬化する工程は省かれる。
【0060】
LCP層32のUV定着後に、キャリアー層31は多層本体から剥離され、それにより図5に示すように、キャリアー層42と、部分的印刷層43及び配向LCP層32を持つ個別化された配向層41有する光学的に可変素子51を得る。キャリアー層31はLCP層32上に残し、例えばLCP層32を保護する保護層として働くこともできる。
【0061】
次に、本発明による更なるフィルムシステムの実施例を、図6aと6bを参照して説明する。
【0062】
図6aはキャリアー層61及び転写層62を有するフィルム本体6を示す。転写層62は剥離・保護ラッカー層63、複製層64、LCP層65及び保護層66を有する。キャリアー層61、LCP層65及び保護層66は図2aに示す層31、32及び33と等しい。
【0063】
層64は回折構造67がエンボス加工領域状とされた複製層である。この場合、層64及び65に用いられる材料はそれらの屈折率が異なり、それにより、透明、光学回折セキュリティー特性は、回折構造67により作り出される。従って、例えばホログラムまたはキネグラム(R)(Kinegram(R))は、回折構造67により形成することが可能となる。
【0064】
図6bは例えば(印刷された)プラスチック及び/またはペーパー本体により形成されたセキュリティー・ドキュメント72を示している。そのようなセキュリティー・ドキュメントは例えば通行証(pass)、身分証、CI(社員証)カード、クレジットカード、課金カードまたはチケットとして用いられることができる。
【0065】
また、図6bは基板本体71を示す。該基板本体71をセキュリティー・ドキュメント72に付与する。基板本体71はキャリアー層73、剥離層74、配向層75、複製層76、反射層77及び粘着層78を有する。
【0066】
キャリアー層73は図2aに示されたキャリアー層31に類似する。配向層75は図2bに示された配向層41に類似する。複製層76はその中に回折構造79が部分的に形成された複製層である。反射層77は少なくとも蒸着薄金属層からなる。特に、クロム、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、銀、金またはそれらの材料を含む合金はこの金属層の材料として用いることができる。さらに、反射層77はHTI(高反射率)層としてもよい。
【0067】
従って、光回折効果を有する反射セキュリティー素子、例えばホログラムまたはキネグラム(R)(KINEGRAM(R))はこの回折構造79の領域に形成されている。勿論、反射層77は部分的層のみとすることは可能であり、それにより領域状態様で、例えばセキュリティー・ドキュメント72の素子を可視化するための透明窓を有するものとすることができる。
【0068】
この粘着層78は例えば少なくとも熱活性化粘着層からなる。
ここで、中央サブプロセスにおいて、フィルム本体6は、キャリアー層61に剥離・保護ラッカー層63を付与し、複製ラッカー層を印刷により付与し、複製ラッカー層を乾燥し、回折構造67を複製し、印刷によりLCP層65を付与しLCP層65を物理的に乾燥し、保護層66を付与することにより製造される。ここで、中央分散のサブプロセスにおいて、基板本体71はセキュリティー・ドキュメント72に塗布される(セキュリティー・ドキュメント72の個別化後、選択可能とする)。その次に、図3a、3bについて述べたように、剥離層74とともにキャリー層73を基板本体71から外し、配向層75を個別化する。そして、保護層66をフィルム本体6から外し、フィルム本体6を基板本体71の層75へと層65により積層する。
【0069】
本発明によるフィルムシステムの更なる実施例を図7a、7bを参照して下記の通り説明する。
図7aはキャリアー層81、LCP層82、複製層83、反射層84及び粘着層85を有するフィルム本体8を示す。
【0070】
キャリアー層81、LCP層82及びこの複製層83は図6aに示された層61、65及び64に類似する。反射層84及び粘着層85は図6bに示された層77及び78に類似する。回折構造87は複製層83に領域状に形成され、反射光セキュリティー素子を与える。
【0071】
図7bはキャリアー層91、剥離および/または保護ラッカー層92、複製層93、薄フィルムシステムの吸収層94及スペーサ層95、配向層96及び保護層97を有する基板本体9を示す。この場合、キャリアー層91、複製層93及び配向層96は図6bに示された層73、76及び75に類似する。ある領域では複製層93は回折構造98をもち、この回折構造領域において、回折構造は光回折効果をもつ透明セキュリティー素子を生成する。薄フィルムシステムは吸収層94及びスペーサ層95を有するとともに、透明光学セキュリティー素子を生成する。透明光学セキュリティー素子は干渉により、視角に基づく色の変化を作り出す。
【0072】
中央サブプロセスにおいて、フィルム本体8及び基板本体9が形成される。次に、この中央分散のサブプロセスにおいて、基板本体8にはセキュリティー・ドキュメントに対して粘着層85を接着する。その次に、キャリアーフィルム81を転写層から取り除く。次のステップにおいて、保護層97を基板本体9の配向層96から取り除き、図3a〜3bを参照して述べたプロセスの一つに従って個別化する。その次、基板本体9をフィルム本体8のLCP層82に対して個別化した配向層96により付与し、基板本体9をフィルム本体8に積層する。
【0073】
その点について、構造87及び88により製造され光学回折特性を有する光学セキュリティー特性は相互補助光学セキュリティー特性を示す。一例として、これら2つの回折構造は共通ホログラム表示の隣接する領域を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は個別化された、光学的に可変素子を製造するプロセスのフローチャートを示す。
【図2a】図2aはフィルム本体の線図を示す。
【図2b】図2bは基板本体の線図を示す。
【図3a】図3aは個別化された配向層を有する基板本体の線図を示す。
【図3b】図3bは基板本体の配向層の個別化用の伝送フィルムの断面図を示す。
【図3c】図3cは個別化された配向層の線図を示す。
【図4】図4はフィルム本体が付与された基板本体の線図を示す。
【図5】図5は光学的可変素子の線図を示す。
【図6a】図6aは本発明の更なる実施例のためのフィルム本体の線図を示す。
【図6b】図6bは本発明の更なる実施例のための基板本体を有するセキュリティードキュメントの線図を示す。
【図7a】図7aは本発明の更なる実施例のためのフィルム本体の線図を示す。
【図7b】図7bは本発明の更なる実施例のための基板本体の線図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光特性を有する個別化された、光学的に可変な素子(51)の製造プロセスにおいて、
前記光学的に可変な素子(51)を製造するために、二層またはそれ以上の層を有し且つ液晶材料からなるLPC層(32、65、85)を有するフィルム本体(3、6、8)を液晶配向のための配向層(41、75、96)を有する基板本体(4、7、9)に適用し、
前記フィルム本体を基板本体に適用する前に、前記基板本体(4、7、9)の前記配向層(41、75、96)を個別化し、フィルム本体のLCP層の液晶の配向のためにフィルム本体(3、6、8)のLCP層(32、65、85)が基板本体の個別化された配向層上に位置するように、フィルム本体(3、6、8)を基板本体(4、7、9)の個別化された配向層(41、75、96)に適用することを特徴とする製造プロセス。
【請求項2】
前記基板本体(4)の前記配向層(41)をこの配向層上の部分印刷(43)により個別化することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記基板本体(4)の前記配向層(41)を前記基板本体(4)の前記配向層(41)上の異なる配向の配向層(48)の部分転写により個別化することを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記基板本体の前記配向層をこの配向層の部分機械的除去により個別化することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記基板本体の前記配向層をこの配向層の部分熱変型により個別化することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記基板本体の前記配向層を前記配向層が凹凸構造の複製により個別化することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記基板本体の前記配向層を前記配向層の露出により個別化することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記フィルム本体(3)の前記LCP層(32)の前記液晶材料の整列を前記基板本体(4)の個別化された配向層(41)で行うことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記液晶を整列するために前記基板本体(4)にフィルム本体を塗布した後、前記フィルム本体(3)の前記LCP層(32)を加熱することを特徴とする請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
スタンピングフィルム、積層フィルムまたはステッカー・フィルムを前記基板本体(71、9)として用いたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記基板本体(71)を形成する前記スタンピングフィルム、前記積層フィルムまたは前記ステッカー・フィルムを前記基板本体(71)に前記フィルム本体(6)が塗布される前に、セキュリティー・ドキュメント(72)に塗布することを特徴とする請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記基板本体(4、7)はセキュリティー・ドキュメントを形成するキャリアー層(42、72)を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
スタンピングフィルム、積層フィルムまたはステッカー・フィルムを前記フィルム本体(3、6、8)として用い、前記フィルム本体を熱スタンピングまたは積層処理で前記基板本体(4、7、9)に適用することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
偏光特性を有する個別化された、光学的に可変な素子(51)を提供する基板本体(4、7、9)及びフィルム本体(3、6、8)を備えるフィルムシステムにおいて、
前記フィルムシステムのフィルム本体(3、6、8)は二層またはそれ以上の層及び液晶材料からなるLCP層(32、65、85)を備え、
前記フィルムシステムの基板本体(4、7、9)は液晶配向のための配向層(41、75、96)を有し、
前記フィルム本体(3、6、8)の前記LCP層(32、65、85)の液晶の配向のため、前記基板本体(4、7、9)の前記配向層(41、75、96)が個別化の後に、前記フィルム本体(3、6、8)の前記LCP層(32、65、85)が個別化された前記配向層(41、75、96)上に位置するように、前記フィルム本体(3、6、8)は前記基板本体(4、7、9)の個別化された前記配向層(41、75、96)に適用されることを特徴とするフィルムシステム。
【請求項15】
前記基板本体の記配向層は前記基板本体に前記フィルム本体を良好に粘着するためのUV官能基であることを特徴とする請求項14に記載のフィルムシステム。
【請求項16】
前記フィルム本体(3、6、8)はキャリアー層(31、61、81)及び物理的に乾燥されたLCP層(32、65、85)を有することを特徴とする請求項14及び15に記載のフィルムシステム。
【請求項17】
前記基板本体(7、9)は光学セキュリティー特性を作り出す一つまたはそれ以上の追加層(76、77、94)を有することを特徴とする請求項14から16のいずれか1項に記載のフィルムシステム。
【請求項18】
前記フィルム本体(6、8)は光学セキュリティー特性を作り出す一つまたはそれ以上の追加層(68、83、84)を有することを特徴とする請求項14から17のいずれか1項に記載のフィルムシステム。
【請求項19】
各前記基板本体(7、9)と前記フィルム本体(7、8)は相互補助光学セキュリティー特性を作り出す一つ又はそれ以上の追加層を有することを特徴とする請求項14から18のいずれか1項に記載のフィルムシステム。
【請求項20】
前記基板本体と/または光学的に可変可能な素子を形成する前記フィルム本体の前記部分は偏光特性をもつリターダ層を備えることを特徴とする請求項14から19のいずれか1項に記載のフィルムシステム。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2007−506121(P2007−506121A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526511(P2006−526511)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002018
【国際公開番号】WO2005/029135
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506088850)レオンハード クルツ ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー (15)
【Fターム(参考)】