説明

倒立型移動体、その制御方法、及びプログラム

【課題】小型の抵抗に維持しつつ回生電力を効果的に消費すること。
【解決手段】倒立型移動体は、姿勢情報を検出する姿勢検出手段と、車輪を駆動する駆動手段と、姿勢検出手段により検出された姿勢情報に基づいた値に第1制御ゲインを乗算して駆動手段を駆動するための第1制御信号を生成する第1制御手段と、姿勢検出手段により検出された姿勢情報に基づいた値に第2制御ゲインを乗算して駆動手段を駆動するための第2制御信号を生成する第2制御手段と、回生電圧が所定閾値以上であるか否かを判定する判定手段と、を備える。駆動手段は、第1制御手段から出力される第1制御信号と、第2制御手段から出力される第2制御信号と、に基づいて前記車輪を駆動する。第1及び第2制御手段は、判定手段により回生電圧が所定閾値以上であると判定されたとき、第1及び第2制御ゲインのうち一方の符号を反転させて、第1及び第2制御ゲインを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倒立状態を維持して走行し、車輪の回転に伴って発生する回生電力を、抵抗部材を用いて効果的に消費する倒立型移動体、その制御方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
倒立状態を維持して走行する倒立型移動体において、例えば、急停止時や下り坂走行時に、モータの回生動作により回生電力が発生する。これに対し、上記のように発生した回生電力を抵抗により消費する回生電力制御方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−116190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示す回生電力制御方法においては、発生する回生電力に応じた大きさの抵抗を設ける必要があるため、その抵抗が大型化する問題が生じている。一方で、倒立状態を維持して走行するため、特に安定性を重視する倒立型移動体においては、出来るだけ小型軽量化したいという要求が存在する。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、小型の抵抗に維持しつつ回生電力を効果的に消費できる倒立型移動体、その制御方法、及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、車輪の回転に伴って発生する回生電力を、抵抗部材を用いて消費する倒立型移動体であって、当該倒立型移動体の姿勢情報を検出する姿勢検出手段と、前記車輪を駆動する駆動手段と、前記姿勢検出手段により検出された姿勢情報に基づいた値に第1制御ゲインを乗算して、前記駆動手段を駆動するための第1制御信号を生成する第1制御手段と、前記姿勢検出手段により検出された姿勢情報に基づいた値に第2制御ゲインを乗算して、前記駆動手段を駆動するための第2制御信号を生成する第2制御手段と、前記発生する回生電圧が所定閾値以上であるか否かを判定する判定手段と、を備え、前記駆動手段は、前記第1制御手段から出力される第1制御信号と、前記第2制御手段から出力される第2制御信号と、に基づいて前記車輪を駆動し、前記第1及び第2制御手段は、前記判定手段により前記発生した回生電圧が所定閾値以上であると判定されたとき、前記第1及び第2制御ゲインのうち一方の符号を反転させて、前記第1及び第2制御ゲインを変更する、ことを特徴とする倒立型移動体である。
この一態様において、前記駆動手段の温度を検出する温度検出手段を更に備え、前記第1及び第2制御手段は、前記温度検出手段により検出された温度が第1所定温度以上となったときに、前記第1制御ゲイン及び第2制御ゲインのうち少なくとも一方を漸減させてもよい。
この一態様において、前記第1及び第2制御手段は、前記温度検出手段により検出された温度が第2所定温度以上となったときに、前記第1制御ゲイン及び第2制御ゲインのうち少なくとも一方を減少させ、前記車輪を停止させてもよい。
この一態様において、前記姿勢検出手段により検出された姿勢情報に基づいた値に制御ゲインを乗算して、前記駆動手段を駆動するための制御信号を生成する少なくとも1つの制御手段を更に備え、前記駆動手段は、前記第1制御手段から出力される第1制御信号と、前記第2制御手段から出力される第2制御信号と、前記少なくとも1つの制御手段から出力される制御信号と、に基づいて前記車輪を駆動し、前記第1及び第2制御手段と前記少なくとも1つの制御手段とは、前記判定手段により前記発生した回生電圧が所定閾値以上であると判定されたとき、前記第1制御ゲイン、第2制御ゲイン及び制御ゲインのうち少なくとも1つの符号を反転させて、前記第1制御ゲイン、第2制御ゲイン及び制御ゲインの変更を行っても良い。
この一態様において、前記判定手段が前記発生した回生電圧が所定閾値以上であると判定したとき、前記第1制御手段は、前記第1制御ゲインを0.5から2に変更し、前記第2制御手段は、前記第2制御ゲインを0.5から−1に変更してもよい。
他方、上記目的を達成するための本発明の一態様は、車輪の回転に伴って発生する回生電力を、抵抗部材を用いて消費する倒立型移動体の制御方法であって、前記倒立型移動体の姿勢情報を検出するステップと、前記検出された姿勢情報に基づいた値に第1制御ゲインを乗算して、前記車輪を駆動する駆動手段を駆動するための第1制御信号を生成するステップと、前記検出された姿勢情報に基づいた値に第2制御ゲインを乗算して、前記駆動手段を駆動するための第2制御信号を生成するステップと、前記発生する回生電圧が所定閾値以上であるか否かを判定するステップと、を含み、前記第1制御手段から出力される第1制御信号と、前記第2制御手段から出力される第2制御信号と、に基づいて前記車輪を駆動し、前記発生した回生電圧が所定閾値以上であると判定されたとき、前記第1及び第2制御ゲインのうち一方の符号を反転させて、前記第1及び第2制御ゲインを変更する、ことを特徴とする倒立型移動体の制御方法であってもよい。
さらに、上記目的を達成するための本発明の一態様は、車輪の回転に伴って発生する回生電力を、抵抗部材を用いて消費する倒立型移動体のプログラムであって、検出された前記倒立型移動体の姿勢情報に基づいた値に第1制御ゲインを乗算して、前記車輪を駆動するための第1制御信号を生成する処理と、前記検出された倒立型移動体の姿勢情報に基づいた値に第2制御ゲインを乗算して、前記車輪を駆動するための第2制御信号を生成する処理と、前記発生した回生電圧が所定閾値以上であると判定されたとき、前記第1及び第2制御ゲインのうち一方の符号を反転させて、前記第1及び第2制御ゲインを変更する処理と、をコンピュータに実行させる、ことを特徴とする倒立型移動体のプログラムであってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型の抵抗に維持しつつ回生電力を効果的に消費できる倒立型移動体、その制御方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態に係る倒立型移動体の概略的なシステム構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る制御装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。
【図3】第1及び第2モータに生じる回生電圧が閾値電圧以上になった場合の一例を示す図である。
【図4】(a)第1及び第2モータに生じる回生電圧が閾値電圧以上になる状態の一例を示す図である。(b)第1制御ゲインを変更したときの第1制御信号の変化の一例を示す図である。(c)第2制御ゲインを変更したときの第2制御信号の変化の一例を示す図である。(d)第1及び第2モータに供給されるモータ電流の変化の一例を示す図である。(e)実際に消費される回生電力の変化の一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る倒立型移動体の制御処理フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本発明の一実施の形態に係る倒立型移動体1は、例えば、倒立状態を維持しつつ所望の走行を行う倒立二輪車として構成されている。倒立型移動体1は、例えば、急停止時や下り坂走行時に、駆動車輪2の回転に伴って第1及び第2モータ3、4で発生する回生電力を抵抗などで消費させることができるように構成されている。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態に係る倒立型移動体の概略的なシステム構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る倒立型移動体1は、搭乗者が搭乗する移動体本体と、移動体本体に設けられ搭乗者が操作可能なハンドルと、移動体本体の両側に回転可能に設けられた一対の駆動車輪2と、各駆動車輪2を回転駆動する第1及び第2モータ3、4と、移動体本体に内蔵され第1及び第2モータ3、4を制御する制御装置5と、移動体本体の姿勢情報を検出する姿勢センサ6と、各駆動車輪2の回転情報を検出する一対の回転センサ7と、各駆動車輪2の回転に伴って第1及び第2モータ3、4に発生する回生電力の電圧を検出する電圧センサ8と、を備えている。
【0011】
図2は、本実施の形態に係る制御装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る制御装置5は、電圧センサ8からの回生電圧を判定する電圧判定部51と、第1及び第2モータ3、4を駆動する第1及び第2モータドライバ52、53と、第1及び第2モータドライバ52、53を制御する第1及び第2コントローラ54、55と、を備えている。
【0012】
なお、制御装置5は、例えば、制御処理、演算処理等を行うCPU(Central Processing Unit)5a、CPU5aによって実行される制御プログラム、演算プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)5b、処理データ等を記憶するRAM(Random Access Memory)5c等からなるマイクロコンピュータを中心にして、ハードウェア構成されている。
【0013】
第1及び第2モータ3、4は、駆動手段の一具体例であり、減速機などを介して各駆動車輪2の回転軸に連結されており、制御装置5からの制御指示に応じて、各駆動車輪2を独立して回転駆動する。
【0014】
姿勢センサ6は、姿勢検出手段の一具体例であり、例えば、移動体本体に設けられており、ジャイロセンサや加速度センサなどから構成されている。姿勢センサ6は、移動体本体の傾斜角度、傾斜角速度、傾斜角加速度などの姿勢情報を検出し、検出した姿勢情報を第1及び第2コントローラ54、55に対して出力する。
【0015】
各回転センサ7は、例えば、各駆動車輪2に夫々設けられており、ロータリーエンコーダやレゾルバーなどにより構成されている。各回転センサ7は、各駆動車輪2の回転角度、回転角速度、回転角加速度などの回転情報を検出し、検出した回転情報を第1及び第2コントロール54、55に対して出力する。
【0016】
電圧センサ8は、例えば、第1及び第2モータ3、4などに接続されており、第1及び第2モータ3、4に生じる回生電圧を検出し、検出した回生電圧を電圧判定部51に対して出力する。
【0017】
通常、第1及び第2モータ3、4の回生動作は、駆動車輪2の制動力として機能し、さらに、第1及び第2モータ3、4で生じた回生電力は、バッテリ9に送られ、そのバッテリ9に充電される。これにより、回生電力を有効に活用することで、倒立型移動体1の走行距離を延ばすことができる。
【0018】
また、急停止時や下り坂走行時において、第1及び第2モータ3、4に生じる回生電圧が閾値電圧以上になった場合(図3)や、バッテリ9の充電量がフル充電になった場合、回生電力は抵抗素子(抵抗部材)10に送られ、その抵抗素子10によって熱に変換され消費されるように構成されている。さらに、本実施の形態においては、後述の如く、回生電圧が所定閾値以上となったとき、第1制御ゲインG1及び第2制御ゲインG2を夫々変更することで、回生電力を効果的に消費している。以下、その方法について、説明する。
【0019】
電圧判定部51は、判定手段の一具体例であり、電圧センサ8から出力される回生電圧(DCリンク電圧)が所定閾値以上であるか否かを判定する。電圧判定部51は、電圧センサ8から出力される回生電圧が所定閾値以上であると判定したときは、その旨を通知するオン信号を第1及び第2コントローラ54、55に対して出力する。
【0020】
第1モータドライバ52は、第1コントローラ54から出力される第1制御信号に基づいたモータ電流を、第1及び第2モータ3、4に対して供給することで、第1及び第2モータ3、4を回転駆動させる。同様に、第2モータドライバ53は、第2コントローラ55から出力される第2制御信号に基づいたモータ電流を、第1及び第2モータ3、4に対して供給することで、第1及び第2モータ3、4を回転駆動させる。一方、第1及び第2モータ3、4は、夫々、第1モータドライバ52から出力されるモータ電流と、第2モータドライバ53から出力されるモータ電流と、を合わせたモータ電流で回転駆動することとなる。
【0021】
第1コントローラ54は、第1制御手段の一具体例であり、姿勢センサ6から出力される姿勢情報と、回転センサ7から出力される回転情報と、電圧判定部51から出力される信号と、に基づいて、倒立型移動体1が倒立状態を維持しつつ所望の走行を行うような第1及び第2モータ3、4の第1制御信号を生成し、生成した第1制御信号を第1モータドライバ52に対して出力する。第1コントローラ54は、例えば、姿勢センサ6から出力される移動体本体の姿勢角度に基づいた値に第1制御ゲインG1を乗算して第1制御信号を生成する。
【0022】
第2コントローラ55は、第2制御手段の一具体例であり、姿勢センサ6から出力される姿勢情報と、回転センサ7から出力される回転情報と、電圧判定部51から出力される信号と、に基づいて、倒立型移動体1が倒立状態を維持しつつ所望の走行を行うような第1及び第2モータ3、4の第2制御信号を生成し、生成した第2制御信号を第2モータドライバ53に対して出力する。第2コントローラ55は、例えば、姿勢センサ6から出力される移動体本体の姿勢角度に基づいた値に第2制御ゲインG2を乗算して第2制御信号を生成する。なお、第1及び第2制御ゲインG1、G2には、例えば、0.5が夫々設定されているが、これに限らず、第1及び第2制御ゲインG1、G2を加算したときに1になれば、任意の値を設定することができる。
【0023】
ここで、例えば、急停止や下り坂走行時において、第1及び第2モータ3、4に生じる回生電力が大きく増加し、電圧判定部51は、電圧センサ8からの回生電圧が所定閾値以上になったと判定したとき(図4(a))、オン信号を第1及び第2コントローラ54、55に対して出力する。なお、上記所定閾値は、例えば、抵抗素子10の耐電圧などに基づいて設定されている。
【0024】
一方、第1及び第2コントローラ54、55は、電圧判定部51からのオン信号を受信すると、第1制御ゲインG1及び第2制御ゲインG2のうち一方の符号を反転させるようにして、第1制御ゲインG1及び第2制御ゲインG2を変更する。
【0025】
ところで、従来、モータで生じる回生電力を抵抗で消費させる場合、発生する回生電力に応じた大きさの抵抗を設ける必要があるため、抵抗が大型化する問題が生じている。一方で、倒立状態を維持して走行する倒立型移動体においては、出来るだけ小型軽量化したいという要望が存在する。
【0026】
そこで、本実施の形態に係る倒立型移動体1においては、上述の如く、電圧判定部51が第1及び第2モータ3、4の回生電圧が所定閾値以上になったと判定したとき、第1及び第2コントローラ部54、55は、夫々、第1制御ゲインG1及び第2制御ゲインG2のうち一方の符号を反転させて第1制御ゲインG1及び第2制御ゲインG2を変更する。これにより、第1制御ゲインG1に基づいた第1制御信号と、第2制御ゲインG2に基づいた第2制御信号との符号が相違するため、相互に打ち消し合うように作用し、その消費電力を効果的に増加させることができる。したがって、小型軽量の抵抗素子に維持しつつ、回生電力の消費量を効果的に増加させることができる。
【0027】
例えば、第1コントローラ54は、電圧判定部51からのオン信号を受信すると、第1制御ゲインG1を0.5から2に変更させることで、図4(b)に示すように変化する第1制御信号を生成する。また、第2コントローラ55は、電圧判定部51からのオン信号を受信すると、第2制御ゲインG2を0.5から−1に変更させることで、図4(c)に示すように変化する第2制御信号を生成する。
【0028】
ここで、第1及び第2モータ3、4に実際に出力されるモータ電流は、第1制御信号に基づいたモータ電流と、第2制御信号に基づいたモータ電流と、を合わせた、図4(d)に示すようなモータ電流となる。これは、第1及び第2制御ゲインG1、G2を変更する前と同一のモータ電流となる。
【0029】
一方で、実際に消費される回生電力は、第1制御信号に基づいたモータ電流の絶対値と、第2制御信号に基づいたモータ電流の絶対値と、を合わせたものとなるため、図4(e)に示すように、回生電力の消費量を効果的に増加させることができる。
【0030】
次に、本実施の形態に係る倒立型移動体1の制御方法について、説明する。図5は、本実施の形態に係る倒立型移動体の制御処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0031】
例えば、倒立移動体1が急停止や下り坂走行を行うと、第1及び第2モータ3、4によって回生電力が発生する(ステップS101)。電圧判定部51は、電圧センサ8から出力される回生電圧が所定閾値以上であるか否かを判定する(ステップS102)。
【0032】
電圧判定部51は、電圧センサ8から出力される回生電圧が所定閾値以上であると判定すると(ステップS102のYES)、オン信号を第1及び第2コントローラ54、55に対して出力する(ステップS103)。
【0033】
第1コントローラ54は、電圧判定部51からのオン信号を受信すると、第1制御ゲインG1を0.5から2に変更し、変更した第1制御ゲインG1を用いて第1制御信号を生成し(ステップS104)、第1モータドライバ52に出力する。
【0034】
同様に、第2コントローラ55は、電圧判定部51からのオン信号を受信すると、第2制御ゲインG2を0.5から−1に符号を反転させて変更し、変更した第2制御ゲインG2を用いて第2制御信号を生成し(ステップS105)、第2モータドライバ53に出力する。
【0035】
第1及び第2モータドライバ52、53は、第1及び第2コントローラ54、55からの第1及び第2制御信号に応じたモータ電流を、第1及び第2モータ3、4に対して夫々供給する(ステップS106)。そして、第1及び第2モータは、夫々、第1及び第2モータドライバ52、53からのモータ電流に応じて回転駆動する。
【0036】
以上、本実施の形態に係る倒立型移動体1において、電圧判定部51が第1及び第2モータ3、4の回生電圧が所定閾値以上になったと判定したとき、第1及び第2コントローラ部54、55は、夫々、第1制御ゲインG1及び第2制御ゲインG2のうち一方の符号を反転させて第1制御ゲインG1及び第2制御ゲインG2を変更する。これにより、小型軽量の抵抗素子に維持しつつ、回生電力の消費量を効果的に増加させることができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0038】
上記一実施の形態において、制御装置5は、コントローラ及びモータドライバを2個ずつ有する2重構成となっているが、これに限らず、例えば、コントローラ及びモータドライバを3個ずつ有する3重構成、或いは、4重以上の構成であってもよい。
【0039】
例えば、制御装置5が、第1、第2及び第3コントローラと、第1、第2及び第3モータドライバとを有する3重構成となっている場合、第1、第2及び第3コントローラは、電圧判定部51により回生電圧が所定閾値以上であると判定されたとき、第1制御ゲイン、第2制御ゲイン及び第3制御ゲインのうち少なくとも1つの符号を反転させて、第1制御ゲイン、第2制御ゲイン及び第3制御ゲインを変更してもよい。
【0040】
また、上記一実施の形態において、第1及び第2モータ3、4の温度を温度センサにより検出し、温度センサにより検出された温度が第1所定温度以上となり、第1及び第2モータ3、4の補償温度近くになると、第1及び第2コントローラ54、55は、第1及び第2制御ゲインG1、G2のうち少なくとも一方、(例えば、第1制御ゲインG1)を漸減させるようにしてもよい。これにより、回生電力のうち第1及び第2モータ3、4で消費される時間当たりの回生電力を小さく抑えることができ、第1及び第2モータ3、4の温度上昇を防止することができる。
【0041】
さらに、第1及び第2コントローラ54、55は、第1及び第2モータ3、4の温度が上昇し補償温度まで到達して、温度センサにより検出された温度が第2所定温度以上になったと判断したとき、フェールモードに移行してもよい。この場合、第1及び第2コントローラ54、55は、例えば、第1制御ゲインG1及び第2制御ゲインG2のうち少なくとも一方を減少させ、駆動車輪2を停止させてもよい。これにより、倒立型移動体1の安全性を向上させることができる。
【0042】
上述の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、制御装置が行う処理を、CPU5aにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0043】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0044】
また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0045】
1 倒立型移動体
2 駆動車輪
3 第1モータ
4 第2モータ
5 制御装置
6 姿勢センサ
7 回転センサ
8 電圧センサ
9 バッテリ
10 抵抗素子
51 電圧判定部
52 第1モータドライバ
53 第2モータドライバ
54 第1コントローラ
55 第2コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の回転に伴って発生する回生電力を、抵抗部材を用いて消費する倒立型移動体であって、
当該倒立型移動体の姿勢情報を検出する姿勢検出手段と、
前記車輪を駆動する駆動手段と、
前記姿勢検出手段により検出された姿勢情報に基づいた値に第1制御ゲインを乗算して、前記駆動手段を駆動するための第1制御信号を生成する第1制御手段と、
前記姿勢検出手段により検出された姿勢情報に基づいた値に第2制御ゲインを乗算して、前記駆動手段を駆動するための第2制御信号を生成する第2制御手段と、
前記発生する回生電圧が所定閾値以上であるか否かを判定する判定手段と、を備え、
前記駆動手段は、前記第1制御手段から出力される第1制御信号と、前記第2制御手段から出力される第2制御信号と、に基づいて前記車輪を駆動し、
前記第1及び第2制御手段は、前記判定手段により前記発生した回生電圧が所定閾値以上であると判定されたとき、前記第1及び第2制御ゲインのうち一方の符号を反転させて、前記第1及び第2制御ゲインを変更する、
ことを特徴とする倒立型移動体。
【請求項2】
請求項1記載の倒立型移動体であって、
前記駆動手段の温度を検出する温度検出手段を更に備え、
前記第1及び第2制御手段は、前記温度検出手段により検出された温度が第1所定温度以上となったときに、前記第1制御ゲイン及び第2制御ゲインのうち少なくとも一方を漸減させる、ことを特徴とする倒立型移動体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の倒立型移動体であって、
前記第1及び第2制御手段は、前記温度検出手段により検出された温度が第2所定温度以上となったときに、前記第1制御ゲイン及び第2制御ゲインのうち少なくとも一方を減少させ、前記車輪を停止させる、ことを特徴とする倒立型移動体。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の倒立型移動体であって、
前記姿勢検出手段により検出された姿勢情報に基づいた値に制御ゲインを乗算して、前記駆動手段を駆動するための制御信号を生成する少なくとも1つの制御手段を更に備え、
前記駆動手段は、前記第1制御手段から出力される第1制御信号と、前記第2制御手段から出力される第2制御信号と、前記少なくとも1つの制御手段から出力される制御信号と、に基づいて前記車輪を駆動し、
前記第1及び第2制御手段と前記少なくとも1つの制御手段とは、前記判定手段により前記発生した回生電圧が所定閾値以上であると判定されたとき、前記第1制御ゲイン、第2制御ゲイン及び制御ゲインのうち少なくとも1つの符号を反転させて、前記第1制御ゲイン、第2制御ゲイン及び制御ゲインの変更を行う、
ことを特徴とする倒立型移動体。
【請求項5】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の倒立型移動体であって、
前記判定手段が前記発生した回生電圧が所定閾値以上であると判定したとき、
前記第1制御手段は、前記第1制御ゲインを0.5から2に変更し、
前記第2制御手段は、前記第2制御ゲインを0.5から−1に変更する、
ことを特徴とする倒立型移動体。
【請求項6】
車輪の回転に伴って発生する回生電力を、抵抗部材を用いて消費する倒立型移動体の制御方法であって、
前記倒立型移動体の姿勢情報を検出するステップと、
前記検出された姿勢情報に基づいた値に第1制御ゲインを乗算して、前記車輪を駆動する駆動手段を駆動するための第1制御信号を生成するステップと、
前記検出された姿勢情報に基づいた値に第2制御ゲインを乗算して、前記駆動手段を駆動するための第2制御信号を生成するステップと、
前記発生する回生電圧が所定閾値以上であるか否かを判定するステップと、を含み、
前記第1制御手段から出力される第1制御信号と、前記第2制御手段から出力される第2制御信号と、に基づいて前記車輪を駆動し、
前記発生した回生電圧が所定閾値以上であると判定されたとき、前記第1及び第2制御ゲインのうち一方の符号を反転させて、前記第1及び第2制御ゲインを変更する、
ことを特徴とする倒立型移動体の制御方法。
【請求項7】
車輪の回転に伴って発生する回生電力を、抵抗部材を用いて消費する倒立型移動体のプログラムであって、
検出された前記倒立型移動体の姿勢情報に基づいた値に第1制御ゲインを乗算して、前記車輪を駆動するための第1制御信号を生成する処理と、
前記検出された倒立型移動体の姿勢情報に基づいた値に第2制御ゲインを乗算して、前記車輪を駆動するための第2制御信号を生成する処理と、
前記発生した回生電圧が所定閾値以上であると判定されたとき、前記第1及び第2制御ゲインのうち一方の符号を反転させて、前記第1及び第2制御ゲインを変更する処理と、
をコンピュータに実行させる、ことを特徴とする倒立型移動体のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−112108(P2013−112108A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258737(P2011−258737)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】