説明

偏光フィルムの検査方法

【課題】偏光フィルムにおける、欠陥検査装置で検出された欠陥のうちで許容される欠陥のみを含む部分を製品として使用不可能とすることなく、欠陥検査装置で検出された欠陥の近傍位置にマークを形成することができる偏光フィルムの検査方法を提供する。
【解決手段】帯状の偏光フィルムに対して欠陥検査装置を用いて欠陥の検出を行い(S2)、欠陥の検出結果に基づき、欠陥の位置を示す欠陥位置データを作成して記憶媒体に保存し(S3)、帯状の偏光フィルムをロールに巻き取り(S5)、ロールから帯状の偏光フィルムを巻き出し(S6)、帯状の偏光フィルムに対して他のフィルムを積層し(S7)、他のフィルムの積層後に、記憶媒体に保存された欠陥位置データを読み込み、読み込んだ欠陥位置データに基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定し(S8)、特定された欠陥位置に基づいて上記他のフィルムにおける欠陥の近傍位置にマークを形成する(S9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の偏光フィルムに存在する欠陥を検出した後、ロールに巻き取り、巻き取った帯状の偏光フィルムをロールから巻き出し、帯状の偏光フィルムに対して他のフィルムを積層した後、欠陥の位置の近傍にマーキングを行う偏光フィルムの検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル等に使用される偏光フィルムの製造工程では、一般に、一定の幅で長大な帯状の状態で各種処理が自動的に施され、最終的に製品仕様に従って所定の形状となるようにカットされている。
【0003】
従来より、帯状の状態の偏光フィルムに対して欠陥検査装置(自動検査機)によって自動的に欠陥を検出し、後行程で欠陥の識別が容易となるように、欠陥の近傍位置にマークを形成する偏光フィルムの検査方法が知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−305070号公報(2001年10月31日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、欠陥検査装置で欠陥が検出された偏光フィルムは、100%使用できないものではない。欠陥検査装置で欠陥が検出される欠陥は、その大きさが小さい場合には許容される場合もある。欠陥検査装置は、一般に、欠陥の大きさが許容サイズを超えるものであるかを判定することはできず、許容サイズであるかに係わらず全ての欠陥を検出してしまう。一般に、欠陥検査装置で検出された欠陥が許容されるかどうかは、最終的に人間が目視検査で判断する。
【0005】
偏光フィルムは、一般に、マークの消去が不可能である。特にフェルトペンで形成されたマークは、一般に、偏光フィルムから拭き取ることが不可能である。
【0006】
そのため、従来の検査方法のように、欠陥検査装置で偏光フィルムの欠陥を検出した時に、そのままの状態で偏光フィルム表面における欠陥の近傍位置に直接マークを形成してしまうと、後の目視検査で欠陥が許容されると判定されたときに、マークを消去することができない。そのため、偏光フィルムにおける、欠陥検査装置で検出された欠陥のうちで許容される欠陥のみを含む部分が、本来は製品として使用できるにもかかわらず、マークが形成されているために製品として使用できないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、偏光フィルムにおける、欠陥検査装置で検出された欠陥のうちで許容される欠陥のみを含む部分を製品として使用不可能とすることなく、欠陥検査装置で検出された欠陥の近傍位置にマークを形成することができる偏光フィルムの検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る偏光フィルムの検査方法は、上記の課題を解決するために、帯状の偏光フィルムに対して欠陥検査装置を用いて欠陥の検出を行う工程と、欠陥の検出結果に基づき、欠陥の位置を示す欠陥位置データを作成して記憶媒体に保存する欠陥位置記録工程と、上記欠陥の検出後に、帯状の偏光フィルムをロールに巻き取る工程と、上記ロールから帯状の偏光フィルムを巻き出す工程と、巻き出された帯状の偏光フィルムに対して他のフィルムを積層する工程と、他のフィルムの積層後に、記憶媒体に保存された欠陥位置データを読み込み、読み込んだ欠陥位置データに基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定し、特定された欠陥位置に基づいて上記他のフィルムにおける欠陥の近傍位置にマークを形成するマーク形成工程とを含むことを特徴としている。また、本発明に係る偏光フィルムの検査方法は、上記の課題を解決するために、帯状の偏光フィルムに対して欠陥検査装置を用いて欠陥の検出を行う工程と、欠陥の検出結果に基づき、上記偏光フィルムの幅方向端部に対して、欠陥の位置に関する情報を示す識別コードを印刷し、上記識別コードが印刷された帯状の偏光フィルムをロールに巻き取る工程と、上記ロールから帯状の偏光フィルムを巻き出す工程と、巻き出された帯状の偏光フィルムに対して他のフィルムを積層する工程と、他のフィルムの積層後に、偏光フィルム上の識別コードを読み出し、読み出された識別コードに基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定し、特定された欠陥位置に基づいて上記他のフィルムにおける欠陥の近傍位置にマークを形成するマーク形成工程とを含むことを特徴としている。
【0009】
従来の検査方法では、欠陥検査装置を用いた偏光フィルムの欠陥の検出と、欠陥の近傍位置へのマークの形成とを同時に行っているのに対し、本発明の検査方法では、欠陥検査装置を用いて偏光フィルムの欠陥を検出する工程と、欠陥の近傍位置にマークを形成する工程とを分離し、前者の工程と後者の工程との間に、他のフィルムを積層する工程を実施している。これによって、以下に説明する効果が得られる。
【0010】
一般に、偏光フィルムの上には、剥離フィルム等の他のフィルムが積層される。剥離フィルムは、一般に、液晶表示装置等に使用する際に剥離される。剥離フィルム等の他のフィルムは、マーク消去が可能である。特にフェルトペンで形成されたマークは、一般に、剥離フィルム等の他のフィルムから拭き取ることが可能である。
【0011】
そのため、本発明の検査方法では、欠陥検査装置による欠陥検査時にはマークを形成せず、偏光フィルムの上に剥離フィルム等の他のフィルムを積層した(例えば偏光フィルムに糊を介して剥離フィルム等の他のフィルムを貼った)後に、他のフィルム(の最上層)における欠陥の近傍位置にマークを形成し、その後の目視検査において欠陥が許容サイズであると判定された時にマークの消去ができるようにしている。これにより、偏光フィルムにおける、欠陥検査装置で検出された欠陥のうちで許容される欠陥のみを含む部分は、マークを消去して製品として使用することができる。
【0012】
したがって、本発明の検査方法によれば、偏光フィルムにおける、欠陥検査装置で検出された欠陥のうちで許容される欠陥のみを含む部分を製品として使用不可能とすることなく、欠陥検査装置で検出された欠陥の近傍位置にマークを形成することができる偏光フィルムの検査方法を提供できる。
【0013】
なお、従来の検査方法において、偏光フィルムに対して他のフィルムを全部積層した後で、欠陥検査装置による偏光フィルムの欠陥の検出と、欠陥の近傍位置へのマークの形成とを同時に行うことも考えられる。しかしながら、そのような方法では、欠陥検査装置で検出された欠陥が偏光フィルムの欠陥であるのか、偏光フィルム上に積層された他のフィルムの欠陥であるのかが判別できない。これに対し、本願発明の検査方法では、他のフィルムの積層前に欠陥検査装置による欠陥の検出を行うので、偏光フィルムの欠陥を確実に検出できる。
【0014】
特許文献1に記載されている従来の検査方法は、偏光フィルムの欠陥を検査した時に欠陥の近傍位置にマークを形成するものであった。
【0015】
これに対し、本発明の方法は、帯状の偏光フィルムに対して欠陥検査を行う工程と帯状の偏光フィルム上に他のフィルムを積層する工程との間に、帯状の偏光フィルムをロールに巻き取る工程と帯状の偏光フィルムをロールから巻き出す工程とを行う。これは、帯状の偏光フィルムを製造して欠陥検査を行う工程と、帯状の偏光フィルム上に他のフィルムを積層する工程とは、一般に、別の工場で行われるために、一方の工場から他方の工場まで帯状の偏光フィルムを搬送する必要があり、また、帯状の偏光フィルムは、一般に、長尺であるため、工場間の搬送を行う際にはロールに巻き取らないと搬送が困難であるためである。
【0016】
従来の検査方法であれば、欠陥検査と同時にマークの形成を行うので、欠陥に関する情報を記録しておく必要はなく、欠陥検査装置からマーキング装置へと信号を転送するだけですむ。これに対し、本発明の検査方法では、上述したように欠陥検査工程とマーク形成工程とを分離し、欠陥検査工程とマーク形成工程との間に偏光フィルムをロールに巻き取る工程と偏光フィルムをロールから巻き出す工程とを行っているので、欠陥検査時に欠陥検査結果を何らかの形で記録しておいて、その後のマーク形成工程で利用できるようにする必要がある。
【0017】
そのために、本発明の検査方法では、欠陥位置記録工程において、欠陥の検出結果に基づき、欠陥の位置を示す欠陥位置データを作成して記憶媒体に保存し、他のフィルム積層後のマーク形成工程において、記憶媒体に保存された欠陥位置データを読み込み、読み込んだ欠陥位置データに基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定し、特定された欠陥位置に基づいて上記他のフィルムにおける欠陥の近傍位置にマークを形成する。これにより、欠陥検査工程とマーク形成工程とを分離し、欠陥検査工程とマーク形成工程との間に偏光フィルムをロールに巻き取る工程と偏光フィルムをロールから巻き出す工程とを行っていても、欠陥の近傍位置にマークを形成できる。
【0018】
本発明の検査方法において、上記欠陥位置記録工程では、欠陥の検出結果に基づき、帯状の偏光フィルムの全域を偏光フィルムの幅方向に沿った分割線で分割してなる複数の領域のうちで欠陥を含む領域の偏光フィルム幅方向端部に対して、欠陥を含む領域を識別するための識別コードを印刷し、上記欠陥位置データとして、欠陥を含む領域内における欠陥の位置を示す欠陥位置データを作成し欠陥を含む各領域に対応付けて記憶媒体に保存し、上記マーク形成工程では、偏光フィルム上の識別コードを読み出し、読み出された識別コードによって識別される領域に対応付けられた欠陥位置データに基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定することが好ましい。
【0019】
本願発明の方法としては、偏光フィルムの先頭位置を基準とした欠陥位置の座標を示す欠陥位置データのみに基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定する方法が考えられる。しかしながら、偏光フィルムは、欠陥検査後、マークが形成されるまでに長手方向に伸びることがある。そのため、偏光フィルムの先頭位置を基準とした欠陥位置の座標を示す欠陥位置データのみに基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定する方法では、特定した欠陥位置に長手方向の誤差が生じる可能性がある。
【0020】
これに対し、上記方法によれば、識別コード(バーコード)と欠陥位置データとの両方に基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定するので、欠陥位置データのみに基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定する場合と比較して、誤差なく欠陥位置を特定できる。また、上記方法によれば、識別コードのみに基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定する場合と比較して、より情報量の多い情報に基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定できるので、偏光フィルムの欠陥位置をより精密に特定し、より精密なマークの形成を行うことができる。
【0021】
また、識別コードを印刷する本発明の検査方法においては、上記識別コードの印刷前に、上記偏光フィルムの幅方向端部に対してコロナ放電処理を施す工程をさらに含むことが好ましい。
【0022】
一般的な偏光フィルムは、印刷インクが乗りにくく、印刷適性が比較的悪い。上記方法によれば、偏光フィルムの幅方向端部に対してコロナ放電処理(偏光フィルムの上にコロナ放電をかける処理)を施すことによって、偏光フィルムの幅方向端部表面を荒らして印刷インクの接着性(印刷インクの乗り易さ)を高め、印刷された識別コードが剥がれること(印刷インクの剥離)を防止できる。したがって、上記方法によれば、接着性の弱い偏光フィルムにも確実に適用可能となる。
【0023】
また、本発明の検査方法においては、上記マークを形成する工程では、上記偏光フィルムの幅方向端部に複数並ぶように配置されたマーカを用いてマークを形成することが好ましい。
【0024】
上記マークを形成する方法としては、例えば、1つのマーカを偏光フィルムの幅方向に動かすことによって1つのマーカのみでマークを形成する方法が考えられる。しかしながら、そのような方法では、一度に多数の欠陥が発生した場合、一部の欠陥の近傍位置へマークを形成し損ねてしまう可能性がある。
【0025】
これに対し、上記方法によれば、偏光フィルムの幅方向端部に複数並ぶように配置されたマーカを用いてマークを形成するので、一度に多数の欠陥が発生した場合であっても、全ての欠陥の近傍位置に漏れなくマークを形成することができる。したがって、欠陥を含む偏光フィルムが良品側に流出することを防止できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る偏光フィルムの検査方法は、以上のように、偏光フィルムにおける、欠陥検査装置で検出された欠陥のうちで許容される欠陥のみを含む部分を製品として使用不可能とすることなく、欠陥検査装置で検出された欠陥の近傍位置にマークを形成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本願発明の偏光フィルムの検査方法の実施の一形態の概要について、図1に基づいて説明する。
【0028】
まず、原反の偏光フィルム(長い帯状に形成され、用途に応じた大きさを持つ複数の偏光フィルムを断裁によって得ることができる偏光フィルム)の幅方向端部に対してコロナ放電処理を施す(S1)。コロナ放電処理に用いるコロナ放電装置の出力は、適宜、最適化すればよい。この工程S1は、偏光フィルムの幅方向端部表面を荒らして印刷インクの接着性を高め、印刷された識別コードが剥がれることを防止するためのものであるが、偏光フィルムが接着性の強いものである場合等では、省略できる。
【0029】
次いで、原反の偏光フィルムに対し、欠陥検査装置を用いて偏光フィルムの表面あるいは内部に存在する欠陥(キズや異物、気泡など)の検査を行い、帯状の偏光フィルムの全域を偏光フィルムの幅方向に沿った分割線で分割してなる複数の領域の各々について欠陥の有無を検出し、欠陥を含む領域内における欠陥の位置を検出する(S2)。
【0030】
検査対象の偏光フィルムは、1層の偏光フィルムであってもよく、1層の偏光フィルムに対して、保護フィルム;反射フィルム、半透過フィルム、位相差フィルム、視角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの光学フィルム;などを1層または2層以上積層したものであってもよい。上記1層の偏光フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムを二色性色素(ヨウ素や二色性染料など)で染色したものを用いることができる。上記1層の偏光フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm〜150μm程度である。延伸のしやすさなども考慮すれば、その膜厚は10μm以上であるのが好ましい。検査対象の偏光フィルムは、1層の偏光フィルムに対して両面に保護フィルムが積層されたものであることが好ましい。1層の偏光フィルムに対し、保護フィルムを積層する際には、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルアルコール系樹脂からなる接着剤などの接着剤を介して保護フィルムを積層することが好ましい。上記保護フィルムとしては、トリアセチルセルロース(TAC)の如き酢酸セルロース系樹脂や、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられるが、偏光特性や耐久性などの点から、トリアセチルセルロースが特に好ましい。保護フィルムとしては、通常100μm以下の厚みのものが用いられるが、好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。保護フィルムの接合面と反対側の面(露出面)には、防眩処理、ハードコート処理、反射防止処理、帯電防止処理など、適宜の表面処理が施されていてもよい。酢酸セルロース系の樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂に対して必ずしも十分な接着力を有していないので、その接合面にケン化処理を施しておくのが好ましい。
【0031】
次いで、S2の欠陥の検出結果に基づき、欠陥の位置に関するデータをコード化することにより、欠陥を含む領域内における欠陥の位置を示す欠陥位置データを作成し、欠陥位置データを、欠陥を含む各領域に対応付けて記憶媒体に保存する(S3)。この工程では、例えば、欠陥を含む領域を碁盤の目状に複数の区画に分割し、撮像装置で撮像された欠陥を含む領域の画像のデータを、各区画の情報を2値で表す(欠陥があった区画の情報を黒色として表し、欠陥があった区画の情報を白色として表す)2値データに変換する。さらに、この2値データを、欠陥がある区画(黒色の区画)を「1」で表し、欠陥がない区画(白色の区画)を「0」で表す2値コード列からなる欠陥位置データに変換し、記憶媒体に保存する。
【0032】
次いで、S2の欠陥の検出結果に基づき、帯状の偏光フィルムの全域を偏光フィルムの幅方向に沿った分割線で分割してなる複数の領域のうちで欠陥を含む領域の偏光フィルム幅方向端部に対して、欠陥を含む領域を1対1の関係で識別するための識別コードとしての(1次元の)バーコードを印刷する(S4)。バーコードは、例えば、何番目の欠陥含有領域であるかを表すものであり、欠陥を含む領域(欠陥含有領域)の先頭に位置するように、インクジェット印刷装置等の印刷装置で印刷される。
【0033】
工程S4におけるバーコードの印刷位置は、偏光フィルムにおける最終的に製品として使用されない箇所に設定される。例えば、バーコードの印刷位置は、偏光フィルムの幅方向端部に所定幅(例えば10mm)で存在するナーリング部内に設定される。バーコードは、例えば偏光フィルムの幅方向端部の幅が7mmとなるように印刷される。S1のコロナ放電処理は、少なくとも、バーコードが印刷される領域、すなわち偏光フィルムにおけるナーリング部に対して行えばよい。コロナ放電処理は、偏光フィルムの有効範囲(製品として用いる範囲)外に対して行うことが好ましい。
【0034】
また、S2の欠陥の検出後に、帯状の偏光フィルムをロールに巻き取る(S5)。その後、帯状の偏光フィルムは、ロール形態で保管および搬送される。
【0035】
その後、帯状の偏光フィルムをロールから巻き出す(S6)。次いで、巻き出された帯状の偏光フィルムに対して他のフィルムを1層または2層以上積層する(S7)。
【0036】
上記他のフィルムとしては、剥離フィルム(セパレータ);反射フィルム、半透過フィルム、位相差フィルム、視角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの光学フィルム;保護フィルムなどが挙げられる。剥離フィルムは、偏光フィルム表面に設けられた液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を、実用に供するまでの間、汚染から保護するためのものである。剥離フィルムは、偏光フィルムの使用前に容易に剥離できる程度に、適度に密着性があるものであればよい。剥離フィルムとしては、具体的には、例えば、ポリエチレン系樹脂からなるフィルムや、ポリエステル系樹脂からなるフィルムが、一般に用いられる。剥離フィルムの密着性や剥離性を適度に調整するため、偏光フィルムに接合される表面に、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム処理などの表面処理を施してもよいし、あるいはその表面に、粘着層、シリコーン系やフッ素系の離型剤層、界面活性層などを適宜付与してもよい。剥離フィルムの厚みは、例えば、30μm以上であるのが有利である。
【0037】
また、S7における他のフィルムの積層後に、偏光フィルムの幅方向端部に印刷されたバーコードを読み出す(S8)。バーコードが何番目の欠陥含有領域であるかを表すものである場合には、バーコードを読み出す際に、バーコードが何番目の欠陥含有領域であるかを読み出す。
【0038】
また、記憶媒体に保存されている欠陥位置データを読み込む(S8)。図1の製造方法では、一般的に、図1に示すように、工程S1〜S5は偏光フィルム製造工場で実施される一方、工程S6〜S10は、偏光フィルム製造工場とは別の加工工場で実施される。そのため、一般に、S8で欠陥位置データを用いる前に、S3で記憶媒体に保存された欠陥位置のデータを、偏光フィルム製造工場の記憶媒体から加工工場へ転送しておくことが必要である。データの転送方法としては、(1)S3で欠陥位置データをUSB(ユニバーサル・シリアル・バス)メモリやCD−R(CD recordable)等の取り外し可能な記憶媒体に格納し、その取り外し可能な記憶媒体を欠陥位置データを出力する装置から取り外して加工工場へ運び、加工工場でその取り外し可能な記憶媒体から欠陥位置のデータを読み込む方法;(2)S3で欠陥位置データをハードディスク等の記憶媒体に格納し、欠陥位置データをその記憶媒体からLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)等の通信ネットワークを介して加工工場へと転送する方法;等が挙げられる。
【0039】
さらに、読み出されたバーコードと位置情報データとを照合し、バーコードによって識別される領域に対応付けられた欠陥位置データに基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定(計算)する(S8)。このときの計算方法は、S3のコード化の逆とすればよい。すなわち、この工程では、バーコードから読み取られた欠陥含有領域の番号と、記憶媒体から読み出された欠陥位置データとを照合し、S2のコード化の逆変換処理によって偏光フィルムの欠陥位置を計算すればよい。
【0040】
次いで、S8で特定された欠陥位置に基づいて上記他のフィルム上における、特定された欠陥の近傍位置にマークを形成する(S9)。このとき、マークを、欠陥を挟む2本の線状のマークとして形成することが好ましい。これにより、欠陥を容易に認識できるとともに、マークに挟まれた領域の外部には欠陥が存在しないことを確実に保証できる。
【0041】
最後に、マークが形成された帯状の偏光フィルムをロールに巻き取る(S10)。
【0042】
巻き取られた偏光フィルムは、その後、用途に応じた大きさを持つ複数の偏光フィルムに断裁され、マークの有無等に基づいて良品と不良品とに仕分けされ、良品が最終製品とされる。最終製品の偏光フィルムは、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラスマディスプレイ等に用いることができる。なお、工程S10を省略し、工程S9の後、直接、断裁および仕分けを行ってもよい。
【0043】
なお、工程S7において、他のフィルムを片面に積層してもよく両面に積層してもよい。工程S7において他のフィルムを片面に積層した場合には、工程S8において積層後の偏光フィルムにおける他のフィルムが積層された側の面上にマークを形成すればよい。工程S7において他のフィルムを両面に積層した場合には、積層後の偏光フィルムにおける何れの面上にマークを形成すればよい。
【0044】
図1の工程S2〜S5は、例えば、図2に示す偏光フィルム製造ラインを用いて行うことができる。
【0045】
偏光フィルム製造ラインは、図2に示すように、図示しない搬送ローラ等によって偏光フィルム原反1を搬送し、偏光フィルム原反1の両面にTAC等からなる保護フィルム3を積層して偏光フィルム原反4を製造し、ロール13に巻き取るものである。
【0046】
偏光フィルムのインライン自動検査装置は、上記偏光フィルム製造ライン中において、偏光フィルム原反1および偏光フィルム原反4の欠陥検査を自動的に行うものであり、撮像装置2、7と、図示しない画像処理装置とで構成されている。偏光フィルム原反1は、例えば液晶表示装置の偏光板として使用する偏光フィルムであり、肉眼では識別困難なほど小さい、表面の微小な欠陥であっても、高精細化している液晶表示装置等の表示画質を低下させてしまうので、存在することは好ましくない。また比較的広い範囲にわたる欠陥であっても、肉眼では判別が困難な場合もある。この構成では、撮像装置2、7で撮像された偏光フィルム原反1の画像に対して各種の画像処理を施すことなどによって、肉眼では判別が困難な欠陥であっても、欠陥として検出することができる。
【0047】
撮像装置2は、偏光フィルム原反1の裏面側から光源2bによって偏光フィルム原反1を照明し、偏光フィルム原反1の表面側に配置したカメラ2aで偏光フィルム原反1の正透過光像を撮像し、撮像された画像のデータを図示しない画像処理装置に出力するものである。図示しない画像処理装置は、カメラ2aから出力された画像データに基づいて偏光フィルム原反1の欠陥を検出する。これにより、偏光フィルム原反1の付着異物および汚れを欠陥として検出することができる。また、偏光フィルム原反1の表面側から光源によって、偏光フィルム原反1を照明し、偏光フィルム原反1の表面側に配置したカメラで反射画像を撮像する方法、偏光フィルム原反1の裏面側から光源によって、偏光フィルム原反1を照明し、偏光フィルム原反1の裏面側に配置したカメラで反射画像を撮像する方法、偏光フィルム原反1の裏面側から光源によって、偏光フィルム原反1を照明し、偏光フィルム原反1とクロスニコルに配置した偏光板を介して表面側に配置したカメラで画像を撮像する方法等を併用して、偏光フィルム原反1の欠陥を感度良く検出することもできる。
【0048】
撮像装置7は、偏光フィルム原反4の裏面側から光源7bによって偏光フィルム原反4を照明し、偏光フィルム原反4の表面側に配置したカメラ7aで偏光フィルム原反4の正透過光像を撮像し、撮像された画像のデータを図示しない画像処理装置に出力するものである。図示しない画像処理装置は、カメラ7aから出力された画像データに基づいて偏光フィルム原反4の欠陥を検出する。これにより、偏光フィルム原反1と保護フィルム3との間に存在する泡状気泡および異物(核有気泡)、並びに保護フィルム3上に存在する異物を欠陥として検出することができる。また、偏光フィルム原反4の表面側から光源によって、偏光フィルム原反4を照明し、偏光フィルム原反4の表面側に配置したカメラで反射画像を撮像する方法、偏光フィルム原反4の裏面側から光源によって、偏光フィルム原反4を照明し、偏光フィルム原反4の裏面側に配置したカメラで反射画像を撮像する方法、偏光フィルム原反4の裏面側から光源によって、偏光フィルム原反4を照明し、偏光フィルム原反4とクロスニコルに配置した偏光板を介して表面側に配置したカメラで画像を撮像する方法等を併用して、偏光フィルム原反4の欠陥を感度良く検出することもできる。
【0049】
なお、カメラ2a、7aとしては、CCDカメラが好適であるが、他のタイプのカメラを用いてもよい。
【0050】
光源2b、7bは、偏光フィルム原反1の幅方向の全体にわたって、均一な照明を行うことができるものであることが好ましい。光源2b、7bとしては、蛍光灯などの管状の発光体や、伝送ライトなどの線状の光源を使用できる。伝送ライトは、棒状の導光体の軸方向の端面にメタルハロゲンランプなどの強力な光源を配置し、端面に入射された光を両端面間の側面に導き、棒状の光源として機能する。光源2b、7bは、レーザ光を広げて照射するものであってもよい。光源2b、7bが偏光フィルム原反1または4に照射する光は、欠陥の検出が容易な波長や偏光特性となるように設定される。
【0051】
以上のようにして、図2に示す自動検査装置では、搬送方向に沿って配置した複数種類の撮像装置2、7を用いて欠陥検査を行い、かつ、正透過光像を撮像する撮像装置2・7を用いた欠陥検査を保護フィルム3の積層工程の前後で行う。そして、図示しない画像処理装置は、いずれかの種類の撮像装置2、7を用いた欠陥検査によって欠陥が検出されれば、偏光フィルム(1または4)に欠陥があるものと判定する。
【0052】
上記構成では、各種の欠陥モードの欠陥の各々を、その欠陥を検出するのに最適な光学系(撮像装置2、7)を用いて検出することができるので、複数種類の欠陥を検出する感度を向上させることができる。また、上記構成では、図2に示す製造ラインにおける、より上流側で検査を行うので、部材数のより少ない状態で偏光フィルム原反の検査を行うことができる。その結果、欠陥の誤検出(虚報)を低減できる。
【0053】
なお、自動検査装置の構成は、図2に示す構成に限定されるものではなく、撮像装置2、7のうちの一部のみを用いた構成であってもよい。また、自動検査装置は、図2に示す構成のように製造ライン中で検査を行うものである方が製造効率の点で有利であるが、製造ラインとは別に検査を行うものであってもよい。
【0054】
偏光フィルム原反4は、欠陥に関する欠陥情報(欠陥部位、欠陥座標、欠陥内容など)を示すバーコード17がその表面に印刷され、ロール13に巻き取られる。
【0055】
次に、図1の工程S1〜S5の一例について、図4および図5に基づいて詳細に説明する。
【0056】
図1の工程S1〜S5を実行する自動検査装置は、図4に示すように、偏光フィルム原反1の欠陥を検出するための撮像装置2、画像処理装置14、バーコード制御装置15、およびバーコード印刷装置18を備えている。また、この自動検査装置は、図4では省略しているが、偏光フィルム原反1は、図2に示すように、搬送経路に沿って配置された図示しない搬送ローラ等によってロール13へ搬送されて、駆動手段によってロール13が回転されることによって、ロール13に巻き取られる。
【0057】
撮像装置2は、偏光フィルム原反1の全域の画像を撮像して、画像データを画像処理装置14へ送るものであり、図示しない光源(図2に示す光源2bに対応)と、偏光フィルム原反1の幅方向に沿って並ぶように配置された3つのカメラ2aとを備えている。カメラ列は、図4では1列としているが、これに限定されるものではなく、2列以上としてもよい。また、幅方向に沿って配置されるカメラ2aの台数も、特に限定されるものではなく、1台であってもよく、2台であってもよく、4台以上であってもよい。カメラ2aは、例えば、5000画素を高密度に配列した一次元のCCDセンサを撮像素子として備えるものである。例えば、検査対象の偏光フィルム原反1の幅は、約1300mmの範囲であり、撮像装置2の検査エリアは、偏光フィルム原反1幅方向のサイズが約1300mmである。
【0058】
画像処理装置14は、カメラ2aから送られた画像データに対して画像処理を施し、偏光フィルム原反1の表面や内部に存在する欠陥の有無を検出するとともに、帯状の偏光フィルム原反1の全域を偏光フィルム原反1の幅方向に沿った分割線で複数の領域に分割してなる各領域(図1では偏光フィルム原反1の長手方向に沿った各領域のサイズは100mm)の各々について、欠陥有りと判定された領域については、その領域を碁盤の目状に複数の区画(図5の例では20mm角の正方形の領域)に分割し、欠陥を含む領域の画像データを、各区画における欠陥の有無を2値で表す(欠陥があった区画の情報を黒色として表し、欠陥があった区画の情報を白色として表す)2値データに変換する。画像処理装置14は、例えば、図4に示す偏光フィルム原反1の欠陥ブロック(欠陥を含む領域)002に関する図5(a)に示す画像データを、欠陥ブロック002に関する図5(b)に示す2値データに変換する。画像処理装置14は、得られた2値データをバーコード制御装置15に出力する。画像処理装置14は、画像処理プログラムと画像処理プログラムを実行するコンピュータとによって構成することができる。画像処理プログラムの欠陥判定アルゴリズムとしては、公知の種々のアルゴリズムを採用することができる。画像処理装置14は、ハードウェアによって構成してもよい。
【0059】
バーコード制御装置15は、画像処理装置14から送られた2値データを、欠陥がある区画(黒色の区画)を「1」で表し欠陥がない区画(白色の区画)を「0」で表す2値コード列からなる欠陥位置データに変換(コード化)する。欠陥を含む領域を碁盤の目状に分割してなる複数の区画が、偏光フィルム原反1長手方向m個(図5の例ではm=5)×偏光フィルム原反1幅方向n個(図5の例ではn=9)からなるとすれば、欠陥ブロック002に関する2値コード列は、図5(c)に示すように、各々が偏光フィルム原反1長手方向1個×偏光フィルム原反1幅方向n個からなる複数の小ブロック(図5の例では小ブロック01〜05)のそれぞれに関する2値コード列で構成されており、各小ブロックの2値コード列は、最上位ビット側から、欠陥を含む領域のうちで何番目かを示す欠陥ブロック番号のデータ列(図5の例では3ビット)、小ブロック番号を示すデータ列(図5の例では2ビット)、および各区画における欠陥の有無を示す(欠陥有りを「1」で示し、欠陥無しを「0」で示す)2値コード列(図5の例では9ビット)からなる。そして、バーコード制御装置15は、欠陥位置データを記憶媒体としてのデータCD(CD−R)16に保存する。バーコード制御装置15は、例えば産業用パーソナルコンピュータなどによって実現される。各区画における欠陥の有無を示すデータは2値コードに限定されるものではなく、16進数などを使用することにより、複数の画像処理装置のデータを表すことができる。例えば、欠陥の有無を示すデータが、第1の画像処理処理で欠陥が検出された場合を「1」、画像処理装置2で欠陥が検出された場合を「2」、第3の画像処理装置で欠陥が検出された場合を「4」で表し、複数の画像処理装置で同時に欠陥が検出された場合を、各々の画像処理装置で欠陥が検出された場合を示す数値を加算した数値で表すとすると、第1の画像処理装置及び第3の画像処理装置で同時に欠陥を検出した場合、欠陥の有無を示すデータは「5」となる。各々の画像処理装置による検査結果に個別の値をもたせることにより、後で述べるマーキング装置により欠陥位置を計算する際にいずれの画像処理装置で検出した不良かを識別することが可能となり、特定の画像処理装置にて検出した欠陥のみにマーキングすることができる。
【0060】
また、バーコード制御装置15は、画像処理装置14からの2値データに基づきバーコード印刷装置18を駆動するものである。バーコード制御装置15は、欠陥を含む領域に関する2値データを画像処理装置14から受け取ると、同一の偏光フィルム原反1について欠陥を含む領域に関する2値データを何回目に受け取ったかを示す番号を欠陥ブロック番号とし、その欠陥ブロック番号を表すバーコードの印字データを生成する。そして、バーコード制御装置15は、欠陥を含む領域に関する2値データを画像処理装置14から受け取ってから所定時間後にバーコード印刷装置18へ印刷指令およびバーコードの印字データを送る。上記所定時間は、バーコード印刷装置18によってバーコード17が印刷されるタイミングが、そのバーコード17に対応する偏光フィルム原反4の領域の先頭位置がバーコード印刷装置18によって印刷される位置を通過するタイミングと一致するよう設定される。
【0061】
バーコード印刷装置18は、特に限定されるものではないが、インクジェットプリンタなどである。バーコード印刷装置18は、バーコード制御装置15から印刷指令およびバーコードの印字データを受け取ると、欠陥ブロック番号を示すバーコード17を、偏光フィルム原反4の幅方向端部に印刷する。その結果、バーコード印刷装置18は、偏光フィルム原反4の幅方向端部に対して、欠陥ブロック番号を示すバーコード17を、その欠陥ブロック番号に対応する領域の先頭位置に印刷することができる。
【0062】
次に、図1の工程S6〜S10の一例について、図6〜図8に基づいて詳細に説明する。
【0063】
図8に示すように、偏光フィルム原反4は、図示しない搬送ローラ等によって、ロール13から巻き出され、剥離フィルム21を偏光フィルム原反4に積層する処理が施されて偏光フィルム原反22とされた後、マーキング装置へ搬送され、ロール29に巻き取られる。
【0064】
マーキング装置は、偏光フィルム原反22における剥離フィルム21上にマーク32(図6参照)を形成するものであり、図8に示すように、センサ23、バーコードリーダ(バーコード読み取りセンサ)24、HDD(ハードディスクドライブ)26、マーカ27、およびマーカ制御装置28(図6参照)を備えている。
【0065】
センサ23、およびマーカ27の近傍に配置された図示しないエンコーダは、偏光フィルム原反22の搬送速度を検出し、タイミング信号をPC(パーソナルコンピュータ)25へ出力する。
【0066】
バーコードリーダ24は、PC25からの読込指令に従って、偏光フィルム原反22の幅方向端部に印刷されているバーコード17を読み取り、バーコード17が示す欠陥ブロック番号をRS232C等の通信方式でPC25へ送る。
【0067】
PC25は、バーコードリーダ24へ読込指令を送信し、バーコードリーダ24から欠陥ブロック番号を受け取ると共に、データCD16に保存された欠陥位置データを読み込む。そして、PC25は、欠陥ブロック番号と位置情報データとを照合し、欠陥ブロック番号に対応付けられた欠陥位置データに基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定(計算)する。PC25は、この計算によって、例えば、図7(a)に示す欠陥位置データから、図7(b)に示すような、欠陥を含む領域内の各区画における欠陥の有無を2値で表す(欠陥があった区画の情報を黒色として表し、欠陥があった区画の情報を白色として表す)2値データを得る。そして、PC25は、この2値データを元に、欠陥を含む区画(図5(b)の例では黒色の区画)を幅方向の両側から挟む位置にあるマーカ27を動作させるマーキング指令をマーカ制御装置28(図6参照)に出力する。
【0068】
PC25は、マーカ制御装置28(図6参照)からマーク形成の開始/停止指令を受信し、開始/停止指令に応答してマーカ制御装置28(図6参照)へマーク形成の開始/停止応答(アンサー)および準備完了を通知した後、上記マーキング指令を適切なタイミングでマーカ制御装置28(図6参照)に出力する。このとき、PC25は、センサ23および図示しないエンコーダの出力に基づいて、バーコードリーダ24によるバーコード読み取りのタイミングと、マーカ27によるマーク形成のタイミングとを同期させるように、マーキング指令の出力タイミングを制御する。なお、HDD26は、PC25の動作を制御するプログラムを記憶しているものである。
【0069】
マーカ27は、フェルトペン(例えば「マジック(登録商標)インク」として市販されているもの)であり、バーコードリーダ24に対して搬送方向の下流側に、欠陥結果データを得る際に用いる区画の、偏光フィルム原反1幅方向に沿ったサイズ(図6では20mm)に等しい間隔で、偏光フィルム原反22の幅方向に並ぶように複数設置されている。マーカ27の数は、偏光フィルム原反22の幅方向全体をカバーできる数、例えば75個であることが好ましい。マーカ27は、偏光フィルム原反22の表面に、搬送方向に平行な線状のマーク32を形成する。各マーカ27は、先端を偏光フィルム原反22の表面に接触させることによって、搬送方向に線状のマーク32を形成することができる。各マーカ27は、不使用時にはキャップをかぶせて、溶剤や希釈剤などが蒸発して書き味などが低下するのを防ぐことが好ましい。マーカ27によって形成されるマーク32の形状・大きさについては、目視で認識できるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、20mmの線状のマークとすることができる。また、本実施形態では、フェルトペンであるマーカ27を使用しているが、マーカ27に代えてインクジェット式のマーカや、カッターにより傷をマーク32として形成するマーカなど、公知の種々のマーカを採用することができる。
【0070】
マーカ制御装置28は、PC25からのマーキング指令に基づき、PC25からのマーキング指令における欠陥を含む区画(図7(b)の例では黒色の区画)を幅方向の両側から挟む位置にあるマーカ27を選択的に作動させ、作動させたマーカ27によって欠陥を含む区画を幅方向の両側から挟むようにマーク32を形成する。その結果、偏光フィルム原反22表面は、例えば、図7(c)に示されているように欠陥を含む区画の各々が2本の線状マーク32で挟まれた状態となる。
【0071】
なお、ロール13からの偏光フィルム原反22の送り出し方向によっては、偏光フィルム原反22における複数の欠陥を含む領域が欠陥ブロック番号の大きい領域から順にマーキング装置へ送られることがある。そのため、マーキング装置では、欠陥ブロック番号に基づいて偏光フィルム原反22の送り出し方向を自動認識し、偏光フィルム原反22の送り出し方向に応じて欠陥位置データの並び替えを行う。
【0072】
マーキング装置によってマーク32が形成された偏光フィルム原反22は、その後、図3に示すように、複数の所定形状(この例では矩形)の区画部分(図3の破線で区画された部分)に断裁されて、用途に応じた形状およびサイズを持つ複数の偏光フィルム31となる。各偏光フィルム31についてマーク32の有無の検査が行われ、上記複数の偏光フィルム31が、仕分け装置または人手によって、マーク32の無い偏光フィルム31と、マーク32の有る偏光フィルム31とに仕分けされる。マーク32の有無を検査する際、欠陥の両側を挟むようにマーク32が付されていれば、肉眼では識別しにくい欠陥であっても容易に識別できる。マーク32の有る偏光フィルム31については、ステップS11で目視による欠陥確認を行う。ステップS11の目視検査は、偏光フィルム31の欠陥が許容できる欠陥であるかを判定するものである。この判定の結果、偏光フィルム31の欠陥が許容できる欠陥であれば、ステップS12で偏光フィルム31の検査時間の短い目視検査を行った後、偏光フィルム31を製品として出荷する。一方、偏光フィルム31の欠陥が許容できない欠陥であれば、ステップS14で偏光フィルム31を廃棄する。また、マーク32の無い偏光フィルム31については、ステップS12で検査時間の短い目視検査を行った後、製品として出荷する。
【0073】
なお、上述した実施形態では識別コードとして欠陥ブロック番号を示す1次元バーコードを印刷していたが、本発明における識別コードは、欠陥を含む領域(欠陥ブロック)を1対1の関係で識別できるものであれば、1次元バーコードに限定されるものではなく、2次元バーコードや、文字(例えば欠陥ブロック番号を示す数字)等であってもよい。
【0074】
また、上述した実施形態では識別コード(バーコード)と欠陥位置データとの両方に基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定していたが、本発明の検査方法では、欠陥位置データのみに基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定してもよい。また、識別コードを用いて偏光フィルムの欠陥位置を特定する場合、識別コードは、欠陥を含む領域の番号や欠陥位置の座標などに加えて、欠陥の内容を示すものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、種々の偏光フィルムの製造業に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の一形態に係る偏光フィルムの検査方法の概要を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の一形態に係る偏光フィルムの検査方法における欠陥検査等に用いる偏光フィルム製造ラインの概略を示すブロック図である。
【図3】偏光フィルム原反を断裁した後の仕分け方法を説明する図である。
【図4】本発明の実施の一形態に係る偏光フィルムの検査方法に用いる自動検査装置の概略を示すブロック図である。
【図5】上記自動検査装置において偏光フィルム原反の画像データをコード化する方法の概略を示す図である。
【図6】本発明の実施の一形態に係る偏光フィルムの検査方法に用いるマーキング装置の概略を示すブロック図である。
【図7】上記自動検査装置においてバーコードおよび欠陥位置データに基づいてマーク形成位置を決定する方法の概略を示す図である。
【図8】本発明の実施の一形態に係る偏光フィルムの検査方法に用いるマーキング装置の概略を示す他のブロック図である。
【符号の説明】
【0077】
1 偏光フィルム原反
2 撮像装置
4 偏光フィルム原反
7 撮像装置
12 偏光フィルム原反
13 ロール
14 画像処理装置
15 バーコード制御装置
16 データCD
17 バーコード
21 剥離フィルム
22 偏光フィルム原反
24 バーコードリーダ
25 PC
27 マーカ
28 マーカ制御装置
29 ロール
31 偏光フィルム
32 マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の偏光フィルムに対して欠陥検査装置を用いて欠陥の検出を行う工程と、
欠陥の検出結果に基づき、欠陥の位置を示す欠陥位置データを作成して記憶媒体に保存する欠陥位置記録工程と、
上記欠陥の検出後に、帯状の偏光フィルムをロールに巻き取る工程と、
上記ロールから帯状の偏光フィルムを巻き出す工程と、
巻き出された帯状の偏光フィルムに対して他のフィルムを積層する工程と、
他のフィルムの積層後に、記憶媒体に保存された欠陥位置データを読み込み、読み込んだ欠陥位置データに基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定し、特定された欠陥位置に基づいて上記他のフィルムにおける欠陥の近傍位置にマークを形成するマーク形成工程とを含むことを特徴とする偏光フィルムの検査方法。
【請求項2】
上記欠陥位置記録工程では、欠陥の検出結果に基づき、帯状の偏光フィルムの全域を偏光フィルムの幅方向に沿った分割線で分割してなる複数の領域のうちで欠陥を含む領域の偏光フィルム幅方向端部に対して、欠陥を含む領域を識別するための識別コードを印刷し、上記欠陥位置データとして、欠陥を含む領域内における欠陥の位置を示す欠陥位置データを作成し欠陥を含む各領域に対応付けて記憶媒体に保存し、
上記マーク形成工程では、偏光フィルム上の識別コードを読み出し、読み出された識別コードによって識別される領域に対応付けられた欠陥位置データに基づいて偏光フィルムの欠陥位置を特定することを特徴とする請求項1記載の偏光フィルムの検査方法。
【請求項3】
上記識別コードの印刷前に、上記偏光フィルムの幅方向端部に対してコロナ放電処理を施す工程をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の偏光フィルムの検査方法。
【請求項4】
上記マークを形成する工程では、上記偏光フィルムの幅方向端部に複数並ぶように配置されたマーカを用いてマークを形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の偏光フィルムの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−244064(P2009−244064A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90436(P2008−90436)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】