説明

偏光感応性光コヒーレンストモグラフィを用いて偏光非解消の偏光パラメータを測定するジョーンズ行列に基づく解析を行うシステム及び方法

ジョーンズ行列に基づく解析を実行する、ファイバ光学部品を用いた偏光感光性光コヒーレンストモグラフィ(OCT)システム用の装置及び方法を提供する。OCTシステムによって得られた干渉計測情報を処理してOCTシステムのファイバ光学部品によって生じる偏光効果を削減し、次にサンプルの複減衰量を測定する。更に、電磁放射線をサンプルと基準部に放射する装置及び方法も提供する。電磁放射の周波数は、時間とともに変化し、偏光変調部は放射線の偏光状態を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル面から反射した低コヒーレンス光ビームを基準光ビームと組み合わせ、当該サンプルアーム光の偏光状態の漸進的変化を用いて当該サンプルの偏光パラメータを測定できるファイバ型光学画像形成用のシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(連邦政府支援の声明)
この発明の少なくとも一部は、国立衛生研究所による認可番号R01EY014975及びR01RR19768、並びに国防総省による認可番号F49620−01−10014及びFA−9550−04−1−0079の下で政府の支援によりなされたものである。政府は、ここに記述し請求する発明に対する所定の権利を有しうる。
(関連出願の相互参照)
【0003】
この出願は、2004年10月29日に出願された米国特許出願第60/623,773号による優先権の利益に基づきこれを主張するものであり、その全ての開示内容は、参照によりここに組み入れられるものである。
【0004】
光コヒーレンストモグラフィは、光の基準ビームとサンプルから反射して戻るビームとの干渉を測定する画像形成技術である。伝統的な時間領域OCTのシステムの詳細については、Huang氏らの"Optical Coherence Tomography,"Science 254, 1178 (1991)で最初に説明された。スペクトル領域のOCT及び光学周波数領域インターフェロメトリ(Optical Frequency Domain Interferometry)のシステムの詳細については、国際特許出願番号PCT/US03/02349及び米国特許出願第60/514,769号にそれぞれ記載されている。偏光感応性OCTは、反射光の偏光状態の変化を観察することにより付加的なコントラストを提供するものである。偏光感応性の時間領域OCTの、ファイバを用いた初期の実現形態については、Saxer氏らの"High−speed fiber−based polarization−sensitive optical coherence tomography of in vivo human skin," Opt. Lett. 25, 1355 (2000)に記載されている。
【0005】
J.F. de Boer氏らの"Determination of the depth−resolved Stokes parameters of light backscattered from turbid media by use of polarization−sensitive optical coherence tomography," Opt. Lett. 24, 300 (1999)に記載されているように、偏光感応性の時間領域OCTにおいて、直交する2つの偏光チャネルで干渉縞を同時に検出することによって、反射偏光状態の全体の特性描写が可能となる。偏光解消しない偏光パラメータが2つあり、それは、位相遅延の度合い及び光学軸の向きにより特徴付けられる複屈折と、二色性に関連し量及び光学軸の向きにより特徴づけられる複減衰(又はダイアッテニュエーション;diattenuation)である。偏光状態を特性描写するために一般的に認められた略等価な数学的形式として、複素数の直交電界及びジョーンズ行列を用いたものと、ストークスベクトル及びミューラ行列を用いたものの、2つがある。深度の関数としてのストークスパラメータの漸進的変化の検討は、Saxer氏の刊行物及びB. Cense氏らの"In vivo 深さ−resolved birefringence measurements of the human retinal nerve fiber layer by polarization−sensitive optical coherence tomography,"Opt. Lett. 27, 1610 (2002)に記載のように、様々な生体サンプルにおける複屈折及び光学軸の向きのような偏光特性を特性描写するために用いられている。
【0006】
サンプルから反射した偏光状態は、サンプルに入射する偏光状態を制御して固定できるので、バルク光学システムにおいて極めて簡単にサンプルに入射する状態と比較できる。しかしながら、光ファイバには、光ファイバを経る伝搬が光の偏光状態を変える可能性があるという不利な点がある。この場合、サンプルに入射する光の偏光状態は、簡単には制御や測定が行えない。また、サンプルから反射した偏光状態は、検出器において受けたものと必ず同一ではない。複減衰すなわち偏光に依存する損失が無視可能な場合、光ファイバは、該ファイバを透過する光の偏光状態を状態間の相対的方向を維持するように変える。光ファイバと非複減衰ファイバ構成部を通過した全体的な伝搬効果は、全体的な座標変換、又は或る任意の回転と似ている。換言すれば、伝搬の始めから終わりまで全てのポイントにおける偏光状態の相対的方向は、米国特許第6,208,415号に記載のように維持される。
【0007】
この利点を取り入れた偏光感応性OCTにより画像形成される生体サンプルの偏光特性を測定する手法が数多くある。しかしながら、これら技術には全て欠点がある。ベクトルに基づく方法は、上記Saxer氏の刊行物、J.F. de Boer氏らの"Determination of the depth−resolved Stokes parameters of light backscattered from turbid media by use of polarization−sensitive optical coherence tomography," Opt. Lett. 24, 300 (1999)、及びB.H. Park氏らの"In vivo burn depth determination by high−speed fiber−based polarization−sensitive optical cohereince tomography," J. Biomed. Opt. 6, 474 (2001)に記載のように、ポアンカレ球表示において直角な2つの入射偏光状態について当該表面からとある深度から反射した偏光状態の回転を分析することによってのみ、複屈折及び光学軸の方向を特性描写するために用いられてきた。ミューラ行列に基づく方法は、S.L. Jiao氏らの"Two−dimensional 深さ−resolved Mueller Matrix of biological tissue measured with double−beam polarization−sensitive optical coherence tomography," Opt. Lett. 27, 101 (2002)、S. Jiao氏らの"Optical−fiber Mueller optical coherence tomography," Opt. Lett. 28, 1206 (2003)、及びS.L. Jiao氏らの"Depth−resolved two−dimensional Stokes vectors of backscattered 光 and Mueller matrices of biological tissue measured with optical coherence tomography," Appl. Opt. 39, 6318 (2000)に記載のように、複屈折、複減衰及び光学軸方向の測定が可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの技術は、一般的に、入射状態と検出器設定の組み合わせを用いた多数の測定値を必要とするため、生体内撮像においてそれらの実用性が制限されている。ジョーンズ行列に基づく方策も、S. Jiao氏らの"Optical−fiber−based Mueller optical coherence tomography," Opt. Lett. 28, 1206 (2003)、及びS.L. Jiao氏及びL.V. Wang氏の "Jones−matrix imaging of biological tissues with quadruple−channel optical coherence tomography," J. Biomed. Opt. 7, 350 (2002)に記載のように、サンプルの偏光非解消の偏光特性を全て特性描写するために用いられている。これら方法は、光ファイバや、サーキュレータ及びファイバスプリッタなどのファイバ構成部の使用を限定し、これら構成部を往復形式で横断しなければならないものとして説明されている。光学画像形成システムにおけて、このような構成部の使用を制限せずに、偏光非解消の偏光パラメータの測定を可能とする手法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、OCTによって画像形成されるサンプルの偏光非解消の偏光特性を測定し、サーキュレータ、スプリッタなどの非複減衰ファイバ光学部品又は光ファイバを使用する制限のない、代表的なシステム、ソフトウェア構成及び方法が提供される。これらの特性として、位相遅延の累積及び差分、複減衰の累積及び差分、光学軸方向の累積及び差分を含むが、これに限定されない。
【0010】
本発明の代表的な実施の形態の方法、ソフトウェア構成及びシステムは、複屈折の量と軸の方向を、OCTによって画像形成されたサンプルの2つの位置の間に複減衰がほとんどない、或いは複減衰がなく、光ファイバ又は非複減衰ファイバ光学部品の使用に制限がないものと仮定して、特性描写できる。更に、複減衰の量と方向を、OCTによって画像形成されたサンプルの2つの位置の間に複減衰がほとんどない、或いは複減衰がなく、光ファイバ又は非複減衰ファイバ光学部品の使用に制限がないものと仮定して、特性描写できる。
【0011】
更に、本発明の代表的な実施の形態の方法、ソフトウェア構成及びシステムを用いると、システム内の光ファイバ及び非複減衰ファイバ光学部品の使用制限が発生しないように、サンプルの偏光非解消の偏光特性を、少なくとも2つの特有の入射偏光状態に基づいて、検査するサンプル内の2つの異なる位置から反射された光を比較することによって、測定できる。
【0012】
このため、本発明の代表的な実施の形態によると、
a.少なくとも2つの特有の入射偏光状態を用いて検査する、位相遅延、複減衰、光学軸の方向を含むが、これに限定されない、サンプルの全偏光特性の測定、
b.ポアンカレ球表示においてほぼ直交する2つの入射偏光状態を用いて、複屈折を含む、サンプルの偏光特性の最適な検出を設定する、
c.偏光感光性OCTシステム全体における光ファイバ及び非複減衰ファイバ光学部品の配置の制限をなくす、
d.大きさ、位相、多項式、対数/指数、三角法及びこれらの組み合わせを含む複素電界の一般関数を最適化して、ジョーンズ行列全体及びそれに対応する目的とする偏光パラメータを決定する、
e.物理的な状況により適合するように上記最適化手順及び得られるパラメータ決定手法を修正することができる。
【0013】
本発明によると、光コヒーレンストモグラフィ(“OCT”)システムにおいてサンプルから受けた干渉計測信号の偏光効果のための代表的な実施の形態の装置、システム及び方法が提供される。特に、サンプルと基準部に関連する干渉計測情報を受けられる。干渉計測情報はその後処理され、OCTシステムの検出部によって干渉計測信号に生じる偏光効果が低減される。次に、サンプルの複減衰の量が決定できる。干渉計測情報は、偏光分離部と光学的に連結して、当該偏光分離部から上流に設けることができる少なくとも1つの光ファイバに沿って少なくとも一部が提供されうる。
【0014】
本発明の他の代表的な実施の形態では、サンプルの少なくとも1つの偏光特性を決定できる。偏光特性は、偏光解消特性、複屈折特性、偏光特性の光学軸、及び/又はサンプルに入射する少なくとも2つの偏光状態に関連する更なる情報を含んでもよい。干渉計測情報は、
a.サンプル内又はサンプル近傍の少なくとも1つの第1の位置における偏光状態の一方である第1の状態を決定する、
b.サンプル内又はサンプル近傍の少なくとも1つの第1の位置又は第1の位置近傍の少なくとも1つにおける偏光状態の他方である第2の状態を決定する、
c.サンプル内又はサンプル近傍の少なくとも1つの第2の位置における偏光状態の一方である第3の状態を決定する、
d.サンプル内又はサンプル近傍の少なくとも1つの第2の位置又は第2の位置近傍の少なくとも1つにおける偏光状態の他方である第4の状態を決定する、
e.第1及び第2の状態を第3及び第4の状態にそれぞれ変換する2×2複素行列を生成する、
f.行列を更なる行列の積に分解し、更なる行列のうちの第1及び第2のものは、ユニタリであって、相互に逆行列の関係であり、更なる行列の第3のものの非対角要素を最小化するように選択されるように、処理できる。
【0015】
例えば、第1から位置及び第2の位置に対し同一又は異なる位置の少なくとも1つの位置において得られる第1から第4の状態迄の少なくとも2つは平均化される。
【0016】
本発明の他の代表的な実施の形態によると、電磁放射をサンプルに照射する装置及び方法が提供される。例えば、少なくとも1つの第1の電磁放射線を照射できるよう構成された少なくとも1つの第1の構成部を備えてもよい。第1の構成部によって照射される電磁放射線の周波数は時間とともに変化してもよい。少なくとも1つの第2の電磁放射線を生成するように少なくとも1つの第1の電磁放射線の偏光状態を制御するよう構成された、少なくとも1つの偏光変調を行う第2の構成部を備えてもよい。更に、第2の電磁放射線を受け、少なくとも1つの第3の電磁放射線をサンプルに、少なくとも1つの第4の電磁放射線を基準部に照射するように構成された、少なくとも1つの第3の構成部を備えてもよい。第3の電磁放射線及び第4の電磁放射線は第2の電磁放射線に関連付けられてもよい。
【0017】
本発明の更なる代表的な実施の形態によると、少なくとも1つの第5の電磁放射線がサンプルから与えられ、少なくとも1つの第6の電磁放射線が、基準部から与えられてもよい。第5の電磁放射線及び第6の電磁放射線が、第3の電磁放射線及び第4の電磁放射線にそれぞれ関連付けられる。更に、第5の電磁放射線及び第6の電磁放射線に関連づけられた少なくとも1つの第7の電磁放射線を受け、第7の電磁放射線に基づいて第1の偏光状態を有する少なくとも1つの第8の電磁放射線と第2の偏光状態を有する少なくとも1つの第9の電磁放射線とを生成するよう構成された少なくとも1つの第4の構成部を備えてもよい。第1の偏光状態と第2の偏光状態は相互に異なることが好ましい。
【0018】
第8の電磁放射線及び第9の電磁放射線を受信及び/又は検出し、第8電磁放射線及び/又は第9の電磁放射線の振幅及び/又は位相を決定する少なくとも1つの第5の構成部を備えてもよい。更に、或いは代替として、第5の構成部は、第8及び第9の電磁放射線を受信及び/又は検出し、第1、第2、第4及び/又は第6の電磁放射線に関連した少なくとも1つの第10の放射線を受信又は検出し、これによって第1の電磁放射線及び/又は第2の電磁放射線の少なくとも1つの変動に関連したノイズを低減してもよい。更に、第5の構成部は、第8の電磁放射線及び/又は第9の電磁放射線の振幅及び/又は位相を決できる。
【0019】
本発明の更なる代表的な実施の形態では、第5の電磁放射線に関連した偏光状態が、第8及び/又は第9の電磁放射線の振幅及び/又は位相の関数として第2の電磁放射線に基づいて、サンプル内及び/又はサンプル近傍における異なる深さで決定できる。第1の電磁放射線から第9の電磁放射線迄の少なくとも1つを、少なくとも1つの光ファイバを介して伝搬できる。
【0020】
本発明の更なる代表的な実施の形態によると、第3の電磁放射線を受信して第5の電磁放射線を生成するよう構成された、少なくとも1つの眼部画像を形成する第6の構成部を更に備えることができる。所定の処理を実施する際に、第8の電磁放射線及び/又は第9の電磁放射線の振幅及び/又は位相に関連したデータを受け取り、第7の電磁放射線に対する当該装置(例えば、OCTシステム)の少なくとも一部により生じる偏光効果を低減し、サンプルの偏光特性を測定するようデータを処理するように構成された処理部を更に備えることができる。偏光特性は、複屈折、複減衰、偏光解消、複屈折の光学軸及び/又は複減衰の光学軸を含んでもよい。これらの本発明の特長及び長所は、添付の特許請求の範囲と共に以下に詳細に説明する本発明の実施の形態から明らかになる。
【0021】
本発明の目的、特長及び利点は、以下の詳細な説明と添付の図面を参照して明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この代表的な実施の形態のシステム、ソフトウェア構成及び方法は、様々なOCTシステム又はOFDIシステムにおいて実現可能である。図1に、本発明の代表的な実施の形態のシステム、方法及びソフトウェア構成を実現するために用いる、及び/又は用いることのできる、ファイバ型偏光感応性時間領域OCT装置の代表的な実施の形態を示す。
【0023】
本発明の代表的な実施の形態の方法、システム及び装置は、様々な画像形成システムにおいて実現可能である。例えば、図1に示すように、本発明の代表的な実施の形態とともに用いる、及び/又は用いることのできる代表的な装置には、代表的なファイバ型OCTシステムの構成部が設けられており、かかる装置全体には標準のシングルモードファイバを用いることができる。特に、この装置は、電磁放射線又は光信号を発生するようになっている、例えば広帯域用の光源100を含む。偏光コントローラ105及び偏光子110を備えることができ、これらを用いて、例えば光源100が最高出力を発揮する偏光状態を選択してもよい。この光及び/又は電磁放射線を、偏光状態をポアンカレ球表示における2つの直交状態の間の何れかに切り替える働きをする2段階駆動機能に基づいて構成された電気光学偏光変調器115に伝送できる。
【0024】
この代表的な装置に設けられた光サーキュレータ120を透過した後、光/電磁放射線を分離し、90/10ファイバスプリッタ125を介してサンプルアーム(サンプル155を含む)と干渉計の基準アームとに伝送できる。偏光コントローラ130を、(基準/遅延線135を含む)基準アームに設け、この偏光コントローラ130を用いて、光/電磁放射線に関して一定量の出力を遅延線135に伝送し、遅延線135から反射されるようにこの装置を制御できる。例えば、これを光源アームにおける光/電磁放射線の偏光状態にかかわらず行うことができる。サンプルアームは、コリメータレンズ140と、スキャン機構145と、ビームをサンプル155に焦点合わせするレンズ150とによって構成できる。サンプルアーム及び基準アーム双方から戻る光/電磁放射線は、ファイバスプリッタ125及び光サーキュレータ120を再び通り、その後偏光コントローラ160を通過して、偏光分離素子165によって分離される。こうして分離した信号から得られる2組の干渉縞を、個別の検出器170,175によって測定する。
【0025】
例えば、光源からサンプルまでの光路を、ジョーンズ行列Jin180によって表し、サンプルから検出器までの光路を、Jout185によって表せる。特に、Jin,Jout及びJは、それぞれ、偏光変調器からスキャンハンドピースまでの一方向光路、スキャンハンドピースから検出器170,175までの戻りの一方向光路、及びサンプル155における或る深さを通過する往復光路のジョーンズ行列表示である。このようにして、本発明の代表的な実施の形態は、干渉イメージングシステムに用いることができる。本発明の更なる代表的な実施の形態によれば、光サーキュレータ120及びスプリッタ125は、一体のファイバカプラに置換できる。
【0026】
この代表的な実施の形態は、時間領域OCT構成、スペクトル領域OCT構成、OFDI構成及び他の類似の構成に用いることができる。例えば、時間領域OCT構成に用いる場合、光源100を広帯域光源とすることができ、遅延線が或る範囲にわたり走査できるようにして、偏光分離素子165をファイバ偏光ビームスプリッタとし、検出器170,175をフォトダイオードとできる。代表的スペクトル領域OCT構成の場合、光源100を広帯域光源とすることができ、遅延線135は固定長とし、偏光分離素子165を偏光ビームスプリッタキューブとし、検出器170,175を分光計におけるラインスキャンカメラとできる。代表的なOFDI構成では、光源100を被掃引光源とすることができ、遅延線135は固定長とし、偏光分離素子165をファイバ偏光ビームスプリッタとし、検出器180,175をフォトダイオードとができる。
【0027】
一般的に、電磁放射線の偏光特性を分析する、本発明の代表的な実施の形態のシステム、装置及び方法は、サンプルアーム光を基準光で干渉させることによって、サンプルから反射した、又はサンプルを透過した電界を測定するように構成された装置又は構成に適用可能である。例えば、電界は、略直交に偏光されたチャネルにおいて偏光感応性スプリッタを用いて測定可能であり、複数の偏光状態を用いてサンプルを検査し、同じサンプル位置において、この情報を、平行な、又は連続的な1以上の波長について得ることができる。このような一般的に好ましい態様は、これに限定されないが、上述し、更にN.A. Nassif氏らの"In vivo human retinal imaging by ultrahigh−speed spectral domain optical coherence tomography," Opt. Lett. 29, 480 (2004)にも記載されている時間領域光コヒーレンストモグラフィ、そのNassif氏の刊行物として上記PCT特許出願に記載のスペクトル領域又はフーリエ領域OCT(Spectral Domain or Fourier Domain OCT)、及び、前記仮特許出願と、S.H. Yun氏らの"High−speed optical frequency−domain imaging," Opt. Exp. 11, 2953 (2003)に記載の光学周波数領域イメージング又は被掃引光源OCT(Optical Frequency Domain Imaging or Swept Source OCT)、等に公知の検出方法によって実現可能である。
【0028】
本発明の代表的な実施の形態の光学システムの偏光非解消の偏光特性は、その複素ジョーンズ行列Jにより表せる。この行列は、

により表される

に変換することができ、J=J=JP´R´なる形式に分解可能である。ここで、J及びJは、それぞれ、J.J. Gil氏らの"Obtainment of the polarizing and retardation parameters of a non−depolarizing optical system from the polar decomposition of its Mueller matrix", Optik 76, 67 (1987)に記述のリターダ及び偏光子に関するジョーンズ行列である。Jで表される複屈折は、2つの角γ及びδにより画定される軸に対する位相遅延の度合いηといった3つの変数によってパラメータで表せる。Jで表される複減衰(diattenuation)は、d=(P−P)/(P+P)と定義され、4つの変数によりパラメータで表せる。ここで、P及びPは、角Γ及びΔにより規定される軸に平行及び直角な減衰係数である。これら独立パラメータは全体的に共通な位相ejψを伴い、一般ジョーンズ行列Jの4つの複素要素から構成可能である。生体組織における複屈折及び複減衰がS.L. Jiaoらの"Two−dimensional depth−resolved Mueller Matrix of biological tissue measured with double−ビーム polarization−sensitive optical coherence tomography," Opt. Lett. 27, 101 (2002)に記述のように共通の軸(δ=Δ及びγ=Γ)を共用することを前提にすると、独立パラメータの数を2つ減らすことができる。
【0029】
入射及び反射偏光状態は、例えば、J.F. de Boer氏らの"Determination of the depth−resolved Stokes parameters of light backscattered from turbid media by use of polarization−sensitive light coherence tomography," Opt. Lett. 24, 300 (1999)に記載のように、直交する2つの振幅とこれらの相対位相とからなる3つの関係にまとめられる。したがって、入射状態及び反射状態の2つの固有の対により規定される6つの関係式を用いて上記ジョーンズ行列について厳密に解くことができる。故に、サンプルを2つの固有の入射状態を用いて検査することにより、目的とする偏光パラメータ全てを得ることができる。
【0030】
目的とする偏光パラメータを特定するための、1つの代表的な実施の形態の方法、システム及び装置は、次のようにして実現できる。単一のコンピュータ又は相互に接続した複数のコンピュータを用いて、サンプルに入射する偏光状態をポアンカレ球表示で直交する2つの状態の間で交互に入れ替え、深さスキャンを連続して行うことができる。複減衰が無視できるとした場合、Jinにより表される偏光変調器からサンプル表面までの光路及びJoutにより表されるサンプル表面から検出器までの光路は、楕円形リターダとしてモデル化できる。偏光変調器の後の電界を

と定義すると、サンプルの表面から反射された被検出光の電界は、

として得られる。サンプルの往復ジョーンズ行列をJとして定義すると、サンプル内から反射される被検出光を、

よって表すことができる。ここで、Δψ=ψ´−ψである。楕円形リターダのジョーンズ行列はユニタリであり、これにより、閉じた群を形成するので、合成ジョーンズ行列
≡Joutout−1=J[Piη/2 0;0 P−iη/2]J−1
を、J=eiβ[Cθi(φ−ψ) −Sθi(φ+ψ);Sθ−i(φ+ψ)θ−i(φ−ψ)]を用いて書き直し、一般のユニタリ変換を表すことができる。ここで、Cθ=cosθであり、Sθ=sinθである。
【0031】
2つの固有の入射状態による情報を組み合わせることによってJに対する代替の数式を得られる。
[H´ H´;V´ V´]=eiΔψ1[Hiα;Viα
ここでα=Δψ−Δψである。目的とする偏光パラメータは、2つの数式をJについて等価とすることによって得られる。
【数1】

【0032】
式1の数式を用いる手法は、従来の方法よりも目的とする偏光パラメータを抽出する上で有利である。
【0033】
第1に、目的とする偏光パラメータの全ては、同時判定が可能であるように相互に関連付けられる。これに対し、上述の従来のベクトルに基づくアプローチは、B.H. Park氏らの"In vivo burn depth determination by high−speed fiber−based polarization sensitive coherence tomography," J. Biomed. Opt. 6, 474 (2001)に記載された2つの入射偏光状態に対する位相遅延をそれぞれ別個に計算する前に、光学軸を完全に決定する必要がある。そこで、全位相遅延は、B.H. Park氏らの"Real−time multi−functional optical coherence tomography," Opt. Exp. 11, 782 (2003)に記載のように、2つの値の加重平均として得られる。
【0034】
第2に、数式1は正確に解くことができる。すなわち、この数式は、独立変数の数に対して過少の独立式又は過多の独立式が存在することによる不足判定又は過剰判定を導くものではない。従前のミューラ行列に基づく分析方法では、独立の偏光パラメータと比較して利用する数式の数が多い。
【0035】
第3に、本発明の代表的な実施の形態による定式化及び技術は、Jの移項対称性に関する要件がない。従前のジョーンズ行列に基づく分析は、ファイバ型PS−OCTによってサンプルの全偏光パラメータを得る場合、S. Jiaoらの"Optical−fiber−based Mueller optical coherence tomography," Opt. Lett. 28, 1206 (2003)に記載のように、サンプル表面から戻る光の往復ジョーンズ行列を移項対称性とする条件を課していた。
【0036】
この手順は、概して、ファイバを構成する光学部品は光が往復して横断するので、固有の円複屈折を相殺可能であるという前提で対処して、δ=Δ=0を保証し移項対称性を認めている。この従来技術の手順は、光ファイバの配置を制限し、光ファイバスプリッタではなく、干渉計にはバルク(bulk)ビームスプリッタを必要とする。本発明の代表的な実施の形態による定式化及び技術では、ジョーンズ行列全体の移項対称性は不用であるため、スプリッタやサーキュレータ等の非複減衰ファイバ光学部品が使用可能となり、当該システム全体におけるファイバの使用に関する制限が解除される。最後に、式1の定式化は、目的とする偏光パラメータ全てを特定するための測定を2つの固有の入射偏光状態のみを用いて行う。
【0037】
原則として、パラメータθ,φ及びαは、式1の右辺の行列積の非対角要素がゼロに等しいという条件で解くことができる。実際、測定ノイズによって入射偏光状態と透過偏光状態との間で非物理的な変化が誘発する可能性があるので、常に実数の解が見つかる訳ではない。これを考慮して、当該非対角要素の大きさの合計を最小化するようパラメータα,φ及びθを最適化できる。相対的光学軸は、ストークスパラメータが

で示されるとした場合、φ及びθから得ることができる。位相遅延の程度は、結果として得られる対角要素の位相差及びこれら要素の大きさによる複減衰から簡単に抽出できる。計算の誤差は、これら非対角要素の大きさの合計と対角要素の大きさの合計との比をとることによって推定できる。結果として得られるこれら複減衰、複屈折及び光学軸方向の値を微分して、目的とする偏光パラメータの局部的値が得られる。
【0038】
図2に、偏光シートの偏光感応性光コヒーレンストモグラフィ(「PS−OCT」;polarization sensitive optical coherence tomography)により得られる相対的光学軸方向の出力のグラフを示す。算出した方向は、本発明のシステム、装置及び方法を用いて得られる情報に基づくその真の方向の関数となっており、挿図は、ポアンカレ球上の同様の光学軸を示しうる。特に、かかるPS−OCTシステムによって得られる代表的な画像は、入射ビームの軸に直交し、この軸を中心に10°の増分で、360°完全に回転して網羅したIR偏光シートで得られたものである。0.992±0.002のスキャンから得られる単一透過複減衰の平均値は、当該シートの光学軸と直交する平行な直線偏光の光の透過によって測定される0.996±0.001の独立した測定値と概ね一致する。図2に示すこの光学軸の測定値は、偏光シートの設定方向200に対する光学軸の方向を示している。このグラフの挿図210は、当該光学軸が、ほぼ同一平面上にありポアンカレ球上の2周に及び、画像の幾何学的形態と一致することを示している。光学軸の面がQU面から離れて回転することも明らかである。
【0039】
上述したように、Jを、固有の2つの入射偏光状態を用いて実験的に決定し、同じ体積のサンプルを調べることができる。これら2つの状態の関係は重要である。2つの状態としてほぼ一致した入射偏光状態を用いた場合、数学的には機能するが、1つのデータのみではなく、2つのデータから情報を得ることによる利点が乏しくなる。ファイバの複屈折のために入射状態がサンプルの光学軸と一致する場合にも同様に重要な問題が生じる。この場合、入射状態と反射偏光状態は一致し、複屈折に関する情報を含まない。入射偏光状態が直交する場合も同様である。複減衰は直交する2つの入射偏光状態を用いれば常に特定できるが、複屈折はそうでないことが明らかになった。既に例示した、CE. Saxer氏らの"High−speed fiber−based polarization−sensitive optical coherence tomography of in vivo human skin," Opt. Lett. 25, 1355 (2000)、J.F. de Boer氏らの”Birefringence imaging in biological tissue using poralization−sensitive optical coherence tomography”(2001年3月27日付け米国特許第6,208,415号)、 B.H. Park氏らの"In vivo burn 深さ determination by high−speed fiber−based poralization−sensitive optical coherence tomography," J. Biomed. Opt. 6, 474 (2001)、M.C. Pierce氏らの"Simultaneous intensity, birefringence, and flow measurements with high speed fiber−based optical coherence tomography," Opt. Lett. 27, 1534 (2002)、及びB.H. Park氏らの"Real−time multi−functional optical coherence tomography," Opt. Exp. 11, 782 (2003)に記載のように、より良い選択は、ポアンカレ球表示において直交する2つの入射偏光状態を用いることである。これによって、抽出可能な偏光情報を提供することができ、さらに、サンプルの光学軸と平行であるならば特定の入射偏光状態についての複屈折の効果を最大化することができる。なお、これは、例えば、複屈折が所望のパラメータの1つであり、2つの入射偏光状態が複減衰の決定に対し特有のもので、ポアンカレ球表示において平行でない限りにおいては、本発明の代表的な実施の形態にとっては必須でないことに留意すべきである。
【0040】
例えば、図3に、単一透過位相遅延を深さの関数として表したグラフを示す。図3において、白い三角形及び四角形は、ポアンカレ球表示の回転に基づく既に確立された分析を用いてPS−OCT画像から得られた鶏の腱及び筋肉の位相遅延値をそれぞれ表す。特に、これら画像は、代表的な鶏の腱及び筋肉のサンプルについて得られたものである。図3に示すデータは、本提示の方法と以前に提示したベクトルに基づく方法により分析されたものである。従来のベクトルに基づく分析技術では、二重透過位相遅延は、0ないしπラジアンの間の値に限定されている。しかしながら、ジョーンズ行列に基づくアプローチにより計算された位相遅延は、2π範囲全てに及ぶことができる。これによって、図3に腱データ300の位相遅延のグラフで示されるように、2πラジアンを超える包括不能であった位相遅延値の特定が可能になる。本発明の代表的な実施例において、位相遅延のグラフの勾配は、例えば筋肉330では179.7°/mmであり、腱300については1184.4°/mmであり、予想されるパラメータの中によく収まっている。これらの値はすベクトルに基づく方法により計算された勾配、例えば筋肉320及び腱310につきそれぞれ211.9°/mm及び1212.5°/mmと近い。
【0041】
この分析は、Cense氏らが説明しているような細隙灯適応型PS−OCTシステムにより「生体内で」得られる網膜神経線維束(RNFL;retinal nerve fiber layer)の上位領域の画像に適用されている。深さにおける10のポイントを平均した後、本発明の方法の代表的な実施の形態によって決定される、RNFLに関する深さの関数350としての単一透過位相遅延と、ベクトルに基づく方法340を図3の挿図に示す。線形最小二乗法は、2つの方法を用いてRNFLの厚さ全体にわたって得られた単一透過位相遅延勾配の178.4°±1.3°/mm及び159.4°/mmに適用可能である。例えば、黒い三角形と四角形は、提示したジョーンズ行列に基づく分析を用いて同様のPS−OCT画像から得られた複減衰値を表す。挿図は、被験者の網膜神経線維束の上位領域から得られるデータのプロットと同じ種類のものとできる。線形最小二乗法の適合性は、全てのプロットから示される。
【0042】
本発明のもう1つの代表的な実施の形態について説明する。生体組織において、複屈折は、複減衰よりも光の偏光状態に非常に強い影響を及ぼす場合が多い。それ故、何れかの影響の少ない方が他方のものと解される可能性があるため、複減衰を検討枠から排除するのが望ましいと言える。換言すると、少量の複屈折が、複減衰に起因すると容易に解される可能性があり、又、反対の場合も起こりうるからである。複減衰が無視できることが明らかなケースでは、式1の定式化は、単に、P及びPは等しい(P=P)とみなすことによって変形できる。残りの偏光パラメータを決定する1つの方法は、複素電界の大きさを正規化し、パラメータα,φ及びθを、非対角要素の大きさの合計を最小化するだけでなく、対角要素の大きさの差を最小化してP=Pという条件を満たすように、最適化することによって開始する。そして、位相遅延の程度は、結果として得られる対角要素の位相差、非対角要素の大きさの合計と対角要素の大きさの差の或る手段によって推定される誤差により抽出可能となる。この場合、数式1を用いて、当該表面から反射した状態を、任意の深さから反射された状態、その他の深さから反射された状態とを比較できるだけではない。例えば、全ての深さをそれより或る短い距離だけ上回る、又は下回る深さと比較した場合、結果として得られる偏光パラメータは、当該比較の2つのポイントの間の組織の局部的特性を反映することもある。
【0043】
起こりうる他の条件として、複減衰のみの使用を優先するために複屈折を無視する場合がある。この場合、パラメータηはゼロに設定可能であり、ここでもパラメータα,φ及びθを適切な条件に適合するよう最適化できる。かかる条件の一つとして、非対角要素の大きさの差と同時に対角要素の虚数部を最小化することが挙げられる。或いは、光学軸の方位に条件を課すのが望ましい場合がある。一般的には、与えられる定式化は、当該状況に適した条件に従って式1の右辺を最適化し、その後に残りの要素から所望の偏光パラメータを抽出する簡単なアルゴリズムによって、偏光非解消偏光パラメータの何れか、及び全てを選択的に決定することができる。この最適化は、被検出光の複素電界(その大きさ、位相及びこれらの多項式、対数/指数、三角法の組み合わせを含むが、但し、これらに限定されない。)の一般関数を用いることができる。さらに、ポアンカレ球表示において直交する入射偏光状態を用いると、サンプル偏光効果の最適な検出が確実となる。
【0044】
この手法は、次のように一般化できる。ここで、サンプルのジョーンズ行列Jを、J≡Joutout−1=J´J−1となるようなものと考える。J´は、Jを形成するためにJoutに乗ずることができないJの該当部を表す。そこで目的とする偏光パラメータは、J´内に分離するのが良い。この場合、式1は、次の形に一般化される。
【数2】

【0045】
´の形を知ることにより、適切な関数を導き出し、パラメータα,Δψを決定し、上式の2辺を最も等価とするようにこれらのパラメータをJに用いることができる。この関数は、複素電界の大きさ及び位相の一次関数、多項式関数、対数関数、指数関数及び三角関数を含みうるが、これらに限定されない。これを実行すると、目的とする偏光パラメータをJ´から抽出できる。
【0046】
図4に、単一透過複減衰を本発明の代表的なシステム及び方法を用いて得られる深さの関数としてグラフに示す。複減衰に関する制御測定値として、単一の線形入射偏光状態を変化させて、一連のOCT画像を鶏の腱及び筋肉のサンプルの同じ箇所から得た。組織内からの反射偏光状態が深さの関数として最も小さく変化した各方向を、それらが当該サンプルの光学軸に平行又は直角に並ぶ入射状態となるように選択した。対応する強度分布は、減衰パラメータP及びPを示し、これにより深さごとに分解された制御複減衰プロットが得られた。
【0047】
こうして得られたPS−OCTの単一透過複減衰と、腱(それぞれ410及び400が付されている)及び筋肉(それぞれ430及び420が付されている)に対する制御測定値を図4に示す。数値計算シミュレーションにより、比較的小さな複減衰dのポアンカレ球上の状態の平均角変位は概ね(40d)°であることが示されている。例えば、複減衰値が0.20の場合、結果として生じうるポアンカレ球表示の平均角変位は8°となる。当該表面から反射した個々の偏光状態に対して約5°の標準偏差があった場合、鶏の筋肉の単位深さ当たりの当該制御及びPS−OCTで導かれる複減衰は、0.0662±0.0533/mmに対して0.0380±0.0036/mmであり、腱については、0.3915±0.0365/mmに対して0.5027±0.353/mmであり、相当に又は概ね一致する。
【0048】
これまで利用された同じRNFLにおける複減衰は、図4において挿図(440が付されている)における深さの関数として測定され表示されている。RNFLの厚さ全体における複減衰値の線形最小二乗法による処理(fitting)は、0.3543±0.1336/mmの単位深さ当たりの単一透過複減衰をもたらした。
【0049】
図4において、白い三角形及び四角形は、それぞれ、当該ファイバ方向に平行及び直角な線形入射偏光状態の反射率分布の比較により計算された鶏の腱及び筋肉の制御減衰値を表す。黒い三角形及び四角形は、同じ組織から得られるPS−OCT画像から導出した複減衰値である。挿図は、被験者の網膜神経線維束の上位領域から得られるPS−OCT画像から導出した単一透過複減衰のグラフである。線形最小二乗法による処理を全てのプロットに対して示すことができる。
【0050】
かかる一般化が有益となりうる場合の例は、回転ファイバプローブの特性化にある。この場合、当該表面及びサンプル内の或る深さからの反射偏光状態を比較するのではなく、異なる2つの回転角について当該プローブの端部からの反射偏光状態を比較できる。
【0051】
図5に、本発明の代表的な実施の形態の方法のフロー図を示す。ここで上述したように、当該代表的な方法は、2つのポイントの間の領域の偏光非解消の偏光特性を決定できる。これらポイントは、以下、基準ポイント(すなわち、干渉計の基準アームとは異なる)及び深さポイントと称するものとする。
【0052】
具体的には、全てのポイント(例えば、直交する2つの検出チャネルにおける位相感応性の測定により決定されるもの)を、少なくとも2つの特有の入射偏光状態について測定できる(ステップ500)。これら位相感応性の(例えば複素数の)偏光状態測定値は、任意のポイントpについて、H(p),V(p),H(p)及びV(p)として当該データセット内で定義できる。ステップ510において、関心領域を、データセット全体の中から画定し、深さポイントが全て設定されるようにできる。ステップ520において、その偏光状態を特定の基準ポイントと比較できる。ステップ530において、基準ポイントにおける偏光状態を、数量、例えばH,V,H及びVによって特定及び定義できる。ここでの添字1及び2は2つの特有の入射偏光状態を包括的に指し示すものである。例えば、単一セットの基準偏光状態を、画像全体に適用可能とできる。基準偏光状態は、画像形成するサンプルの表面又はその近傍で反射したものとできる。このような場合、単一の関心領域が存在し、基準の偏光状態は、画像全体の表面からの偏光状態を(ノイズ効果を減らすよう)平均化することによって決定できる。
【0053】
回転型内視鏡プローブを用いる場合、ファイバの複屈折は、当該内視鏡が回転するにつれ絶えず変化する可能性があり、これにより、例えば、深さ分布の様々な組に対し当該表面から反射した偏光状態の組も絶えず変化すると見込まれる。この場合、画像全体は、誤差をもたらしうる単一の関心領域として用いられる。関心領域は、少数の深さ分布の組によって定義することができ、ここでは、当該サンプル近傍から反射された偏光状態を平均化できる。この段階の結果から、画像内全体における関心領域を定義し、この関心領域に適用可能な基準偏光状態の組H,V,H及びVを決定できる。
【0054】
さらに、偏光状態は、関心領域内の全ての深さポイントについて基準偏光状態と比較される。例えば、特定の深さポイントにおける偏光状態は、ステップ540において決定でき、H´,V´,H´及びV´により定義できる。そして、これらの値(深さポイント及び基準偏光状態)を用いて数式1の非対角要素を最小化するために用いられる、例えばα,θ及びφなどのパラメータを、ステップ550において決定できる。ステップ560において、結果として得られる略対角行列は、複屈折及び複減衰の量を提供する。この代表的な方法は、ステップ570において関心領域の解析が完了したかどうかを判定することによって当該関心領域内の全てのポイントについて解析を繰り返すことができる。完了していないと判定されると、処理はステップ540に戻る。完了していると判定されると、処理はステップ580に進む。特に、ステップ580において全ての画像の解析が完了したかどうかを判定することによって画像全体における全ての関心領域が解析されるまで解析が続けられる。ここで完了していなければ、処理はステップ510に戻り、完了していれば、ステップ590においてその解析されたデータが表示される。
【0055】
本発明は、例えばサンプルからの反射した偏光状態が検出されるか、或いは、少なくとも2つの特有の入射偏光状態について検出又は測定される場合に用いることができる。本発明の代表的な実施の形態は、代表的な時間領域OCT、スペクトル領域OCT及びOFDI技術用の反射又は透過可能な基準遅延線を備えた構成から得られるデータに用いることができる。これら2つの特有の入射偏光状態からの情報は、上述の手法で必ず収集しなければならないというものではなく、光を、両方の入射状態で調べることができる所定の量検出するだけでもよい。本発明はサンプル内の2つのポイントの間の領域について、例えば、複素電界H及びVを、全位相に至るまで2つのポイントにおいて、2つの特有の入射偏光状態について測定できるのであれば、偏光非解消の偏光パラメータを決定するために有効であり、適用可能である。
【0056】
上述の説明は、本発明の原理を例証したものに過ぎない。当業者であれば、ここに開示した教示内容から、上記実施の形態に対して様々な修正及び変形が行えることは明らかである。例えば、ここで説明した本発明は、2003年10月27日に出願された米国仮特許出願第60/514,769号、2004年8月6日に出願された米国特許出願第60/599,809号及び2003年1月24日に出願された国際特許出願第PCT/US03/02349号に記述されている代表的な方法、システム及び装置と共に利用可能であり、これらの開示内容は、参照によりここでその全部が本明細書に援用される。したがって、当業者であれば、ここで明確に図示又は説明されていなくとも、本発明の原理を具現化し、もって本発明の主旨及び範囲を逸脱せずに、多数のシステム、装置及び方法を考案できることは明らかである。また、上記全ての刊行物、特許及び特許出願は、参照により本明細書にその全部が組み入れられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の代表的なシステム、ソフトウェア構成とともに使用する、又は使用可能な、代表的な実施の形態のファイバ型偏光感光性時間領域OCTシステムを示す概略図である。
【図2】偏光感光性光コヒーレンストモグラフィ(“PS−OCT”)に起因する偏光シートの相対光学軸の方向の出力を、その真の方向の関数として示す図であり、挿図は、ポアンカレ球上の同様の光学軸を示しうるものである。
【図3】本発明の代表的なシステム、ソフトウェア構成及び方法を用いて得られた単一透過位相遅延を深さの関数として表したグラフである。
【図4】本発明の代表的なシステム、ソフトウェア構成及び方法を用いて得られた単一透過複減衰を深さの関数として表したグラフである。
【図5】本発明の代表的な実施の形態の方法を説明するフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コヒーレンストモグラフィ(“OCT”)システムにおいてサンプルから受信される干渉計測信号の偏光効果を補償する装置であって、
所定の処理を実施する際に、
a)前記サンプル及び基準部に関連した干渉計測情報を受け取り、
b)前記干渉計測情報を処理して、前記光コヒーレンストモグラフィシステムの検出部によって前記干渉計測信号に対して生じる偏光効果を軽減し、前記サンプルの複減衰の量を決定するように構成された処理部を備え、前記干渉計測情報が、偏光分離部と光学的に連結して当該偏光分離部から上流に設けられる少なくとも1つの光ファイバに沿って少なくとも一部が提供される、装置。
【請求項2】
前記処理部が、前記所定の処理を実施する場合、前記サンプルの少なくとも1つの偏光特性を決定するようにも構成された、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの偏光特性が、偏光解消特性を含む、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの偏光特性が、複屈折特性を含む、請求項2記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの偏光特性が、前記少なくとも1つの偏光特性の光学軸を含む、請求項2記載の装置。
【請求項6】
前記干渉計測情報が、前記サンプルに入射する少なくとも2つの偏光状態と関連する更なる情報を含む、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記干渉計測情報が、
g.前記サンプル内又は前記サンプル近傍の少なくとも1つの第1の箇所における当該偏光状態のうちの一方である第1の状態を決定し、
h.前記サンプル内又は前記サンプル近傍の少なくとも1つの前記第1の箇所又は前記第1の箇所近傍の少なくとも1つにおける前記偏光状態のうちの他方である第2の状態を決定し、
i.前記サンプル内又は前記サンプル近傍の少なくとも1つの第2の箇所における前記偏光状態のうちの一方である第3の状態を決定し、
j.前記サンプル内又は前記サンプル近傍の少なくとも1つの前記第2の箇所又は前記第2の箇所近傍の少なくとも1つにおける前記偏光状態のうちの他方である第4の状態を決定し、
k.前記第1の状態及び前記第2の状態を前記第3の状態及び前記第4の状態にそれぞれ変換するように2×2複素行列を生成し、
l.前記行列を更なる行列の積に分解するように処理され、
前記更なる行列のうちの第1及び第2のものは、ユニタリであって、相互に逆行列の関係であり、前記更なる行列の第3のものの非対角要素を最小化するように選択される、請求項2記載の装置。
【請求項8】
前記第1の箇所及び前記第2の箇所に対し同一又は異なる箇所の少なくとも1つの箇所において得られる前記第1から前記第4の状態迄の少なくとも2つが平均化される、請求項7記載の装置。
【請求項9】
光コヒーレンストモグラフィ(“OCT”)システムにおいてサンプルから受信される干渉計測信号の偏光効果を補償する方法であって、当該方法は、
前記サンプル及び基準部に関連した干渉計測情報を受け取るステップと、
前記干渉計測情報を処理して前記光コヒーレンストモグラフィシステムの検出部によって前記干渉計測信号に対して生じる偏光効果を軽減するステップと、
前記サンプルの複減衰の量を決定するステップとを含み、
前記干渉計測情報が、偏光分離部と光学的に連結して当該偏光分離部から上流に設けられる少なくとも1つの光ファイバに沿って少なくとも一部が提供される、方法。
【請求項10】
前記干渉計測情報が、前記サンプルに入射する少なくとも2つの偏光状態に関する情報を更に含む、方法。
【請求項11】
周波数が時間とともに変化する少なくとも1つの第1の電磁放射線を照射するよう構成された少なくとも1つの第1の構成部と、
少なくとも1つの第2の電磁放射線を生成するように少なくとも1つの第1の電磁放射線の偏光状態を制御するよう構成された、少なくとも1つの偏光変調を行う第2の構成部と、
前記少なくとも1つの第2の電磁放射線を受け、少なくとも1つの第3の電磁放射線をサンプルに、少なくとも1つの第4の電磁放射線を基準部に照射するように構成された、少なくとも1つの第3の構成部とを備え、
前記第3の電磁放射線及び前記第4の電磁放射線が前記少なくとも1つの第2の電磁放射線に関連付けられる、装置。
【請求項12】
少なくとも1つの第5の電磁放射線が前記サンプルから与えられ、少なくとも1つの第6の電磁放射線が、前記基準部から与えられ、前記第5の電磁放射線及び前記第6の電磁放射線が、前記第3の電磁放射線及び前記第4の電磁放射線にそれぞれ関連付けられ、
前記装置が更に、前記第5の電磁放射線及び前記第6の電磁放射線に関連づけられた少なくとも1つの第7の電磁放射線を受け、前記少なくとも1つの第7の電磁放射線に基づいて第1の偏光状態を有する少なくとも1つの第8の電磁放射線と第2の偏光状態を有する少なくとも1つの第9の電磁放射線とを生成するよう構成された少なくとも1つの第4の構成部を備え、
前記第1の偏光状態と前記第2の偏光状態が相互に異なる、請求項11記載の装置。
【請求項13】
i.前記第8の電磁放射線及び前記第9の電磁放射線を少なくとも受信又は検出し、前記第8電磁放射線及び前記第9の電磁放射線のうちの少なくとも一方の、少なくとも振幅又は位相を決定し、
ii.第8及び第9の電磁放射線を少なくとも受信又は検出し、前記第1、第2、第4及び第6の電磁放射線のうちの少なくとも1つに関連した少なくとも1つの第10の放射線を受信又は検出し、これによって前記少なくとも1つの第1の電磁放射線又は前記少なくとも1つの第2の電磁放射線の少なくとも1つの変動に関連したノイズを低減し、
前記少なくとも1つの第8の電磁放射線又は前記少なくとも1つの第9の電磁放射線の少なくとも1つの振幅又は位相の少なくとも1つを決定するように構成された少なくとも1つの第5の構成部を更に備えた、請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第5の電磁放射線に関連した偏光状態が、前記第8及び第9の電磁放射線の少なくとも一方の振幅又は位相の少なくとも1つの関数として前記少なくとも1つの第2の電磁放射線に基づいて、前記サンプル内又は前記サンプル近傍の少なくとも一方における異なる深さで測定される、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記第1の電磁放射線から前記第9の電磁放射線迄の少なくとも1つが、少なくとも1つの光ファイバを介して伝搬される、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの第3の電磁放射線を受信し前記少なくとも1つの第5の電磁放射線を生成するよう構成される、少なくとも1つの眼部画像を形成する第6の構成部を更に備えた、請求項11記載の装置。
【請求項17】
所定の処理を実施する際に、
a)前記第8及び第9の電磁放射線のうちの少なくとも一方の振幅又は位相の少なくとも1つに関連したデータを受け取り、
b)前記少なくとも1つの第7の電磁放射線に対する当該装置の少なくとも一部により生じる偏光効果を低減し、前記サンプルの偏光特性を測定するよう前記データを処理するように構成された処理部を更に備えた、請求項14記載の装置。
【請求項18】
前記偏光特性が、複屈折、複減衰、偏光解消、前記複屈折の光学軸、及び前記複減衰の光学軸の少なくとも1つを含む、請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記データが、
i.前記サンプル内又は前記サンプル近傍の少なくとも1つの第1の箇所における前記偏光状態のうちの一方の第1の状態を測定し、
ii.前記サンプル内又は前記サンプル近傍の少なくとも1つの前記第1の箇所又はその近傍の少なくとも1つにおける前記偏光状態の他方の第2の状態を測定し、
iii.前記サンプル内又は前記サンプル近傍の少なくとも1つの第2の箇所における前記偏光状態の一方の第3の状態を測定し、
iv.前記サンプル内又は前記サンプル近傍の少なくとも1つの前記第2の箇所又は前記第2の箇所近傍の少なくとも1つにおける前記偏光状態の他方の第4の状態を測定し、
v.前記第1及び第2の状態を前記第3及び第4の状態にそれぞれ変換する2×2複素行列を生成し、
vi.前記行列を更なる行列の積に分解するように処理され、
前記更なる行列のうちの第1及び第2のものは、ユニタリであって、相互に逆行列の関係であり、前記更なる行列の第3のものの非対角要素を最小化するように選択される、請求項14記載の装置。
【請求項20】
前記第1の箇所及び前記第2の箇所に対し同一又は異なる箇所の少なくとも1つの箇所において得られる前記第1から前記第4の状態迄の少なくとも2つが平均化される、請求項19記載の装置。
【請求項21】
周波数が時間とともに変化する少なくとも1つの第1の電磁放射線を少なくとも1つの第1の構成部によって照射するステップと、
少なくとも1つの第1の電磁放射線の偏光状態を、少なくとも1つの偏光変調構成部を用いて制御して、少なくとも1つの第2の電磁放射線を生成するステップと、
前記少なくとも1つの第2の電磁放射線を受け、少なくとも1つの第3の電磁放射線をサンプルに、少なくとも1つの第4の電磁放射線を基準部に照射するステップとを含み、
前記第3の電磁放射線及び前記第4の電磁放射線が前記少なくとも1つの第2の電磁放射線に関連付けられる、サンプルに電磁放射線を照射する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−519264(P2008−519264A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539277(P2007−539277)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/039374
【国際公開番号】WO2006/050320
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】