説明

偏光板一体型光学補償フイルム及び液晶表示装置

【課題】 簡易な構成で、表示品位のみならず、視野角特性が著しく改善されたIPS(In−Plane Switching)型液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 第1偏光膜と、第1位相差領域と、第2位相差領域と、液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと、第2偏光膜とを含み、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって、面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz、及びフイルムの厚さdを用いてRe=(nx−ny)×dで定義される第1位相差領域のReが60nm〜200nmで、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下で、第2位相差領域の面内の屈折率nxとnyが実質的に等しく、且つ前記第1偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行である液晶表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に水平方向に配向した液晶分子に横方向の電界を印加することにより表示を行う、インプレーンスイッチングモードの液晶表示装置に関する。また、本発明は、液晶表示装置、特にインプレーンスイッチングモードの液晶表示装置の光学補償に寄与する偏光板一体型光学補償フイルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置としては、二枚の直交した偏光板の間に、ネマチック液晶をツイスト配列させた液晶層を挟み、電界を基板に対して垂直な方向にかける方式、いわゆるTNモードが広く用いられている。この方式では、黒表示時に液晶が基板に対して立ち上がるために、斜めから見ると液晶分子による複屈折が発生し、光漏れが起こる。この問題に対して、液晶性分子がハイブリッド配向したフイルムを用いることで、液晶セルを光学的に補償し、この光漏れを防止する方式が実用化されている。しかし、液晶性分子を用いても液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは非常に難しく、画面下方向での諧調反転が抑えきれないという問題を生じていた。
【0003】
かかる問題を解決するため、横電界を液晶に対して印加する、いわゆるインプレーンスイッチング(IPS)モードによる液晶表示装置や、誘電率異方性が負の液晶を垂直配向してパネル内に形成した突起やスリット電極によって配向分割した垂直配向(VA)モードが提案され、実用化されている。近年、これらのパネルはモニター用途に留まらず、TV用途として開発が進められており、それに伴って画面の輝度が大きく向上してきている。このため、これらの動作モードで従来問題とされていなっかった、黒表示時の対角位斜め入射方向での僅かな光漏れが表示品質の低下の原因として顕在化してきた。
【0004】
この色調や黒表示の視野角を改善する手段の一つとして、液晶層と偏光板の間に複屈折特性を有する光学補償材料を配置することがIPSモードにおいても検討されている。例えば、傾斜時の液晶層のレターデーションの増減を補償する作用を有する光軸を互いに直交した複屈折媒体を基板と偏光板との間に配置することで、白表示又は中間調表示を斜め方向から直視した場合の色付きが改善できることが開示されている(特許文献1参照)。また、負の固有複屈折を有するスチレン系ポリマーやディスコチック液晶性化合物からなる光学補償フイルムを使用した方法(特許文献2、3、4参照)や、光学補償フイルムとして複屈折が正で光学軸がフイルムの面内にある膜と複屈折が正で光学軸がフイルムの法線方向にある膜とを組み合わせる方法(特許文献5参照)、レターデーションが二分の一波長の二軸性の光学補償シートを使用する方法(特許文献6参照)、偏光板の保護膜として負のレターデーションを有する膜を使い、この表面に正のレターデーションを有する光学補償層を設ける方式(特許文献7参照)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−80424号公報
【特許文献2】特開平10−54982号公報
【特許文献3】特開平11−202323号公報
【特許文献4】特開平9−292522号公報
【特許文献5】特開平11−133408号公報
【特許文献6】特開平11−305217号公報
【特許文献7】特開平10−307291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、提案された方式の多くは、液晶セル中の液晶の複屈折の異方性を打ち消して視野角を改善する方式であるために、直交偏光板を斜めから見た場合の偏光軸交差角度の直交からのズレに基づく光漏れを十分に解決できないという問題がある。また、この光漏れを補償できるとされる方式でも、液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは非常に難しい。さらに、延伸複屈折ポリマーフイルムで光学補償を行うIPSモード液晶セル用光学補償シートでは、複数のフイルムを用いる必要があり、その結果、光学補償シートの厚さが増し、表示装置の薄形化に不利である。また、延伸フイルムの積層には粘着層を用いるため、温湿度変化により粘着層が収縮してフイルム間の剥離や反りといった不良が発生することがあった。
【0007】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、簡易な構成で、表示品位のみならず、視野角特性が改善されたIPS型液晶表示装置を提供することを課題とする。また、本発明は、液晶表示装置、特にIPS型液晶表示装置の視野角特性の改善に寄与する偏光板一体型光学補償フイルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
[1] 長手方向に平行な吸収軸を有する長尺状の偏光膜、セルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムからなり、面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz及び厚さdを用いて、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで定義されるRthが−200nm〜−50nmで、Re=(nx−ny)×dで定義されるReが50nm以下であり、面内の屈折率nxとnyが実質的に等しく、且つ光学軸がフイルム面内に含まれない長尺状の第2位相差膜、及び前記偏光膜と前記第2位相差膜との間に、長手方向に実質的に直交する遅相軸を有する長尺状の第1位相差膜を有する長尺状の偏光板一体型光学補償フイルム。
[2] 長手方向に平行な吸収軸を有する長尺状の偏光膜、セルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムからなり、面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz及び厚さdを用いて、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで定義されるRthが−200nm〜−50nmで、Re=(nx−ny)×dで定義されるReが50nm以下であり、面内の屈折率nxとnyが実質的に等しく、且つ光学軸がフイルム面内に含まれない長尺状の第2位相差膜、及び長手方向に実質的に平行な遅相軸を有する長尺状の第1位相差膜を、前記偏光膜、前記第2位相差膜及び第1位相差膜の順で配置した偏光板一体型光学補償フイルム。
[3] 第1位相差膜のReが60nm〜200nmであり、第1位相差膜のNz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNz値が0.8を超え1.5以下である[1]又は[2]の偏光板一体型光学補償フイルム。
【0009】
[4] 少なくとも、第1偏光膜と、第1位相差領域と、第2位相差領域と、液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと、第2偏光膜とを含み、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって、面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz、及びフイルムの厚さdを用いてRe=(nx−ny)×dで定義される第1位相差領域のReが60nm〜200nmで、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下で、第2位相差領域の面内の屈折率nxとnyが実質的に等しく、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで定義される第2位相差領域のRthが−200nm〜−50nmであり、前記第2位相差領域がセルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムであり、且つ前記第1偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行である液晶表示装置。
[5] 第1偏光膜、第1位相差領域、第2位相差領域及び液晶セルが、この順序で配置され、且つ第1位相差領域の遅相軸が、第1偏光膜の透過軸に平行である[4]の液晶表示装置。
[6] 第1偏光膜、第2位相差領域、第1位相差領域及び液晶セルがこの順序で配置され、且つ第1位相差領域の遅相軸が、第1偏光膜の透過軸に直交である[4]の液晶表示装置。
[7] 第1偏光膜及び第2偏光膜の少なくとも一方を挟んで配置された一対の保護膜を有し、該一対の保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜の厚み方向の位相差Rthが40nm〜−40nmである[4]〜[6]のいずれかの液晶表示装置。
[8] 第1偏光膜及び第2偏光膜の少なくとも一方を挟んで配置された一対の保護膜を有し、該一対の保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜の厚み方向の位相差Rthが20nm〜−20nmである[4]〜[6]のいずれかの液晶表示装置。
[9] 第1偏光膜及び第2偏光膜の少なくとも一方を挟んで配置された一対の保護膜を有し、該一対の保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜の厚みが60μm以下である[4]〜[8]のいずれかの液晶表示装置。
[10] 前記第1偏光膜及び/又は第2偏光膜を挟んで配置された一対の保護膜を有し、該一対の保護膜のうち液晶層に近い側の保護膜がセルロースアシレートフイルム又はノルボルネン系フイルムである[4]〜[9]のいずれかの液晶表示装置。
[11] 前記第1位相差領域及び/又は前記第2位相差領域が前記第1偏光膜に隣接してなる[4]〜[10]のいずれかの液晶表示装置。
[12] 液晶セルの一対の基板のうち視認側と反対側の基板により近い位置に、前記第1位相差領域及び前記第2位相差領域が配置されている[4]〜[11]のいずれかの液晶表示装置。
[13] 前記セルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するセルロースアシレートフイルムである[1]〜[3]のいずれかの長尺状の偏光板一体型光学補償フイルム、又は[4]〜[12]のいずれかの液晶表示装置。
(I) 2.82≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(III) 1.3≦SP≦2.9
(式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、SPはプロピオニル基の置換度である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明では、少なくとも、第1偏光膜と、第1位相領域と、第2位相領域と、液晶層を一対の基板で挟んだ液晶セルと、第2偏光膜とを含み、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置において、面内レターデーションReが60nm〜200nmで、Nz値が0.8を超え1.5以下の第1位相差領域と、面内の屈折率nxとnyが実質的に等しく、厚さ方向のレターデーションRthが−200nm〜−50nmであり、セルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムからなる第2位相差領域を用い、且つ第1偏光膜の透過軸が黒表示時の液晶分子の遅相軸方向と平行にすることによって、正面方向の特性を何ら変更させることなく、斜めの方位角方向から見た場合に2枚の偏光板の吸収軸が90度からずれることから生ずるコントラストの低下、特に45度の斜め方向からのコントラストの低下を改善させている。さらに偏光膜の保護膜のRthを40nm以下とすることによって更なるコントラスト向上を実現することができる。本発明では、セルロースアセテートプロピオネート又はセルロースプロピオネートを含むフイルムを第2位相差領域に用いる。当該フイルムは、セルロースアセテートプロピオネート又はセルロースプロピオネートの水酸基へのアシル置換度の調整や、作製条件の調整により、第2位相差領域に要求される光学特性を一層のみで満たすことができる。従って、当該フイルムを用いることにより、簡易な構成で視野角特性の改善された液晶表示装置を作製することができる。また、当該フイルムは、偏光膜の保護膜として要求される性能を有するので、偏光膜の表面に形成することで、保護膜として機能させることができ、より簡易な構成で、視野角特性の改善された液晶表示装置を作製することができる。
【発明の実施の形態】
【0011】
以下において、本発明の液晶表示装置の一実施形態及びその構成部材について順次説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5゜未満であることが好ましく、±2゜未満であることがより好ましい。また、「実質的に垂直」とは、厳密な垂直の角度よりも±20゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±15゜未満であることが好ましく、±10゜未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。さらに屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
【0013】
本明細書において「偏光板」とは、特に断らない限り、長尺の偏光板及び液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された(本明細書において、「裁断」には「打ち抜き」及び「切り出し」等も含むものとする)偏光板の両者を含む意味で用いられる。また、本明細書では、「偏光膜」及び「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体を意味するものとする。
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の液晶表示装置の画素領域例を示す模式図である。図2及び図3は、本発明の液晶表示装置の一実施形態の模式図である。
[液晶表示装置]
図2に示す液晶表示装置は、偏光膜8、20と、第1位相差領域10と、第2位相差領域12と、一対の基板13、17及びこれに挟持される液晶層15からなる液晶セルとを有する。偏光膜8及20は、それぞれ保護膜7aと7b及び19aと19bによって挟持されている。
【0015】
図2の液晶表示装置では、液晶セルは、基板13及び17と、これらに挟持される液晶層15からなる。液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・dは透過モードにおいて、ねじれ構造を持たないIPS型では0.2〜0.4μmの範囲が最適値となる。この範囲では白表示輝度が高く、黒表示輝度が小さいことから、明るくコントラストの高い表示装置が得られる。基板13及び17の液晶層15に接触する表面には、配向膜(不図示)が形成されていて、液晶分子を基板の表面に対して略平行に配向させるとともに配向膜上に施されたラビング処理方向14及び18等により、電圧無印加状態もしくは低印加状態における液晶分子配向方向が制御され、遅相軸16の方向が決定されている。また、基板13もしくは17の内面には、液晶分子に電圧印加可能な電極(図2中不図示)が形成されている。
【0016】
図1に、液晶層15の1画素領域中の液晶分子の配向を模式的に示す。図1は、液晶層15の1画素に相当する程度の極めて小さい面積の領域中の液晶分子の配向を、基板13及び17の内面に形成された配向膜のラビング方向4、及び基板13及び17の内面に形成された液晶分子に電圧印加可能な電極2及び3とともに示した模式図である。電界効果型液晶として正の誘電異方性を有するネマティック液晶を用いてアクティブ駆動を行った場合の、電圧無印加状態若しくは低印加状態での液晶分子配向方向は5a及び5bであり、この時に黒表示が得られる。電極2及び3間に印加されると、電圧に応じて液晶分子は6a及び6b方向へとその配向方向を変える。通常、この状態で明表示を行なう。
また、本発明に用いられる液晶セルはIPSモードに限定されることなく、黒表示時に液晶分子が前記一対の基板の表面に対して実質的に平行に配向する液晶表示装置であれば、いずれも好適に用いることができる。この例としては強誘電性液晶表示装置、反強誘電性液晶表示装置、ECB型液晶表示装置がある。
【0017】
再び図2において、偏光膜8の透過軸9と、偏光膜20の透過軸21は直交して配置されている。また、第1位相差領域10は、その遅相軸11が偏光膜8の透過軸9と平行(即ち第1偏光膜8の吸収軸(不図示)に直交)に配置される。さらに、偏光膜8の透過軸9と、黒表示時の液晶層15中の液晶分子の遅相軸16とは平行であり、即ち、第1位相差領域10の遅相軸11と液晶黒表示時の液晶層15の遅相軸16とは平行である。
図2に示す液晶表示装置では、偏光膜8が二枚の保護膜7a及び7bに挟持された構成を示しているが、保護膜7bはなくてもよい。但し、保護膜7bを配置しない場合は、第1位相差領域10は後述する特定の光学特性を有するとともに、偏光膜8を保護する機能も兼ね備えている必要がある。保護膜7bを配置する場合は、該保護膜の厚み方向の位相差Rthは、−50nm〜40nmであることが好ましく−20nm〜20nmであることがさらに好ましい。また、偏光膜20も二枚の保護膜19a及び19bに挟持されているが、液晶層15に近い側の保護膜19aはなくてもよい。保護膜19aを配置する場合は、該保護膜の厚み方向の位相差Rthは、−50nm〜40nmであることが好ましく−20nm〜20nmであることがさらに好ましい。また、保護膜7b及び保護膜19aは、その厚みが薄いのが好ましく、具体的には60nm以下であるのが好ましい。
【0018】
図2の態様では、第1位相差領域及び第2位相差領域は、液晶セルの位置を基準にして、液晶セルと視認側の偏光膜との間に配置されていてもよいし、液晶セルと背面側の偏光膜との間に配置されていてもよいが、液晶セルと背面側の偏光膜との間に配置される方が歩留まりの点で好ましい。いずれの態様においても、図2の構成では第2位相差領域が液晶セルにより近くなるように配置する。
【0019】
本発明の他の実施形態を図3に示す。図3中、図2と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図3に示す液晶表示装置では、第1位相差領域10と第2位相差領域12との位置が入れ替わり、第1位相差領域10が、第2位相差領域12と比較して偏光膜8からより遠い位置、即ち、より液晶セルに近い位置に配置される。また、図3に示す態様では、第1位相差領域10は、その遅相軸11が、偏光膜8の透過軸9と直交(即ち第1偏光膜8の吸収軸(不図示)に平行)に配置される。さらに、偏光膜8の透過軸9と、黒表示時の液晶層15中の液晶分子の遅相軸16とは平行であり、即ち、第1位相差領域10の遅相軸11と液晶黒表示時の液晶層15の遅相軸16とは直交である。
図3の液晶表示装置においても、上記と同様、保護膜7bまたは保護膜19aはなくてもよい。但し、保護膜7bがない場合は、第2位相差領域12が、後述する特定の光学特性を有するとともに、偏光膜8を保護する機能も兼ね備えている必要がある。保護膜7bを配置する場合は、該保護膜の厚み方向の位相差Rthは、−50nm〜40nmであることが好ましく−20nm〜20nmであることがさらに好ましい。また、偏光膜20も二枚の保護膜19a及び19bに挟持されているが、液晶層15に近い側の保護膜19aはなくてもよい。保護膜19aを配置する場合は、該保護膜の厚み方向の位相差Rthは、−50nm〜40nmであることが好ましく−20nm〜20nmであることがさらに好ましい。また、保護膜7b及び保護膜19aは、その厚みが薄いのが好ましく、具体的には60nm以下であるのが好ましい。
【0020】
なお、図3の態様では、第1位相差領域及び第2位相差領域は、液晶セルの位置を基準にして、液晶セルと視認側の偏光膜との間に配置されていてもよいし、液晶セルと背面側の偏光膜との間に配置されていてもよいが、液晶セルと背面側の偏光膜との間に配置される方が歩留まりの点で好ましい。いずれの態様においても、図3の構成では第1位相差領域が液晶セルにより近くなるように配置する。
【0021】
図2及び図3の態様において、第1位相差領域10は、面内レターデーションReが60nm〜200nmで、Nz値が0.8を超え1.5以下である。一方、第2位相差領域12は、面内の屈折率nxとnyが実質的に等しく、厚み方向のレターデーションRthが−200nm〜−50nmであり、且つセルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムからなる。セルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムは、セルロースの水酸基へのアシル置換度を調整することにより、又は作製条件を調整することにより、第2位相差領域として要求される前記光学特性を一層のみで示すことができる。また、かかるフイルムは、偏光膜の保護膜として要求される性能を満足し得るので、図2の態様では、保護膜7bがなくても、偏光膜8と、第1位相差領域10と、第2位相差領域12とを一体的に作製することで、高温湿度下等、過酷な環境下に置かれた場合にも、偏光膜8が劣化して、表示特性が低下するのを軽減することができる。また、図3の態様では、偏光膜8と第2位相差領域12とを一体的に作製することで、保護膜7bがなくても、高温湿度下等、過酷な環境下に置かれた場合にも、偏光膜8が劣化して、表示特性が低下するのを軽減することができる。
【0022】
本発明の液晶表示装置は、図1〜図3に示す構成に限定されず、他の部材を含んでいてもよい。例えば、液晶層と偏光膜との間にカラーフィルターを配置してもよい。また、偏光膜の保護膜の表面に反射防止処理やハードコートを施しても良い。また、構成部材に導電性を付与したものを使用してもよい。また、透過型として使用する場合は、冷陰極あるいは熱陰極蛍光管、あるいは発光ダイオード、フィールドエミッション素子、エレクトロルミネッセント素子を光源とするバックライトを背面に配置することができる。この場合、バックライトの配置は図2及び図3の上側であっても下側であっても良いが、不良品率がやや高い反射防止や帯電防止処理をした偏光板と組み合わせる必要性が低いため、図でバックライトを下にしたほうがより好ましい。また、液晶層とバックライトとの間に、反射型偏光板や拡散板、プリズムシートや導光板を配置することもできる。また、上記した様に、本発明の液晶表示装置は、反射型であってもよく、かかる場合は、偏光板は観察側に1枚配置したのみでよく、液晶セル背面あるいは液晶セルの下側基板の内面に反射膜を配置する。もちろん前記光源を用いたフロントライトを液晶セル観察側に設けることも可能である。
【0023】
本発明の液晶表示装置には、画像直視型、画像投影型や光変調型が含まれる。本発明は、TFTやMIMのような3端子又は2端子半導体素子を用いたアクティブマトリックス液晶表示装置に適用した態様が特に有効である。勿論、時分割駆動と呼ばれるパッシブマトリックス液晶表示装置に適用した態様も有効である。
【0024】
以下、本発明の液晶表示装置に使用可能な種々の部材の好ましい光学特性や部材に用いられる材料、その製造方法等について、詳細に説明する。
【0025】
[第1位相差領域]
本発明では、第1位相差領域は、面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz、及びフイルムの厚さdを用いてRe=(nx−ny)×dで定義されるレターデーションReが60nm〜200nmである。斜め方向の光漏れを効果的に低減するためには、第1位相差領域のReは、70nm〜180nmであるのがより好ましく、90nm〜160nmであるのがさらに好ましい。また、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNzが0.8を超え1.5以下が斜め方向の光漏れを効果的に低減するために好ましい。第1位相差領域のNzは、0.9〜1.3であるのが好ましく、0.95〜1.2であるのがより好ましい。0.8以下ではコントラストを向上させるために必要なReが大きくなりすぎ、偏光板との貼合角度許容範囲が狭くなり歩留まりが下がり好ましくない。また1.5を超えるとコントラストを向上させるために必要な第2位相差領域のRthが大きくなり好ましくない。
【0026】
前記第1位相差領域は、光軸が層平面に対して実質的に平行であるのが好ましい。前記第1位相差領域は、前記光学特性を有する限り、その材料及び形態については、基本的に特に制限されない。例えば、複屈折ポリマーフイルムからなる位相差膜、透明支持体上に高分子化合物を塗布後に加熱した膜、及び透明支持体上に低分子あるいは高分子液晶性化合物を塗布もしくは転写することによって形成された光学異方性層を有する位相差膜など、いずれも使用することができる。また、それぞれを積層して使用することもできる。
【0027】
複屈折ポリマーフイルムとしては、複屈折特性の制御性や透明性、耐熱性に優れるもの、光弾性が小さいものが好ましい。この場合、用いる高分子材料としては均一な一軸配向もしくは二軸配向が達成できる高分子であれば特に制限はないが、従来公知のもので溶液流延法や押出し成形方式で製膜できるもの好ましく、ポリカーボネート系高分子、ポリアリレート系高分子、ポリエステル系高分子、ポリサルフォン等の芳香族系高分子、ポリプロピレン等のポリオレフィン、セルロースアシレート、または、それらポリマーの2種又は3種以上を混合したポリマーなどがあげられる。
なお、本発明の液晶表示装置には、第1位相差領域が、脂環式構造含有重合体樹脂フイルムを延伸して得られた位相差層を含まない態様が含まれる。
【0028】
フイルムの二軸配向は、押出し成形方式や流延製膜方式等の適宜な方式で製造した当該フイルムを、例えばロールによる縦延伸方式、テンターによる横延伸方式や二軸延伸方式などにより、延伸処理することにより行うことができる。また、面方向に一軸または二軸に延伸し、厚さ方向にも延伸する方法等により厚さ方向の屈折率を制御することにより得られる。また高分子ポリマーフイルムに熱収縮フイルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフイルムを延伸処理又は/及び収縮処理して配向させる方法等により得られる(例 特開平5−157911号公報、特開平11−125716号公報、特開2001−13324号公報)。前記のロールによる縦延伸方式では加熱ロールを用いる方法や雰囲気を加熱する方法、それらを併用する方法等の適宜な加熱方法を採ることができる。またテンターによる二軸延伸方式では全テンター方式による同時二軸延伸方法や、ロール・テンター法による逐次二軸延伸方法などの適宜な方法を採ることができる。
また、配向ムラや位相差ムラの少ないものが好ましい。その厚さは、位相差等により適宜に決定しうるが、一般には薄型化の点より1〜300μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましく、20〜150μmであるのがさらに好ましい。
【0029】
前記第1位相差領域は、実質的に水平(ホモジニアス)配向した液晶性分子を固定化させてなる層(以下、「光学異方性層」という場合がある)であってもよい。液晶性分子の実質的な水平(ホモジニアス)配向とは、液晶性分子のダイレクター方向と層平面との平均角度が0〜20°の範囲内であることを意味する。液晶性分子は配向状態で固定化されているのが好ましく、重合により固定化されているのがより好ましい。上記光学的特性を満たす限り、液晶性化合物の種類については特に制限されない。例えば、低分子液晶性化合物を液晶状態においてネマティック配向に形成後、光架橋や熱架橋によって固定化して得られる光学異方性層や、高分子液晶性化合物を液晶状態においてネマティック配向に形成後、冷却することによって当該配向を固定化して得られる光学異方性層を用いることができる。なお本発明では、光学異方性層に液晶性化合物が用いられる場合であっても、光学異方性層は、該化合物が重合等によって固定されて形成された層であり、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。
【0030】
前記第1位相差領域は、液晶性化合物を含有する組成物から形成された光学異方性層であってもよい。前記液晶性化合物としては、棒状液晶性化合物を用いるのが好ましい。液晶性化合物はネマティック配向している状態で固定されていることが好ましく、重合反応により固定されていることがさらに好ましい。棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。棒状液晶性化合物を重合によって配向を固定することがより好ましい。液晶分子には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は1〜6個、好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、および特開2001−328973号公報などに記載の化合物を用いることができる。
【0031】
前記光学異方性層は、液晶性化合物および必要に応じて重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。光学異方性層の厚さは、0.5〜100μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることがさらに好ましい。
【0032】
配向させた液晶性分子の配向状態の固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20〜5000mJ/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
【0033】
また、上記の液晶性化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶性化合物の配向性等を向上させることが出来る。これらの素材は液晶性化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
【0034】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性もしくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0035】
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物、特願2003−295212号明細書中の段落番号[0069]〜[0126]記載の化合物が挙げられる。
【0036】
液晶性化合物とともに使用するポリマーは、塗布液を増粘できることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
【0037】
[配向膜]
前記光学異方性層を形成する際には、液晶性分子の配向方向を規定するために、配向膜を用いることが好ましい。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。ラビング処理は、配向膜の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。長さおよび太さが均一な繊維を均一に植毛した布を用いることが好ましい。なお、光学異方性層の液晶性分子が配向膜上で配向固定化された後は、配向膜を除去しても液晶性分子の配向状態を保つことができる。すなわち、配向膜は、液晶性分子を配向させるため位相差板の製造においては必須であるが、製造された位相差板においては必須ではない。配向膜を透明支持体と光学異方性層との間に設ける場合は、さらに下塗り層(接着層)を透明支持体と配向膜との間に設けてもよい。
【0038】
[支持体]
前記光学異方性層を支持体上に形成してもよい。支持体は透明であるのが好ましく、具体的には、光透過率が80%以上であるのが好ましい。支持体は、波長分散が小さいのが好ましく、具体的には、Re400/Re700の比が1.2未満であることが好ましい。中でも、ポリマーフイルムが好ましい。例えば、後述する第2位相差領域であるセルロースアセテートプロピオネートフイルム又はセルロースプロピオネートフイルムを支持体として用い、その上に、第1位相差領域である光学異方性層を形成してもよい。支持体の光学異方性は小さいのが好ましく、面内レターデーション(Re)が20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがさらに好ましく、5nm以下であることが最も好ましい。
【0039】
支持体となるポリマーフイルムの例には、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート及びポリメタクリレートのフイルムが含まれる。セルロースエステルフイルムが好ましく、アセチルセルロースフイルムがさらに好ましく、トリアセチルセルロースフイルムが最も好ましい。ポリマーフイルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明支持体の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜200μmであることがさらに好ましい。透明支持体とその上に設けられる層(接着層、配向膜あるいは位相差層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。また、透明支持体や長尺の透明支持体には、搬送工程でのすべり性を付与したり、巻き取った後の裏面と表面の貼り付きを防止するために、平均粒径が10〜100nm程度の無機粒子を固形分重量比で5%〜40%混合したポリマー層を支持体の片側に塗布や支持体との共流延によって形成したものを用いることが好ましい。
【0040】
また、光学異方性層を仮支持体上に形成して、該光学異方性層を、第2位相差領域であるセルロースアセテートプロピオネートフイルム又はセルロースプロピオネートフイルム上に転写してもよい。さらに、1層の光学異方性層のみならず複数の光学異方性層を積層して、上記光学特性を示す第1位相差領域を構成することもできる。また、支持体と光学異方性層との積層体全体で第1位相差領域を構成してもよい。
【0041】
[第2位相差領域]
本発明において、第2位相差領域は、面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz及び厚さdを用いて、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで定義されるRthが−200nm〜−50nmであり、−180〜−60nmであるのが好ましく、−150〜−70nmであるのがより好ましい。また、前記第2位相差領域は、面内の屈折率nxとnyが実質的に等しく、且つ光学軸が面内に含まれない。従って、Re=(nx−ny)×dで定義される面内レターデーションReは0nmに近いほど好ましい。前記第2位相差領域のReは、50nm以下であり、0〜30nmであるのが好ましく、0〜10nmであるのがより好ましい。
【0042】
本発明において、第2位相差領域は、セルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムからなる。セルロースアセテートプロピオネートは、セルロースの水酸基の一部がアセチル基及びプロピオニオル基によって置換されたセルロースアシレートであり、セルロースプロピオネートは、セルロースの水酸基の一部がプロピオニル基によって置換されたセルロースアシレートである。アシル基置換度が異なるセルロースアセテートプロピオネート又はセルロースプロピオネートをそれぞれ用いることにより、所望の光学特性のフイルムを作製することができる。第2位相差領域に要求される光学特性を満たすためには、アシル置換度が、下記式(I)〜(III)の全てを満足するセルロースアセテートプロピオネート又はセルロースプロピオネートを用いるのが好ましく、
(I) 2.82≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(III) 1.3≦SP≦2.9
(式中、SA及びSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、SPはプロピオニル基の置換度である。)
より好ましくは、
(I) 2.83≦SA+SP≦2.99
(II) 0≦SA≦1.59
(III) 1.4≦SP≦2.85
であり、さらに好ましくは、
(I) 2.85≦SA+SP≦2.98
(II) 0≦SA≦1.48
(III) 1.5≦SP≦2.8
である。
これらのうち、SA+SPを大きくするとRthの値を低下させることができ、かつ、SPを大きくすると、レターデーションの湿度依存性を小さくすることができる。
【0043】
本発明に利用可能なセルロースアセテートプロピオネート又はセルロースプロピオネートといったセルロースアシレートは、セルロースエステル化合物、およびセルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得ることができ、合成方法についての基本的な原理は、右田伸彦他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。セルロースアシレートの代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−カルボン酸−硫酸触媒による液相アシル化法である。具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸などのカルボン酸で前処理した後、予め冷却したアシル化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記アシル化混液は、一般に溶媒としてのカルボン酸、エステル化剤としてのカルボン酸無水物および触媒としての硫酸を含む。カルボン酸無水物は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが一般的である。
【0044】
アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰カルボン酸無水物の加水分解を行うために、水または含水酢酸を添加する。エステル化触媒を一部中和するために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物または酸化物)の水溶液を添加してもよい。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量のアシル化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、20〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希酢酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希酢酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得る。
【0045】
セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で150〜500が好ましく、200〜400がより好ましく、220〜350がさらに好ましい。粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)に従い測定できる。粘度平均重合度の測定方法については、特開平9−95538号公報にも記載がある。
【0046】
セルロースアセテートプロピオネート又はセルロースプロピオネートを含むフイルムは、押出し法、溶液流延法等の種々の方法を利用して作製することができる。フイルム状に成形した後、所定の光学特性を得るために、さらに延伸処理を実施することもできる。溶液流延法を利用して前記フイルムを作製する場合は、ドープ中に、可塑剤(好ましい添加量はセルロースエステルに対して0.1〜20質量%、以下同様)、改質剤(0.1〜20質量%)、紫外線吸収剤(0.001〜5質量%)、平均粒径が5〜3000nmである微粒子粉体(0.001〜5質量%)、フッ素系界面活性剤(0.001〜2質量%)、剥離剤(0.0001〜2質量%)、劣化防止剤(0.0001〜2質量%)、光学異方性制御剤(0.1〜15質量%)、赤外線吸収剤(0.1〜5質量%)等の添加剤を含有させてもよい。その他、フイルムの作製方法については、公開技法2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)等に詳細が記載されていて、本発明に適用することができる。
得られた未延伸および延伸後のセルロースアシレートフイルムには、適宜、表面処理を行うことにより、セルロースアシレート層と他の層との接着を改善することが可能となる。表面処理には、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、ケン化処理(酸ケン化処理、アルカリケン化処理)が含まれ、特にグロー放電処理およびアルカリケン化処理が好ましい。
なお、前述した様、セルロースアセテートプロピオネート又はセルロースプロピオネートを含むフイルムのみで前記第2位相差領域に要求される光学特性を満たすこともできるが、本発明には、前記第2位相差領域が、セルロースアセテートプロピオネートフイルム又はセルロースプロピオネートフイルムとともに、他の複屈折性フイルムや位相差膜を含む態様も含まれる。
【0047】
[偏光膜用保護膜]
偏光膜用保護膜としては、可視光領域に吸収が無く、光透過率が80%以上であり、複屈折性に基づくレターデーションが小さいものが好ましい。具体的には、面内のReが0〜30nmが好ましく、0〜15nmがより好ましく、0〜5nmが最も好ましい。さらに、厚み方向のレターデーションRthは0〜40nmであることが好ましく、0〜20nmがより好ましく、0〜10nmであることが最も好ましい。この特性を有するフイルムであれば好適に用いることができるが、偏光膜の耐久性の観点からはセルロースアシレートやノルボルネン系のフイルムがより好ましい。セルロースアシレートフイルムのRthを小さくする方法として、特開平11−246704号公報、特開2001−247717号公報、特願2003−379975号明細書に記載の方法などが挙げられる。また、セルロースアシレートフイルムの厚みを小さくすることによっても、Rthを小さくすることができる。第1及び第2偏光膜用保護膜としてのセルロースシレートフイルムの厚みは10〜100μmであることが好ましく、10〜60μmであるのがより好ましく、20〜45μmであることがさらに好ましい。
【0048】
[偏光板一体型光学補償フイルム]
本発明は、偏光膜と光学補償機能を有する第1及び第2位相差膜が一体化されて作製された、偏光板一体型補償フイルムに関する。本発明の偏光板一体型光学補償フイルムを用いることで、より簡易な構成で、液晶表示装置の視野角特性を改善できる。また、本発明の偏光板一体型光学補償フイルムは、ロールツーロールで長尺状に作製し、その後所望の大きさに裁断して、液晶表示装置に組み込むことができるので、簡易な工程で作製可能であり、液晶表示装置の生産性の改善にも寄与する。
【0049】
本発明の偏光板一体型光学補償フイルムの一実施形態は、長手方向に平行な吸収軸を有する長尺状の偏光膜と、セルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムからなり、面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz及び厚さdを用いて、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで定義されるRthが−200nm〜−50nmで、Re=(nx−ny)×dで定義されるReが50nm以下であり、面内の屈折率nxとnyが実質的に等しく、且つ光学軸がフイルム面内に含まれない長尺状の第2位相差膜と、前記偏光膜と前記第2位相差膜との間に、長手方向に実質的に直交する遅相軸を有する長尺状の第1位相差膜とを有する。本実施形態の偏光板一体型光学補償フイルムは、偏光膜としての機能のみならず、前記第1位相差領域及び第2位相差領域としての光学特性を満足する位相差膜をそれぞれ有する。本実施形態の偏光板一体型光学補償フイルムは、偏光膜、第1位相差膜及び第2位相差膜の光学的軸合わせが容易であり、例えば、ロールツーロールで長尺状に作製され、所定の大きさに裁断された後、液晶表示装置(例えば図2の構成の液晶表示装置)に用いられる。
【0050】
本発明の偏光板一体型光学補償フイルムの他の実施形態は、長手方向に平行な吸収軸を有する長尺状の偏光膜と、セルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムからなり、面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz及び厚さdを用いて、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで定義されるRthが−200nm〜−50nmで、Re=(nx−ny)×dで定義されるReが50nm以下であり、面内の屈折率nxとnyが実質的に等しく、且つ光学軸がフイルム面内に含まれない長尺状の第2位相差膜と、長手方向に実質的に平行な遅相軸を有する長尺状の第1位相差膜とを、この順序で有する。本実施形態の偏光板一体型光学補償フイルムは、偏光膜としての機能のみならず、前記第1位相差領域及び第2位相差領域としての光学特性を満足する位相差膜をそれぞれ有する。本実施形態の偏光板一体型光学補償フイルムは、偏光膜、第1位相差膜及び第2位相差膜の光学的軸合わせが容易であり、例えば、ロールツーロールで長尺状に作製され、所定の大きさに裁断された後、液晶表示装置(例えば図3の構成の液晶表示装置)に用いられる。
【0051】
第1位相差膜及び第2位相差膜は、長尺の形態で偏光膜と積層される。例えば、第1位相差膜が、液晶性化合物を含有する組成物から形成される態様では、長尺状のセルロースアセテートプロピオネートフイルム又はセルロースプロピオネートフイルムを搬送しつつ、その表面に連続的に配向膜組成物の溶液を塗布することで配向膜を形成し、その表面を連続的にラビング処理を行い、ラビング処理面に液晶化合物を含む溶液を連続的に塗布することで、長尺状の第1位相差膜と第2位相差膜との積層体を作製することができる。
【0052】
液晶性化合物を含有する組成物から形成された長尺状の第1位相差膜の遅相軸方向は、フイルム長手方向に対して実質的に平行方向、または、直交方向である。上記のように、長尺フイルム上に形成した配向膜を搬送しながら連続的にラビング処理を行うことで液晶化合物を配向させるときには、長手方向に対して平行方向もしくは直交方向のどちらに液晶分子を配向させるかによって適宜配向膜素材を選ぶことができる。第1位相差膜の遅相軸をラビング方向と平行に(すなわち、長手方向と平行に)発現させたい場合には、ポリビニルアルコール系の配向膜などを用いることができる。また、第1位相差膜の遅相軸をラビング方向と直交に(すなわち、長手方向と直交に)発現させたい場合には、特開2002−98836号公報の段落[0024]〜[0210]に記載の直交配向膜などを用いることができる。広く一般に使用されているヨウ素を用いた偏光膜は、連続縦一軸延伸プロセスによって製造されるため、ロールの長手方向と平行に吸収軸がある。したがって、一般的な縦一軸延伸された長尺の偏光膜と、長尺の第1位相差膜を、偏光膜の吸収軸と第1位相差膜の遅相軸とが直交するようにロールトゥロールにより貼り合せる場合には、上記直交配向膜を用いるのが好ましい。
【0053】
なお、本発明の偏光板一体型光学補償フイルムは、偏光膜の上記位相差膜が形成されている側と反対の表面に、偏光膜用保護膜を有していてもよい。また、偏光膜と上記位相差膜との間にも、偏光膜偏光膜用の保護膜を有していてもよいが、かかる場合は、該保護膜の複屈折性に基づくレターデーションは小さいのが好ましく、面内のレターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthは、いずれも0nmに近い程好ましい。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
<IPSモード液晶セルの作製>
一枚のガラス基板上に、図1に示す様に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極(図1中2及び3)を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。図1中に示す方向4に、ラビング処理を行なった。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が反平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769及び誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマティック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
<強誘電性液晶セルの作製>
ITO電極付ガラス基板上ポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。この基板を2枚製作し、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を1.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.15及び自発分極(Ps)が12nCcm-2である強誘電性液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は280nmであった。
【0055】
<第1位相差領域1、第1位相差領域2、第1位相差領域3、第1位相差領域4、第1位相差領域5の作製>
ポリカーボネートのペレットをメチレンクロライドに溶解し、金属製のバンド上に流延し、続いて乾燥することにより厚さ80μmのポリカーボネートフイルムを得た。ポリカーボネートフイルムを170℃の温度条件で横一軸テンター延伸機を用いて幅方向に3.5%、及び4.5%の一軸延伸を行い、それぞれ長さ500mの第1位相差領域1、及び第1位相差領域2を得た。さらにこの厚さ80μmのポリカーボネートフイルムを、170℃の温度条件で長手方向に3.5%、幅方向に1%の二軸延伸を行い、長さ500mの第1位相差領域3を得た。続いてこの厚さ80μmのポリカーボネートフイルムを、170℃の温度条件で長手方向に及び4.5%の一軸延伸を行い、長さ500mの第1位相差領域4を得た。さらに、厚さ100μmのロール状のノルボルネン系ポリマーフイルム(アートン、JSR(株)製)を長手方向に、温度180℃で連続的に延伸し、長さ500mの第1位相差領域5を得た。
【0056】
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定し、これらの光学特性を算出したところ、第1位相差領域1はReが100nm、Rthが50nmで、Nzが1.0であり、第1位相差領域2はReが140nm、Rthが70nmで、Nzが1.0であり、第1位相差領域3はReが80nm、Rthが80nmで、Nzが1.5あり、いずれも遅相軸が長尺状フイルムの長手方向に直角にあった。また、第1位相差領域4はReが140nm、Rthが70nmで、Nzが1.0で第1位相差領域5はReは170nm、Rthは85nmであり、Nzが1.0で、いずれも遅相軸が長尺状フイルムの長手方向に平行にあることが確認できた。
【0057】
《第2位相差領域および保護フイルムの作製》
下記に従い、ロール状セルロースアシレートフイルムA〜Eを作製した。
(セルロースアシレートの調製)
第1表に記載のアシル基の種類、置換度の異なるセルロースアシレートを調製した。すなわち、触媒としての硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)とカルボン酸無水物との混合物を−20℃に冷却してからパルプ由来のセルロースに添加し、40℃でアシル化を行った。この時、カルボン酸無水物の種類及びその量を調整することで、アシル基の種類及びその置換比を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行って全置換度を調整した。
【0058】
(セルロースアシレート溶液の調製)
1)セルロースアシレート
調製したセルロースアシレートを120℃に加熱して乾燥し、含水率を0.5質量%以下とした後、30質量部を溶媒と混合させた。
2)溶媒
ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(81/15/4質量部)を溶媒として用いた。なお、これらの溶媒の含水率は、いずれも0.2質量%以下であった。
3)添加剤
全ての溶液調製に際し、トリメチロールプロパントリアセテート0.9質量部を添加した。また、全ての溶液調製に際し、二酸化ケイ素微粒子(粒径20nm、モース硬度 約7)0.25質量部を添加した。
4)膨潤、溶解
攪拌羽根を有し外周を冷却水が循環する400リットルのステンレス製溶解タンクに、上記溶媒、添加剤を投入して撹拌、分散させながら、上記セルロースアシレートを徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、セルロースアシレート溶液を得た。
なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
5)ろ過
上記で得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(FH025、ポール社製)にて濾過してセルロースアシレート溶液を得た。
【0059】
(セルロースアシレートフイルムの作製)
上記セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延ギーサー(特開平11−314233号公報に記載)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは15m/分、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフイルムをバンドから剥ぎ取り、45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、さらに140℃で10分乾燥して、それぞれ500mの長さの長尺状の第1表に示したセルロースアシレートフイルムを得た。
【0060】
【表1】

【0061】
<偏光板一体型光学補償フイルム1の作製>
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフイルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)を、もう一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフイルム(フジタックT40UZ、富士写真フイルム(株)製、厚さ40μm、Re=1nm、Rth=35nm)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせた。さらに前述の第1位相差領域1を接着剤を用いて、T40UZの上に連続して貼り合わせた。続いて、この第1位相差領域1側に前述のフイルムC(第二位相差領域)を接着剤を用いて連続して貼り合わせて長さ500mの長尺状の偏光板一体型光学補償フイルム1を作製した。偏光膜の吸収軸はフイルム長手方向に対して平行であり、第1位相差領域1の遅相軸はフイルム長手方向に対して直交していた。
このロール状の偏光板一体型光学補償フイルム1の任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板1を10枚得た。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になる(第1位相差領域1の遅相軸と直交する)ように行った。
【0062】
<偏光板一体型光学補償フイルム2の作製>
上述と同様にして長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、ケン化処理したフジタックTD80UFを、もう一方の面に、ケン化処理した上述のフイルムEを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせた。さらに前述の第1位相差領域2を接着剤を用いて、フイルムEの上に連続して貼り合わせた。続いて、この第1位相差領域2側に前述のフイルムA(第2位相差領域)を接着剤を用いて連続して貼り合わせて長さ500mの長尺状の偏光板一体型光学補償フイルム2を作製した。偏光膜の吸収軸はフイルム長手方向に対して平行であり、第1位相差領域2の遅相軸はフイルム長手方向に対して直交していた。
このロール状の偏光板一体型光学補償フイルム2の任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板2を10枚得た。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように行った。
【0063】
<偏光板一体型光学補償フイルム3の作製>
上述と同様にして長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の両面に、ケン化処理したフジタックTD80UFを用いて連続して貼り合わせた。さらに前述の第1位相差領域3を接着剤を用いてフジタックTD80UFの上に連続して貼り合わせた。続いて、この第1位相差領域3側に前述のフイルムAとフイルムB(第2位相差領域)を接着剤を用いて連続して貼り合わせて長さ500mの長尺状の偏光板一体型光学補償フイルム3を作製した。偏光膜の吸収軸はフイルム長手方向に対して平行であり、第一位相差領域の遅相軸はフイルム長手方向に対して直交していた。なお、フイルムAとBのReおよびRthの光学特性には加成性が認められ、フイルムAとBの積層体のReは0nmであり、Rth−150nmであると推定される。
このロール状の偏光板一体型光学補償フイルム3の任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板3を10枚得た。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように行った。
【0064】
<偏光板一体型光学補償フイルム4の作製>
上述と同様にして長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)を、もう一方の面にフイルムBとフイルムD(第2位相差領域)を用いて連続して貼り合わせた。さらに前述の第1位相差領域5を接着剤を用いてフイルムDの上に連続して貼り合わせて長さ500mの長尺状の偏光板一体型光学補償フイルム4を作製した。偏光膜の吸収軸はフイルム長手方向に対して平行であり、第1位相差領域5の遅相軸はフイルム長手方向に対して平行であった。なお、フイルムBとDのReおよびRthの光学特性には加成性が認められ、フイルムBとDの積層体のReは0nmであり、Rth−97nmであると推定される。
このロール状の偏光板一体型光学補償フイルム4の任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板4を10枚得た。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように行った。
【0065】
<偏光板一体型光学補償フイルム5の作製>
上述と同様にして長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)を、もう一方の面にフイルムA(第2位相差領域)を用いて連続して貼り合わせた。さらに前述の第1位相差領域4を接着剤を用いてフイルムAの上に連続して貼り合わせて長さ500mの長尺状の偏光板一体型光学補償フイルム5を作製した。偏光膜の吸収軸はフイルム長手方向に対して平行であり、第1位相差領域4の遅相軸はフイルム長手方向に対して平行であった。
このロール状の偏光板一体型光学補償フイルム5の任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板5を20枚得た。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように行った。
【0066】
<偏光板一体型光学補償フイルム6の作製>
(第1位相差領域6の形成)
上記フイルムAの表面をケン化後、このフイルムを搬送しながら、フイルム上に下記の組成の配向膜塗布液をワイヤーバーコーターで20ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、膜を形成した。次に、形成した膜にフイルムの長手方向と平行の方向にラビング処理を施して配向膜を形成した。
配向膜塗布液の組成
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
【0067】
【化1】

【0068】
上記配向膜の上に、以下の組成の塗布液をバーコーターを用いて連続的に塗布した。塗
布層を100℃で1分間加熱して、棒状液晶分子を配向させた後、紫外線を照射して棒状
液晶分子を重合させ、配向状態を固定した。
【0069】
第1位相差領域6の塗布液組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の棒状液晶化合物 38.4重量%
下記の増感剤 0.38重量%
下記の光重合開始剤 1.15重量%
下記の空気界面水平配向剤 0.06重量%
メチルエチルケトン 60.0重量%
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0070】
【化2】

【0071】
【化3】

【0072】
【化4】

【0073】
【化5】

【0074】
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、第1位相差領域6を形成したフイルムのReの光入射角度依存性を測定し、予め測定したフイルムAの寄与分を差し引くことによって、第1位相差領域6のみの光学特性を算出した。Reは140nm、Rthは70nm、Nz値は1.0、棒状液晶分子の長軸の層平面に対する平均傾斜角は0°であり、フイルム平面に対して平行に配向していた。また、棒状液晶性分子は、長軸方向がロール状セルロースアセテートフイルムの長手方向と平行になるように配向していた(すなわち、第1位相差領域6の遅相軸方向はロール状セルロースアシレートフイルムAの長手方向に平行になっていた)。
上述と同様にして長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)を、もう一方の面にこの第1位相差領域6を形成したフイルムA(第2位相差領域)をフイルムA側が平行膜になるように連続して貼り合わせて長さ500mの長尺状の偏光板一体型光学補償フイルム6を作製した。偏光膜の吸収軸はフイルム長手方向に対して平行であり、第1位相差領域の遅相軸はフイルム長手方向に対して平行であった。
このロール状の偏光板一体型光学補償フイルム6の任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板6を10枚得た。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように行った。
【0075】
<偏光板Aの作製>
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフイルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の両面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフイルム(フジタックT40UZ、富士写真フイルム(株)製、厚さ40μm、Re=1nm、Rth=35nm)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせ、長さ500mの偏光板Aを作製した。
偏光膜の吸収軸はフイルム長手方向に対して平行であった。
このロール状の偏光板Aの任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの偏光板Aを20枚得た。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように行った。
【0076】
<偏光板Bの作製>
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフイルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)を、もう一方の面にフイルムEとを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせ、長さ500mの偏光板Bを作製した。偏光膜の吸収軸はフイルム長手方向に対して平行であった。
このロール状の偏光板Bの任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの偏光板Aを50枚得た。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように行った。
【0077】
[実施例1]
<液晶表示装置1の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記作製した積層偏光板1をその吸収軸を液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)に直交に、第2位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、液晶セルのもう一方の側に上記作製した偏光板Aをクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置1を作製した。
【0078】
上記液晶表示装置1を10台作製し、白表示と黒表示を行い、その正面方向の輝度の比をコントラスト比として求めた。位相差板を含まず、偏光板のみを貼り合せた液晶表示装置のコントラスト比に対して、90%以下であるものを不良品とした。10台の液晶表示装置1のうちの不良品の発生台数は0台であった。さらに、左斜め方向60°方向での漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.10%であった。
【0079】
[実施例2]
<液晶表示装置2の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記作製した積層偏光板2をその吸収軸を液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)に直交に、第2位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、液晶セルのもう一方の側に上記作製した偏光板Bをクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置2を作製した。
上記液晶表示装置2を10台作製した。10台の液晶表示装置2のうちの不良品の発生台数は0台であった。さらに、左斜め方向60°方向での漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.05%であった。
【0080】
[実施例3]
<液晶表示装置3の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記作製した積層偏光板3をその吸収軸を液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)に直交に、第2位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、液晶セルのもう一方の側に上記作製した偏光板Bをクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置3を作製した。
上記液晶表示装置3を10台作製した。10台の液晶表示装置3のうちの不良品の発生台数は0台であった。さらに、左斜め方向60°方向での漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.05%であった。
【0081】
[実施例4]
<液晶表示装置4の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記作製した積層偏光板4をその吸収軸を液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)に直交に、第1位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、液晶セルのもう一方の側に上記作製した偏光板Aをクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置4を作製した。
上記液晶表示装置4を10台作製した。10台の液晶表示装置4のうちの不良品の発生台数は0台であった。さらに、左斜め方向60°方向での漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.11%であった。
【0082】
[実施例5]
<液晶表示装置5の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記作製した積層偏光板5をその吸収軸を液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)に直交に、第1位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、液晶セルのもう一方の側に上記作製した偏光板Bをクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置5を作製した。
上記液晶表示装置5を10台作製した。10台の液晶表示装置5のうちの不良品の発生台数は0台であった。さらに、左斜め方向60°方向での漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.05%であった。
【0083】
[実施例6]
<液晶表示装置6の作製>
作製した強誘電性液晶セルの一方に、上記作製した積層偏光板5をその吸収軸が液晶セルの液晶セルに直流電圧10Vを印加した場合の液晶分子の遅相軸と平行になるように(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に直交するように)、且つ第1位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、液晶セルのもう一方の側に上記作製した偏光板Bをクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置6を作製した。
上記液晶表示装置6を10台作製した。10台の液晶表示装置6のうちの不良品の発生台数は0台であった。さらに、左斜め方向60°方向での漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.05%であった。
【0084】
[実施例7]
<液晶表示装置7の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記作製した積層偏光板6をその吸収軸を液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)に直交に、第1位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、液晶セルのもう一方の側に上記作製した偏光板Bをクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置7を作製した。
上記液晶表示装置7を10台作製した。10台の液晶表示装置7のうちの不良品の発生台数は0台であった。さらに、左斜め方向60°方向での漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.05%であった。
【0085】
[比較例1]
<積層偏光板7の作製>
実施例7で作製したロール状の第1位相差領域6を形成したフイルムAの任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの位相差板16Aを10枚得た。なお、裁断は一方の辺が第1位相差領域6の遅相軸と平行になるように行った。
続いて、ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフイルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)を貼合して、20cm×20cmの大きさに10枚裁断した。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように行った。位相差板16Aの遅相軸と偏光板の吸収軸が平行になるように、フイルムA側が偏光膜側になるようにして位相差板16Aと偏光板を貼り合せ、積層偏光板7とし、これを10枚作製した。
【0086】
<液晶表示装置8の作製>
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記作製した積層偏光板7をその吸収軸が液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)と直交するように、第1位相差領域が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、液晶セルのもう一方の側に上記作製した偏光板Bをクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置8を作製した。
上記液晶表示装置8を10台作製し、実施例1と同様にして調べた不良品の発生台数は3台であった。さらに、左斜め方向60°方向での漏れ光を測定したところ、良品7台の平均値は0.11%であった。この結果から、一旦長尺状の偏光板一体型光学補償フイルムとし、その後、裁断して作製したほうが、偏光板と位相差版とを各々裁断した後、積層して作製するよりも、不良品の発生が極めて少ないことがわかった。
【0087】
[比較例2]
<液晶表示装置9の作製>
実施例1と同様に作製したIPSモード液晶セルの両方に、20cm×20cmの大きさで、一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように裁断した市販の偏光板(HLC2−5618、(株)サンリッツ製)をクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置9を作製した。
上記液晶表示装置9を10台作製し、実施例1と同様にして調べた不良品の発生台数は0台であった。さらに、左斜め方向60°方向での漏れ光を測定したところ、良品10台の平均値は0.55%であった。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の液晶表示装置の画素領域例を示す概略図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の液晶表示装置の他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0089】
1 液晶素子画素領域
2 画素電極
3 表示電極
4 ラビング方向
5a、5b 黒表示時の液晶化合物のダイレクター
6a、6b 白表示時の液晶化合物のダイレクター
7a,7b、19a,19b 偏光膜用保護膜
8、20 偏光膜
9、21 偏光膜の偏光透過軸
10 第1位相差領域
11 第1位相差領域の遅相軸
12 第2位相差領域
13、17 セル基板
14、18 セル基板ラビング方向
15 液晶層
16 液晶層の遅相軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に平行な吸収軸を有する長尺状の偏光膜、
セルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムからなり、面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz及び厚さdを用いて、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで定義されるRthが−200nm〜−50nmで、Re=(nx−ny)×dで定義されるReが50nm以下であり、面内の屈折率nxとnyが実質的に等しく、且つ光学軸がフイルム面内に含まれない長尺状の第2位相差膜、及び
前記偏光膜と前記第2位相差膜との間に、長手方向に実質的に直交する遅相軸を有する長尺状の第1位相差膜を有する長尺状の偏光板一体型光学補償フイルム。
【請求項2】
長手方向に平行な吸収軸を有する長尺状の偏光膜、
セルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムからなり、面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz及び厚さdを用いて、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで定義されるRthが−200nm〜−50nmで、Re=(nx−ny)×dで定義されるReが50nm以下であり、面内の屈折率nxとnyが実質的に等しく、且つ光学軸がフイルム面内に含まれない長尺状の第2位相差膜、及び
長手方向に実質的に平行な遅相軸を有する長尺状の第1位相差膜を、前記偏光膜、前記第2位相差膜及び第1位相差膜の順で配置した偏光板一体型光学補償フイルム。
【請求項3】
第1位相差膜のReが60nm〜200nmであり、第1位相差膜のNz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNz値が0.8を超え1.5以下である請求項1又は2に記載の偏光板一体型光学補償フイルム。
【請求項4】
少なくとも、第1偏光膜と、第1位相差領域と、第2位相差領域と、液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと、第2偏光膜とを含み、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって、
面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz、及びフイルムの厚さdを用いてRe=(nx−ny)×dで定義される第1位相差領域のReが60nm〜200nmで、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下で、第2位相差領域の面内の屈折率nxとnyが実質的に等しく、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで定義される第2位相差領域のRthが−200nm〜−50nmであり、
前記第2位相差領域がセルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムであり、且つ
前記第1偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行である液晶表示装置。
【請求項5】
第1偏光膜、第1位相差領域、第2位相差領域及び液晶セルが、この順序で配置され、且つ第1位相差領域の遅相軸が、第1偏光膜の透過軸に平行である請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
第1偏光膜、第2位相差領域、第1位相差領域及び液晶セルが、この順序で配置され、且つ第1位相差領域の遅相軸が、第1偏光膜の透過軸に直交である請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
第1偏光膜及び第2偏光膜の少なくとも一方を挟んで配置された一対の保護膜を有し、該一対の保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜の厚み方向の位相差Rthが40nm〜−40nmである請求項4〜6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
第1偏光膜及び第2偏光膜の少なくとも一方を挟んで配置された一対の保護膜を有し、該一対の保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜の厚み方向の位相差Rthが20nm〜−20nmである請求項4〜6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
第1偏光膜及び第2偏光膜の少なくとも一方を挟んで配置された一対の保護膜を有し、該一対の保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜の厚みが60μm以下である請求項4〜8のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記第1偏光膜及び/又は第2偏光膜を挟んで配置された一対の保護膜を有し、該一対の保護膜のうち液晶層に近い側の保護膜がセルロースアシレートフイルム又はノルボルネン系フイルムである請求項4〜9のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記第1位相差領域及び/又は前記第2位相差領域が前記第1偏光膜に隣接してなる請求項4〜10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
液晶セルの一対の基板のうち視認側と反対側の基板により近い位置に、前記第1位相差領域及び前記第2位相差領域が配置されている請求項4〜11のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記セルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するセルロースアシレートフイルムである請求項1〜3のいずれか1項に記載の長尺状の偏光板一体型光学補償フイルム。
(I) 2.82≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(III) 1.3≦SP≦2.9
(式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、SPはプロピオニル基の置換度である。)
【請求項14】
前記セルロースアセテートプロピオネートもしくはセルロースプロピオネートを含むフイルムが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するセルロースアシレートフイルムである請求項4〜12のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
(I) 2.82≦SA+SP≦3
(II) 0≦SA≦1.7
(III) 1.3≦SP≦2.9
(式中、SAおよびSPはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、SPはプロピオニル基の置換度である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−71965(P2006−71965A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255178(P2004−255178)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】