説明

偏光装置及び表示装置

【課題】表示素子からの光は最大限利用し、外光をある程度減衰させ、シースルー方式でありながら表示画像のコントラストを高くする。
【解決手段】第1の偏光方位角における屈折率が第1の屈折率n1となる屈折材料で形成された第1のレンズ221と、第1の偏光方位角における屈折率が第1の屈折率ne(=n1)となるとともに、第1の偏光方位角とは異なる第2の偏光方位角における屈折率が第1の屈折率neとは異なる第2の屈折率noとなる屈折材料で形成された第2のレンズ222とから構成され、第1のレンズ221及び第2のレンズ222は、それぞれの第1の偏光方位角における屈折率が相互に一致するように接合され、第2の偏光方位角において相互に接触する各屈折材料の屈折率が異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各屈折材料の屈折率が異なる偏光装置、及びその偏光装置を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)と呼ばれる頭部装着型の表示装置が開発されている。この頭部装着型表示装置では、観察者の眼前に設置した液晶パネルや有機ELパネル等のディスプレイ上に光学像を形成し、その光学像を、接眼レンズやハーフミラー等を有する光学系を介して拡大して観察者の眼に結像させることによって、画像表示を行う。このHMDには、表示素子に表示された画像の虚像を外界に重ね合わせて見ることができる、いわゆるシースルー型のHMDもある。
【0003】
ここで、通常、HMDでは、観察者が虚像を結像させるために眼前に屈折力をもつレンズ面が配置されるため、このような構成を有するシースルー型のHDMで、レンズ面を通して外界を見ると、レンズ面による光の屈折のために外界が歪んでしまうという問題がある。このようなレンズ面による外界の歪みを補正するために、レンズ面による屈折を打ち消すための補償レンズ要素を配置する技術がある(例えば、特許文献1及び2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−17775号公報
【特許文献2】特開2001−311903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示されている技術では、外界からの光(以降、外光と表現する)が減衰することなく眼に入るので、表示素子の虚像の視認性を向上させるためには、表示素子の輝度(コントラスト)を高くする必要があり、表示に必要な電力を低くできないという問題点がある。
【0006】
また、特許文献2に開示された技術では、虚像を生成するためのレンズ面にハーフミラーを形成しているため、表示素子からの光についても減衰させてしまい、虚像の輝度が低くなるという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した事情を考慮して、表示素子からの光は最大限利用し、外光をある程度減衰させ、シースルー方式でありながら表示画像のコントラストを高くすることができる偏光装置及び表示装置を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係る偏光装置は、第1の偏光方位角における屈折率が第1の屈折率となる屈折材料で形成された第1のレンズと、第1の偏光方位角における屈折率が第1の屈折率となるとともに、前記第1の偏光方位角とは異なる第2の偏光方位角における屈折率が前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率となる屈折材料で形成された第2のレンズとを有し、前記第1及び第2のレンズは、それぞれの前記第1の偏光方位角が相互に一致するように接合され、前記第2の偏光方位角において相互に接触する各屈折材料の屈折率が異なることを特徴とする。
【0009】
ここで、上記第1のレンズとしては、第1の偏光方位角における屈折率が第1の屈折率となるとともに、他の偏光方位角における屈折率が、第2のレンズにおける第2の偏光方位角の屈折率と異なる屈折材料で形成されていればよく、全ての偏光方位角における屈折率が等しい等方屈折材料を用いることができる。一方、上記第2のレンズとしては、少なくとも2つの偏光方位角における屈折率が相互に異なる屈折材料で形成されていなければならず、方解石等の複屈折材料を用いる。
【0010】
このような本発明の偏光装置によれば、第1のレンズと第2のレンズが接合された界面において、相互に一致された第1の偏光方位角については、第1の屈折率となる屈折材料同士が接触されているため屈折率差が小さく、第2の偏光方位角については、異なる屈折率の屈折材料同士が接触されているため、屈折率差が生じることとなる。これにより、第1の偏光方位角の偏光成分と第2の偏光方位角の偏光成分とが合成された光が入射された場合には、第1の偏光方位角の偏光成分については屈折することなく界面を透過し、第2の偏光方位角の偏光成分については屈折率差に応じて屈折されて透過することとなる。
【0011】
上述した偏光装置では、前記第1のレンズは、前記第2のレンズとの界面が凹面に形成され、前記界面と対向する面が平面に形成された平凹レンズであり、前記第2のレンズは、前記界面が凸面に形成され、前記界面と対向する面が平面に形成された平凸レンズであり、前記凹面と前記凸面の曲面形状が同一であることが好ましい。
【0012】
この場合には、第1のレンズと第2のレンズとの界面にレンズが形成される。第1の偏光方位角において振動する第1の偏光成分については、界面(曲面)に屈折率差が殆どなく、且つ、光の入射面と出射面がともに平面であるため、レンズ作用を受けることなく界面を透過する。一方、第2の偏光方位角において振動する第2の偏光成分については、界面(曲面)に屈折率差があるために、界面を透過する際に凸レンズ作用を受けることとなる。
【0013】
また、本発明に係る表示装置は、上記の偏光装置のいずれかを備えた表示装置であって、入射光のうち、前記第1の偏光方位角において振動する第1の偏光成分のみを透過する透過偏光部と、前記第2の偏光方位角において振動する第2の偏光成分のみを放射する表示部と、前記透過偏光部から射出された前記第1の偏光成分と、前記表示部から放射された前記第2の偏光成分とを合成して、前記偏光装置に入射させる合成部と、前記表示部からの拡大された虚像を、前記偏光装置を通じて観察者の眼前に観察可能に提示する光学系とを備えることを特徴とする。
【0014】
このような表示装置によれば、透過偏光部から射出された第1の偏光成分と、表示部から放射された第2の偏光成分とを、合成部により合成して偏光装置に入射させ、偏光装置において、第1の偏光成分を屈折させることなく透過させるとともに、第2の偏光成分を屈折、結像させ、表示素子に表示された映像の拡大虚像を観察者の眼前に観察可能に提示することができる。
【0015】
この結果、透過偏光部に外界からの外光を入射させた場合には、外界の景色と、表示部からの虚像を合成して提示するシースルー型の表示装置を構成することができる。この場合、表示部に表示される映像は接眼レンズとして機能する偏光装置により拡大された虚像として眼前に提示され、外光は屈折することなくそのまま偏光装置を透過し、観察者に外界を歪みなく提示することができる。
【0016】
このとき、透過偏光部は外光の第1の偏光成分のみを透過させるため、外光は透過偏光部を透過する際に減衰されることとなり、外光の強度を弱めることができ、明るい屋外でも表示部による虚像のコントラストを向上させることができる。
【0017】
上述した表示装置においては、前記合成部が、前記透過偏光部から射出された前記第1の偏光成分が入射される第1の端面と、前記表示部から放射された前記第2の偏光成分が入射される第2の端面と、前記第1の端面から入射された前記第1の偏光成分を透過させるとともに、前記第2の端面から入射された前記第2の偏光成分を反射させる偏光反射面と、前記偏光反射面を透過した前記第1の偏光成分と、前記偏光反射面で反射された前記第2の偏光成分とを射出する第3の端面とを備え、前記透過偏光部が、前記第1の端面に配置された偏光板であることが好ましい。
【0018】
この場合には、偏光反射面により、透過偏光部から入射された光を透過させるとともに、表示部から入射された光を反射させるという簡単な構成により透過偏光部からの光と、表示部からの光とを合成して、偏光装置に入射させることができる。
【0019】
また、上述した表示装置においては、前記表示部として、液晶表示素子を用いることができ、また、光を放射する面に、前記第2の偏光方位に振動する第2の偏光成分のみを透過させる偏光板或いは偏光変換素子を備えた有機EL表示素子を用いることができる。これらの場合には、表示装置の用途に応じて、各表示素子の特性を活かした映像を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)及び(b)は、実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ10を模式的に示す上面図である。
【図2】ヘッドマウントディスプレイ10の内部構造の構成を模式的に示す上面図である。
【図3】接眼レンズ220を示す斜視図である。
【図4】変更例に係る有機EL表示装置101cの内部構造を模式的に示す断面図である。
【図5】(a)及び(b)は、変更例に係る接眼レンズ220を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。なお、図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。なお、本実施形態においては、第1の偏光方位角をx方向とし、第2の偏光方位角をz方向とする。
【0022】
<A:全体構成>
図1(a)及び(b)は、本実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDと称する)10の内部構造を模式的に示す上面図である。図1を示すように、HMD10は、少なくとも、頭部80に装着可能な装着部12と、装着部12,12に連結されて人の両眼81の前方に配置されるHMD本体11とを備えている。
【0023】
装着部12は、図1に示すように、HMD本体11の両端から内側に延びる一対のテンプルからなり、両側頭部と接触してHMD10を頭部80に固定するようになっている。
【0024】
HMD本体11は、使用者の眼前に筐体が配置され、その筐体の内部に表示画像生成手段100と、導光手段200とを備えている。なお、HMD本体11の筐体は、前方が開放状態であるか、若しくはガラス等の透明な部材が配置された状態となっている。
【0025】
表示画像生成手段100は、映像光を射出してその映像光を入射方向に対して直交する2つの方向に分離する光学系であり、頭部80の中心部分に設けられている。本実施形態において、表示画像生成手段100は、表示装置101と、対物レンズ102と、映像光分離装置103とから構成されている。
【0026】
表示装置101は、本実施形態では透過型液晶パネルである。バックライトユニットは、照明光を射出する光源を複数備えており、光源としては、LED(発光ダイオード)が好適に用いられる。また、表示装置101には、ディスプレイに対する画像信号、走査信号の供給、及び光源の駆動の制御を行う駆動回路が備えてある。また、この制御手段にはメモリ装置が接続され、さらに外部装置に接続するための外部接続装置が接続されている。
【0027】
映像光分離装置103は、表示部に表示される映像を左右の眼に振分け、偏光装置を通じて観察者の眼前に観察可能に提示する光学系であり、例えば、反射ミラーや、偏光ビームスプリッター等の種々の装置が用いられる。対物レンズ102は、表示装置101から射出された映像光を所定の倍率で収束して、映像光分離装置103へ入射させるレンズであり、映像光分離装置103と表示装置101との間に備えられている。なお、提示すべき虚像のサイズが小さい場合には対物レンズ102を省くことも可能である。
【0028】
なお、このような表示画像生成手段100は、種々の構成を採用することができる。例えば、図1(a)に示すように、左右対称となる一対の表示装置101a,101aと、対物レンズ102a,102aと、反射ミラー103a,103aとを備え、一方の表示装置101aから射出した映像光を右目用の導光手段200へ導き、他方の表示装置101aから射出した映像光を右目用の導光手段200へ導く構成としてもよい。また、例えば、図1(b)に示すように、1つの表示装置101bを用いて、この液晶装置から射出された映像光を、対物レンズ102b及び映像光分離装置103bによって、右目用及び左眼用の映像に分離させ、それぞれの光を右目用及び左眼用の導光手段200,200へ導く構成としてもよい。
【0029】
さらに、図示しないが、表示画像生成手段100と導光手段200との間には、空気或いは透明プラスチックやガラスなどの導光媒質があったり、さらにはレンズがあったり、HMD の光学仕様によって種々の光学要素が配置されるようになっている。
【0030】
次いで、右目用及び左眼用の導光手段200,200について、説明する。図2は、ヘッドマウントディスプレイ10の内部構造の構成を模式的に示す上面図であり、図3は、本実施形態に係る接眼レンズ220を示す斜視図である。なお、本実施形態においては、便宜上左右一対の導光手段200のうち、使用者の左眼に対応する左側の構成のみ説明し、右側の構成については省略する。また、図2に示す表示画像生成手段100は、図1(a)で示した一対の表示画面生成手段100,100の一方のみを表示して説明するものとする。
【0031】
図2に示すように、導光手段200は、左眼の前方に設けられ、表示画像生成手段100から射出された映像光を左眼に入射させる光学系装置であり、偏光ビームスプリッター210と、接眼レンズ220と、偏光板212とから構成されている。
【0032】
偏光板212は、入射された外光のうち、第1の偏光方位角において振動する第1の偏光成分である偏光(偏光ビームスプリッター210に対してp偏光となる偏光)のみを透過する透過偏光部材である。この偏光板212は、本実施形態では、観察者の眼(図では左眼81a)の前方に位置された偏光ビームスプリッター210の、外界側の端面である、第1の端面210aに配置される。この偏光板212は、例えば、染色されたPVA(ポリビニルアルコール)からなる偏光素子を、TAC(トリアセチルセルロース)からなる2枚の保護膜で挟み込んだ三層構造からなる。
【0033】
偏光ビームスプリッター210は、外界から射出された外光のうち、p偏光と、表示装置101から放射されたs偏光とを合成して、接眼レンズ220に入射させる合成部であり、本実施形態では、三角柱状をなすガラス製の2つのプリズム部品を貼り合わせて構成されて全体として正方体の形状をなしている。なお、本実施形態では、これら2つのプリズム部品を、同一の屈折率の屈折材料で形成するが、異なる屈折率の屈折材料を用いることもできる。
【0034】
そして、この偏光ビームスプリッター210は、偏光板212から射出された第1の偏光成分が入射される第1の端面210aと、表示装置101から放射されたs偏光が入射される第2の端面210bと、外光であるp偏光と映像光であるp偏光とを射出する第3の端面210cと、第2の端面210bと対向位置に配置される第4の端面210dとを備えている。
【0035】
また、偏光ビームスプリッター210には、2つのプリズム部品の接合面に沿って、入射される映像光に対して略45度の角度を有した偏光反射面211が形成されている。この偏光反射面211は、例えば、誘導体多層膜で構成され、第1の端面210aから入射されたp偏光を透過させるとともに、第2の端面210bから入射されたs偏光を反射させる。なお、偏光板212の透過率は40%程度とし、偏光板212によってに外光の輝度を低減させるようになっている。
【0036】
このような構成により、偏光板212から射出されたp偏光と、表示装置101から放射されたs偏光とを、偏光ビームスプリッター210により合成して接眼レンズ220に入射させることとなる。
【0037】
一方、接眼レンズ220は、使用者の眼前に配置され、表示装置101によって表示された映像の拡大された虚像を、使用者の眼に提示するレンズ部材であり、本実施形態では、図3に示すように、第1のレンズ221と第2のレンズ222とから構成されている。
【0038】
第1のレンズ221は、第1の偏光方位角及び第2の偏光方位角における屈折率が第1の屈折率n1となる等方屈折材料で形成されたレンズである。本実施形態では、第1のレンズ221としてガラスを用いており、第1の偏光方位角と第2の偏光方位角の屈折率n1は、いずれも1.49となっている。
【0039】
第2のレンズ222は、第1の偏光方位角における屈折率が第1の屈折率ne=n1となるとともに、第1の偏光方位角とは異なる第2の偏光方位角における屈折率が第1の屈折率neとは異なる第2の屈折率noとなる複屈折材料で形成されたレンズである。本実施形態では、第2のレンズ222としては方解石を用いており、第1の屈折率neは1.49となっており、第2の屈折率noは1.66となっている。
【0040】
そして、本実施形態では、第1のレンズ221は、第2のレンズ222との界面が凹面に形成され、界面と対向する面が平面に形成された平凹レンズであり、第2のレンズ222は、界面が凸面に形成され、界面と対向する面が平面に形成された平凸レンズであり、凹面と凸面の曲面形状が同一となっている。
【0041】
そして、凸面形状に研磨した第2のレンズ222と、その凸面と同じ曲率半径の凹面形状に研磨された第1のレンズ221とを貼り合わせることで、第1のレンズ221及び第2のレンズ222は、それぞれの第1の偏光方位角において相互に接触する各屈折材料の屈折率が一致するように接合され、第2の偏光方位角において相互に接触する各屈折材料の屈折率が異なるようになっている。
【0042】
このような接眼レンズ220は、第1のレンズ221と第2のレンズ222が接合された界面において、相互に一致された第1の偏光方位角については、第1の屈折率no=n1となる屈折材料同士が接触されているため屈折率差がほとんど無く、第2の偏光方位角については、異なる屈折率の屈折材料同士が接触されているため、屈折率差が生じることとなる。
【0043】
これにより、第1の偏光方位角の偏光成分であるp偏光と第2の偏光方位角の偏光成分であるs偏光とが合成された光が入射された場合には、p偏光については屈折することなく界面を透過し、s偏光については屈折率差に応じて屈折されて透過することとなる。
【0044】
また、本実施形態において、この接眼レンズ220は、第1のレンズ221と第2のレンズ222との界面にレンズが形成されているので、第1の偏光方位角において振動するp偏光については、界面(曲面)に屈折率差が殆どなく、且つ、光の入射面と出射面がともに平面であるため、レンズ作用を受けることなく界面を透過する。一方、第2の偏光方位角において振動するs偏光については、界面(曲面)に屈折率差があるために、界面を透過する際に凸レンズ作用を受けることとなる。
【0045】
このような本実施形態では、偏光反射面211により、偏光板212から入射された光を透過させるとともに、表示装置101から入射された光を反射させるという簡単な構成により偏光板212からの光と、表示装置101からの光とを合成して、偏光ビームスプリッター210に入射させることができる。
【0046】
そして、偏光板212から射出されたp偏光と、表示装置101から放射されたs偏光とを、偏光ビームスプリッター210により合成して接眼レンズ220に入射させ、接眼レンズ220において、p偏光を屈折させることなく透過させるとともに、s偏光を屈折させて透過させて、観察者の眼前に観察可能に提示することができる。
【0047】
この結果、偏光板212に外界からの外光を入射させた場合には、外界の景色と、表示装置101からの虚像を合成して提示するシースルー型の表示装置を構成することができる。この場合、表示装置101に表示される映像は接眼レンズ220の凸レンズ作用を受けて拡大された虚像として眼前に提示され、外光は接眼レンズ220で屈折することなくそのまま接眼レンズ220を透過し、観察者に外界を歪みなく提示することができる。
【0048】
このとき、偏光板212は、特定の方向の偏光(偏光ビームスプリッタにおけるp偏光)のみを透過させるため、外光は偏光板212を透過する際に減衰されることとなり、外光の強度を弱めることができ、明るい屋外でも表示装置101による虚像のコントラストを向上させることができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、偏光板212の透過率は40%程度なので、偏光板212によって外光の強度が減少されて眼に入射される一方、表示装置101から出る映像光は、偏光板212を通過しないため、映像光の強度は殆ど減少しない。したがって、明るい屋外でもコントラストが高い映像表示を見ることができる。
【0050】
<B:変更例>
なお、上述した各実施形態の説明は、本発明の一例である。このため、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんである。なお、本変更例においても、上述した各実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その機能等は特に言及しない限り同一であり、その説明は省略する。
【0051】
例えば、上述した実施形態では、表示装置として表示装置101を用いたが、これに限定するものではなく、特定の偏光成分をもつ光を出射できればよく、例えば、液晶表示素子を用い、光を放射する面に、第2の偏光方位角に振動するs偏光のみを透過させる偏光板或いは偏光変換素子110を備えた有機EL表示装置101cとしてもよい。
【0052】
この偏光変換素子110を用いた有機EL表示装置について説明する。図4は、本変更例に係る有機EL表示装置101cの内部構造を模式的に示す断面図である。有機EL表示装置101cは、金属陰極111と、有機発光層112と、ITO電極113と、λ
/4フィルム115と、反射型偏光板116とを備えている。
【0053】
金属陰極111は、有機EL装置の電極として機能すると共に、反射層としても機能する電極である。有機発光層112は、複数の有機EL薄膜を備えている。ITO電極113は、ITO(インジウム錫酸化物)などの透光性且つ導電性をもつ画素電極である。
【0054】
反射型偏光板116は、入射光のうち特定の方向に振動する第1の直線偏光成分を反射させ、それに直交する方向に振動する第2の直線偏光成分については透過させる部材である。λ/4フィルム115は、直交する偏光成分の間に90度の位相差を生じさせる複屈折素子であり、円偏光(楕円偏光)を直線偏光に変換、あるいは円偏光を直線偏光に変換する。
【0055】
このような構成により、例えば左回りの円偏光はλ/4フィルム115により反射型偏光板を透過できる第2の直線偏光に変換され、反射型偏光板116を透過して射出される。一方、右回りの円偏光はλ/4フィルム115により反射型偏光板で反射される第1の直線偏光に変換され、反射型偏光板116によって反射され、金属陰極111に入射されて反射する際に左回りの円偏光に変換され、その後、λ/4フィルム115により反射型偏光板を透過できる第2の直線偏光に変換され、反射型偏光板116を透過して射出される。この場合には、表示装置の用途に応じて、各表示素子の特性を活かした映像を提示することができる。
【0056】
また、上述した実施形態における接眼レンズ220は、第1のレンズ221の界面が凹面に形成され、第2のレンズ222の界面が凸凹面に形成された構成としたが、これに限定するものではなく、第1のレンズ221及び第2のレンズ222は、一方の偏光方位角においてそれぞれの屈折率が一致するように接合され、それに直交する偏光方位角において相互に接触する各屈折材料の屈折率が異なる構成となればよい。例えば、図5(a)に示すように、第1のレンズ221aは、第2のレンズ222aとの界面が凸面に形成され、第2のレンズ222は界面が凹面に形成された構成としてもよい。なお、この場合であっても、凸面と凹面の曲面形状は同一である。
【0057】
この場合、複屈折材料から成る第2のレンズ222aにおける第1の屈折率noを1.66、第2の屈折率neを1.49とし、さらに、等方屈折材料から成る第1のレンズ221aにおける屈折率n1を1.66として、第2のレンズ222aにおいて第2の偏光方位角における屈折率neが、第1の偏光方位角の屈折率no=n1よりも小さくなる構成とする。このような構成でも凸レンズ作用を実現できる。
【0058】
さらに、上述した実施形態では、第1のレンズ221は、界面と対向する端面が平面に形成された平レンズとし、第2のレンズ222は、界面と対向する端面が平面に形成された平レンズとしたが、これに限定するものではなく、第1のレンズ221と第2のレンズ222との、界面と対向するそれぞれの端面の曲率が同一であればよく、例えば、図5(b)に示すように、湾曲状の端面A,Bとしてもよい。
【0059】
この場合であっても、第1のレンズ221b及び第2のレンズ222bは、それぞれの第1の偏光方位角の偏光に対する屈折率が相互に一致するように接合され、第2の偏光方位角において相互に接触する各屈折材料の屈折率が異なるようになり、その結果、偏光板212から射出されたp偏光と、表示装置101から放射されたs偏光とを、偏光ビームスプリッター210により合成して接眼レンズ220に入射させ、接眼レンズ220において、p偏光を屈折させることなく透過させるとともに、s偏光を屈折させて透過させて、観察者の眼前に、表示装置に表示される画像の拡大された虚像を観察可能に提示することができる。
【符号の説明】
【0060】
10,10a…ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、11…HMD本体、12…装着部、80…頭部、81…両眼、81a…左眼、100…表示画像生成手段、101,101a,101b,101c…表示装置、102…対物レンズ、102b…対物レンズ、103,103b…映像光分離装置、103a,103a…反射ミラー、110…偏光変換素子、111…金属陰極、112…有機発光層、113…ITO電極、115…λ/4フィルム、116…反射型偏光板、200…導光手段、210…偏光ビームスプリッター(合成部)、210a…第1の端面、210b…第2の端面、210c…第3の端面、210d…第4の端面、211…偏光反射面、212…偏光板、220…接眼レンズ、221,221a,221b…第1のレンズ、222,222a,222b…第2のレンズ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏光方位角における屈折率が第1の屈折率となる屈折材料で形成された第1のレンズと、
第1の偏光方位角における屈折率が第1の屈折率となるとともに、前記第1の偏光方位角とは異なる第2の偏光方位角における屈折率が前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率となる屈折材料で形成された第2のレンズと、を有し、
前記第1及び第2のレンズは、それぞれの前記第1の偏光方位角が相互に一致するように接合され、前記第2の偏光方位角において相互に接触する各屈折材料の屈折率が異なることを特徴とする偏光装置。
【請求項2】
前記第1のレンズは、前記第2のレンズとの界面が凹面に形成され、前記界面と対向する面が平面に形成された平凹レンズであり、
前記第2のレンズは、前記界面が凸面に形成され、前記界面と対向する面が平面に形成された平凸レンズであり、
前記凹面と前記凸面の曲面形状が同一であることを特徴とする請求項1記載の偏光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された偏光装置を備えた表示装置であって、
入射光のうち、前記第1の偏光方位角において振動する第1の偏光成分のみを透過する透過偏光部と、
前記第2の偏光方位角において振動する第2の偏光成分のみを放射する表示部と、
前記透過偏光部から射出された前記第1の偏光成分と、前記表示部から放射された前記第2の偏光成分とを合成して、前記偏光装置に入射させる合成部と、
前記表示部からの拡大された虚像を、前記偏光装置を通じて観察者の眼前に観察可能に提示する光学系と、
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記合成部は、
前記透過偏光部から射出された前記第1の偏光成分が入射される第1の端面と、
前記表示部から放射された前記第2の偏光成分が入射される第2の端面と、
前記第1の端面から入射された前記第1の偏光成分を透過させるとともに、前記第2の端面から入射された前記第2の偏光成分を反射させる偏光反射面と、
前記偏光反射面を透過した前記第1の偏光成分と、前記偏光反射面で反射された前記第2の偏光成分とを射出する第3の端面と
を備え、
前記透過偏光部は、前記第1の端面に配置された偏光板である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
前記表示部が液晶表示素子であることを特徴とする請求項3又は4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示部が、光を放射する面に、前記第2の偏光方位に振動する第2の偏光成分のみを透過させる偏光板或いは偏光変換素子を備えた有機EL表示素子であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−114022(P2013−114022A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259918(P2011−259918)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】