説明

偏平粒子及びその製造方法

【課題】 本発明の目的は、任意の扁平率や楕円率を有する異形粒子及びその粒子を工業的容易且つ安価に得る方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、粒子の長径と厚さの比が少なくとも2である偏平ポリマー粒子と、少なくとも2種類のポリマーが少なくとも2層を形成した粒子のポリマーの1種類を溶解或いは分解除去して、他のポリマーからなるポリマー粒子を製造するポリマー粒子の製造方法とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平ポリマー粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー微粒子の製法としては、(1)気相法、(2)液相法、(3)粉砕法などがある。それらの方法はそれぞれ化学的方法、物理的方法に区分できる。気相法では、ポリマー溶液或いはモノマー液の加熱下での噴霧法が主として行われているが、これは大型の設備が必要で且つ製造条件も非常に厳密な制御が必要であり、工業的には大きな困難がある。異形粒子の提案も幾つかなされているが、そこで異形とされている形状は粒子表面が凹凸である場合や多孔質の場合や、中央部に凹部を有する球状粒子の場合や、複数の粒子が接合した粒子などが提案されており、任意の形状を有し、かつ大きさがそろった粒子を工業的に容易にまた安価に製造することについては提案も示唆もなされていない(特許文献1参照)。
【0003】
液相法では、溶解度差を利用した共沈法、均一沈殿法、或いはモノマー懸濁液やモノマーエマルションからの重合方法等があるが、粒子径の分布が大きい、粒子径の制御が非常に困難である、表面の平滑性に乏しい、生成粒子の凝集がある、分離精製が困難である、界面活性剤や凝集剤が微粒子中に残存し用途によっては悪影響を及ぼす、また、生産性が低くコストが高く実用性に乏しい等の問題点がある。また、異形粒子の提案もわずかになされているが、そこでは異形粒子の定義が明確でなく、例えば、単に粒子表面に突起を有する粒子、凹部を有する粒子、複数の粒子が接合している粒子、がある。これらの提案では、表面の平滑性や任意の異形形状付与は期待できない(特許文献2参照)。
【0004】
粉砕法では、ガラス転移点が高いポリマーや架橋ポリマーでは比較的機械的粉砕は容易であるが、ガラス転移点や軟化点の低いポリマーや分子量が高いポリマー或いは熱的に不安定なポリマーでは機械的粉砕は粉砕粒子相互の粘着や分解などが生じやすく非常に困難である。また、機械的粉砕物は粒子が一定サイズ以下に出来ないこと、粒子の径の分布が大きいこと或いは粉砕の熱で粒子同士の凝結が大きいこと或いは形状がそろった形状の粒子を得ることは困難で、また、表面形状も多くの凹凸をし平滑な表面を得ることは困難であることなど、多くの問題点を有している(特許文献3参照)。
【0005】
上述の技術的困難さを解決する為に本発明者は特開2006−176713号公報にて工業的容易且つ安価な微粒子の提案を行っている(特許文献4参照)。しかし、この提案では真球状の粒子は製造可能であるが、任意の扁平率や楕円率を有した異形粒子は製造することが出来ない。一方、偏平粒子や楕円球状粒子は滑り性、隠蔽率、反射率、光沢等多くの有用性がある。上述の点から、本発明では任意の扁平率や楕円率を有する異形粒子を工業的容易且つ安価に得る方法の提案を行う。
【特許文献1】特開2001−247790号公報、特表2002−506890号公報、特開2003−226708号公報、特開2004−27008号公報、特開2006−143968号公報。
【特許文献2】特開平6−206950号公報、特開平5−86203、特開平6−100702号公報、特開平10−7704号公報、特開平11−181037号公報、特開2001−172337号公報。
【特許文献3】特開2004−130305号公報、特開平7−242749号公報、特開2006−178195号公報。
【特許文献4】特開2006−176713号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明方法は、上述した従来技術の種々の問題点を解決し、ポリマーや材料の種類に依存されず目的とする扁平粒子を工業的容易にかつ安価に得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1は、粒子の長径と厚さの比が少なくとも2である偏平ポリマー粒子。
【0008】
本発明の2は、ポリマーが熱可塑性ポリマー或いは熱硬化性ポリマーである請求項1のポリマー微粒子。
【0009】
本発明の3は、粒子中に無機或いは有機フィラーを含有した請求項1のポリマー微粒子。
【0010】
本発明の4は、少なくとも2種類のポリマーが少なくとも2層を形成した粒子のポリマーの1種類を溶解或いは分解除去して、他のポリマーからなるポリマー粒子を製造するポリマー粒子の製造方法。
【0011】
本発明の5は、請求項4に示すポリマーの1種に有機或いは無機フィラーを含有させて、該ポリマーを残存させた粒子中に無機或いは有機フィラーを含有したポリマー微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、従来の製造方法では工業的容易かつ安価に製造することが困難であった各種材料やポリマー材料を用いて異形粒子を得ることが可能となり、且つ従来では微粒子に分散させるために必要であった分散剤や界面活性剤を必要としないために不純物の少なく、化学的にも物理的にも均質な微粒子を得ることが出来るようになり、従来の微粒子では得られなかった性能、物性の発現が可能となり、さらに、偏平粒子のために、用途によっては使用量を大幅に減少させることができるなどの多くの特徴を有する。例えば、表面が平滑である為に、透明性(光透過率)や滑性、混合性、流動性、増粘性が優れ、また、偏平粒子のために、滑り性、反射率、隠蔽性等に優れる。また、粒子中に有機或いは無機フィラーを容易に含むことができるために、そのフィラーが有する特徴、例えば、導電性、遮蔽性、着色、光感光性、紫外線遮蔽、消臭性、感熱性、感圧性、その他の特徴の付加が少量の添加で容易となる。こうした各種のフィラーを微小な粒子中に添加・含有させることは上述した従来の方法では困難であった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。尚、本明細書において特に明記しない限り「部」は、「質量部」を意味する。
【0014】
本発明の微粒子は、長径と厚さの比が少なくとも2、好ましくは少なくとも3、更に好ましくは少なくとも4である偏平ポリマー粒子である。粒子の長径と厚さの比をこの値とすることによって、球状粒子では得られなかった性能を発揮することができる。例えば、上述した滑り性、反射率、隠蔽性に優れる。或いは導電性であれば従来の球状粒子であれば接触が点接触になり導電のパスが非常に狭いものであったが、本発明に偏平粒子であれば接触がメントなり、より少量の粒子によって導電性能が得られる。粒子の長径とは粒子の最も長い直径を示し、厚さは偏平な粒子の最も薄い厚さを示す。扁平率は便宜的に、(長径+短径)/2/厚さで表す。具体的には光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡によって、粒子を傾けながら粒子の大きさを測定することやレーザー顕微鏡によるプロファイルの測定によって評価できる。粒子の形状は上記で定義した粒子であれば特に限定しないが、好ましくは少なくとも一面、更に好ましくは2面、特に好ましくは向かい合う2面がほぼ平面を形成する。
【0015】
ここで使用するポリマーは、公知の熱可塑性ポリマー或いは熱硬化性ポリマー或いはこれらの混合物が使用できる。熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン類、ポリプロピレン類、ポリエチレンプロピレン、ポリスチレン類、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン4等のポリアミド類、ポリ4メチルペンテン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル・スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アリル樹脂類、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、メタクリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル樹脂、オレフィンビニルアルコール共重合体、石油樹脂、ポリアセタール、ポリアリルスルフォン、ポリベンゾイミダゾール、ポリブチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルフォン、ポリケトン、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ブタジエン−スチレン樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレンプロピレンジエン、クロロプレン、ブタジエン、ニトリルゴム、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム等の熱可塑性エラストマーの中から、上述した混和性を有するが非相溶の組み合わせのポリマーが使用可能である。これらの樹脂は高分子であっても或いはオリゴマー程度のものであってもよく、目的に応じて適宜用いられる。
【0016】
熱硬化性ポリマーとしては、不飽和ポリエステル系、フェノール系ポリマー、メラミン系ポリマー、ユリア系ポリマー、ジアリルフタレート系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、など、公知のポリマーの中から使用することができる。
【0017】
本発明の粒子中に無機或いは有機フィラーを比較的多量に含有することができる。このことも従来提案されている粒子との大きな違いであり、本提案の新規な特徴の一つである。無機粒子としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、金属微粒子、導電性金属化合物等の導電性フィラー、鉄、コバルト、ニッケルなどの金属や、金属酸化物よりなる磁性フィラー、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、スズ酸亜鉛などの難燃性フィラー、シリカ、チタニア、酸化亜鉛、酸化鉄などの紫外線吸収フィラー、ゼオライト系、酸化チタン系或いはガラス系抗菌剤フィラー、炭化ケイ素ウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウム、繊維状ゾノトライト、チタン酸カリウム繊維、チタン酸カリウムウィスカー、シリコンカーバイトウィスカー、炭酸カルシウムウィスカーなどのウィスカー、などの無機フィラーや各種有機顔料、各種有機ポリマーの微粒子、繊維構造物、などが使用できる。こうしたフィラーの大きさはポリマー粒子の大きさより小さいほうが好ましいが、多少大きくても使用は可能である。例えば、フィラーがCNTやマイクロセルロースファイバーのようにアスペクト比が大きい場合は、粒子の外側までそれらのフィラーがはみ出しており、例えばCNTである場合は、導電性がよりすぐれることになる。
【0018】
本発明の粒子は、少なくとも2種類のポリマーが少なくとも2層を形成した粒子のポリマーの1種類を溶解或いは分解除去して、他のポリマーからなるポリマー粒子を製造することを特徴とする。ここで使用するポリマーは、上述した熱可塑性ポリマー及び/或いは熱硬化性ポリマーから選定できる。好ましくは、使用するポリマーは非相溶であることが好ましい。相溶性が大きいと、少なくとも2種類のポリマーからなる粒子から一方のポリマーを溶解或いは分解除去する時に、方法に限定されたり、時間がかかったり、収率が低下することがある。例えば、ポリエステルの偏平粒子を製造する場合は、他のポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン4等のポリアミド、ポリ4メチルペンテン、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリル・スチレン共重合体(ACS樹脂)、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、EVA樹脂、メタクリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル樹脂、などが好ましく使用できる。
【0019】
ナイロンの偏平粒子を製造する場合は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブタジエン、ポリスチレン、アクリル・スチレン共重合体(ACS樹脂)、ASA樹脂、エチレン−α―オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、EVA樹脂、メタクリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル樹脂、オレフィンビニルアルコール共重合体、石油樹脂、ポリカーボネート、などが使用可能である。
【0020】
ポリマーの構造は少なくとも2種類のポリマーが少なくとも2層、好ましくは各層の厚さが最終的に得られる粒子の厚さより薄い層として存在することが好ましい。更に好ましくは、各層の厚さが最終的な粒子の厚さの高々1/2である。こうした層構造を有する粒子は、例えば、まず2種のポリマー(例えば、A、B)からなる層状構造物を形成し、ついで、その構造物を、A、Bのいずれとも相溶でない第3のポリマー(例えば、C)にブレンドしてA,Bの構造体からなるポリマー粒子をポリマーCのマトリックス中に形成させる。A、Bポリマーからなる層状構造体は、ポリマーA及びBを、成形ヘッド内にて層状になるように設計したり、或いは、静的混練素子(例えば、スタチックミキサーなど)にて多層化することで実現できる。精度の高い方法は前者であるが製造設備の大きさに制限が出たり、コストが高くなったりする。後者はどのような製造設備にも対応可能であるが、使用するポリマーの性状(溶融温度、粘度、耐熱性、など)によっては制限受ける場合もある。このA/Bからなる構造体はそのままでもCにブレンドする事は出来るが、ブレンドする前に構造体を一軸方向に延伸したり、或いは2軸方向に延伸したり圧延したりして、A/Bの層構造をより小さくしておくことも好ましい。
【0021】
この1軸方向や2軸方向への延伸や圧延は通常使用されている繊維やフィルム・シートの方法によっても好ましく行う事が出来る。こうして形成させたA/B層状構造体をポリマーCに溶融混練する。ポリマーCはポリマーA及びB共に相溶性がないために、ポリマーA及びBの層状構造体は、ポリマーC中に粒子として分散する。分散した粒子では、ポリマーA及びBの層状構造が維持されている。このポリマーCのマトリックス中に分散したポリマーA及びBの層状構造よりなる粒子を含有したポリマー構造体を、ポリマーCを溶解或いは分解する溶剤或いは雰囲気中において、マトリックスのポリマーCを除去して、2種のポリマーの層状構造を有する粒子を生成する。A、Bポリマーからなる層状構造体とポリマーCのブレンド比率は、ポリマーCが海成分を形成し、ポリマーA,Bからなる層状構造体が島成分を形成するような組成であれば、いずれの組成も可能であるが、通常は、ポリマーCの体積がポリマーA+Bより多くなるようにする。更に好ましくは、(A+B)/C=40/60〜20/80(重量部)である。ポリマーCが60重量部より少なくなればポリマーCの一部も島成分を形成することもあり、また、80重量部を超えると一回の操作での粒子の収率が低下し、経済性が低下する。
【0022】
ポリマーC中でのポリマーA,Bの層状構造体からなる粒子のサイズは、2種のポリマー(例えば、A、B)からなる層状構造物とA、Bのいずれとも相溶でない第3のポリマー(例えば、C)とをブレンドする際の、混合比率や混合の剪断速度の調整や、それら間の相溶性の調整にて制御できる。例えば、2種のポリマー(例えば、A、B)からなる層状構造物と第3のポリマー(例えば、C)との比が小さい場合は、粒子の形状は小さくなる傾向にあり、また、混合する場合の剪断速度を大きくすることによって粒子のサイズを小さくすることができる。又、それらの間の相溶性を大きくすると粒子は小さくなる傾向にある。層状構造物とA、Bのいずれとも相溶でない第3のポリマー(例えば、C)とのブレンドに際しては、公知のポリマーブレンドの方法が可能である。例えば、1軸或いは2軸、或いは更に多軸の溶融混練機、バッチ式のニーダー、スーパーミキサー、或いは、それらの組み合わせ或いはスタチックミキサーに代表される静的混練素子を組み合わせた混練機等の混練機が使用出来る。中でも、攪拌力が大きく、且つ連続で使用可能な2軸混練機が好ましい。2軸混練機には混練効率を上げるために混練機の先端に静的混練機を接続することも好ましい。或いは、混練時間や混練の剪断力をそれぞれ制御できるニーダー、スーパーミキサーなどが好ましい。
【0023】
2種類のポリマーの層状構造を有する粒子をいずれか一方のポリマーを溶解或いは分解させる溶剤にて処理することによって、1成分だけ残存した偏平の粒子を製造できる。或いは、A/B2種のポリマーに対してそれぞれ膨潤度が異なる溶液、混合溶液或いは蒸気に接触させることにより、AとBとの界面からA層とB層を剥離させ、2種の偏平な粒子を得ることも可能である。粒子が2層に分かれている場合は、半球状の粒子が得られ、粒子が4層に分かれている場合は、偏平の粒子と一部半球状の粒子が生成する。粒子の層の数が多いほど、偏平率や生成する粒子の数は多くなる。
【0024】
ポリマーの1種に有機或いは無機フィラーを含有させて、該ポリマーを残存させた粒子中に無機或いは有機フィラーを含有したポリマー微粒子を得ることも好ましい。使用するフィラーとしては上述したフィラーが使用できる。フィラーの添加は最終的に該提案の偏平粒子成分となるポリマー成分(AまたはB)に定法により予め添加ブレンドしておくことによって可能である。フィラーの添加量は目的と必要とする性能によって、適宜決定すればよく、特に限定されない。本発明の特徴として、フィラーの種類や添加量に殆ど制限を受けず粒子中にフィラーを添加することが可能なことも上げられる。この特徴は、従来知られているフィラー添加の微粒子の製造方法の中では極めて特徴あることである。フィラーを添加したポリマーを破砕して粒子とする方法では可能でたったが、この破砕方法では、偏平微粒子や表面平滑な粒子は勿論であるが、均一な形状を有する粒子は原理的に得ることは困難であった。球状の粒子を得る重合法では任意のフィラーを任意の比率で粒子中に添加することが不可能であった。こういう点からも、本発明方法の極めて新規で有用な点が明確になる。ポリマーの流動性はフィラーを高含有率で添加した場合、溶融粘度が増大する傾向にある為に、フィラーのサイズと添加量によって、ポリマーの分子量の調整や粘度低下剤・可塑剤或いは溶剤を使用することは好ましい。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれになんら制限されるものではない。実施例中の、部、%は特に明示しない限り、質量部、質量%を示す。
【0026】
粒度分布は水或いはエタノール溶剤に適当な濃度で分散してマイクロトラック(モデルUPA150:日機装(株)製)で測定した。
【0027】
(実施例1)
ポリスチレン(帝人化成 パンライト K−1300Y)とナイロン66(レオナ1300S(旭ケミカル(製))の厚み0.1mmのシートを2mmになるよう積層し、260℃の温度で厚さ0.2mmにプレスし、再度それを交互に積層して2mmの厚さにして、更に260℃で厚さ0.2mmにプレスした。こうすることによって、厚さ約1μmのポリスチレン層とポリカーボネート層が積層した多層シートができる。ついで、260℃に加熱したラボプラストミルにて、PVA(クラレ エクセバール)65部と上記多層化シートの破断物を35部投入して、10分間、500rpmの攪拌速度にて溶融混合した。混合物は白化しており、エマルジョン化(ポリマー/ポリマーエマルジョン)していることがわかる。エマルジョンの粒子のサイズは光学顕微鏡にて測定すると、高々10μmの粒子であることがわかる。ついで、この混練物を熱水に投入してPVAを溶解させる。PVAは容易に溶解して、ポリスチレンとナイロンの多層物からなる粒子が生成する。この粒子を遠心分離(例えば、10000rpm×5分)処理して、粒子を回収する。熱水溶解・遠心分離の処理は必要に応じて複数回行うことも可能である。回収した粒子は、ついで、ポリスチレンの溶剤でナイロンの非溶剤であるトルエンにて処理する。150℃程度で還流処理することによって容易にポリスチレン部分を溶解でき、ナイロン部分だけでなる粒子を生成することができる。ナイロン粒子は上述した遠心分離法にて容易に分離回収できる。ポリスチレンの溶解処理・遠心分離の走査も必要に応じて多数回行うこともできる。生成した粒子をSEM観察すると偏平粒子が観察される。その一例を添付図1に示す。偏平であることを示すために、添付図1に示すように観察角度を変えて観察した。その結果、粒子の長径は約1.2μm、厚みは約0.24μmの偏平率(長径/厚み)5.0であることがわかった。
【0028】
(実施例2)
ナイロンとポリエステル成分からなる多層構造マルチフィラメント(クラレ(株)ランプ)を解繊し30mm程度に切断したものを30部、PVA(クラレ エクセバール)70部を270℃に加熱したラボプラストミルにて500rpmで10分間溶融混練した。混練物は白化しており、相分離構造を形成していることを示す。混練物を熱いうちにプレスして厚さ0.5mmにシートにした。次いで、このシートを粉砕し、沸騰水にて5時間処理し、ナイロンとポリエステルからなる粒子を採取した。この粒子を遠心分離(例えば、10000rpm×5分)処理して、粒子を回収する。熱水溶解・遠心分離の処理は更に2回繰り返し、最終的には風乾して粒子を得た。回収した粒子は、ほぼ数μmの球形の粒子である光学顕微鏡にて確認した。この粒子をポリエステル成分の加水分解剤である4%の熱苛性ソーダ溶液にて約3時間処理した。処理中に溶液の透明性が増加し、粒子サイズが細かくなっていくことを確認する事が出来る。処理後、遠心分離(10,000rpm×30分)して、ナイロン成分からなる粒子を採取した。ナイロン粒子を熱水にて洗浄、遠心分離の作業を3回繰り返し、最終的には風乾して微粒子を採取した。採取した粒子を光学顕微鏡、SEM(図3)及びレーザー顕微鏡で観察し、非常に平滑な偏平粒子であることがわかった。図4に示すレーザー顕微鏡による粒子プルファイルの観察から、長径2.96μm、短径2.59μmのほぼ円形で厚さ0.36μmの扁平率が7.71のナイロン偏平粒子である事が示された。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1の偏平粒子のSEM写真で、粒子を真上から観察したSEM写真
【図2】実施例1の偏平粒子のSEM写真で、粒子を真上から30°斜め方向から観察したSEM写真
【図3】実施例2の偏平粒子のSEM写真で、粒子を真上から観察したSEM写真
【図4】実施例2の偏平粒子のレーザー顕微鏡による形状プロファイルを示す。縦軸が粒子の厚さ(μm)を示し、横軸が粒子の幅(μm)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の長径と厚さの比が少なくとも2である偏平ポリマー粒子。
【請求項2】
ポリマーが熱可塑性ポリマー或いは熱硬化性ポリマーである請求項1のポリマー微粒子。
【請求項3】
粒子中に無機或いは有機フィラーを含有した請求項1のポリマー微粒子。
【請求項4】
少なくとも2種類のポリマーが少なくとも2層を形成した粒子のポリマーの1種類を溶解或いは分解除去して、他のポリマーからなるポリマー粒子を製造するポリマー粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項4に示すポリマーの1種に有機或いは無機フィラーを含有させて、該ポリマーを残存させた粒子中に無機或いは有機フィラーを含有したポリマー微粒子の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−1759(P2009−1759A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166971(P2007−166971)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(591167430)株式会社KRI (211)
【Fターム(参考)】