説明

健康組成物

【課題】 脳虚血、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経性疾患には神経成長因子(NGF)が必要なことから、NGF様作用を有し、且つ食品として使用されている安全な植物を利用して通常の食事形態をとりながら摂取・服用が可能である神経性疾患の予防及び治療に有用な健康組成物を提供する。
【解決手段】 神経細胞突起伸展作用を有する置換シクロヘキセンを含有するインドネシア産のショウガ科植物のジャワショウガを神経疾患の予防、改善及び治療のために飲食品、健康食品、特定保健用食品、エキス剤、各種治療製剤などの健康組成物に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経細胞突起伸展作用を有する置換シクロヘキセンを有効成分として含有する植物を利用する健康組成物に関する。即ち、神経細胞突起伸展作用を有する置換シクロヘキセンを有効成分として含有する植物を利用することにより、脳虚血、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経性疾患の予防及び/又は治療に有用な飲食品及び植物エキス並びに神経疾患の予防及び治療剤を包含する健康組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の進行に伴って老人性認知症(痴呆)が増加傾向にあり、社会問題となってきている。老人性認知症としてはアルツハイマー病や脳血管性認知症が知られているが、アルツハイマー病はアセチルコリンエステラーゼ阻害薬などによる治療が試みられているものの限定的であり、病因が不明で進行性のために未だ有効な治療法がない。そこで、神経細胞の成長、突起形成や活動維持には神経細胞栄養・神経成長因子(以下NGFと記す)が必要なことから、認知症の予防及び治療のためにNGF産生促進物質又はNGF様作用物質の開発が強く望まれている。
【0003】
また、このNGFは、特にアルツハイマー病において顕著な脱落を起こすニューロン群として前脳基底野のマイネルト基底核コリン作動性ニューロンに作用する神経栄養因子であることから、アルツハイマー病の治療に直接用いる試みがなされているが(非特許文献1)、高分子のタンパクであるために血液脳関門を通過できないので、脳室内投与となり、問題が多い。それ故、神経細胞賦活作用に関しての出願が種々されている。食品に使用される植物由来の例としては、ミカン科植物由来のポリアルコキシフラボノイド(特許文献1)、シキミ科植物に含まれるトリシクロイリシノン(特許文献2)並びにローズマリー及びセージ由来のカフェ酸及びカルノシン酸(特許文献3)が開示されている。
【0004】
日本でよく使用されているショウガ科植物の成分としては、ジンゲロール、クルクミン、クルクメンなどが知られているが(非特許文献2)、インドネシア産のショウガ属植物には血小板活性化因子拮抗作用(特許文献4)及びケモカイン発現阻害作用(特許文献5及び6)を示す置換シクロヘキセン化合物が含まれていることが開示されている。しかし、神経細胞に関しての記載はなされていない。
【特許文献1】特開2002−60340号公報
【特許文献2】特開2005−139153号公報
【特許文献3】特開2007−230945号公報
【特許文献4】特開2001−192339号公報
【特許文献5】特開2003−306438号公報
【特許文献6】特開2004−269450号公報
【非特許文献1】生化学辞典第3版(今堀和友、山川民夫監修)、P.711、東京化学同人(1998)
【非特許文献2】食品薬学ハンドブック(北川勲、吉川雅之編)、PP.54、122、講談社(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、食品として使用されている安全な植物を利用することにより、通常の食事形態をとりながら摂取・服用が可能であって脳虚血、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経性疾患の予防及び/又は治療に有用な健康組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、インドネシア産のショウガ科植物のジャワショウガが神経細胞突起伸展作用を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、神経細胞突起伸展作用及び神経細胞死保護による脳虚血、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経性疾患の予防及び/又は治療に有効な置換シクロヘキセン成分を含有するジャワショウガを利用する健康組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、東南アジアでよく食されているジャワショウガは安全であり、神経細胞突起伸展作用を有するので、神経細胞の成長、突起形成や活動が賦活されて脳虚血、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経性疾患の予防及び治療に貢献できる。また、このような作用を有する置換シクロヘキセン成分を含有するジャワショウガを利用した飲食品及び植物エキス並びに神経疾患の予防及び治療剤を包含する健康組成物を摂取又は服用して日常生活の中で神経性疾患の予防或いは治療に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で言う下記式(1)で表される置換シクロヘキセンとは、

【化3】









(式中、R1、R2、R3及びR4はヒドロキシ基又はC1〜C6の低級アルコキシ基である)
3位の絶対配置がR及び/又はS配置であって4位の絶対配置がR及び/又はS配置である化合物を指し、
3位と4位の立体配置がトランスを示す下記式(2)で表される置換シクロヘキセン
【化4】









3位と4位の立体配置がシスを示す下記式(3)で表される置換シクロヘキセン
【化5】









及び3位と4位の立体配置がトランスを示す下記式(4)で表される置換シクロヘキセン



【化6】









が好ましく、これらの少なくとも1種が有効成分として含有することが好ましい。
い。
【0009】
本発明で言う植物とは、置換シクロヘキセンを成分として含有する植物のことであり、好ましくは熱帯・亜熱帯地方に生える植物である。更に好ましくは熱帯・亜熱帯地方に生えるショウガ科の植物である。
【0010】
本発明で言うジャワショウガはショウガ科ショウガ属に属し、熱帯・亜熱帯地方に生える植物のことであり、その中のバングレ(別名ベングル、学名Zingiber purpureum Roxb.、インドネシア名Bangle、Bengle)及び/又はポンツクショウガ(学名Zingiber cassumunar Roxb.、インドネシア名Bangle、Bengle)は、東南アジアで広く栽培され、インドネシアではジャムー(民間薬)として食されている。本発明においては全草を利用することができるが、根茎を使用することが好ましく、乾燥或いは未乾燥の何れでも使用することができる。
【0011】
使用形態としては、未乾燥植物をカットして得られる固形状物、未乾燥植物を湿式粉砕機で粉砕して得られるペースト状物、これを凍結乾燥機又は乾燥機で乾燥して得られる固形状物、更にこれを粉砕するか或いは乾燥植物を破砕機又は粉砕機で粉砕して得られる破砕状又は粉末状物、乾燥又は未乾燥植物を裁断機やスライサーで裁断して得られるスライス状物などが挙げられ、そのまま或いは加熱加工やエキス化などして健康組成物に利用する。
【0012】
エキスは、前記のような固形状物、ペースト状物、破砕状物、粉末状物及びスライス状物を一般的方法により水及び有機溶媒の単独又は混合してなる抽出溶媒で抽出して得ることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールなどのアルコール類(ジオール、トリオールを含む)、ジエチルエーテル、セルソルブ、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、セルソルブアセテートなどのエステ類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸、氷酢酸、プロピオン酸などの有機酸、2−アミノエタノール、ピリジン、モノメタノールアミンなどのアミン類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、1、2−ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられ、単一若しくは混合して用いる。
【0013】
上記エキスは、シリカゲル、ポーラスポリマー、逆相カラムクロマトグラフ法又はゲル濾過クロマトグラフ法などにより分離することができ、更に精製して前記式(1)〜(4)の化合物を得ることができる。
【0014】
本発明で言う健康組成物とは、神経疾患の予防及び/又は治療のために摂食及び服用できる飲食品、健康食品、予防剤及び治療剤のことである。
【0015】
飲食品とは、置換シクロヘキセンを有効成分として含有する植物及び/又はエキスを含有又は配合する飲食物のことであり、健康食品、更には特定保健用食品とすることもでき、前記固形状物、ペースト状物、破砕状物、粉末状物、スライス状物及びエキスをそのまま、或いは従来食品に使用されている各種成分と共に配合することにより製造される。食品の形態としては、固形食品、クリームやジャム状の半流動食品、ゲル状食品、飲料等のあらゆる食品形態とすることができ、例えば、顆粒、錠剤、カプセル、ドリンク剤などの製剤、常用されている任意の基材を配合する清涼飲料、ジュース、コーヒー、紅茶、リキュール、牛乳、乳清飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト、飴(キャンデー)、キャラメル、チューインガム、チョコレート、グミ、アイスクリーム、プディング、卵製品、羊羹、水羊羹、おかき、餅、団子、煎餅、クレープ、お好み焼き、パン、クッキー、麺類、ハンバーグ、水練製品、てんぷら、発酵食品などの飲食物が挙げられる。
【0016】
必要ならば、明日葉、甘茶、アマチャヅル、アロエ、イチョウ葉、ウーロン茶、ウコン、ウラジロガシ、エゾウコギ、エゾウコギ、オオバコ、カキオドシ、柿、カミツレ、カモミール、カリン、ガルシニア、河原決明、菊花、クチナシ、グネツム、桑、クコ、月桂樹、紅茶、紅豆杉、コンフリー、昆布、桜、サフラン、シイタケ、シソ、ショウガ、しょうが、スギナ、スワンギ、セキショウ、センダングサ、センブリ、ソバ、タマリン度、タラノキ、タンポポ、チコリ、杜仲、ナタマメ、ニワトコ、ネズミモチ、ハトムギ、ハブ、松葉、マテ、麦茶、メグスリノキ、ユーカリ、ヨモギ、羅漢果、緑茶、ルイボス、霊芝、ガランガル、ギムネマ、グァバ葉、ゲンノショウコ、玄米、ゴボウ、ドクダミ、バナバ、ビワの葉、紅花などのいわゆる生薬・健康茶及びそれらの抽出物などを添加配合してもよい。
【0017】
必要に応じてエリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、デキストリン、サイクロデキストリンなどを混合して苦味や渋みをマスクすることができる。
【0018】
予防剤及び治療剤とは、置換シクロヘキセンを有効成分として含有する植物及び/又はエキス更には前記式(1)〜(4)の化合物の少なくとも1種を主として含有又は配合し、任意の助剤、賦形剤などを配合して固形剤化、或いは水または有機溶媒などを適宜配合して液剤化した製剤のことである。
【0019】
本発明の健康組成物を、神経性疾患などの改善あるいは予防のために飲食品として用いるにあたり、飲食品としての風味や色調を考慮すると、植物及び/又は植物エキスの配合量は乾燥重量換算で0.01〜90%の範囲、好ましくは、0.05〜80%の範囲である。本発明の健康組成物は、その種類に応じてブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖などの甘味料、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸などの酸味料、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウムなどの酸化防止剤、グリセリン、プロピレングリコールなどの品質改良剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどの乳化剤、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天などの糊料(増粘剤、安定剤、ゲル化剤)、ビタミン類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウムなどの強化剤、アミノ酸などの調味料、カルシウム塩類、着色料、膨張剤、着香料、保存料など、一般的飲食品原料として使用されているものを適宜配合して製造することができる。
【0020】
本発明の健康組成物を、神経性疾患などの改善あるいは治療のために経口剤として用いる場合の服用(投与)量は、服用の目的や服用者の状況(性別、年齢、体重、肥満度、総合的健康度合いなど)により異なるが、通常、1日の服用量として、植物エキス(抽出物量として)を重量換算で、1〜500mg/体重kgの範囲で服用することができる。原料の植物は常食にされているので500mg/体重kgを超える服用も何ら問題はない。また、動物にあっても同様に適用することができる。
【0021】
また、目的に応じて通常動物飼料に用いられている各種成分を適宜配合して粉末、顆粒、ペースト、カプセル、シロップ、固形状、ゲル状、液状、懸濁液、乳液などの形態とすることにより家畜用飼料やキャットフード、ドッグフードやウサギ用フードなどのペットフードなどの動物飼料とすることができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1(粉末の製造)
ジャワショウガの乾燥物5kgを粉砕機で粉砕してジャワショウガ粉末4.7kgを得た。
【0024】
実施礼2(エキスの製造)
バングレ5kgの裁断物をメタノール40Lに2週間浸漬し、抽出液を減圧濃縮乾固してバングレエキスを350g得た。
【0025】
実施礼3(前記化合物の製造)
実施例2のバングレエキス(23.9g)を水/酢酸エチルで分配し、酢酸エチル層を減圧下溶媒留去して20.1gを得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=3:2)により、10個のフラクションに分画した。フラクション6(1.585g)を逆相(ODS)カラムクロマトグラフィー(溶出液:80%メタノール)により8個のフラクションに分画した。フラクション6(307mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:塩化メチレン/酢酸エチル=19:1)により8個のフラクションに分画した。フラクション2(69mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=7:3)により4個のフラクションに分画した。フラクション3(58mg)を逆相(ODS)カラムクロマトグラフィー(溶出液:90%メタノール)により分離精製して化合物2(33mg)、化合物3(18mg)及び化合物4(1mg)を得た。
【0026】
化合物2、トランス−3−(3、4−ジメトキシフェニル)−4−[(E)−3、4−ジメトキシスチリル]シクロヘキサ−1−エンの機器分析データ:IR(cm−1 :1582、1515、1260、1232、1139;PMR(重クロロホルム、90MHz);6.74(1H、m、H−5‘)、6.74(1H、m、H−2”’) 、6.74(1H、m、 H−6”’)、6.74( 1H、m、H−5”’)、6.74(1H、m、H−6‘)、6.74(1H、m、H−2’)、6.19(1H、d、J=15.0 Hz、H−2“)、5.88(1H、dd、J=15.0、2.0 Hz、H−1”)、5.47−5.90(2H、m、H−1、2)、3.85、3.83又は3.81(12H、s、OCH)、3.17(1H、m、H−3)、2.17( 1H、m、H−4)、2.17(2H、m、H−6)、1.88(2H、m、H−5)。
【0027】
化合物3、シス−3−(3、4−ジメトキシフェニル)−4−[(E)−3、4−ジメトキシスチリル]シクロヘキサ−1−エンの機器分析データ:IR(cm−1 :1582、1510、1268、1255、1139;PMR(重クロロホルム、90MHz);6.71(1H、brs、H−5‘)、6.71(1H、brs、H−2”’) 、6.71(1H、brs、 H−6”’)、6.71( 1H、brs、H−5”’)、6.71( 1H、brs、H−6‘)、6.71( 1H、brs、H−2’)、6.24(1H、d、J=16.0 Hz、H−2“)、5.51(1H、dd、J=16.0、9.0 Hz、H−1”)、5.56−6.07(2H、m、H−1、2)、3.85、3.83又は3.81(12H、s、OCH)、3.51(1H、m、H−3)、2.69( 1H、m、H−4)、2.24(2H、m、H−6)、1.68(2H、brt、J=7.0 Hz、H−5)。
【0028】
化合物4、トランス−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−4−[(E)−3、4−ジメトキシスチリル]シクロヘキサ−1−エンの機器分析データ:IR(cm−1 :3443、1650、1541、1255、1027;PMR(重クロロホルム、400MHz);6.83(1H、brs、H−5‘)、6.81(1H、d、J=1.4 Hz、H−2”’) 、6.78(1H、dd、J = 9.4、1.4 Hz、H−6”’)、6.77( 1H、d、J=9.4 Hz、H−5”’)、6.69(1H、dd、J=8.0、1.8 Hz、H−6‘)、6.67(1H、d、J=1.8 Hz、H−2’)、6.10(1H、d、J=16.2 Hz、H−2“)、6.02(1H、dd、J=16.2、7.2 Hz、H−1”)、5.89(1H、brdd、J=10.1、2.6 Hz、H−1)、5.67(1H、dd、J=10.1、2.4 Hz、H−2)、3.86、3.83又は3.82(9H、s、OCH)、3.16(1H、dd、J=8.2、2.4 Hz、H−3)、2.33( 1H、brd、J=8.2 Hz、H−4)、2.21(2H、m、H−6)、1.92(1H、brdd、J=12.8、2.8、H−5)、1.66(1H、m、H−5)。
【0029】
実施例4(神経細胞突起伸展作用)
ラット副腎髄質褐色細胞PC12を、ラット尾由来コラーゲンでコーティングされた培養フラスコ内の10%HS、5%FBS及び1%ペニシリン−ストレプトマシン含有DMEM培地中、湿度95%、二酸化炭素5%、37℃環境下のインキュベーター内で培養後、PC12細胞を単離した。この細胞(2000細胞/cm)をコラーゲンコーティング48ウエルプレートの各ウエルに播種し、10%HS、5%FBS含有DMEM培地中24時間同環境下のインキュベーター内で培養した後、試料を含む2%HS、1%FBS含有DMEM培地に交換した。同環境下96時間培養後、細胞形態を顕微鏡観察して突起の伸展を確認及び写真撮影した。試料調製は、実施例2で製造したバングレエキスの場合20mgを50%エタノールに溶解し、実施例3で単離した化合物の場合50%エタノールに溶解後培地で100倍希釈、又はDMSOに溶解後培地で1000倍希釈して行った。陽性対照にはNGF10ng/mLを使用した。
【0030】
試験の結果を図1に示す。図に示す通り、対照では神経突起伸展が全く認められなかったのに対し、本発明のバングレエキスでは濃度25μg/mLで陽性対照のNGFと同等の神経突起伸展活性が見られ、化合物2、3及び4の何れも1μMより神経突起伸展が現れ、10μMから濃度依存的に神経突起伸展活性が増加して20μMでNGFと同等となり、30μMでははっきりとした伸展突起があり、50μMでは更に突起が長く伸びていた。
【0031】
実施例5(錠剤の製造)
実施例2のバングレエキス100g、デキストリン(マックス1000、松谷化学製)100g、乳糖200g及びステアリン酸マグネシウム2gを混合し、本混合物を単発式打錠機で打錠し、直径8mm、重量200mgの錠剤(バングレエキス99mg含有)を製造した。
【0032】
実施例6(硬カプセルの製造)
実施例2のバングレエキス100g、コーンスターチ30g、アビセル20g及びりん酸一水素カルシウム10gを混合し、本混合物をゼラチンカプセルに充填して硬カプセルを製造した。
【0033】
実施例7(キャンディー)
実施例2のバングレエキス1部、グラニュー糖280部、水 飴210部、ク エ ン酸5部、香料1部及び色素1部を配合してキャンディーを製造した。本キャンディーの味は良好であった。
【0034】
実施例7(ジュース)
実施例2のバングレエキス1部、冷凍濃縮温州みかん果汁25部、果糖ブドウ糖液糖55部、クエン酸1部、L−アスコルビン酸0.1部、香料1部、色素0.5部及び水400部を配合してジュースを製造した。本ジュースはみかんの風味や色に変化がなかった。
【0035】
実施例8(チューインガム)
実施例2のバングレエキス1部、チューインガムベース300部、ショ糖800部、水飴300部、軟化剤60、香料13部及び色素1部を配合してチューインガムを製造した。本チューインガムの味は良好であった。
【0036】
実施例9(チョコレート)
実施例2のバングレエキス1部、チョコレート220部、ショ糖75、カカオバター100部及び全脂粉乳100部を配合してチョコレートを製造した。配合されたバングレエキスがチョコレートの風味や色に影響を与えることはなく、美味しいものであった。
【0037】
実施例10(クッキー)
実施例1のジャワショウガ粉末1部、薄力粉2.3部、全卵1.6部、マーガリン1.9部、上白糖2.5部、ベーキングパウダー0.02及び水0.73部を配合してクッキーを製造した。本クッキーは風味がよく、味は良好であった。
【0038】
実施例11(おかき))
実施例1のジャワショウガ粉末1部、餅粉5部、食塩0.1部及び水6部を配合しておかきを製造した。本おかきは風味が良く、良好な味であった。
【0039】
実施例12(クレープ)
実施例1のジャワショウガ粉末1部、薄力粉2部、全卵1部、牛乳1部、食塩0.05部、バニラエッセンス適量及び水2部を配合してクレープを製造した。本クレープは良好な風味と味を有していた。
【0040】
実施例13(ペースト)
ジャワショウガ8kgに水2kgを加えながら粉砕機で粉砕後、更に超音波破砕機で微粉末状にしてジャワショウガペースト10kgを得た。
【0041】
実施例14(ジュース)
実施例13のジャワショウガペースト1部に水2部を加えて混合してジュースを製造した。本ジュースは風味がよく、美味しいものであった。
【0042】
実施例15(固形ドッグフード)
実施例1のジャワショウガ粉末1部、ミートミール2.4部、チキンエキス0.35部、植物油脂0.3部、炭水化物1.2部、炭酸カルシウム0.03部、食塩0.01部、複合ビタミン剤0.05部及び水0.6部を配合してドッグフードを製造した。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によると、東南アジアでよく食されているジャワショウガは、NGF以上の神経細胞突起伸展作用を有するので、神経細胞の成長、突起形成や活動が賦活されて脳虚血、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経性疾患の予防及び治療に有用である。したがって、このような作用を有する置換シクロヘキセンを有効成分として含有する本発明の健康組成物であるジャワショウガを利用した飲食品は、上記のような神経疾患の予防に役立つだけでなく、患者の病状改善にも有用である。また、本発明の置換シクロヘキセン成分を含有する植物エキスからなる健康組成物は、このような神経疾患の予防及び治療剤として日常生活の中で通常の食事形態をとりながら摂取又は服用することができて有用である。近年ペットの高齢化により増加傾向にある神経症に対しても本発明の置換シクロヘキセン成分を含有する健康組成物をペットや家畜などの動物の飼料として使用することは、飼育者にとって負担が軽減されて便利である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】対照の神経細胞突起伸展作用を示した写真である。(実施例4)
【図2】NGF(10ng/mL)の神経細胞突起伸展作用を示した写真である。(実施例4)
【図3】バングレエキス(25μg/mL)の神経細胞突起伸展作用を示した写真である。(実施例4)
【図4】化合物2(30μM)の神経細胞突起伸展作用を示した写真である。(実施例4)
【図5】化合物3(30μM)の神経細胞突起伸展作用を示した写真である。(実施例4)
【図6】化合物4(30μM)の神経細胞突起伸展作用を示した写真である。(実施例4)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経細胞突起伸展作用を有する下記式(1)で表される置換シクロヘキセンを有効成分として含有する植物を利用することを特徴とする健康組成物
【化1】










(式中、R1、R2、R3及びR4はヒドロキシ基又はC1〜C6の低級アルコキシ基である)
【請求項2】
前記置換シクロヘキセンの式(1)中のR1、R2及びR3がメトキシ基であり、R4が水酸基又はメトキシ基であることを特徴とする請求項1記載の健康組成物
【請求項3】
前記植物がショウガ科の植物であることを特徴とする請求項1記載の健康組成物
【請求項4】
前記ショウガ科の植物がジャワショウガであることを特徴とする請求項1記載の健康組成物
【請求項5】
神経細胞突起伸展作用を有する下記式(1)で表される置換シクロヘキセンを有効成分として含有することを特徴とする健康組成物
【化2】









(式中、R1、R2、R3及びR4はヒドロキシ基又はC1〜C6の低級アルコキシ基である)
【請求項6】
前記置換シクロヘキセンの式(1)中のR1、R2及びR3がメトキシ基であり、R4が水酸基又はメトキシ基であることを特徴とする請求項5記載の健康組成物

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−90053(P2010−90053A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260691(P2008−260691)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(391012040)株式会社ホソダSHC (14)
【Fターム(参考)】