説明

側溝および隣接する道路の再形成工法

【課題】雨水を効率よく、かつスムーズに側溝へ誘導でき、しかも外見上は全く雨水の通過路が可視しえない様に構成した側溝および隣接する道路の再形成が容易に行える側溝および隣接する道路の再形成工法を提供する。
【解決手段】既設側溝1と該既設側溝1の上面に載置された既設蓋とを有し、隣接する道路の表面と上面が略面一に構成される側溝1及び隣接する道路の再形成工法であり、既設蓋を取り外し、道路に隣接する側の既設側溝1における該側溝蓋受け部3の深さを浅くし、新設蓋4は、幅方向中央に上下方向へ貫通するスリット5が設けられ、幅方向端部には充填材注入用切り欠きが設けられ、かつ道路に隣接し、側溝蓋受け部3から露出する端面10には、雨水通過路14が形成され、側溝蓋受け部3の先端から新設蓋4上面までの厚み部分における隣接する道路形成箇所には、透水性を有する舗装材が敷設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既に敷設されているU字溝などの既設側溝上面に、雨水流入部となるスリットが形成された新規な側溝蓋を載置形成すると共に、前記新設蓋が設けられた側溝上面と該側溝に隣接する道路の表面とを略面一に形成すると共に、前記道路の表面側になされた舗装部には、透水性を有するアスファルト等の透水舗装材で被覆して道路表面に雨水が滞留しない様設計された側溝および隣接する道路の再形成工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に道路などのインフラが整備され、道路脇には、U字溝に代表される上面が開口した下水用側溝が敷設されるに至っている。
ここで、U字溝に代表される上面が開口した下水用側溝には、通常前記上面に側溝用の蓋が載置され、塞がれる。しかるにこの側溝蓋は、一般的には、側溝の上面に固定されていない。そのため、該側溝蓋のガタつきによる騒音問題が生じたり、また車両に踏まれた側溝蓋が跳ね上がり、例えば当該車両のフロントガラスに衝突したりして、事故を起こす可能性もあった。
さらには近年において見られる現象であるが、前記側溝蓋のガタつきにより、側溝上面部分と前記側溝蓋が当接して側溝自体を破損してしまうなど、各種の課題が山積していた。
そこで、前記各事情に鑑み、例えばモルタルで固定できる側溝蓋が創案されるに至った(特許第3943114号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3943114号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかして、さらに近年では透水性に優れたアスファルトなどの透水性を有する舗装材を使用して道路を敷設し、再整備する事業も盛んに行われており、既設の側溝に隣接する道路においても透水性に優れたアスファルトなどの透水性を有する舗装材で敷設することが要請されている。
【0005】
これにより突然の、しかも大量の降水により道路上に多くの雨水が滞留し、もって、例えば車両の通行を妨げるとの障害などを激減させることができるからである。
【0006】
ここで、既設の側溝脇に敷設された道路の構造につき考察してみると、一般的には、舗装された道路の上面と、例えば道路の脇に敷設されたU字溝などからなる側溝上面とは同じ高さに形成される。すなわち、この側溝上面の高さは側溝蓋が載置されている場合や側溝蓋が載置されていない場合にかかわらず、前記道路の上面とほぼ同様の高さ、あるいは隣接する道路表面より若干低い位置とされる。道路走行上のスムーズ性、並びに道路上の水はけを考慮したことによる。
【0007】
また、従来の道路は、さらに道路上の水はけを向上させるため、例えば既設の側溝蓋で塞がれた側溝につき、中央に雨水を通過させるスリットが設けられた新設蓋を新たに被せ、側溝上面から積極的に雨水を取り込むことが近年よく行われている。
【0008】
さらに、道路の表面を舗装する舗装材についても入念な考慮が行われ、水はけを考慮した工夫がなされると共に、道路表面部の舗装については、透水性の優れた舗装材で舗装することが近年頻繁に行われているのである。
【0009】
そこで、近年では、前記説明した新設蓋の上面スリットからの雨水の取り込みのみならず、透水性舗装材を通過した雨水の取り込みを側溝側でいかに効率よく行える構造とするかが課題とされているのである。
【0010】
かくして、本発明は、前記課題に対処すべく創案されたものであり、例えば、既設側溝に隣接して、道路の表面部分に透水性を有する舗装材を敷設する場合にも、当該透水性を有する舗装材を通過した雨水を効率よく、かつスムーズに側溝へ誘導でき、しかも外見上は全く雨水の通過路が可視しえない様に構成した側溝および隣接する道路の再形成が容易に行える側溝および隣接する道路の再形成工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による側溝および隣接する道路の再形成工法は、
既設側溝と該既設側溝の上面に載置された既設蓋とを有し、隣接する道路の表面と上面が略面一に構成される側溝及び隣接する道路の再形成工法であり、
【0012】
前記既設蓋を取り外し、前記道路に隣接する側の既設側溝における側溝蓋受け部上部箇所をカットして、該側溝蓋受け部の深さを浅くし、
【0013】
新設蓋は、幅方向中央に上下方向へ貫通するスリットが設けられ、幅方向端部には充填材注入用切り欠きが設けられ、かつ前記道路に隣接し、前記上部がカットされた側溝蓋受け部から露出する端面には、雨水通過路が形成され、
【0014】
前記上部がカットされた側溝蓋受け部の先端から新設蓋上面までの厚み部分における隣接する道路形成箇所には、透水性を有する舗装材が敷設される、
ことを特徴とし、
【0015】
または、
既設側溝と該既設側溝の上面に載置された既設蓋とを有し、隣接する道路の表面と上面が略面一に構成される側溝及び隣接する道路の再形成工法であり、
【0016】
前記既設蓋を取り外し、前記道路に隣接する側の既設側溝における側溝蓋受け部上部箇所をカットして、該側溝蓋受け部の深さを浅くし、
【0017】
新設蓋は、幅方向中央に上下方向へ貫通するスリットが設けられ、幅方向端部には充填材注入用切り欠きが設けられ、かつ前記道路に隣接し、前記上部がカットされた側溝蓋受け部から露出する端面には、新設蓋の長手方向に向かい雨水通過路が形成されるとともに、表面にメッシュ部材が取り付けられてなり、
【0018】
前記上部がカットされた側溝蓋受け部の先端から新設蓋上面までの厚み部分における隣接する道路形成箇所には、透水性を有する舗装材が敷設される、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明による側溝および隣接する道路の再形成工法であれば、
例えば、既設側溝に隣接して、道路の表面部分に透水性を有する舗装材を敷設する場合にも、当該透水性を有する舗装材を通過した雨水を効率よく側溝に誘導でき、しかも外見上は全く雨水の通過路が可視しえない様に構成した既設側溝路の再形成が容易に行える側溝および隣接する道路の再形成工法を提供できるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る側溝および隣接する道路の再形成工法の概略構成を示す説明図(その1)である。
【図2】本発明に係る側溝および隣接する道路の再形成工法の概略構成を示す説明図(その2)である。
【図3】本発明に係る側溝および隣接する道路の再形成工法の概略構成を示す説明図(その3)である。
【図4】本発明に係る側溝および隣接する道路の再形成工法の概略構成を示す説明図(その4)である。
【図5】本発明に係る側溝および隣接する道路の再形成工法の概略構成を示す説明図(その5)である。
【図6】本発明に係る側溝および隣接する道路の再形成工法の概略構成を示す説明図(その6)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図を参照して本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0022】
まず、図1乃至図3に本発明の基本的な実施例を示す。
本発明は、既設側溝1と、例えば該既設側溝1の上面に載置された既設蓋(図示していない)をも有し、隣接する道路表面2と上面が略面一に構成された側溝および隣接する道路の再形成工法である。
ここで、既設側溝1および隣接する道路の再形成に際しては、まず、既設側溝1の上面に載置してある既設の蓋を取り外す。
【0023】
道路上に溜まる雨水などの排水性を遙かに向上させ、かつ美的外観に優れ、安全性にも考慮した新設蓋4と交換するためである。
【0024】
次に、前記道路に隣接する側の既設側溝1における側溝蓋受け部3上部箇所をカットして、該側溝蓋受け部3の深さを浅くしておく。
【0025】
図1において、符号4は、新設蓋であり、該新設蓋4は、図1から理解されるように、幅方向略中央位置に長手方向に伸びる略直線状の透水用スリット5が設けられている。該スリット5は新設蓋4の上下に貫通して形成されている。
【0026】
また、前記スリット5は直線状に蓋の長手方向全体にすべて形成されているのではなく、間隔をおいて連結壁6・・により塞がれている。そして、スリット5を塞ぐ連結壁6・・内には補強筋(図示しない)が蓋の幅方向へ向かい配筋され、スリット5の部分から折曲しないように構成されている。
【0027】
さらに、連結壁6・・の上面は、図1から理解されるように、新設蓋4の上面より低く形成され、該連結壁6・・の上面部と両側面は略凹溝状の雨水導入路7として構成されるものとなる。
【0028】
この雨水導入路7により、新設蓋4の上に溜まった雨水はスムーズに雨水導入路7に導かれ、スム−ズにスリット5から側溝内に導入されるものとなる。
【0029】
また、該新設蓋4の幅方向両側端面のうち、道路に隣接しない端面8には、その長手方向両側に、前記端面8を厚み方向に切り欠いて形成された略縦凹状の切り欠き部が形成され、該切り欠き部は、後述するモルタル充填部9、9として機能することになる。
【0030】
次に、道路に隣接する側の幅方向端面10には、その厚み方向中央位置に、新設蓋4の長手方向に向かって直線状に延びる凹溝条11が形成されている。
【0031】
さらに、該新設蓋4の長手方向両端面12、12には、図1に示すように、前記凹溝条11と溝と連通し、かつ、新設蓋4の底面側へ斜めに切り欠かれた凹状の切り欠き溝13、13が形成されている。そして、前記凹溝条11およびこれに連通する切り欠き溝13により、側溝内部に雨水を導入する雨水の第2導入路14が形成されるものとなる。
【0032】
さらに、前述した凹状溝11の開口側、すなわち表面側には、該開口を塞ぐようにメッシュ部材15が取り付けられている。
【0033】
透水性を有する舗装材17を通過したゴミなどが前記凹溝条内に11内に侵入するのを防止するためである。また、透水性を有する舗装材17が敷設時に前記凹溝条11内に入らないようにしたものである。
以上の構成を有する新設蓋4を前記既設側溝1の開口へ載置して、前記開口を塞ぐ。
【0034】
次に、前述したモルタル充填部9にモルタルを充填して、新設蓋4がガタ付かないように、かつ簡単に取り外しできないようにする。
【0035】
ここで、道路のリニューアル敷設工事であるが、図4から理解されるように、前記カットした側溝蓋受け部3の上端位置まで、アスファルトやコンクリートなどの透水性を有しない舗装材16で舗装する。
【0036】
しかし、その位置から、敷設した新設蓋4の上面までの位置までは、透水性を有する舗装材17で舗装工事を行う。
この際、前記新設蓋4に設けた雨水の第2導入路14となる凹溝条11の下部18と、敷設した透水性を有しない舗装材16の表面高さとは略同位置になるよう敷設工事を行うものとする。なぜなら、たとえば敷設した新設蓋4における前記凹溝条11の下部18が透水性を有しない舗装材16の表面高さより高い位置にあるときには、その箇所に雨水が溜まってしまうからである。
【0037】
ここで、本発明による側溝および隣接する道路の再形成工法において、道路に降水した際に、雨水はどのように側溝1内に導入されるかにつき説明すると、道路に降水した雨水は、透水性を有する舗装材17内を通過してその下層に敷設した透水性を有しない舗装材16上に溜まる。
そして、前記溜まった雨水は、隣接して敷設された既設側溝1の上面開口に載置された新設蓋4の端面に設けられた第2導入路14を通過し、側溝1内へと流れるものとなる。
【0038】
ここで、前記新設蓋4の端面に設けられた第2導入路14の開口はメッシュ部材15で塞がれているが、雨水はこのメッシュ部材15の隙間から第2導入路14に移動する。
【0039】
また、排水しきれずに、透水性を有する舗装材17の表面に溜まった雨水は側溝の新設蓋4側に流れ、この新設蓋4の中央部に設けられたスリット5から側溝1内へ排出されるものとなる。
このように、本発明の再形成工法によれば、優れた排水効果を有する側溝および隣接する道路が構築できる。
【0040】
なお、この実施例で用いられる新設蓋4には図1から理解されるように、第2導入路14となる凹溝条11が端面の全長にわたって設けられているタイプであり、このような新設蓋4は、比較的道路幅の広い道路の脇に敷設された側溝1に載置されるものとなる。
【実施例2】
【0041】
次に、図2に示す新設蓋4の構造につき説明する。
図2に示す新設蓋4は、前述の比較的道路幅の広い道路の脇に敷設された側溝1に載置されるタイプではなく、広くもなく、狭くもない略中間程度の道路幅敷設された側溝1に載置される。
【0042】
従って、新設蓋4の幅方向端面にはその全長にわたって凹溝条11が設けられてはおらず、その長手方向両端側に、全長の約7分の1程度の長さの凹溝条11、11が設けられているのである。
【0043】
そして、図2や後述する図3に示すタイプの新設蓋4であれば、道路に隣接する端面10にも、モルタル充填部9、9を形成することができる。
特に、既設側溝1の蓋を載置する幅が狭く、新設蓋4を載置したときに、一対の側溝蓋受け部3、3間と新設蓋4の幅方向端面との間に隙間がないときに、前記モルタル充填部9、9を形成することが検討される。
【実施例3】
【0044】
また、図3はさらに、図1や図2に示す新設蓋4とは異なり、該新設蓋4は、幅が狭い道路に隣接して敷設された既設側溝1に載置されるものであり、道路幅が狭いので道路上に溜まる雨水の量も少なく、もって、新設蓋4の端面に凹溝条を形成しなくとも、充分に水はけのよい道路が提供できるものとなる。
【0045】
図3に示す新設蓋4には、道路に隣接する端面に全く凹溝条11が設けられておらず、長手方向両端面に、前述した切り欠き溝13、13のみを形成し、もってこれを第2導入路14としたものである。
道路幅が狭い故に、そんなに道路上に雨水が溜まらず、切り欠き溝13、13のみによる第2導入路14、14で充分に雨水を排水できるのである。
【実施例4】
【0046】
前述した図1に示す新設蓋4、図2に示す新設蓋4および図3に示す新設蓋4をリニューアルする1本の道路中に混在して使用することもできる。
すなわち、道路幅が広い箇所の道路脇や道路幅が狭い箇所であっても、高低差のある道路のうち、特に低い箇所の道路で、降水時に雨水が溜まる箇所の道路脇には図1の新設蓋4を使用するものとなる。
【0047】
しかしながら、道路幅が狭く、あまり雨水の急激な増水が予想されない箇所の道路脇には図2や図3に示す新設蓋4を使用してリニューアルすればよい。
これら新設蓋4の上面はすべて同じ形状であり、敷設後には全く同じ新設蓋4と認識できるものとなる。
【0048】
このように道路の事情により新設蓋4を使い分け、もって製品コストの低廉化を図ることもできる。
図1に示す新設蓋4より図2,図3に示す新設蓋4の方が部品点数も少なく安価に製造できるからである。
【符号の説明】
【0049】
1 既設側溝
2 道路表面
3 側溝蓋受け部
4 新設蓋
5 スリット
6 連結壁
7 雨水導入路
8 道路と隣接しない端面
9 モルタル充填部
10 道路と隣接する端面
11 凹溝条
12 新設蓋の長手方向端面
13 切り欠き溝
14 第2導入路
15 メッシュ部材
16 透水性を有しない舗装材
17 透水性を有する舗装材
18 凹溝条の下部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設側溝と該既設側溝の上面に載置された既設蓋とを有し、隣接する道路の表面と上面が略面一に構成される側溝及び隣接する道路の再形成工法であり、
前記既設蓋を取り外し、前記道路に隣接する側の既設側溝における側溝蓋受け部上部箇所をカットして、該側溝蓋受け部の深さを浅くし、
新設蓋は、幅方向中央に上下方向へ貫通するスリットが設けられ、幅方向端部には充填材注入用切り欠きが設けられ、かつ前記道路に隣接し、前記上部がカットされた側溝蓋受け部から露出する端面には、雨水通過路が形成され、
前記上部がカットされた側溝蓋受け部の先端から新設蓋上面までの厚み部分における隣接する道路形成箇所には、透水性を有する舗装材が敷設される、
ことを特徴とする側溝及び隣接する道路の再形成工法。
【請求項2】
既設側溝と該既設側溝の上面に載置された既設蓋とを有し、隣接する道路の表面と上面が略面一に構成される側溝及び隣接する道路の再形成工法であり、
前記既設蓋を取り外し、前記道路に隣接する側の既設側溝における側溝蓋受け部上部箇所をカットして、該側溝蓋受け部の深さを浅くし、
新設蓋は、幅方向中央に上下方向へ貫通するスリットが設けられ、幅方向端部には充填材注入用切り欠きが設けられ、かつ前記道路に隣接し、前記上部がカットされた側溝蓋受け部から露出する端面には、新設蓋の長手方向に向かい雨水通過路が形成されるとともに、表面にメッシュ部材が取り付けられてなり、
前記上部がカットされた側溝蓋受け部の先端から新設蓋上面までの厚み部分における隣接する道路形成箇所には、透水性を有する舗装材が敷設される、
ことを特徴とする既設側溝路の再形成工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−162946(P2011−162946A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23763(P2010−23763)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(391013416)ゴトウコンクリート株式会社 (11)
【Fターム(参考)】