説明

催眠剤及びR(+)−α−(2,3−ジメトキシ−フェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノールの組み合わせ物並びに治療でのその使用

本発明は、短時間作用型催眠剤及びR−(+)−(−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール(化合物A)若しくは式II
【化1】


(式中、RはC1−C20アルキルである)を有するそのプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容しうる塩の組み合わせに関する。本発明の組み合わせは、種々の睡眠障害の処置において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの催眠剤とR(+)−α−(2,3−ジメトキシ−フェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノールとの組み合わせに関する。本発明の組み合わせは、種々の睡眠障害の処置において有用である。
【背景技術】
【0002】
米国における成人の間の慢性不眠症は、成人人口の10パーセントに存在すると見積られており、そしてその処置のための年間費用は109億ドルと見積もられる。JAMA 1997; 278: 2170−2177(2170)。慢性不眠症患者は高いレベルのストレス、不安、抑うつおよび医学的疾患を報告する。不眠症を処置するための薬物の最も一般的なクラスはベンゾジアゼピンであるが、ベンゾジアゼピンの副作用の特徴は、日中の鎮静、減少した運動協調性、および認識機能障害を含む。さらに、1984年のthe National Institutes of Health Consensus conference on Sleeping Pills and Insomniaは、薬物誤用、依存、禁断および反跳不眠に関して生じる懸念のため、そのような鎮静催眠薬の4〜6週を越える使用を推奨しない指針を示した。JAMA 1997; 278: 2170−2177(2170)。したがって、現在使用されているものよりもより効果的でおよび/または副作用がより少ない不眠症の処置のための薬物を有することが望ましい。
【0003】
閉塞性睡眠時無呼吸の有病率は、成人人口の約1〜10%であると推定されるが、高齢者ではより高いかもしれない; Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 4th ed., American Psychiatric Association, Washington D.C.(1994)。予備的証拠は、閉塞性睡眠時無呼吸を有することが高血圧、心不整脈、脳卒中、および心筋梗塞のような心血管合併症に対する増加した感受性に寄与し得ることを示唆する。過剰の日中の眠気も又一つの合併症である。
【0004】
現在、閉塞性睡眠時無呼吸を処置するために使用される治療法としては、肥満体患者に対する減量、経鼻持続的気道陽圧(上気道内に陽圧を発生させる夜に使用される顔面マスク)、咽頭手術および完全に成功するとは証明されていない種々の薬物の投与が挙げられる。Chest 109(5):1346−1358(May 1996)、表題「Treatment of Obstructive Sleep Apnea」、総説、参照により本明細書に加入される。これらの薬剤としては、アセタゾラミド、メドロキシプロゲステロン、オピオイドアンタゴニスト、ニコチン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤及び向精神薬(ノルエピネフリン、ドーパミンおよびセロトニンのような生体アミンの再取り込みを妨害するものを含む)が挙げられる。同文献、1353。使用されるこれらの薬物の多くは、換気抑制作用(例えばベンゾジアゼピン)又はその他の副作用、例えば排尿躊躇及び/又は男性におけるインポテンス(プロトリプチリン)も有し、副作用がより少ない新しい薬剤が、閉塞型睡眠時無呼吸の処置に必要とされる。セロトニンは睡眠薬であり換気刺激薬であり得るが(同文献、1354)、5HT2A受容体アンタゴニストは、閉塞型睡眠時無呼吸の処置において有用であると見出されている。Am. J. Respir Crit Care Med(153) pp 776−786(1996)も参照のこと(ここではセロトニンアンタゴニストが英国ブルドッグにおいて生じた睡眠時無呼吸を悪化させた)。しかし、Journal of Physiology(466) pp 367−382(1993)と比較すると、ここではセロトニン生合成機構の機能不全に起因する過剰のセロトニンが閉塞型睡眠時無呼吸に有利に働く状態を生じ得ると仮定されている; European Journal of Pharmacology(259):71−74(1994)、5HT2アンタゴニストを用いたラットモデルに対するさらなる研究。
【0005】
EP 1 262 197は、睡眠時無呼吸を含む睡眠障害の処置を必要とする患者に、5HT1Aアンタゴニスト又はアルファ−2−アドレナリン作用性アンタゴニストを、抗うつ剤、例えばセロトニン再取り込み阻害剤(SRI)と組み合わせて投与することにより、睡眠時無呼吸を含む睡眠障害を処置する方法を開示する。このような組み合わせは、有効性の改善を示す。
【0006】
米国特許第6,143,792号は、特定の5HT2A受容体アンタゴニストが睡眠時無呼吸症候群の処置において有用であることをを開示する。同様に、米国特許第6,576,670号は、特定の5HT2A及び5HT2A/C受容体アンタゴニストが、いびき及び上気道抵抗症候群の処置において有用であることを開示する。
【0007】
化合物R−(+)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール(以後では「化合物A」と称する)は、種々の障害の処置において有用な5HT2Aアンタゴニストである。米国特許第5,169,096号は、化合物Aを包含する包括的範囲を有する化合物を特許請求しており、そして神経性食欲不振、異型狭心症、レイノー現象、冠攣縮性狭心症の処置、片頭痛、心臓血管疾患、例えば高血圧、末梢血管疾患、血栓エピソード、心肺機能の非常事態及び不整脈の予防的処置の使用、並びに麻酔特性を有することを開示する。米国特許第4,783,471号;同第4,912,117号;及び同第5,021,428号(これらは米国特許第5,169,096号の分割である)も参照のこと。米国特許第4,877,798号(線維筋痛症)、同第4,908,369号(不眠症);同第5,106,855号(緑内障);EP 319 962(不安);EP 337 136(錐体外路系症状)も参照のこと。前述の参考文献の全てが参照により本明細書に加入される。
【0008】
その後化合物Aは、米国特許第5,134,149号において具体的に特許請求されており、この特許は5HT2受容体においてセロトニンをアンタゴナイズすること、不安、異型狭心症、神経性食欲不振、レイノー現象、間欠性跛行、冠状又は末梢血管痙攣、線維筋痛症、錐体外路系症状、不整脈、血栓性疾患、一過性脳虚血発作、薬物乱用及び精神病、例えば統合失調症及び躁病を処置することの使用を開示する。米国特許第5,561,144号;同第5,700,812号;同第5,700,813号;同第5,721,249号−米国特許第5,134,149号の分割−並びに米国特許第5,618,824号(強迫性障害)及び米国特許第6,022,877号(大うつ病エピソード及び気分変調を含む抑うつ障害、並びに双極性障害)も参照のこと。
【0009】
化合物Aは、他の受容体と比較して5HT2A受容体においてその活性が高度に選択的であり、そしてそれ自体、報告されている副作用はより少ない。参照化合物のハロペリドール、クロザピン、リスペリドン、リタンセリン、及びアンペロジドと比べて前臨床試験においてより良好なCNS安全性指標を有することが示された。JPET 277:968−981, 1996、参照により本明細書に加入される。化合物Aが不眠症及び閉塞性睡眠時無呼吸のような睡眠障害の処置において有用であることが最近発見された。米国特許第6,277,864号及び同第6,613,779号を参照のこと。化合物Aのプロドラッグもまた、最近開示されている。米国特許第6,028,083号及び同第6,063,793号を参照のこと。最近、化合物Aを含有する生分解性ポリマーカプセル封入医薬組成物も開示されている、米国特許第6,455,526号を参照のこと。
【0010】
種々の様式及び作用持続期間を有するいくつかの催眠剤もまた長年にわたって開発されてきた。例えば、長時間作用型催眠剤である催眠剤のクラスが開発されている。また、短時間作用型催眠剤もまた開発されている。一般的に、短時間作用型催眠剤は、主に睡眠誘導物質として、すなわち睡眠相に入る入口時間に作用する。
【0011】
短時間作用型催眠剤の例としては、いかなる限定もなしに、ゾルピデムが挙げられ、これはGABA−A受容体の調節因子として作用する。ゾルピデムはイミダゾピリジンのクラスに属し、そして即時放出錠剤又は遅延放出を可能にするガレヌス(galenic)形態で経口投与される。ゾルピデムは速く作用し、そして70%のバイオアベイラビリティでよく吸収される。平均投薬量(従来の製剤で5mgと10mgとの間)は、投与の0.5時間と3時間の間に到達する最大血漿濃度を生じ、半減期は平均値で約2.4時間と短く、そして作用時間は6時間までである。
【0012】
短時間作用型催眠剤の他の例としては、いかなる限定もなしに、ザレプロン(これはピラゾロピリミジンのクラスに属する)、ゾピクロン、エスゾピクロン(これらはシクロピロロンのクラスに属する)、さらにそれらの誘導体が挙げられる。フェノチアジン及びベンゾジアゼピンを含む種々の他の短時間作用型催眠剤も開発されている。これらの治療剤のクラスに属する特定の化合物としては、例えばトリアゾラム、ブロチゾラム又はアリメマジンが挙げられる。
【0013】
長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬もまた開発されている。以下において、長時間作用型催眠剤は、主に睡眠誘導物質である化合物又は薬剤を指すが、患者において睡眠の質を改善するか及び/又は維持することも可能であるかもしれないということが理解される。「睡眠補助薬」は、患者において、特に深い睡眠相において睡眠の質を改善するか及び/又は睡眠を維持するために主に使用される化合物又は薬剤である。睡眠補助薬の1つのこのような例は、ドパミンを遮断することなく作用する5HT2A受容体の阻害剤、例えば化合物A又はそのプロドラッグである。
【0014】
他の長時間作用型催眠剤は、例えばテマゼパム、クロナゼパム、ガボキサドール及びプレガバリン(カルシウムイオンの調節因子)、さらにそれらの誘導体である。
【0015】
上記の催眠剤及び/又は睡眠補助薬は睡眠障害、特に不眠症を改善する。しかしながら、短時間作用型催眠剤が主に入眠期に作用するのに対し、長時間作用型催眠剤は主に入眠期に作用するが睡眠維持成分も有し得、そして睡眠補助薬がむしろ深眠期に作用し、それ故患者における睡眠の全体的な質を改善するのに役立つ。
【0016】
特に、短時間作用型GABA作用性アゴニスト、例えばゾピクロン及びエスゾピクロンは、睡眠の開始及び睡眠維持に利益をもたらす。しかし、最適な睡眠維持効果は、翌日の機能不全に関する危険性を生じる用量でのみ見られ得、これは記憶及び歩行の障害、並びに呼吸器機能不全の不要な危険性を上昇させ得る。従って、補完的な機構により作動して、追加的な睡眠維持効果をもたらす5HT2A受容体の阻害剤のような薬剤が望ましいだろう。
【0017】
さらに、ゾピクロン/エスゾピクロンは、ベンゾジアゼピンで見られるステージ3/4の睡眠(徐波睡眠(Slow Wave Sleep); SWS)に対するネガティブな作用を有していないが、これらはSWSを有意に増進することはないようである。これらのステージは睡眠の回復活動と関連しており、それ故これらのステージ(これらは睡眠持続障害不眠症の患者において(少なくとも若い健康なボランティアと比較して)減少している)の増進は、日中の機能において、そしておそらく加齢及び睡眠遮断に関連する他の障害(増加した肥満、除脂肪体重の減少、及び糖尿病の増加した危険性を含む)に取り組む際に改善をもたらし得る(Van Cauter et al., JAMA, 2000; 284:861−868)。
【0018】
セロトニン2A拮抗作用の機構(5HT2A)は、相前進及び(特に痴呆症の集団において)日周期プロセスの周期性の全体的な乱れを有する傾向がある高齢の被験体における問題である日周期同調も促進し得る。
【0019】
徐波睡眠(SWS)が覚醒及び目覚めの減少した危険性と関連することにも注目するべきである(Salzarulo et al., Sleep Research Online, 1999; 2:73−77)。このことは、より高齢の被験体において特に当てはまり得る(Boselli et al., Sleep, 1998; 21:361−367)。さらに、より高齢の成人不眠症患者において、減少したSWSは認識機能障害と関連していた(Crenshaw & Edinger, Physiol. Behav., 1999; 66:485−492)。化合物Aは、SWSを増加させて睡眠持続障害不眠症の患者における覚醒および覚醒状態への睡眠ステージシフトを減少させることが確立されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、患者の覚醒相に対する否定的な作用を伴わずに、睡眠の質並びに短時間作用型催眠剤及び長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬のそれぞれの効果を改善することにより、睡眠補助薬及び/又は長時間作用型催眠剤及び短時間作用型催眠剤の作用の組み合わせを可能にする組み合わせを提供することが本発明の目的である。
本発明のその他の目的及び適用のさらなる範囲は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
従って、本発明によれば、1つ又はそれ以上の催眠剤と1つ又はそれ以上の睡眠補助薬との組み合わせが提供される。本発明の組み合わせは、少なくとも1つの短時間作用型催眠剤及び/又は長時間作用型催眠剤並びに睡眠補助薬を含む。本発明のこの局面によれば、短時間作用型催眠剤及び長時間作用型催眠剤は、即時放出又は遅延放出に適合されたガレヌス製剤で存在し、そして睡眠補助薬は即時放出に適合されたガレヌス製剤の形態で存在する。
【0022】
より詳細には、本発明は、少なくとも1つの短時間作用型催眠剤と化合物A若しくはそのプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容しうる塩との組み合わせを提供し、ここでこのプロドラッグは、式II;
【化1】

(式中、RはC1−C20アルキルである)
のプロドラッグである。
【0023】
短時間作用型催眠剤及び長時間作用型催眠剤と睡眠補助薬との組み合わせは、患者の睡眠に対する有益な効果を得ることを可能にし、そしてこの効果は、これらの2つの催眠剤及び/又は睡眠補助薬のそれぞれが別々に摂取される場合よりも高い。
【0024】
本明細書中で使用される用語は、以下の意味を有する:
本明細書中で使用される場合、用語「C1-20アルキル」としては、メチル、エチル、及び直鎖又は分枝のプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどが挙げられる。特定のアルキル基は、いなかる限定もなしに、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、アミル、イソアミル、n−ヘキシルなどである。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「患者」は、温血動物、例えばラット、マウス、イヌ、ネコ、モルモット、及びヒトのような霊長類を意味する。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容しうる担体」は、非毒性の溶媒、分散剤、賦形剤、アジュバント、又は医薬組成物(すなわち患者への投与が可能な投薬形態)の形成を可能にするために本発明の化合物と混同される他の物質を意味する。このような担体の一例は、非経口投与に典型的に使用される薬学的に許容しうる油である。
【0027】
用語「薬学的に許容しうる塩」は本明細書中で使用される場合、本発明の化合物の塩が医薬製造において使用することができることを意味する。しかし他の塩が、本発明の化合物又はそれの薬学的に許容しうる塩の製造において有用であり得る。本発明の化合物の適切な薬学的に許容しうる塩としては、例えば、本発明の化合物の溶液と薬学的に許容しうる酸(例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、酢酸、サリチル酸、桂皮酸、2−フェノキシ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、炭酸又はリン酸)の溶液とを混合することにより形成され得る酸付加塩が挙げられる。オルトリン酸一水素ナトリウム及び硫酸水素カリウムのような酸金属塩も形成することができる。また、このようにして形成された塩は、一酸塩又は二酸塩のいずれで存在していてもよく、そして実質的に無水で存在しても水和されていてもよい。さらに、本発明の化合物が酸性部分を持っている場合、その適切な薬学的に許容しうる塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウム又はカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム又はマグネシウム塩、及び適切な有機リガンドと共に形成される塩、例えば第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「プロドラッグ」は、当該分野で一般的に受け入れられる意味を有するはずである。1つの上記の定義は、哺乳類系のような生体系により代謝されるか又は化学的に変換される場合に、薬理学的に活性な物質へと転換される薬理学的に不活性な化学実体を含む。
【0029】
用語「立体異性体」は、それらの原子の空間配置のみが異なる個々の分子の全ての異性体について使用される一般的な用語である。典型的には、これは少なくとも1つの不斉中心に起因して通常形成される鏡像異性体(エナンチオマー)を含む。本発明の化合物が2つ又はそれ以上の不斉中心を有する場合、それらはさらにジアステレオマーとして存在し得、また特定の個々の分子は幾何異性体(cis/trans)として存在し得る。同様に、本発明の特定の化合物は、速い平衡にある2つ又はそれ以上の構造的に別個の形態の混合物(一般的に互変異性体として知られる)で存在し得る。互変異性体の代表例としては、ケト−エノール互変異性体、フェノール−ケト互変異性体、ニトロソ−オキシム互変異性体、イミン−エナミン互変異性体などが挙げられる。全てのこのような異性体及び任意の比率のそれらの混合物が本発明の範囲内に包含されることが理解されるべきである。
【0030】
用語「溶媒和物」は本明細書中で使用される場合、溶質イオン又は分子と1つ若しくはそれ以上の溶媒分子との会合体を意味する。同様に、「水和物」は、1つ若しくはそれ以上の水分子を伴う溶質イオン又は分子を意味する。
【0031】
広義で、用語「置換された」は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むと意図される。本明細書に開示される特定の実施態様の少数において、用語「置換された」は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6ペルフルオロアルキル、フェニル、ヒドロキシ、−CO2H、エステル、アミド、C1−C6アルコキシ、C1−C6チオアルキル、C1−C6ペルフルオロアルコキシ、−NH2、Cl、Br、I、F、−NH−低級アルキル、及び−N(低級アルキル)2からなる群より独立して選択される1つ又はそれ以上の置換基で置換されることを意味する。しかし、当業者に公知の他の適切な置換基のいずれもこれらの実施態様において使用することができる。
【0032】
「治療有効量」は、指定の疾患、障害又は状態を処置する際に有効である、組み合わせ又は組成物の量を意味する。
【0033】
「投与すること」は、任意の適切な経路、例えば経口、舌下、口腔内、経皮、吸入、直腸若しくは注射(筋内、静脈内、皮下などを含む)を介する投与、又は患者へ組み合わせ若しくは組成物を提供する任意の他の適切な方法を含む。
【0034】
用語「処置すること」とは:
(i)疾患、障害及び/又は状態の素因があり得るが、まだそれを有しているとは診断されていない患者において疾患、障害又は状態が発生するのを防ぐこと;
(ii)疾患、障害又は状態を抑制すること、すなわち、その進行を止めること;並びに
(iii)疾患、障害又は状態を軽減すること、すなわち、疾患、障害及び/又は状態の後退を引き起こすこと、
を指す。
【0035】
用語「短時間作用型催眠剤」は、睡眠を誘導し得る、すなわち睡眠相に入る入口時間を誘導し得る化合物及び/又は薬剤を指す。
【0036】
用語「長時間作用型催眠剤」は、主に睡眠誘導物質であるが患者において睡眠の質及び/又は持続を改善することも可能であり得る化合物又は薬剤を指す。
【0037】
用語「睡眠補助薬」は、患者において特に深睡眠相において、主に睡眠の質及び/又は睡眠の持続を改善するために使用される化合物又は薬剤を指す。
【0038】
用語「回復性睡眠」は、目覚めの際に休息した状態を生じる睡眠を意味する。
【0039】
用語「睡眠障害」は本明細書中で使用される場合、米国精神医学会より発行されるDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、4th Edition(1994)(以後ではDSM−IVと呼ぶ)において書かれた説明の全てを意味する。本発明に従って処置することができる特定の睡眠障害としては、いかなる限定もなしに、不眠症、原発性不眠症、睡眠持続障害不眠症、別の精神障害に関連する不眠症、物質誘発性不眠症及び閉塞性睡眠時無呼吸が挙げられる。睡眠障害のさらなる説明及び考察は、the American Sleep Disorders Associationより発行されるthe International Classification of Sleep Disorders: Diagnostic and Coding Manual(1990)に見られる。
【0040】
用語「不眠症」は本明細書中で使用される場合、精神障害、他の病状及び物質誘発性睡眠障害のような他の因子に起因して引きおこされるのではない全ての睡眠障害を含む。本明細書中で使用される不眠症は、DSM−IVにおいて規定される原発性睡眠障害(2つのサブカテゴリー、すなわち、睡眠不全及び錯眠を含む)も意味する。
【0041】
用語「原発性不眠症」は、DSM−IVに示される定義の全てを意味する。さらに、本明細書中で使用される「原発性不眠症」は、「睡眠持続障害不眠症」も含む。DSM−IVは、原発性不眠症の診断基準を以下のとおり列挙する:
A.主な病状は、少なくとも1か月間の、睡眠の開始若しくは持続の困難さ、又は体力の回復がみられない睡眠である。
B.睡眠の障害(又は関連する日中の倦怠感)が、社会的、職業的、又は他の重要な機能の領域において臨床的に有意な困難又は障害を引き起こす。
C.睡眠の障害が、もっぱらナルコレプシー、呼吸関連睡眠障害、概日リズム睡眠障害、又は錯眠の過程においてのみ生じるのではない。
D.障害が、もっぱら別の精神障害(例えば大うつ病性障害、全般性不安障害、せん妄)の過程においてのみ生じるのではない。
E.障害が、物質の直接的な生理作用(例えば、薬物乱用、投薬)または一般的な病状に起因するものではない。
【0042】
用語「別の精神障害に関連する睡眠障害」は本明細書中で使用される場合、別の精神障害に関連する不眠症及び睡眠過剰の両方を含む。DSM−IVは、別の精神障害に関連する不眠症に関する診断基準を以下のとおり列挙する:
A.主な病状は、日中の倦怠感又は損なわれた日中の機能と関連する少なくとも1か月間の睡眠の開始若しくは持続の困難さ、又は体力の回復がみられない睡眠である。
B.睡眠の障害(又は日中の続発症)が、社会的、職業的、又は他の重要な機能の領域において臨床的に有意な困難又は障害を引き起こす。
C.不眠症が、別の軸I又は軸II障害(例えば、大うつ病性障害、全般性不安障害、不安を伴う適応障害、統合失調症など)に関連すると判断されるが、独立した臨床的配慮を必要とするのに十分に重篤である。
D.障害が、別の睡眠障害(例えば、ナルコレプシー、呼吸関連睡眠障害、錯眠)でよく説明されない。
E.障害が、物質の直接的な生理作用(例えば、薬物乱用、投薬)または一般的な病状に起因するものではない。
【0043】
同様に、DSM−IVは、別の精神障害に関連する睡眠過剰に関する診断基準を以下のとおり列挙する:
A.主な病状は、ほとんど毎日起こる長時間睡眠エピソード又は日中の睡眠エピソードのいずれかにより証明される少なくとも1ヶ月間の過剰な眠気である。
B.過剰な眠気が、社会的、職業的、又は他の重要な機能の領域において臨床的に有意な困難又は障害を引き起こす。
C.別の軸I又は軸II障害(例えば、大うつ病性障害、気分変調性障害、統合失調症など)に関連すると判断されるが、過剰睡眠が独立した臨床的配慮を必要とするのに十分に重篤である。
D.障害が、別の睡眠障害(例えば、ナルコレプシー、呼吸関連睡眠障害、錯眠)又は不十分な睡眠量でよく説明されない。
E.障害が、物質の直接的な生理作用(例えば、薬物乱用、投薬)または一般的な病状に起因するものではない。
【0044】
本明細書中で使用される用語「物質誘発性睡眠障害」は、独立した臨床的配慮を必要とするのに十分に重篤であり、かつ物質の直接的な生理作用(すなわち、薬物乱用、投薬または毒素暴露)に起因すると判断される睡眠における顕著な障害を意味する。本明細書中で言及される薬物乱用、投薬または毒素暴露の具体例としては、いかなる限定もなしに、カフェイン、アルコール、アンフェタミン、オピオイド、鎮静剤、催眠薬、不安緩解剤などが挙げられる。DSM−IVは、物質誘発性睡眠障害に関する診断基準を以下のとおり列挙する:
A.独立した臨床的配慮を必要とするのに十分に重篤である睡眠における顕著な障害。
B.(1)又は(2)のいずれかの病歴、身体診察、又は検査所見からの証拠がある:(1)基準Aの症状が、物質の中毒又は離脱の間、又は一か月以内に発症した;(2)投薬使用が睡眠の障害と病因学的に関連する。
C.物質誘発性ではない睡眠障害では障害がよく説明されない。症状が物質誘発性でない睡眠障害でよく説明されるという証拠としては以下が挙げられ得る:症状が物質使用(又は投薬使用)の開始に先行する;症状が、急性の離脱症状又は重篤な中毒の停止後十分な期間(例えば約1ヶ月間)持続するか、又は使用される物質の種類若しくは量若しくは使用期間を考慮して予測されるよりも有意に過剰である;又は独立した非物質誘発性睡眠障害の存在を示唆する証拠(例えば、再発性の非物質関連エピソードの病歴)がある。
D.障害が、せん妄の過程でのみ起こるのではない。
E.睡眠の障害が、社会的、職業的、又は他の重要な機能の領域において臨床的に有意な困難又は障害を引き起こす。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「離脱症状」とは、物質使用の停止若しくは減少、又は薬理学的アンタゴニストの投与(又は薬物適用)の後に起こる都合の悪い身体的変化を特徴とする症候群を指す。
【0046】
本明細書中で使用される用語「閉塞性睡眠時無呼吸」は、DSM−IVにおいて規定されるとおり呼吸関連睡眠障害である。これは上気道抵抗性症候群とも呼ばれ、そして一般的には睡眠の間の上気道閉塞の繰り返すエピソードを含み、そして通常静かなエピソードと交互に起きる大きないびき又は短く息が止まることを特徴とする。DSM−IVは、呼吸関連睡眠障害に関する診断基準を以下のとおり列挙する:
A.睡眠関連呼吸状態(例えば、閉塞性睡眠時無呼吸症若しくは中枢性睡眠時無呼吸症又は中枢性肺胞低換気症候群)に起因すると判断される、過剰の眠気又は不眠症に至る睡眠の障害。
B.障害が別の精神障害でよりよく説明されず、かつ物質の直接的な生理作用(すなわち、薬物乱用、投薬)又は別の(呼吸関連障害以外の)一般的な病状に起因しない。
【0047】
睡眠障害の自覚的及び他覚的な決定:睡眠の開始、持続期間又は質(例えば、非回復性睡眠か回復性睡眠か)が低下しているか又は改善されているかを決定する多数の方法がある。1つの方法は、患者の自覚的決定であり、例えば、目覚めの際にけだるいか又は休まったように感じるかである。他の方法は、睡眠中の他者による患者の観察を含み、例えば、患者が眠りに入るのにかかる時間がどれくらいか、夜間に患者が何回目覚めるか、睡眠の間に患者がどれくらい落ち着かないかなどである。別の方法は、睡眠ステージを他覚的に測定することである。
【0048】
睡眠ポリグラフ計は、睡眠の間の複数の電気生理学的パラメータのモニタリングであり、一般的にEEG活動、眼電図(electroculographic)活動及び筋電図活動の測定、さらに他の測定法を含む。観察と共にこれらの結果で、睡眠潜時(眠りに入るのに必要とされる時間量)だけでなく、睡眠の質の指標であり得る睡眠連続性(睡眠と覚醒状態の全体の均衡)も判定することができる。
【0049】
睡眠ポリグラフ計(polysomnogrpahy)により測定することができる5つの個別の睡眠ステージがある:急速眼球運動(REM)睡眠及び非急速眼球運動(NREM)睡眠の4つのステージ(ステージ1、2、3及び4)。ステージ1のNREM睡眠は、覚醒状態から睡眠への移行であり、健常成人では眠っている状態に費やす時間の約5%を占める。ステージ2のNREM睡眠は、特定のEEG波形(睡眠紡錘波及びK複合波)により特徴づけられ、眠っている状態に費やす時間の約50%を占める。ステージ3及び4のNREM睡眠(まとめて徐波睡眠としても知られる)は、最も深いレベルの睡眠であり、睡眠時間の約10−20%を占める。REM睡眠は、その間に典型的な物語様の夢の大部分が起こるが、睡眠全体の約20−25%を占める。
【0050】
これらの睡眠ステージは、夜間にわたって特徴的な時間的構成を有する。NREMステージ3及び4は、夜間の最初の3分の1から2分の1で起こり、そして睡眠不足に応じて持続時間が増加する傾向がある。REM睡眠は、夜間に周期的に起こる。約80−100分ごとにNREM睡眠と交互に起こる。REM睡眠期間は、朝に向かうにつれて持続時間が増加する。ヒトの睡眠はまた、一生にわたって特徴的に変化する。小児期及び青年期初期における比較的安定した大量の徐波睡眠の後、睡眠の連続性及び深さは成人の年齢範囲にわたって悪化する。この悪化は、増加する覚醒及びステージ1睡眠並びに減少するステージ3及び4の睡眠により示される。
【0051】
従って、本発明によれば2つの催眠剤、又は少なくとも1つの催眠剤と少なくとも1つの睡眠補助薬との組み合わせが提供される。本発明の組み合わせは、少なくとも短時間作用型又は長時間作用型催眠剤及び睡眠補助薬を含む。本発明のこの局面によれば、短時間作用型又は長時間作用型催眠剤は即時放出又は遅延放出に適合されたガレヌス(galenic)製剤で存在し、そして睡眠補助薬は即時放出に適合されたガレヌス製剤の形態で存在する。
【0052】
より詳細には、本発明は、少なくとも1つの短時間作用型催眠剤と化合物A若しくはそのプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容しうる塩との組み合わせを提供し、ここでプロドラッグは式II;
【化2】

(式中、RはC1−C20アルキルである)
のプロドラッグである。
【0053】
短時間作用型催眠剤及び/又は長時間作用型催眠剤と睡眠補助薬との組み合わせは、患者の睡眠に対する有益な効果を得ることを可能にし、そしてこの効果はこれら2つの催眠剤の各々を患者に別々に摂取した場合よりも大きい。
【0054】
本発明の第一の局面によれば、短時間作用型催眠剤及び化合物Aは即時放出される。次いで2つの薬剤が、それらそれぞれの薬物動態特性に従って血漿中に現れる。一般的に、短時間作用型催眠剤は、長時間作用型催眠剤の前に血漿中に現れる。さらに、本発明のこの局面によれば、各薬剤は互いに独立したその作用機序を展開し、2つの薬剤間で相乗効果を生じる。
【0055】
本発明のさらに別の局面において、短時間作用型催眠剤は遅れて放出され、そして睡眠補助薬、例えば化合物Aは、即時放出される。本発明のこの局面によれば、短時間作用型催眠剤の作用は、血漿中での滞留時間が増加するに従って増加する。従って、2つの薬剤は同時に相乗効果も伴って作用することができる。
【0056】
本発明の枠内で使用可能な短時間作用型催眠剤の例は、特にGABA−A受容体の調節因子、ベンゾジアゼピン、メラトニン誘導体、メラトニン受容体のアゴニストである。例えば、短時間作用型催眠剤は、特にゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン、メラトニン、ラメルテオン、トリアゾラム、エチゾラム、ブロチゾラム及びインディプロン、さらにそれらの誘導体及び/又は混合物の中から選択することができる。
【0057】
本発明の枠内で使用可能な長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬の例は、特に5HT2A受容体のアンタゴニスト、GABA−A受容体の調節因子、ベンゾジアゼピン及びカルシウムイオンの調節因子である。例えば、長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬は、特に化合物A若しくはそのプロドラッグ、テマゼパム、クロナゼパム、ガボキサドール、プレガバリン、さらにそれらの誘導体及び/又は混合物の中から選択することができる。
【0058】
上記の短時間作用型若しくは長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬は、1つ又はそれ以上の不斉炭素原子を含み得る。従ってこれらは、鏡像異性体又はジアステレオマーの形態で存在し得る。これらの鏡像異性体又はジアステレオマー、さらにそれらの混合物(ラセミ混合物を含む)は、本発明の一部である。
【0059】
上記の短時間作用型若しくは長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬は、遊離塩基又は遊離酸、さらにそれらの薬学的に許容しうる塩としても存在することができる。このような塩もまた本発明の一部である。これらの塩は、当該分野で周知の手順に従って薬学的に許容しうる酸又は塩基を用いて製造することができる。
【0060】
上記の短時間作用型若しくは長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬は、水和物又は溶媒和物、すなわち1つ又はそれ以上の水又は溶媒分子との会合又は結合した形態でも存在することができる。このような水和物及び溶媒もまた本発明の一部である。
【0061】
本発明の一実施態様によれば、組み合わせはゾルピデムヘミ酒石酸塩を短時間作用型催眠剤として、及び化合物Aを睡眠補助薬として含む。
【0062】
化合物Aは、当該分野で公知の方法、例えば米国特許第5,134,149号(本明細書に参照により加入される)に以前に記載される方法により合成され得る。
【0063】
【化3】

【0064】
反応スキームIの工程Aにおいて、エステル化反応をラセミα−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール(構造1)及びα−メトキシフェニル酢酸(構造2)の(+)−異性体との間で行う。このエステル化により構造3として同定されるジアステレオマー混合物が生じる。これらのジアステレオマーをシリカゲルクロマトグラフィーにかけて2つのジアステレオマーを分離し、これにより工程Bに示される(+,+)ジアステレオマーを単離する。工程Cにおいて、(+,+)ジアステレオマーを加水分解してα−(2,3−ジメトキシ−フェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジン−メタノールの(+)−異性体を生じる。
【0065】
エステル化反応は当該分野で公知の技術を使用して行うことができる。典型的にはほぼ当量のラセミα−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール及びα−メトキシフェニル酢酸の(+)−異性体を有機溶媒(例えば塩化メチレン、THF、クロロホルム、トルエン)中で接触させ、そして5〜24時間の範囲の期間加熱還流させる。エステル化は典型的には当量のジシクロヘキシルカルボジイミド及び触媒量の4−ジメチルアミノピリジンの存在下で行う。生じたジアステレオマーをジシクロヘキシルウレアのろ過、そしてろ液のエバポレーションにより単離することができる。
【0066】
次いでジアステレオマーをシリカゲルクロマトグラフィーにかけて(+,+)及び(−,+)ジアステレオマーを分離する。このクロマトグラフィー分離は当該分野で公知のように行い得る。ヘキサン及び酢酸エチルの1:1混合物が1つの適切な溶離液である。
【0067】
次いで得られた(+,+)ジアステレオマーを加水分解反応にかけてα−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジン−メタノールの(+)−異性体を生じる。加水分解はジアステレオマーを過剰の塩基(例えば炭酸カリウム)とアルコール性水溶液中で接触させることにより行う。加水分解は約15〜30℃の温度で2〜24時間の範囲の時間行われる。得られたα−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノールの(+)−異性体を次いで水で希釈して塩化メチレンで抽出することにより回収し得る。次いでこれをシクロヘキサン/ヘキサン又は酢酸エチル/ヘキサンのような溶媒系から再結晶することにより精製する。
【0068】
反応スキームIの出発物質を製造するための方法は当該分野で公知である。例えば、米国特許第4,783,471号はラセミα−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジン−メタノールを製造する方法を教示する。この特許は本明細書に参照により加入される。この出願の実施例番号1及び2も適切な方法を教示する。あるいは、ラセミα−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジン−メタノールは、以下の方法で製造することができる。最初に4−ヒドロキシピペリジンを、p−フルオロフェニルエチルブロミドを用いてN−アルキル化反応にかけて4−ヒドロキシ−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−ピペリジンを生じる。この化合物をPh3P.Br2を用いて臭素化して4−ブロモ−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]ピペリジンを生じる。この化合物をMgと接触させてそれによりGrignard試薬を形成し、次いでこれを2,3−ジメトキシベンズアルデヒドと反応させて、所望の生成物(±)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノールを得る。α−メトキシフェニル酢酸の(+)−異性体は当該分野で公知である。化合物Aのプロドラッグは、当該分野において記載される手順に従って製造することができる。例えば米国特許第6,028,083号は、少数の化合物Aのプロドラッグを製造する種々の手順を開示する。
【0069】
本明細書中に記載される短時間作用型催眠剤もまた、当該分野で記載される種々の公知の手順により製造することができる。例えば、ゾルピデムの製造は、米国特許第4,382,938号(参照により本明細書に加入される)に記載される。
【0070】
別の局面によれば、本発明は、有効成分として少なくとも1つの短時間作用型催眠剤及び少なくとも1つの長時間作用型催眠剤並びに/又は睡眠補助薬を含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、有効用量の少なくとも1つの短時間作用型催眠剤及び少なくとも1つの長時間作用型催眠剤並びに/若しくは睡眠補助薬、又はこれらの薬剤の薬学的に許容しうる塩、これらの薬剤の水和物若しくは溶媒和物、さらに少なくとも薬学的に許容しうる賦形剤を含む。
【0071】
賦形剤は、所望の医薬形態及び投与様式によって、当業者に公知の通常の賦形剤の中から選択される。短時間作用型又は長時間作用型催眠剤及び睡眠補助薬は、上記の中から選択することができる。
【0072】
適切な投与の単位用量包装は、剤形:経口投与により、例えば錠剤、特に多層錠剤、コーティングされた錠剤、コアを含む錠剤、軟カプセル剤又は硬カプセル剤、散剤、顆粒剤及び経口液剤又は懸濁剤、舌下形態又は口腔投与形態によるものを含む。
【0073】
本発明の別の実施態様において、本発明の組成物中に存在する長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬、例えば化合物A、並びに短時間作用型催眠剤は即時放出される。
【0074】
本発明のさらに別の実施態様において、本発明の組成物中に存在する長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬、例えば化合物Aは即時放出され、そして短時間作用型催眠剤は遅延放出される。
【0075】
即時放出実体は、医薬品の即時放出をする単位、例えば、即時放出をする錠剤又はカプセル、又はカプセル剤に製剤化された錠剤の形態のいくつかのこれらの単位;1つの錠剤の即時放出系;多層錠剤に組み込まれた即時放出層;錠剤又はペレットの1つ又はそれ以上のコーティング層であり得る。
【0076】
遅延放出実体は、医薬品の遅延放出をする単位、例えば、遅延放出錠剤若しくはカプセル剤;又はカプセル剤に製剤化されたいくつかのこれらの単位;多層錠剤に組み込まれた遅延放出層;遅延放出コア又はコーティング層を組み込まれたいくつかの被覆を有する錠剤;崩壊錠剤の内部の遅延放出ペレットであり得る。
【0077】
長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬、並びに短時間作用型催眠剤を、本発明に従って1つの単一の医薬組成物で、またあるいは同時、別々又は順次的な投与のために別々の医薬組成物で製剤化することができる。
【0078】
経口では、本発明の組成物中に存在する有効成分の用量は、約0.1〜約30mgの長時間作用型催眠剤及び約0.1〜約30mgの短時間作用型催眠剤で変化する。
【0079】
例えば、本発明の組成物は、約0.2〜約15mg、特に1〜10mgの化合物A、及び約0.2〜約20mg、特に1〜10mgの塩基形態のゾルピデムを含有する。
【0080】
より高い投薬量又はより低い投薬量が適切である特定の場合が存在し得;このような投薬量は本発明の範囲外ではない。通常のやり方に従って、各患者に適切な投薬量が医師により投与様式、その患者の体重及び応答により決定される。
【0081】
本発明の組成物の実施態様において、短時間作用型催眠剤を含有する1つ又はそれ以上の即時放出錠剤並びに長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬(例えば化合物A)を含有する1つ又はそれ以上の即時放出錠剤を含むカプセル剤がある。
【0082】
本発明の組成物の別の実施態様において、短時間作用型催眠剤を含有する1つ又はそれ以上の遅延放出錠剤、並びに長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬(例えば化合物A)を含有する1つ又はそれ以上の即時放出錠剤を含むカプセル剤がある。
【0083】
本発明の組成物の別の実施態様は、短時間作用型催眠剤の即時放出ペレット並びに長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬(例えば化合物A)の即時放出ペレットの混合物を含むカプセルからなる。
【0084】
本発明の組成物のさらに別の実施態様は、短時間作用型催眠剤の即時放出ペレット並びに長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬(例えば化合物A)の即時放出ペレットの混合物を含むカプセルからなる。
【0085】
本発明の組成物のさらなる実施態様において、短時間作用型催眠剤並びに長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬(例えば化合物A)の即時放出ペレットを含む錠剤がある。
【0086】
本発明の組成物のさらに別の実施態様は、短時間作用型催眠剤の遅延放出ペレット並びに長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬(例えば化合物A)の即時放出ペレットを含む錠剤からなる。
【0087】
本発明の組成物の別の実施態様は、長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬(例えば化合物A)の即時放出ペレット、並びに短時間作用型催眠剤の即時放出ペレットを含む腸溶性コーティング遅延放出錠剤からなる。
【0088】
本発明の組成物の別の実施態様は、長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬(例えば化合物A)を含有する遅延放出内部コアを含むこと、並びに即時放出コーティング層が長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬(例えば化合物A)を含有することを特徴とする有核錠からなる。
【0089】
本発明の別の局面において、本発明の組み合わせ及び/又は組み合わせを含む医薬組成物で処置することができる特定の疾患、障害又は状態は、限定することなく多種多様な睡眠障害を含む。本明細書で既に記載したが、本発明に従って処置することができる特定の睡眠障害としては、いかなる限定もなしに、不眠症、原発性不眠、睡眠持続障害不眠症、別の精神障害に関連する不眠症、物質誘発性不眠症及び閉塞性睡眠時無呼吸が挙げられる。
【0090】
本発明の組成物は、当業者に公知の方法に従って製造することができる。
【0091】
従って、長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬を含有する1つ又はそれ以上の寸法を小さくした即時放出錠剤、並びに短時間作用型催眠剤を含有する1つ又はそれ以上の寸法を小さくした即時放出錠剤を含有するカプセル剤を以下のように製造することができる。
【0092】
即時放出錠剤は、塩基形態又は塩の有効成分混合物を希釈剤、例えば、微結晶性セルロース、マンニトール、ソルビトール、乳糖と共に直接圧縮することにより製造することができる。他の賦形剤、例えば崩壊剤又は滑沢剤を加えることができる。これらの機能性賦形剤、さらにこれらの希釈剤の選択は、当業者に周知である。
【0093】
別の実施態様によれば、錠剤は、希釈剤、適切な崩壊剤及びポリマーと混合された1つまたはそれ以上の有効成分の混合物を水又は溶媒と共に造粒し、次いで得られたペレットをキャリブレーションし、そして乾燥して、滑沢剤を添加し、続いて圧縮機で圧縮することにより製造することができる。錠剤製造の種々の方法は文献、例えば、H. A. Lieberman及びL Lachmanにより発行されたPharmaceutical dosage forms: Tablets、Vol 1,Dekker N,Y.(1980)中のB. B. Sheth、F. J. Bandelin、R. JF. Shangraw、Compressed tabletsに一般的に記載される。
【0094】
長時間作用型催眠剤、及び/又は睡眠補助薬を含有する1つ又はそれ以上の寸法を小さくした即時放出錠剤、並びに短時間作用型催眠剤を含有する1つ又はそれ以上の寸法を小さくした遅延放出錠剤を含有するカプセル剤を、当該分野で公知の手順に従って製造することができる。
【0095】
短時間作用型催眠剤を含有する遅延放出錠剤は、即時放出錠剤(例えば、上記のもの)を、限定された拡散を有するポリマーコーティングで被覆することにより製造することができる。このようなポリマーは、エチルセルロースコポリマー、さらにメチルメタクリレートポリマー、例えばEudragit TM RS(登録商標)、Eudragit TM RL(登録商標)、Eudragit TM NE(登録商標)という名称の市販されている製品(これらはすべてRohm Pharmaから市販されている)の中から選択することができる。
【0096】
コーティング方法は、コーティング機又は流動床装置で錠剤上でポリマー溶液を粉状化させることからなり得る。使用することができる溶媒は、有機でも水性でもよく、使用されるポリマーの性質に依存する。コーティング方法は、、L. Lachman、H. Lieberman and
J. L. Kanig(Eds)、The Theory and Practice of Industrial Pharmacy、Lea & Febinger、Philadelphia、USA、1986; J. M. Mc Ginity、Aqueous Polymer Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms、Dekker NY、1989中のJ. M. Bakan、Microencapsulationにおいて詳細に記載される。
【0097】
遅延放出錠剤もまた、崩壊剤なしで、製剤中でマトリックスを形成する賦形剤を組み込むことで製造することができる。マトリックスを形成する賦形剤の例は、親水性ポリマー、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースであり、これらは水性液体と接触した場合に膨張し、そして膨張したポリマーネットワークにより有効成分の放出を制御することができる。このような賦形剤は、錠剤の総質量の約10%〜約40%の質量パーセントの量で使用される。
【0098】
遅延放出錠剤はまた、塩基性有効成分の場合に、小腸中の中性pH状態においてその溶解を維持するために、以後に示される中から選択される薬学的に許容しうる有機酸と共に製剤化することができる。使用可能な有機酸の例は、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、アジピン酸及びコハク酸の中のものである。
【0099】
長時間作用型及び短時間作用型催眠剤並びに/又は睡眠補助薬の即時放出ペレットの混合物を含有するカプセルは、以下のように製造することができる。長時間作用型及び短時間作用型催眠剤並びに/又は睡眠補助薬の即時放出ペレットは、水と例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースとの懸濁液中、又は有機溶媒、例えばエタノール、若しくは球状顆粒に対する結合剤として作用する別の適切なポリマー中で有効成分を沈殿させることにより製造することができる。流動床を備えたコーティング装置が通常使用される。球状の顆粒又はペレットを形成するために、高速造粒機−ミキサー又は流動床を備えた回転式造粒機(agglomerator)で凝集させることができる。このような方法は、K. W. Olson、A. M. Mehta、Int. J. Phar. Tech & Prod. Mfr. 6 18−24、1985に記載される。ペレットは、一般的には、例えばC. Vervaet、L. Baert & J. P. Remon、Int. J. Pharm. 116(1995) 131−146に記載されるように、塊状押出し(mass extrusion)又は溶融後の球状化により製造することができる。
【0100】
使用される賦形剤は、典型的には良好な可塑性の性質を有するもの、例えば微結晶性セルロース、マンニトールである。少量の結合剤が一般的に添加される。界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウムも押出しを容易にするために組み込むことができる。
【0101】
長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬(例えば化合物A)の即時放出ペレット、並びに短時間作用型催眠剤の遅延放出ペレットの混合物を含有するカプセルを以下のように製造することができる。即時放出ペレットは上記のように製造することができる。遅延放出ペレットは、塩基性有効成分の場合、小腸中の中性pH下でその溶解の間にペレット内部の局所的pHを維持するために、薬学的に許容しうる有機酸又は上記有機酸の酸塩を含有することができる。
【0102】
あるいは、ペレットは、中性pH下で可溶性で酸pHに対して不透過性のポリマー、例えばEudragit TM S(登録商標)という製品を含有するpH感受性膜でコーティングすることができ、これは低pHレベルでの有効成分の減少した溶解性を補うために、約5より高いpHにて有効成分の透過を可能にする。
【0103】
長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬並びに短時間作用型催眠剤のいくつかの即時放出ペレットを含有する錠剤は、以下のように製造することができる。異なるペレットを、マトリックス自体が催眠剤の1つを含有し得る場合にマトリックスに浸漬することができる。次いで、それらを流体と接触させると錠剤は崩壊し、有効成分、もしくは即時放出ペレットを、又は即時放出ペレットのコーティングから直ちに放出する。
【0104】
長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬の1つ又はいくつかの即時放出ペレット並びに短時間作用型催眠剤の1つ又はいくつかの遅延放出ペレットを含有する錠剤を以下のように製造することができる。
1) 錠剤は、有効成分を含有する即時放出ペレット及び遅延放出ペレットの混合物から成り得、有効成分を含有しないマトリックス中に浸漬される。
2) あるいは、2つの催眠剤及び/又は睡眠補助薬を含有するペレットを、それ自体2つの治療剤のうちの1つを含有するマトリックス中に浸漬することができる。
【0105】
本発明の別の実施態様によれば、遅延放出ペレットを、そのコーティング層からの即時放出を可能する有効成分及び賦形剤を含有する層でコーティングして、有効成分を含まないマトリックス中に浸漬し得る。ペレットの周囲を囲むマトリックスを、錠剤の圧縮がペレットの周囲を囲んでいる膜の完全性を妨げないように製剤化する。錠剤は、流体と接触した場合に崩壊し、長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬を、マトリックス若しくは即時放出ペレットから、又は即時放出ペレットのコーティングから直ちに放出し、次いで短時間作用型催眠剤を、遅延放出ペレットから放出する。
【0106】
本発明の医薬組成物はまた、多層錠剤の形態でも見られ得る。このような多層錠剤は:
−即時放出をする1つ又はいくつかの層、各々が一用量の長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬、並びに最終的には一用量の短時間作用型催眠剤を含有する;
−遅延放出をする1つ又はそれ以上の層、各々が一用量の短時間作用型催眠剤を含有する;並びに
−最終的に、補助的な層、これは有効成分を全く含有しないが、親水性ポリマー、例えばセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース)、又は可溶性希釈剤(例えば、乳糖、ソルビトール、マンニトール)、1つ若しくはそれ以上の他の親水性ポリマー及び/若しくは1つ若しくはそれ以上の他の可溶性賦形剤を含有し、この層は遅延放出層からの有効成分の放出を調節する
を含む。各層は、錠剤の良好な圧縮、滑沢および結合剤を可能にするために、最終的に他の賦形剤を含有する。
【0107】
本発明の別の実施態様は、最終的には薬学的に許容しうる有機酸と共に、 短時間作用型催眠剤を含有するコアからなる。このコアは、長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬を含有するポリマー層でコーティングされ、これは流体との接触の際に急速に又は即時に放出され、一方短時間作用型催眠剤はこのコアから放出される。最終的には、コア及びコーティング層は、結腸での放出を可能にするように製剤化され得る。多重コーティングされた錠剤の各成分は、良好な圧縮、滑沢及び結合剤を可能にするために他の賦形剤を含有し得る。マルチプレイヤー(multiplayer)錠剤及び多重コーティング錠剤の製造プロセスは、H. A. Lieberman and L. Lachman、Dekker N. Y.(1980)により発行されるW. C. Gunsel、Compression coated and layer tablets in pharmaceutical dosage forms: tablets、Vol 1において詳細に記載される。
【0108】
例証の目的のために提供され如何なるようにも本発明の範囲を限定しない以下の実施例により、本発明がさらに説明される。
【0109】
実施例1、2及び3は、化合物Aを製造する1つの方法を示す。実施例4は、本発明の組み合わせの使用方法を示し、そして実施例5〜15は、化合物Aと短時間作用型催眠剤との本発明の組み合わせの医薬組成物の製造のための方法を提供する。
【0110】
本明細書中で使用される場合、「DMF」はジメチルホルムアミドを意味し;「CH2Cl2」は塩化メチレン又はジクロロメタンを意味し;「EtOAc」は酢酸エチルを意味し;「THF」はテトラヒドロフランを意味し;「MeOH」はメタノール又はメチルアルコールを意味し;「K2CO3」は炭酸カリウムを意味し;「NaHCO3」は重炭酸ナトリウムを意味し;「MgSO4」は硫酸マグネシウムを意味し;「POCl3」はオキシ塩化リンを意味し;「NH4OH」は水酸化アンモニウムを意味し;「NH4Cl」は塩化アンモニウムを意味し;「DIBAL−H」は水素化ジイソブチルアルミニウムを意味し;「HCl」は塩酸を意味し;「NaOH」は水酸化ナトリウムを意味し;「n−BuLi」はn−ブチルリチウムを意味し;「NaBH4」は水素化ホウ素ナトリウムを意味し;「ブライン」は飽和塩化ナトリウム水溶液を意味し;「TLC」は薄層クロマトグラフィーを意味し;「Rf」は保持比を意味し;「H2O」は水を意味し;そして「N2」は窒素を意味する。
【0111】
実施例1
実施例1、工程A−Dは、出発物質(±)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール、構造1の製造を示す。
A) 1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンカルボキサミド
イソニペコトアミド(isonipectoamide)(10.9g、85.0mmol)、2−(4−フルオロフェニル)エチルブロミド(15.7g、77.3mmol)、及びK2C03(2.3g、167mmol)の溶液をDMF(280mL)中で調製し、そしてアルゴン下で90−95℃にて終夜撹拌した。冷却した溶液を濃縮して白色油性固体とした。この固体を水とCH2Cl2との間で分配した。層を分離し、水層をCH2Cl2で抽出した。合わせた有機層を水で2回洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、そしてエバポレートして油性固体とした。この固体をEtOAcから再結晶してl−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンカルボキサミドを白色粉末として得た、m.p.177−178℃(分解)。C14H19FN2Oについての元素分析計算値:C,67.18;H,7.65: N、11.19。実測値:C,67.25;H,7.67;N,11.13。
B)4−シアノ−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]ピペリジン
撹拌したPOCl3(25ml、41.12g、268mmol)及び塩化ナトリウム(5.1g、87.3mmol)に、1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンカルボキサミド(8.9g、35.6mmol)を少しずつ加えた。添加完了後、溶液を2時間還流させた。冷却した溶液を希NH4OHに注いでPOCl3を分解した。水溶液を0℃に冷却し、次いでCH2Cl2で2回抽出した。合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過し、そしてエバポレートして8.1gの油性固体を得た。この固体を蒸留して(b.p.150℃、0.1mmHg)、透明な無色油状物(これは凝固した)を得た。この物質をヘキサンから再結晶して4−シアノ−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]ピペリジンを白色針状結晶として得た、m.p. 47−48℃。C14H17FN2についての元素分析計算値:C,72.39;H,7.38;N,12.06。実測値:C,72.62;H,7.49;N,12.12。
C)1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンカルボキシアルデヒド
4−シアノ−1−[2−(4−フルオロフェニル)−エチル]ピペリジン(1.00g、4.3mmol)のTHF(20mL)中の撹拌溶液に、アルゴン下で0℃にてDIBAL−H(4.6mLの1.0M THF溶液、4.6mmol)をシリンジで加えた。終夜室温で撹拌した後、10%水性HCl(25mL)を加え、そしてこの溶液を3時間撹拌した。次いで混合物全体を10%NaOH水溶液(50mL)に注ぎ、次いでエーテルで2回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、そしてエバポレートして淡黄色油状物を得た。この油状物をシリカゲルクロマトグラフィーにかけてEtOAcで溶出した。適切なフラクションを合わせてエバポレートし、油状物を得た。この油状物を蒸留して(b.p.166℃、0.05mmHg)、1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンカルボキシアルデヒド(無色油状物として得られた)を得た。C14H18FNOについての元素分析計算値:C,71.46;H,7.71;N,5.95。実測値:C,71.08;H,7.81;N,5.86。
D)(±)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール
ベラトロール(0.93g、6.7mmol)のTHF(20mL)中の撹拌溶液に、アルゴン下で0℃にて、n−BuLi(2.7mLの2.5Mヘキサン溶液、6.75mmol)を加えた。2.5時間撹拌した後、この溶液を−78℃に冷却し、そしてTHF(25mL)中の1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンカルボキシアルデヒド(1.30g、5.5mmol)で滴下漏斗を経由して処理した。冷却浴を外し、そして溶液を2時間撹拌した。水を加え、層を分離し、そして水層をEtOAcで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、そしてシリカゲルクロマトグラフィーにかけてアセトンで溶出した。適切なフラクションを合わせてエバポレートし、白色固体を得た。この固体をヘキサンから再結晶してラセミα−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノールを光沢のある白色針状結晶として得た、m.p.126−127℃。C22H28FNO3についての元素分析計算値:C,70.75;H,7.56;N,3.75。実測値:C,70.87;H,7.65;N,3.68。
【0112】
実施例2
実施例2、工程A−Fは、(±)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール、構造1を製造する代替の方法を示す。
A)1−(1,1−ジメチルエチル)−1,4−ピペリジンジカルボン酸
1N NaOH(900mL H2O中40g NaOH)及びtert−ブタノール(1800mL)中で撹拌したイソニペコチン酸(107.5g、832mmol)に、二炭酸ジ−tert−ブチル(200g、916mmol)を少しずつ加えた。終夜撹拌した後、この溶液を濃縮し、そして得られた水層をエーテルで3回抽出した。合わせた有機層を水、ブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、そしてエバポレートして白色固体とし、これをEtOAc/ヘキサン(300mL/200mL)から再結晶して1−(1,1−ジメチルエチル)−1,4−ピペリジンジカルボン酸を白色針状結晶として得た、m.p. 147−149℃。
B)4−(N−メトキシ−N−メチルカルボキシアミド)−1−ピペリジンカルボン酸 1,1−ジメチルエチルエステル
1−(1,1−ジメチルエチル(dimethylethy))−1,4−ピペリジンジカルボン酸(50.0g、218mmol)の無水CH2Cl2(500mL)中の撹拌溶液に、N2下で2Lフラスコ中で1,1'−カルボニルジイミダゾール(38.9g、240mmol)を少しずつ加えた。1時間撹拌した後、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(23.4g、240mmol)を1度に加えた。終夜撹拌した後、溶液を1N HClで2回、飽和NaHCO3で2回、ブラインで1回洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、そしてエバポレートして油状物とした。蒸留により4−(N−メトキシ−N−メチルカルボキシアミド)−1−ピペリジンカルボン酸 1,1−ジメチルエチルエステルを透明油状物として得た、b.p. 120−140℃、0.8mm。
C)4−(2,3−ジメトキシベンゾイル)−1−ピペリジンカルボン酸 1,1−ジメチルエチルエステル
n−ブチルリチウム(14.5mLの2.5Mヘキサン溶液、36.3mmol)を、ベラトロール(5.00g、36.2mmol)のTHF(50mL、無水)中の撹拌溶液にアルゴン下にて0℃でシリンジで加えた。氷浴を外し、そして混合物を90分間撹拌した。混合物を−78℃に冷却し、そしてシリンジによりTHF(50mL、無水)中の4−(N−メトキシ−N−メチルカルボキシアミド)−1−ピペリジンカルボン酸 1,1−ジメチルエチルエステル(9.20g、33.8mmol)を用いて処理した。冷却用ドライアイス−アセトン浴を外し、そして混合物を室温になるようにした。3時間撹拌後、飽和NH4Cl水溶液を加え、そして混合物を終夜撹拌した。層を分離し、そして水層をエーテルで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、そしてエバポレートして琥珀色油状物として得た。この油状物をシリカゲルクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン中20%EtOAcで溶出した。適切なフラクションを合わせてエバポレートし琥珀色油状物とした。この油状物を蒸留して4−(2,3−ジメトキシベンゾイル)−1−ピペリジンカルボン酸 1,1−ジメチルエチルエステルを無色油状物として得た。(b.p.225−250℃、.05mm)。C19H27NO5についての元素分析計算値:C,65.31;H,7.79;N,4.01。実測値:C,65.04;H,7.92;N,4.11。
D)4−(2,3−ジメトキシフェニル)−4−ピペリジニルメタノン
4−(2,3−ジメトキシベンゾイル)−1−ピペリジンカルボン酸 1,1−ジメチルエチルエステル(7.75g、22.2mmol)をトリフルオロ酢酸(50mL、650mmol)に溶解し、45分間撹拌した。溶液全体をエーテル(900mL)中に注ぎ、そして終夜放置した。ろ過により4−(2,3−ジメトキシフェニル)−4−ピペリジニルメタノン トリフルオロ酢酸塩を微細白色針状結晶として得た、m.p. 123℃。C14H19NO3.CF3CO2Hについての元素分析計算値:C,52.89;H,5.55;N,3.86。実測値:C,52.77;H,5.62;N,3.82。
得られた4−(2,3−ジメトキシフェニル)−4−ピペリジニルメタノン トリフルオロ酢酸塩を水に溶解し、塩基性になるまでNaOH(10%水溶液)で処理し、そしてジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、そしてエバポレートして4−(2,3−ジメトキシフェニル)−4−ピペリジニルメタノンを油状物として得た。
E)(2,3−ジメトキシフェニル)[1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジニル]メタノン 一塩酸塩
4−(2,3−ジメトキシフェニル)−4−ピペリジニルメタノン(8.00g、32.1mmol)及び2−(4−フルオロフェニル)エチルブロミド(6.52g、32.1mmol)の溶液をDMF(90mL)中で調製し、K2CO3(7.0g、50.7mmol)で処理し、次いで撹拌してアルゴン下で終夜80℃に加熱した。冷却した溶液を2/1 EtOAc/トルエン及び水に注いで分配した。層を分離し、そして水層を2/1 EtOAc/トルエンで抽出した。合わせた有機層を水で2回、ブラインで1回洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、そしてエバポレートして11.0gの油状物を得た。この油状物をシリカゲルクロマトグラフィーにかけてEtOAcで溶出した。適切なフラクションを合わせ、濃縮し、酢酸エチルに溶解し、そしてHCl/酢酸エチルで処理した。(2,3−ジメトキシフェニル)[1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジニル]−メタノン一塩酸塩を沈殿物として得た、m.p. 225−227℃(分解)。C22H26FNO3.HClについての元素分析計算値:C,64.78;H,6.67;N,3.43。実測値:C,64.44;H,6.73;N,3.41。
F)(±)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール
(2,3−ジメトキシフェニル)[1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジニル]−メタノン(6.0g、16.2mmol)のMeOH(100mL)中の撹拌溶液に、0℃にてNaBH4(1240mg、32.8mmol)を2回に分けて1時間かけて加えた。終夜撹拌した後、溶液を濃縮して固体とした。この固体を水とエーテルとの間で分配した。層を分離し、そして水層をエーテルで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、そしてエバポレートして固体とした。この固体をシリカゲルクロマトグラフィーにかけて、アセトンで溶出した。適切なフラクションを合わせてエバポレートし、白色固体を得た。この固体をシクロヘキサンから再結晶して(±)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)−エチル]−4−ピペリジンメタノールを白色針状結晶として得た、m.p. 126−127℃。C22H28FNO3についての元素分析計算値:C,70.75;H,7.56;N,3.75。実測値:C,70.86;H,7.72;N,3.93。
【0113】
実施例3
本実施例は、式Iの化合物の製造を示す。
(+)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノールの製造
A)ジアステレオマーの製造
3.90g(10.4mmol)の(±)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール、1.74g(10.4mmol)のS−(+)−α−メトキシフェニル酢酸、2.15g(10.4mmol)の1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド及び0.1gの4−ジメチルアミノピリジンのクロロホルム(75mL)溶液を17時間還流して室温まで放冷させ、そして濾過した。ろ液を濃縮し、酢酸エチル/ヘキサン(1:1)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけて2つのジアステレオマー、Rf=0.1及び0.2(TLC EtOAc/ヘキサン、1:1)を得た。中間のフラクションを再度クロマトグラフィーにかけてさらなる物質を得た。Rf=0.2のフラクションを合わせて単一のジアステレオマーエステル、(+,+)−(2,3−ジメトキシフェニル)[1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジニル]メチル−α−メトキシベンゼン−アセテートを得た。
B)(+)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノールの製造
0.97g(1.9mmol)の上述のジアステレオマーエステル(Rf=0.2)の、メタノール(25mL)中の撹拌溶液に、0.5g(3.6mmol)の炭酸カリウム及び5.0mLの水を加えた。17時間室温で撹拌した後、反応混合物を水で希釈し、そして塩化メチレンで2回抽出した。合わせた抽出物を水、ブラインで洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。ろ過した後、ろ液を濃縮して油状物とし、そして40mLのシクロヘキサン/ヘキサン(1:1)から結晶化させて(+)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール、m.p. 112−113℃、[α] D20 = +13.9°を得た。
【0114】
実施例4
GABA受容体のアンタゴニスト及び5HT2A受容体の阻害剤の組み合わせの、睡眠の質の改善における効果の検討。
この検討のために、雄性Sprague−Dawleyラットの4つのグループを使用し、各グループは5〜9匹のラットを含む。
グループAには0.3mg/kg i.p.の化合物Aを投与する(腹腔内)
グループBには3mg/kg p.o.のゾルピデムを投与する(経口、ヘミ酒石酸塩)
グループCには組み合わせ−0.3mg/kg i.p.の化合物A及び3mg/kg p.o.のゾルピデムヘミ酒石酸塩を投与し、これら2つの化合物は、上述のように、5分間隔で経口又は腹腔内投与される。
【0115】
最後に、グループDには10mg/kg p.o.のゾルピデムを投与する(経口、ヘミ酒石酸塩)。データを、動物に担体(蒸留水及びメチルセルロース)のみを与える0日目(参照日)に記録し、そして動物に有効成分を投与する1日目に記録する。データを毎日6時間記録し、記録開始の15分後に有効成分を投与する。
【0116】
組み合わせの相乗効果は、起床時間(6時間の記録の間の起床時間合計)の減少、非急速眼球運動(NREM)持続時間(6時間の記録の間のNREM睡眠の持続時間合計)の増加、及びNREM睡眠期間の数の全体的な減少により測定される。従って、本発明の組み合わせは、患者における睡眠の質を増強する。
【0117】
実施例5
化合物A及びゾルピデムを含有するカプセルの製造
小さい寸法の錠剤の形態で、睡眠補助薬として1.18mgの化合物A及び短時間作用型催眠剤として6.22mgのゾルピデムヘミ酒石酸塩を含有するカプセルを製造する。錠剤は以下の表Iに列挙される成分を含有する。
【表1】

【0118】
最初に化合物A、乳糖一水和物、糊化澱粉、クロスカルメロース(croscaramellose)ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムの混合物を調製した。次いでこの混合物をバイコニックミキサーに30分間入れた。次いで均質な混合物を、通常の回転式圧縮機を使用することにより50mg錠剤の形態に圧縮した。
【0119】
ゾルピデムヘミ酒石酸塩錠剤は以下の表IIに示される成分を使用して製造した。
【表2】

【0120】
ゾルピデムヘミ酒石酸塩、乳糖、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを一緒に混合し、次いで水を用いて造粒した。次いで顆粒を乾燥し、そしてキャリブレーションした。次いで顆粒をステアリン酸マグネシウムと混合し、回転式圧縮機を使用することにより錠剤あたり60mgの塊に圧縮した。
次いで、1mgの化合物A及び6.42mgのゾルピデムヘミ酒石酸塩の用量を含む錠剤を硬ゼラチンカプセル中に導入した。
【0121】
カプセル溶解プロフィールを、米国薬局方のIIデバイスを使用することにより、2つの溶解媒体を用いて測定することができる:
− 900mlの塩酸0.01M及び
− 900mlのリン酸カリウム緩衝液0.05M(pH6,8)、撹拌しながら(50回/分)37+/−0.5℃に維持。
【0122】
実施例6
即時放出化合物A錠剤及び遅延放出ゾルピデム錠剤を含有するカプセルの製造
即時放出化合物A錠剤は、上記の実施例5に記載されるプロセスに従って製造した。
遅延放出ゾルピデムヘミ酒石酸塩錠剤は、以下の表IIIに示される組成を有する錠剤を得るように、上記の実施例5に記載される方法に従って製造した。
【表3】

【0123】
同じ湿式造粒法及び圧縮法を使用した(例えば上記の実施例5におけるゾルピデムヘミ酒石酸塩について記載された方法)。5mgのゾルピデム塩基(6.22mgのゾルピデムヘミ酒石酸塩に相当)を含有する50mgの遅延放出錠剤を1つ又はそれ以上、及び1mgの化合物Aを含有する50mgの即時放出錠剤を1つ又はそれ以上含有するカプセルを製造した。
このようにして製造されたカプセルのインビトロ溶解プロフィールは、上記の実施例5において記載される方法を使用して確立することができる。
【0124】
実施例7
即時放出化合物Aペレット及び即時放出ゾルピデムペレットの混合物を含むカプセルの製造
50gの化合物A及び100gのポビドン(Pladone K29/32、BASF)の670gのエタノール中懸濁液を調製した。次いでその懸濁液の750gを、流動床乾燥機を使用することにより、16−18メッシュサイズの1060gの細粒上で微粉化した。次いで、62.2gのゾルピデム酒石酸塩(50gのゾルピデム塩基に対応)及び100gのポビドン(Pladone K29/32、BASF)の670gのエタノール中懸濁液を調製した。次いでその懸濁液の750gを流動床乾燥機を使用することにより、16−18メッシュサイズの1060gの細粒上で微粉化した。2つのペレットの混合物を、5部のゾルピデム酒石酸塩に対して1質量部の化合物Aの比で調製した。この混合物を、1mgの化合物A及び5mgの塩基形態のゾルピデム(6.22mgのゾルピデム酒石酸塩に相当)の総量を有する硬ゼラチンカプセルに入れた。それぞれのペレットの量は、用量を調節するために変更することができる。
このようにして製造されたカプセルのインビトロ溶解プロフィールは、上記の実施例5に記載される方法を使用して確立することができる。
【0125】
実施例8
即時放出化合物Aペレット及び遅延放出ゾルピデムペレットの混合物を含むカプセルの製造
即時放出化合物Aペレットを、上記の実施例7に記載される方法に従って製造した。同様に、ゾルピデムヘミ酒石酸塩ペレットを、実施例5で上で記載されるように製造した。
25gのメタクリレートコポリマー(Eudragit TM RL 100、Rohm Pharma)、143gのメタクリレートコポリマー(Eudragit TM RS 100、Rohm Pharma)及び18.7gのクエン酸エチル(Eudrafex TM、Rohm Pharma)を含む溶液を、1180gのイソプロパノール/アセトン 60:40(wt/wt)混合物中で調製した。ゾルピデムヘミ酒石酸塩ペレットを、流動床乾燥機で微粉化することによりこのポリマー混合物でコーティングし、コーティングの最終的な量が、20質量%の非被覆ペレットの量であることを示した。35℃にて24時間ペレットを飽和(saturation)させた後、コーティングしたゾルピデムヘミ酒石酸塩ペレット及び化合物Aペレットの混合物を1:2(化合物A/ゾルピデム)の比で調製し、そしてこの混合物を、5mgの化合物A及び10mgのゾルピデム塩基に対応するカプセルごとの量になるようにゼラチンカプセルに入れた。
このようにして製造されたカプセルのインビトロ溶解プロフィールは、上記の実施例5に記載される方法を使用して確立することができる。
【0126】
実施例9
即時放出化合物Aペレット及び即時放出ゾルピデムペレットを含む錠剤の製造
化合物A及びゾルピデムヘミ酒石酸塩ペレットを、上記実施例7に記載される方法に従って製造した。
2種のペレットの混合物を、2質量部のゾルピデムヘミ酒石酸塩に対して1質量部の化合物Aの比で調製し、そして0.1%のステアリン酸マグネシウムを加えた。次いでこの混合物をバイコニカルミキサーに30分間入れた。
次いで均質な混合物を、従来の回転式圧縮機を使用することにより、5mgの化合物A及び12.44mgのゾルピデムヘミ酒石酸塩(10gの塩基形態のゾルピデムに相当)を有する錠剤になるように圧縮した。このようにして製造されたカプセルのインビトロ溶解プロフィールは、上記の実施例5に記載される方法を使用することにより確立することができる。
【0127】
実施例10
即時放出化合物Aペレット及び遅延放出ゾルピデムペレットを含む錠剤の製造
即時放出化合物Aペレットを、実施例7に記載される方法に従って製造し、そして遅延放出ゾルピデムヘミ酒石酸塩ペレットを実施例8に記載される方法に従って製造した。
2種のペレットの混合物を、2部の化合物A及び6部のゾルピデムヘミ酒石酸塩の比で調製し、そして0.2%のステアリルフマル酸マグネシウムを加えた。次いでこの混合物をバイコニカルミキサーに30分間移した。次いで均質な混合物を、従来の回転式圧縮機を使用することにより、総量が4mgの化合物A及び14.93mgのゾルピデムヘミ酒石酸塩(12gのゾルピデム塩基に対応)になるように圧縮した。このようにして製造したカプセルのインビトロ溶解プロフィールは、上記の実施例5に記載される方法を使用することにより確立することができる。
【0128】
実施例11
即時放出化合物Aペレット及び即時放出ゾルピデムペレットを含む遅延放出腸溶性錠剤の製造
化合物A及びゾルピデムヘミ酒石酸塩の両方を含む錠剤を、実施例9に記載されるプロセスに従って製造した。次いで錠剤を、当業者に公知で本明細書以後に記載されるプロセスに従ってコーティングした。
46gのメタクリレートコポリマー(Eudragit TM RL100、Rohm Pharma)、295gのメタクリレートコポリマー(Eudragit TM RS100、Rohm Pharma)及び40gのクエン酸エチル(Eudrafex TM、Rohm Pharma)の2280gのイソプロパノール/アセトン混合物65:35(wt/wt)中の溶液を調製した。
3.2mgの化合物A及び12.44mgのゾルピデムヘミ酒石酸塩を含む錠剤を、コーティングパンで微粉化することによりポリマー混合物でコーティングし、コーティングの最終的な量は非被覆ペレットの量の5〜10質量%であることを示した。
【0129】
実施例12
即時放出化合物A層及び即時放出ゾルピデム層を含む二層錠剤の製造
顆粒Aを乾燥混合物により、そして顆粒Bを湿潤混合物により実施例5に従って以下の表IVに列挙される組成を使用して製造した。
【表4】

【0130】
次いでこの混合物を、代替の(alternative)圧縮機を使用することにより二層錠剤に圧縮し、第一の即時放出層は5mgの化合物Aを含む200mgの量の顆粒Aを含み、そして第二の即時放出層は12.44mgのゾルピデムヘミ酒石酸塩(10mgのゾルピデム塩基に相当)を含む200mgの量の顆粒Bを含む。
このようにして製造されたカプセルのインビトロ溶解プロフィールは上記の実施例5記載される方法を使用して確立することができる。
【0131】
実施例13
即時放出化合物A層及び遅延放出ゾルピデム層を含む二層錠剤の製造
実施例5に従い以下の表Vに列挙される組成を使用して、顆粒Cを乾燥混合物により、そして顆粒Dを湿潤混合物により製造した。
【表5】

【0132】
次いでこの混合物を、代替の圧縮機を使用することにより二層錠剤に圧縮し、第一の即時放出層は3.75mgの化合物Aを含む150mgの量の顆粒Cを含み、そして第二の遅延放出層は、15.50mgのゾルピデムヘミ酒石酸塩(12.45mgのゾルピデム塩基に相当)を含む200mgの量の顆粒Dを含む。
このようにして製造されたカプセルのインビトロ溶解プロフィールは、上記の実施例5に記載される方法を使用することにより確立することができる。
【0133】
実施例14
1つの即時放出化合物A、1つの不活性層及び第三の遅延放出ゾルピデム層を含む三層錠剤の製造
実施例5に従って以下の表VIに列挙される組成を使用して、顆粒E及びFを乾燥混合物により、そして顆粒Gを湿潤混合物により製造した。
【表6】

【0134】
実施例12に従って、この混合物を三層錠剤(2.5mgの化合物Aを含む125mgの量の顆粒Eの外部層、顆粒Fの125mgの中間層、及び15mgのゾルピデムヘミ酒石酸塩(12.06mgのゾルピデム塩基に相当)を含む第三の顆粒Gの300mgの量の外部層)に圧縮した。
【0135】
実施例15
ゾルピデムの内部コア及び化合物Aの外部コーティングを含む有核錠の製造
実施例5に従い、そして以下の表VIIに列挙される組成に基づいて顆粒を製造した。
【表7】

【0136】
第二の層を用いて乾式コーティングの操作を行う前に、内部コアを形成する顆粒を、代替の圧縮機を使用することにより小錠剤に圧縮した。この操作により12.44mgのゾルピデムヘミ酒石酸塩(10mgのゾルピデム塩基に相当)を含有する80mgの遅延放出錠剤を生じた。
外部コーティング層を形成する顆粒を、小さな内部コア錠剤でも許容される代替の圧縮機を使用することにより圧縮した。外部層は、301mgの量を有し5mgの化合物Aを含有する。
【0137】
その局面の別の局面によれば、本発明の目的は、少なくとも1つの長時間作用型催眠剤及び/又は睡眠補助薬を、少なくとも1つの短時間作用型催眠剤と組み合わせて、睡眠障害を予防及び/又は処置することを目的とした医薬の製造のために使用することである。
【0138】
本発明は特定の前出の実施例により説明されたが、それにより限定されると解釈されるべきではない;しかしむしろ、本発明は、本明細書で以前に開示された包括的な領域を包含する。種々の変更及び実施態様が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなくなされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの短時間作用型催眠剤及びR−(+)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール(化合物A)若しくは式II:
【化1】

(式中RはC1−C20アルキルである)
を有するそのプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容しうる塩を含む組み合わせ物。
【請求項2】
短時間作用型催眠剤が、即時放出又は遅延放出に適合されたガレヌス形態で存在し、そして化合物Aが即時放出に適合されたガレヌス形態で存在する、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項3】
短時間作用型催眠剤がGABA−A受容体の調節因子、ベンゾジアゼピン、メラトニン誘導体、又はメラトニン受容体のアゴニストである、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項4】
短時間作用型催眠剤が、ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン、メラトニン、ラメルテオン、トリアゾラム、エチゾラム、ブロチゾラム及びインディプロン又はそれらの誘導体若しくは任意の組合せの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項5】
短時間作用型催眠剤が、化合物Aと組み合わされたゾルピデム又はその薬学的に許容しうる塩である、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項6】
少なくとも1つの短時間作用型催眠剤及びR−(+)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール(化合物A)若しくは式II:
【化2】

(式中、RはC1−C20アルキルである)
を有するそのプロドラッグ又はその薬学的に許容しうる塩を、1つ又はそれ以上の薬学的に許容しうる希釈剤、賦形剤又は担体と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項7】
短時間作用型催眠剤が、即時放出又は遅延放出に適合されたガレヌス形態で存在し、そして化合物Aが即時放出に適合されたガレヌス形態で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
短時間作用型催眠剤が、GABA−A受容体の調節因子、ベンゾジアゼピン、メラトニン誘導体、又はメラトニン受容体のアゴニストである、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
短時間作用型催眠剤が、ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン、メラトニン、ラメルテオン、トリアゾラム、エチゾラム、ブロチゾラム及びインディプロン又はそれらの誘導体若しくは任意の組み合わせの混合物からなる群より選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
短時間作用型催眠剤が、化合物Aと組み合わされた、ゾルピデム又はその薬学的に許容しうる塩である、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
短時間作用型催眠剤及び化合物Aが、即時放出される、請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
短時間作用型催眠剤が遅延放出され、そして化合物Aが即時放出される、請求項6に記載の組成物。
【請求項13】
短時間作用型催眠剤を含有する1つ又はそれ以上の即時放出錠剤、及び化合物Aを含有する1つ又はそれ以上の即時放出錠剤を含むカプセル中にある、請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
短時間作用型催眠剤を含有する1つ又はそれ以上の遅延放出錠剤、及び化合物Aを含有する1つ又はそれ以上の即時放出錠剤を含むカプセル中にある、請求項6に記載の組成物。
【請求項15】
短時間作用型催眠剤を含む即時放出ペレット及び化合物Aを含む即時放出ペレットの混合物を含むカプセル中にある、請求項6に記載の組成物。
【請求項16】
短時間作用型催眠剤を含む遅延放出ペレット及び化合物Aを含む即時放出ペレットの混合物を含むカプセル中にある、請求項6に記載の組成物。
【請求項17】
短時間作用型催眠剤及び化合物Aの即時放出ペレットを含有する錠剤中にある、請求項6に記載の組成物。
【請求項18】
短時間作用型催眠剤の遅延放出ペレット及び化合物Aの即時放出ペレットを含有する錠剤中にある、請求項6に記載の組成物。
【請求項19】
化合物Aの即時放出ペレット及び短時間作用型催眠剤の即時放出ペレットを含む遅延放出腸溶性コーティング錠剤中にある、請求項6に記載の組成物。
【請求項20】
(a)各層が一用量の化合物A及び場合により一用量の短時間作用型催眠剤を含有する、1つ又はそれ以上の即時放出層、
(b)各層が一用量の短時間作用型催眠剤及び場合により化合物Aを含有する、1つ又はそれ以上の遅延放出層、並びに
(c)不活性層、
を含む多層錠剤中にある、請求項6に記載の組成物。
【請求項21】
化合物Aを含有する遅延放出内部コアを含み、そして即時放出コーティング層が短時間作用型催眠剤を含有する有核錠中にある、請求項6に記載の組成物。
【請求項22】
睡眠障害の処置を目的とした医薬の製造のための、少なくとも1つの短時間作用型催眠剤及びR−(+)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール(化合物A)若しくは式II:
【化3】

(式中、RはC1−C20アルキルである)
を有するそのプロドラッグ又はそれらの薬学的に許容しうる塩を含む組合せ物の使用。
【請求項23】
睡眠障害が不眠症である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
睡眠障害が原発性不眠症である、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
睡眠障害が睡眠持続障害不眠症である、請求項22に記載の使用。
【請求項26】
睡眠障害が別の精神障害に関連する不眠症である、請求項22に記載の使用。
【請求項27】
睡眠障害が物質誘発性不眠症である、請求項22に記載の使用。
【請求項28】
睡眠障害が閉塞性睡眠時無呼吸不眠症である、請求項22に記載の使用。
【請求項29】
短時間作用型催眠剤が、ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン、ザレプロン、メラトニン、ラメルテオン、トリアゾラム、エチゾラム、ブロチゾラム及びインディプロン又はその誘導体もしくはそれらの任意の組み合わせの混合物からなる群より選択される、請求項22に記載の使用。
【請求項30】
組み合わせが化合物A及びゾルピデム又はその薬学的に許容しうる塩である、請求項22に記載の使用。

【公表番号】特表2009−504760(P2009−504760A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527114(P2008−527114)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/032026
【国際公開番号】WO2007/024599
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(500137976)アベンティス・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテツド (76)
【Fターム(参考)】