説明

傾斜形状の加工方法

【課題】基体の表面に凹部又は孔部を形成するに際して、その内側面を傾斜させることができ、しかもコストや生産性を良好にした、傾斜形状の加工方法を提供する。
【解決手段】基体10上に第1マスク11を形成する工程と、第1マスク11を用いてエッチングし、開口部を形成する工程と、ポリマー膜を形成する堆積工程と、ポリマー膜を全面エッチバックし、第1マスク11の内側面及び開口部の内側面に第2マスク16(14)を形成するエッチバック工程と、第1マスク11及び第2マスク16を用いて開口部内をエッチングする開口部内エッチング工程と、を備える。堆積工程とエッチバック工程とを繰り返すことにより、第2マスク16(18)の厚さを所望の厚さに調整し、この第2マスクの厚さの調整と、開口部内エッチング工程とを繰り返すことにより、開口部(凹部19)の内側面を実質的に傾斜させる、傾斜形状の加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体の表面に凹部又は孔部を形成するに際の、傾斜形状の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体微細加工技術を応用したマイクロマシニング技術を用い、大きさが数100[μm]程度の非常に微小な構造体を製造する、MEMS(Micro Electro Mechanical System)と呼ばれる技術が注目を集めている。このような微小構造体、すなわちMEMSデバイスは、各種センサや光通信分野における光スイッチ、高周波(RF)部品など、種々のものに応用が検討されている。
【0003】
このMEMSデバイスやICチップの三次元実装におけるエッチング技術では、被加工体、すなわち基体としてはシリコンが用いられる。シリコンの微細加工技術では、特に凹部や孔部を形成する場合、シリコンの結晶方位に依存しない異方性エッチング(ドライエッチング)が有効とされている。
【0004】
従来、MEMSデバイスやICチップの三次元実装などに広く応用される異方性エッチング技術として、特許文献1に記載された「シリコンの異方性エッチングのための方法」が知られている。この技術は、プラズマ中で互いに交互に連続し、無関係に制御されるエッチング工程およびポリマー析出工程を用いてシリコン基板にミクロ構造およびナノ構造を異方性エッチングする方法において、堆積するポリマーの量がポリマー析出工程の過程で減少することを特徴とする方法であり、特に凹部や孔部の内側面を、基板面(加工面)に対してより垂直に形成することができる、垂直性に優れた加工方法である。
【0005】
ところで、特にMEMSデバイスの加工では、例えば液滴吐出のためのノズルのラッパ形状(テーパ形状)など、垂直加工ではなく、基体加工面の垂直方向(加工方向)に対し、凹部や孔部の内側面を比較的大きな角度、例えば30°から60°といった角度で傾斜させる傾斜加工が求められることがある。
【特許文献1】特表2001−505001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の方法では、凹部や孔部の内側面を、基体加工面に対して垂直に近い角度(例えば85°程度以上)で傾斜を持たせることは可能であるものの、例えば30°から60°といった傾斜角度を持たせるのは困難である。
【0007】
そこで、図3(a)に示すようにシリコンからなる基体1の加工面1aに対してマスクを形成する際、薄膜のマスクパターン2aを多段に積み上げることでマスク2を形成し、その内部形状、すなわち孔部3の形状を例えば実質的に逆テーパ状にすることが考えられる。すなわち、マスクパターン2aを多段に積み上げる際にその開口部の大きさを少しずつ広げていき、得られるマスク2の孔部3の内側面を階段状に広げていくことで、この孔部3の形状を実質的に逆テーパ状とする。
【0008】
そして、このようなマスク2を用いて基体1をエッチングによって加工するが、その際、図3(b)に示すように所定の深さ基体1をエッチングした後、マスク2を所定の厚さ、例えば図3(c)に示すようにマスクパターン2aをRIE(反応性イオンエッチング)で一段分選択的にエッチング除去する。そして、前記の所定の深さ基体1をエッチングする工程と、マスクパターン2aを一段分エッチング除去する工程とを交互に繰り返すことにより、図3(d)に示すようにマスク2の孔部3の形状に対応したパターン、すなわち凹部パターン4を基体1の加工面1aに形成する。
このような加工方法を採用することで、実質的に逆テーパ状となっている前記の孔部3の形状に対応させて、凹部パターン4の内側面を階段状に広がらせることにより、この内側面を実質的な傾斜面とすることができる。
【0009】
ところが、このような加工方法にあっては、例えば図3(b)に示した基体1のエッチング工程では誘導結合(ICP)方式のエッチング装置が用いられ、一方、図3(c)に示したマスクパターン2aを一段分エッチング除去する工程ではRIEエッチング装置が用いられるなど、これらの工程は互いに異なる装置で行われる。よって、これらの工程を繰り返すには、装置間を移動するための時間や装置を稼働状態するための初期調整時間が必要となり、したがってコストや生産性の面で大きな課題を残してしまう。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、基体の表面に凹部又は孔部を形成するに際して、該凹部又は孔部の内側面を例えば30°から60°程度に傾斜させることができ、しかもその際のコストや生産性を良好にした、傾斜形状の加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の傾斜形状の加工方法は、基体の表面に凹部又は孔部を形成するに際して、該凹部又は孔部の内側面を実質的に傾斜させる傾斜形状の加工方法であって、
基体上に、前記凹部又は孔部の開口形状に対応する第1マスクを形成する第1マスク形成工程と、
前記第1マスクを用いて前記基体をエッチングし、形成する凹部又は孔部の開口部を形成する開口部形成工程と、
ポリマーを堆積して前記第1マスク上及び前記開口部内にポリマー膜を形成する堆積工程と、
前記ポリマー膜を全面エッチバックし、前記第1マスクの内側面及び前記開口部の内側面に前記ポリマー膜を残してこれを第2マスクとするエッチバック工程と、
前記第1マスク及び第2マスクを用いて前記開口部内をエッチングする開口部内エッチング工程と、を備えてなり、
前記堆積工程と前記エッチバック工程とを複数回繰り返すことにより、前記開口部内エッチング工程で用いる第2マスクの厚さを所望の厚さに調整し、
前記堆積工程と前記エッチバック工程とによる第2マスクの厚さの調整と、前記開口部内エッチング工程とを複数回繰り返すことにより、前記開口部の内側面を実質的に傾斜させることを特徴としている。
【0012】
この傾斜形状の加工方法によれば、前記堆積工程と前記エッチバック工程とによる第2マスクの厚さの調整と、前記開口部内エッチング工程とを複数回繰り返すことにより、形成する凹部又は孔部の開口部の内側面を階段状に広がらせ、これによって得られる凹部又は孔部の内側面を実質的な傾斜面とすることができる。その際、第2マスクの厚さと、開口部内エッチング工程の際のエッチング深さとを適宜に設定することにより、得られる凹部又は孔部の内側面の傾斜角度を、前記基体の表面に対して例えば30°から60°の範囲内にするなど、所望の傾斜角に形成することができる。
また、前記堆積工程と前記エッチバック工程とによる第2マスクの厚さの調整と、前記開口部内エッチング工程とは、同じ装置内で行うことができることから、これら第2マスクの厚さの調整と、開口部内エッチング工程とを複数回繰り返しても、その都度基体を装置間で移動させるなどのロスがなく、したがってコストや生産性の向上を図ることができる。
【0013】
また、前記の加工方法においては、前記開口部の内側面の、前記基体の表面に対する実質的な傾斜角を、前述したように30°以上60°以下とすることができる。
また、前記の加工方法においては、前記基体がシリコンからなっているのが好ましく、このようにすれば、エッチング等に関して、既存のシリコン微細加工技術を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の傾斜形状の加工方法を詳しく説明する。
図1(a)〜(e)、図2(a)〜(d)は、本発明の傾斜形状の加工方法を、シリコン基板に対して逆テーパ形状の凹部を形成・加工するのに適用した場合の、一実施形態を示す工程説明図である。なお、ここで形成する凹部としては、その開口形状が円形や矩形等の閉じた形状であってもよく、また、細長い溝形状のように、一端もしくは両端が開いた形状のものであってもよい。
【0015】
これらの図において符号10はシリコン基板(基体)であり、本実施形態ではまず、図1(a)に示すようにこのシリコン基板10上に、形成する凹部の開口形状に対応する第1マスク11を形成する(第1マスク形成工程)。すなわち、形成する凹部の開口形状と同じ開口を有した第1マスク11を形成する。ここで、この第1マスク11の形成については、例えばシリコン基板10上にSiOからなる酸化膜をCVD法等によって形成し、続いてこの酸化膜上に、公知のレジスト技術、および露光・現像技術によってレジストパターンからなるマスクを形成する。その後、このレジストマスクを用いて前記酸化膜をパターニングし、酸化膜からなる第1マスク11を得る。
【0016】
次に、前記第1マスク11を用いてシリコン基板10をエッチングし、図1(b)に示すように目的とする凹部の開口部12を形成する(開口部形成工程)。この開口部12の開口幅dとしては、例えば20〜30μm程度とされる。ここで、このシリコン基板10のエッチングについては、例えば、誘導結合(ICP)方式のエッチング装置を用い、SFガスプラズマを用いることで行う。すなわち、SFガスプラズマによって生成したFラジカル(F)およびFイオンにより、シリコン基板10のエッチングを行う。なお、このシリコン基板10のエッチングのメカニズムについては、後述するように、主にシリコンとFラジカルとの化学反応によって起こる。このようにしてエッチングを行うと、このエッチングはシリコンに対して等方性エッチングとして作用する。
【0017】
しかし、本発明において、この開口部12の形成工程、および後述する開口部内エッチング工程では、エッチング深さを例えば数μm(1〜5μm程度)と十分に浅くし、したがって得られる開口部12の側壁方向へのエッチングがほとんど進行しない状態でエッチングを停止する。これにより、この開口部形成工程では、実質的に等方性でなく異方性のエッチングとして作用させることができる。
【0018】
次いで、前記開口部12を形成したシリコン基板10上にポリマーを堆積し、図1(c)に示すように第1マスク11上及び開口部12内にポリマー膜13を形成する(堆積工程)。このポリマー膜13の形成については、前記の誘導結合(ICP)方式のエッチング装置により、Cガスプラズマを用いることで行う。すなわち、Cガスプラズマによって生成したCxFyラジカルを重合させることにより、第1マスク11上及び開口部12内にフルオロカーボンを堆積し、ポリマー膜13を形成するのである。ただし、このようなポリマー膜13の形成方法では、時間をかけることで厚い膜を形成することはできるものの、その場合に、後述するポリマー膜13のエッチバック工程の制御が難しくなる。
【0019】
すなわち、本発明では、後述するポリマー膜13のエッチバック工程についても、前記の開口部形成工程や後述する開口部内エッチング工程と同様に、同じ誘導結合(ICP)方式のエッチング装置により、SFガスプラズマを用いることで行う。つまり、SFプラズマによって生成したFイオンを、第1マスク11上のポリマー膜13や開口部12内の底部のポリマー膜13に衝突させ、このFイオンのイオン衝撃力により、これらの部位のポリマー膜13を除去する。ところが、このようなイオン衝撃によるポリマー膜13の除去では、エッチングを過剰に行うと、ポリマー膜13が除去されて露出したシリコン基板10のエッチングが起こってしまう。そのため、ポリマー膜13の厚さが厚くなると、前記したようにその制御が非常に難しくなる。したがって、本発明では、所望する厚さを複数回の成膜処理で得るべく、所望する厚さの何分の一かの厚さに、ポリマー膜13を形成する。
【0020】
次いで、得られたポリマー膜13を全面エッチバックし、図1(d)に示すように第1マスク13の内側面及び開口部12の内側面に前記ポリマー膜13を残してこれを第2マスク14とする(エッチバック工程)。このポリマー膜13のエッチバック工程については、前述したように、前記の開口部形成工程と同じ誘導結合(ICP)方式のエッチング装置により、SFガスプラズマを用いることで行う。なお、このエッチバックに関しては、例えば予め実験やシミュレーション等により、第1マスク11上のポリマー膜13および開口部12内の底部のポリマー膜13を除去するのに要する時間を求めておき、得られた時間エッチングを行うことにより、第2マスク14を形成する。
【0021】
ところが、このようにして形成した第2マスク14は、ポリマー膜13の厚さが、前述したように所望する厚さの何分の一かの厚さにしかなっていないため、この第2マスク14の厚さも所望の厚さより薄くなっている。そこで、本発明では、第2マスク14を残したまま、図1(c)に示した堆積工程を繰り返し、第1マスク11上及び開口部12内にポリマー膜13を形成する。
【0022】
続いて、図1(d)に示したポリマー膜13の全面エッチバック工程を繰り返し、第1マスク11上のポリマー膜13および開口部12内の底部のポリマー膜13を再度除去する。すると、このエッチバックによって第1マスク13の内側面及び開口部12の内側面に残るポリマー膜13は、先に形成された第2マスク14上に積層されたことにより、その膜厚が厚くされて新たな第2マスク14となる。
【0023】
なお、このようにして得られた第2マスク14の厚さは、1回の堆積工程(成膜処理)で形成するポリマー膜13の厚さを、この堆積工程を繰り返した回数で乗じた厚さにほぼ等しくなる。したがって、予め1回の堆積工程(成膜処理)で形成するポリマー膜13の厚さを設定しておくことにより、第2マスク14の厚さを所望の厚さにするためには、前記堆積工程と前記エッチバック工程とを何回繰り返せばよいか分かる。
そこで、本発明では、これら堆積工程とエッチバック工程とを予め設定した回数繰り返すことにより、所望の厚さの第2マスク14を得る。すなわち、堆積工程とエッチバック工程とを複数回繰り返すことにより、後述する開口部内エッチング工程で用いるための第2マスク14の厚さを、所望の厚さ、例えば1μmから数μm(3〜5μm)程度に調整する。
【0024】
このようにして第2マスク14の厚さを所望の厚さに調整したら、この第2マスク14と前記第1マスク11を用いて図1(e)に示すように前記開口部12内をエッチングし、先に形成した開口部12より狭い開口の開口部12aを形成する。これにより、先に形成した開口部12と新たに形成した開口部12aとを合わせた凹部15を得る(開口部内エッチング工程)。
【0025】
ここで、この開口部12内のエッチング、すなわちシリコン基板10のエッチングでは、前記の開口部形成工程およびエッチバック工程と同様に、同じ誘導結合(ICP)方式のエッチング装置により、SFガスプラズマを用いることで行う。ただし、このシリコン基板10のエッチングは、ポリマー膜13をエッチバックで除去する場合(エッチバック工程)とメカニズムが異なり、SFガスプラズマによって生成したFラジカル(F)とシリコンとの化学反応で進行し、したがって等方性のエッチング反応を起こす。
【0026】
しかし、本発明においては、この開口部内エッチング工程も前記の開口部形成工程と同様に、エッチング深さを例えば数μm(1〜5μm程度)と十分に浅くし、したがって得られる開口部12の側壁方向へのエッチングがほとんど進行しない状態でエッチングを停止する。これにより、この開口部内エッチング工程でも、実質的に等方性でなく異方性のエッチングとして作用させることができる。
【0027】
なお、前記堆積工程と前記エッチバック工程とによる第2マスク14の厚さの調整と、前記開口部内エッチング工程とをそれぞれ一回ずつ行うことにより、図1(e)に示すように凹部15の側壁部に、階段状の段部16を一段形成することができる。その際、この段部16の幅は前記第2マスク14の厚さに等しくなり、段部16の高さ(深さ)は前記開口部内エッチング工程におけるエッチング深さに等しくなる。
【0028】
次いで、図1(c)に示したポリマー膜13の堆積工程と、図1(d)に示した前記エッチバック工程とを順次行い、さらにこれら工程を所定回数繰り返すことにより、図2(a)に示すように前記凹部15の内側面、すなわち先に形成した第2マスク14上に、さらに所望厚さのポリマー膜を積層する。これにより、第2マスクの厚さを調整して新たな第2マスク16を得る。
【0029】
次いで、この第2マスク16と前記第1マスク11を用いて図2(b)に示すように前記凹部15内(開口部12内)をエッチングし、先に形成した凹部15より狭い開口の開口部15aを形成する。これにより、先に形成した凹部15と新たに形成した凹部15aとを合わせた凹部17を得る。
以下、図2(a)に示した第2マスクの厚さの調整と、図2(b)に示した凹部17内(開口部12内)のエッチング工程とを所望回数回繰り返すことにより、図2(c)に示すように第2マスク18とこれに対応する凹部19とを形成する。
【0030】
その後、前記第2マスク18および第1マスク11を、例えばシリコンとの選択比を有するプラズマエッチング、またはウエットエッチング等の除去手段によってそれぞれ選択的に除去することにより、図2(d)に示すように例えば深さが70μm程度の凹部19を形成したシリコン基板10を得る。
このようにして加工された凹部19は、その内側面が開口側に向かうに連れて階段状に広がっており、各段差は例えば1〜5μm程度と非常に小さいことから、この凹部19はその内側面が実質的には傾斜面となる。
【0031】
また、前記したように第2マスクの厚さと、開口部内エッチング工程の際のエッチング深さとをそれぞれ適宜に設定することにより、得られる凹部19の内側面の傾斜角度を、前記シリコン基板10の加工面(表面)10aに対して例えば30°から60°の範囲内にするなど、所望の傾斜角に形成することができる。すなわち、前記したように階段状の段部の幅は第2マスクの厚さに等しくなり、段部の高さ(深さ)は開口部内エッチング工程におけるエッチング深さに等しくなることから、これらを適宜に設定することにより、得られる凹部19の内側面の傾斜角度を所望の傾斜角に形成することができるのである。
【0032】
このような凹部19の形成方法、すなわちその内側面についての傾斜形状の加工方法にあっては、内側面の傾斜角度を所望の傾斜角に形成することができる。また、前記堆積工程と前記エッチバック工程とによる第2マスクの厚さの調整と、前記開口部内エッチング工程とを、同じ装置内で行うことができるので、これら第2マスクの厚さの調整と、開口部内エッチング工程とを複数回繰り返しても、その都度シリコン基板10(基体)を装置間で移動させるなどのロスがなく、したがってコストや生産性を飛躍的に高めることができる。
【0033】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記実施形態ではシリコン基板(基体)に対して凹部を形成したが、このような底面を有する凹部でなく、シリコン基板を貫通する孔(貫通孔)を形成する場合に、本発明の加工方法を適用することもできる。このような貫通孔の加工に本発明を適用した場合、例えば液滴吐出ヘッドにおけるノズルのラッパ形状(テーパ形状)を、本発明の加工方法で得ることができる。
【0034】
また、前記実施形態では、形成した凹部19の内側面の階段形状における各段差を、例えば1〜5μm程度と非常に小さくしたことで実質的な傾斜面としたが、前記の各段差を比較的大きくすることにより、例えば液滴吐出ヘッドにおけるキャビティの接着剤逃げ溝のための段差形状などの加工にも、本発明を適用することができる。
【0035】
さらに、前記実施形態では、基体としてシリコン基板を用いたが、例えば所定機能を有するシリコン製のチップを基体とし、これに別の機能を付加する目的で凹部や孔部を形成する場合に、本発明を適用するようにしてもよい。
また、本発明は、MEMSデバイスの加工以外にも、ICチップの三次元実装におけるエッチング加工や、半導体装置の製造方法など種々の微細加工に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a)〜(e)は本発明の加工方法の一実施形態を示す工程説明図である。
【図2】(a)〜(d)は本発明の加工方法の一実施形態を示す工程説明図である。
【図3】(a)〜(d)は従来の加工方法の一例を示す工程説明図である。
【符号の説明】
【0037】
10…シリコン基板(基体)、11…第1マスク、12、12a…開口部、13…ポリマー膜、14、16、18…第2マスク、15、15a、17、19…凹部(開口部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の表面に凹部又は孔部を形成するに際して、該凹部又は孔部の内側面を実質的に傾斜させる傾斜形状の加工方法であって、
基体上に、前記凹部又は孔部の開口形状に対応する第1マスクを形成する第1マスク形成工程と、
前記第1マスクを用いて前記基体をエッチングし、形成する凹部又は孔部の開口部を形成する開口部形成工程と、
ポリマーを堆積して前記第1マスク上及び前記開口部内にポリマー膜を形成する堆積工程と、
前記ポリマー膜を全面エッチバックし、前記第1マスクの内側面及び前記開口部の内側面に前記ポリマー膜を残してこれを第2マスクとするエッチバック工程と、
前記第1マスク及び第2マスクを用いて前記開口部内をエッチングする開口部内エッチング工程と、を備えてなり、
前記堆積工程と前記エッチバック工程とを複数回繰り返すことにより、前記開口部内エッチング工程で用いる第2マスクの厚さを所望の厚さに調整し、
前記堆積工程と前記エッチバック工程とによる第2マスクの厚さの調整と、前記開口部内エッチング工程とを複数回繰り返すことにより、前記開口部の内側面を実質的に傾斜させることを特徴とする傾斜形状の加工方法。
【請求項2】
前記開口部の内側面の、前記基体の表面に対する実質的な傾斜角を、30°以上60°以下とすることを特徴とする請求項1記載の傾斜形状の加工方法。
【請求項3】
前記基体がシリコンからなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の傾斜形状の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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