説明

僧帽弁修復デバイスを送達するためのシステムおよび方法

【課題】僧帽弁を治療するためのシステムと方法を提供すること。
【解決手段】僧帽弁を治療するためのシステムと方法が提供される。本方法は、ガイドカテーテルを冠静脈洞開口まで前進させるステップと、インプラントを含む送達カテーテルをガイドカテーテルに通して、冠静脈洞内へと前進させるステップとを含む。送達カテーテルは、インプラントが保持される内側部材と、インプラントを展開および解放するために格納可能な外側シースとを有する。一実施形態では、医療用インプラントは近位および遠位アンカー、吸収性材料を含むブリッジを有する。内側部材は、外側シースの一部を掴持し、保持するための可撓性スリーブを有することによって、解放可能な取り付け機構を提供することができる。別の実施形態では、内側部材は、外側シースから延出して損傷を与えない先端を提供する、先細の遠位部分を有する膨張可能なバルーンを含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送達システムおよび方法に関し、より具体的には、僧帽弁修復デバイスを送達するための送達システムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓弁逆流、すなわち心臓弁の流出側から流入側への漏出は、心臓弁がしっかりと閉鎖できない場合に発生する症状である。僧帽弁を通しての逆流は、典型的には左室、乳頭筋、および僧帽弁輪の幾何学的形態の変化に起因する。同様に、三尖弁を通しての逆流は、典型的には右心室、乳頭筋、および三尖弁輪の幾何学的形態の変化に起因する。これらの幾何学的変化は、収縮期における弁尖の不完全な接合をもたらす。
【0003】
障害のある心臓弁の治療のために、長年にわたり多様な心臓弁修復処置が提案されてきた。現在の手術手技を用いると、外科医の経験と存在する解剖学的条件によって、40%〜60%の逆流心臓弁が修復できることがわかっている。心臓弁修復の心臓弁置換に優る利点は、文書で十分に裏付けられている。これらの利点には、心機能をより維持し、抗凝固薬に関連する出血、血栓塞栓症、および心内膜炎のリスクを低減することが含まれる。
【0004】
近年、手術および心肺バイパスを必要としない、障害のある心臓弁を修復するためのいくつかの新しい最小侵襲手技が紹介されている。これらの手技のいくつかは、僧帽弁輪の形成のための、冠静脈洞内へのインプラントの導入を伴う。冠静脈洞は、心臓の一部の周囲に、僧帽弁輪の後側、外側、および内側面に近接する房室溝を通って延在する血管である。その位置により、冠静脈洞は、僧帽弁輪に作用するように構成されたインプラント(血管内デバイス)を受容するのに理想的な導管を提供する。
【0005】
僧帽弁を修復するために冠静脈洞に挿入するように構成されたインプラントの開発を受けて、これらのインプラントを送達するための新しいシステムと方法も開発されてきた。例えば、Solemらによる特許文献1(この開示全体は、参照することにより本開示に援用される)には、1対のバネ刃とノブを含む係止デバイスを用いてインプラントを載設できる安定化器具が記載されている。インプラントが患者の所望の位置に設置された後、カテーテルを用いて、インプラントを安定化器具から解放することができる。別の例として、Langbergらによる特許文献2には、イントロデューサシースおよびプッシャ機構を含む展開システムについて記載されている。インプラントは、冠静脈洞内への前進中、イントロデューサシース(introducer sheath)内に包含される。所望の位置に到達した後、プッシャ機構を用いて、インプラントは固定位置に保持され、イントロデューサシースは格納される。
【0006】
医療用インプラントを送達するための多数の送達システムが提案されているが、既存の送達システムは、最近開発された医療用インプラント技術との使用に必ずしも適当とは限らず、またあまり好適でないことがわかってきている。その結果、新しい医療用インプラント技術との使用により適するように構成され、それによって処置の安全性と有効性を向上させる、新しい、改良された送達システムが必要とされている。かかる送達システムは、患者の脈管構造を通る冠静脈洞への経皮的前進を容易にするように形成されることが望ましい。かかる送達システムは、極めて予測可能で安全な形で、医療用インプラントを送達し、展開するように構成されることも望ましい。かかる送達システムは、インプラントを正確な位置に展開する能力を有することも望ましい。送達システムは、全ての送達内腔に前処置および処置前後フラッシュを簡単に行い、またカテーテルシステムに閉じ込められた気泡を十分に抜いて、送達システム使用中の空気塞栓の可能性を最小限に抑えるように構成されることも望ましい。本発明は、これらの必要性に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,210,432号明細書
【特許文献2】米国特許第6,402,781号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
障害のある僧帽弁を修復するために、医療用インプラントを冠静脈洞に展開するための改良された方法と器具が提供される。
【0009】
一実施形態では、僧帽弁を修復する方法は、ガイドワイヤを冠静脈洞に挿入するステップと、ガイドカテーテルの遠位端をガイドワイヤに沿って冠静脈洞開口まで前進させるステップとを含む。送達カテーテルは、ガイドカテーテルに通して、冠静脈洞内へと前進させられる。送達カテーテルは、内側管と外側シース、および内側管と外側シースを接続する解放可能な取り付け機構を含む。送達カテーテルは、医療用インプラントを冠静脈洞内に送達するように構成されるが、この医療用インプラントは、自己拡張式近位アンカー、自己拡張式遠位アンカー、および近位アンカーと遠位アンカーとを接続するブリッジを含む。送達カテーテルを前進させた後、解放可能な取り付け機構は解放され、外側シースは、自己拡張式遠位アンカーを展開するために内側管に格納される。送達カテーテルは、医療用インプラントのブリッジの緩みを除去するために回収される。外側シースは、自己拡張式近位アンカーを展開するために内側管にさらに格納される。医療用インプラントの遠位アンカーは、好ましくは前室間静脈に展開されて、遠位アンカーがしっかりと固定されていることを確実にする。
【0010】
一変形例では、送達カテーテルの外側シースは、送達カテーテルのハンドルのスライドボタンを近位にスライドさせることによって格納されるが、このスライドボタンと外側シースとは固着されている。別の変形例では、ガイドカテーテルの遠位端に膨張可能なバルーンが備えられてもよい。膨張可能なバルーンは、好ましくは冠静脈洞開口に配置できる大きさである。膨張可能なバルーンはシーリング部材として使用してもよく、それによって送達カテーテルを冠静脈洞内に前進させる前に、放射線不透過性液を冠静脈洞内に注入し、冠静脈洞内に包含することができる。さらに別の側面では、ガイドカテーテルの遠位端の膨張可能なバルーンを膨張させて、送達カテーテルを冠静脈洞内に前進させる前に、冠静脈洞の直径を増加させることができる。可視化をさらに強化するために、ガイドカテーテルの遠位端の膨張可能なバルーンは、好ましくは放射線不透過性液で膨張させる。
【0011】
送達中、医療用インプラントのブリッジは、外側シースを格納する前に、冠静脈洞の前壁に沿って位置決定されることが好ましい。インプラントの位置決定を援助するために、送達カテーテルは、好ましくは少なくとも1つの放射線不透過性マーカーバンドを含む。医療用インプラントのブリッジは、送達カテーテルの冠静脈洞内への前進中にブリッジを延出状態に維持するために、吸収性材料がブリッジに沿って配置された形状記憶材料で作られることが好ましい。医療用インプラントの近位および遠位アンカーを展開した後、吸収性材料が吸収されると、ブリッジの全長は収縮する。
【0012】
一変形例では、解放可能な取り付け機構は、外側シースの遠位端に沿って複数のフィンガーを、内側管の遠位端に沿って可撓性スリーブを備える。可撓性スリーブは複数のフィンガー上で収縮可能で、摩擦嵌合関係でフィンガーを保持する。
【0013】
別の変形例では、送達カテーテルの内側管は、遠位端部分に沿って膨張可能なバルーンをさらに備える。内側管の遠位端部分沿いの膨張可能なバルーンは、外側シースの内壁に係合するために膨張し、外側シースの内壁から係合解除するために収縮することができ、それによって解放可能な取り付け機構を提供することができる。別の特徴では、内側管の遠位端部分沿いの膨張可能なバルーンは、医療用インプラントの遠位アンカーを冠静脈洞内に座着するように構成されてもよい。さらに別の特徴では、内側管の遠位端部分沿いの膨張可能なバルーンは、送達カテーテルの冠静脈洞内への前進中に、外側シースの遠位端から部分的に延出するように形成されてもよい。膨張可能なバルーンの遠位端部は、送達カテーテルの前進を容易にする先細形状を有する。膨張可能なバルーンの遠位端部は、潤滑性コーティングで被覆されてもよい。
【0014】
別の実施形態では、僧帽弁を修復する方法は、内側部材と外側シースとを含む送達カテーテルを提供するステップを含むが、内側部材は遠位端部分に沿って配置された膨張可能なバルーンを有し、送達カテーテルは医療用インプラントを冠静脈洞内に送達するように構成され、医療用インプラントは近位および遠位アンカー、および近位アンカーと遠位アンカーとを接続するブリッジを有する。ガイドカテーテルの遠位端は、患者の脈管構造を通って冠静脈洞に向けて前進させられる。送達カテーテルの遠位端部は、ガイドカテーテルを通って冠静脈洞内へと前進させられる。外側シースは、遠位アンカーを露出するために、内側部材に格納される。内側部材の遠位端部分沿いの膨張可能なバルーンは、遠位アンカーを半径方向に拡張させる(すなわち座着する(seat))ために膨張させられる。外側シースは、近位アンカーを露出するために、内側部材に格納される。必要であれば、膨張可能なバルーンは、近位アンカーを半径方向に拡張させるために用いてもよい。
【0015】
別の実施形態では、僧帽弁を修復する方法は、内側部材と外側シースとを有する送達カテーテルを提供するステップを含むが、送達カテーテルは医療用インプラントを血管内に送達するように構成され、医療用インプラントは近位アンカー、遠位アンカー、および近位アンカーと遠位アンカーとを接続するブリッジを含む。送達カテーテルの遠位端は、前室間静脈内へと前進させられる。次に外側シースは、遠位アンカーを前室間静脈に展開するために、内側部材に格納される。外側シースは、近位アンカーを冠静脈洞に、好ましくは冠動脈口に近い領域に展開するために、内側部材に格納される。展開後、医療用インプラント(例えばブリッジの張力)は、僧帽弁を修復するために僧帽弁輪を形成する。所望の場合には、僧帽弁を修復する前に、1つ以上のステントを回旋動脈および/または左冠動脈前下行枝に展開して、医療用インプラントが展開された後のこれらの動脈の開存性を確保してもよい。
【0016】
別の実施形態では、僧帽弁を治療するための器具は、内側管と外側シースとを含む送達カテーテルを備えるが、内側管は遠位端部分に沿って配置された膨張可能なバルーンを有する。送達カテーテルの近位端にハンドルが取り付けられているが、このハンドルは、外側シースに取り付けられたスライドボタンを含む。自己拡張式医療用インプラントは、収縮状態で内側管に位置し、外側シースに覆われている。スライドボタンは、外側シースを回収し、医療用インプラントを展開するために格納可能である。膨張可能なバルーンは、患者の脈管構造から冠静脈洞への送達カテーテルの前進を容易にするために、外側シースから延出するように構成された先細の遠位端部を有することが好ましい。膨張可能なバルーンの先細の遠位端部は、潤滑性コーティングで被覆してもよい。送達中、膨張可能なバルーンの膨張が医療用インプラントの展開を援助するように、医療用インプラントの少なくとも一部を膨張可能なバルーン上に配置してもよい。
【0017】
さらに別の実施形態では、医療用インプラントを冠静脈洞に展開するための送達システムは、ガイドカテーテルと、内側管とその内側管の少なくとも一部を包囲する外側シースとを含む送達カテーテルとを備えるが、この内側管は外側シースに係合する取り付け機構を有する。ハンドルは、送達カテーテルの近位端に取り付けられている。医療用インプラントは内側管に載設され、冠静脈洞への送達中は外側シースに覆われている。ハンドルは、医療用インプラントを展開するために、外側シースを内側管に回収するように構成されている。一変形例では、取り付け機構は、内側管の遠位端に可撓性スリーブを備えるが、この可撓性スリーブは、外側シースの遠位端の周囲を圧縮できる大きさである。別の変形例では、取り付け機構は、外側シースの内壁に係合するために、内側管の遠位端に沿って膨張可能なバルーンを備える。
【0018】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
僧帽弁を修復する方法であって、
ガイドワイヤを冠静脈洞に挿入するステップと、
ガイドカテーテルの遠位端を上記ガイドワイヤに沿って冠静脈洞開口まで前進させるステップと、
送達カテーテルを上記ガイドカテーテルに通して上記冠静脈洞内に前進させるステップであって、上記送達カテーテルは、内側管と外側シース、および上記内側管と上記外側シースとを接続する解放可能な取り付け機構を含み、上記送達カテーテルは、自己拡張式近位アンカー、自己拡張式遠位アンカー、および上記近位アンカーと遠位アンカーとを接続するブリッジとを含む医療用インプラントを送達するように構成されるステップと、
上記解放可能な取り付け機構を解放するステップと、
上記自己拡張式遠位アンカーを展開するために、上記内側管に対して上記外側シースを格納するステップと、
上記医療用インプラントの上記ブリッジの緩みを除去するために、上記送達カテーテルを格納するステップと、
上記自己拡張式近位アンカーを展開するために、上記内側管に対して上記外側シースを格納するステップと
を含む、僧帽弁を修復する方法。
(項目2)
上記医療用インプラントの上記遠位アンカーは、上記前室間静脈内に展開される、項目1の方法。
(項目3)
上記外側シースは、上記送達カテーテルのハンドルのスライドボタンを近位にスライドさせることによって格納され、上記スライドボタンと上記外側シースが取り付けられている、項目1の方法。
(項目4)
上記ガイドカテーテルの上記遠位端には、膨張可能なバルーンが備えられている、項目1の方法。
(項目5)
上記ガイドカテーテルの上記遠位端の上記膨張可能なバルーンは、上記冠静脈洞開口に配置できる大きさである、項目4の方法。
(項目6)
上記膨張可能なバルーンは、シーリング部材を提供し、上記送達カテーテルを上記冠静脈洞内に前進させる前に、上記冠静脈洞に放射線不透過性液が注入される、項目5の方法。
(項目7)
上記ガイドカテーテルの上記遠位端の上記膨張可能なバルーンは、上記送達カテーテルを上記冠静脈洞内へ前進させる前に、上記冠静脈洞の直径を増加させる、項目4の方法。
(項目8)
上記ガイドカテーテルの上記遠位端の上記膨張可能なバルーンは、放射線不透過性液で膨張させられる、項目4の方法。
(項目9)
上記医療用インプラントの上記ブリッジは、上記自己拡張式遠位アンカーを展開するために上記外側シースを格納する前に、上記冠静脈洞の前壁に沿って位置決定される、項目1の方法。
(項目10)
上記送達カテーテルの上記内側管は、少なくとも1つの放射線不透過性マーカーバンドを含む、項目1の方法。
(項目11)
上記解放可能な取り付け機構は、上記外側シースの遠位端沿いに複数のフィンガーを、上記内側管の遠位端沿いに可撓性スリーブを備え、上記可撓性スリーブは、摩擦嵌合関係で上記フィンガーを保持するために上記複数のフィンガー上で収縮可能であり、それによって上記外側シースを上記内側管に解放可能なように取り付ける、項目1の方法。
(項目12)
上記送達カテーテルの上記内側管は、遠位端部分に沿って膨張可能なバルーンをさらに備える、項目1の方法。
(項目13)
上記内側管の遠位端部分沿いの上記膨張可能なバルーンは、上記外側シースの内壁に係合するために膨張可能であり、上記外側シースの内壁から係合解除するように収縮可能であって、それによって上記外側シースを上記内側管に解放可能なように取り付ける、項目12の方法。
(項目14)
上記内側管の遠位端部分沿いの上記膨張可能なバルーンは、上記医療用インプラントの遠位アンカーを上記冠静脈洞内に座着するように構成される、項目12の方法。
(項目15)
上記内側管の遠位端部分沿いの上記膨張可能なバルーンは、上記送達カテーテルの上記冠静脈洞内への前進中に、部分的に上記外側シースの遠位端から延出し、上記膨張可能なバルーンの遠位端部は、上記送達カテーテルの前進を容易にする先細形状を有する、項目12の方法。
(項目16)
上記医療用インプラントのブリッジは形状記憶材料で作られ、上記送達カテーテルの上記冠静脈洞内への前進中に上記ブリッジを延出状態に維持するために、上記ブリッジに沿って吸収性材料が配置され、上記医療用インプラントの近位および遠位アンカーを展開した後に上記吸収性材料が吸収されると、上記ブリッジの全長が収縮する、項目1の方法。
(項目17)
僧帽弁を修復する方法であって、
内側部材と外側シースとを含む送達カテーテルを提供するステップあって、上記内側部材は、遠位端部分に沿って配置された膨張可能なバルーンを有し、上記送達カテーテルは、医療用インプラントを冠静脈洞内に送達するように構成され、上記医療用インプラントは、近位および遠位アンカー、ならびに上記近位アンカーと遠位アンカーとを接続するブリッジとを有するステップと、
ガイドカテーテルの遠位端を、患者の脈管構造に通して冠静脈洞に向かって前進させるステップと、
上記送達カテーテルの遠位端部を、上記ガイドカテーテルに通して上記冠静脈洞内へと前進させるステップと、
上記遠位アンカーを露出するために、上記内側部材に上記外側シースを格納するステップと、
上記遠位アンカーを半径方向に拡張させるために、上記内側部材の遠位端部分沿いに膨張可能なバルーンを膨張させるステップと、
上記近位アンカーを露出するために、上記内側部材に上記外側シースを格納するステップと
を含む、僧帽弁を修復する方法。
(項目18)
僧帽弁を修復する方法であって、
内側部材と外側シースとを有する送達カテーテルを提供するステップあって、上記送達カテーテルは、医療用インプラントを血管内に送達するよう構成され、上記医療用インプラントは、近位アンカー、遠位アンカー、および上記近位アンカーと遠位アンカーとを接続するブリッジを含むステップと、
上記送達カテーテルの遠位端を前室間静脈内に前進させるステップと、
上記遠位アンカーを上記前室間静脈に展開するために、上記内側部材に上記外側シースを格納するステップと、
上記近位アンカーを冠静脈洞に展開するために、上記内側部材に上記外側シースを格納するステップと、を含み、
上記インプラントは、上記僧帽弁を修復するために僧帽弁を再形成する、
僧帽弁を修復する方法。
(項目19)
上記僧帽弁を修復する前に、回旋動脈および/または左冠動脈前下行枝にステントを展開するステップをさらに含む、項目18の方法。
(項目20)
僧帽弁を治療するための器具であって、
上記内側管と外側シースとを含む送達カテーテルであって、該内側管は遠位端部分に沿って配置された膨張可能なバルーンを有する、送達カテーテルと、
上記送達カテーテルの近位端に取り付けたハンドルであって、上記外側シースに取り付けたスライドボタンを含む上記ハンドルとを備え、
自己拡張式医療用インプラントは、収縮状態で上記内側管に位置して上記外側シースに覆われ、上記スライドボタンは、上記外側シースを回収し、上記医療用インプラントを展開するために格納可能である、僧帽弁を治療するための器具。
(項目21)
上記膨張可能なバルーンは、患者の脈管構造を通って冠静脈洞内への上記送達カテーテルの前進を容易にするために、上記外側シースから延出するように構成された先細の遠位端部を有する、項目20の器具。
(項目22)
上記膨張可能なバルーンの上記先細の遠位端部は、潤滑性コーティングで被覆された、項目21の器具。
(項目23)
上記医療用インプラントの少なくとも一部は、上記膨張可能なバルーン上に配置され、上記膨張可能なバルーンの膨張は、上記医療用インプラントの展開を援助する、項目20の器具。
(項目24)
医療用インプラントを冠静脈洞に展開するための送達システムであって、
ガイドカテーテルと、
内側管と上記内側管の少なくとも一部を包囲する外側シースとを含み、上記内側管は上記外側シースに係合する取り付け機構を有する、送達カテーテルと、
上記送達カテーテルの近位端に取り付けたハンドルと、を含み、
上記医療用インプラントは、上記内側管に載設され、上記冠静脈洞への送達中は上記外側シースに覆われ、上記ハンドルは、上記医療用インプラントを展開するために、上記内側管に上記外側シースを回収するように構成された、
送達システム。
(項目25)
上記取り付け機構は、上記内側管の遠位端に可撓性スリーブを備え、上記可撓性スリーブは、上記外側シースの遠位端の周囲を圧縮できる大きさである、項目24の送達システム。
(項目26)
上記取り付け機構は、上記外側シースの内壁に係合するために、上記内側管の遠位端に沿って配置された膨張可能なバルーンを備える、項目24の送達システム。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、僧帽弁と冠静脈洞の3次元図である。
【図2】図2は、冠静脈洞に送達するように構成された、近位アンカー、遠位アンカー、および近位アンカーと遠位アンカーとを接続するブリッジを含む医療用インプラントの実施形態の側面図である。
【図3】図3は、図2のブリッジの概略図である。
【図4a】図4aは、好ましい一実施形態による、医療用インプラントを送達するための送達システムの一部を形成する、ガイドカテーテルと拡張器の側面図である。
【図4b】図4bは、遠位端部分に沿って配置された膨張可能な部材を有するガイドカテーテルの代替実施形態を示す側面図である。
【図4c】図4cは、図4aに図示される拡張器の側面図である。
【図5】図5は、医療用インプラントを冠静脈洞に送達するために、ガイドカテーテルを通って前進するように構成された送達カテーテルの側面図である。
【図6】図6は、図5の送達カテーテルの一部を形成する内側シャフトアセンブリの側面図である。
【図6a】図6aは、遠位端部分に沿って配置された膨張可能なバルーンを有する内側シャフトアセンブリの代替実施形態の側面図である。
【図6b】図6bは、図6aの内側シャフトアセンブリの断面図であり、内側管のガイドワイヤと膨張内腔を示している。
【図6c】図6cは、図6aの内側シャフトアセンブリを外側シースと組み合わせて示す部分切断側面図である。
【図6d】図6dは、図6aの内側シャフトアセンブリの側面図であるが、外側シースは格納され、医療用インプラントの遠位アンカーを拡張するために、バルーンは膨張させられている。
【図7】図7は、図5の送達カテーテルの一部を形成する外側シャフトアセンブリの側面図である。
【図8】図8は、図5の送達カテーテルのハンドルの側断面図である。
【図9】図9は、ハンドルと共に使用するように構成されたスライドボタンの好ましい一実施形態の斜視図である。
【図10】図10は、図5の送達カテーテルの遠位端部を示す拡大図である。
【図11】図11は、送達システムの前進を容易にするために冠静脈洞に挿入されたガイドワイヤを示している。
【図12】図12は、ガイドワイヤ上を冠静脈洞まで前進させられるガイドカテーテルと拡張器を示している。
【図13】図13は、ガイドワイヤ上を冠静脈洞内へと前進させられる図5の送達カテーテルを示している。
【図14】図14は、図5の送達カテーテルを示しているが、外側シースは、医療用インプラントの遠位アンカーを解放するために部分的に格納されている。
【図14a】図14aは、図6aの代替の内側シャフトアセンブリを有する送達カテーテルを示しているが、外側シースは遠位アンカーを解放するために部分的に格納され、バルーンは遠位アンカーの展開を援助するために膨張させられている。
【図15】図15は、近位および遠位アンカーを共に解放するために、送達カテーテルの外側シースが完全に格納された後の医療用インプラントを示している。
【図16】図16は、冠静脈洞への送達後の医療用インプラントを示しているが、僧帽弁の逆流を減少させるために、僧帽弁輪がインプラントによって形成されている。
【図17】図17は、僧帽弁を治療するための医療用インプラントの1つの好ましい配置を示す斜視図である。
【図18a】図18aおよび18bは、三尖を治療するための医療用インプラントの配置を示す斜視図である。
【図18b】図18aおよび18bは、三尖を治療するための医療用インプラントの配置を示す斜視図である。
【図19】図19は、図17に図示されるように、僧帽弁の治療のために前室間静脈の近位領域で拡張された遠位アンカーを示している。
【図20】図20は、代替送達方法によって前室間静脈の近位領域内の遠位で拡張された遠位アンカーを示している。
【図21】図21は、図4bの代替ガイドカテーテルと組み合わせて使用される図5の送達カテーテルを示しているが、ガイドカテーテルのバルーンは冠動脈口内で膨張させられる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで図1を参照すると、背景説明の目的で僧帽弁21と冠静脈洞17の3次元図が示されている。この図から、僧帽弁21の後側部分の周囲に冠静脈洞が延在していることがわかる。冠静脈洞は、心筋からの静脈排液を受け入れる比較的大きい血管である。血液は冠静脈洞を通って流れ、冠動脈口19を通って右心房18に流入する。僧帽弁輪23は、弁尖が取り付けられている僧帽弁口を包囲する組織の一部である。僧帽弁21は、通常、前尖29と後尖31を含む。後尖は、3つのスキャロップPl、P2、およびP3によって形成される。本明細書で使用される場合、冠静脈洞17という用語は、主に僧帽弁21に隣接し、少なくとも部分的に房室溝に沿って延在する静脈還流系の部分を説明する総称として使用される。従って、「冠静脈洞」という用語は、大心静脈と静脈還流系のその他全ての関連部分を含むと解釈することができる。
【0021】
僧帽弁輪23の拡大は、僧帽弁21を通しての逆流(流れの逆転)の主要な原因であることがわかっている。より具体的には、僧帽弁輪23の後側面が拡大すると、後尖のスキャロップP1、P2、またはP3のうちの1つ以上が前尖29から逸脱する。その結果、前尖および後尖は完全に閉鎖できず、その結果生じた隙間を通して血液の逆流が可能になる。僧帽弁逆流を減少あるいは解消するためには、僧帽弁輪23の後側面を前方向に移動させ、それによって弁尖の変位により生じた隙間を閉鎖することが望ましい。
【0022】
次に図2および3を参照すると、障害のある僧帽弁を修復するための医療用インプラント120の好ましい一実施形態が示されている。インプラントは、冠静脈洞に展開するように構成され、僧帽弁輪の後側面を圧縮するように形成される。送達システムの実施形態は、以下により詳しく記載されるように、この種のインプラントを冠静脈洞内に送達するのに特に好適である。図解されているように、インプラント120は、ブリッジ126によって接続された近位アンカー122と遠位アンカー124とを含む。本明細書で使用される場合「遠位」とは、患者の体内に挿入するときのデバイスの方向、あるいは患者の体内に挿入するときのデバイスの先端により近い基準点の方向を意味する。同様に、本明細書で使用される「近位」とは、患者の体から除去するときのデバイスの方向、あるいは患者の体内に挿入するときのデバイスの後端により近い基準点の方向を意味する。ブリッジ126は、インプラントが展開された後に短縮して、近位および遠位アンカーを同時に引き出すように構成されている。吸収性材料は、ブリッジの開口部135内に配置されている。吸収性材料は、送達および展開中に、ブリッジを伸長状態に保持する。しかし、時間が経過すると、その材料は吸収されるので、ブリッジの短縮が可能になる。
【0023】
吸収性材料は、人体に挿入されると、酵素分解によって、また人体の血球と組織細胞による能動的吸収によって、体に吸収される。かかる吸収性材料の例としては、PDS(ポリジオキサノン)、Pronova(ポリヘキサフルオロプロピレン−VDF)、Maxon(ポリグリコネート)、Dexon(ポリグリコール酸)、およびVicryl(ポリグラクチン)がある。以下にさらに詳しく説明されるように、吸収性材料をニチノール(Nitinol)、エルジロイ(Elgiloy)、またはバネ鋼などの形状記憶材料と組み合わせて使用し、超弾性材料がある期間が経過すると既定の形状に戻るのを可能にしてもよい。
【0024】
一実施形態では、図2に示されるように、近位および遠位アンカー122、124は共に略円筒型であり、例えばニチノールなどの形状記憶材料の管から作られる。しかし、アンカー122、124は、ステンレス鋼など、その他の任意の適切な材料から作ることもできる。図解されている実施形態では、両アンカー122、124は、交互尖端142を有するジグザグ型の形状記憶材料のループ154を備えるメッシュ形態を有する。ループ154は各尖端142で接続され、四辺開口部140のリング156を形成する。説明の目的で1つの特定の種類のアンカー機構が図示されているが、多様なアンカー機構を使用できることは理解されるであろう。
【0025】
近位および遠位アンカー122、124は、それぞれ圧縮状態と拡張状態を有する。圧縮状態では、アンカー122、124は、冠静脈洞17の直径よりも小さい直径を有する。圧縮状態では、アンカー122、124は、好ましくは約1.5mm〜4mmの実質的には均一の直径を有する。拡張状態では、アンカー122、124は、好ましくは非拡張冠静脈洞17の各アンカーが整合される部分の直径とほぼ同等かそれより大きな直径を有する。冠静脈洞17は、その近位端でその遠位端よりも大きい直径を有するので、拡張状態では、近位アンカー122の直径は、好ましくは約10mm〜18mmであり、遠位アンカー124の直径は、好ましくは約3mm〜8mmである。
【0026】
ブリッジ126は、リンク128、129によって近位アンカー122と遠位アンカー124との間に接続される。より具体的には、図2に示されるように、近位リンク128は、近位ステント部122をブリッジ126の近位端に接続し、遠位リンク129は、遠位ステント部124をブリッジ126の遠位端に接続する。リンク128および129は、基部131と、その基部から延出して各アンカー122、124の2つの尖端142に接続されるアーム132を有する。さらにリンク128、129は、図3に示されるように、吸収性糸の先端を介して、それをブリッジ126に固定する手段としての機能を果たす穴138を備えてもよい。
【0027】
ブリッジ126は、好ましくは形状記憶材料から作られ、インプラント120が冠静脈洞17の形状に適合することを可能にするために十分に可撓性である。ブリッジ126はX型要素134を備え、各X型要素は「X」の末端部で隣接X型要素に接続され、図3に示されるように、隣接X型要素の間にスペース135が作成されるのを可能にする。X型要素134は、送達中にブリッジ126の鋭い縁部が冠静脈洞17の一部を穿刺あるいは切断する可能性を最小限に抑える、丸い縁部をさらに有する。ブリッジ126は、ブリッジが第1の長さを有する伸長状態と、ブリッジが第1の長さよりも短い第2の長さを有する短縮状態との2つの状態を有する。上述のように、吸収性糸130は、隣接X型要素134の間のスペース135(図2および3に概略的に示される)に織り込まれ、ブリッジ126をその伸長状態に保持する。糸130は、一時的なスペーサとして作用する。吸収性糸130が時間の経過とともに吸収によって溶解されると、ブリッジはその短縮状態となる。上述のインプラント120は、本発明の送達システムに従って使用できる僧帽弁修復デバイスの一例である。しかし、送達システムを多様な僧帽弁修復デバイスと共に使用してもよいことは明らかであろう。例えば送達システムは、2004年12月15日申請の米国特許出願第11/014,273号(この開示全体は、参照することにより本開示に援用される)に記載されている僧帽弁修復デバイスと共に使用するように構成されてもよい。
【0028】
次に図4a〜5を参照すると、医療用インプラントを冠静脈洞内に送達する送達システムの好ましい一実施形態は、概してガイドカテーテル12、拡張器14、および送達カテーテル16を含んでいる。以下にさらに詳しく記載するように、拡張器14はガイドカテーテル12を通して挿入され(図4aに図示されるように)、両構成要素はガイドワイヤ上を冠静脈洞に向かって前進させられる。冠静脈洞17への経路が構築された後、拡張器14は回収され、静脈系から除去される。それから医療用インプラント120が配置された送達カテーテル16が、医療用インプラントを冠静脈洞内に送達するために、ガイドカテーテル12を通して前進させられる。
【0029】
図4aを特に参照すると、ガイドカテーテル12は、好ましくは近位端に取り付け具102を有するブレード補強複合管を含む。一実施形態では、複合管は、概して、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ライナーと、シャフトの長さをガイドカテーテルマーカーバンド101まで延長するブレードと、第1の被覆部96とを含む。ガイドカテーテル12のブレードは、ガイドカテーテルに、それを患者の脈管構造に押通するようにするために必要な剛性を与え、またシャフトが実質的には円筒型の形状を維持するのを可能にする。ブレードは、好ましくは、例えばステンレス鋼などの金属材料で形成される。被覆部に沿って、ブレードは、シャフトの全長に沿って異なってもよい管材料の外層に包まれる。例えば、1つの好ましい構造では、シャフトの近位部分はPEBAX7233から作られ、中間部分はPEBAX5533から作られ、遠位部分はPEBAX3533から作られる。第1の被覆部96は、ガイドカテーテル12にさらなる剛性を与え、より簡単に患者の脈管構造への押通を可能にする。
【0030】
ガイドカテーテル12は、第1の被覆部96の遠位に、好ましくは第1の被覆部よりもさらに可撓性の第2の被覆部97を含む。第2の被覆部97は、ガイドカテーテル12の遠位端付近に位置するガイドカテーテルマーカーバンド101まで延在する。ガイドカテーテルマーカーバンド101は透視下で可視であり、それによってガイドカテーテルが静脈系を通して前進させられているときに、ガイドカテーテルの相対位置を追跡できる。マーカーバンド101の遠位には、可撓性の損傷を与えない遠位先端を提供する非ブレード部100がある。非ブレード部100は、以下にさらに詳しく説明されるように、ガイドカテーテル12を遠位に冠静脈洞17内へと前進させることを可能にする。
【0031】
ガイドカテーテル12の近位端に沿って位置する取り付け具102は、接着剤で取り付けられ得る硬質プラスチック本体114と、その本体の近位端のネジ込みフランジ116を含む。本体114の内部は、本体の中心軸に向かって遠位に先細になってもよい。さらに翼118は、本体114から直角に延出して、フィンガーグリップとして作用することができる。
【0032】
ガイドカテーテル12は、好ましくは湾曲または屈曲遠位部分98を備えて形成される。一実施形態では、湾曲または屈曲遠位部分98は、例えば大腿静脈からなどの冠静脈洞17へのアクセスを容易にするために、有利に使用することができる。屈曲遠位部分98の形状は、送達および展開中に医療用インプラントを配向する援助もできる。より具体的には、ガイドカテーテルは湾曲して、冠静脈洞領域の解剖学的構造に一致する。従って、インプラント120を載設した送達カテーテルをガイドカテーテルを通して冠静脈洞17内へと前進させるとき、以下にさらに詳しく記載するように、ガイドカテーテルの位置は、インプラントが正しく配向されていることを確実にする。
【0033】
次に図4bを参照すると、遠位端部分に沿って拡張可能な部材が配置された、ガイドカテーテル12Aの代替実施形態が図解されている。図解されている実施形態では、拡張可能な部材は、圧縮状態と拡張状態とを有する膨張可能なバルーン112という形態を取っている。一用途では、バルーン112を用いて、ガイドカテーテル12を冠静脈洞17に対して定着するのを援助し、それによって送達カテーテルの種々の構成要素がガイドカテーテルを通して挿入されるとき、ガイドカテーテルの軸方向の動作を減少または排除することができる。必要に応じて、放射線不透過性液を用いてバルーンを膨張させ、ガイドカテーテル12Aの遠位端部分の可視化を向上させることができる。バルーン112は、冠動脈口および/または冠静脈洞を制御された状態で拡大するために使用して、冠静脈洞を断裂するリスクを軽減し、またインプラントの前進を容易にすることができる。さらに別の有利な特徴では、バルーンをシーリング部材として使用して、放射線不透過性液を冠静脈洞に注入する前に、冠動脈口を遮断することができる。この特徴を利用して、医療用インプラントの送達の前、最中、あるいは後の可視化を向上させることもできる。
【0034】
次に図4cを参照すると、拡張器14は、本体104と先細の遠位部分106とを有する比較的硬質の複合管状部材である。拡張器14は、ガイドカテーテル12、12Aを通して延在する中央内腔に挿入するように構成されている。拡張器14は、拡張器をガイドワイヤ82上で前進させることを可能にするガイドワイヤ内腔108を有する。拡張器14の本体104は、好ましくはHDPEから作られ、遠位部分106は、低密度ポリエチレン(LDPE)と放射線不透過性を提供するために添加される硫酸バリウム(BaSO4)から作られる。先細の遠位部分106は、血管壁を傷付けずに、患者の脈管構造を通って遠位部分を進行させることを可能にするために、本体104よりも可撓性である。
【0035】
拡張器14は、好ましくは近位端に取り付け具110を含む。取り付け具110は、接着剤で拡張器14の本体104に取り付けられた硬質プラスチック本体160と、その本体の近位端にネジ込みフランジ162を含む。本体160の内部は内向きに先細になっていて、取り付け具110に挿入された管を取り付け具の中心軸に誘導する。
【0036】
図5および6を参照すると、送達カテーテル16は、概して、ハンドル部20と、内側シャフトアセンブリ22と、外側シャフトアセンブリ24とを含む。送達カテーテル16は、ガイドカテーテルを通して冠静脈洞へと医療用インプラントを前進させる手段を提供する。送達カテーテルのハンドル部20は、治療部位への到達後に医療用インプラントを解放するために、内側および外側シャフトアセンブリの間の相対運動をもたらす作動機構を提供する。特に図6を参照すると、送達カテーテルの内側シャフトアセンブリ22は、概して、小さい直径を有する内側管26と大きい直径を有するプッシャ管42を含む。内側シャフトアセンブリ22は、好ましくは遠位に約42インチ延出し、ガイドワイヤを受容するように適合された内腔27を有する。以下にさらに詳しく記載するように、送達中、医療用インプラントは内側管26に配置される。内側管26は、管が可撓性であり最小の輪郭を有するが、患者の脈管構造を通って進行させるときには依然として構造的完全性を維持することが可能なように選択された直径を有して形成される。典型的な一実施形態では、内側管26は薄壁ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から作られる。しかし、内側管26は、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)ライナーまたは薄管内に形成可能なその他の任意の可撓性の生体適合性材料を有する三層プラスチック管などから作られてもよい。好ましい一実施形態では、内側管26の内径は約0.040インチである。
【0037】
さらに図6を参照すると、内側管26は、好ましくは一連のマーカーバンドを備える。図解されている実施形態では、内側管26は2つのC型バンド28、29と、ブリッジ中央位置決めバンド30と、近位および遠位O型バンド32、36とを含む。マーカーバンド28、29、30、32、36はX線透視法で可視である。医療用インプラントは、好ましくは送達中にマーカーバンドに対して固定される。その結果、マーカーバンドは操作者がインプラントの位置を可視化することを可能とし、それによって冠静脈洞内の医療用インプラントの配置を援助するのに役立つ。近位O型バンド32は、プッシャ管42の遠位端に位置する。遠位O型バンド36は、内側管26の遠位端付近あるいは隣接に位置する。図2および3に関連して上述される医療用インプラント120と共に使用する場合、医療用インプラントの近位アンカー122は、好ましくは近位O型バンド32と近位C型バンド28との間に位置する。医療用インプラントの遠位アンカー124は、好ましくは遠位C型バンド29と遠位O型バンド36との間に位置する。医療用インプラントのブリッジ126は、C型バンド28、29の隙間とブリッジ中央位置決めバンド30の隙間を通過する。C型バンドおよびブリッジ中央位置決めバンドの隙間は、ブリッジを内側管に対する特定の位置に保持するように内側管上に回転的に配向することができる。従って、マーカーバンド28、29、30、32、36の配向は、展開前にブリッジとアンカーが正しい回転および長手方向位置にあることを確実にするために使用することができる。これは、近位および遠位アンカーが冠静脈洞の複雑な外形により適合するために回転的に整合していない位置に、医療用インプラントを送達することが望まれることがあるため、特に有利である。典型的な一実施形態では、近位および遠位のO型マーカー32、36は、90/10 白金/イリジウムマーカーバンドであってもよい。しかし、マーカーバンド28、30、32、36は、例えばステンレス鋼、またはX線透視法で可視となるその他の任意の生体適合性材料で作られてもよい。リューエル取り付け具(luer fitting)(図示せず)は内側管26の近位端に位置し、送達システムを用いた処置の前に、ガイドワイヤ内腔27をフラッシュ(flush)することを可能にする。
【0038】
プッシャ管42は、ハンドル部20の遠位端に固着され、そこから近位O型バンド32まで延出する。プッシャ管42は、内側および外側シャフトアセンブリ22、24に構造的支持を提供し、また外側シャフトアセンブリの外側シース38との接点も提供する。近位マーカー38は、好ましくはプッシャ管の遠位端に位置し、医療用インプラントの近位端に隣接する。その結果、プッシャ管42は、外側シャフトアセンブリの格納中に、医療用インプラントの望ましくない長手方向の移動に抵抗するプッシャ機構も提供することができる。プッシャ管42は、厚さ約0.0165インチ、直径約0.089インチのHDPEから作ることができる。HDPE管の生来の低い摩擦係数は、外側シースと内側シャフトアセンブリ22の内側管26との間に固定されたインプラント120(図13参照)の展開中に、外側管42と格納可能な外側シース38との間の摩擦を最小限に抑える。
【0039】
図7を参照すると、送達カテーテルの外側シャフトアセンブリ24は、好ましくはブレード部46と、非ブレード部47と、遠位締結部48とを含む複合外側シース38を備える。外側シース38は、冠静脈洞への前進中に、医療用インプラントを包囲して含有する大きさとし、それによって医療用インプラントの近位および遠位アンカーを収縮位置に保持し、血管壁を損傷から保護する。外側シース38は、比較的低い摩擦係数を有し、電子線放射線滅菌に適合する(材料特性が放射線滅菌への暴露により悪影響を受けない)材料から作ることができる。
【0040】
外側シース38は、好ましくは、HDPEから作られた内側ライナーと、ステンレス鋼から作られたブレード部47を包む50%HDPEと50%LDPE(50/50HDPE/LDPE)から作られた外層とを含む。50/50HDPE/LDPE層は、マーカーバンド40まで延在し、HDPEライナーは外側シース38の全長に延在する。非ブレード部分47は、以下に記載するように、例えばシース内のインプラント120を可視化できるように透明であってもよい。ブレード部46は、外側シース38の近位部に位置し、ブレードは例えばステンレス鋼から作ることができる。ブレード部46は、外側シャフトアセンブリ24に、送達デバイスを患者の脈管構造に押し通せるようにするために必要な剛性を与える。
【0041】
外側シース38の遠位締結部48は、外側シースマーカーバンド40を含むが、そのマーカーバンドはX線透視法で可視である。外側シース38の遠位部分48におけるマーカーバンド40の位置は、外側シースと内側シャフトアセンブリ22との間の相対変位が追跡できるようにする。外側シース38を可視化するこの能力は、より制御されたシースの格納、つまりはより制御されたインプラント120の展開を可能にする。
【0042】
送達中、外側シース38の遠位締結部48は、内側管26から外側シース38への平滑な移行を提供するために先細であることが好ましい。図10に最もよく示されるように、外側シース38の遠位部分48は、好ましくはスリットで隔てられた複数の可撓性フィンガー50を含む。遠位部分48のスリットは、外側シース38が先細になって、内側管26のより小さい直径に適合できるようにする。別の有利な特徴では、先細の遠位部分48のかさが低く、より可撓性で、カテーテル先端全体をより追跡可能にする。さらに、結果として生じた遠位部分48のスペースは、以下にさらに詳しく記載されるように、デバイスをフラッシュできるようにする。
【0043】
図6〜10を参照すると、可撓性スリーブ52は、外側シースのフィンガー50を掴持および保持するために、内側シャフトアセンブリ22の遠位端部に沿って提供することができる。シリコーンで形成してもよいスリーブ52は、好ましくは締まり嵌めと接着剤によって内側管26に取り付けられ、それによってスリーブの遠位端が管の遠位端と実質的には平坦になるようにする。スリーブ52の近位部は、外側シース38の遠位部分48の一区分上に伸ばして位置決定され、外側シース38を内側管26に解放可能なように固定するよう構成される。より具体的には、図10に最もよく示されているように、スリーブ52は、外側シース38の遠位部分48に沿って配置されたフィンガー50の少なくとも一部上に位置決定されるように構成される。スリーブは、外側シース38の遠位部分48を内側管26に固定する解放可能な取り付け機構を提供する。この解放可能な取り付け機構は、治療部位に送達カテーテル16を前進させている間に、外側シースが不注意で格納されるのを防止する。また解放可能な取り付け機構は、外側シースと内側管の間に平滑な移行領域を提供する。必要に応じ、接着剤を使用して、外側シース38の遠位部分48と内側管26との間の取り付けを補強してもよい。代替または追加として、解放可能な取り付け機構は、離脱機構またはその他の任意の適切なデバイスの形態を取ってもよい。再び図10を参照すると、外側シース38が十分な力で内側管26に格納されると、フィンガー50はスリーブ52から引き離される。フィンガーが解放された後、スリーブは好ましくは内側管26の外径上に圧漬され、それによってスリーブは最小限の断面輪郭を保持できる。最小限の輪郭は、インプラントの送達後に患者から内側シャフトアセンブリ22を取り除くときに、スリーブ52がインプラント120の障害になる、あるいは干渉する可能性を減少させる。
【0044】
図6aと6bを参照すると、内側シャフトアセンブリ22の1つの代替実施形態は、遠位端部分に沿って拡張可能な部材34を備えている。拡張可能な部材は、好ましくは多様な目的に対し構成できる膨張可能なバルーンの形態を取る。膨張可能なバルーンを収容するために、内側管26は、好ましくは図6bに示されるような二管腔構造を有する。ガイドワイヤ内腔84は、ガイドワイヤ82を受容するように適合され、膨張内腔85は、拡張可能な部材に至る膨張液のための導管として提供される。一用途では、拡張可能な部材34は、好ましくは先細の遠位端を備えて形成され、治療部位への送達カテーテルの前進を容易にする、平滑な損傷を与えない先端を提供する。別の用途では、外側シースを保持するための解放可能な取り付け機構として、拡張可能な部材34を使用してもよい。より具体的には、拡張可能な部材は、送達中に不注意で外側シースが内側管に格納されるのを防止するために、外側シースの内壁を摩擦係合できる大きさにすることができる。その結果、この実施形態は、上述のフィンガーと可撓性スリーブの代わりに使用できる、代替の解放可能な取り付け機構を提供する。さらに別の用途では、医療用インプラントの遠位アンカーの少なくとも一部が送達中に拡張可能な部材上に配置されるように、拡張可能な部材34の位置を定めてもよい。例えば、好ましくは医療用インプラント120の遠位アンカー124のうち約半分が送達中に拡張可能な部材上に位置するように、拡張可能な部材が位置決定される。代替実施形態では、より多数または少数のアンカーが拡張可能な部材上に設置されてもよい。
【0045】
図6cの部分切断図を参照すると、拡張可能な部材34が内側管26の遠位端部分に沿って配置されているのが見られる。拡張可能な部材34は、好ましくは3つの部分を備える膨張可能なバルーンである。バルーンの近位部は、収縮した遠位アンカー124に包囲されている。バルーンの中央部は、外側シース38の内壁に係合するように遠位アンカーの遠位に位置し、それによって外側シースが内側管26に対してスライドするのを防止する。バルーンの遠位部は、外側シース38の遠位先端から延出し、外側シースと内側管との間に平滑な移行領域を提供するように形成される。好ましい一実施形態では、バルーンは全長約2cm、壁厚約0.001インチを有する。バルーンの露出した遠位部は、摩擦を低下させるために例えば親水性またはシリコーンコーティングなどの潤滑性コーティングを含み、それによって患者の脈管構造を通しての送達カテーテルの前進を容易にすることができる。バルーンは、好ましくはPEBAXまたはウレタンなどの半柔軟材料で形成される。好ましい実施形態では、バルーンは、前進をさらに容易にするために、バルーンの露出した遠位部が送達中に外側シースの直径と実質的には等しい直径を有するように構成される。
【0046】
治療部位への到達後、拡張可能な部材は収縮されて、外側シース38の内壁から係合解除し、それによって外側シースが内側管に格納できるようにする。次に図6dを参照すると、外側シースが遠位アンカー124を露出するのに十分に格納させられた後、バルーンは再膨張されて遠位アンカー124を半径方向に拡張させ、それによって遠位アンカーの位置が冠静脈洞に正しく定められていることを確実にする。
【0047】
次に図8の断面図を参照すると、送達デバイスのハンドル部20は、ハンドル本体51およびスライドボタンアセンブリ54を含む。ハンドル本体51は、多様な全長を有するインプラントのための外側シース38の制御された格納を可能にするのに十分な全長を有する2つの対照的な半片を有する。ハンドル本体51は、一方の縁部に形成された一連の人間工学に基づいたアーチ92も有し、より確実な掴持を可能にする。好ましい一実施形態では、ハンドル部20の全長は約30cmである。ハンドル本体51の内部は、以下にさらに詳しく記載されるように、スライドボタン56に取り付けられた誘導翼62を受容するように適合された溝60を含む。ハンドル本体51の内部は、その全長と全幅に沿って直角に走るリブ94を含んで、ハンドル本体が曲げおよび恒久的な変形に対してより耐性を有するようにすることもできる。スライドボタンアセンブリ54は、スライドボタン56とレール58を含む。さらにスライドボタン56は、移行領域66とスライドアダプタ68を有する。
【0048】
図9を参照すると、スライドボタンアセンブリ54の拡大斜視図が示されている。スライドボタン56は、略三角形に形成され、スライドボタン56をハンドル部に沿って動かすための前進面70と格納面72とを含む。前進および格納面70、72は、人間工学的に成型され、スライドボタン56の制御された動作を可能にする中央に配置された隆起73を有する。移行領域66は長方形で、前進および格納面70、72の反対側のスライドボタン56の平面から直角に延出する。移行領域66から直角に延出しているのは、ハンドル部20の溝60に収まるように適合された誘導翼62である。
【0049】
スライドボタン56の移行領域66に取り付けられているのは、レール58に沿ってスライド自在に接続されるように適合されたスライドアダプタ68である。好ましい一実施形態では、スライドアダプタ68は、レール58が通過する中央内腔76を有する円筒体である。スライドアダプタ68の近位端は、エンドキャップ86(図8参照)と、エンドキャップ86に隣接したOリングを含むOリング収納部88とを有する。外側シャフトアセンブリ24の近位端は内腔76に挿入、取り付けられ、それによってスライドボタン56の動作に対応する外側シースアセンブリの動作が可能となる。
【0050】
スライドボタン56は、スライドボタンから内側シャフトアセンブリ22と外側シース38との間の内腔への通路を提供するフラッシュポート78も含む。フラッシュポート78は、内側シャフトアセンブリの外側シースに対する相対変位を妨げずに、内側シャフトアセンブリ22と外側シース38との間の内腔をフラッシュできるようにする。フラッシュポート78は、送達システムの操作中に、例えば生理食塩水などの内側への流れを可能にするが、例えば血液などの外側への流れを防止する逆止弁(図示せず)もさらに内蔵する。
【0051】
レール58は、その近位端にガイドワイヤ内腔フラッシュポート80(図5参照)を有するが、これはハンドル部20と送達カテーテル16の全長にわたるガイドワイヤ内腔(図示せず)を生理食塩水などのフラッシュ溶液でフラッシュできるようにする。ハンドル本体51の近位端は、ガイドワイヤ内腔フラッシュポート80を保持するように適合されているが、これは接着剤で本体に取り付け得る。ひずみ緩和スリーブ90(図8参照)は、ハンドル部20の遠位端に取り付けられ、外側シースアセンブリ24の部分上に遠位に延出して、ハンドル部20と外側シース38との間の接合部に付加的な支持と曲げへの耐性を提供する。さらにひずみ緩和スリーブ90は、ハンドル本体51と外側シースアセンブリ24との間の滑らかに先細となる移行を提供する。ハンドル部20の遠位端は、接着剤でハンドル部20に取り付けられ得るひずみ緩和アセンブリを保持するように適合されている。
【0052】
図13に最もよく示されているように、医療用インプラント120は、使用前に送達カテーテル16に装着される。より具体的には、近位および遠位アンカー122、124を圧縮状態になるように内側管26上に圧漬し、アンカーの内径が内側管の外径とほぼ等しくなるようにする。まず近位アンカー122が圧漬され、外側シース38が近位アンカー上を遠位に前進させられる。それからブリッジ126が内側シャフトアセンブリ22上に位置決定され、外側シース38がブリッジ上を前進させられる。内側管に放射線不透過性マーカーを使用すると、透視検査により送達デバイスに対するブリッジ126の配向を認めることができ、それにより以下にさらに詳しく記載されるように、送達デバイスの操作者はブリッジを冠静脈洞の所望の位置に設置できる。最後に、遠位アンカー124は圧漬され、外側シース38は最終地点へと前進させられる。
【0053】
次に図11〜16を参照して、医療用インプラントを冠静脈洞に送達および展開する好ましい方法が、より詳しく記載される。まず、患者の準備がされ、左または右内頸静脈、あるいは当該分野で一般的に知られるように冠静脈洞へのアクセスを提供する大腿静脈に、イントロデューサシース(図示せず)が挿入される。イントロデューサシースが固定された後、図11に示されるように、ガイドワイヤ82はイントロデューサシースを通して冠静脈洞(大心静脈)へと挿入される。ガイドワイヤの遠位端が冠静脈洞17の遠位設置されてから、ガイドカテーテル12と拡張器14を挿入のために準備することができる。まず、ヘパリン生理食塩水などのフラッシュ液を充填した注射器を使用して、拡張器14とガイドカテーテル12をフラッシュし、全ての残気を除去し、潤滑性を向上させることができる。Yコネクタなどの止血弁が、ガイドカテーテル12の近位端に取り付けられる。止血弁は、ガイドカテーテル12とガイドカテーテルを通して装着された他のデバイスとの間の接点を通しての失血を最小限に抑える。
【0054】
再び図4aを参照すると、拡張器14は、拡張器の取り付け具110がガイドカテーテルの取り付け具102に隣接するように、ガイドカテーテル12の中央内腔を通して挿入される。拡張器14は、比較的直径の小さいガイドワイヤ82と比較的直径の大きいガイドカテーテル12との間の平滑な移行を提供することにより、ガイドカテーテルを挿入するときに、ガイドカテーテルの先端が患者の脈管構造に損傷を与える可能性を低減する。図12に示されるように、ガイドカテーテル12と拡張器14はガイドワイヤ82の上に設置され、ガイドカテーテル12の遠位端が冠静脈洞17の所望の位置に位置決定されるまで、X線透視法でガイドワイヤ上を前進させられる。それから拡張器14は、ガイドカテーテルから近位に回収される。
【0055】
送達カテーテル16は、患者に挿入する前にフラッシュ液でフラッシュしてもよい。フラッシュ液は、スライドボタン56上のフラッシュポート78(図8参照)を通して挿入される。スライドボタン56に組み込まれたフラッシュポート78は、フラッシュポートが外側シャフトアセンブリ24と共に動くことを可能にし、また内側および外側シャフトアセンブリ22、24の間の無制限の相対変位を可能にする。スライドアダプタ68内のエンドキャップ86とOリング(図示せず)は、血液がハンドル部に進入するのを防止しながら、フラッシュ液が内側シャフトアセンブリ22と外側シャフトアセンブリ24との間に挿入できるようにする止血機能を提供する。図10に示されるように、外側シャフトアセンブリ24の遠位部分48に沿ったフィンガー50間のスリットは、外側シャフトアセンブリ24と内側シャフトアセンブリ22の間に注入されたフラッシュ液が外側シャフトアセンブリから出ることを可能にし、同時に外側シャフトの遠位端はシリコーンスリーブ52に拘束されたままにする。フィンガーとスリットの間の配置は、遠位部分48がより直径の小さい内側管26に取り付けられるときに、より直径の大きい外側シース38が、円錐形状を取れるようにする。
【0056】
図13を参照すると、ガイドカテーテル12が固定された後、送達カテーテル16が止血弁を通してガイドカテーテルに挿入される。送達カテーテル16は医療用インプラント120を含有し、ガイドカテーテル12を通して、送達カテーテルの遠位端に位置するスリーブ52が大心静脈などの所望の位置に到達するまで、ガイドワイヤ82上を前進させられる。レノグラフィン60などのX線透視法で可視となる造影剤をガイドカテーテル12に挿入して、操作者がインプラント120の近位アンカーが冠静脈洞17内にあることを確認できるようにしてもよい。
【0057】
インプラント120全体が冠静脈洞17内に位置決定された後、必要に応じて、ガイドカテーテル12を格納して、あるいは完全に回収して、送達システムのインプラント120が載設されている部分を露出させてもよい。インプラント120を含有する部分がガイドカテーテル12の遠位先端を超えて延出していることを確認することによって、インプラントが冠静脈洞内ではなくガイドカテーテル内に展開されるのを防止できるであろう。送達カテーテル16上の種々のマーカーバンド28、30、32、36を使用することによって、また送達カテーテルを配向することによって、インプラントが所望の位置にあると判断される場合、例えばインプラント120のブリッジ126が冠静脈洞の前壁に隣接した状態で、インプラントを展開してもよい。
【0058】
ハンドル部20のスライドボタン56を使用して、操作者は、遠位アンカー124が展開されるまで外側シース38を格納する(図14に示されるように)。スライドボタン54がレール58に沿ってスライドすると、誘導翼62は溝60に沿ってスライドして、スライドボタンが外向きに動くのを防止する。さらに、内側シャフトアセンブリ22に対する外側シース38の相対位置および/または変位は、外側シースのマーカーバンド40と内側シャフトアセンブリ22のマーカーバンド28、30、32、36をX線透視法で観察することによって判断してもよい。外側シース38のブレード構造は、外側シースを格納するときの軸方向の伸長を最小限に抑えるために役立つ。
【0059】
遠位アンカー124が展開されると、ブリッジの緩みを解消するために、ハンドル部20と送達カテーテル16を近位に引いてもよい。インプラント120が正確に位置決定された後、スライドボタン56をさらに近位に格納して、図15に示されるように、インプラント120のブリッジ126と近位アンカー121を冠静脈洞の壁に対して露出させる。遠位および近位アンカー122、124の両方が露出された後、送達カテーテル16は、アンカーが完全に拡張するのに十分な時間にわたり所定の位置に保持してもよい。それから、送達カテーテルが患者から除去される。図15に最もよく示されるように、医療用インプラント120のブリッジ126は、展開後、好ましくは冠静脈洞17の前壁に沿って位置する。
【0060】
送達カテーテル16が患者から除去された後、冠静脈洞において静脈造影(例えば造影剤を注入した静脈のX線)を実施して、インプラント120の開存性を確保してもよい。次に、図16に示されるようにインプラント120を患者の体内に残して、ガイドカテーテル12、ガイドワイヤ82、およびイントロデューサシースを除去することができる。時間が経過すると、後尖31が前尖29に向かって押されるように、インプラントが僧帽弁輪を再形成し、それによって僧帽弁の隙間が閉鎖される。
【0061】
次に図17を参照すると、一変形例では、送達カテーテルは、医療用インプラントの遠位アンカーが大心静脈168の繊維性部分166の遠位位置に展開されるように、冠静脈洞のより深部に前進させられる。大心静脈のこの部分は、前室間静脈と称されることがある。上記のように、説明を簡単にするために、大心静脈と前室間静脈はここではそれぞれ冠静脈洞17の一部であるとみなされる。図19に概略的に示されるように、遠位アンカー124は、繊維性部分166の遠位に位置する大心静脈168(前室間静脈)の柔軟部分に展開される。このアンカー地点は、「Harnek固定点」と称されることもある。このアンカー地点は、僧帽弁輪に沿って位置しているのではなく、左冠動脈前下行枝(LAD)と実質的には平行(心臓の前面と実質的には平行)であることがわかる。結果として、この送達方法を使用すると、遠位アンカーは近位アンカーと整合せず、これは近位および遠位アンカーがお互いに引き寄せられるときの僧帽弁輪の締結を向上させ得る。さらに、静脈の繊維性部分166は、拡大により高い耐性を示す。部分166の長さは典型的には約0.5cmである。インプラントの遠位アンカー124を静脈のより柔軟な部分(繊維性部分166の遠位)に展開することによって、繊維性部分は、アンカーが近位に滑る、あるいは動くのを防止する支持体を効果的に提供する。繊維性部分166は、拡張状態でのアンカーの直径が繊維性部分の直径よりも大きいため、アンカーの動作を防止する。別の変形例では、遠位アンカー124は、図20に概略的に示されるように、繊維性部分166に沿って拡張させてもよい。この方法では、アンカーの近位および遠位部分を、中央部分よりも大きい直径に拡張してもよい。この拡張は、遠位アンカー124に「くびれ」を形成させ、それによって遠位アンカーを大心静脈にしっかりと定着させることができる。
【0062】
冠静脈洞内への医療用インプラントの送達と組み合わせて、回旋動脈および/または左冠動脈前下行枝(LAD)内に1つ以上のステントを展開して、これらの動脈の開存性を確保することが望ましいことがある。動脈のステント留置は、好ましくは医療用インプラントを展開する前に実施される。ステントは、医療用インプラントが僧帽弁輪を締結する、および/または僧帽弁輪に圧力を付与するように調整された後、冠動脈内の十分な血流を確保するものである。一変形例では、薬剤溶出性(drug−eluting)ステントを使用して、開存性の確保を援助をすることが望ましいことがある。このステントは、バルーン拡張式または自己拡張式でよい。別の変形例では、希望に応じ、1つ以上の冠動脈バイパスグラフトを用いて動脈内の血流を向上させてもよい。
【0063】
さらに別の好ましい操作方法では、上述の送達システムは、心臓の三尖弁の治療にも好適である。三尖弁は右心房と右心室の間に位置する。僧帽弁逆流と同様に、三尖弁逆流は、右心室、乳頭筋、および三尖弁輪の幾何学的形態の変化に起因する。これらの幾何学的変化は、収縮期における弁尖の不完全な接合をもたらす。図18aおよび18bを参照すると、送達システムは、三尖弁の治療のために、三尖弁修復デバイス(医療用インプラント)を小心静脈170に前進させるために使用することができる。小心静脈170は、三尖弁口と弁輪を実質的に取り囲み、血液を右心室心筋から冠静脈洞17、そして最終的には右心房へと排出する。小心静脈170は、冠静脈洞17からの側枝であり、冠静脈洞口のちょうど内側から始まって三尖弁172を取り囲み、右冠動脈の本流と平行に走る。上述の医療用インプラント120と実質的には類似してもよい三尖弁修復デバイスは、僧帽弁インプラントと類似の送達デバイスに装着してよく、経皮的に治療部位に送達してよい。三尖弁修復デバイスは、吸収性材料で作られた近位アンカー169と、遠位アンカー171と、ブリッジ173とを有してもよい。三尖弁修復デバイスが位置決定された後、ブリッジ173の吸収性材料は、時間の経過とともに溶解して、ブリッジを短縮させ、三尖弁の隙間を閉鎖する。上述の僧帽弁用の送達システムと同様に、三尖弁送達デバイスの湾曲遠位部分は、正しい配向でのインプラントの配置を援助する。
【0064】
図21を参照すると、さらに別の変形例では、送達システムは、僧帽弁を治療するためにガイドカテーテル12Aと共に使用することができる。図4bに関連して上述したように、このガイドカテーテル12Aの実施形態は、遠位端部分に沿って膨張可能なバルーンを備える。その結果、バルーン112を膨張させてガイドカテーテル12Aを冠動脈口内に固定することができ、それによって送達カテーテルの前進中の予測可能性が向上する。別の有利な特徴では、バルーンを膨張させて、冠静脈洞20に注入してもよい放射線不透過性染料の漏出を低減あるいは防止し、X線透視法での血管の可視化を向上させることができる。この実施形態では、バルーンは好ましくは柔軟材料で形成される。またさらに、バルーンを使用して冠静脈洞を拡大し(直径を拡張させ)、医療用インプラントの冠静脈洞内への前進を容易にすることもできる。この用途では、送達カテーテルを前進させる前に、ガイドカテーテル12Aの遠位端を冠静脈洞内により深く前進させることが望ましいことがある。
【0065】
多様な好ましい実施形態を本願に記載してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。添付の特許請求の範囲、発明の説明、および付属の図面に見られる本発明の範囲内で、その主題から逸脱することなく、種々の変更を行ってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図14a】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18a】
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【図18b】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−42265(P2010−42265A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212545(P2009−212545)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2008−533763(P2008−533763)の分割
【原出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(500218127)エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション (93)
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
【Fターム(参考)】