説明

充填ポンプ

【課題】機械的および電気的に簡単な構成で容器内に一定量の液体を充填すること。
【解決手段】ピストン40の下降時には上パッキン49が液体から上向きの圧力を受けることで閉鎖状態になり、下パッキン36が液体から下向きの圧力を受けることで開放状態になる。この下パッキン36の開放状態では下通路35が開放され、コック30およびピストン40相互間の液体が下通路35からノズル26を通して排出される。ピストン40の上昇時には上パッキン49が液体から下向きの圧力を受けることで開放状態になり、下パッキン36が弾性復元力で閉鎖状態になる。この上パッキン49の開放状態では上通路48が開放され、タンク1内から上通路48を通してコック30およびピストン40相互間の空間部に液体が補給される。このため、切換弁および切換弁を制御する電気回路の双方が不要になるので、機械的および電気的に簡単な構成で容器10内に一定量の液体を充填することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内に貯留された流体を容器内に充填する充填ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
上記充填ポンプの従来構成を図5に基づいて説明する。ホッパー100には切換弁101が接続されており、切換弁101はシリンダ102のロッド103が左から右へ操作されるときには吸入状態に切換えられ、シリンダ102のロッド103が右から左へ操作されるときには排出状態に切換えられる。吸入状態とは、図5の(a)に示すように、切換弁101の入口104を開放して出口105を閉鎖する状態であり、シリンダ102のロッド103が切換弁101の吸入状態で左から右へ操作されたときにはホッパー100内の流体が切換弁101の入口104を通してシリンダ102内に吸入される。排出状態とは、図5の(b)に示すように、切換弁101の入口104を閉鎖して出口105を開放する状態であり、シリンダ102のロッド103が切換弁101の排出状態で右から左へ操作されたときにはシリンダ102内の流体が切換弁101の出口105を通して容器106内に充填される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来構成の場合、流体の補給動作および流体の排出動作を切換弁101を使用して行っているので、機械的な構成が複雑になる。しかも、流体の補給動作および流体の排出動作を行うことに合せて切換弁101を補給状態および排出状態間で相互に切換える電気回路が必要になるので、電気的な構成も複雑になる。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機械的および電気的に簡単な構成で容器内に流体を充填することが可能な充填ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<請求項1記載の充填ポンプの説明>
請求項1記載の充填ポンプはタンク内に貯留された流体を容器内に充填するものにおいて、1)ハウジング〜9)下パッキンを備えたところに特徴を有している。
1)ハウジングはタンクに接続される縦長な管状をなすものであり、図1のシリンダチューブ21はハウジングの一例である。
2)ノズルはハウジングに設けられたものであり、ハウジングの内部から外部に流体を排出するものである。図1の符号26はノズルの一例を示している。
3)コックはハウジングの内部に固定されたものであり、図1の符号30はコックの一例である。
4)下通路はコックの外周面とハウジングの内周面との間に設けられたものであり、図1の符号35は下通路の一例である。
5)ピストンはハウジングの内部にコックの上方に位置して移動可能に収納されたものであり、図1の符号40はピストンの一例である。
6)上通路はピストンの外周面とハウジングの内周面との間に設けられたものであり、図1の符号48は上通路の一例である。
7)ロッドはピストンに連結されたものであり、ピストンをハウジングの外部から移動操作するものである。図1のピストンロッド41はロッドの一例である。
8)上パッキンはピストンに固定されたものであり、ハウジング内の流体が静止した状態で閉鎖状態になる。この閉鎖状態とは流体から受ける圧力に抗して上から下へ向って外径寸法が大きくなる状態であり、上パッキンの閉鎖状態では上パッキンがハウジングの内周面に接触することで上通路を閉鎖する。この上パッキンはピストンが下から上へ移動操作されたときには流体からピストンの移動方向とは逆向きの圧力を受けることでハウジングの内周面から離間する開放状態に弾性変形し、上通路を開放することでタンク内からピストンおよびコック相互間の空間部に流体を補給する。この上パッキンはピストンが上から下へ移動操作されたときには流体からピストンの移動方向とは逆向きの圧力を受けることで閉鎖状態に停止する。図1の符号49は上パッキンの一例である。
9)下パッキンはコックに固定されたものであり、ハウジング内の流体が静止した状態で閉鎖状態になる。この閉鎖状態とは流体から受ける圧力に抗して上から下へ向って外径寸法が大きくなる状態であり、下パッキンの閉鎖状態では下パッキンがハウジングの内周面に接触することで下通路を閉鎖する。この下パッキンはピストンが下から上へ移動操作されたときには弾性復元力で閉鎖状態に停止することでピストンおよびコック相互間に補給された流体が下通路から漏れることを禁止する。この下パッキンはピストンが上から下へ移動操作されたときには流体からピストンの移動方向と同じ向きの圧力を受けることでハウジングの内周面から離間する開放状態に弾性変形し、下通路を開放することでピストンおよびコック相互間に補給された流体を下通路からノズルを通して排出する。図1の符号36は下パッキンの一例である。
<請求項2記載の充填ポンプの説明>
請求項2記載の充填ポンプはタンク内に貯留された流体を容器内に充填するものにおいて、1)ハウジング〜8)フロートを備えたところに特徴を有している。
1)ハウジングはタンクに接続される縦長な管状をなすものであり、図4のシリンダチューブ21はハウジングの一例である。
2)ノズルはハウジングに設けられたものであり、ハウジングの内部から外部に流体を排出するものである。図4の符号26はノズルの一例である。
3)弁プレートはハウジングの内部に固定されたものであり、弁プレートには貫通孔状の下通路が形成されている。図4の符号53は弁プレートの一例であり、図4の符号54は下通路の一例である。
4)ピストンはハウジングの内部に弁プレートの上方に位置して移動可能に収納されたものであり、図4の符号40はピストンの一例である。
5)上通路はピストンの外周面とハウジングの内周面との間に設けられたものであり、図4の符号48は上通路の一例である。
6)ロッドはピストンに連結されたものであり、ピストンをハウジングの外部から移動操作するものである。図4のピストンロッド41はロッドの一例である。
7)上パッキンはピストンに固定されたものであり、ハウジング内の流体が静止した状態で閉鎖状態になる。この閉鎖状態とは流体から受ける圧力に抗して上から下へ向って外径寸法が大きくなる状態であり、上パッキンの閉鎖状態では上パッキンがハウジングの内周面に接触することで上通路を閉鎖する。この上パッキンはピストンが下から上へ移動操作されたときには流体からピストンの移動方向とは逆向きの圧力を受けることでハウジングの内周面から離間する開放状態に弾性変形し、上通路を開放することでタンク内からピストンおよび弁プレート相互間の空間部に流体を補給する。この上パッキンはピストンが上から下へ移動操作されたときには流体からピストンの移動方向とは逆向きの圧力を受けることで閉鎖状態に停止する。図4の符号49は上パッキンの一例である。
8)フロートはハウジングの内部に弁プレートの下方に位置して収納されたものであり、ハウジング内の流体が静止した状態で閉鎖状態になる。この閉鎖状態とは弁プレートに接触するように浮力で上昇した状態であり、フロートの閉鎖状態ではフロートが弁プレートの下通路を閉鎖する。このフロートはピストンが下から上へ移動操作されたときには浮力で閉鎖状態に上昇し、ピストンおよび弁プレート相互間に補給された流体が下通路から漏れることを禁止する。このフロートはピストンが上から下へ移動操作されたときには流体からピストンの移動方向と同じ向きの圧力を受けることで弁プレートから離間する開放状態に浮力に抗して移動し、下通路を開放することでピストンおよび弁プレート相互間に補給された流体を下通路からノズルを通して排出する。図4の符号56はフロートの一例である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の充填ポンプおよび請求項2記載の充填ポンプによれば、ロッドを駆動源によって下降操作することでハウジング内からロッドの移動量に応じた一定量の流体を排出し、ロッドを駆動源によって上昇操作することでタンク内からハウジング内にロッドの移動量に応じた一定量の流体を補給することができる。このため、切換弁および切換弁を制御する電気回路の双方が不要になるので、機械的および電気的に簡単な構成で容器内に一定量の流体を充填することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
【実施例1】
【0008】
1.流体充填機の構成の説明
タンク1は、図1に示すように、上面が開口する容器状をなすものであり、タンク1の内部には醤油等の液体が貯留されている。このタンク1の底板には下方から複数本のボルト2が挿入されており、各ボルト2の外周部には円筒状のスペーサ3が挿入されている。これら各ボルト2の上端部はタンクカバー4を貫通してタンクカバー4の上方に突出している。これら各ボルト2の突出部分にはナット5が螺合されており、タンクカバー4はボルト2の頭部およびナット5間の締結力でタンク1に装着されている。
【0009】
タンクカバー4はタンク1の上面を閉鎖するものであり、タンク1の上面が閉鎖された状態ではタンク1内に液体を注入することが不能になる。このタンクカバー4は各ボルト2からナット5を取外すことでタンク1から取外されるものであり、タンクカバー4の取外し状態ではタンク1の上面が開放され、タンク1の内部に上面から液体を注入することが可能になる。このタンクカバー4には複数のロッド挿入孔6が形成されており、各ロッド挿入孔6の周縁部にはタンク1の外部に位置してスラスト形の軸受7が装着されている。このタンクカバー4にはホースを介してエアー供給器が接続されており、タンク1内の液体およびタンクカバー4相互間の空間部にはエアー供給器からホースを通して滅菌された空気が供給される。
【0010】
タンク1の底板には円形状をなす複数のポンプ取付孔8が形成されており、タンク1の底板には各ポンプ取付孔8に沿って凹状の座面9が形成されている。これら各ポンプ取付孔8内には充填ポンプ20が挿入されている。これら各充填ポンプ20はタンク1内から容器10内に「10cc〜30cc程度」の一定量の液体を充填するものであり、次のように構成されている。
【0011】
シリンダチューブ21は上面および下面の双方が開口する円筒状をなすものであり、ポンプ取付孔8内に挿入されている。このシリンダチューブ21の外周面には円筒状のリング22が固定されており、シリンダチューブ21はリング22をタンク1の底板に下方から接合することでタンク1に固定されている。このシリンダチューブ21の外周面にはOリング収納部23が形成されている。このOリング収納部23はシリンダチューブ21の外周面のうち残余部分に比べて内周側に凹む凹状の部分を称するものであり、Oリング収納部23内にはOリング24が収納され、Oリング24は座面9とOリング収納部23の内面との間で挟持されることに基づいてシリンダチューブ21の外周面とポンプ取付孔8の内周面との隙間を液密状態に塞いでいる。
【0012】
シリンダチューブ21の下端部にはノズル26が固定されている。このノズル26はシリンダチューブ21の雌ネジ部25にノズル26の雄ネジ部27を螺合することでシリンダチューブ21に固定されたものであり、ノズル26には円筒状の充填口28が形成されている。このノズル26にはOリング29が装着されており、Oリング29はシリンダチューブ21とノズル26との間で挟持されることに基づいて両者の隙間を液密状態に塞いでいる。ノズル26にはコック30のシャフト31が固定されており、コック30はシリンダチューブ21の内部に固定されている。このコック30はノズル26の雌ネジ部32にシャフト31の雌ネジ部33を螺合することでノズル26に固定されたものであり、シャフト31には排出路34が形成されている。この排出路34は縦長な縦通路および横長な横通路が相互に交差した十字状をなすものであり、ノズル26の充填口28に接続されている。
【0013】
コック30はシリンダチューブ21に対して同心な円柱状をなすものである。このコック30の外径寸法はシリンダチューブ21の内径寸法に比べて小さく設定されており、コック30の外周面とシリンダチューブ21の内周面との間には隙間状の下通路35が形成されている。この下通路35はコック30を取囲む円環状をなすものであり、下通路35の径方向の幅寸法および縦方向の幅寸法のそれぞれは全域で一定に設定されている。
【0014】
コック30には下パッキン36が固定されており、コック30は下パッキン36を支持するパッキンベースとして機能する。この下パッキン36は上から下へ向って外径寸法および内径寸法のそれぞれが大きくなる拡径形状をなすものであり、外径寸法および内径寸法のそれぞれが最大の下端部でシリンダチューブ21の内周面に弾性復元力で密着している。この下パッキン36はシリコンゴムを材料に形成されたものであり、下パッキン36の硬度は「20度」〜「60度」の範囲内に設定されている。この下パッキン36は、図2に示すように、コック30に装着されていない未装着状態で内径寸法および外径寸法のそれぞれが肉厚方向に一定な平板状の円環部材からなるものであり、下パッキン36の内周面をコック30の外周面に押込んだときには、図1に示すように、下パッキン36が内径寸法および外径寸法が相互に接近するように弾性変形することに基づいて拡径形状になる。
【0015】
コック30の上端部には、図1に示すように、上フランジ部37が形成されている。この上フランジ部37には下パッキン36の上端部が係合しており、下パッキン36は上端部が上フランジ部37に係合することでコック30に対して抜止めされている。このコック30の下端部には下フランジ部38が形成されており、下フランジ部38には円周方向に相互に間隔を置いて並ぶ複数の切欠部39が形成されている。
【0016】
シリンダチューブ21の内部にはコック30の上方に位置してピストン40がスライド可能に挿入されており、ピストン40には円柱状のピストンロッド41が固定されている。このピストンロッド41はピストン40の雌ネジ部42にピストンロッド41の雄ネジ部43を螺合することでピストン40に固定されたものであり、ピストンロッド41の上端部は軸受7の内周面を通してタンクカバー4の上方に突出している。このピストンロッド41の突出部分にはキャップ44が固定されている。このキャップ44はピストンロッド41の雄ネジ部45にキャップ44の雌ネジ部46を螺合することでピストンロッド41に固定されたものであり、キャップ44の上端部には円形状のプレート47が形成されている。
【0017】
ピストン40はシリンダチューブ21に対して同心な円柱状をなすものである。このピストン40の外径寸法はシリンダチューブ21の内径寸法に比べて小さく設定されており、ピストン40の外周面とシリンダチューブ21の内周面との間には隙間状の上通路48が形成されている。この上通路48はピストン40を取囲む円環状をなすものであり、上通路48の径方向の幅寸法および縦方向の幅寸法のそれぞれは全域で一定に設定されている。
【0018】
ピストン40の外周面には上パッキン49が固定されている。この上パッキン49は上から下へ向って外径寸法および内径寸法のそれぞれが大きくなる拡径形状をなすものであり、外径寸法および内径寸法が最大の下端部でシリンダチューブ21の内周面に弾性復元力で密着している。この上パッキン49はシリコンゴムを材料に形成されたものであり、上パッキン49の硬度は「20度」〜「60度」の範囲内に設定されている。この上パッキン49は、図2に示すように、ピストン40に装着されていない未装着状態で内径寸法および外径寸法のそれぞれが肉厚方向に一定な平板状の円環部材からなるものであり、上パッキン49の内周面をピストン40の外周面に押込んだときには、図1に示すように、上パッキン49が内径寸法および外径寸法が相互に接近するように弾性変形することに基づいて拡径形状になる。
【0019】
ピストン40の上端部には、図1に示すように、上フランジ部50が形成されている。この上フランジ部50には上パッキン49の上端部が係合しており、上パッキン49は上端部が上フランジ部50に係合することでピストン40に対して抜止めされている。このピストン40の下端部には下フランジ部51が形成されており、下フランジ部51には円周方向に相互に間隔を置いて並ぶ複数の切欠部52が形成されている。充填ポンプ20は以上のように構成されている。
【0020】
タンク1の底板にはベースプレート11が固定されており、ベースプレート11にはバネ戻し式の単動形の油圧シリンダ12が固定されている。この油圧シリンダ12は上下方向へ延びるロッド13を有するものであり、ロッド13は油圧で下方へ往動し、バネ力で上方へ復動する。この油圧シリンダ12のロッド13にはロッド13に比べて外径寸法が小さな雄ネジ部14が形成されており、雄ネジ部14にはナット15が螺合されている。この雄ネジ部14の外周部には操作プレート16が挿入されている。この操作プレート16はナット15の締結力でロッド13に固定されたものであり、油圧シリンダ12に油圧が加えられることに基づいてロッド13と一体的に下降し、油圧シリンダ12から油圧が除去されることに基づいてロッド13と一体的にバネ力で上昇する。
【0021】
操作プレート16には複数のロッド挿入孔17が形成されている。これら各ロッド挿入孔17内には充填ポンプ20のキャップ44が挿入されており、各キャップ44には操作プレート16の下方に位置して円環状のリング18が固定されている。これら各リング18は操作プレート16の下降時にピストンロッド41に操作力を伝達するものであり、操作プレート16の下降時には操作プレート16から複数の全てのピストンロッド41に操作力が同時に伝達されることに基づいて複数の全てのピストン40が同時に下降する。この操作プレート16が下降状態から上昇したときには操作プレート16から各キャップ44のプレート47を通してピストンロッド41に操作力が伝達され、複数の全てのピストン40が操作プレート16の操作力で同時に上昇する。
2.流体充填機の動作の説明
油圧シリンダ12のロッド13が上昇状態で停止しているときには、図3の(a)に示すように、各充填ポンプ20のピストン40がシリンダチューブ21内の上端部に位置した上昇状態で停止し、シリンダチューブ21内の液体が静止している。この状態では下パッキン36が閉鎖状態で停止し、上パッキン49が閉鎖状態で停止している。下パッキン36の閉鎖状態とは液体から受ける圧力に抗して外径寸法が上から下へ向って大きくなる状態であり、下パッキン36の閉鎖状態では下パッキン36がシリンダチューブ21の内周面に接触することで下通路35を閉鎖している。上パッキン49の閉鎖状態とは液体から受ける圧力に抗して外径寸法が上から下へ向って大きくなる状態であり、上パッキン49の閉鎖状態では上パッキン49がシリンダチューブ21の内周面に接触することで上通路48を閉鎖している。従って、コック30およびピストン40相互間の空間部に一定量の液体が下通路35から漏れることなく貯留されている。
【0022】
油圧シリンダ12のロッド13が上昇状態から下降したときには各充填ポンプ20のピストロッド41が同時に下降し、各充填ポンプ20のピストン40が上昇状態から同時に下降する。これら各充填ポンプ20のピストン40が上昇状態から下降するときには、図3の(b)に示すように、上パッキン49が液体からピストン40の移動方向とは逆の上向きの圧力を受けることで閉鎖状態に停止し、下パッキン36が液体からピストン40の移動方向と同じ下向きの圧力を受けることでシリンダチューブ21の内周面から離間する開放状態に弾性変形する。この下パッキン36の開放状態では下通路35が開放され、コック30およびピストン40相互間の液体が下通路35から排出路34およびノズル26の充填口28を通して排出される。
【0023】
油圧シリンダ12のロッド13が下降状態で停止したときには各充填ポンプ20のピストロッド41が同時に停止し、各充填ポンプ20のピストン40が下降状態で同時に停止する。これら各充填ポンプ20のピストン40が下降状態で停止したときにはシリンダチューブ21内の液体が静止するので、図3の(c)に示すように、下パッキン36が弾性復元力で閉鎖状態に復帰することに基づいて下通路35を閉鎖する。従って、容器10内にはピストン40の下降量に応じた一定量の液体がノズル26を通して充填される。
【0024】
油圧シリンダ12のロッド13が下降状態から上昇したときには各充填ポンプ20のピストロッド41が同時に上昇し、各充填ポンプ20のピストン40が下降状態から同時に上昇する。これら各充填ポンプ20のピストン40が下降状態から上昇するときには、図3の(d)に示すように、上パッキン49が液体からピストン40の移動方向とは逆の下向きの圧力を受けることでシリンダチューブ21の内周面から離間する開放状態に弾性変形する。この上パッキン49の開放状態では上通路48が開放され、タンク1内から上通路48を通してコック30およびピストン40相互間の空間部に液体が補給される。この液体の補給状態では下パッキン36が弾性復元力で閉鎖状態に停止し、コック30およびピストン40相互間に補給された液体が下通路35から漏れることを防止する。
【0025】
上記実施例1によれば次の効果を奏する。
ピストンロッド41を油圧シリンダ12によって下降操作することでシリンダチューブ21内からピストンロッド41の移動量に応じた一定量の液体を排出し、ピストンロッド41を油圧シリンダ12によって上昇操作することでタンク1内からシリンダチューブ21内にピストンロッド41の移動量に応じた一定量の液体を補給した。このため、切換弁および切換弁を制御する電気回路の双方が不要になるので、機械的および電気的に簡単な構成で容器10内に一定量の液体を充填することが可能になる。しかも、切換弁を分解して洗浄する手間がなくなるので、充填ポンプ20の洗浄作業性が向上する。
【0026】
タンク1に縦長なシリンダチューブ21を接続したので、シリンダチューブ21の内部を常に液体中に浸しておくことができる。このため、外気中の埃および細菌がシリンダチューブ21の内周面に付着することがなくなるので、シリンダチューブ21の内周面に付着した埃等が下パッキン36の摺動および上パッキン49の摺動に基づいてシリンダチューブ21の内周面から剥離して容器10内に液体と共に充填されることがなくなる。
【0027】
下パッキン36を内径寸法がコック30の外径寸法に比べて小さな平板形状の円環部材として成形し、コック30の外周面に固定することに基づいて上から下へ向って外径寸法が大きくなる拡径形状に弾性変形させた。このため、下パッキン36を拡径形状に成形する必要がなくなるので、下パッキン36を成形する成形型の型形状が簡単になる。この効果は上パッキン49についても同一である。
【0028】
上記実施例1においては、充填ポンプ20の下通路35を下パッキン36の弾性力で閉鎖する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えばフロートの浮力で閉鎖する構成としても良い。以下、下通路をフロートの浮力で閉鎖する実施例2を図4に基づいて説明する。
【実施例2】
【0029】
シリンダチューブ21の内部には、図4に示すように、下端部に位置して弁プレート53が固定されている。この弁プレート53はシリンダチューブ21と同心な円形状をなすものであり、弁プレート53には円形孔状の下通路54が形成されている。シリンダチューブ21の内部には弁プレート53の下方に位置して複数のフロートガイド55が固定されている。これらフロートガイド55はシリンダチューブ21に対して同心な共通の円形軌跡上に配列されたものであり、円周方向に隣接するフロートガイド55相互間には液体が流通可能な隙間が形成されている。
【0030】
シリンダチューブ21の内部には弁プレート53の下方に位置してフロート56が収納されている。このフロート56は下通路54を開閉する弁として機能するものであり、内部に空気が封入された中空状をなしている。このフロート56には下面が開口する円形状の凹部57が形成されている。この凹部57内には複数のフロートガイド55が挿入されており、フロート56は複数のフロートガイド55に沿って上下方向へ移動可能にされている。
【0031】
油圧シリンダ12のロッド13が上昇状態で停止しているときにはシリンダチューブ21内の液体が静止し、上パッキン49が閉鎖状態に停止している。この状態ではフロート56が弁プレート53の下面に浮力で面接触状態に密着した閉鎖状態に上昇し、弁プレート53の下通路54を閉鎖している。従って、弁プレート53およびピストン40相互間の空間部に一定量の液体が下通路54から漏れることなく貯留される。
【0032】
油圧シリンダ12のロッド13が上昇状態から下降したときにはピストン40が下降し、上パッキン49が液体からピストン40の移動方向とは逆の上向きの圧力を受けることで閉鎖状態に停止する。このピストン40の下降時にはフロート56が液体からピストン40の移動方向と同じ下向きの圧力を受けることで浮力に抗して下降し、弁プレート53から離間する開放状態になる。このフロート56の開放状態では弁プレート53の下通路54が開放され、弁プレート53およびピストン40相互間の液体が下通路54からノズル26の充填口28を通して排出される。
【0033】
油圧シリンダ12のロッド13が下降状態で停止したときにはシリンダチューブ21内の液体が静止するので、フロート56が浮力で閉鎖状態に復帰することに基づいて下通路54を閉鎖する。従って、容器10内にはピストン40の下降量に応じた一定量の液体がノズル26を通して充填される。
【0034】
油圧シリンダ12のロッド13が下降状態から上昇したときには上パッキン49が液体からピストン40の移動方向とは逆の下向きの圧力を受けることで開放状態に弾性変形する。この上パッキン49の開放状態では上通路48が開放され、タンク1内から上通路48を通して弁プレート53およびピストン40相互間の空間部に液体が補給される。この液体の補給状態ではフロート56が浮力で閉鎖状態に停止し、弁プレート53およびピストン40相互間に補給された液体が下通路54から漏れることを防止する。
【0035】
上記実施例2によれば次の効果を奏する。
ピストンロッド41を油圧シリンダ12によって下降操作することでシリンダチューブ21内からピストンロッド41の移動量に応じた一定量の液体を排出し、ピストンロッド41を油圧シリンダ12によって上昇操作することでタンク1内からシリンダチューブ21内にピストンロッド41の移動量に応じた一定量の液体を補給した。このため、切換弁および切換弁を制御する電気回路の双方が不要になるので、機械的および電気的に簡単な構成で容器10内に一定量の液体を充填することが可能になる。しかも、弁プレート53の下通路54をフロート56によって開閉したので、醤油等に比べて粘性が高い液体を容器10内に円滑に充填することが可能になる。
【0036】
上記実施例1〜実施例2においては、ピストンロッド41を操作する駆動源として油圧シリンダ12を使用したが、これに限定されるものではなく、例えば空気圧シリンダ・電磁ソレノイド・モータ等を使用しても良い。
【0037】
上記実施例1〜実施例2においては、油圧シリンダ12のロッド13の移動ストロークを一定にしたが、これに限定されるものではなく、例えばロッド13の移動ストロークを変えることで容器10に対する液体の充填量を可変する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例1を示す図(aは流体充填機を示す図、bはXb部を示す図、cはXc部を示す図)
【図2】上パッキンおよび下パッキンを未装着状態で示す図(aはXa線に沿う断面図、bはXb視図)
【図3】充填ポンプの内部構成を示す断面図(aはピストンが上昇状態で停止したときの上パッキンの状態および下パッキンの状態を示す図、bはピストンが上昇状態から下降するときの上パッキンの状態および下パッキンの状態を示す図、cはピストンが下降状態で停止したときの上パッキンの状態および下パッキンの状態を示す図、dはピストンが下降状態から上昇するときの上パッキンの状態および下パッキンの状態を示す図)
【図4】本発明の実施例2を示す図(aは流体充填機を示す図、bはX部をフロートの閉鎖状態で示す図、cはX部をフロートの開放状態で示す図)
【図5】従来例を示す図
【符号の説明】
【0039】
1はタンク、20は充填ポンプ、21はシリンダチューブ(ハウジング)、26はノズル、30はコック、35は下通路、36は下パッキン、40はピストン、41はピストンロッド(ロッド)、48は上通路、49は上パッキン、53は弁プレート、56はフロートを示している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内に貯留された流体を容器内に充填する流体用の充填ポンプにおいて、
前記タンクに接続される縦長な管状のハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングの内部から外部に流体を排出するノズルと、
前記ハウジングの内部に固定されたコックと、
前記コックの外周面と前記ハウジングの内周面との間に設けられた下通路と、
前記ハウジングの内部に前記コックの上方に位置して移動可能に収納されたピストンと、
前記ピストンの外周面と前記ハウジングの内周面との間に設けられた上通路と、
前記ピストンに連結され、前記ピストンを前記ハウジングの外部から移動操作するロッドと、
前記ピストンに固定され、前記ハウジング内の流体が静止した状態では前記ハウジングの内周面に接触するように上から下へ向って外径寸法が大きくなる閉鎖状態に流体から受ける圧力に抗して停止することで前記上通路を閉鎖する上パッキンと、
前記コックに固定され、前記ハウジング内の流体が静止した状態では前記ハウジングの内周面に接触するように上から下へ向って外径寸法が大きくなる閉鎖状態に流体から受ける圧力に抗して停止することで前記下通路を閉鎖する下パッキンとを備え、
前記ピストンが下から上へ移動操作されたときには、
前記上パッキンは流体から前記ピストンの移動方向とは逆向きの圧力を受けることで前記ハウジングの内周面から離間する開放状態に弾性変形し、前記上通路を開放することで前記タンク内から前記ピストンおよび前記コック相互間の空間部に流体を補給し、
前記下パッキンは弾性復元力で前記閉鎖状態に停止することで前記ピストンおよび前記コック相互間に補給された流体が前記下通路から漏れることを禁止し、
前記ピストンが上から下へ移動操作されたときには、
前記上パッキンは流体から前記ピストンの移動方向とは逆向きの圧力を受けることで前記閉鎖状態に停止し、
前記下パッキンは流体から前記ピストンの移動方向と同じ向きの圧力を受けることで前記ハウジングの内周面から離間する開放状態に弾性変形し、前記下通路を開放することで前記ピストンおよび前記コック相互間に補給された流体を前記下通路から前記ノズルを通して排出する
ことを特徴とする充填ポンプ。
【請求項2】
タンク内に貯留された流体を容器内に充填する流体用の充填ポンプにおいて、
前記タンクに接続される縦長な管状のハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングの内部から外部に流体を排出するノズルと、
前記ハウジングの内部に固定され、貫通孔状の下通路を有する弁プレートと、
前記ハウジングの内部に前記弁プレートの上方に位置して移動可能に収納されたピストンと、
前記ピストンの外周面と前記ハウジングの内周面との間に設けられた上通路と、
前記ピストンに連結され、前記ピストンを前記ハウジングの外部から移動操作するロッドと、
前記ピストンに固定され、前記ハウジング内の流体が静止した状態では前記ハウジングの内周面に接触するように上から下へ向って外径寸法が大きくなる閉鎖状態に流体から受ける圧力に抗して停止することで前記上通路を閉鎖する上パッキンと、
前記ハウジングの内部に前記弁プレートの下方に位置して収納され、前記ハウジング内の流体が静止した状態では前記弁プレートに接触する閉鎖状態に浮力で上昇することで前記弁プレートの下通路を閉鎖するフロートとを備え、
前記ピストンが下から上へ移動操作されたときには、
前記上パッキンは流体から前記ピストンの移動方向とは逆向きの圧力を受けることで前記ハウジングの内周面から離間する開放状態に弾性変形し、前記上通路を開放することで前記タンク内から前記ピストンおよび前記弁プレート相互間の空間部に流体を補給し、
前記フロートは浮力で前記閉鎖状態に上昇することで前記ピストンおよび前記弁プレート相互間に補給された流体が前記下通路から漏れることを禁止し、
前記ピストンが上から下へ移動操作されたときには、
前記上パッキンは流体から前記ピストンの移動方向とは逆向きの圧力を受けることで前記閉鎖状態に停止し、
前記フロートは流体から前記ピストンの移動方向と同じ向きの圧力を受けることで前記弁プレートから離間する開放状態に浮力に抗して移動し、前記下通路を開放することで前記ピストンおよび前記弁プレート相互間に補給された流体を前記下通路から前記ノズルを通して排出する
ことを特徴とする充填ポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−138740(P2007−138740A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330137(P2005−330137)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(504236732)
【Fターム(参考)】