説明

充填装置の液面追従方法と同装置

【課題】 容器への充填の際に、容器の形状や蓋の有無および被充填液の性状に左右されず、被充填液の吐出口の位置を液面に合わせて正確に上昇させることができる充填装置の液面追従装置を提供する。
【解決手段】 被充填液Bを充填する容器Yを載置可能なロードセルなどの計量器5と、この計量器5にて一定時間毎に測定した容器Yに充填される被充填液質量の計量値に基づいて、容器Yの液面高さhにおける開口断面積Aと被充填液Bの比重とから液面上昇速度vを演算し、単位時間当たりの液面高さの変位量である変位速度を演算する演算手段6と、この演算手段6にて演算した液面上昇速度vに合わせて昇降手段4の上昇速度Vを制御する制御手段7とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留タンクやドラム缶などの大型容器内の主として液体を小型の容器に小分けして充填する充填装置において、小型の容器内に充填される液体の上面(液面)に合わせて被充填液の吐出口を昇降させることにより、液面に追従させる液面追従方法と同装置に関する。ここで、上記の「主として液体」とは、液体の他に粉粒体および流動物を含むことを意味する。
【背景技術】
【0002】
小型の容器に被充填液をポンプ等を介して自動的に充填する充填装置では、被充填液の吐出口と液面との間隔が大きくなり過ぎると、被充填液が液面をたたくために、被充填液が飛散してミスト状になったり、空気を含んで泡状になったりし、充填終了段階で容器から被充填液が吹き出すおそれがある。また、吐出される被充填液が気泡状になると、液面が実際の高さよりも上昇し、被充填液の吐出口が被充填液に接触するおそれがあり、被充填液との接触により、液面がさらに上昇したり、吐出口が浮力を受けて浮き上がったりするおそれもある。したがって、被充填液の種類にもよるが、一般的には、吐出口と容器内の液面との間隔を、例えば0〜数ミリ程度に保って充填するのが望ましい。
【0003】
従来、この種の充填装置において、上方より充填する場合に泡立ちやすい液体や空気の巻き込みを嫌う液体では、例えば、図5に示すように、容器Yの上端開口付近に光電式、レーザ式、超音波式などの液面高さ測定用センサー71を設けて液面の高さを測定し、測定される液面の高さに合わせて被充填液の吐出口を昇降させることにより液面に追従させ、泡立ちや空気の巻き込みなどの防止を図っている。しかし、この方法では、以下のような不都合がある。すなわち、
1.注入口Dが容器上面の一部にしかない、一斗缶Yのような容器の場合には、上記のセンサー71により液面の位置を正確に測定できない(図5(a)参照)。
【0004】
2.充填中に埃などが侵入するのを防止するため、容器Yの上端開口に蓋を取り付ける場合には、1.の場合と同様にセンサー71による液面位置の測定ができないほか、透明な蓋Zを使用する場合にも、センサー71からの照射波や反射波が減衰され、液面の位置を正確に測定できないことがある(図5(b)参照)。
【0005】
3.被充填液Bが例えばチョコレートのような高粘性液の場合には、液面が盛り上がるので水平面でないため、液面高さが一定せず、またセンサー71からの照射波が乱反射するので、液面の正確な測定が困難である(図5(c)参照)。
【0006】
ところで、この種の充填装置に関連する先行技術として、大型容器内の被充填液を小型の容器に一定量ずつ充填する定量充填装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この充填装置では、大型容器内の被充填液をポンプ等で小型容器に充填する際に、ロードセルなどの計量器上に容器を載置して被充填液の質量(重量)を計測しながら充填するが、所定の重量に達した時点でポンプ等を停止しても、実際にポンプ等が停止するまでに応答遅れがあるので、この応答遅れによる被充填液の計量誤差を補正してより正確に一定質量ずつ充填できるようにした定量充填装置である。
【特許文献1】特開2007−3343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1に記載の定量充填装置では、小型の容器にあらかじめ設定した容量をほぼ正確に充填することができるが、容器内への充填時に被充填液の吐出口を容器内の液面の高さに合わせて昇降させることにより、液面に追従させるという考え方は一切取り入れられていない。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、容器への充填の際に、容器の形状や蓋の有無および被充填液の性状に左右されず、被充填液の吐出口の位置を液面に合わせて正確に上昇させることができる、充填装置の液面追従方法と同装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明に係る充填装置の液面追従方法は、貯留タンクなどの大型容器内の被充填液を配管を介して供給ポンプで供給し、小型容器に小分けして充填する充填装置において、前記小型容器内に充填される液体の上面(以下、液面という)に合わせて被充填液の吐出口を昇降手段により昇降し、液面に追随させる液面追従方法であって、被充填液を充填する前記小型容器を載置可能なロードセルなどの計量器にて前記小型容器に充填される被充填液の質量を一定時間毎に測定し、前記小型容器の液面高さにおける開口断面積と被充填液の比重とから液面高さの変位速度を演算し、演算した液面高さの変位速度に合わせて前記昇降手段の上昇速度を制御することを特徴とする。
【0010】
上記の構成を有する本発明に係る充填装置の液面追従方法によれば、大型容器内の被充填液を供給ポンプにより自動的に小型容器に充填する装置において、空の小型容器を計量器上に載せた状態で通常、風袋引きにて容器重量(質量)が減算されて計量器による計測値は0となる。ここで、例えば小型容器が半径rの円筒体からなる場合には、開口断面積はπ×r2 であるので、被充填液の比重をγとし、容器内に充填された被充填液の質量の計測値をw1とすれば、液面高さh1=w1/(π×r2 ×γ)
となる。そして、一定時間(t)経過後の被充填液の質量の計測値をw2とすれば、液面高さh2=w2/(π×r2 ×γ)となる。したがって、液面の上昇速度v=(h2−h1)/t=(w2−w1)/(π×r2 ×γ×t)となる。そこで、液面の上昇速度vが一定に保たれる場合には、昇降手段により被充填液の吐出口を速度V=vで上昇させれば、容器内の被充填液の液面と被充填液の吐出口とは、常に一定の間隔を保って上昇することになり、液の泡立ちや液の飛散などが防止される。
【0011】
請求項2に記載のように、前記供給ポンプとして供給量がポンプ回転速度に比例する定量性ポンプを使用し、この定量性ポンプの回転速度と前記昇降機による被充填液の吐出口の上昇速度とが比例するように補正制御することが好ましい。
【0012】
定量性ポンプ、例えば一軸偏心ねじポンプによる液の単位時間当たりの供給量つまり充填速度は、ポンプの回転速度pに正比例する。いいかえれば、ポンプの回転速度pと液面高さの変位速度vとが正比例するから、ポンプの回転速度pもパラメータの一つとすることで、ポンプ回転速度pが増減すれば、被充填液の吐出口の上昇速度Vをポンプ回転速度pの増減割合に応じて増減させることによって、被充填液の吐出口をより正確に液面に追従させられる。
【0013】
上記の目的を達成するために本発明(請求項3)に係る充填装置の液面追従装置は、貯留タンクなどの大型容器内の被充填液を配管を介して供給ポンプで供給し、小型容器に小分けして充填する充填装置において、前記小型容器内に充填される液体の上面(以下、液面という)に合わせて前記配管下端の被充填液の吐出口を昇降手段により上昇させ、液面に追従させる液面追従装置であって、
被充填液を充填する前記小型容器を載置可能なロードセルなどの計量器と、この計量器にて一定時間毎に測定した前記小型容器に充填される被充填液質量の計量値に基づいて、前記小型容器の液面高さにおける開口断面積と被充填液の比重とから液面高さの変位量を演算し、単位時間当たりの液面高さの変位量である変位速度を演算する演算手段と、この演算手段にて演算した液面高さの変位速度に合わせて前記昇降手段の上昇速度を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
上記の構成を有する充填装置の液面追従装置によれば、容器の開口断面積Aが高さによって変化せず、被充填液の比重がγで液面高さh1の時の被充填液の質量がw1で、t秒経過後の液面高さh2の時の被充填液の質量がw2の場合、液面の上昇速度v=(h2−h1)/t=(w2−w1)/(A×γ×t)となる。そこで、被充填液の吐出口を昇降手段により上昇速度V=v(液面の上昇速度)で上昇させれば、容器内の被充填液の液面と被充填液の吐出口とが常に一定の間隔を保たれて被充填液が容器に充填されることになり、液の泡立ちや液の飛散などが防止される。つまり、計測器で小型容器内に充填される被充填液の質量(充填量)が一定時間間隔で逐次計測され、計測時間毎の質量(充填量)wの変化および小型容器内の液面高さhの変化が演算手段で演算され、液面の上昇速度に合わせて被充填液の吐出口の位置も上昇するので、容器内の液面と被充填液の吐出口との間隔を常に一定に保った状態で被充填液を容器に充填することができる。
【0015】
請求項4に記載のように 前記昇降手段が、可変速モータ(例えばサーボモータ)にて回転するボールネジと、このボールネジに螺合する雌ねじ部を有し、ガイドポストに沿って昇降可能で、前記配管を前記吐出口上方で取付可能な昇降部とを備え、前記制御手段にて前記可変速モータの回転速度を制御することができる。
【0016】
このようにすれば、単位時間当たりの被充填液の質量(充填量)の変化および液面高さの変位を演算し、被充填液の吐出口の上昇速度いいかえれば可変速モータによるボールネジの回転速度を被充填液の質量(充填量)の変化に応じて変化させられるので、容器内の液面と被充填液の吐出口とを常に一定の間隔を保つように維持できる。
【0017】
請求項5に記載のように、前記配管の吐出口を開閉可能な電磁開閉式充填弁を設けることができる。
【0018】
このようにすれば、小型容器内に充填される被充填液の質量があらかじめ設定した重量(計量器による設定質量)に達すると、制御手段からの指令信号にて充填弁を閉じて充填作業を即座に中止できる。
【0019】
請求項6に記載のように、前記供給ポンプと前記充填弁との間で前記配管に、前記大型容器への戻し管を接続し、この戻し管の途中にリリーフ弁を介設することが好ましい。
【0020】
このようにすれば、小型容器内の被充填液が予定の充填量に達し充填弁を閉じたときに、供給ポンプの回転が慣性力ですぐには停止せず被充填液の供給が継続している場合でも、リリーフ弁が開放されて戻し管から大型容器へ被充填液が戻される。したがって、複雑な制御をしなくても、充填弁を閉じれば小型容器内への被充填液の供給が即座に中止され設定した充填量を正確に充填できる。
【0021】
請求項7に記載のように、前記供給ポンプとして供給量がポンプ回転速度に比例する定量性ポンプを使用し、この定量性ポンプの回転速度の増減(変化)に対応して前記昇降手段の上昇速度が増減するように制御することが好ましい。
【0022】
このようにすれば、定量性ポンプによる被充填液の単位時間当たりの供給量つまり充填速度が、ポンプの回転速度pに正比例することから、ポンプの回転速度pと液面高さの変位速度vとも正比例することになる。したがって、ポンプの回転速度pもパラメータの一つとすることができ、ポンプ回転速度pが増減すれば、被充填液の吐出口の上昇速度Vをポンプ回転速度pの増減割合に応じて増減させることができるので、より正確に被充填液の吐出口を液面に追従させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る充填装置の液面追従方法と同装置は、上記の構成からなるので、下記のような優れた効果がある。
【0024】
1) 小分けして充填する容器の形状を問わず、適用できる。
【0025】
2) 充填弁や被充填液の吐出口を出入りさせられる開口を持つ蓋であれば、従来の液面の位置を測定するセンサーと違って、蓋をしたことによる影響を受けて測定値が減衰したりしないので、液面の位置(高さ)を安定して測定できる。
【0026】
3) 粘性度の大小など被充填液の性状には左右されず、液面を正確に追従できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る充填装置の液面追従装置について実施の形態を図面に基づいて説明し、併せて液面追従方法についても説明する。
【0028】
図1〜図4は本発明の充填装置の液面追従装置についての実施例を示す図面で、図1は大型容器内の被充填液(液体B)を定量性供給ポンプ2で汲み上げて小型容器に充填する状態の、充填装置1の供給側を示す正面図、図2は充填弁および被充填液の吐出口の昇降手段を含む液面追従装置3と充填装置1の充填側を示す正面図、図3は本発明の液面追従方法の実施例を示すブロック図、図4は定量性供給ポンプとしての縦型一軸偏心ねじポンプの一部を拡大して示す断面図である。
【0029】
これらの図に示すように、本例の液体充填装置1は、大型容器としてのドラム缶X内の液体Bを汲み上げて小型容器Yへ供給するポンプ2と、小型容器Y内に充填される液体Bの上面である液面に合わせて充填弁12下方の液体吐出口14を昇降手段4により上昇させて液面に追従させる液面追従装置3とを備え、また液面追従装置3は小型容器Y内に充填される液体Bの質量(重量)を逐次測定する計量器5と、この計量器5にて測定される被充填液Bの質量から液面高さhを逐次演算し、液面の上昇速度を演算する演算手段6と、この演算手段6にて演算した液面高さhの上昇速度に合わせて(一致するように)昇降手段4による上昇速度を制御する制御手段7とを備えている。
【0030】
供給ポンプ2は縦型の一軸偏心ねじポンプで、図4に示すように略円筒状のポンプケーシング2aの下端にステータ2bが連結され、ステータ2bの下端が吸込口2cを構成する。ポンプケーシング2aの上端には、図1に示すように減速機2dを介して電動モータ2eが接続されている。また、減速機2dから下方へ延びた駆動軸(図示せず)の下端には、図4のようにカップリングロッド2jがユニバーサルジョイントを介して接続され、カップリングロッド2jの下端のステータ2b側もユニバーサルジョイント2hを介してロータ2fの上端が接続されている。さらに、ポンプケーシング2aの上端部には、図1のように吐出口2kが設けられている。詳しくは、ステータ2bは軟質の合成樹脂もしくはゴム(本例はゴム)からなり、図4のようにロータ2fの2倍のピッチからなる横断面長円形の雌ねじ孔が螺旋状に形成され、この雌ねじ孔内に横断面円形の雄ねじ形ロータ2fが回転可能にかつ長軸方向に往復移動可能に嵌挿されている。以上のようにして一軸偏心ねじポンプ2が構成されているが、本実施例の場合、図1のように電動モータ2eにはモータの回転速度を常時検出する回転速度センサー33が接続されている。
【0031】
供給ポンプ2の吐出口2kには、配管11の一端が接続され、この配管11の他端は、図2のように電磁開閉式充填弁12により下端の吐出口14を開閉可能な別の配管13の上端部(注入口13a;図6参照)に接続されている。配管11は図1では2箇所で直角に屈曲した管として現しているが、小型容器Y側の吐出口14の昇降に応じて追随可能な、例えば屈曲自在な可撓性の管材からなる。本実施例において配管13は上下方向に一直線状に延びる管材からなり、この管材は充填弁12と一体に組み合わされ、充填弁12の一部として構成されている。すなわち、充填弁12は、詳しくは例えば図6に示すように、配管13内に下端の吐出口14を開閉可能な弁体12aを備え、配管13の上端に設けた電磁式シリンダ12bによってロッド12cを介して弁体12aを遠隔操作で上下動させることにより、開閉する構造からなっている。また、配管13の上部には、後述する昇降部25に着脱可能に取り付けられる取付具15が装着されている。
【0032】
さらに、本例の場合、配管11の途中には、図1に示すように、被充填液Bの戻し管16の一端が接続され、他端はドラム缶Xの上端に接続されている。また、戻し管16の入り口付近にはリリーフ弁17が介設されており、このリリーフ弁17は配管11からのパイロット圧で開放されるように、パイロット管18がリリーフ弁17の弁本体17aに接続されている。リリーフ弁17は、後述する制御手段7からの指令信号で充填弁12が閉鎖された際に、ポンプ2のロータ2fの回転が慣性力ですぐには停止しない場合に、吐出口2kから供給される液体Bを戻し管16を経由してドラム缶Xに戻すために設けられている。
【0033】
ドラム缶X内の液体Bを小分けして定量ずつ充填する小型容器Yは、本例の場合、上端を開放した円筒状容器からなる。したがって開口断面積Aは液面高さによって変化せず、半径をrとすれば、A=π×r2 である。
【0034】
液面追従装置3は、図2に示すように充填弁12を一体に備えた配管13の下端の吐出口14を昇降する昇降手段4を備えている。この昇降手段4は、ベース21上に鉛直方向に立設されたガイドポスト22に対し回転可能に支持されたボールネジ23と、このボールネジ23の下端に接続されるACサーボモータ24とを備えている。このサーボモータ24は、ガイドポスト22の下端部に支持具26を介して固定されている。ボールネジ23にはボールナット(図示せず)を介して昇降部25が螺合され、ボールネジ23が定位置で一方向に回転することにより、昇降部25がガイドポスト22の両側の上下方向に延びるガイド部22aに沿って上昇あるいは下降する。ベース21上には、小型容器Yを載置可能な、水平状態の平坦な受け面を持つ計量器、本例ではロードセル5が設置されている。
【0035】
図3に示すように、本例の場合、ロードセル5により一定時間毎に計量される被充填液Bの質量が電気信号として演算手段6に出力されるが、演算手段6にはあらかじめ被充填液Bの比重(γ)および小型容器Yの開口断面積A(π×r2)を入力しておくことにより、小型容器Y内に充填された液体Bの液面の高さhが、被充填液Bの質量wから右記の式にて演算される。 液面高さh=w/(γ×π×r2
そして、一定時間(Δt)毎の液面高さhの変位距離(Δh)から液面上昇速度(v=Δh/Δt)が演算され、演算された液面上昇速度vが制御手段7へ出力される。この制御手段7にて、昇降手段4のサーボモータ24へ回転速度Rが電気信号で指令され、充填弁12下端の吐出口14の上昇速度Vが液面の上昇速度vに一致する回転速度でボールネジ23が回転する。この結果、充填弁12の下端の吐出口14と液面とは、常に一定の間隔(例えば0〜数mm)を保持しながら上昇する。なお、演算手段6および制御手段7は、パーソナルコンピュータ(PC)30の一部(CPU)として構成される。
【0036】
ところで、本実施例にあっては、供給ポンプ2に定量性に優れた一軸偏心ねじポンプを使用しているので、一軸偏心ねじポンプ2の電動モータ2eの回転速度pを回転速度センサー33で検出し、回転速度pが安定して一定速度になった状態において回転速度pが増減するときには、±Δpをパラメータとしてサーボモータ24の回転速度Rを増減させる電気信号を制御手段7へ送り、制御手段7にて昇降手段4のサーボモータ24の回転速度RをΔp/pの割合で増減するように制御している。これにより、一軸偏心ねじポンプ2による被充填液Bの供給量、いいかえれば小型容器Yへの充填量の、電動モータ2eの回転速度の微小な変化に基づく液面高さhの変動に対し、充填弁12下端の吐出口14の上昇速度Vをリアルタイムで一致させることができ、より正確な液面追従が可能になる。なお、サーボモータ24の回転速度Rは速度センサー34にて検出し、制御手段7にフィードバックすることで、回転速度Rのバラツキを極力抑えて制御の精度を高めている。
【0037】
次に、上記のように構成した本実施例に係る液面追従装置3の作業態様について図面に基づいて説明する。
【0038】
図1に示すように、被充填液Bの充填作業に際して、空の円筒状容器Yを計量器としてのロードセル5上に載置した状態で、充填弁12下端の吐出口14を容器Yの底面から所定距離(例えば0〜数mm)離間した位置にセットする。この状態で、ロードセル5の計量値は風袋引きが行われ、0となる。また、吐出口14と液面との間の適正距離(間隔)は、通常、被充填液Bの性状に基づいて決定される。特に気泡性のある液体や飛散してミスト状になりやすい液体の場合には、例えば2〜3mm程度と極めて接近した間隔にするのが好ましい。
【0039】
そして、電動モータ2eを回転して一軸偏心ねじポンプ2の運転を開始し、ドラム缶X内の液体Bを汲み上げ、配管11を通して円筒状容器Yへ供給しながら充填する作業を開始する。こうして、円筒状容器Y内に液体Bが充填され始めると、容器B内に充填された液体Bの質量wがロードセル5で逐次計量される。液体Bの比重γおよび、容器Y内への充填量と液面高さの関係式(h=w/A(開口断面積:π×r2)は分かっており、あらかじめPC30の演算手段6に入力しておくので、小型容器B内の液面高さの単位時間当たりの変位量が演算され、そこから単位時間当たりの液面高さhの変位量である変位速度vが演算手段6で演算される。また、液面の変位速度である上昇速度vから、充填弁12下端の吐出口14を液面の上昇速度vに追従して上昇させるのに必要な、ボールネジ23を回転させるサーボモータ24の回転速度Rが演算され、この回転速度Rでサーボモータ24が回転する。この結果、容器Y内の液面の上昇速度vに追従するように充填弁12の下端の吐出口14が昇降部25とともに上昇する。また、サーボモータ24の回転速度Rは速度センサー34により検出し、制御手段7にフィードバックさせて微調整するので、回転速度Rも正確に維持される。さらに、本実施例では、一軸偏心ねじポンプ2の電動モータ一2eの回転速度pの増減についても、速度センサー33で検出し、制御手段7を介して液面の上昇速度vに反映させるようにしているから、より正確に充填弁12下端の吐出口14を液面に追従させて上昇させることができる。
【0040】
上記に本発明の充填装置の液面追従装置について一実施例を挙げて説明したが、下記のように実施することもできる。
【0041】
・小型容器Yは円筒状や角筒状などの、開口断面積が液面高さの変化に拘わらず一定の容器だけでなく、容器の高さ変化と開口断面積の変化の関係を数式で特定できるものであれば、液面高さの変化に伴って開口断面積が変化するような、例えば台形状容器であっても、本発明を適用して実施できる。
【0042】
・供給側ポンプ2の運転速度(上記実施例では電動モータ2eの回転速度)の変化は、充填弁12下端の吐出口14の上昇速度に連係させなくてもよい。
【0043】
・上記実施例では、充填弁12を閉鎖したときに供給側ポンプ2が慣性力で運転を継続する可能性を考慮して、リリーフ弁17を設けて大型容器Xに被充填液Bを戻すようにしたが、リリーフ弁17や戻し管16は省くことができる。
【0044】
・被充填液Bの吐出口14を昇降させる昇降手段4については、ボールネジ23を回転させて昇降部25を昇降させる構造のほか、図示は省略するが、例えばワイヤで充填弁12や配管13を吊り下げ、可変速モータによりワイヤを巻取ドラム等に巻き取って昇降させる構造にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の充填装置の液面追従装置についての実施例を示す図面で、大型容器内の被充填液(液体B)を定量性供給ポンプで汲み上げて小型容器に充填する状態の、充填装置1の供給側を示す正面図である。
【図2】充填弁および被充填液の吐出口の昇降手段を含む液面追従装置3と充填装置1の充填側を示す正面図である。
【図3】本発明の液面追従方法の一実施例を示すブロック図である。
【図4】定量性供給ポンプとしての縦型一軸偏心ねじポンプの一部を拡大して示す断面図である。
【図5】図5(a)〜(c)はそれぞれ従来の液面測定用センサー71を用いて液面を測定する状態を示す図面である。
【図6】充填弁12の構造の一例を示す原理図(概念図)で、図6(a)は吐出口14が閉鎖された状態を、図6(b)は吐出口14が開放された状態をそれぞれ現している。
【符号の説明】
【0046】
1 液体充填装置
2 供給ポンプ(一軸偏心ねじポンプ)
3 液面追従装置
4 昇降手段
5 計量器(ロードセル)
6 演算手段
7 制御手段
11・13 配管
12 充填弁
14 吐出口
15 取付具
16 戻し管
17 リリーフ弁
21 ベース
22 ガイドポスト
23 ボールネジ
24 ACサーボモータ
25 昇降部
26 支持具
30 PC
33・34 回転速度センサー
B 被充填液
X 大型容器(ドラム缶)
Y 小型容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留タンクなどの大型容器内の被充填液を配管を介して供給ポンプで供給し、小型容器に小分けして充填する充填装置において、前記小型容器内に充填される液体の上面(以下、液面という)に合わせて被充填液の吐出口を昇降手段により昇降し、液面に追随させる液面追従方法であって、
被充填液を充填する前記小型容器を載置可能なロードセルなどの計量器にて前記小型容器に充填される被充填液の質量を一定時間毎に測定し、前記小型容器の液面高さにおける開口断面積と被充填液の比重とから液面高さの変位速度を演算し、演算した液面高さの変位速度に合わせて前記昇降手段の上昇速度を制御することを特徴とする充填装置の液面追従方法。
【請求項2】
前記供給ポンプとして供給量がポンプ回転速度に比例する定量性ポンプを使用し、この定量性ポンプの回転速度と前記昇降機による被充填液の吐出口の上昇速度とが比例するように補正制御することを特徴とする請求項1記載の充填装置の液面追従方法。
【請求項3】
貯留タンクなどの大型容器内の被充填液を配管を介して供給ポンプで供給し、小型容器に小分けして充填する充填装置において、前記小型容器内に充填される液体の上面(以下、液面という)に合わせて前記配管下端の被充填液の吐出口を昇降手段により上昇させ、液面に追従させる液面追従装置であって、
被充填液を充填する前記小型容器を載置可能なロードセルなどの計量器と、この計量器にて一定時間毎に測定した前記小型容器に充填される被充填液質量の計量値に基づいて、前記小型容器の液面高さにおける開口断面積と被充填液の比重とから液面高さの変位量を演算し、単位時間当たりの液面高さの変位量である変位速度を演算する演算手段と、この演算手段にて演算した液面高さの変位速度に合わせて前記昇降手段の上昇速度を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする充填装置の液面追従装置。
【請求項4】
前記昇降手段が、可変速モータにて回転するボールネジと、このボールネジに螺合する雌ねじ部を有し、ガイドポストに沿って昇降可能で、前記配管を前記吐出口上方で取付可能な昇降部とを備え、
前記制御手段にて前記可変速モータの回転速度を制御することを特徴とする請求項3記載の充填装置の液面追従装置。
【請求項5】
前記配管の吐出口を開閉可能な電磁開閉式充填弁を設けたことを特徴とする請求項3または4記載の充填装置の液面追従装置。
【請求項6】
前記供給ポンプと前記充填弁との間で前記配管に、前記大型容器への戻し管を接続し、この戻し管の途中にリリーフ弁を介設したことを特徴とする請求項5記載の充填装置の液面追従装置。
【請求項7】
前記供給ポンプとして供給量がポンプ回転速度に比例する定量性ポンプを使用し、この定量性ポンプの回転速度の変動に対応して前記制御手段により前記昇降手段の上昇速度が増減するように制御することを特徴とする請求項3〜6のいずれか記載の充填装置の液面追従装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−201425(P2008−201425A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37210(P2007−37210)
【出願日】平成19年2月17日(2007.2.17)
【出願人】(000239758)兵神装備株式会社 (76)
【Fターム(参考)】