説明

充電システム、充電器、電動車両、および停電発生時の充電終了方法

【課題】車載バッテリの充電中に停電が発生した場合でも、充電器および電動車両間の充電制御を的確に行うことが可能な技術を提供する。
【解決手段】電気自動車200は、補助バッテリ204の制御用電力を、停電用の制御用電力として、車両側コネクタ201を介して充電器100に供電するとともに、充電器100と通信して充電器100と充電制御手順を実施することにより、車載バッテリ203の充電を制御する。一方、充電器100は、電気自動車200と通信して電気自動車200と上述の充電制御手順を実施することにより、車載バッテリ203に供電する充電用電力を制御する。そして、交流電源300が停電した場合に、充電器100の制御・通信系に供電する制御用電力源を、制御用電源105から電気自動車200の補助バッテリ203に切り替えるとともに、電気自動車200と通信して電気自動車200と所定の充電終了手順を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の充電システムに関し、特に、停電発生時に充電を正常終了させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車載バッテリの充電中に停電が発生したとき、および停電から復帰したときの充電制御を的確に行うことが可能な電動車両の充電システムが開示されている。この充電システムにおいて、補助バッテリを電源として動作する充電制御用コンピュータは、車載バッテリの充電中に停電オンオフ信号のレベル変化により外部電源の停電を検知した場合、停電発生時までの既充電時間を記憶する。そして、直ちに、自身の動作モードを通常電力動作モードから低電力動作モードに変更する。その後、停電から復帰したことを検知した場合に、所定の目標充電時間と停電発生時に記憶した既充電時間とから新たな目標充電時間を設定して充電を再開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−290533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、急速充電器を利用することにより、商用電源を用いて充電した場合(通常、満充電までに数時間を要する)と比較して、より短時間で電動車両の車載バッテリを充電可能とする充電システムの開発が進んでいる。駐車場、専用の充電スタンド等、様々な箇所に急速充電器を設置しておくことで、例えば外出先で電動車両の急速充電が可能となるため、電動車両の普及に貢献すると考えられる。
【0005】
このような充電システムでは、様々な容量・特性の車載バッテリに対応するため、所定の充電制御手順に従い、急速充電器および電動車両間で通信を行いながら車載バッテリの急速充電を実施する。このため、充電中に停電が発生すると、充電制御手順の途中で急速充電器および電動車両間の通信が遮断され、停電の事実を知らない電動車両が、充電制御手順を続行し、充電器からの応答待ち状態となることがある。この場合、電動車両のECU(エレクトリックコントロールユニット)が待ち状態のままとなって初期状態に復帰することができなくなり、電動車両のイグニッション操作を受け付けることができず、電動車両になんら異常がないにもかかわらず、電動車両を始動できなくなることがある。特許文献1は、このような事態を何ら考慮していない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、車載バッテリの充電中に停電が発生した場合でも、充電器および電動車両間の充電制御を的確に行うことが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明において、電動車両は、車両用補助電源から出力される制御用電力を、車両側コネクタを介して充電器に供電するとともに、充電器と通信して充電器と所定の充電制御手順を実施することにより、車両側コネクタを介して充電器から車載バッテリへ給電される充電用電力を制御する。一方、充電器は、外部電源から給電された交流電力を直流電力に変換して充電用電力を生成するとともに、電動車両と通信して電動車両と所定の充電制御手順を実施することにより、充電器側コネクタを介して電動車両に供電する充電用電力を制御する。ここで、充電器は、外部電源が停電した場合に、充電器の制御・通信系に供電する電力を、内部の充電器用補助電源から、充電器側コネクタを介して電動車両から給電される制御用電力に切り替えるとともに、電動車両と通信して電動車両と所定の充電終了手順を実施し、車載バッテリの充電を終了させる。
【0008】
例えば、本発明は、電動車両と、前記電動車両の車載バッテリを充電する充電器と、を有する充電システムであって、
前記電動車両は、
第一の制御用電力を出力する車両用補助電源と、
前記充電器から充電用電力を給電するとともに、前記充電器に前記第一の制御用電力を供電するための車両側コネクタと、
前記充電器と通信を行う車両用通信手段と、
前記車両用通信手段を介して前記充電器と通信して、前記充電器と所定の充電制御手順を実施することにより、前記車両側コネクタから前記車載バッテリに給電される前記充電用電力を制御するバッテリ制御手段と、を備え、
前記充電器は、
外部電源から給電された交流電力を直流電力に変換して、前記充電用電力を出力する交直変換手段と、
第二の制御用電力を出力する充電器用補助電源と、
前記電動車両に前記充電用電力を供電するとともに、前記電動車両から前記第一の制御用電力を給電するための充電器側コネクタと、
前記電動車両と通信を行う充電器用通信手段と、
前記充電器用補助電源からの前記第二の制御用電力により、前記充電器用通信手段を介して前記電動車両と通信して、前記電動車両と前記所定の充電制御手順を実施し、前記充電器側コネクタから前記車載バッテリに供電する前記充電用電力を制御する充電制御手段と、
前記外部電源の停電を検出する停電検出手段と、
前記停電検出手段により前記外部電源の停電が検出された場合に、前記充電制御手段に供電する電力を、前記第二の制御用電力から前記第一の制御用電力に切り替える電源切替手段と、を備え、
前記充電制御手段は、
前記停電検出手段により前記外部電源の停電が検出された場合に、前記電動車両からの前記第一の制御用電力により、前記充電器用通信手段を介して前記電動車両と通信して、前記電動車両と所定の充電終了手順を実施し、前記車載バッテリの充電を終了させる。
【0009】
ここで、車両用補助電源は、前記車載バッテリとは別途設けられた補助バッテリであってもよい。
【0010】
また、本発明の他の態様において、電動車両は、充電器と通信して充電器と所定の充電制御手順を実施することにより、車両側コネクタを介して充電器から車載バッテリに給電される充電用電力を制御する。一方、充電器は、外部電源から給電された交流電力を交直変換手段により直流電力に変換して充電用電力を生成するとともに、電動車両と通信して電動車両と所定の充電制御手順を実施することにより、充電器側コネクタを介して電動車両に供電する充電用電力を制御する。ここで、充電器は、外部電源が停電した場合に、充電器の制御・通信系に供電する電力を、充電器用補助電源から、交直変換手段の中間部に設けられた平滑コンデンサに蓄電されている直流電力を直流電圧変換手段により変換することで得られた制御用電力に切り替えるとともに、電動車両と通信して前記電動車両と所定の充電終了手順を実施することにより、車載バッテリの充電を終了させる。
【0011】
例えば、本発明は、電動車両と、前記電動車両の車載バッテリを充電する充電器と、を有する充電システムであって、
前記電動車両は、
前記充電器から充電用電力を給電するための車両側コネクタと、
前記充電器と通信を行う車両用通信手段と、
前記車両用通信手段を介して前記充電器と通信して、前記充電器と所定の充電制御手順を実施することにより、前記車両側コネクタから前記車載バッテリに給電される前記充電用電力を制御するバッテリ制御手段と、を備え、
前記充電器は、
中間部に平滑コンデンサが設けられ、外部電源から給電された交流電力を直流電力に変換して前記充電用電力を出力する交直変換手段と、
前記平滑コンデンサに蓄積された電力を変換して、第一の制御用電力として出力する直流電圧変換手段と、
第二の制御用電力を出力する充電器用補助電源と、
前記電動車両に前記充電用電力を供電するための充電器側コネクタと、
前記電動車両と通信を行う充電器用通信手段と、
前記充電器用補助電源からの前記第二の制御用電力により、前記充電器用通信手段を介して前記電動車両と通信して、前記電動車両と前記所定の充電制御手順を実施し、前記充電器側コネクタから前記車載バッテリに供電する前記充電用電力を制御する充電制御手段と、
前記外部電源の停電を検出する停電検出手段と、
前記停電検出手段により前記外部電源の停電が検出された場合に、前記充電器の制御・通信系に供電する電力を、前記第二の制御用電力から前記第一の制御用電力に切り替える電源切替手段と、を備え、
前記充電制御手段は、
前記停電検出手段により前記外部電源の停電が検出された場合に、前記第一の制御用電力により、前記充電器用通信手段を介して前記電動車両と通信して、前記電動車両と所定の充電終了手順を実施し、前記車載バッテリの充電を終了させる。
【0012】
ここで、前記充電器は、開閉スイッチを介して前記平滑コンデンサに並列接続された放電抵抗をさらに備えてもよい。そして、前記充電制御手段は、前記停電検出手段により前記外部電源の停電が検出された場合、前記所定の充電終了手順の実施後に、前記開閉スイッチを閉成する。さらに、交直変換部のコンデンサと直流電圧変換手段で得られる12V電源を通常の制御用電源として用いてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車載バッテリの充電中に停電が発生した場合でも、充電器および電動車両間の充電制御を的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第一実施の形態に係る充電システムの概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の第一実施の形態に係る充電システムの充電動作を説明するためのフロー図である。
【図3】図3は、本発明の第二実施の形態に係る充電システムの概略構成図である。
【図4】図4は、本発明の第二実施の形態に係る充電システムの充電動作を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
[第一実施の形態]
図1は、本発明の一実施の形態に係る充電システムの概略構成図である。図示するように、本実施の形態に係る充電システムは、充電器100と、電気自動車200と、を有する。
【0017】
まず、電気自動車200について説明する。電気自動車200は、車両側コネクタ201と、車載バッテリ203と、補助バッテリ204と、通信部205と、バッテリ制御部206と、を有する。
【0018】
車両側コネクタ201は、一対の充電用ライン(例えば400V電源ライン)202A,202B、一対の制御電力用ライン(例えば12V電源ライン)202C,202D、および通信用ライン202Eの端子を各々備える。この車両側コネクタ201に後述の充電器側コネクタ101が装着されると、これらの端子が後述の充電器側コネクタ101の対応端子と当接する。これにより、一対の充電用ライン202A,202B、一対の制御電力用ライン202C,202D、および通信用ライン202Eが、それぞれ、充電器100の一対の充電用ライン102A,102B、一対の制御電力用ライン102C,102D、および通信用ライン102Eと電気的に接続される。
【0019】
車載バッテリ203は、モータ、インバータ等の駆動系に駆動用電力を供電するためのバッテリである。
【0020】
補助バッテリ204は、通信部205、バッテリ制御部206、および図示していないECU等の通信・制御系に制御用電力を供電するためのバッテリである。また、補助バッテリ204は、一対の制御電力用ライン202C,202Dに接続されており、この制御電力用ライン202C,202Dを介して充電器100に制御用電力を供電する。
【0021】
通信部205は、通信用ライン202Eを介して充電器100と通信を行う。
【0022】
バッテリ制御部206は、通信部205を介して充電器100と通信して、充電器100と所定の充電制御手順を実施することにより、車両側コネクタ201の充電用ライン202A,202Bの端子に給電される充電用電力を制御する。バッテリ制御部206は、例えばECUの機能の一部として実現される。
【0023】
つぎに、充電器100について説明する。充電器100は、充電器側コネクタ101と、充電ケーブル102と、交直変換部103と、ELB(漏電遮断器)104と、制御用電源105と、通信部106と、停電検出部107と、切替部108と、充電制御部109と、を有する。
【0024】
充電器側コネクタ101は、一対の充電用ライン102A,102B、一対の制御電力用ライン102C,102D、および通信用ライン102Eの端子を各々備える。この充電器側コネクタ101が車両側コネクタ201に装着されると、これらの端子が車両側コネクタ201の対応端子と当接する。これにより、前述したように、一対の充電用ライン102A,102B、一対の制御電力用ライン102C,102D、および通信用ライン102Eが、それぞれ、電気自動車200の一対の充電用ライン202A,202B、一対の制御電力用ライン202C,202D、および通信用ライン202Eと電気的に接続される。
【0025】
充電ケーブル102は、一対の充電用ライン102A,102B、一対の制御電力用ライン102C,102D、および通信用ライン102Eを収容する。なお、充電ケーブル102の先端には、充電器側コネクタ101が取り付けられる。
【0026】
交直変換部103は、ELB104を介して交流電源300から給電される交流電力を直流電力に変換して、充電用電力を出力する。
【0027】
ELB104は、交流電源300および交直変換部103間に配置され、充電制御部109の制御により、交流電源300から交直変換部103に給電される交流電力を遮断する。
【0028】
制御用電源105は、通信部106、充電制御部109等の通信・制御系に制御用電力を供電するための電源である。ELB104を介して交流電源300から給電される交流電力、あるいは図示していない商用電源から給電される交流電力を直流電力に変換して、制御用電力を出力する。
【0029】
通信部106は、通信用ライン102Eを介して電気自動車200と通信を行う。
【0030】
停電検出部107は、ELB104に入力される交流電源300の電圧および電流の少なくとも一方を監視して、交流電源300の停電を検出する。
【0031】
切替部108は、通信部106、充電制御部109等の通信・制御系に供電する制御用電力を、制御用電源105および制御電力用ライン102C,102Dのいずれか一方に切り替える。具体的には、切替部108は、通常(デフォルト状態)において、制御用電力源として制御用電源105を選択し、制御用電源105から出力された制御用電力を通信部106、充電制御部109等の通信・制御系に供電する。そして、停電検出部107により交流電源300の停電が検出された場合には、制御用電力源として制御電力用ライン102C,102Dを選択し、制御電力用ライン102C,102Dを介して電気自動車200から給電された制御用電力を通信部106、充電制御部109等の通信・制御系に供電する。
【0032】
充電制御部109は、充電器100の各部を統括制御する。また、充電制御部109は、通信部106を介して電気自動車200と通信して、電気自動車200と所定の充電制御手順を実施することにより、充電器側コネクタ101の充電用ライン102A,102Bの端子から供電する充電用電力を制御する。
【0033】
次に、本実施の形態に係る充電システムの充電動作を説明する。
【0034】
図2は、図1に示す充電システムの充電動作を説明するためのフロー図である。このフローは、車両側コネクタ201とこれに装着された充電器側コネクタ101とが、図示していないラッチ機構によりロックされ、かつ、電気自動車200のイグニッションが、ECUの制御によりオフにロックされた状態において、充電器100が、図示していない操作パネル等を介して操作者より充電開始の指示を受け付けることにより開始される。
【0035】
まず、停電検出部107によって交流電源300の監視が行われ、かつ、充電器100の通信・制御系が制御用電源105からの制御用電力により動作している状態において、充電器100の充電制御部109と電気自動車200のバッテリ制御部206とが、充電器100側の通信部106および通信用ライン102E、電気自動車200側の通信用ライン202Eおよび通信部205を介して互い通信して、所定の充電制御手順を開始する(S101、S201)。
【0036】
これにより、充電制御部109およびバッテリ制御部206は、車載バッテリ203の容量・特性にあわせた車載バッテリ203の急速充電を実施する。例えば、充電制御部109およびバッテリ制御部206は、互いに交直変換部103および車載バッテリ203の性能・仕様に関する情報を交換して、充電電圧・電流等の充電条件を決定する。そして、充電制御部109は、決定された充電条件に従い交直変換部103を制御して、充電用電力を車載バッテリ203に供電する。一方、バッテリ制御部206は、急速充電中の車載バッテリ203の状態(電圧、温度等)を監視し、その監視結果を充電条件にフィードバックさせる。
【0037】
その後、充電制御部109およびバッテリ制御部206は、車載バッテリ203の状態の監視結果等から所定の充電終了条件を満足したと判断したならば(S102、S202でYES)、互いに通信して、所定の充電終了手順を実施する(S105、S203)。これにより、充電制御部109は、交直変換部103による充電用電力の車載バッテリ203への給電を停止させる。
【0038】
その後、図示していないラッチ機構による充電器側コネクタ101と車両側コネクタ201との装着ロックが解除されるとともに、ECUの制御により電気自動車200のイグニッションオフのロックが解除される。これにより、車載バッテリ203の急速充電が終了する(S106、S204)。
【0039】
さて、充電制御部109およびバッテリ制御部206による充電制御手順の実行中に(S102、S202でNO)、充電器100において、停電検出部107が交流電源300の停電を検出したならば(S103でYES)、停電検出部107は、その旨を切替部108および充電制御部109に通知する。
【0040】
これを受けて、切替部108は、通信部106、充電制御部109等の通信・制御系への制御用電力源を、制御用電源105から制御電力用ライン102C,102Dに切り替える(S104)。これにより、以後、充電器10の充電制御部109等の通信・制御系には、電気自動車200の補助バッテリ204から、制御電力用ライン102C,102Dを介して制御用電力が供電される。その後、充電制御部109は、バッテリ制御部206との通信を継続して行い、上述の充電終了手順を実施する(S105、S203)。これにより、充電制御部109は、交直変換部103による、車載バッテリ203への充電用電力の給電を停止させる。
【0041】
その後、図示していないラッチ機構による充電器側コネクタ101と車両側コネクタ201との装着ロックが解除されるとともに、ECUの制御により電気自動車200のイグニッションのオフへのロックが解除される。これにより、車載バッテリ203の急速充電が終了する(S106、S204)。
【0042】
以上、本発明の第一実施の形態を説明した。
【0043】
本実施の形態において、電気自動車200は、補助バッテリ204から出力される制御用電力を、停電用の制御用電力として、車両側コネクタ201を介して充電器100に供電するとともに、充電器100と通信して充電器100と所定の充電制御手順を実施することにより、車両側コネクタ201を介して充電器100から車載バッテリ203に給電される充電用電力を制御する。一方、充電器100は、交流電源300から給電された交流電力を直流電力に変換して充電用電力を生成するとともに、電気自動車200と通信して電気自動車200と上述の充電制御手順を実施することにより、充電器側コネクタ101を介して電気自動車200に供電する充電用電力を制御する。
【0044】
ここで、充電器100は、交流電源300が停電した場合に、充電器100の制御・通信系への制御用電力源を、制御用電源105から電気自動車200の補助バッテリ204に切り替えるとともに、電気自動車200と通信して電気自動車200と所定の充電終了手順を実施することにより、車載バッテリ203の充電を終了させる。
【0045】
したがって、本実施の形態によれば、車載バッテリ203の充電中に停電が発生した場合でも、充電器100および電気自動車200間の充電制御を的確に行うことができる。また、停電時に電気自動車200側の制御用電源を利用することにより、充電器100側に別途バックアップ用のバッテリを搭載する必要がなくなるので、充電器100のコストを抑制することができる。また、電気自動車200の所有者は、停電が発生すれば電気自動車200の制御用電源を一時的に利用されるものの、これによる消費電力はわずかなものであり、電動車両200が始動できなくなる等の不具合への対処に要する時間を考慮すれば、電動車両200の所有者にとっても総合的なコストは低いものとなる。
【0046】
また、本実施の形態では、充電器100が、電気自動車200から給電される制御用電力の電源として補助バッテリ204を用いているので、上述の充電終了手順を実施するのに必要な制御用電力を充電器100の通信・制御系に確実に供給できる。
【0047】
[第二実施の形態]
図3は、本発明の第二実施の形態に係る充電システムの概略構成図である。図示するように、本実施の形態に係る充電システムは、充電器100Aと、電気自動車200Aと、を有する。なお、図3において、図1に示す第一実施の形態と同じ機能を有するものには同じ符号を付し、以下では、その説明を省略している。
【0048】
まず、電気自動車200Aについて説明する。電気自動車200Aは、第一実施の形態の電気自動車200と基本的に同様である。ただし、充電器100Aに制御用電力を供電するための一対の制御電力用ライン202C,202Dは不要である。
【0049】
つぎに、充電器100Aについて説明する。充電器100Aは、充電器側コネクタ101と、充電ケーブル102と、中間部(例えばコンバータとインバータとの間)に平滑コンデンサ103Aが設けられた交直変換部103と、ELB(漏電遮断器)104と、制御用電源105と、通信部106と、停電検出部107と、切替部108Aと、充電制御部109Aと、直流電圧変換部110と、放電回路111と、を有する。なお、本実施の形態においては、充電器100Aから制御用電力を給電するための一対の制御電力用ライン102C,102Dは不要である。
【0050】
直流電圧変換部110は、交直変換部103の放電コンデンサから出力される電力を、異なる直流電力に変換して、通信部106、充電制御部109A等の通信・制御系に供電するための制御用電力として出力する。
【0051】
放電回路111は、交直変換部103の中間部において、一対の充電用ライン102A,102B間に挿入される。図示するように、放電回路111は、放電抵抗111Aおよびリレー111Bが直列接続されて構成されており、充電制御部109Aによってリレー111Bが閉成されることで、交直変換部103の中間部に設けられた平滑コンデンサ103Aに蓄電されている電力を放電する。
【0052】
切替部108Aは、通信部106、充電制御部109A等の通信・制御系に供電する制御用電力を、制御用電源105および直流電圧変換部110のいずれか一方に切り替える。具体的には、切替部108Aは、通常(デフォルト状態)において、制御用電力源として制御用電源105を選択し、制御用電源105から出力された制御用電力を通信部106、充電制御部109A等の通信・制御系に供電する。そして、停電検出部107により交流電源300の停電が検出された場合には、制御用電力源として直流電圧変換部110を選択し、直流電圧変換部110から出力された制御用電力を通信部106、充電制御部109等の通信・制御系に供電する。
【0053】
充電制御部109Aは、充電器100の各部を統括制御する。また、この充電制御部109Aは、通信部106を介して電気自動車200と通信して、電気自動車200と所定の充電制御手順を実施することにより、充電器側コネクタ101の充電用ライン102A,102Bの端子から供電する充電用電力を制御する。
【0054】
次に、本実施の形態に係る充電システムの充電動作を説明する。
【0055】
図4は、図3に示す充電システムの充電動作を説明するためのフロー図である。このフローも、図2に示す第一実施の形態と同様、充電器側コネクタ101が車両側コネクタ201に装着され、図示していないラッチ機構によりこの装着がロックされるとともに、ECUの制御により電気自動車200のイグニッションがオフにロックされた状態において、充電器100Aが、図示していない操作パネル等を介して操作者より充電開始の指示を受け付けることにより開始される。なお、図4において、図2に示す第一実施の形態と同じ処理ステップには同じ符号を付している。
【0056】
図4に示す本実施の形態のフローが、図2に示す第一実施の形態のフローと異なる点は、充電器100Aが、S104に代えてS104Aを実施すること、およびS106の後にS107を実施することである。
【0057】
交流電源300の停電発生により、S104Aにおいて、切替部108Aは、通信部106、充電制御部109A等の通信・制御系への制御用電力源を、制御用電源105から直流電圧変換部110に切り替える。ここで、交流電源300の停電により、交直変換部103への交流電力の入力は停止する。しかし、車載バッテリ203の急速充電のために、交直変換部103には比較的大きな出力(例えば50kW(400V、125A)程度)が要求されるため、交直変換部103の中間部に設けられた平滑コンデンサ103Aにも、通信部106、充電制御部109A等の通信・制御系に制御用電力を十数秒間供給できるだけの電荷が蓄電されている。通常、この平滑コンデンサ103Aに蓄電された電荷は、この平滑コンデンサ103Aに並列接続された放電抵抗111Aにより放電されるが、本実施の形態では、充電中、この放電抵抗111Aに直列接続されたリレー111Bを開放しておくことで、停電時に、この平滑コンデンサ103Aに蓄電された電荷が直ちに放電しないようにしている。したがって、充電制御部109Aは、直流電圧変換部110から出力される制御用電力を動力源として、通信部106により電気自動車200のバッテリ制御部206と通信し、所定の充電終了手順を実施することができる(S105)。
【0058】
そして、車載バッテリ203の急速充電が終了すると、S107において、充電制御部109Aは、放電抵抗111Aに直列接続されたリレー111Bを閉成し、平滑コンデンサ103Aに蓄電された電荷を放電抵抗111Aにより放電させる。これにより、充電終了後は、交直変換部103の出力電圧を降下させる。
【0059】
以上、本発明の第二実施の形態を説明した。
【0060】
本実施の形態においても、上記の第一実施の形態と同様に、車載バッテリ203の充電中に停電が発生した場合でも、充電器100Aおよび電気自動車200A間の充電制御を的確に行うことができる。また、交直変換部103の中間部に設けられた平滑コンデンサ103Aに蓄電されている電荷を利用することにより、バックアップ用のバッテリを充電器100側に別途搭載する必要がなくなるので、充電器100のコストを低くできる。
【0061】
また、本実施の形態において、充電器100Aは、一対の充電用ライン102A,102B間に挿入された放電回路111をさらに備えており、充電終了手順の実施後に、放電回路111のリレー111Bを閉成して、平滑コンデンサ103Aに蓄電された電荷をこの放電回路111の放電抵抗111Aにより放電させている。したがって、本実施の形態によれば、充電終了後には、交直変換部103の出力電圧を十分に降下させることができる。
【0062】
なお、本実施の形態において、通信部106、充電制御部109A等の通信・制御系に供電する制御用電力の切替タイミングを次のように変更してもかまわない。すなわち、切替部108Aは、充電開始前のELB104が遮断されている初期状態では制御用電源105を制御用電力源として選択し、充電制御部109AによりELB104が接続されて充電が開始されたならば、直流電圧変換部110を制御用電力源として選択する。この場合、停電検出部107は不要である。
【0063】
また、上記の各実施の形態において、電気自動車200,200Aにおいて、バッテリ制御部206あるいはバッテリ制御部206の機能を実現するECUが、操作者から受け付けた初期化操作に応じて、自身を初期化(リセット)するようにしてもよい。ここで、初期化操作の受付には、専用のリセットスイッチを用いてもよいし、あるいは、既存のスイッチ類を代用してもよい。例えば、イグニッションキーが所定回数連続してオンオフされた場合など、所定のスイッチに対して所定の操作がなされた場合に、操作者から初期化操作を受け付けたものと判断するようにしてもよい。
【0064】
このように、バッテリ制御部206あるいはECUを初期化する手段を電気自動車200,200Aに設けることにより、例えば通信用ライン102E,202Eの物理的な障害などにより、充電制御部109,109Aおよびバッテリ制御部206間で通信を行うことができず、このため所定の充電終了手順の実施できなかった場合でも、電気自動車200が、充電器100,100Aからの応答待ち状態のままとなることを防止できる。したがって、電気自動車200になんら異常がないにもかかわらず、電気自動車200が始動できなくなるような事態の発生を防止できる。
【0065】
また、上記の各実施の形態において、停電検出部107および切替部108Aを設けて、交流電源300の停電時に制御用電力源を制御用電源105から他の電源に切り替える代わりに、制御用電源105に補助バッテリまたは大容量コンデンサを搭載するなどして、交流電源300の停電時に、通信部106、充電制御部109A等の通信・制御系に制御用電力を十数秒間供給できるように構成してもよい。
【0066】
また、本発明は、電気自動車のみならず、搭載されたバッテリの外部電源からの充電機能を有する電動車両に広く適用できる。
【符号の説明】
【0067】
100,100A:充電器、101:充電器側コネクタ、102:充電ケーブル102A,102B:充電用ライン、102C,102D:制御電力用ライン、102E:通信用ライン、103:交直変換部、103A:平滑コンデンサ、104:ELB、105:制御用電源、106:通信部、107:停電検出部、108,108A:切替部、109,109A:充電制御部、110:直流電圧変換部、111:放電回路、111A:放電抵抗、111B:リレー、200,200A:電気自動車、201:車両側コネクタ、202A,202B:充電用ライン、202C,202D:制御電力用ライン、202E:通信用ライン、203:車載バッテリ、204:補助バッテリ、205:通信部、206:バッテリ制御部、300:交流電源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両と、前記電動車両の車載バッテリを充電する充電器と、を有する充電システムであって、
前記電動車両は、
第一の制御用電力を出力する車両用補助電源と、
前記充電器から充電用電力を給電するとともに、前記充電器に前記第一の制御用電力を供電するための車両側コネクタと、
前記充電器と通信を行う車両用通信手段と、
前記車両用通信手段を介して前記充電器と通信して、前記充電器と所定の充電制御手順を実施することにより、前記車両側コネクタから前記車載バッテリに給電される前記充電用電力を制御するバッテリ制御手段と、を備え、
前記充電器は、
外部電源から給電された交流電力を直流電力に変換して、前記充電用電力を出力する交直変換手段と、
第二の制御用電力を出力する充電器用補助電源と、
前記電動車両に前記充電用電力を供電するとともに、前記電動車両から前記第一の制御用電力を給電するための充電器側コネクタと、
前記電動車両と通信を行う充電器用通信手段と、
前記充電器用補助電源からの前記第二の制御用電力により、前記充電器用通信手段を介して前記電動車両と通信して、前記電動車両と前記所定の充電制御手順を実施し、前記充電器側コネクタから前記車載バッテリに供電する前記充電用電力を制御する充電制御手段と、
前記外部電源の停電を検出する停電検出手段と、
前記停電検出手段により前記外部電源の停電が検出された場合に、前記充電制御手段に供電する電力を、前記第二の制御用電力から前記第一の制御用電力に切り替える電源切替手段と、を備え、
前記充電制御手段は、
前記停電検出手段により前記外部電源の停電が検出された場合に、前記電動車両からの前記第一の制御用電力により、前記充電器用通信手段を介して前記電動車両と通信して、前記電動車両と所定の充電終了手順を実施し、前記車載バッテリの充電を終了させる
ことを特徴とする充電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の充電システムであって、
前記車両用補助電源は、前記車載バッテリとは別途設けられた補助バッテリである
ことを特徴とする充電システム。
【請求項3】
電動車両と、前記電動車両の車載バッテリを充電する充電器と、を有する充電システムであって、
前記電動車両は、
前記充電器から充電用電力を給電するための車両側コネクタと、
前記充電器と通信を行う車両用通信手段と、
前記車両用通信手段を介して前記充電器と通信して、前記充電器と所定の充電制御手順を実施することにより、前記車両側コネクタから前記車載バッテリに給電される前記充電用電力を制御するバッテリ制御手段と、を備え、
前記充電器は、
中間部に平滑コンデンサが設けられ、外部電源から給電された交流電力を直流電力に変換して前記充電用電力を出力する交直変換手段と、
前記平滑コンデンサに蓄積された電力を変換して、第一の制御用電力として出力する直流電圧変換手段と、
第二の制御用電力を出力する充電器用補助電源と、
前記電動車両に前記充電用電力を供電するための充電器側コネクタと、
前記電動車両と通信を行う充電器用通信手段と、
前記充電器用補助電源からの前記第二の制御用電力により、前記充電器用通信手段を介して前記電動車両と通信して、前記電動車両と前記所定の充電制御手順を実施し、前記充電器側コネクタから前記車載バッテリに供電する前記充電用電力を制御する充電制御手段と、
前記外部電源の停電を検出する停電検出手段と、
前記停電検出手段により前記外部電源の停電が検出された場合に、前記充電制御手段に供電する電力を、前記第二の制御用電力から前記第一の制御用電力に切り替える電源切替手段と、を備え、
前記充電制御手段は、
前記停電検出手段により前記外部電源の停電が検出された場合に、前記第一の制御用電力により前記充電器用通信手段を介して前記電動車両と通信して、前記電動車両と所定の充電終了手順を実施し、前記車載バッテリの充電を終了させる
ことを特徴とする充電システム。
【請求項4】
請求項3に記載の充電システムであって、
前記充電器は、
開閉スイッチを介して前記平滑コンデンサに並列接続された放電抵抗をさらに備え、
前記充電制御手段は、
前記停電検出手段により前記外部電源の停電が検出された場合、前記所定の充電終了手順の実施後に、前記開閉スイッチを閉成する
ことを特徴とする充電システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の充電器。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の電動車両であって、
前記電動車両の制御系を初期化するための操作を受け付ける初期化受付手段を、さらに備える
ことを特徴とする電動車両。
【請求項7】
電動車両と、前記電動車両の車載バッテリを充電する充電器と、を有する充電システムにおける停電発生時の充電終了方法であって、
前記電動車両は、
車両用補助電源から出力される制御用電力を、車両側コネクタを介して前記充電器に供電するとともに、前記充電器と通信して前記充電器と所定の充電制御手順を実施することにより、前記車両側コネクタを介して前記充電器から給電される充電用電力を制御し、
前記充電器は、
外部電源から給電された交流電力を直流電力に変換して前記充電用電力を生成するとともに、前記電動車両と通信して前記電動車両と前記所定の充電制御手順を実施することにより、充電器側コネクタを介して前記電動車両に供電する前記充電用電力を制御し、
かつ、前記外部電源が停電した場合に、前記充電器の制御・通信系に供電する電力を、充電器用補助電源から、前記充電器側コネクタを介して前記電動車両から給電される前記制御用電力に切り替えるとともに、前記電動車両と通信して前記電動車両と所定の充電終了手順を実施することにより、前記車載バッテリの充電を終了させる
ことを特徴とする停電発生時の充電終了方法。
【請求項8】
電動車両と、前記電動車両の車載バッテリを充電する充電器と、を有する充電システムにおける停電発生時の充電終了方法であって、
前記電動車両は、
前記充電器と通信して前記充電器と所定の充電制御手順を実施することにより、車両側コネクタを介して前記充電器から給電される充電用電力を制御し、
前記充電器は、
外部電源から給電された交流電力を交直変換手段により直流電力に変換して前記充電用電力を生成するとともに、前記電動車両と通信して前記電動車両と前記所定の充電制御手順を実施することにより、充電器側コネクタを介して前記電動車両に供電する前記充電用電力を制御し、
かつ、前記外部電源が停電した場合に、前記充電器の制御・通信系に供電する電力を、充電器用補助電源から、前記交直変換手段の中間部に設けられた平滑コンデンサに蓄電されている直流電力を直流電圧変換手段により変換することで得られた制御用電力に切り替えるとともに、前記電動車両と通信して前記電動車両と所定の充電終了手順を実施することにより、前記車載バッテリの充電を終了させる
ことを特徴とする停電発生時の充電終了方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−239850(P2010−239850A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88496(P2009−88496)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】