説明

充電器

【課題】二次電池の種類や充電開始前の二次電池の残存容量によらず、より正確に二次電池の劣化を判別することが可能な充電器を提供する。
【解決手段】二次電池21へ充電電流を出力する出力回路部3と、二次電池21の電圧を検出する電圧検出部2と、定電流で充電電流を流す定電流充電と定電流充電後に定電圧で充電電流を流す定電圧充電とを行うように出力回路部3を制御する制御部1とを有する充電器10であり、制御部1は、定電流充電中に、電圧検出部2が検出する第1電圧と、第1電圧を検出後に電圧検出部2が検出する第2電圧と、第1電圧の検出時から第2電圧の検出時までの時間とに基づいて該時間における第1電圧と第2電圧との電圧変化の勾配を演算し、勾配が所定値以下の場合に二次電池21が劣化していると判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を充電する充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の携帯用機器などの電源として、二次電池が利用されている。二次電池は、充放電の繰り返しのサイクル数が増加するにつれて放電容量が低下するため、繰り返して使用できる充電回数に限界がある。そのため、二次電池を充電する充電器には、二次電池への充電時に二次電池の寿命の判別を行うものがある。
【0003】
この種の充電器として、二次電池を備えた電池パックの電池電圧を検出する電池電圧検出回路と、検出された電池電圧と所定時間前の電池電圧とから電池電圧勾配を演算する電池電圧勾配演算手段とを有する充電装置が知られている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1の充電装置は、充電開始前の電池パックの電圧が所定電圧値以下であって、充電開始後所定時間内の電池電圧勾配が第1の所定値以上である場合は、二次電池は寿命であると判別する。また、充電装置は、LEDを備えており、電池パックの寿命劣化具合を表示する。
【0005】
これにより、充電装置は、二次電池の寿命を判別でき、二次電池の劣化状態をユーザに簡易に認知させることができる、としている。
【0006】
また、二次電池である電池セルの劣化を測定する電池劣化測定装置として、電池セルの電圧を測定する電圧測定部と、電池セルの充電電流を測定する電流測定部と、電池セルの劣化率を判断する制御部とを備えたものも知られている(たとえば、特許文献2参照。)。
【0007】
特許文献2の電池劣化測定装置は、電池セルへの定電流充電中に供給される充電電流が、第1の充電電流値の場合に、電圧測定部で測定した電圧値から第1のセル電圧を得る。また、電池劣化測定装置は、充電電流が第1の充電電流値よりも低い第2の充電電流値に変化した場合に、電圧測定部で測定した電圧値から第2のセル電圧を得る。そして、電池劣化測定装置は、制御部が、第1のセル電圧と第2のセル電圧とに基づいて電池セルの内部抵抗を算出し、電池セルの劣化率を判断する。
【0008】
これにより、特許文献2の電池劣化測定装置は、二次電池の劣化を正確に判別して二次電池を充電することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−24541号公報
【特許文献2】特開2008−123961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、二次電池には、充電回数の少ない初期段階から内部抵抗が高いものや、逆に、内部抵抗の低いものなど二次電池の種類やばらつきなどによって様々のものがある。また、二次電池は、充電を行う二次電池の残存容量にも起因して充電開始前の二次電池の電圧が大きく異なる傾向にある。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載された充電装置では、充電開始前の電圧を寿命の判別に利用しているため、二次電池の種類などや二次電池の残存容量によって、誤判別を生ずる可能性が高くなる恐れがある。特許文献2の電池劣化測定装置では、二次電池の充電電流と電圧とを正確に測定する必要があり、測定誤差が生じ易くなる恐れがある。
【0012】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、二次電池の種類や充電開始前の二次電池の残存容量によらず、より正確に二次電池の劣化を判別することが可能な充電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の充電器は、二次電池へ充電電流を出力する出力回路部と、上記二次電池の電圧を検出する電圧検出部と、定電流で上記充電電流を流す定電流充電と該定電流充電後に定電圧で上記充電電流を流す定電圧充電とを行うように上記出力回路部を制御する制御部とを有する充電器であって、上記制御部は、上記定電流充電中に、上記電圧検出部が検出する上記第1電圧と、該第1電圧を検出後に上記電圧検出部が検出する第2電圧と、上記第1電圧の検出時から上記第2電圧の検出時までの時間とに基づいて該時間における上記第1電圧と上記第2電圧との電圧変化の勾配を演算し、上記勾配が所定値以下の場合に上記二次電池が劣化していると判別することを特徴とする。
【0014】
この充電器において、上記定電流充電は、上記充電電流の定電流値を段階的に減少させる複数の期間で行われ、少なくとも、上記二次電池への充電が開始される第1期間と、上記定電圧充電の充電開始直前における第2期間と、上記第1期間と上記第2期間との間であって上記出力回路部から上記第1期間に出力される第1定電流値および上記第2期間に出力される第2定電流値とは異なる第3定電流値を出力させる第3期間とを含み、上記制御部は、上記第3期間の上記勾配を演算することが好ましい。
【0015】
この充電器において、上記制御部は、上記第3期間を複数の領域に分け、該複数の領域それぞれの上記勾配を演算するとともに、複数の上記勾配を用いて上記判別をすることが好ましい。
【0016】
この充電器において、上記二次電池を有する電池パックに記憶素子が設けられており、上記制御部は、上記記憶素子に上記二次電池への充電回数と該充電回数における上記二次電池の上記勾配とを対応付けて記憶させるとともに、充電回数が所定回数以下の初期段階の上記勾配と上記初期段階よりも充電回数の多い段階の上記勾配とを比較して、上記電池パックごとの上記二次電池の上記初期段階の上記勾配のばらつきを排除することが好ましい。
【0017】
この充電器において、上記判別した結果を外部に報知する報知部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の充電器は、二次電池の種類や充電開始前の二次電池の残存容量によらず、より正確に二次電池の劣化を判別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1の充電器および充電器に接続される電池パックを示すブロック図である。
【図2】同上の充電器で充電する二次電池の充電電流特性を説明する説明図である。
【図3】同上の充電器で充電する二次電池の電池電圧特性を説明する説明図である。
【図4】同上の充電器で検知する二次電池の電気特性を説明する説明図である。
【図5】実施形態2の充電器で充電する二次電池の充電電流特性を説明する説明図である。
【図6】同上の充電器で充電する二次電池の電池電圧特性を説明する説明図である。
【図7】同上の充電器で検知する二次電池の電気特性を説明する説明図である。
【図8】実施形態3の充電器で充電する二次電池の充電電流特性を説明する説明図である。
【図9】同上の充電器で充電する二次電池の電池電圧特性を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
図1ないし図4に基づいて、本実施形態の充電器10および充電器10に接続される電池パック20について説明する。なお、各図において、同様の構成要素に対しては、同じ番号を付して重複する説明を省略している。
【0021】
本実施形態の充電器10は、図1で示すように、商用電源などの外部電源ACを用いて二次電池21を充電するものであり、二次電池21は、充電器10のケース(図示していない)に着脱自在に配置することが可能な電池パック20に内蔵されている。二次電池21は、二個の素電池E1,E2を電気的に直列接続させたものを用いている。
【0022】
本実施形態の充電器10は、二次電池21へ充電電流を出力する出力回路部3と、二次電池21の電圧を検出する電圧検出部2とを有している。また、充電器10は、定電流で充電電流を流す定電流充電と定電流充電後に定電圧で充電電流を流す定電圧充電とを行うように出力回路部3を制御する制御部1を有している。制御部1は、定電流充電中に、電圧検出部2が検出する第1電圧と、第1電圧を検出後に電圧検出部2が検出する第2電圧と、第1電圧の検出時から第2電圧の検出時までの時間とに基づいて該時間における第1電圧と第2電圧との電圧変化の勾配を演算する。制御部1は、演算した電圧変化の勾配が予め定めた所定値以下の場合に二次電池21が劣化していると判別する。本実施形態の充電器10は、判別した結果を外部に報知する報知部6を有している。
【0023】
より具体的には、本実施形態の充電器10は、図2に示すように、充電開始時となる時刻t11から定電流で充電電流を二次電池21へ流す。そして、充電器10は、後述する電池パック20の定電圧制御素子26からの信号に基づいて、制御部1が出力回路部3を制御することにより、定電流充電から定電圧充電への切替を時刻t16で行う(図3を参照)。すなわち、充電器10は、時刻t11から所定の時刻t16の間、定電流充電を行う。また、充電器10は、定電流充電後となる時刻t16の経過後から時刻t17までの間、定電圧で充電電流を二次電池21へ流す定電圧充電を行う。そして、充電器10は、定電圧充電中に、二次電池21の充電が進めば充電電流が徐々に減少する。充電器10は、電池パック20に設けられた定電圧制御素子26からの信号により、制御部1が二次電池21が満充電になったとして時刻t17で、二次電池21への充電を停止させる。言い換えると、本実施形態の充電器10は、定電流充電と、定電流充電後に定電流充電から切り替えた定電圧充電とで二次電池21への充電を行っている。これにより、充電器10は、定電流充電だけで充電を行う場合に生じ易い二次電池21の過充電を抑制しつつ、定電圧充電だけで充電を行うものと比較して、二次電池21の充電に要する時間を短くすることが可能となる。
【0024】
ところで、リチウムイオン二次電池(以下、リチウム二次電池ともいう)などを代表とする二次電池21では、二次電池21の充電回数を重ねると内部抵抗の増加などにより、二次電池21の充電や放電の電気特性が劣化する傾向にある。そのため、二次電池21は、充電回数の少ない初期段階の二次電池21の電気特性と、充電回数が多い段階の劣化した二次電池21の電気特性とが異なる。二次電池21は、たとえば、図4に示すように、定電流充電中における二次電池21の電気特性が、初期段階の二次電池21の電気特性(図4中の一点鎖線を参照)から劣化した二次電池21の電気特性(図4中の実線を参照)へと変化する。初期段階の二次電池21は、定電流充電中に、時刻t13で二次電池21の充電電圧が電圧Va、時刻t15において電圧Vbとなる電気特性を示す。すなわち、初期段階の二次電池21は、電圧Vaの検出時である時刻t13から電圧Vbの検出時である時刻t15までの時間における電圧Vaと電圧Vbとの電圧変化の勾配の特性を示す。これに対し、劣化した二次電池21では、定電流充電中に、時刻t12において電圧Va、時刻t14において電圧Vbとなる。劣化した二次電池21は、電圧Vaの検出時である時刻t12から電圧Vbの検出時である時刻t14までの時間における電圧Vaと電圧Vbとの電圧変化の勾配の特性を示す。そのため、劣化した二次電池21の勾配は、初期段階の二次電池21の勾配と比較して、勾配の角度が時間に対して緩やかになる傾向を示す(図4を参照)。
【0025】
本実施形態の充電器10は、予め所定の第1電圧として電圧Vaを設定しており、電圧検出部2が電圧Vaを検出する検出時の時刻t12を計時している。同様に、本実施形態の充電器10は、予め所定の第2電圧として電圧Vbを設定しており、電圧検出部2が電圧Vbを検出する検出時の時刻t14を計時している。そして、制御部1は、電圧Vaの検出時から電圧Vbの検出時までの時間(t14−t12)における電圧Vaと電圧Vbとの電圧変化の勾配を演算している。なお、本実施形態の充電器10は、予め設定した電圧に基づいて制御部1が電圧変化の勾配を演算しているものだけに限られない。したがって、本実施形態の充電器10は、予め設定した時刻ごとの二次電池21の充電電圧を測定し、予め設定した時刻間の電圧変化の勾配を演算するものでもよい。
【0026】
本実施形態の充電器10は、定電流充電中における電圧変化の勾配が予め設定した所定値以下の場合に、制御部1が二次電池21が劣化していると判別する。充電器10は、電圧変化の勾配を演算するための所定の第1電圧や所定の第2電圧を、二次電池21の劣化を判別する所望の基準に応じて適宜に設定しておけばよい。充電器10は、定電流充電中の電圧変化の勾配により、二次電池21の劣化を判別しているため、二次電池21の種類や充電開始前の二次電池21の残存容量によらず、二次電池21の劣化を判別することができる。言い換えれば、本実施形態の充電器10は、二次電池21の定電流充電を利用して、二次電池21の劣化を判別する電池劣化判別装置として機能する。なお、充電器10は、時刻t11から時刻t16の定電流充電中に、電圧変化の複数の勾配を演算してもよい。充電器10は、複数の勾配それぞれの平均値などを用いることで二次電池21における劣化の判別の精度を高めることもできる。
【0027】
以下、本実施形態の充電器10の構成について、より詳細に説明する。
【0028】
充電器10は、電池パック20が充電器10のケースに装着されることで、充電器10側と、電池パック20側とを電気的に接続させ、外部電源ACからの電力を変換して給電し二次電池21の充電が可能となるように構成している。充電器10は、外部電源ACと電気的に接続可能な整流回路部4を備えている。整流回路部4は、図示していないが、たとえば、ダイオードブリッジ回路を備え、外部電源ACとヒューズを介してダイオードブリッジ回路に接続させている。また、整流回路部4は、ダイオードブリッジ回路の出力端間に平滑コンデンサを接続させ、ダイオードブリッジ回路で整流された直流電圧を平滑コンデンサにて平滑化する構成とすることができる。充電器10は、整流回路部4の出力端に、二次電池21への充電電流を出力する出力回路部3を電気的に接続させている。また、充電器10は、出力回路部3の出力端を二次電池充電用の第1絶縁トランス7の一次側と接続させている。充電器10は、第1絶縁トランス7の二次側を、一対の端子13,13と各別に接続させている。充電器10は、充電器10の端子13,13と、電池パック20に内蔵された二次電池21と電気的に接続された端子23,23とを電気的に接続できるように構成している。
【0029】
なお、充電器10は、充電器10の端子13と電池パック20の端子23とを直接に電気的機械的に接続させているがこれに限られるものだけではない。充電器10は、充電器10側と電池パック20側とを絶縁トランス(図示していない)などを用いて、機械的に無接触で電気的に接続を行う構成としてもよい。すなわち、充電器10は、非接触充電が可能な構成としてもよい。
【0030】
充電器10は、外部電源ACから供給された交流電流を整流回路部4で整流した後、出力回路部3および第1絶縁トランス7を介して、所定の電圧に変圧し端子13から電池パック20側へ出力させる。これにより、充電器10は、直流定圧電源として電池パック20の二次電池21に充電電流を供給することができる。
【0031】
出力回路部3は、第1絶縁トランス7への電力供給のオン・オフや第1絶縁トランス7へ流れる電流量を調節する出力調整部として機能する。出力回路部3は、フォトカプラ9を介して制御部1と接続している。制御部1は、第1絶縁トランス7の二次側に設けられた電圧検出部2と電気的に接続されている。
【0032】
制御部1は、たとえば、マイクロコンピュータなどの所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)を備えたものにより構成することができる。制御部1は、二次電池21の電圧変化の勾配を演算できるように、時刻を計時する計時部を備えている。また、制御部1は、二次電池21の劣化の判定に用いるための所定の第1電圧や所定の第2電圧を記憶させるメモリ部を備えている。メモリ部は、電圧検出部2が検出した計時部で計時している時刻を記憶可能としている。さらに、制御部1は、所定の制御プログラムが記録された不揮発性の半導体素子であるROM(Read Only Memory)を記憶装置として備えている。制御部1は、電圧検出部2により検出した電圧の信号をデジタル値に変換するADコンバータを備えている。制御部1は、ROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、フォトカプラ9を介して出力回路部3へ制御信号を出力し二次電池21への充電動作を制御することができる。
【0033】
電圧検出部2は、たとえば、二次電池21が電気的に接続された端子13,13間の電圧を検出する回路であり、抵抗器を用いて構成することができる。電圧検出部2は、抵抗器の電圧降下により生じる電圧を二次電池21の電圧として制御部1へ出力する。
【0034】
出力回路部3は、たとえば、MOSトランジスタよりなるスイッチング素子を備えており、スイッチング素子は、制御部1からの制御信号となるPWM信号によって、オン・オフ制御される。すなわち、スイッチング素子は、PWM信号に基づいて、スイッチング素子のスイッチング周波数およびオン時間が制御される。充電器10は、制御部1が電圧検出部2の検出結果などに基づく制御信号を出力し、制御信号となるPWM信号に対応して出力回路部3のスイッチング素子が駆動されて電池パック20に所望の充電電流が出力される。
【0035】
また、上述の整流回路部4には、整流回路部4の出力端に制御部用電源部5が電気的に接続されている。制御部用電源部5は、外部電源ACからの交流電流が整流回路部4で整流されて入力される。制御部用電源部5は、制御部1などを駆動させるための電源として機能するように、制御部1へ給電する電流や電圧を調整する。制御部用電源部5は、出力端が制御部用の第2絶縁トランス8の一次側と電気的に接続されている。第2絶縁トランス8の二次側には、充電器10を冷却する冷却ファン(図示していない)や冷却ファンの駆動を制御する回路ブロックなどとなる周辺回路部11が接続されている。周辺回路部11は、冷却ファンの駆動を制御する回路ブロックなどが制御可能なように、制御部1と電気的に接続させている。また、第2絶縁トランス8の二次側には、第2絶縁トランス8の出力端に電圧変換回路部12が接続されている。電圧変換回路部12は、制御部1と電気的に接続され制御部1に電力を安定出力するために設けられている。電圧変換回路部12は、たとえば、定電圧を構成するシリーズレギュレータであって、三端子レギュレータなどを用いて構成することができる。
【0036】
すなわち、制御部1には、整流回路部4の出力端と電気的に接続させた制御部用電源部5から第2絶縁トランス8および電圧変換回路部12を介して電力が供給される。また、第2絶縁トランス8の二次側には、制御部1と接続され制御部1により判別した結果を外部に報知する報知部6を有している。
【0037】
なお、報知部6は、たとえば、発光ダイオードや有機EL素子などの表示器、スピーカやブザーなどを備えて構成することができる。なお、報知部6は、報知部6の内部に発光ダイオードを備える場合、発光ダイオードへ流れる電流を制限する制限抵抗を好適に内蔵している。報知部6は、制御部1により報知部6の報知動作が制御される。報知部6は、制御部1からの信号により、二次電池21が劣化していると判別した結果を外部に報知することができる。
【0038】
以下、本実施形態の充電器10と接続させる電池パック20について、より詳細に説明する。
【0039】
本実施形態の充電器10で充電させる電池パック20には、図1に示すように、二個の素電子E1,E2を電気的に直列接続させたものを二次電池21として収納している。なお、二次電池21は、二個の素電池E1,E2を電気的に直列接続させたものに限られない。二次電池21は、二個の素電池E1,E2を電気的に並列接続させたものでもよいし、一個の素電池で構成したものでもよい。また、二次電池21は、三個以上の素電池を直列、並列や直並列に適宜に電気的に接続させたものとしてもよい。本実施形態の充電器10により充電される二次電池21は、たとえば、ニッケル水素二次電池やリチウム二次電池などを用いることができる。
【0040】
充電器10で充電される二次電池21の使用用途は、特に限定するものではないが、たとえば、電動工具(図示していない)の電源として電動工具に装着されるものが挙げられる。電動工具の電源として二次電池21を装着させる場合、電動工具の形状に合わせたケース(図示していない)内に二次電池21を収納した電池パック20を用いればよい。
【0041】
電池パック20には、外部から書き換え可能な記憶素子27が設けられている。記憶素子27は、二次電池21の充電回数と、充電回数に対応する電圧変化の勾配とを記憶することができる。記憶素子27は、制御部1により、二次電池21への充電回数と該充電回数における二次電池21の電圧変化の勾配とを対応付けて記憶させられる。これにより、制御部1は、充電回数が所定回数以下の初期段階の電圧変化の勾配と初期段階よりも充電回数の多い段階の電圧変化の勾配とを比較して、電池パック20ごとの二次電池21の初期段階の電圧変化の勾配のばらつきを排除することができる。充電器10は、電池パック20ごとの二次電池21の初期段階の電圧変化の勾配のばらつきが小さくなるように、たとえば、所定の基準値と初期段階の電圧変化の勾配との差分を小さくする補正係数を、演算した電圧変化の勾配に掛けることができる。また、充電器10は、電池パック20ごとの二次電池21の初期段階の電圧変化の勾配のばらつきが小さくなるように、たとえば、所定の基準値よりも大きい、基準値と初期段階の電圧変化の勾配との差分を、演算した電圧変化の勾配から減算などしてもよい。同様に、充電器10は、電池パック20ごとの二次電池21の初期段階の電圧変化の勾配のばらつきが小さくなるように、たとえば、所定の基準値よりも小さい、基準値と初期段階の電圧変化の勾配との差分を、演算した電圧変化の勾配から加算などしてもよい。また、充電器10は、電池パック20ごとの二次電池21の初期段階の電圧変化の勾配のばらつきが小さくなるように、二次電池21の劣化を判別する所定値の値を適宜に補正してもよい。これにより、本実施形態の充電器10は、より正確な二次電池21の劣化を判別することが可能となる。なお、記憶素子27は、たとえば、EEPROM(Electrically Erasable andProgrammable Read Only Memory)等の不揮発性の半導体素子などで構成すればよい。
【0042】
また、電池パック20には、二次電池21の定電圧充電時に二次電池21の電圧を一定に維持するための定電圧制御素子26を備えている。定電圧制御素子26は、たとえば、制御ICなどにより構成することができる。本実施形態の充電器10は、二次電池21の充電時に、定電圧制御素子26と電気的に接続された電池パック20側の端子24と、制御部1と電気的に接続された充電器10側の端子14とが接続されている。定電圧制御素子26は、二次電池21に過充電が生じないように、電池パック20側で充電終止電圧に到達したか否かも判別する。定電圧制御素子26は、二次電池21の電池電圧が充電終止電圧に達した場合、充電器10側から二次電池21への充電を停止させるように、電池パック20の端子24から制御部1へ信号を出力する。
【0043】
次に、本実施形態の充電器10の動作について説明する。
【0044】
本実施形態の充電器10は、充電器10の端子13に、二次電池21と接続された電池パック20における端子23が電気的に接続されると充電を開始する。充電器10は、最初に、制御部1が出力回路部3を制御し定電流で充電電流を二次電池21へ流す定電流充電を行う。充電器10は、定電流充電中に、電圧検出部2により二次電池21に印加される電圧を測定する。制御部1は、電圧検出部2が検出する電圧が、制御部1のメモリ部に予め記憶させている所定の第1電圧Vaと一致するかを判定する。制御部1は、電圧検出部2が検出した電圧が所定の第1電圧Vaと一致したと判定した場合、制御部1に内蔵する計時部により定電流充電を開始した時刻t11からの経過時間である時刻t12を制御部1のメモリ部に記憶させる(図4を参照)。次に、充電器10は、定電流充電中に、検出する電圧が、制御部1のメモリ部に予め記憶させている所定の第2電圧Vbと一致するかを判定する。制御部1は、検出している電圧が所定の第2電圧Vbと一致したと判定した場合、制御部1の計時部により定電流充電を開始した時刻t11からの経過時間である時刻t14を制御部1のメモリ部に記憶させる。
【0045】
次に、制御部1は、制御プログラムにもとづいて、二次電池21の電圧変化(Vb−Va)と、二次電池21の電圧が電圧Vaから電圧Vbとなるまでの時間(t14−t12)とから電圧変化の勾配((Vb−Va)/(t14−t12))を演算し制御部1のメモリ部に記憶させる。なお、充電器10は、制御部1から端子15,25を介して電池パック20の記憶素子27に電圧変化の勾配の値を送信する。制御部1は、充電回数および充電回数に対応する電圧変化の勾配の値などを、適宜に、記憶素子27に記憶させる。制御部1は、充電を行う度に、たとえば、記憶素子27に記憶された前回の充電回数の値に1回増やした充電回数の値を記憶素子27に記憶させればよい。
【0046】
つづいて、充電器10の制御部1は、制御部1のメモリ部に予め記憶させた所定値と、制御部1により演算された電圧変化の勾配とを比較する。本実施形態の充電器10は、演算した電圧変化の勾配が、予め記憶させた所定値以下の場合、二次電池21が劣化しているとして判別する。制御部1は、二次電池21が劣化していると判別した場合、判別した結果を外部に報知するように報知部6を制御する。
【0047】
充電器10は、二次電池21が劣化していると判別した場合、制御部1が二次電池21への充電を中止するように制御してもよいし、二次電池21への充電を継続してもよい。充電器10は、二次電池21への充電を継続する場合、定電流充電後である時刻t16の経過後から時刻t17までの間、二次電池21に定電圧で充電電流を流す定電圧充電を行う。そして、充電器10は、二次電池21の充電が進めば、制御部1が出力回路部3を制御して充電電流を減少させる。充電器10は、電池パック20に設けられた定電圧制御素子26からの信号により、二次電池21が満充電になったとして二次電池21への充電を停止させる。
【0048】
これにより、本実施形態の充電器10は、二次電池21の種類や充電開始前の二次電池21の残存容量によらず、より正確に二次電池21の劣化を判別することが可能となる。なお、劣化していると判別された二次電池21は、電池の容量も小さくなる。そのため、本実施形態の充電器10は、報知部6が二次電池21の劣化を報知することにより、たとえば、所定時間の間、二次電池21が電動工具を稼動させる電池の容量を備えているか否かを使用者などに提供することが可能となる。すなわち、充電器10は、充電器10に報知部6を備えているので、二次電池21の劣化を使用者などへ報知することができ、使用者が充電された電池パック20を用いた電動工具での作業量を把握などすることが可能となる。
【0049】
(実施形態2)
本実施形態の充電器10は、図2および図3に示す実施形態1の定電流充電での電圧変化の勾配を用いる代わりに、図5および図6に示す定電流値を段階的に減少させた定電流充電における特定期間での電圧変化の勾配を用いて二次電池21の劣化を判別する点が相違する。なお、本実施形態の充電器10および充電器10に接続される電池パック20は、図1に示す実施形態1の充電器10および電池パック20と同様の回路構成としている。本実施形態の充電器10と、実施形態1の充電器10とは、電圧変化の勾配を演算などする制御部1の制御プログラムが異なっている。ここで、実施形態1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略している。
【0050】
本実施形態の充電器10において、二次電池21への定電流充電は、充電電流の定電流値を段階的に減少させる複数の期間で行われている。定電流充電は、二次電池21への充電が開始される第1期間と、定電圧充電の充電開始直前における第2期間とを有している。また、定電流充電は、第1期間と第2期間との間であって出力回路部3から第1期間に出力される第1定電流値および第2期間に出力される第2定電流値とは異なる第3定電流値を出力させる第3期間を有している。本実施形態の充電器10の制御部1は、定電流充電における特定期間である第3期間の電圧変化の勾配を演算する。
【0051】
本実施形態の充電器10は、定電流充電において、二次電池21への充電が進むに伴って、充電電流の定電流値を段階的に減少させることにより、過充電の防止などにより二次電池21が劣化することをより軽減させることが可能としている。また、本実施形態の充電器10は、より正確に二次電池21の劣化を判別することが可能となる。
【0052】
以下、本実施形態の充電器10の動作について、より詳述に説明する。
【0053】
本実施形態の充電器10は、制御部1が出力回路部3を制御して、図5に示すように、充電開始直後の期間となる時刻t21から時刻t23までの間を二次電池21への充電が開始される第1期間として、定電流で充電電流を流す定電流充電を行う。また、充電器10は、時刻t23を経過後、充電電流の電流値を減少させて、時刻t23の経過後から時刻t25の間の期間において定電流充電を行う。さらに、充電器10は、時刻t25を経過後、充電電流の電流値を更に減少させて、時刻t25の経過後から定電圧充電に切替える時刻t26までの間の期間において定電流充電を行う。充電器10は、図6に示すように、時刻t26の経過後から時刻t27までの間の期間で、二次電池21に定電圧で充電電流を流す定電圧充電を行う。ここで、時刻t25の経過後から時刻t26の間の定電流充電の期間は、定電圧充電の充電開始直前における第2期間となる。そのため、時刻t23の経過後から時刻t25の間の定電流充電の期間は、第1期間に出力される第1定電流値I21および第2期間に出力される第2定電流値I22とは異なる第3定電流値I23が出力される第3期間となる。
【0054】
すなわち、充電器10は、制御部1が出力回路部3を制御して、時刻t21から時刻t26の間、充電電流を段階的に減少させながら定電流充電を行った後、定電圧充電に切替えている。充電器10は、電池パック20に設けられた定電圧制御素子26からの信号により、制御部1が二次電池21が満充電になったとして時刻t27で、二次電池21への充電を停止させている。
【0055】
本実施形態の充電器10は、充電電流の定電流値を段階的に減少させる定電流充電において、第3期間での電圧変化の勾配を二次電池21の劣化の判別に用いている。充電器10は、定電流充電中、電圧検出部2により二次電池21の電圧を測定する。ここで、制御部1は、制御部1に内蔵する計時部により定電流充電を開始した時刻t21からの時間を計時している。また、制御部1は、電圧検出部2の検出する電圧が予め設定した二次電池21の電圧Vcと一致するまで第1定電流値I21での定電流充電を維持する。制御部1は、電圧検出部2の検出する電圧が電圧Vcと一致した場合、充電電流の定電流値を第1定電流値I21から第3定電流値I23に減少させて定電流充電を行う。ここで、二次電池21では、充電電流の定電流値を下げることに伴い二次電池21の電圧が電圧Vcから電圧Vc1に電圧低下が生ずる。充電器10は、二次電池21の電圧低下した電圧Vc1の電圧値を検出し、制御部1のメモリ部に記憶させる。また、制御部1は、制御部1に内蔵する計時部により充電電流の定電流値を第1定電流値I21から第3定電流値I23に下げた時刻t23を制御部1のメモリ部に記憶させる。
【0056】
次に、充電器10は、定電流充電中において、電圧検出部2の検出する電圧が、制御部1に予め設定している電圧Vdと一致するまで第3定電流値I23での定電流充電を維持する。制御部1は、電圧検出部2の検出する電圧が電圧Vdと一致した場合、充電電流の定電流値を第3定電流値I23から第2定電流値I22に減少させて定電流充電を行う。二次電池21では、定電流充電の電流値を下げることに伴い二次電池21の電池電圧が電圧Vdから電圧Vd1に電圧低下が生ずる。制御部1は、計時部により充電電流の定電流値を第3定電流値I23から第2定電流値I22に下げた時刻t25を制御部1のメモリ部に記憶させる。その後、制御部1は、電池パック20に設けられた定電圧制御素子26からの信号により、時刻t26で、定電流充電から定電圧充電に切り替える。また、充電器10は、電池パック20に設けられた定電圧制御素子26からの信号により、制御部1が二次電池21が満充電になったとして時刻t27で、二次電池21への充電を停止させる。なお、充電器10は、定電流値の減少時における二次電池21の電圧低下や電池パック20側が満充電とする充電終止電圧などを考慮して、適宜に設定された電圧Vcと、電圧Vcよりも電圧が高い電圧Vdとを記憶している。
【0057】
制御部1は、制御プログラムにもとづいて、二次電池21の電圧変化(Vd−Vc1)と、二次電池21の電圧が電圧Vc1から電圧Vdとなるまでの時間(t24−t22)とから電圧変化の勾配((Vd−Vc1)/(t24−t22))を演算し制御部1のメモリ部に記憶させる。
【0058】
ここで、二次電池21は、図7に示すように、定電流充電時における二次電池21の電気特性が、初期段階の二次電池21の電気特性(図7中の一点鎖線を参照)から劣化した二次電池21の電気特性(図7中の実線を参照)へと変化する。初期段階の二次電池21は、定電流充電中において、時刻t23で二次電池21の電池電圧が電圧Vcから電圧低下した電圧Vc1、時刻t25において電圧Vdとなる電圧変化の勾配の電気特性を示している。これに対し、劣化した二次電池21では、内部抵抗の増加などにより、定電流充電中において、時刻t22で電圧Vcから電圧低下した電圧Vc2、時刻t24で電圧Vdとなる。
【0059】
本実施形態の充電器10は、定電流充電中の第3期間における電圧変化の勾配が予め設定した所定値以下の場合に、制御部1が二次電池21が劣化していると判別する。
【0060】
ここで、充電器10では、定電流値が段階的に減少する定電流充電の複数の期間のうち、二次電池21への充電が開始される第1期間において、二次電池21の残存容量などに起因して電池電圧が変動するなど二次電池21の劣化の判別に誤判別が生じる懸念がある。
【0061】
また、充電器10は、電圧検出部2で二次電池21の電圧を検出し、二次電池21への充電を制御している。電池パック20では、定電圧制御素子26で二次電池21の電圧を一定にする信号を制御部1に出力し、定電圧充電の開始や定電圧充電の終了の信号も出力している。ここで、充電器10は、充電器10側で二次電池21の電圧を検出し、電池パック20は、電池パック20側で二次電池21の電圧を検出している。そのため、充電器10は、定電圧制御素子15の製造ばらつきなどにより充電器10側と電池パック20側との電圧検出値にずれが生じている場合、定電圧充電の充電開始直前となる第2期間が長くなったり、短くなったりする可能性がある。すなわち、充電器10は、電池パック20の定電圧制御素子26からの電圧検出値と、充電器10の電圧検出部2での電圧検出値とにずれが生じていると、定電圧充電の充電開始直前における第2期間において、二次電池21の劣化の判別に誤判別が生じる恐れがある。
【0062】
本実施形態の充電器10は、過充電などによる二次電池21への劣化を抑制するため、定電流充電において、充電電流の定電流値を段階的に減少させる複数の期間に分ける充電を行っている。ここで、充電器10は、二次電池21への充電が開始される第1期間と定電圧充電の充電開始直前における第2期間との間に、第1期間の第1定電流値および第2期間の第2定電流値とは異なる第3定電流値を出力させる第3期間を設けるように設定している。充電器10は、第3期間において、電圧変化の勾配を演算し二次電池21の劣化を判別している。これにより、本実施形態の充電器10は、二次電池21の種類や充電開始前の二次電池21の残存容量によらず、より正確に二次電池21の劣化を判別することが可能となる。
【0063】
(実施形態3)
本実施形態の充電器10は、図5および図6に示す実施形態2の第3期間での電圧変化の勾配を用いる代わりに、第3期間を複数の領域に分け、複数の領域それぞれの複数の勾配を用いて二次電池21の劣化を判別する点が相違する。なお、本実施形態の充電器10および充電器10に接続される電池パック20は、図1に示す実施形態1の充電器10および電池パック20と同様の回路構成としている。本実施形態の充電器10と、実施形態1,2の充電器10とは、電圧変化の勾配を演算などする制御部1の制御プログラムが異なっている。ここで、実施形態1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略している。
【0064】
本実施形態の充電器10では、制御部1は、第3期間を複数の領域に分け、複数の領域それぞれの電圧変化の勾配を演算するとともに、複数の勾配を用いて二次電池21の劣化の判別を行う。
【0065】
より具体的には、本実施形態の充電器10は、図8および図9に示すように、充電開始直後の期間となる時刻t31から時刻t32の間を二次電池21への充電が開始される第1期間として、定電流で充電電流を流す定電流充電を行う。また、充電器10は、時刻t32を経過後、充電電流の電流値を減少させて、時刻t32の経過後から時刻t33の間の期間において定電流充電を行う。同様に、充電器10は、時刻t33を経過後、充電電流の電流値を更に減少させて、時刻t33の経過後から時刻t34の間の期間において定電流充電を行う。さらに、充電器10は、時刻t34を経過後、充電電流の電流値を更に減少させて、時刻t34の経過後から時刻t35の間の期間において定電流充電を行う。そして、充電器10は、電池パック20の定電圧制御素子26からの信号に基づいて、制御部1が出力回路部3を制御することにより、定電流充電から定電圧充電への切替を時刻t36で行う。すなわち、充電器10は、時刻t35の経過後から時刻t36の間、定電流充電を行う。ここで、時刻t34の経過後から時刻t35の間の定電流充電の期間は、定電圧充電の充電開始直前における第2期間となる。そのため、時刻t32の経過後から時刻t34の間の定電流充電の期間は、第1期間に出力される第1定電流値I31および第2期間に出力される第2定電流値I32とは異なる第3定電流値となる定電流値I33や定電流値I34が出力される第3期間となる。
【0066】
すなわち、充電器10は、制御部1が出力回路部3を制御して時刻t31から時刻t35の間、充電電流を段階的に減少させながら定電流充電を行った後、定電圧充電に切替えている。充電器10は、電池パック20に設けられた定電圧制御素子26からの信号により、制御部1が二次電池21が満充電になったとして時刻t36で、二次電池21への充電を停止させている。
【0067】
本実施形態の充電器10は、充電電流の定電流値を段階的に減少させる定電流充電において、第3期間での電圧変化の勾配を二次電池21の劣化を判別に用いている。充電器10は、定電流充電中、電圧検出部2により二次電池21の電圧を測定する。ここで、制御部1は、制御部1に内蔵する計時部により定電流充電を開始した時刻t31からの時間を計時している。また、制御部1は、電圧検出部2の検出する電圧が予め設定した二次電池21の電圧Veと一致するまで第1定電流値I31での定電流充電を維持する。制御部1は、電圧検出部2の検出する電圧が電圧Veと一致した場合、充電電流の定電流値を第1定電流値I31から第3定電流値の1つである定電流値I33に減少させて定電流充電を行う。ここで、二次電池21では、充電電流の定電流値を下げることに伴い二次電池21の電圧が電圧Veから電圧Ve1に電圧低下が生ずる。充電器10は、二次電池21の電圧低下した電圧Ve1の電圧値を検出し、制御部1のメモリ部に記憶させる。また、制御部1は、制御部1に内蔵する計時部により充電電流の定電流値を第1定電流値I31から定電流値I33に下げた時刻t32を制御部1のメモリ部に記憶させる。
【0068】
続いて、制御部1は、電圧検出部2の検出する電圧が予め設定した二次電池21の電圧Vfと一致するまで定電流値I33での定電流充電を維持する。制御部1は、電圧検出部2の検出する電圧が電圧Vfと一致した場合、充電電流の定電流値を定電流値I33から同じく第3定電流値の1つである定電流値I34に減少させて定電流充電を行う。ここで、二次電池21では、充電電流の定電流値を下げることに伴い二次電池21の電圧が電圧Vfから電圧Vf1に電圧低下が生ずる。充電器10は、二次電池21の電圧低下した電圧Vf1を検出し、制御部1のメモリ部に記憶させる。また、制御部1は、制御部1に内蔵する計時部により充電電流の定電流値を定電流値I33から定電流値I34に下げた時刻t33を制御部1のメモリ部に記憶させる。
【0069】
同様に、充電器10は、定電流充電中において、電圧検出部2の検出する電圧が、制御部1に予め設定している電圧Vgと一致するまで定電流値I34での定電流充電を維持する。制御部1は、電圧検出部2の検出する電圧が電圧Vgと一致した場合、充電電流の電流値を定電流値I34から第2定電流値I32に減少させて定電流充電を行う。また、制御部1は、計時部により充電電流の定電流値を定電流値I34から第2定電流値I32に下げた時刻t34を制御部1のメモリ部に記憶させる。その後、制御部1は、電池パック20に設けられた定電圧制御素子26からの信号により、時刻t35で、定電流充電から定電圧充電に切り替える。また、充電器10は、電池パック20に設けられた定電圧制御素子26からの信号により、制御部1が二次電池21が満充電になったとして時刻t36で、二次電池21への充電を停止させる。
【0070】
制御部1は、制御プログラムにもとづいて、二次電池21の電圧変化(Vf−Ve1)と、二次電池21の電圧が電圧Ve1から電圧Vfとなるまでの時間(t33−t32)とから電圧変化の勾配((Vf−Ve1)/(t33−t32))を演算し制御部1のメモリ部に記憶させる。同様に、制御部1は、制御プログラムにもとづいて、二次電池21の電圧変化(Vg−Vf1)と、二次電池21の電圧が電圧Vf1から電圧Vgとなるまでの時間(t34−t33)とから電圧変化の勾配((Vf−Ve1)/(t34−t33))を演算し制御部1のメモリ部に記憶させる。
【0071】
本実施形態の充電器10の制御部1は、たとえば、図9の三角印の間で示す電圧変化の勾配(Vf−Ve1)と、図9の丸印の間で示す電圧変化の勾配(Vg−Vf1)との比率を演算する。
【0072】
本実施形態の充電器10は、定電流充電中の第3期間における電圧変化の勾配の比率が予め設定した所定値以下の場合に、制御部1が二次電池21が劣化していると判別する。
【0073】
本実施形態の充電器10は、制御部1が第3期間の複数の領域それぞれの電圧変化の勾配を演算するとともに、複数の勾配の比率を用いて二次電池21の劣化を判断している。本実施形態の充電器10は、複数の勾配の比率を用いて二次電池21の劣化を判別することによって、勾配のばらつきを小させて、二次電池21における劣化の判別の精度を高くすることが可能となる。
【0074】
なお、本実施形態の充電器10と接続させる電池パック20は、電池パック20の工場出荷時を1回目として電圧変化の勾配を記憶している。また、本実施形態の充電器10は、接続される電池パック20の記憶素子27に、表1で示すような二次電池21の充電回数と、充電回数に対応する電圧変化の勾配とを記憶させていく。
【0075】
【表1】

記憶素子27は、二次電池21の充電回数や充電回数に対応する電圧変化の勾配を記憶させるだけでなく、二次電池21の満充電時の電池電圧、過放電を防止するための放電終止電圧や過充電を防止するための充電終止電圧などを記憶させておいてもよい。
【0076】
本実施形態の充電器10は、二次電池21の充電時に、記憶素子27と電気的に接続された電池パック20側の端子25と、制御部1と電気的に接続された充電器10側の端子15とが接続される。
【0077】
充電器10は、制御部1が、二次電池21を備えた電池パック20側に設けられた記憶素子27に記憶された充電回数と充電回数に対応付けた電圧変化の勾配とから、初期段階からの電圧変化の勾配の変化によって二次電池21の劣化の判別を行うことができる。本実施形態の充電器10は、電池パック20ごとに記憶素子27を持たせ、二次電池21の充電回数に対応付けた電圧変化の勾配を検知できれば、初期段階より内部抵抗の高い二次電池21や逆に内部抵抗が低い二次電池21など二次電池21ごとのばらつきを打ち消すことができる。
【0078】
言い換えれば、本実施形態の充電器10の制御部1は、記憶素子27に記憶された、充電回数が所定回数以下の初期段階の勾配と初期段階よりも充電回数の多い段階の勾配とを比較して、二次電池21の劣化を判別している。そのため、本実施形態の充電器10は、電池パック20ごとの二次電池21の初期段階の勾配のばらつきを排除することが可能となる。本実施形態の充電器10は、二次電池21における劣化の判別の精度をさらに高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1 制御部
2 電圧検出部
3 出力回路部
6 報知部
10 充電器
21 二次電池
27 記憶素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池へ充電電流を出力する出力回路部と、前記二次電池の電圧を検出する電圧検出部と、定電流で前記充電電流を流す定電流充電と該定電流充電後に定電圧で前記充電電流を流す定電圧充電とを行うように前記出力回路部を制御する制御部とを有する充電器であって、
前記制御部は、前記定電流充電中に、前記電圧検出部が検出する前記第1電圧と、該第1電圧を検出後に前記電圧検出部が検出する第2電圧と、前記第1電圧の検出時から前記第2電圧の検出時までの時間とに基づいて該時間における前記第1電圧と前記第2電圧との電圧変化の勾配を演算し、前記勾配が所定値以下の場合に前記二次電池が劣化していると判別することを特徴とする充電器。
【請求項2】
前記定電流充電は、前記充電電流の定電流値を段階的に減少させる複数の期間で行われ、少なくとも、前記二次電池への充電が開始される第1期間と、前記定電圧充電の充電開始直前における第2期間と、前記第1期間と前記第2期間との間であって前記出力回路部から前記第1期間に出力される第1定電流値および前記第2期間に出力される第2定電流値とは異なる第3定電流値を出力させる第3期間とを含み、前記制御部は、前記第3期間の前記勾配を演算することを特徴とする請求項1に記載の充電器。
【請求項3】
前記制御部は、前記第3期間を複数の領域に分け、該複数の領域それぞれの前記勾配を演算するとともに、複数の前記勾配を用いて前記判別をすることを特徴とする請求項2に記載の充電器。
【請求項4】
前記二次電池を有する電池パックに記憶素子が設けられており、前記制御部は、前記記憶素子に前記二次電池への充電回数と該充電回数における前記二次電池の前記勾配とを対応付けて記憶させるとともに、充電回数が所定回数以下の初期段階の前記勾配と前記初期段階よりも充電回数の多い段階の前記勾配とを比較して、前記電池パックごとの前記二次電池の前記初期段階の前記勾配のばらつきを排除することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の充電器。
【請求項5】
前記判別した結果を外部に報知する報知部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の充電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−59237(P2013−59237A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197414(P2011−197414)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(509119153)パナソニックESパワーツール株式会社 (107)
【Fターム(参考)】