先端部材
【課題】 螺旋状の翼部と直管部を一体成型して、溶接作業を不要にし、螺旋状の翼部と直管部との十分な取り付け強度を確保しつつコストを低減させる。
【解決手段】 杭に取り付け可能な先端部材50であって、円筒状の直管部51と、前記直管部の地底側に設けた螺旋状の翼部52を有し、前記直管部と螺旋状翼部52とを一体に鋳造したものである。螺旋状翼部52を直管部51の内外方向に延在させ直管部51の内部は開口を絞り半閉塞となっている。前記直管部の前記翼部と反対側の端部近傍に複数の貫通孔55が設けられており、前記貫通孔55と前記杭に設けた貫通孔に連結具を挿入して連結する。
【解決手段】 杭に取り付け可能な先端部材50であって、円筒状の直管部51と、前記直管部の地底側に設けた螺旋状の翼部52を有し、前記直管部と螺旋状翼部52とを一体に鋳造したものである。螺旋状翼部52を直管部51の内外方向に延在させ直管部51の内部は開口を絞り半閉塞となっている。前記直管部の前記翼部と反対側の端部近傍に複数の貫通孔55が設けられており、前記貫通孔55と前記杭に設けた貫通孔に連結具を挿入して連結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭の地底側の端部に連結されて、基礎杭を地中に推進させる推進部材(先端部材という)に関し、特に、鋳造によって直管部と螺旋状の翼部が一体に形成された先端部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤上に低層階のビルを建てる場合、その建物を支える基礎として鋼製の基礎杭(鋼管杭)が使用される。この基礎杭は地中に埋設され、その杭頭部に建物を支える土台やコンクリートスラブが一体に形成される。
基礎杭は、一般に建物の基部と一体に連結する上杭と、下杭から成りこれを地中に埋設するときは、螺旋状の翼部材が先端に取り付けられた下杭に回転力を与え、上記螺旋状の翼部材により地中に推進する。下杭がある程度の深さまで埋設されると、下杭の上端部に新たな杭材を継ぎ足して、この継ぎ足した杭材に回転力を与えて再び推進を開始する。この作業を杭が支持層に達するまで繰り返し行う。
【0003】
この基礎杭の先端に形成された先端部の形状は、この基礎杭の地中への貫入のし易さや、貫入後の基礎杭の支持力に影響するため、従来多様な形状の先端部が提案されている。
例えば、有底の鋼管の外周に螺旋状の羽根を取り付けた先端部を有する鋼管杭が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された鋼管杭は、有底の鋼管であり、かつ螺旋状の羽根(本願発明では翼部という)が鋼管の外周に固定されているため、鋼管杭の先端部の地面を掘削できない。また、鋼管の径や地盤にもよるが、鋼管の底面に貫入方向に対する土砂の抵抗(貫入抵抗)が非常に大きく、場合によっては施工中に貫入が進行せず、同じ位置で空回りする現象が生じることもある。空回りをしながら少しずつ貫入を進行させても、その鋼管の周りの土砂を螺旋状の羽根がかき乱した状態にするため、貫入後の鋼管杭の支持力が低下する。
【0005】
そこで、さらに鋼管の径が大きく土砂の抵抗も増大するものに対しては、下面に掘削刃を設けた螺旋状の羽根を開端の金属管の端部に形成した基礎杭が用いられる(特許文献2参照)。
この基礎杭を回転させて地中に貫入すると、この螺旋状の羽根に設けられた掘削刃によって地面が掘削されるとともに、掘削土が金属管の中空部に取り込まれるため、貫入時の土砂の抵抗が小さく、スムーズに貫入が進行する。
しかしながら、特許文献2に記載された基礎杭は、貫入が終了したとき、螺旋状の羽根に設けられた掘削刃によって基礎杭の先端部の地面がかき乱された状態になっており、また、基礎杭が完全に開端の金属管で形成されているため、軸方向の土砂に対する抵抗が小さく、十分な軸方向の支持力が得られない虞がある。
【0006】
そこで、上記貫入抵抗の問題と、支持力の問題を同時に解決するため、螺旋状に切断した鋼管杭の先端に螺旋状の羽根を固着した回転圧入鋼管杭が用いられている(特許文献3参照)。
この螺旋状の羽根は、鋼管杭の径方向内側にも延在しており、鋼管杭の先端はこの螺旋状の羽根により半閉塞の状態となっている。
この回転圧入鋼管杭によれば、半閉塞に形成された先端から杭の内部に掘削土を適宜取り込みながら回転貫入することで、貫入時の鋼管杭の先端に対する土砂の抵抗を低減でき、スムーズに地中に鋼管杭を貫入することができると共に、貫入後には鋼管杭の先端に形成された螺旋状の羽根によって、鋼管杭の先端に対する土砂の抵抗を受け、軸方向の支持力も確保することができる。
【0007】
この回転圧入鋼管杭は、鋼管の先端部を螺旋形状になるように切断して、その切断面にその先端面に合致した螺旋状の羽根を溶接することで製造している。しかし、鋼管先端部の切断加工に加え、大きな貫入抵抗を受けるために鋼管より極厚になる羽根部材の製造および羽根部材の鋼管への溶接には多大な労力とコストを要するという問題がある。
【特許文献1】特開昭59−85028号公報
【特許文献2】特開2002−212948号公報
【特許文献3】特開2004−316421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、その目的は、螺旋状の翼部と直管部を一体成型して、溶接作業を不要にし、螺旋状の翼部と直管部との十分な取り付け強度を確保しつつコストを削減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、杭に取り付け可能な先端部材であって、円筒状の直管部と、前記直管部の地底側に設けた螺旋状の翼部を有し、前記直管部と螺旋状翼部とを一体に鋳造したことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載された先端部材において、前記翼部は前記直管部の地底側端部において直管部の内外径方向に延在し、内径方向に延在した翼部は、直管部の内部に所定径の螺旋状開口を形成する幅を有することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載された先端部材において、前記翼部は、前記先端部材を下から平面視したとき翼部の始端と終端との間に所定の間隙を残して前記直管部の地底側端部をほぼ一周するように形成されていることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された先端部材において、前記直管部の前記翼部と反対側の端部近傍に貫通孔が設けられており、前記貫通孔と前記杭に設けた貫通孔に連結具を挿入して連結することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4に記載された先端部材において、前記連結具の先端は、前記先端部材を下から平面視したときの前記翼部の内側端と、ほぼ等しいか、より径方向外側に位置していることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項4又は5に記載された先端部材において、前記連結具は、筒状のスリーブと該筒状のスリーブに挿入されるピンから成り、前記筒状のスリーブは、上記ピンを挿入したときにピンの先端部で拡径する先端部分を有し、前記拡径する先端部分により前記貫通孔から抜け止め規制されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、螺旋状の翼部と直管部を鋳造により一体成型したことにより、従来のように螺旋状の翼部を直管部に溶接することがないから加工工数及びコストの削減ができる。
また、翼部の複雑な形状を鋳造により容易に形成する事が出来ると共に、翼部と直管部とが一体に形成されているため十分な強度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る基礎杭について、添付した図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る基礎杭を示す正面図である。
本実施形態に係る基礎杭1は、図示のように、基礎杭1の地上側(基礎杭1を地中に埋設するときの杭の進行方向の後端側)に位置する上杭10と、地底側(基礎杭1を地中に埋設するときの杭の進行方向の先端側)に位置する下杭40と、下杭40の先端に取り付ける先端部材50と、上杭10と下杭40及び下杭40と先端部材50を連結した状態で固定する連結具70とから成っている。
【0012】
この基礎杭1は、比較的低層のビルディングなどを支持可能な最大径がおよそ30〜70センチ程度のものを想定する。この基礎杭1を埋設するときは、まず、アースオーガなどで基礎杭1を埋設する位置に支持層の深さまで穴を掘削しながらセメントミルクを注入し、掘削土とセメントミルクを混練して地中にソイルセメント柱を形成する。次に、そのソイルセメント柱に先端部材50を取り付けた下杭40を回転貫入していき、下杭40を貫入し終わったら、下杭40を固定して、その上端部に上杭10を継ぎ足して連結具70で固定し、同様に地中に回転貫入させて埋設する。
【0013】
次に、図1に示した基礎杭1を構成する要素である上杭10について説明する。
図2は本実施形態に係る基礎杭1を構成する上杭10を示す図であり、図2Aは上杭10の平面図、図2Bは上杭10の一部を縦断面で示す正面図である。
上杭10は、図2Bに示すように、上杭10上に打設されるコンクリートスラブ等と一体となる鉄筋を取り付けるため上杭10の地上側に一体に設けたフランジ11と、所定長さの直管状の杭本体21と、杭本体21と同径の直管状に形成された下端部23と、フランジ11と杭本体21間をつなぐ連結部31とから成り、これらは溶解した鋳鉄の溶湯を例えば冷却水の中で高速回転する鋳型に流し込み、遠心力を作用させながら鋳造して一体に成型されている。その後、熱処理を行いダクタイル鋳鉄にしたものである。
【0014】
フランジ11は、所定の厚みを有するリング状を成しており、そのフランジ面には、図2Aに示すように、鋳造時に形成した貫通孔12が等間隔に配置されており、この貫通孔12には、図2Bに示すように、端部にねじ溝が形成されたねじ付き鉄筋13が挿入され、フランジ11の両面側からナット14a、14bで、フランジ11を挟むように締めて固定される。なお、鉄筋を施工現場などで自由に配置する場合には、貫通孔12は鋳造によらずドリル等の穿孔手段で適宜形成するように構成してもよい。
【0015】
フランジ11の内径は、杭本体21の内径よりも僅かに大きく形成されており、後述するように、杭本体21の径との間に蓋体受部32が形成されている(図2B左側の断面図参照)。即ち、連結部31の地底側端部と地上側端部の略中間部内周面には蓋体受部32が形成されており、この蓋体受部32には、上杭10上にコンクリートスラブ等を形成するためコンクリートを打設するときに、コンクリートが杭の内部に落下するのを防止する落とし蓋33を設置する。この落とし蓋33は外径が連結部31の地上側の内径とほぼ同一の円板状に形成されている。図2においては、この蓋体受部32は段部状になっているが、これに限らずテーパー状など落とし蓋33が設置できる形状であればよい。
【0016】
連結部31の外周面形状は、この実施形態では図2Cにその断面を拡大して示すように、内周面の蓋体受部32に対応してテーパー面34とその上側に続く大径の円筒面35に形成されており、この外周面形状によって、連結部31は杭本体21に比して肉厚に形成できるため、亀裂若しくは破損が生じ難いだけではなく、上記鉄筋13を介してフランジ11に作用する荷重に抵抗すると共に、杭本体21へスムーズに荷重を伝達することができる。
なお、連結部31の外周面形状は上記実施形態に限定することなく、図2Dに示すように全てテーパー面34で構成しても、或いは図2Eに示すように円筒面35のみで形成してもよい。
【0017】
杭本体21の地底側端部には、下杭40の大径部41に挿入して連結する下端部23(杭本体21と大径部41のオーバーラップする部分を指す)が形成されている。
下端部23の周面には、図2Bに示すように、上杭10と下杭40との連結に用いる後述する連結具70(図5参照)を挿入するための径方向に相対向する貫通孔22が二対(横方向に一対と、紙面奥行き方向に一対)軸方向に所定の間隔で形成されている。ただし、この貫通孔22を形成する位置はこれ以外であってもよい。
なお、この貫通孔22は上杭10を下杭40に挿入した後、ドリルなどの任意の穿孔手段で形成する。または、下端部23を大径部41に挿入したときに大径部41の周面に形成されている貫通孔44と位置整合するよう位置決めした状態で、貫通孔22を予め形成しておいてもよい。
【0018】
以上で説明したように、上杭10は鋳造によるためフランジ11の貫通孔12や、連結部31に形成されている蓋体受部32及び拡径部35、テーパー面34などの複雑な形状や構造も容易に形成することができる。また、上杭10には、フランジ11が一端に形成され、そのフランジ11から連結部31を経てフランジ11より小径の直管状の杭本体21となる形状に構成されているため、工場にて鋳造された後鋳型から取り出すとき、フランジ11側から引き抜くことで上杭10を容易に取り出すことができる。
【0019】
また、フランジ11に対するねじ付き鉄筋13の取り付けは、ねじ付き鉄筋13をフランジの貫通孔12に挿入して、そのねじ溝にナット14a、14bを螺合して固定するだけであるから、溶接を行う場合のようにその品質が天候や技術者の技量に左右されず、常に一定に保つことができる。
【0020】
次に、図1に示した基礎杭1を構成する要素である下杭40について説明する。
図3は下杭40の一部を縦断面で示す正面図である。
下杭40は、図示のように、所定長さの直管状に形成された杭本体43と、杭本体43と同径の直管状に形成された下端部48と、円筒状の大径部41と、この大径部41と杭本体43間をつなぐ連結部42とから成っており、上杭10と同様の鋳造によって一体に成型した後熱処理を行ってダクタイル鋳鉄にしたものである。
また、この下杭40は、基礎杭1上に形成されたコンクリートスラブ等に加わる水平荷重に対しては、図2に示した上杭10に比してその影響は小さいため、その周壁は上杭10の厚みより全体的に薄く形成されている。
【0021】
杭本体43の地上側端部には大径部41が長手方向所定長さで一体に形成されている。大径部41の内径は、上杭10と連結する際に下端部23を嵌合できるよう下端部23の外径よりも僅かに大きなサイズに形成されている。また、大径部41の内径と杭本体43の内径との境界部の段部45は、嵌合される上杭10の下端部23を受け止める支持部となり、大径部41は全体として上杭10に対する接続用の受口を構成している。
大径部41の周面には、上杭10と下杭40との連結に用いる後述する連結具70を挿入するための径方向に相対向する貫通孔44が段部45よりも地上側に二対(横方向に一対と、紙面奥行き方向に一対)軸方向に所定の間隔を有して形成されている。ただし、この貫通孔44を形成する位置はこれ以外であってもよい。
なお、この貫通孔44は下杭40に上杭10を挿入した後、ドリルなどの任意の穿孔手段で形成する。または、下端部23を大径部41に挿入したときに下端部23の周面に形成されている貫通孔22と位置整合するよう位置決めした状態で、貫通孔44を予め形成しておいてもよい。
【0022】
連結部42は、地上側端部が大径部41の地底側端部と一体に形成されており、その外周面はテーパー面となっており、大径部41の内周面には連結部42の内径と大径部41の内径とのサイズの差によって段部45が形成されている。この段部45は、図2に示した上杭10の下端部23を下杭40の大径部41に嵌合したときに、下端部23の地底側端部が当接して、下端部23の位置決めをすると共に、上に連結する上杭からの下向きの荷重を受け止める。
【0023】
杭本体43の地底側端部には、後述する先端部材50の受口54(図4参照)に挿入して連結する下端部48(杭本体43と受口54のオーバーラップする部分を指す)が形成されている。
下端部48の周面には、図3に示すように、下杭40と先端部材50の連結に用いる後述する連結具70を挿入するための径方向に相対向する貫通孔46が二対(横方向に一対と、紙面奥行き方向に一対)軸方向に所定の間隔で形成されている。ただし、この貫通孔46を形成する位置はこれ以外であってもよい。
なお、この貫通孔46は下杭40を先端部材50に挿入した後、ドリルなどの任意の穿孔手段で形成する。または、下端部48を受口54に挿入したときに受口54の周面に形成されている貫通孔55と位置整合するよう位置決めした状態で、貫通孔46を予め形成しておいてもよい。
【0024】
以上で説明したように、下杭40は鋳造により大径部41から連結部42を介して杭本体43へと連続的に一体成形されるため、基礎杭1を構成する各部材との連結に際して別体の連結部材を用いたり、大径部を形成するための例えば拡径などの加工を行なう必要がない。連結部材の製造や加工などを行なわないことで、製造コストを低減することができるとともに安定した品質が得られる。
また、下杭40は大径部41と、連結部42で連結された大径部41より径の小さい杭本体43を形成しているため、工場にて鋳造された後鋳型から取り出すとき、大径部41側から引き抜くことで下杭40を容易に取り出すことができる。
【0025】
次に、図1に示した基礎杭1を構成する要素である先端部材50について説明する。
図4は先端部材50を示す図であり、図4Aは先端部材50の平面図、図4Bは先端部材50の側面図、図4Cは先端部材50の断面図である。
この先端部材50は、図4Bに示すように、円筒状の直管部51と、直管部51の地上側端部に形成された直管状の受口54と、直管部51の地底側端部に形成された螺旋状の翼部52とからなり、上杭10及び下杭40と同様、鋳造して一体に成型した後熱処理を行いダクタイル鋳鉄にしたものである。
【0026】
直管部51の地上側端部には受口54が長手方向所定長さで一体に形成されている。受口54の内径は、直管部51の内径より大きく、かつ下杭40と連結する際に下端部48を嵌合できるよう下端部48の外径よりも僅かに大きなサイズに形成されている。また、直管部51の内径は、下杭40の下端部48の内径とほぼ同一である。
この受口54の内径と直管部51の内径とのサイズ差によって境界部に形成される段部53は、受口54に嵌合される下杭40の下端部48の位置決めをするとともに、上に連結する下杭40からの荷重を受け止める。
【0027】
また、直管部51の周面には、下杭40と先端部材50との連結に用いる後述する連結具70を挿入するための径方向に相対向する貫通孔55が、段部53よりも地上側に二対(横方向に一対と、紙面奥行き方向に一対)軸方向に所定の間隔を有して形成されている。ただし、この貫通孔55を形成する位置はこれ以外であってもよい。
なお、この貫通孔55は先端部材50に下杭40を挿入した後、ドリルなどの任意の穿孔手段で形成する。または、下端部48を受口54に挿入したときに下端部48の周面に形成されている貫通孔46と位置整合するよう位置決めした状態で、貫通孔55を予め形成しておいてもよい。
【0028】
直管部51の地底側端部は螺旋状に形成されている。つまり地上側端部と地底側端部までの軸方向長さが最も短い地上側端部a点(始点)から、地上側端部と地底側端部までの軸方向長さが最も長い地底側端部b点(終点)まで、直管部51の地底側端部が螺旋状に変化するよう形成されている。
【0029】
また、直管部51の地底側端部には翼部52が一体に形成されている。翼部52は、直管部51の径方向の内外方向に延在し、その幅は直管部51の内部を所定径の螺旋状の開口で絞った半閉塞状態にするため、例えば上記内外方向にそれぞれ直管部51の半径の略半分の幅にされており、直管部51の地底側端部に沿って螺旋状に形成されている。
【0030】
以上で説明したように、翼部52が直管部51の地底側端部を半閉塞の状態にしているため、基礎杭1を埋設するときに土砂やソイルセメント(以下、土砂等という)を杭内部に適量取り込みながら貫入して、土砂等の流動を妨げず、貫入時の杭に対する土砂等の抵抗を低減するとともに、施工後の基礎杭1の軸方向に対する支持力を確保することができる。即ち、先端が閉塞した構造に比べて貫入抵抗を低減でき、先端が開放した構造に比べて支持面積が大きいため支持力を確保することができる。
【0031】
さらに、翼部52は、図4Aに示すように、その螺旋の始端52aと終端52b間に平面視僅かな隙間Gを残して直管部51の地底側端部をほぼ一周しているため、図4Bにおいて上記a点とb点とを結ぶ直線は、先端部材50の中心線に対して所定角度を成すように傾斜している。この隙間Gおよび傾斜によって成型後の型抜きが容易になる。
【0032】
次に、基礎杭1を構成する各杭や先端部材を相互に連結する連結具について説明する。
図5は連結具70の拡大断面図である。図5に示すように、連結具70は円筒状のスリーブ71と、このスリーブ71が形成する円筒内に挿入するピン72とから成る。これらのスリーブ71及びピン72はクロムモリブデン鋼などの鋼材によって形成されている。
【0033】
スリーブ71は、既に説明した上杭10などの周面に形成された貫通孔の内径に対応した外径を有する円筒状に形成され、その後端側(ピン72をスリーブ71内に挿入するときの挿入方向の後端側)の外周にフランジ部73が一体に形成されると共に、先端側(ピン72をスリーブ71内に挿入するときの挿入方向の先端側)の内周には、厚みが先端側に向かうにつれて次第に薄くなるテーパー面79により先端が鋭角に形成された環状の突起74が形成されている。
また、スリーブ71の先端には、その周方向に沿った複数の位置において、その軸芯方向に平行なスリット75が、スリーブ71の先端面から所定長さに形成されている。
【0034】
ピン72は、スリーブ71の内径に対応した外径を有する円柱状を成しており、スリーブ71の内部に貫入でき、その後端の外周にフランジ部76が一体に形成されると共に、その先端にはテーパー面77が形成されている。ピン72の外周面において、このテーパー面77から軸芯方向に所定距離を置いた位置に横断面矩形状の環状の溝78が形成されている。
【0035】
図6ないし図8は、この連結具70を用いて上杭10と下杭40とを連結する手順を説明する図である。
図6Aは、各杭に貫通孔を形成した状態を、図6Bは、各杭の貫通孔にスリーブ71を挿入した状態を示している。
図7Aは、貫通孔に挿入されたスリーブ71の内部にピン72を挿入する状態を、図7Bは、スリーブ71にピン72を挿入してスリーブ71の先端を拡径させた状態を示している。
図8Aは、スリーブ71に完全に挿入したピン72に抜け出し力が作用した状態を、図8Bは、溝78に突起74がはまり込んだ状態を示している。
【0036】
まず、図6Aに示すように、下杭40の大径部41に上杭10の下端部23を挿入して、ドリルなどの穿孔手段で下杭40に貫通孔44を、上杭10に貫通孔22を形成する。次に、図6Bに示すように、下杭40の大径部41の貫通孔44の外側からスリーブ71を差し込んで、そのフランジ部73が大径部41の外周面に接触させるまではめ込む。これにより、スリーブ71の先端の突起74やスリット75が形成された部分を下端部23の貫通孔22から上杭10の内部に突出させる。
【0037】
次に、図7Aに示すように、ピン72の先端をスリーブ71の円筒の入口に合わせ、ピン72をスリーブ71の内部に打ち込む。すると、図7Bに示すように、ピン72の先端部がスリーブ71の突起74を径方向の外向きに押し広げるように変形させながら突起74を通過する。このとき、スリーブ71にスリット75が形成されているため、突起74が形成されている部分におけるスリーブ71の変形が容易に行われる。また、前述のように、突起74の先端はテーパー面79に形成されているため、このテーパー面79がピン72の先端に形成されているテーパー面77に当接し、そのテーパー面間の力の伝達により、ピン72のテーパー面77がスリーブ71の先端を容易且つ確実に押し広げる。
このピン72によって押し広げられたスリーブ71の先端には、拡径部80が形成され、この拡径部80によって貫通孔22、44から連結具70が抜け出すことを防止する。
なお、連結具70の長さは、杭の貫入によって連結具70にかかる土砂等の抵抗が低減されるように、ピン72の先端が先端部材50の翼部52の内側端52dよりも径方向外側に位置するように長さを形成することが望ましい。
【0038】
また、貫通孔22、44に挿入された連結具70のピン72に、スリーブ71からの抜け出し力が作用したとき、即ち、図8Aに示すように溝78がスリーブ71から突出している状態のピン72に図中矢印X方向の力が作用したときには、図8Bに示すように、ピン72がスリーブ71に対して後端側に変位するが、その溝78が突起74の位置に到達すると、突起74がスプリングバックして溝78にはまり込む。これにより、スリーブ71からのピン72の抜け出しが完全に防止できる。
なお、ピン72とスリーブ71の長さの関係は、図9に示すように、ピン72をそのフランジ部76がスリーブ71のフランジ部73に当接するまで打ち込んだときに、突起74が溝78にはまるように構成しても差し支えない。
【0039】
次に、この連結具70の先端の位置(ピン72の長さ)について説明する。
図10は下杭40を先端部材50に挿入し、連結具70で連結した状態を示す断面図であり、図10Aは連結具70の先端の位置が翼部52の内側端52dの位置とほぼ等しい状態を、図10Bは連結具70の先端が翼部52の内側端52dの径方向外側に位置した状態を示す。
図10Aに示すように、下杭40の下端部48を先端部材50の受口54に挿入して、ドリルなどの穿孔手段にて貫通孔55、貫通孔46をそれぞれ設け、そこへスリーブ71を挿入し、ピン72をスリーブ71の内部へ打ち込んで下杭40と先端部材50を連結している。
【0040】
既に説明したように、本実施形態に係る基礎杭1を構成する先端部材50は、螺旋状の翼部52が直管部51の地底側端部を半閉塞の状態にしており(図4参照)、基礎杭1を地中に埋設するときは、その半閉塞の地底側端部からソイルセメントを杭の内部に取り込みながら地中に推進する。連結具70を各貫通孔に挿入したときの連結具70の杭内部に突出した部分に杭の内部に取り込まれたソイルセメントが接触すると、それが基礎杭1を地中に推進する際の抵抗になるため、連結具70の杭内部への突出量、即ち連結具70の長さを調整する必要がある。
【0041】
本実施形態では、連結具70の長さは、ピン72の先端の位置が翼部52の内側端52dの位置とほぼ等しくなるように形成されている(図ではピン72の先端が内側端52dよりも僅かに径方向内側に位置している)。即ち、この連結具70の先端の位置は、先端部材50を下から平面視したときの翼部52の内側端52dの位置と、ほぼ等しい位置となっている。
しかし、杭の貫入によって連結具70にかかる土砂等の抵抗が低減されるよう、ピン72の先端が先端部材50の翼部52の内側端52dよりも径方向外側に位置するように連結具70の長さをより短く形成することが望ましい。
【0042】
以上で説明したように、この連結具70は、貫通孔に挿入されたスリーブ71の内部にピン72を打ち込むだけで杭同士を連結一体化することができるため、連結作業に要する時間が短く、かつ、ピン72をスリーブ71の内部に打ち込んでスリーブ71の先端を拡径させると共に、ピン72に抜け出し力が作用したときにはスリーブ71の先端の突起74がピン72の溝78にはまり込むため、スリーブ71及びピン72が杭の貫通孔から抜け出すことがない。
また、連結具70の長さを先端部材50の翼部52に対応して短くすることで、基礎杭1を地中に貫入したときに杭内部に取り込まれる土砂等が連結具70に接触したときの、基礎杭1の回転及び貫入に対する土砂等による抵抗を低減することができる。
【0043】
以上で説明した、上杭10、下杭40、先端部材50及び連結具70から構成された基礎杭1は、複雑な形状部位であっても全体が鋳造によって形成されているため、技術者の技量や天候等によって品質が左右される現場での溶接に加え、工場での溶接作業も不要であるため、基礎杭1全体として、常に一定の品質を保つことができる。
また、現場での連結作業等においては、連結具を挿入する貫通孔を孔あけ加工するだけで、鉄筋を取り付ける貫通孔等他の全ての構造が工場にて形成されているため、現場での作業を最小限にでき、さらに連結具70によって迅速に連結作業が行えるため、現場での施工工数および施工時間を削減することができる。
なお、基礎杭1を形成する材料はダクタイル鋳鉄に限らず、例えばその他の鋳鉄や鋳鋼などであってもよい。
【0044】
本実施形態に係る基礎杭1は、上杭10、下杭40および先端部材50とから形成しているが、これに限らず例えば上杭10と先端部材50、または上杭10と複数の下杭40と先端部材50から形成してもよく、その組み合わせは任意である。したがって基礎杭1の長さを調整して、現場の支持層深さに適合した基礎杭1を形成することができる。
【0045】
以上で説明した基礎杭1は、上杭10、下杭40および先端部材50で構成されているが、さらに先端部材50とほぼ同一形状の中間部材150を下杭140と上杭10との連結部間に介在させて取り付けることにより、基礎杭1の中間部にも螺旋状の翼部を配置できるため、杭埋設時の推進力が増し、施工能率を向上することができるとともに、杭埋設後には鉛直荷重に対して前記翼部が抵抗となり、基礎杭1の鉛直支持力を向上することができる。
【0046】
以下、その構造について説明する。
図11は、中間部材150を下杭140と上杭10との連結部間に介在させる状態を示す図である。
中間部材150の形状は、図11のように、図4に示した先端部材50とほぼ同一であるが、中間部材150の翼部152が直管部151の径方向の外方向にのみ延在して直管部151の内径方向には存在していない。また、直管部151の内径は上杭10と連結する際に下端部23を嵌合できるよう下端部23の外径よりも僅かに大きなサイズに形成されており、直管部151の外径は下杭140と連結する際に大径部141に挿入できるよう大径部141の内径よりも僅かに小さなサイズに形成されている。
その他の構成は、図4に示した先端部材50と同じであり、同様に一体に鋳造されたものである。
【0047】
取り付けに際しては、中間部材150の翼部152を地上側に向けた状態で、その直管部151を下杭140の大径部141に挿入し、さらに、中間部材150の直管部151の内部に上杭10の下端部23を挿入した後、ドリルなどの任意の穿孔手段で各貫通孔144、155、22を形成して、ここに連結具70を挿入することで、上杭10と下杭140との連結部に中間部材150を取り付ける。
【0048】
図12は、中間部材150を下杭140と上杭10との間に介在させた状態を示す断面図であり、図12Aは中間部材150の外周面が直線状の場合を、図12Bは中間部材150の外周面がテーパー状の場合を示している。特に図12Bのように大径部141の内面と中間部材150の外面が地上側に向かって開いた相互補完形状のテーパー形状にすることによって、大径部141の内面と中間部材150の外面が密接し、施工中および施工後における連結部のガタツキの発生を抑制することができる。
【0049】
以上の説明では、上杭10と下杭140との連結部に中間部材150を介在させるとしたが、これに限らず他の基礎杭1を構成する杭または先端部材との連結部に介在してもよく、その組み合わせは任意である。
【0050】
また、既に説明した基礎杭1では、上杭10のフランジ11は鋳造によって鉄筋を取り付ける貫通孔12が予め工場で形成されるため、鉄筋の取り付け位置が予め設定されている。そのため、鉄筋の取り付け位置を変更することは容易ではない。
そこで、従来のように鉄筋をフランジ11の上部に溶接で取り付けられるようにして、鉄筋の取り付け位置の自由度を高めることもできる。
【0051】
図13は、上杭10の杭頭部分を示す図であり、図13Aは上杭10の平面図を、図13Bは断面図を示している。
図13Bに示す上杭10は、フランジ11の上面にフランジ11と同形状の鉄板91が載置され、フランジ11及び鉄板91を挟むようにボルト92とナット93で固定されている。
この鉄板91は、図13Aに示すように、その円周に沿って複数箇所(図では4箇所)のボルト92を挿入するための貫通孔94が設けられている。さらに、この鉄板91の表面には複数本(図では4本)の鉄筋13の下端部が例えばスタッド溶接によって固着されている。
【0052】
以上で説明した基礎杭1は、フランジ11の上面に鉄板91を取り付けることで、鉄板91上であればどこにでも鉄筋13を取り付けることができるため、例えば基礎杭1の施工現場等で急遽鉄筋を取り付ける位置を変更する必要が生じた場合などに迅速な対応をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態に係る基礎杭を示す正面図である。
【図2】基礎杭を構成する上杭を示す図であり、図2Aは上杭の平面図、図2Bは上杭の一部を縦断面で示す正面図、図2Cは上杭の杭頭部の拡大断面図、図2Dは連結部をテーパー面のみで形成した上杭の杭頭部の拡大断面図、図2Eは連結部を円筒面のみで形成した上杭の杭頭部の拡大断面図を示す。
【図3】下杭の一部を縦断面で示す正面図である。
【図4】先端部材を示す図であり、図4Aは先端部材の平面図、図4Bは先端部材の側面図、図4Cは先端部材の断面図である。
【図5】連結具の拡大断面図である。
【図6】連結具を用いて上杭と下杭とを連結する手順を説明する図であり、図6Aは各杭に貫通孔を形成した状態を、図6Bは各杭の貫通孔にスリーブ71を挿入した状態を示している。
【図7】連結具を用いて上杭と下杭とを連結する手順を説明する図であり、図7Aは貫通孔に挿入されたスリーブの内部にピンを挿入する状態を、図7Bはスリーブにピンを挿入してスリーブの先端を拡径させた状態を示している。
【図8】連結具を用いて上杭と下杭とを連結する手順を説明する図であり、図8Aはスリーブに完全に挿入したピンに抜け出し力が作用した状態を、図8Bは溝に突起がはまり込んだ状態を示している。
【図9】ピンの長さを変えた連結具を用いて上杭と下杭とを連結した状態を示す図である。
【図10】下杭を先端部材に挿入し、連結具で連結した状態を示す断面図であり、図10Aは連結具の先端の位置が翼部の内側端の位置とほぼ等しい状態を、図10Bは連結具の先端が翼部の内側端の径方向外側に位置した状態を示す図である。
【図11】中間部材を下杭と上杭との連結部間に介在させる状態を示す斜視図である。
【図12】中間部材を下杭と上杭との連結部間に介在させた状態を示す断面図である。
【図13】上杭の杭頭部分を示す図であり、図13Aは上杭の平面図を、図13Bは断面図を示している。
【符号の説明】
【0054】
1・・・基礎杭、10・・・上杭、11・・・フランジ、12,22,44,46,55,94,144,155・・・貫通孔、13・・・鉄筋、14a,14b・・・ナット、21,43・・・杭本体、23,48・・・下端部、31,42,142・・・連結部、32・・・蓋体受部、45,53・・・段部、33・・・落とし蓋、34・・・テーパー面、35・・・円筒面、40・・・下杭、41,141・・・大径部、50・・・先端部材、51,151・・・直管部、52,152・・・翼部、52a・・・始端、52b・・・終端、52c・・・外側端、52d・・・内側端、70・・・連結具、71・・・スリーブ、72・・・ピン、73・・・フランジ部、74・・・突起、75・・・スリット、76・・・フランジ部、77・・・テーパー面、78・・・溝、79・・・テーパー面、80・・・拡径部、91・・・鉄板、92・・・ボルト、93・・・ナット、140・・・下杭、150・・・中間部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭の地底側の端部に連結されて、基礎杭を地中に推進させる推進部材(先端部材という)に関し、特に、鋳造によって直管部と螺旋状の翼部が一体に形成された先端部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤上に低層階のビルを建てる場合、その建物を支える基礎として鋼製の基礎杭(鋼管杭)が使用される。この基礎杭は地中に埋設され、その杭頭部に建物を支える土台やコンクリートスラブが一体に形成される。
基礎杭は、一般に建物の基部と一体に連結する上杭と、下杭から成りこれを地中に埋設するときは、螺旋状の翼部材が先端に取り付けられた下杭に回転力を与え、上記螺旋状の翼部材により地中に推進する。下杭がある程度の深さまで埋設されると、下杭の上端部に新たな杭材を継ぎ足して、この継ぎ足した杭材に回転力を与えて再び推進を開始する。この作業を杭が支持層に達するまで繰り返し行う。
【0003】
この基礎杭の先端に形成された先端部の形状は、この基礎杭の地中への貫入のし易さや、貫入後の基礎杭の支持力に影響するため、従来多様な形状の先端部が提案されている。
例えば、有底の鋼管の外周に螺旋状の羽根を取り付けた先端部を有する鋼管杭が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された鋼管杭は、有底の鋼管であり、かつ螺旋状の羽根(本願発明では翼部という)が鋼管の外周に固定されているため、鋼管杭の先端部の地面を掘削できない。また、鋼管の径や地盤にもよるが、鋼管の底面に貫入方向に対する土砂の抵抗(貫入抵抗)が非常に大きく、場合によっては施工中に貫入が進行せず、同じ位置で空回りする現象が生じることもある。空回りをしながら少しずつ貫入を進行させても、その鋼管の周りの土砂を螺旋状の羽根がかき乱した状態にするため、貫入後の鋼管杭の支持力が低下する。
【0005】
そこで、さらに鋼管の径が大きく土砂の抵抗も増大するものに対しては、下面に掘削刃を設けた螺旋状の羽根を開端の金属管の端部に形成した基礎杭が用いられる(特許文献2参照)。
この基礎杭を回転させて地中に貫入すると、この螺旋状の羽根に設けられた掘削刃によって地面が掘削されるとともに、掘削土が金属管の中空部に取り込まれるため、貫入時の土砂の抵抗が小さく、スムーズに貫入が進行する。
しかしながら、特許文献2に記載された基礎杭は、貫入が終了したとき、螺旋状の羽根に設けられた掘削刃によって基礎杭の先端部の地面がかき乱された状態になっており、また、基礎杭が完全に開端の金属管で形成されているため、軸方向の土砂に対する抵抗が小さく、十分な軸方向の支持力が得られない虞がある。
【0006】
そこで、上記貫入抵抗の問題と、支持力の問題を同時に解決するため、螺旋状に切断した鋼管杭の先端に螺旋状の羽根を固着した回転圧入鋼管杭が用いられている(特許文献3参照)。
この螺旋状の羽根は、鋼管杭の径方向内側にも延在しており、鋼管杭の先端はこの螺旋状の羽根により半閉塞の状態となっている。
この回転圧入鋼管杭によれば、半閉塞に形成された先端から杭の内部に掘削土を適宜取り込みながら回転貫入することで、貫入時の鋼管杭の先端に対する土砂の抵抗を低減でき、スムーズに地中に鋼管杭を貫入することができると共に、貫入後には鋼管杭の先端に形成された螺旋状の羽根によって、鋼管杭の先端に対する土砂の抵抗を受け、軸方向の支持力も確保することができる。
【0007】
この回転圧入鋼管杭は、鋼管の先端部を螺旋形状になるように切断して、その切断面にその先端面に合致した螺旋状の羽根を溶接することで製造している。しかし、鋼管先端部の切断加工に加え、大きな貫入抵抗を受けるために鋼管より極厚になる羽根部材の製造および羽根部材の鋼管への溶接には多大な労力とコストを要するという問題がある。
【特許文献1】特開昭59−85028号公報
【特許文献2】特開2002−212948号公報
【特許文献3】特開2004−316421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、その目的は、螺旋状の翼部と直管部を一体成型して、溶接作業を不要にし、螺旋状の翼部と直管部との十分な取り付け強度を確保しつつコストを削減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、杭に取り付け可能な先端部材であって、円筒状の直管部と、前記直管部の地底側に設けた螺旋状の翼部を有し、前記直管部と螺旋状翼部とを一体に鋳造したことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載された先端部材において、前記翼部は前記直管部の地底側端部において直管部の内外径方向に延在し、内径方向に延在した翼部は、直管部の内部に所定径の螺旋状開口を形成する幅を有することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載された先端部材において、前記翼部は、前記先端部材を下から平面視したとき翼部の始端と終端との間に所定の間隙を残して前記直管部の地底側端部をほぼ一周するように形成されていることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された先端部材において、前記直管部の前記翼部と反対側の端部近傍に貫通孔が設けられており、前記貫通孔と前記杭に設けた貫通孔に連結具を挿入して連結することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4に記載された先端部材において、前記連結具の先端は、前記先端部材を下から平面視したときの前記翼部の内側端と、ほぼ等しいか、より径方向外側に位置していることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項4又は5に記載された先端部材において、前記連結具は、筒状のスリーブと該筒状のスリーブに挿入されるピンから成り、前記筒状のスリーブは、上記ピンを挿入したときにピンの先端部で拡径する先端部分を有し、前記拡径する先端部分により前記貫通孔から抜け止め規制されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、螺旋状の翼部と直管部を鋳造により一体成型したことにより、従来のように螺旋状の翼部を直管部に溶接することがないから加工工数及びコストの削減ができる。
また、翼部の複雑な形状を鋳造により容易に形成する事が出来ると共に、翼部と直管部とが一体に形成されているため十分な強度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る基礎杭について、添付した図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る基礎杭を示す正面図である。
本実施形態に係る基礎杭1は、図示のように、基礎杭1の地上側(基礎杭1を地中に埋設するときの杭の進行方向の後端側)に位置する上杭10と、地底側(基礎杭1を地中に埋設するときの杭の進行方向の先端側)に位置する下杭40と、下杭40の先端に取り付ける先端部材50と、上杭10と下杭40及び下杭40と先端部材50を連結した状態で固定する連結具70とから成っている。
【0012】
この基礎杭1は、比較的低層のビルディングなどを支持可能な最大径がおよそ30〜70センチ程度のものを想定する。この基礎杭1を埋設するときは、まず、アースオーガなどで基礎杭1を埋設する位置に支持層の深さまで穴を掘削しながらセメントミルクを注入し、掘削土とセメントミルクを混練して地中にソイルセメント柱を形成する。次に、そのソイルセメント柱に先端部材50を取り付けた下杭40を回転貫入していき、下杭40を貫入し終わったら、下杭40を固定して、その上端部に上杭10を継ぎ足して連結具70で固定し、同様に地中に回転貫入させて埋設する。
【0013】
次に、図1に示した基礎杭1を構成する要素である上杭10について説明する。
図2は本実施形態に係る基礎杭1を構成する上杭10を示す図であり、図2Aは上杭10の平面図、図2Bは上杭10の一部を縦断面で示す正面図である。
上杭10は、図2Bに示すように、上杭10上に打設されるコンクリートスラブ等と一体となる鉄筋を取り付けるため上杭10の地上側に一体に設けたフランジ11と、所定長さの直管状の杭本体21と、杭本体21と同径の直管状に形成された下端部23と、フランジ11と杭本体21間をつなぐ連結部31とから成り、これらは溶解した鋳鉄の溶湯を例えば冷却水の中で高速回転する鋳型に流し込み、遠心力を作用させながら鋳造して一体に成型されている。その後、熱処理を行いダクタイル鋳鉄にしたものである。
【0014】
フランジ11は、所定の厚みを有するリング状を成しており、そのフランジ面には、図2Aに示すように、鋳造時に形成した貫通孔12が等間隔に配置されており、この貫通孔12には、図2Bに示すように、端部にねじ溝が形成されたねじ付き鉄筋13が挿入され、フランジ11の両面側からナット14a、14bで、フランジ11を挟むように締めて固定される。なお、鉄筋を施工現場などで自由に配置する場合には、貫通孔12は鋳造によらずドリル等の穿孔手段で適宜形成するように構成してもよい。
【0015】
フランジ11の内径は、杭本体21の内径よりも僅かに大きく形成されており、後述するように、杭本体21の径との間に蓋体受部32が形成されている(図2B左側の断面図参照)。即ち、連結部31の地底側端部と地上側端部の略中間部内周面には蓋体受部32が形成されており、この蓋体受部32には、上杭10上にコンクリートスラブ等を形成するためコンクリートを打設するときに、コンクリートが杭の内部に落下するのを防止する落とし蓋33を設置する。この落とし蓋33は外径が連結部31の地上側の内径とほぼ同一の円板状に形成されている。図2においては、この蓋体受部32は段部状になっているが、これに限らずテーパー状など落とし蓋33が設置できる形状であればよい。
【0016】
連結部31の外周面形状は、この実施形態では図2Cにその断面を拡大して示すように、内周面の蓋体受部32に対応してテーパー面34とその上側に続く大径の円筒面35に形成されており、この外周面形状によって、連結部31は杭本体21に比して肉厚に形成できるため、亀裂若しくは破損が生じ難いだけではなく、上記鉄筋13を介してフランジ11に作用する荷重に抵抗すると共に、杭本体21へスムーズに荷重を伝達することができる。
なお、連結部31の外周面形状は上記実施形態に限定することなく、図2Dに示すように全てテーパー面34で構成しても、或いは図2Eに示すように円筒面35のみで形成してもよい。
【0017】
杭本体21の地底側端部には、下杭40の大径部41に挿入して連結する下端部23(杭本体21と大径部41のオーバーラップする部分を指す)が形成されている。
下端部23の周面には、図2Bに示すように、上杭10と下杭40との連結に用いる後述する連結具70(図5参照)を挿入するための径方向に相対向する貫通孔22が二対(横方向に一対と、紙面奥行き方向に一対)軸方向に所定の間隔で形成されている。ただし、この貫通孔22を形成する位置はこれ以外であってもよい。
なお、この貫通孔22は上杭10を下杭40に挿入した後、ドリルなどの任意の穿孔手段で形成する。または、下端部23を大径部41に挿入したときに大径部41の周面に形成されている貫通孔44と位置整合するよう位置決めした状態で、貫通孔22を予め形成しておいてもよい。
【0018】
以上で説明したように、上杭10は鋳造によるためフランジ11の貫通孔12や、連結部31に形成されている蓋体受部32及び拡径部35、テーパー面34などの複雑な形状や構造も容易に形成することができる。また、上杭10には、フランジ11が一端に形成され、そのフランジ11から連結部31を経てフランジ11より小径の直管状の杭本体21となる形状に構成されているため、工場にて鋳造された後鋳型から取り出すとき、フランジ11側から引き抜くことで上杭10を容易に取り出すことができる。
【0019】
また、フランジ11に対するねじ付き鉄筋13の取り付けは、ねじ付き鉄筋13をフランジの貫通孔12に挿入して、そのねじ溝にナット14a、14bを螺合して固定するだけであるから、溶接を行う場合のようにその品質が天候や技術者の技量に左右されず、常に一定に保つことができる。
【0020】
次に、図1に示した基礎杭1を構成する要素である下杭40について説明する。
図3は下杭40の一部を縦断面で示す正面図である。
下杭40は、図示のように、所定長さの直管状に形成された杭本体43と、杭本体43と同径の直管状に形成された下端部48と、円筒状の大径部41と、この大径部41と杭本体43間をつなぐ連結部42とから成っており、上杭10と同様の鋳造によって一体に成型した後熱処理を行ってダクタイル鋳鉄にしたものである。
また、この下杭40は、基礎杭1上に形成されたコンクリートスラブ等に加わる水平荷重に対しては、図2に示した上杭10に比してその影響は小さいため、その周壁は上杭10の厚みより全体的に薄く形成されている。
【0021】
杭本体43の地上側端部には大径部41が長手方向所定長さで一体に形成されている。大径部41の内径は、上杭10と連結する際に下端部23を嵌合できるよう下端部23の外径よりも僅かに大きなサイズに形成されている。また、大径部41の内径と杭本体43の内径との境界部の段部45は、嵌合される上杭10の下端部23を受け止める支持部となり、大径部41は全体として上杭10に対する接続用の受口を構成している。
大径部41の周面には、上杭10と下杭40との連結に用いる後述する連結具70を挿入するための径方向に相対向する貫通孔44が段部45よりも地上側に二対(横方向に一対と、紙面奥行き方向に一対)軸方向に所定の間隔を有して形成されている。ただし、この貫通孔44を形成する位置はこれ以外であってもよい。
なお、この貫通孔44は下杭40に上杭10を挿入した後、ドリルなどの任意の穿孔手段で形成する。または、下端部23を大径部41に挿入したときに下端部23の周面に形成されている貫通孔22と位置整合するよう位置決めした状態で、貫通孔44を予め形成しておいてもよい。
【0022】
連結部42は、地上側端部が大径部41の地底側端部と一体に形成されており、その外周面はテーパー面となっており、大径部41の内周面には連結部42の内径と大径部41の内径とのサイズの差によって段部45が形成されている。この段部45は、図2に示した上杭10の下端部23を下杭40の大径部41に嵌合したときに、下端部23の地底側端部が当接して、下端部23の位置決めをすると共に、上に連結する上杭からの下向きの荷重を受け止める。
【0023】
杭本体43の地底側端部には、後述する先端部材50の受口54(図4参照)に挿入して連結する下端部48(杭本体43と受口54のオーバーラップする部分を指す)が形成されている。
下端部48の周面には、図3に示すように、下杭40と先端部材50の連結に用いる後述する連結具70を挿入するための径方向に相対向する貫通孔46が二対(横方向に一対と、紙面奥行き方向に一対)軸方向に所定の間隔で形成されている。ただし、この貫通孔46を形成する位置はこれ以外であってもよい。
なお、この貫通孔46は下杭40を先端部材50に挿入した後、ドリルなどの任意の穿孔手段で形成する。または、下端部48を受口54に挿入したときに受口54の周面に形成されている貫通孔55と位置整合するよう位置決めした状態で、貫通孔46を予め形成しておいてもよい。
【0024】
以上で説明したように、下杭40は鋳造により大径部41から連結部42を介して杭本体43へと連続的に一体成形されるため、基礎杭1を構成する各部材との連結に際して別体の連結部材を用いたり、大径部を形成するための例えば拡径などの加工を行なう必要がない。連結部材の製造や加工などを行なわないことで、製造コストを低減することができるとともに安定した品質が得られる。
また、下杭40は大径部41と、連結部42で連結された大径部41より径の小さい杭本体43を形成しているため、工場にて鋳造された後鋳型から取り出すとき、大径部41側から引き抜くことで下杭40を容易に取り出すことができる。
【0025】
次に、図1に示した基礎杭1を構成する要素である先端部材50について説明する。
図4は先端部材50を示す図であり、図4Aは先端部材50の平面図、図4Bは先端部材50の側面図、図4Cは先端部材50の断面図である。
この先端部材50は、図4Bに示すように、円筒状の直管部51と、直管部51の地上側端部に形成された直管状の受口54と、直管部51の地底側端部に形成された螺旋状の翼部52とからなり、上杭10及び下杭40と同様、鋳造して一体に成型した後熱処理を行いダクタイル鋳鉄にしたものである。
【0026】
直管部51の地上側端部には受口54が長手方向所定長さで一体に形成されている。受口54の内径は、直管部51の内径より大きく、かつ下杭40と連結する際に下端部48を嵌合できるよう下端部48の外径よりも僅かに大きなサイズに形成されている。また、直管部51の内径は、下杭40の下端部48の内径とほぼ同一である。
この受口54の内径と直管部51の内径とのサイズ差によって境界部に形成される段部53は、受口54に嵌合される下杭40の下端部48の位置決めをするとともに、上に連結する下杭40からの荷重を受け止める。
【0027】
また、直管部51の周面には、下杭40と先端部材50との連結に用いる後述する連結具70を挿入するための径方向に相対向する貫通孔55が、段部53よりも地上側に二対(横方向に一対と、紙面奥行き方向に一対)軸方向に所定の間隔を有して形成されている。ただし、この貫通孔55を形成する位置はこれ以外であってもよい。
なお、この貫通孔55は先端部材50に下杭40を挿入した後、ドリルなどの任意の穿孔手段で形成する。または、下端部48を受口54に挿入したときに下端部48の周面に形成されている貫通孔46と位置整合するよう位置決めした状態で、貫通孔55を予め形成しておいてもよい。
【0028】
直管部51の地底側端部は螺旋状に形成されている。つまり地上側端部と地底側端部までの軸方向長さが最も短い地上側端部a点(始点)から、地上側端部と地底側端部までの軸方向長さが最も長い地底側端部b点(終点)まで、直管部51の地底側端部が螺旋状に変化するよう形成されている。
【0029】
また、直管部51の地底側端部には翼部52が一体に形成されている。翼部52は、直管部51の径方向の内外方向に延在し、その幅は直管部51の内部を所定径の螺旋状の開口で絞った半閉塞状態にするため、例えば上記内外方向にそれぞれ直管部51の半径の略半分の幅にされており、直管部51の地底側端部に沿って螺旋状に形成されている。
【0030】
以上で説明したように、翼部52が直管部51の地底側端部を半閉塞の状態にしているため、基礎杭1を埋設するときに土砂やソイルセメント(以下、土砂等という)を杭内部に適量取り込みながら貫入して、土砂等の流動を妨げず、貫入時の杭に対する土砂等の抵抗を低減するとともに、施工後の基礎杭1の軸方向に対する支持力を確保することができる。即ち、先端が閉塞した構造に比べて貫入抵抗を低減でき、先端が開放した構造に比べて支持面積が大きいため支持力を確保することができる。
【0031】
さらに、翼部52は、図4Aに示すように、その螺旋の始端52aと終端52b間に平面視僅かな隙間Gを残して直管部51の地底側端部をほぼ一周しているため、図4Bにおいて上記a点とb点とを結ぶ直線は、先端部材50の中心線に対して所定角度を成すように傾斜している。この隙間Gおよび傾斜によって成型後の型抜きが容易になる。
【0032】
次に、基礎杭1を構成する各杭や先端部材を相互に連結する連結具について説明する。
図5は連結具70の拡大断面図である。図5に示すように、連結具70は円筒状のスリーブ71と、このスリーブ71が形成する円筒内に挿入するピン72とから成る。これらのスリーブ71及びピン72はクロムモリブデン鋼などの鋼材によって形成されている。
【0033】
スリーブ71は、既に説明した上杭10などの周面に形成された貫通孔の内径に対応した外径を有する円筒状に形成され、その後端側(ピン72をスリーブ71内に挿入するときの挿入方向の後端側)の外周にフランジ部73が一体に形成されると共に、先端側(ピン72をスリーブ71内に挿入するときの挿入方向の先端側)の内周には、厚みが先端側に向かうにつれて次第に薄くなるテーパー面79により先端が鋭角に形成された環状の突起74が形成されている。
また、スリーブ71の先端には、その周方向に沿った複数の位置において、その軸芯方向に平行なスリット75が、スリーブ71の先端面から所定長さに形成されている。
【0034】
ピン72は、スリーブ71の内径に対応した外径を有する円柱状を成しており、スリーブ71の内部に貫入でき、その後端の外周にフランジ部76が一体に形成されると共に、その先端にはテーパー面77が形成されている。ピン72の外周面において、このテーパー面77から軸芯方向に所定距離を置いた位置に横断面矩形状の環状の溝78が形成されている。
【0035】
図6ないし図8は、この連結具70を用いて上杭10と下杭40とを連結する手順を説明する図である。
図6Aは、各杭に貫通孔を形成した状態を、図6Bは、各杭の貫通孔にスリーブ71を挿入した状態を示している。
図7Aは、貫通孔に挿入されたスリーブ71の内部にピン72を挿入する状態を、図7Bは、スリーブ71にピン72を挿入してスリーブ71の先端を拡径させた状態を示している。
図8Aは、スリーブ71に完全に挿入したピン72に抜け出し力が作用した状態を、図8Bは、溝78に突起74がはまり込んだ状態を示している。
【0036】
まず、図6Aに示すように、下杭40の大径部41に上杭10の下端部23を挿入して、ドリルなどの穿孔手段で下杭40に貫通孔44を、上杭10に貫通孔22を形成する。次に、図6Bに示すように、下杭40の大径部41の貫通孔44の外側からスリーブ71を差し込んで、そのフランジ部73が大径部41の外周面に接触させるまではめ込む。これにより、スリーブ71の先端の突起74やスリット75が形成された部分を下端部23の貫通孔22から上杭10の内部に突出させる。
【0037】
次に、図7Aに示すように、ピン72の先端をスリーブ71の円筒の入口に合わせ、ピン72をスリーブ71の内部に打ち込む。すると、図7Bに示すように、ピン72の先端部がスリーブ71の突起74を径方向の外向きに押し広げるように変形させながら突起74を通過する。このとき、スリーブ71にスリット75が形成されているため、突起74が形成されている部分におけるスリーブ71の変形が容易に行われる。また、前述のように、突起74の先端はテーパー面79に形成されているため、このテーパー面79がピン72の先端に形成されているテーパー面77に当接し、そのテーパー面間の力の伝達により、ピン72のテーパー面77がスリーブ71の先端を容易且つ確実に押し広げる。
このピン72によって押し広げられたスリーブ71の先端には、拡径部80が形成され、この拡径部80によって貫通孔22、44から連結具70が抜け出すことを防止する。
なお、連結具70の長さは、杭の貫入によって連結具70にかかる土砂等の抵抗が低減されるように、ピン72の先端が先端部材50の翼部52の内側端52dよりも径方向外側に位置するように長さを形成することが望ましい。
【0038】
また、貫通孔22、44に挿入された連結具70のピン72に、スリーブ71からの抜け出し力が作用したとき、即ち、図8Aに示すように溝78がスリーブ71から突出している状態のピン72に図中矢印X方向の力が作用したときには、図8Bに示すように、ピン72がスリーブ71に対して後端側に変位するが、その溝78が突起74の位置に到達すると、突起74がスプリングバックして溝78にはまり込む。これにより、スリーブ71からのピン72の抜け出しが完全に防止できる。
なお、ピン72とスリーブ71の長さの関係は、図9に示すように、ピン72をそのフランジ部76がスリーブ71のフランジ部73に当接するまで打ち込んだときに、突起74が溝78にはまるように構成しても差し支えない。
【0039】
次に、この連結具70の先端の位置(ピン72の長さ)について説明する。
図10は下杭40を先端部材50に挿入し、連結具70で連結した状態を示す断面図であり、図10Aは連結具70の先端の位置が翼部52の内側端52dの位置とほぼ等しい状態を、図10Bは連結具70の先端が翼部52の内側端52dの径方向外側に位置した状態を示す。
図10Aに示すように、下杭40の下端部48を先端部材50の受口54に挿入して、ドリルなどの穿孔手段にて貫通孔55、貫通孔46をそれぞれ設け、そこへスリーブ71を挿入し、ピン72をスリーブ71の内部へ打ち込んで下杭40と先端部材50を連結している。
【0040】
既に説明したように、本実施形態に係る基礎杭1を構成する先端部材50は、螺旋状の翼部52が直管部51の地底側端部を半閉塞の状態にしており(図4参照)、基礎杭1を地中に埋設するときは、その半閉塞の地底側端部からソイルセメントを杭の内部に取り込みながら地中に推進する。連結具70を各貫通孔に挿入したときの連結具70の杭内部に突出した部分に杭の内部に取り込まれたソイルセメントが接触すると、それが基礎杭1を地中に推進する際の抵抗になるため、連結具70の杭内部への突出量、即ち連結具70の長さを調整する必要がある。
【0041】
本実施形態では、連結具70の長さは、ピン72の先端の位置が翼部52の内側端52dの位置とほぼ等しくなるように形成されている(図ではピン72の先端が内側端52dよりも僅かに径方向内側に位置している)。即ち、この連結具70の先端の位置は、先端部材50を下から平面視したときの翼部52の内側端52dの位置と、ほぼ等しい位置となっている。
しかし、杭の貫入によって連結具70にかかる土砂等の抵抗が低減されるよう、ピン72の先端が先端部材50の翼部52の内側端52dよりも径方向外側に位置するように連結具70の長さをより短く形成することが望ましい。
【0042】
以上で説明したように、この連結具70は、貫通孔に挿入されたスリーブ71の内部にピン72を打ち込むだけで杭同士を連結一体化することができるため、連結作業に要する時間が短く、かつ、ピン72をスリーブ71の内部に打ち込んでスリーブ71の先端を拡径させると共に、ピン72に抜け出し力が作用したときにはスリーブ71の先端の突起74がピン72の溝78にはまり込むため、スリーブ71及びピン72が杭の貫通孔から抜け出すことがない。
また、連結具70の長さを先端部材50の翼部52に対応して短くすることで、基礎杭1を地中に貫入したときに杭内部に取り込まれる土砂等が連結具70に接触したときの、基礎杭1の回転及び貫入に対する土砂等による抵抗を低減することができる。
【0043】
以上で説明した、上杭10、下杭40、先端部材50及び連結具70から構成された基礎杭1は、複雑な形状部位であっても全体が鋳造によって形成されているため、技術者の技量や天候等によって品質が左右される現場での溶接に加え、工場での溶接作業も不要であるため、基礎杭1全体として、常に一定の品質を保つことができる。
また、現場での連結作業等においては、連結具を挿入する貫通孔を孔あけ加工するだけで、鉄筋を取り付ける貫通孔等他の全ての構造が工場にて形成されているため、現場での作業を最小限にでき、さらに連結具70によって迅速に連結作業が行えるため、現場での施工工数および施工時間を削減することができる。
なお、基礎杭1を形成する材料はダクタイル鋳鉄に限らず、例えばその他の鋳鉄や鋳鋼などであってもよい。
【0044】
本実施形態に係る基礎杭1は、上杭10、下杭40および先端部材50とから形成しているが、これに限らず例えば上杭10と先端部材50、または上杭10と複数の下杭40と先端部材50から形成してもよく、その組み合わせは任意である。したがって基礎杭1の長さを調整して、現場の支持層深さに適合した基礎杭1を形成することができる。
【0045】
以上で説明した基礎杭1は、上杭10、下杭40および先端部材50で構成されているが、さらに先端部材50とほぼ同一形状の中間部材150を下杭140と上杭10との連結部間に介在させて取り付けることにより、基礎杭1の中間部にも螺旋状の翼部を配置できるため、杭埋設時の推進力が増し、施工能率を向上することができるとともに、杭埋設後には鉛直荷重に対して前記翼部が抵抗となり、基礎杭1の鉛直支持力を向上することができる。
【0046】
以下、その構造について説明する。
図11は、中間部材150を下杭140と上杭10との連結部間に介在させる状態を示す図である。
中間部材150の形状は、図11のように、図4に示した先端部材50とほぼ同一であるが、中間部材150の翼部152が直管部151の径方向の外方向にのみ延在して直管部151の内径方向には存在していない。また、直管部151の内径は上杭10と連結する際に下端部23を嵌合できるよう下端部23の外径よりも僅かに大きなサイズに形成されており、直管部151の外径は下杭140と連結する際に大径部141に挿入できるよう大径部141の内径よりも僅かに小さなサイズに形成されている。
その他の構成は、図4に示した先端部材50と同じであり、同様に一体に鋳造されたものである。
【0047】
取り付けに際しては、中間部材150の翼部152を地上側に向けた状態で、その直管部151を下杭140の大径部141に挿入し、さらに、中間部材150の直管部151の内部に上杭10の下端部23を挿入した後、ドリルなどの任意の穿孔手段で各貫通孔144、155、22を形成して、ここに連結具70を挿入することで、上杭10と下杭140との連結部に中間部材150を取り付ける。
【0048】
図12は、中間部材150を下杭140と上杭10との間に介在させた状態を示す断面図であり、図12Aは中間部材150の外周面が直線状の場合を、図12Bは中間部材150の外周面がテーパー状の場合を示している。特に図12Bのように大径部141の内面と中間部材150の外面が地上側に向かって開いた相互補完形状のテーパー形状にすることによって、大径部141の内面と中間部材150の外面が密接し、施工中および施工後における連結部のガタツキの発生を抑制することができる。
【0049】
以上の説明では、上杭10と下杭140との連結部に中間部材150を介在させるとしたが、これに限らず他の基礎杭1を構成する杭または先端部材との連結部に介在してもよく、その組み合わせは任意である。
【0050】
また、既に説明した基礎杭1では、上杭10のフランジ11は鋳造によって鉄筋を取り付ける貫通孔12が予め工場で形成されるため、鉄筋の取り付け位置が予め設定されている。そのため、鉄筋の取り付け位置を変更することは容易ではない。
そこで、従来のように鉄筋をフランジ11の上部に溶接で取り付けられるようにして、鉄筋の取り付け位置の自由度を高めることもできる。
【0051】
図13は、上杭10の杭頭部分を示す図であり、図13Aは上杭10の平面図を、図13Bは断面図を示している。
図13Bに示す上杭10は、フランジ11の上面にフランジ11と同形状の鉄板91が載置され、フランジ11及び鉄板91を挟むようにボルト92とナット93で固定されている。
この鉄板91は、図13Aに示すように、その円周に沿って複数箇所(図では4箇所)のボルト92を挿入するための貫通孔94が設けられている。さらに、この鉄板91の表面には複数本(図では4本)の鉄筋13の下端部が例えばスタッド溶接によって固着されている。
【0052】
以上で説明した基礎杭1は、フランジ11の上面に鉄板91を取り付けることで、鉄板91上であればどこにでも鉄筋13を取り付けることができるため、例えば基礎杭1の施工現場等で急遽鉄筋を取り付ける位置を変更する必要が生じた場合などに迅速な対応をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態に係る基礎杭を示す正面図である。
【図2】基礎杭を構成する上杭を示す図であり、図2Aは上杭の平面図、図2Bは上杭の一部を縦断面で示す正面図、図2Cは上杭の杭頭部の拡大断面図、図2Dは連結部をテーパー面のみで形成した上杭の杭頭部の拡大断面図、図2Eは連結部を円筒面のみで形成した上杭の杭頭部の拡大断面図を示す。
【図3】下杭の一部を縦断面で示す正面図である。
【図4】先端部材を示す図であり、図4Aは先端部材の平面図、図4Bは先端部材の側面図、図4Cは先端部材の断面図である。
【図5】連結具の拡大断面図である。
【図6】連結具を用いて上杭と下杭とを連結する手順を説明する図であり、図6Aは各杭に貫通孔を形成した状態を、図6Bは各杭の貫通孔にスリーブ71を挿入した状態を示している。
【図7】連結具を用いて上杭と下杭とを連結する手順を説明する図であり、図7Aは貫通孔に挿入されたスリーブの内部にピンを挿入する状態を、図7Bはスリーブにピンを挿入してスリーブの先端を拡径させた状態を示している。
【図8】連結具を用いて上杭と下杭とを連結する手順を説明する図であり、図8Aはスリーブに完全に挿入したピンに抜け出し力が作用した状態を、図8Bは溝に突起がはまり込んだ状態を示している。
【図9】ピンの長さを変えた連結具を用いて上杭と下杭とを連結した状態を示す図である。
【図10】下杭を先端部材に挿入し、連結具で連結した状態を示す断面図であり、図10Aは連結具の先端の位置が翼部の内側端の位置とほぼ等しい状態を、図10Bは連結具の先端が翼部の内側端の径方向外側に位置した状態を示す図である。
【図11】中間部材を下杭と上杭との連結部間に介在させる状態を示す斜視図である。
【図12】中間部材を下杭と上杭との連結部間に介在させた状態を示す断面図である。
【図13】上杭の杭頭部分を示す図であり、図13Aは上杭の平面図を、図13Bは断面図を示している。
【符号の説明】
【0054】
1・・・基礎杭、10・・・上杭、11・・・フランジ、12,22,44,46,55,94,144,155・・・貫通孔、13・・・鉄筋、14a,14b・・・ナット、21,43・・・杭本体、23,48・・・下端部、31,42,142・・・連結部、32・・・蓋体受部、45,53・・・段部、33・・・落とし蓋、34・・・テーパー面、35・・・円筒面、40・・・下杭、41,141・・・大径部、50・・・先端部材、51,151・・・直管部、52,152・・・翼部、52a・・・始端、52b・・・終端、52c・・・外側端、52d・・・内側端、70・・・連結具、71・・・スリーブ、72・・・ピン、73・・・フランジ部、74・・・突起、75・・・スリット、76・・・フランジ部、77・・・テーパー面、78・・・溝、79・・・テーパー面、80・・・拡径部、91・・・鉄板、92・・・ボルト、93・・・ナット、140・・・下杭、150・・・中間部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭に取り付け可能な先端部材であって、円筒状の直管部と、前記直管部の地底側に設けた螺旋状の翼部を有し、前記直管部と螺旋状翼部とを一体に鋳造したことを特徴とする先端部材。
【請求項2】
請求項1に記載された先端部材において、
前記翼部は前記直管部の地底側端部において直管部の内外径方向に延在し、内径方向に延在した翼部は、直管部の内部に所定径の螺旋状開口を形成する幅を有することを特徴とする先端部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載された先端部材において、
前記翼部は、前記先端部材を下から平面視したとき翼部の始端と終端との間に所定の間隙を残して前記直管部の地底側端部をほぼ一周するように形成されていることを特徴とする先端部材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された先端部材において、
前記直管部の前記翼部と反対側の端部近傍に貫通孔が設けられており、前記貫通孔と前記杭に設けた貫通孔に連結具を挿入して連結することを特徴とする先端部材。
【請求項5】
請求項4に記載された先端部材において、
前記連結具の先端は、前記先端部材を下から平面視したときの前記翼部の内側端と、ほぼ等しいか、より前記直管部の径方向外側に位置していることを特徴とする先端部材。
【請求項6】
請求項4又は5に記載された先端部材において、
前記連結具は、筒状のスリーブと該筒状のスリーブに挿入されるピンから成り、前記筒状のスリーブは、上記ピンを挿入したときにピンの先端部で拡径する先端部分を有し、前記拡径する先端部分により前記貫通孔から抜け止め規制されることを特徴とする先端部材。
【請求項1】
杭に取り付け可能な先端部材であって、円筒状の直管部と、前記直管部の地底側に設けた螺旋状の翼部を有し、前記直管部と螺旋状翼部とを一体に鋳造したことを特徴とする先端部材。
【請求項2】
請求項1に記載された先端部材において、
前記翼部は前記直管部の地底側端部において直管部の内外径方向に延在し、内径方向に延在した翼部は、直管部の内部に所定径の螺旋状開口を形成する幅を有することを特徴とする先端部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載された先端部材において、
前記翼部は、前記先端部材を下から平面視したとき翼部の始端と終端との間に所定の間隙を残して前記直管部の地底側端部をほぼ一周するように形成されていることを特徴とする先端部材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された先端部材において、
前記直管部の前記翼部と反対側の端部近傍に貫通孔が設けられており、前記貫通孔と前記杭に設けた貫通孔に連結具を挿入して連結することを特徴とする先端部材。
【請求項5】
請求項4に記載された先端部材において、
前記連結具の先端は、前記先端部材を下から平面視したときの前記翼部の内側端と、ほぼ等しいか、より前記直管部の径方向外側に位置していることを特徴とする先端部材。
【請求項6】
請求項4又は5に記載された先端部材において、
前記連結具は、筒状のスリーブと該筒状のスリーブに挿入されるピンから成り、前記筒状のスリーブは、上記ピンを挿入したときにピンの先端部で拡径する先端部分を有し、前記拡径する先端部分により前記貫通孔から抜け止め規制されることを特徴とする先端部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−57692(P2009−57692A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223252(P2007−223252)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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