説明

光コネクタ

【課題】光ファイバが押し込まれても光ファイバの撓み部分が抗張力体と接触せず、かつ、ハウジングの外形状を小さくすることができる光コネクタを提供する。
【解決手段】一端に光接続部を、他端に抗張力体を含む光ケーブル10又は光コード100固定部を有する光コネクタであって、光ケーブル10又は光コード100固定部には、抗張力体4,104を取り付ける抗張力体取付部分14,114と、光ケーブル10又は光コード100の光ファイバ3,103が挿通される挿通穴14f,114fを含む規制部分とが含まれ、光ケーブル10又は光コード100側に位置する挿通穴14f,114fの開口が、接続時に撓む光ファイバ3,103の撓み方向を規制する長穴形状に形成され、この長穴形状の長軸を挟んで、光ファイバ3,103の撓みと干渉しない位置に抗張力体4,104が固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブル又は光コードを接続するための光コネクタに係り、特に、ハウジングの接続時に光ファイバが撓むように構成されている光コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信に用いられる光ファイバは、脆弱であるため、光ファイバの破損等を防止するために、様々な方法による保護が行われている。代表的なものに光コード又は光ケーブルがある。光コードは、光信号を伝送する光ファイバと、この光ファイバの外側部を覆うように配設され、光ファイバに引張負荷が作用しないように機能する抗張力繊維体(抗張力体)および光ファイバと抗張力体を被覆するシースとで構成されている。
従来、光コードを接続するための光コネクタ(例えば、JIS C 5973に制定されるSC形光コネクタ(Single fiber Coupling optical fiber connector))が知られている。これらの光コネクタは、光コード内の光ファイバを固定するフェルール、フェルールを収容するハウジング、フェルールを接続方向前方へ付勢する付勢部材等から構成される。また、光コネクタのハウジングの内部には、光コードの抗張力体が固定される固定部材が設けられている。
【0003】
この固定部材には、光ファイバが挿通される挿通穴が設けられている。上述した抗張力体は、この挿通穴の外側の全体を覆うように固定部材の外周全体に固定され、光ファイバは、抗張力体に囲まれる態様でこの挿通穴に挿入される。挿通穴に通された光ファイバは、光コネクタのハウジングに収納されたフェルールに接続される。このフェルールは、付勢部材によって突き合わせ接続方向前方へ付勢されており、光コネクタを接続したときには、このフェルールが付勢力に抗して押し込まれるようになる。
【0004】
フェルールが突き合わせ接続方向後方へ押し込まれると、フェルールに固定された光ファイバも同様に後方へ移動する。一方、光コードの抗張力体やシースは、固定部材やブーツによって光コネクタのハウジングに固定されているため、光コネクタから後方へ移動することは無い。一般的な光コードでは、抗張力体はシースと光ファイバの間の空間にある程度の余裕をもって疎に充填されているため、光ファイバはシースや抗張力体に対して比較的自由に長手方向に移動することができる。このため移動した光ファイバは光コードの内部に押し戻されることができ、光コネクタの内部で光ファイバが撓みを生じてしまうことはない。
【0005】
ところで、光コードの機械的特性、例えば側圧特性を向上させる目的で、光コード内の抗張力体を密に充填することがある。または、光ファイバの両側に1対の抗張力体を配し、光ファイバと抗張力体を、可撓性を有する合成樹脂製のシースで一体的に被覆した光ケーブルが用いられることがある。このような密な光コードや光ケーブルに光コネクタを取り付けると、密な光コードの場合には抗張力体との摩擦により、光ケーブルの場合にはシースとの密着により光ファイバが光コードや光ケーブルに対して移動することができないため、光コネクタの接続時にフェルールが後方へ押し込まれると、フェルールの後方端部と、光コードまたは光ケーブルの裂き際(シースが切断または分岐されて光ファイバが露出される箇所)との間で光ファイバが撓んでしまう。
【0006】
一般に、光ファイバに撓みを与えると概略正弦半波状の形状となるが、光コネクタのハウジングや抗張力体によって光ファイバの自由な撓みが阻害された場合、小さな湾曲半径で多数の波形状を形成したり、局所的に急激な曲げを生じることがあり、光ファイバの特性に悪影響を与える恐れがある。そのため、光コネクタのハウジングの全長を、光ファイバを緩やかに湾曲させることができる長さ(規定値以上の湾曲半径を確保できる長さ)にして、余長(弛み)を吸収する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3585762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した余長を吸収する技術では、光コネクタの内部(ハウジングや抗張力体によって形成される空間)を大きく確保する必要があり、光コネクタの外形を大きくしたり、全長を長くするなどの必要があった。そのため、光コネクタの接続部のために大きなスペースを必要としていた。
【0009】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、抗張力体が密に配置された光コードや光ケーブル等に取り付けられ、光ファイバの押し戻しによる余長吸収ができない光コネクタにおいて、光ファイバが押し込まれても光ファイバがハウジングや抗張力体によって撓みを阻害されず、かつ、ハウジングの外形状を小さくすることができる光コネクタを提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述課題を解決するため、本発明は、一端に光接続部を、他端に抗張力体を含む光ケーブル又は光コード固定部を有する光コネクタであって、前記光ケーブル又は光コード固定部には、前記抗張力体を取り付ける抗張力体取付部分と、前記光ケーブル又は光コードの光ファイバが挿通される挿通穴を含む規制部分とが含まれ、前記規制部分の前記挿通穴の少なくとも前記他端側の開口部は、前記光コネクタの接続時に生じる前記光ファイバの撓みの方向を規制するように長穴形状に形成され、前記抗張力体は、この長穴形状の長軸を挟んで、前記抗張力体取付部分の前記光ファイバの撓みと干渉しない位置に固定されていることを特徴とする。
【0011】
また、前記光ケーブル又は光コード側に位置し、この光ケーブル又は光コードと固定部材との接続部を被覆するブーツを備え、このブーツには、前記長穴形状に対応し、光ファイバの撓みを逃げるファイバ撓み空間が形成されている。
【0012】
さらに、前記挿通穴は、光ファイバの位置を規制する規制用穴部と、この規制用穴部から前記開口に向けて前記光ファイバの撓みを規制する傾斜面を有する誘導用穴部とを備えるようにしてもよい。
【0013】
さらにまた、前記抗張力体は、前記光ケーブル又は光コードの前記抗張力体を覆うシースとともに前記抗張力体取付部分に固定されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る光コネクタでは、前記光ケーブル又は光コード側に位置する前記挿通穴の開口が、接続時に撓む前記光ファイバの撓み方向を規制する長穴形状に形成され、この長穴形状の長軸を挟んで、前記光ファイバの撓みと干渉しない位置に前記抗張力体が固定されているので、接続時に光ファイバの撓みが抗張力体の存在しない部分に向けて撓むようになり、光ファイバの撓み部分と抗張力体とが干渉することがなく、光ファイバに局所的な曲げが生じるおそれがない。また、抗張力体との干渉を避けるためにハウジングの全長を長く確保する必要がなく、光コネクタの形状を小さくすることができる。そのため、光コネクタの接続部のために大きなスペースを確保する必要がなくなる。また、小型化することで、材料費等のコストを低減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る光ケーブルの断面図である。
【図2】本発明の光コネクタに光ケーブルが取り付けられた状態であって、光ケーブルの端面を断面で示した斜視図である。
【図3】図2の状態からスライダ及びブーツを省略した斜視図である。
【図4】図2の光コネクタの断面平面図である。
【図5】図4の側面断面図である。
【図6】固定部材の斜視図である。
【図7】光ファイバが撓んだ状態を示す平面断面図である。
【図8】挿通穴をR方向から見た矢視図である。
【図9】第2実施形態に係る光コードの断面図である。
【図10】第2実施形態に係る光コネクタを示す側部断面図である。
【図11】光ファイバが撓んだ状態を示す側部断面図である。
【図12】抗張力体、固定部材、及び光ファイバの位置関係を概略示す模式図である。
【図13】(a)はブーツの断面図、(b)はこの断面における抗張力体と光ファイバの位置関係を示す図である。
【図14】第2実施形態の変形例であって、(a)は固定部材の支持部の斜視図、(b)は接続部分の模式図、(c)は固定部材を開口側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、光ケーブル10に使用する場合(第1実施形態)と、光コード100に使用する場合(第2実施形態)とについて説明する。
なお、本明細書では、光ケーブル10及び光コード100を総称して、光ケーブル等という。
【0017】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して本発明に係る第1実施形態を説明する。
図1は、光ケーブル10(例えば、架空ドロップケーブル)の断面図である。
光ケーブル10は、鋼線からなる支持線2、単心の光ファイバ或いはテープファイバ等の多心の光ファイバ3及びテンションメンバ4(抗張力体)が可撓性を有する合成樹脂製のシース5で被覆されている。光ケーブル10は、薄肉部5aでシース5を引き裂くと、支持線2とテンションメンバ4を含む光ファイバ3とに、薄肉部5bでシース5を引き裂くと、光ファイバ3とテンションメンバ4を覆うシース5とに、それぞれ軸方向に沿って分離することができる。
【0018】
図2は、本発明の光コネクタ11に光ケーブル10を取り付けた状態を示す斜視図であって、光ケーブルの端面を断面で示したものである。ここで便宜的に、テンションメンバ4が並んで光コネクタ11に接続される方向に平行な方向をY方向、垂直な方向をX方向と呼ぶ。なお、支持線2は光コネクタ11の手前で切断除去されている。本例では、光コネクタ11として、SC形光コネクタを適用している。図3は、図2の状態からスライダ18およびブーツ16を省略したものである。また、図4は、図2に示す光コネクタの断面平面図、図5はその側面断面図である。さらに、図6は、図2の光コネクタで用いる固定部材14の斜視図である。また、図7は、光ファイバ3が撓んだ状態を示す平面断面図、図8は、固定部材をR方向から見たときの挿通穴14fの開口を示す図である。
なお、図4において示すF方向は、光コネクタ11の突き合わせ接続方向の前方であり、R方向は、突き合わせ接続方向の後方である。
【0019】
光ケーブル10の端部には、図2に示すように、光コネクタ11が取り付けられている。この光コネクタ11は、F方向の前側に、他の光コネクタ11と接続するための光接続部が構成されており、R方向の後側には光ケーブル等を固定するための固定部が構成されている。また、この固定部は、詳細は後述するが、テンションメンバ4を取り付けるための抗張力体取付部と、光ファイバ3が挿通される挿通穴14fを含む規制部分とで構成されている。
【0020】
光コネクタ11は、図2に示すように、光ファイバ3の先端部にフェルール12が取り付けられると共に、フェルール12がプラグフレーム13とこのプラグフレーム13に取り付けられる固定部材14(図3参照)に収容されている。光ケーブル10のテンションメンバ4を覆うシース5は、その端部が2本に分岐され、それぞれ固定部材14と把持部材15によって連結固定される。プラグフレーム13の外側には、光コネクタ11の接続・脱着を補助するスライダ18が被せられている。また、光コネクタ11の後部には、光ケーブル10が容易に屈曲するのを防止し、この連結固定部を保護するためのブーツ16が被着されている。
【0021】
フェルール12は、単心コネクタ用のフェルールで、図2に示すように、ファイバ穴に光ファイバ3の裸ファイバが接着固定されている。
プラグフレーム13は、図2及び図3に示すように、フェルール12を挿着する四角筒形状の部材で、側面にスリット13a(図5参照)が形成されている。
【0022】
固定部材14は、図6に示すように、前方に筒状部14aが、後方に支持部14dが形成されている。筒状部14aには2個のフック14cが形成されている。支持部14dは、図6に示すように、両側に凹部14eが、中央に筒状部14aまで延びる挿通穴14f(図4及び図5参照)が形成された略円筒状の部分で、凹部14eには複数の突起14gが設けられている。このとき、複数の突起14gには、光ケーブル10のシース5との摩擦が増大するように、あや目状の細かな突起を表面に形成してもよい。そして、図4及び図5に示すように、固定部材14とフェルール12との間にはフェルール12を前方Fへ付勢する押しばね17(ここでは、コイルスプリング)が配置されている。
【0023】
把持部材15は、真鍮,軟鋼,アルミニウム等によって楕円形或いは円形の筒体に成形されている。把持部材15は、薄肉部5bで引き裂いて分離されたテンションメンバ4を覆う2本のシース5の各端部を、図4に示すように、固定部材14の支持部14dに連結固定している。
以上のように構成されるコネクタ付き光ケーブル10は、先ず、光ケーブル10を薄肉部5aで引き裂き、支持線2とテンションメンバ4を含む光ファイバ3とに分離し、支持線2を適宜の位置で切断しておく。
【0024】
次に、シース5を薄肉部5bで引き裂いて光ファイバ3とテンションメンバ4を覆うシース5とに分離し、光ファイバ3をブーツ16,把持部材15,固定部材14の挿通穴14f,押しばね17に挿通してから光ファイバ3先端部の被覆を除去して裸ファイバを露出する。そして、露出した裸ファイバの部分をフェルール12のファイバ穴(図示せず)に挿通し、接着剤でフェルール12に接着固定する。このとき、光ファイバ3は、前記裸ファイバを露出してから前記各部品に挿通してもよい。
【0025】
挿通穴14fは、固定部材14を前後方向(図4及び図5における左右方向)に貫通する態様で形成されている。この挿通穴14fは、固定部材14の図4における左側(突き合わせ接続方向の先端側)から順に、押しばね17を組み付けるためのばね用穴部21と、このばね用穴部21の後端に位置し、フェルール12の後方部を収容する穴部21bと、光ファイバ3の外径よりも大きい幅を有する規制用穴部22と、この規制用穴部22のさらに後端から後方Rに向かうに従いテーパ状に広がる誘導用穴部23(図5参照)とで構成されている。
【0026】
規制用穴部22は、光ファイバ3を挿通穴14fに挿通したときに、この部分における光ファイバ3のY方向の位置を規制している。
誘導用穴部23は、図5に示す固定部材14の右側(光ケーブル又は光コード側。突き合わせ接続方向の後端側)に開口を有し、その開口がX方向に延びる長穴形状に形成されている(図6及び図8参照)。この長穴形状の幅寸法は、規制用穴部22の幅とほぼ等しくなっている。すなわち、光ファイバ3を挿通穴14fに挿通したときに、光ファイバ3は、図8における左右方向の位置は規制されるが、上下方向(長穴の長軸方向)には自由に移動(撓み。図7参照)できるようになっている。また、誘導用穴部23は、テーパ状に広がる傾斜面23aを備えている(図7参照)。
【0027】
次に、本第1実施形態に係る光コネクタ11の作用について説明する。
光コネクタ11は、接続前の状態では、フェルール12が押しばね17によって前方Fに付勢されているので、光ファイバ3には撓みは発生しない。そのため、光ファイバ3は、図4,図5,及び図7に実線で示すように、前後方向にほぼ直線上に延在する。
【0028】
一方、光コネクタ11を接続した状態では、フェルール12が後方Rへ押し込まれるので、図7に点線で示すように、光ファイバ3に撓みが発生する。このとき、光ファイバ3は、挿通穴14fの規制用穴部22によって、撓み方向がX方向になるように規制される。すなわち、光ファイバ3は、光ファイバ3のY方向両側に位置するテンションメンバ4およびシース5(図4参照)と干渉することなくX方向に撓むようになる。
【0029】
本発明の実施の形態に係る光コネクタ11によれば、以下の効果を得ることができる。
すなわち、本発明では、開口がX方向に長い長穴形状の誘導用穴部23を設けているので、光ファイバ3の撓みをテンションメンバ4が存在するY方向ではなく、X方向(テンションメンバ4が存在しない方向)に誘導する態様で規制しているので、撓んだ光ファイバ3がテンションメンバ4およびシース5と干渉して自然な撓み形状が阻害され、局所的な曲げが生じるおそれがない。また、分岐されたテンションメンバ4およびシース5の隙間に制限されずに光ファイバの撓みを収容できるので、光コネクタ11の大きさ、長さを縮小することができる。すなわち、光ファイバ3の屈曲半径の限度内で光コネクタ11の長さを短く形成することができる。さらに、誘導穴部23が長穴形状でありY方向に幅が狭いため、光ケーブル10のテンションメンバ4およびシース5を収容する凹部14eをY方向中央寄りに深く形成することが可能となり、支持部14d、ひいては光コネクタ11の大きさを小さく設計することができる。
【0030】
また、誘導用穴部23が傾斜面23aを有しているので、光ファイバ3の撓み部分を最適に逃げる構造とすることができる。すなわち、光ファイバ3の撓みに干渉しない範囲に不必要に大きな穴を形成する必要がないため、固定部材14の強度を適切に保つことができる。
【0031】
なお、本実施例では光ケーブル10のテンションメンバ4がY方向に並ぶ向きで光コネクタ11を取り付けているが、固定部材14の支持部14dを筒状部14aに対して90度回転させた構成とすれば、光コネクタ11に対する光ケーブル10の固定方向を90度変更させることも可能である。
また本実施例ではSC形光コネクタを採用しているが、その他の単心光コネクタ、および多心光コネクタに対しても応用が可能である。
【0032】
(第2実施形態)
以下、図面を参照して本発明に係る第2実施形態を説明する。
図9は、光コード100の断面図である。
光コード100は、図9に示すように、シース105内に収納したケブラー繊維の抗張力体104を光ファイバ103の周囲に配置してなる。特に、本第2実施形態における光コード100は、シース105内に抗張力体104が高密度に収納され、光ファイバ103が周囲の抗張力体104に押さえ込まれて移動しないようになっている。すなわち、シース105内で光ファイバ103が拘束され、移動が許容されていないから、光コード100から引き出された光ファイバ103は、後述するフェルール112が後方へ押し込まれた時に、光ファイバ103に局所的な曲げが生じるようになる。
【0033】
図10は、この光コネクタ111を示す側部断面図であって光コネクタ111を接続する前の状態(突き合わせ接続方向前方へフェルールが付勢されている状態)を示している。また、図11は、図10の状態から、光コネクタ111を接続した状態(突き合わせ接続方向後方へフェルールが押し込まれている状態)を示している。さらに、図12は、抗張力体104、固定部材114、及び光ファイバ103の位置関係を概略示す模式図である。
【0034】
図10及び図11において、符号100は光コード、113はハウジング、112はフェルール、114は固定部材、115は抗張力体104を固定する把持部材、117は押しばね(ここでは、コイルスプリング)、116はブーツである。
光コード100の口出しされた先端から引き出された光ファイバ103(ここでは、光ファイバ単心線)の先端は、図10〜図11に示すように、フェルール112に挿入され、突き合わせ接続可能に成端されている。詳細には、光ファイバ103先端の被覆を除去して露出させた裸ファイバをフェルール112の微細孔に挿入して精密位置決めし、前記裸ファイバ基端部近傍に位置する光ファイバ103先端をフェルール112内に接着等により固定する。
【0035】
また、光コード100の口出しされた先端から引き出された抗張力体104は、図12に示すように、末端が2つの束にまとめられて固定部材114の左右側部で固定されている。この固定方法としては、例えば、固定部材114と把持部材115との間に抗張力体104の束が挿入され、この固定部114と把持部材115とをカシメて固定することができる。このとき、2つの束の末端部分がばらけないように、あらかじめ末端部分を束ねておくようにしてもよい。また、抗張力体104は、従来のように固定部114の全周に亘って固定する場合と比較して、2つの束にして固定している分だけ嵩張るので、その嵩張る分だけ固定部114に逃げ用の溝を形成しておくようにしてもよい。さらには、把持部材115に、この束にした部分をカシメるための金具を別途設けておいて、把持部材115と束にした部分とが確実にカシメられるようにすることもできる。
この抗張力体104は、図10および図11では、紙面に垂直な方向に2分岐され、それぞれ固定部材114と把持部材115の間に挟まれ固定されている。すなわち、抗張力体104は、光ファイバ103の上方及び下方には位置しないように固定部材114に固定されている。
【0036】
光コード100先端は、ハウジング113後端部(図10及び図11の中右側)に固定されたブーツ116をシース105の外側から固定することで、突き合わせ接続方向前方(図10及び図11の中左側)への押し込みが規制されている。固定部材114、把持部材115、および、ブーツ116はいずれも、光コード100を固定する固定手段として機能する。
【0037】
この光コネクタ111では、フェルール112は、固定部材114に反力をとった押しばね117により、突き合わせ接続方向前方へ付勢されており、例えば、この光コネクタ111を別の光コネクタと接続する時には、フェルール112が相手側のフェルールと突き合わせられた時に、押しばね117の弾性変形範囲内で突き合わせ接続方向後方への押し込みが許容され(図11参照)、フェルール同士の突き合わせ力が過剰になることが防止される。また、押し縮められた押しばね117から作用する付勢力により、突き合わせ接続状態のフェルール間に突き合わせ力が与えられ、フェルールとともに突き合わせ接続された光ファイバ間の接続損失が低くなるようにしている。
【0038】
固定部材114には、上述した光ファイバ103を挿通させるための挿通穴114fが形成されている。この挿通穴114fは、突き合わせ接続方向における前後方向(図10及び図11における左右方向)に貫通する態様で形成されている。この挿通穴114fは、固定部材114の左側(突き合わせ接続方向の先端側)から順に、押しばね117を組み付けるためのばね用穴部121と、このばね用穴部121の後端に位置し、フェルール112の後方部を収容する穴部121bと、光ファイバ103の外径よりも少し大きい径を有する規制用穴部122と、この規制用穴部122の後端から後方に向かうに従いテーパ状に広がる誘導用穴部123とで構成されている。
【0039】
規制用穴部122は、光ファイバ103を挿通穴114fに挿通したときに、この部分における光ファイバ103の上下方向及び左右方向の位置を規制している。
誘導用穴部123は、固定部材114の右側(光コード側。突き合わせ接続方向の後端側)に開口を有し、その開口が上下方向に延びる長穴形状に形成されている(詳細は、第1実施形態の図8に示す長穴形状と同じである)。この長穴形状の幅寸法は、規制用穴部122の径とほぼ等しい長さになっている。すなわち、光ファイバ103を挿通穴114fに挿通したときに、光ファイバ103は、左右方向の位置は規制されるが、上下方向(長穴の長軸方向)には自由に移動(撓み。図11及び図12参照)できるようになっている。また、誘導用穴部123は、テーパ状に広がる傾斜面123aを備えている。
【0040】
図13(a)は、ブーツ116を延在方向と直交する面で切断した状態を示す断面図であり、図13(b)は、ブーツ116内部における光ファイバ103と抗張力体104との位置関係を示す断面図である。
図10及び図11に示すように、光コネクタ111の後端部であって、この光コネクタ111と光コード100との接続部分の外側には、この接続部分の全体を覆うようにブーツ116が設けられている。このブーツ116は、この接続部分に大きな屈曲応力が作用しないようにするためのものである。
【0041】
このブーツ116の内部には、図13(a)(及び、図5,7,10,11参照)に示すように、断面略十字形状に形成されたファイバ撓み空間130が形成されている。詳細には、このファイバ撓み空間130は、十字形状の上下に位置する光ファイバ用溝131,132と、十字形状の左右に位置する抗張力体用溝133,134とで構成されている。この光ファイバ用溝131,132の大きさ及び形状は、上述した挿通穴114fの長穴開口の形状と対応するように形成されている。
【0042】
左右に位置する抗張力体用溝133,134には、2つの束にまとめられた抗張力体104がそれぞれ入り込むようになっている。一方、上下に位置する光ファイバ用溝131,132のいずれかには、光コネクタ111の接続時に上下方向に撓む光ファイバ103が入り込むようになっている。図13(b)に示す状態では、光ファイバ103は上側に撓んでおり、上側の光ファイバ用溝132に光ファイバ103が入り込んでいる。すなわち、この光ファイバ用溝131,132でも、光ファイバ103の撓み方向を上下方向に規制すると共に、左右方向(抗張力体が存在する方向)へ光ファイバ103が撓まないように規制している。
【0043】
次に、本第2実施形態に係る光コネクタ111の作用について説明する。
光コネクタ111は、接続前の状態では、フェルール112が前方Fに付勢されているので、光ファイバ103には撓みは発生しない。そのため、光ファイバ103は、図10に示すように、前後方向にほぼ直線上に延在している。
【0044】
一方、光コネクタ111を接続した状態では、フェルール112が後方Rへ押し込まれるので、光ファイバ103に撓みが発生する(図11参照)。このとき、光ファイバ103は、挿通穴114fの誘導用穴部123によって誘導され、撓み方向が上下方向になるように規制される。すなわち、光ファイバ103は、光ファイバ103の左右の両側に位置する抗張力体104(図12参照)と干渉することなく上下方向に撓むようになる。
【0045】
本発明の実施の形態に係る光コネクタ111によれば、以下の効果を得ることができる。
すなわち、本発明では、抗張力体104を2つの束にして固定部材114の左右の両側に固定し、かつ誘導用穴部123を設けているので、左右の抗張力体104が存在する方向ではなく、上下方向(抗張力体104が存在していない方向)に誘導する態様で光ファイバ103の撓み方向を規制しているので、撓んだ光ファイバ103が抗張力体104と干渉して、局所的な曲げが生じるおそれがない。また、抗張力体104と干渉することがないので、この光コネクタ111の大きさ、長さを縮小することができる。すなわち、光ファイバ103の屈曲半径の限度内で光コネクタ111の長さを短く形成することができる。
【0046】
また、誘導用穴部123が傾斜面123aを有しているので、光ファイバ103の撓み部分を最適に逃げる構造とすることができる。すなわち、光ファイバ103の撓みに干渉しない範囲に不必要に大きな穴を形成する必要がないため、固定部材114の強度を適切に保つことができる。
【0047】
以上、本発明の第2実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、図14(a)に示すように、固定部材214の左右の両端部(挿通穴114fの開口の長手方向と直交する方向における両端部)に抗張力体104を固定するための固定溝230を形成することもできる。この固定溝230,230は、固定部材114後方の抗張力体固定部分に形成されており、この固定溝230,230内で抗張力体104を固定することにより、この固定部分が固定部材214の外側に張り出すことがなくなる。そのため、光コネクタ111の半径方向における外形を小さくすることができる。また、抗張力体104を固定部材214の全周に広がらせずに、容易に左右方向に集合させて固定できるという効果も得られる。
【0048】
また、図14(b)に示すように、固定部材114に抗張力体104と共にシース305,305を分岐させて固定するようにしてもよい。
【0049】
さらに、第2実施形態では抗張力体を2つの束に分けて固定部材に固定していたが、2つの束に限定されるものではない。すなわち、図14(c)に示すように、4つの束に抗張力体404を分けて固定部材414に取り付けるようにしてもよい。この場合、光ファイバ103の撓みを上下方向に規制する挿通穴114fの開口の長手方向の延長線上に抗張力体404が存在しないようにする。これにより、光ファイバ103が撓んだときに、光ファイバ103と抗張力体404とが干渉しないようにすることができる。
【符号の説明】
【0050】
2 支持線
3 光ファイバ
4 テンションメンバ(抗張力体)
5 シース
5a 薄肉部
5b 薄肉部
10 光ケーブル
11 光コネクタ
12 フェルール
13 プラグフレーム
13a スリット
14 固定部材
14a 筒状部
14c フック
14d 支持部
14e 凹部
14f 挿通穴
14g 突起
15 把持部材
16 ブーツ
17 押しばね
18 スライダ
21 ばね用穴部
21b 穴部
22 規制用穴部
23 誘導用穴部
23a 傾斜面
100 光コード
103 光ファイバ
104 抗張力体
105 シース
111 光コネクタ
112 フェルール
113 ハウジング
114 固定部材
114f 挿通穴
115 把持部材
116 ブーツ
117 押しばね
118 穴部
122 規制用穴部
123 誘導用穴部
123a 傾斜面
130 ファイバ撓み空間
131,132 光ファイバ用溝
133,134 抗張力体用溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に光接続部を、他端に抗張力体を含む光ケーブル又は光コード固定部を有する光コネクタであって、
前記光ケーブル又は光コード固定部には、前記抗張力体を取り付ける抗張力体取付部分と、前記光ケーブル又は光コードの光ファイバが挿通される挿通穴を含む規制部分とが含まれ、
前記規制部分の前記挿通穴の少なくとも前記他端側の開口部は、前記光コネクタの接続時に生じる前記光ファイバの撓みの方向を規制するように長穴形状に形成され、前記抗張力体は、この長穴形状の長軸を挟んで、前記抗張力体取付部分の前記光ファイバの撓みと干渉しない位置に固定されていることを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記光ケーブル又は光コード側に位置し、この光ケーブル又は光コードと固定部材との接続部を覆うブーツを備え、このブーツには、前記長穴形状に対応し、光ファイバの撓みを収容するファイバ撓み空間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記挿通穴は、前記一端側に光ファイバの位置を規制する規制用穴部と、この規制用穴部から前記他端側の開口部に向けて前記光ファイバの撓みを規制する傾斜面を有する誘導用穴部とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記抗張力体は、前記光ケーブル又は光コードの前記抗張力体を覆うシースとともに前記抗張力体取付部分に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−217416(P2010−217416A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63124(P2009−63124)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】