説明

光コネクタ

【課題】フェルールに内挿固定されている内蔵光ファイバに対して突き合わせ接続する挿入光ファイバの先端面が平坦でなく凹凸が存在していても、内蔵光ファイバと挿入光ファイバとを低損失で光接続できる光コネクタの提供。
【解決手段】内蔵光ファイバ320として、フェルールに内挿固定した光ファイバである内蔵光ファイバ本体32の後端外周に面取り部32bが形成され、前記内蔵光ファイバ本体32の後端面32aに、光透過性の高分子材料からなる屈折率整合材層321が設けられた構成のものを用いている光コネクタを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタに関し、特にフェルールに内挿固定された光ファイバ(内蔵光ファイバ)を有し、前記フェルールを収納するハウジングにその後端側から挿入される別の光ファイバ(挿入光ファイバ)と前記内蔵光ファイバとを突き合わせ接続して、挿入光ファイバの先端に組み立て(取り付け)られる光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ先端への組み立て作業を現場にて行うことができるいわゆる現場組立形光コネクタの一例として、フェルールに内挿固定された短尺の光ファイバ(裸光ファイバ。以下、内蔵光ファイバとも言う)を有し、前記フェルールを収納するハウジングにその後端側から挿入される別の光ファイバ(例えば光ファイバ心線。以下、挿入光ファイバとも言う)と前記内蔵光ファイバとを突き合わせ接続して、挿入光ファイバの先端に組み立てられる構成のものが従来から知られている。
この種の現場組立形光コネクタ(以下、単に光コネクタとも言う)としては、例えば、フェルールの後端側(突き合わせ用の接合端面とは反対の側)にメカニカルスプライス形のクランプ部を具備し、前記内蔵光ファイバのフェルール後側に延出された部分の端部と挿入光ファイバとを突き合わせ接続した接続部を前記クランプ部によって把持固定して光ファイバ同士の接続状態を維持するようにしたもの(例えば特許文献1)、フェルールに形成された微細孔であるファイバ孔内に該ファイバ孔よりも長さが短い前記内蔵光ファイバがその片端(先端)をフェルールの接合端面に露出させて内挿固定されており、前記ファイバ孔にフェルール後端側から挿入された前記挿入光ファイバがファイバ孔内にて前記内蔵光ファイバの後端に突き合わせ接続されるように構成されたもの(例えば特許文献2)が知られている。
また、内蔵光ファイバと挿入光ファイバとの突き合わせ接続部にシリコーン系グリス等の液状の屈折率整合剤を設けて接続損失の低減を図ることも行われている(例えば特許文献2)。
【0003】
挿入光ファイバ先端への現場組立形光コネクタの組み立て作業にあっては、現場にて挿入光ファイバ先端部の被覆除去による裸光ファイバの口出し、裸光ファイバ先端のカットを行った後、この挿入光ファイバを光コネクタの後端からハウジング内に挿入して、その先端の裸光ファイバを光コネクタの内蔵光ファイバと突き合わせる。裸光ファイバのカットは、裸光ファイバの口出し長を所望長さに調整するとともに、裸光ファイバに該裸光ファイバの光軸に垂直の平坦な鏡面状の先端面を形成するものであり、これを実現できる専用のクリーバ(切断機)を用いて行われる(例えば特許文献3)。
【0004】
図16(a)に示すように、従来、現場組立形光コネクタの内蔵光ファイバ110の後端の端面111(フェルールの接合端面に露出させる先端とは反対の後端側の端面。以下、後端面)は、該内蔵光ファイバ110の光軸に垂直の平坦面とされていることが一般的である。挿入光ファイバ先端への光コネクタの組み立て作業にあっては、内蔵光ファイバ110の平坦な後端面111と、挿入光ファイバ先端に口出しされた裸光ファイバ120(以下、挿入側裸光ファイバとも言う)の平坦な先端面121との突き合わせによって光ファイバ同士の光接続が実現される。内蔵光ファイバ110の後端面111及び挿入側裸光ファイバ120の先端面121が平坦であれば、これら光ファイバ110、120のコア部110a、120a同士の突き合わせが可能であり、光ファイバ110、120同士の光接続を確実に実現できる。なお、図16(a)において、符号110bは内蔵光ファイバ110のクラッド部、120bは挿入側裸光ファイバ120のクラッド部である。
また、図16(a)は、内蔵光ファイバ110と挿入側裸光ファイバ120との接続部に屈折率整合剤130を設けた構成を例示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−206688号公報
【特許文献2】特開2006−178105号公報
【特許文献3】特開2003−202425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の現場組立形光コネクタの組み立て作業にあっては、現場での挿入側裸光ファイバ120のカットを正確に行えず、平坦な端面が得られないことがある。この場合、図16(b)に示すように、挿入側裸光ファイバ120の先端の凹凸によって、内蔵光ファイバ110の後端面111とこれに突き当てた挿入側裸光ファイバ120先端との間に空隙140が形成され接続損失が増大することがある。特に、光ファイバ110、120のコア部110a,120a(あるいはモードフィールド径部分)の間に空隙140が形成されると接続損失に与える影響が大きくなる。
また、挿入側裸光ファイバ120の先端面外周に形成された凸部122が内蔵光ファイバ110後端面外周のエッジ部に突き当たったときに、挿入側裸光ファイバ120先端の凸部122及び/又は内蔵光ファイバ110後端面外周のエッジ部に欠けが生じて機械的特性の劣化の原因になることがある。また、欠けによって生じた破片が内蔵光ファイバ110と挿入側裸光ファイバ120との間に挟まって突き合わせ接続の障害になる可能性があった。
【0007】
図16(b)は内蔵光ファイバ110と挿入側裸光ファイバ120とを互いに突き合わせた接続部に屈折率整合剤を設けない場合を示すが、上述のように挿入側裸光ファイバ120の先端の凹凸によって内蔵光ファイバ後端面111と挿入側裸光ファイバ120先端との間に空隙が形成されると、図16(c)に示すように内蔵光ファイバ110に挿入側裸光ファイバ120を突き合わせた接続部にシリコーングリス等の液状屈折率整合剤130を設けても、内蔵光ファイバ110の後端面111と挿入側裸光ファイバ120先端との間に気泡150が残りやすく、かえって接続損失が増大してしまう場合がある。
【0008】
本発明は、前記課題に鑑みて、フェルールに内挿固定されている内蔵光ファイバに対して突き合わせ接続する挿入光ファイバの先端面が平坦でなく凹凸が存在していても、内蔵光ファイバと挿入光ファイバとを低損失で光接続できる光コネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、フェルールと、このフェルールを収納するハウジングと、前記フェルールに内挿固定された光ファイバの前記フェルール先端の接合端面に位置合わせされた先端とは反対の後端面に光透過性の高分子材料からなる屈折率整合材層が設けられた構成の内蔵光ファイバと、この内蔵光ファイバに対して別途前記ハウジングに挿入される光ファイバである挿入光ファイバの先端を突き合わせ接続可能に位置決めするための調心部とを有し、前記フェルールに内挿固定された光ファイバである内蔵光ファイバ本体はその後端の外周に面取り部が形成され、前記屈折率整合材層に突き当てた前記挿入光ファイバが、クッション層として機能する前記屈折率整合材層を介して前記内蔵光ファイバ本体と光接続されることを特徴とする光コネクタを提供する。
第2の発明は、前記屈折率整合材層が、前記内蔵光ファイバ本体の後端面に貼着した合成樹脂製フィルムによって形成されていることを特徴とする第1の発明の光コネクタを提供する。
第3の発明は、前記屈折率整合材層が、前記内蔵光ファイバ本体の後端面への液状高分子材料の塗布あるいは蒸着によって形成された樹脂膜であることを特徴とする第1の発明の光コネクタを提供する。
第4の発明は、前記面取り部が前記内蔵光ファイバ本体の後端面の外縁から前記内蔵光ファイバ本体の外周面にわたって湾曲する湾曲面とされていることを特徴とする第1〜3のいずれかの発明の光コネクタを提供する。
第5の発明は、前記内蔵光ファイバと、この内蔵光ファイバの後端の前記屈折率整合材層に突き合わせた前記挿入光ファイバとを半割りの素子の間にばねの弾性によって挟み込んで前記内蔵光ファイバと前記挿入光ファイバとの突き合わせ接続状態を維持するクランプ部を具備し、このクランプ部の一対の素子の互いに対面する対向面の一方又は両方には、前記内蔵光ファイバと前記挿入光ファイバとを突き合わせ接続可能に調心するための調心溝が形成され、前記調心溝が前記調心部として機能することを特徴とする第1〜4のいずれかの発明の光コネクタを提供する。
第6の発明は、前記フェルールの後側に、スリーブ状のばねの内側に前記半割りの素子を収納した構成の前記クランプ部が組み立てられてなるクランプ部付きフェルールを具備することを特徴とする第5の発明の光コネクタを提供する。
第7の発明は、前記クランプ部の一対の素子の間に前記素子間の開放状態を維持する介挿部材が、前記素子間から抜き去り可能に介挿されていることを特徴とする第5又は6の発明の光コネクタを提供する。
第8の発明は、前記フェルールを貫通するファイバ孔内に該ファイバ孔よりも長さが短い前記内蔵光ファイバ本体が内挿固定されており、前記ファイバ孔にフェルール後端側から挿入された前記挿入光ファイバがファイバ孔内にて前記内蔵光ファイバの後端に突き合わせ接続されるように構成され、前記ファイバ孔の前記内蔵光ファイバから後端側の部分が前記調心部として機能することを特徴とする第1〜4のいずれかの発明の光コネクタを提供する。
第9の発明は、前記ハウジングの前記フェルールの接合端面が配置される前端側とは反対の後端部に、光ファイバを該光ファイバに縦添えした線状の抗張力体とともに樹脂被覆材中に埋め込んで一体化した構成の光ファイバケーブルの端末を保持して前記ハウジングに引き留めるケーブル引き留め部が設けられ、前記挿入光ファイバが前記光ファイバケーブルの光ファイバであり、この光ファイバの光ファイバケーブル端末に口出しされた部分の先端が前記内蔵光ファイバ後端に突き合わせ接続されるようになっていることを特徴とする第1〜8のいずれかの発明の光コネクタを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る光コネクタによれば、ハウジングに挿入した挿入光ファイバの先端を、フェルールに内挿固定されている内蔵光ファイバ後端の屈折率整合材層に突き当てることで、屈折率整合材層を介して内蔵光ファイバ本体と挿入光ファイバとの光接続を実現できる。このため、挿入光ファイバの先端面が平坦でなく凹凸が存在していても、内蔵光ファイバ本体後端面と挿入光ファイバ先端面との間がクッション層としても機能する屈折率整合材層によって埋め込まれることで、低損失での光接続を実現できる。
また、挿入光ファイバ先端外周のエッジ部や挿入光ファイバ先端面に形成された凸部の内蔵光ファイバ本体後端外周部に対する直接突き当てが生じにくく、直接突き当てによる挿入光ファイバ先端及び/又は内蔵光ファイバ本体後端の欠けの防止に有効に寄与する。挿入光ファイバ先端面の外周部に存在する凸部の内蔵光ファイバ本体後端の外周部に対する突き当てが回避されることで、内蔵光ファイバ本体後端面に設けられている屈折率整合材層に対する挿入光ファイバ先端面の押し付け、接合を確実に行えるといった利点もある。
さらに、内蔵光ファイバ後端の屈折率整合材層に突き合わせた挿入光ファイバ先端に内蔵光ファイバ本体後端に対する僅かな傾斜(内蔵光ファイバ本体後端の光軸に対する挿入光ファイバ先端の光軸の傾斜)が生じていたとしても、屈折率整合材層のクッション性によって屈折率整合材層と挿入光ファイバ先端面との間の隙間の形成を防ぐことができ、しかも、全体にわたって光屈折率が一様に揃っている光透過層として機能する屈折率整合材層を介して内蔵光ファイバと挿入光ファイバとの光結合を確実に実現できるといった優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る1実施形態の光コネクタの構造を示す全体図である。
【図2】図1の光コネクタのクランプ部付きフェルールを示す斜視図である。
【図3】図1の光コネクタの内部構造を示す断面図である。
【図4】図2のクランプ部付きフェルールの構成を説明する分解斜視図である。
【図5】図2のクランプ部付きフェルールの各素子の対向面を並べて配置し、その概略構造を示した説明図である。
【図6】図2のクランプ部付きフェルールのクランプ部の断面(調心溝の延在方向に直交する断面)構造を示す図であって、(a)は素子間に介挿部材を割り込ませた状態、(b)は素子間から介挿部材を引き抜いて挿入光ファイバ(詳細には挿入光ファイバの裸光ファイバ)を素子間に把持固定した状態を示す。
【図7】図2のクランプ部付きフェルールに設けられた内蔵光ファイバ後端に対する、挿入光ファイバの裸光ファイバの突き合わせ接続作業を説明する図であって、(a)は突き合わせ前、(b)は突き合わせ状態を示す。
【図8】内蔵光ファイバの屈折率整合材層の形成方法の一例を説明する図である。
【図9】(a)、(b)は、本発明に係る1実施形態の光コネクタであり、光ファイバケーブル端末に組み立て可能な光コネクタの例を示す図である。
【図10】図9の光コネクタを組み立てる対象となる光ファイバケーブルの一例を説明する斜視図である。
【図11】図10の光ファイバケーブル端末に固定される外被把持部材の一例を示す図であり、該外被把持部材を光ファイバケーブル端末に固定した状態を該外被把持部材の蓋体を透視して示した透視図である。
【図12】図11の外被把持部材の構造を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る光コネクタの他の実施形態を説明する断面図である。
【図14】挿入光ファイバ先端に口出しした裸光ファイバの先端をカットするための簡易切断器具の一例(爪切り)を説明する図である。
【図15】本発明に係る光コネクタを挿入光ファイバ先端に取り付けて、ヒートサイクルに対する接続損失変動特性を調べた試験結果を示すグラフである。
【図16】(a)〜(c)は、従来の現場組立形光コネクタの内蔵光ファイバと、該内蔵光ファイバに突き合わせ接続する挿入光ファイバ先端の裸光ファイバの先端面形状との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る一実施形態の光コネクタについて、図面を参照して説明する。
図1、図3に示すように、前記光コネクタ10は、スリーブ状のハウジング20に、フェルール31の後側(前端の接合端面31aとは反対の側。図1において右側)に光ファイバ同士の突き合わせ接続部を把持固定するためのクランプ部33が組み立てられた構成のクランプ部付きフェルール30を収納した構成になっている。
【0013】
前記クランプ部付きフェルール30は、前記フェルール31と、該フェルール31に形成されたファイバ孔31bに内挿固定された光ファイバである内蔵光ファイバ320と、前記内蔵光ファイバ320の後端に前記ハウジング20に別途挿入された別の光ファイバ1(以下、挿入光ファイバとも言う)の先端部を突き合わせ接続(突き合わせによる光接続)した接続部11を把持固定する前記クランプ部33とを具備して構成されている。
【0014】
図5、図7(a)、(b)に示すように、前記内蔵光ファイバ320は、フェルール31のファイバ孔31bに内挿固定された光ファイバ32(ここでは裸光ファイバ。以下、内蔵光ファイバ本体とも言う)の、前記フェルール31の後側に延出された部分の端面(後端面32a)に光透過性の高分子材料からなる屈折率整合材層321を有する構成になっている。前記内蔵光ファイバ本体32は、ファイバ孔31bに内挿された部分を接着剤による接着等によってフェルール31に固定して設けられている。
【0015】
図示例の光コネクタ10のクランプ部付きフェルール30の前記フェルール31(フェルール本体)は、例えばジルコニアセラミックス、ガラス等からなるキャピラリ状の単心用フェルールである。このフェルール31のファイバ孔31bは、該フェルール31の内側を貫通する貫通孔とされている。
このフェルール31としては、例えばSC形光コネクタ(SC形光コネクタ(JIS C 5973に制定されるF04形光コネクタ。SC:Single fiber Coupling optical fiber connector)、MU形光コネクタ(JIS C 5973に制定されるF14形光コネクタ。MU:Miniature-Unit coupling optical fiber connector)等の単心用光コネクタに用いられるフェルールを使用できる。
【0016】
図1〜図3等に示す挿入光ファイバ1はここでは単心の光ファイバ心線であり、その先端部の被覆を除去して裸光ファイバ1a(以下、挿入側裸光ファイバとも言う)を露出させた状態で、ハウジング20の後端(フェルール31の接合端面31aが配置されている前側とは反対側の端部)からハウジング20内に挿入される。そして、この挿入光ファイバ1は、図3、図7(a)、(b)に示すように、ハウジング20後端からクランプ部付きフェルール30のクランプ部33内に挿入した前記裸光ファイバ1aの先端を前記クランプ部33内にて内蔵光ファイバ320後端の屈折率整合材層321(図7(a)、(b)参照)に突き当てて内蔵光ファイバ320の光ファイバ32(内蔵光ファイバ本体)と光接続される。
【0017】
図5等に示すように、内蔵光ファイバ320の光ファイバ32(内蔵光ファイバ本体)は、フェルール31のファイバ孔31bに内挿固定された部分と、フェルール31の後端から突出された部分とを有する。この内蔵光ファイバ本体32のフェルール31後端から突出された部分はクランプ部33内に配置されている。この内蔵光ファイバ本体32は、クランプ部33内に配置された後端から、フェルール31の接合端面31aに位置を揃えて設けられた先端(先端面)まで延在する短尺の光ファイバである。
前記内蔵光ファイバ320は、この内蔵光ファイバ本体32のクランプ部33内に配置されている部分の端面(後端面32a)に前記屈折率整合材層321を設けた構成になっている。
【0018】
本発明に用いる屈折率整合材層321は屈折率整合性を有することが必要である。この場合の屈折率整合性とは、接続部材の屈折率と光ファイバ(挿入光ファイバ1の裸光ファイバ及び内蔵光ファイバ)の屈折率との近接の程度をいう。したがって、本発明に用いる屈折率整合材層321の屈折率は、光ファイバの屈折率に近いものであれば特に限定されないが、フレネル反射の回避による伝送損失の面から、光ファイバとの屈折率の差が±0.1以内であることが好ましく、さらに好ましくは±0.05以内である。なお、挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1a、内蔵光ファイバ本体32の屈折率が異なる場合には、これら光ファイバ同士の屈折率の平均値と屈折率整合材層321の屈折率との差が上記範囲内にあることが望ましい。
【0019】
屈折率整合材層321としては、例えば屈折率整合性及び接着性を有する高分子フィルム(合成樹脂製フィルム)を内蔵光ファイバ本体32の後端面32aに接着したものであるが、これに限定されず、液状高分子材料を塗布(印刷、吹き付け等を含む)した塗膜を固化させた樹脂膜、CVD法(化学気相蒸着。CVD: Chemical Vapor Deposition)又はPVD法(物理気相蒸着。PVD:Physical Vapor Deposition)によって形成した蒸着膜(樹脂膜)等であっても良い。
【0020】
高分子フィルムからなる屈折率整合材層321は、フィルム母材(高分子フィルム)から内蔵光ファイバ本体32の後端面32aに適合するサイズに切り出した小片を内蔵光ファイバ本体32の後端面32aに接着しても良いが、例えば、図8に示すように、内蔵光ファイバ本体32として使用する光ファイバ(裸光ファイバ。図8中、符号32を付記する)を隣り合う光ファイバ32の外周面が互いに接するようにして複数本集合し、同一平面上に配置した各光ファイバ32の長手方向片側の端面(内蔵光ファイバ本体32の後端面32aとして使用する端面)にこれら光ファイバ32の端面を一括して覆うように配置した1枚の高分子フィルムを接着し、フォトリソグラフィ技術によって前記高分子フィルムを各光ファイバ32の端面に対応する部分のみを残し他の部分を除去するようにパターニングして、屈折率整合材層321が設けられた光ファイバを得ることも可能である。
【0021】
また、液状高分子材料を塗布による塗膜形成、蒸着膜の形成も、図8に示すように、内蔵光ファイバ本体32として使用する光ファイバ(裸光ファイバ)を隣り合う光ファイバ32の外周面が互いに接するようにして複数本集合し、各光ファイバ32の端面を同一平面上に配置した状態にて行うことがことが可能である。この場合、塗膜形成、蒸着膜の形成を一度に多数本の光ファイバ32について行うことができる。また、この場合、塗膜形成、蒸着膜の形成は、光ファイバ32の端面を露出させ他の部分を覆うマスクを用いて行うことが好ましい。
【0022】
屈折率整合材層321の材質としては、例えばアクリル系、エポキシ系、ビニル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系、メタクリル系、ナイロン系、ビスフェノール系、ジオール系、ポリイミド系、フッ素化エポキシ系、フッ素化アクリル系などの高分子材料を挙げることができる。
前記高分子フィルムとしては、このような高分子材料からなる粘着材をフィルム状にしたものを使用することができ、中でも耐環境性、接着性の面からは一般的にシリコーン系、アクリル系のものを好適に用いることができる。また、上記材料に架橋剤、添加剤、軟化剤等を添加し、任意に柔軟性を調節してよく、耐水性や耐熱性を付加してもよい。
粘着材をフィルム状にしてなる高分子フィルムの場合は、このフィルムを該フィルムの自己粘着性によって、別途接着剤等を使用することなく光ファイバ端面に貼着することができるため、内蔵光ファイバの所望の光学特性(光伝送損失等)の安定確保の点で好ましい。
【0023】
挿入側裸光ファイバ1a、内蔵光ファイバ本体32は石英系光ファイバであり、前記屈折率整合材層321は石英系光ファイバに比べて格段に硬度が低い軟質層であり、挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1aの先端を突き当てたときに、突き当てによる衝撃力を緩和して、内蔵光ファイバ本体32後端及び挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1a先端の欠け等の損傷を防ぐクッション層として機能する。
屈折率整合材層321の厚さは例えば5〜40μmであるが、これに限定されるものではない。
【0024】
前記挿入光ファイバ1としては、光ファイバ心線、光ファイバ素線といった、裸光ファイバに樹脂被覆材をコーティング(被着)した構成の被覆光ファイバが採用される。被覆光ファイバは、その先端部の被覆を除去して裸光ファイバを露出させた状態でハウジング20にその後端から挿入される。
【0025】
図1、図4に示すように、前記クランプ部付きフェルール30のクランプ部33は、フェルール31の後端部に外挿固定されたリング状のフランジ部34から後側(図1、図3において右側)に延出された延出部である細長形状のベース側素子35と、このベース側素子35に沿って設けられた蓋側素子36とからなる半割り構造の素子部331を、金属板を加工してなる断面C形あるいはコ字形(図示例では断面C形)のスリーブ状のばね37の内側に収納保持した構成になっている。
【0026】
図示例のクランプ部33においてベース側素子35は、前記フランジ部34と一体に形成されたプラスチック製あるいは金属製の部材である。但し、本発明においては、ベース側素子35とフランジ部34とがプラスチック製あるいは金属製の一体成形品となっている構成に限定されず、例えば、金属製のフランジ部34にプラスチック製のベース側素子35がインサートモールド成形、接着固定、嵌合固定等によって一体化された構成になっていても良い。
【0027】
前記蓋側素子36は、第1蓋側素子361と、この第1蓋側素子361を介して前記フェルール31及びフランジ部34とは反対の側(後側)に配置された第2蓋側素子362とによって構成されている。以下、第1蓋側素子361を前側素子、第2蓋側素子362を後側素子とも言う。
【0028】
前記クランプ部33は、前記ばね37の弾性によって、半割り構造の前記素子部331の一対の素子35、36(ベース側素子と蓋側素子)を、その互いに対面する対向面を閉じ合わせる方向に弾性付勢して、前記ばね37の内側に一括保持して構成されている。
なお、図4、図5、図6(a)、(b)中、ベース側素子35の対向面に符号35f、前側素子361の対向面に符号361f、後側素子362の対向面に符号362fを付している。
【0029】
図2、図4に示すように、前記ばね37は、その長手方向の中央部に形成されたスリット37aによって、このスリット37aから前側(フェルール31側)の前側ばね部37b(図4参照)と、前記スリット37aから後側の後側ばね部37c(図4参照)とを有する構成となっている。図2、図4に示すように、ばね37にはその長手方向(中心軸線方向)全長にわたって延在する側部開口部37dが形成されている。前記スリット37aはばね37の前記側部開口部37dに臨む両端から、ばね37において該ばね37内側の素子部331を介して前記側部開口部37dとは反対に位置する部分(背側連続部37e)に向かってばね37の周方向に沿って延在するようにして2本形成されている。ばね37の前側ばね部37bと後側ばね部37cとは、2本のスリット37aの間に確保された背側連続部37eのみを介して繋がっており、それぞれ独立したスリーブ状ばねとして機能する。
【0030】
図2、図3に示すように、蓋側素子36を構成する2つの素子(前側素子361と後側素子362)のうち、後側素子362は、その全体がばね37の後側ばね部37cの内側に収納されて後側ばね部37cの弾性によってベース側素子35の後端部と一括保持されている。一方、前側素子361は、ばね37の前側ばね部37bの内側と後側ばね部37cの内側とに収納されて、ばね37の弾性によってベース側素子35と一括保持されている。
【0031】
図4、図5に示すように、ベース側素子35の対向面35fには、前記内蔵光ファイバ320のフェルール31から後側に延出された部分である後側延出部322と挿入光ファイバ1とを突き合わせ接続可能に調心するための調心溝38aと、前記挿入光ファイバ1の被覆材によって被覆された部分である被覆部1bを収納して位置決めするための被覆部収納溝38bとからなるファイバ位置決め溝38が形成されている。
【0032】
前記調心溝38aは、前記フェルール31を貫通するファイバ孔31bに連続するようにしてベース側素子35の前端(図5においてベース側素子35の左端)からその延在方向(長手方向)に沿って形成されている。内蔵光ファイバ320の後側延出部322は調心溝38aに収納されている。内蔵光ファイバ320の後端(屈折率整合材層321)は、調心溝38aの長手方向中央部(図示例では、長手方向中央から前側(フェルール31側)に若干ずれた位置)に配置されている。
前記被覆部収納溝38bは、前記調心溝38aの後端(フェルール31側の前端とは反対の側の端部)からベース側素子35の延在方向に沿って該ベース側素子35の後端まで延在形成されている。
【0033】
図6(a)、(b)に示すように、図示例の調心溝38aはV溝であるが、これに限定されず例えば丸溝(断面半円状の溝)、U溝等も採用可能である。
【0034】
前記被覆部収納溝38bは、挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1aよりも太い被覆部1bを収納して位置決めするために前記調心溝38aに比べて溝幅及び深さを大きくしてある。
図3、図5に示すように、図示例の光コネクタ10のクランプ部33は、後側素子362の対向面362fにも被覆部収納溝38cが形成された構成になっている。後側素子362の対向面362fに形成された被覆部収納溝38cは、ベース側素子35の被覆部収納溝38bと対応する位置に形成されている。
また、ベース側素子35、蓋側素子36(具体的には後側素子362)の被覆部収納溝38b、38cの前端部は先細りのテーパ状に形成されており、クランプ部33後端からファイバ位置決め溝38に挿入光ファイバ1を挿入する際(後述)に、挿入光ファイバ1先端の裸光ファイバ1aを調心溝38aに円滑に導入することができる。
【0035】
なお、本発明に係る光コネクタのクランプ部としては、ベース側素子35の対向面、後側素子362の対向面の一方又は両方に被覆部収納溝が形成されている構成を採用できる。クランプ部の素子35、352の被覆部収納溝38b、33cは、いずれもクランプ部33の後端に開口するように形成される。また、被覆部収納溝38b、33cとしては、ここではV溝であるが、これに限定されず、例えば丸溝(断面半円状の溝)、U溝、角溝等も採用可能である。
【0036】
図6(a)に示すように、この光コネクタ10のクランプ部33の一対の素子35、36(ベース側素子35と蓋側素子36)間は、該素子35、36に介挿されたプレート状の介挿部材40によって僅かに押し開かれており、挿入光ファイバ1の先端に露出させた裸光ファイバ1a及び挿入光ファイバ1の被覆部1bをクランプ部33後端からファイバ位置決め溝38に挿入(押し込み)可能になっている。このときのクランプ部33の状態を、以下、開放状態と言う。また、図1に示すように、クランプ部33の一対の素子35、36に介挿部材40を割り込ませてある光コネクタ10を、以下、介挿部材付き光コネクタとも言う。
【0037】
前記介挿部材40は、クランプ部33のばね35の弾性に抗して一対の素子35、36間の開放状態を維持する機能を果たす。
図4、図5に示すように、この介挿部材40は、ばね37の側部開口部37dからクランプ部33の一対の素子35、36間、すなわち一対の素子35、36の対向面35f、361f、362f間に割り込ませるようにして挿入されている。また、図1に示すように、この介挿部材40は、光コネクタ10のスリーブ状のハウジング20の外周壁に貫設された介挿部材挿通孔(図示略)に挿入されて前記ハウジング20の外周壁を貫通して設けられ、その先端部40aをクランプ部33の一対の素子35、36間に割り込ませてある。
図6(a)、(b)に示すように、介挿部材40の先端部40aは、クランプ部33の一対の素子35、36間に、素子35のファイバ位置決め溝38に到達しない差し込み深さで挿入されており、ファイバ位置決め溝38への挿入光ファイバ1の挿入作業の支障にならない。
【0038】
また、図1、図4に示すように、この介挿部材40は、蓋側素子36の2つの素子(前側素子361と後側素子362)に対応して、前側素子361とベース側素子35との間、及び後側素子362とベース側素子35との間にそれぞれ介挿されている。つまり、前記介挿部材40は、蓋側素子36の2つの素子361、362に対応して、クランプ部付きフェルール30の前後方向(図1左右方向)において互いに異なる位置にてクランプ部33の一対の素子35、36間に計2本が介挿されている。
図1において、前側素子361とベース側素子35との間に介挿されている介挿部材40に符号41、後側素子362とベース側素子35との間に介挿されている介挿部材4に符号42を付記する。
【0039】
また、図1に示すように、前記介挿部材40は、前記先端部40aとは反対の基端側がハウジング20の外側に突出されており、このハウジング20から外側に突出された部分を、光コネクタ10から介挿部材40を引き抜くための抜き去り操作用の抜き去り操作部として使用できる。
前記介挿部材40としては、クランプ部33のばね35の弾性に抗して一対の素子35、36間の開放状態を維持することができ、かつ一対の素子35、36間からの抜き去り操作が可能な構成であれば良く、プレート状のものに限定されず、例えば柔軟なシート状のものや、ロッド状のものであっても良い。
【0040】
次に、内蔵光ファイバ320についてより具体的に説明する。
図7(a)、(b)に示すように、前記内蔵光ファイバ320の光ファイバ32(内蔵光ファイバ本体)の後端の外周全周には面取り部32bが形成されている。内蔵光ファイバ本体32の後端部は該内蔵光ファイバ本体32後端外周の前記面取り部32bによってテーパ状に形成されている。
【0041】
屈折率整合材層321はテーパ状の内蔵光ファイバ本体32後端部の端面(後端面32a)全体を覆うように形成されている。
また、図7(a)、(b)に例示したように、屈折率整合材層321は、内蔵光ファイバ本体32の後端面32aのみならず、面取り部32bに重なるように形成しても良い。但し、この屈折率整合材層321の形成範囲は、内蔵光ファイバ本体32後端部の外周面の仮想延長(仮想円筒面)から外側に突出しない範囲に限定し、屈折率整合材層321が、調心溝38aによる内蔵光ファイバ320の後側延出部322の調心精度に影響を与えないようにする。
【0042】
図示例の内蔵光ファイバ320の内蔵光ファイバ本体32後端の面取り部32bは前記内蔵光ファイバ本体32の後端面32aの外縁から前記内蔵光ファイバ本体32の外周面にわたって湾曲する湾曲面とされている。この面取り部32bは、例えば、内蔵光ファイバ本体32を作製するための光ファイバ(面取り部32bを形成していない裸光ファイバ)の端部を放電電極間に配置し、放電電極間に発生させたアーク放電のエネルギーにより端面の周囲のエッジ部を加熱溶融して形成(以下、放電加工とも言う)したものである。
この面取り部32bは、内蔵光ファイバ本体32の外径が125μmである場合、その後端面32aから該内蔵光ファイバ本体32の光軸方向に沿って40〜55μmの範囲に形成される。この面取り部32bの、内蔵光ファイバ本体32の光軸に沿う方向における形成範囲を、以下、面取り長(図7(a)において符号Lc)とも言う。
また、面取り部32bは、内蔵光ファイバ本体32のコア部32c(あるいはモードフィールド径部分)には達しないように、内蔵光ファイバ本体32のクラッド部32dのみに形成される。
【0043】
なお、図7(a)、(b)に例示した内蔵光ファイバ320の内蔵光ファイバ本体32の後端面32aは、内蔵光ファイバ本体32後端における光軸に垂直の平坦面になっているが、本発明に係る内蔵光ファイバの構成はこれに限定されず、内蔵光ファイバ本体後端面が湾曲凸面となっている構成も含む。但し、この湾曲凸面の内蔵光ファイバ本体後端面は、面取り部32bに比べて格段に緩やかに湾曲する湾曲面とする。この湾曲凸面の内蔵光ファイバ本体後端面は、アーク放電による面取り部32bの形成時に同時に形成することができる。また、この湾曲凸面は、例えば内蔵光ファイバ本体32の作製に使用する光ファイバ(裸光ファイバ)の端面の研磨等によって形成することも可能である。
【0044】
図3に示すように、内蔵光ファイバ320の後端は、蓋側素子36の前側素子361とベース側素子35との間にてばね37の前側ばね部37bの内側に位置するように配置されている。内蔵光ファイバ320後端に挿入側裸光ファイバ1aを突き合わせ接続したとき、その接続部11は前側ばね部37bの内側に位置することとなる。
【0045】
前記光コネクタ10は現場組立形光コネクタである。
この光コネクタ10を挿入光ファイバ1の先端部に取り付け(組み立て)るには、図1、図6(a)に示すように、クランプ部33の一対の素子35、36間が該素子35、36に割り込ませた介挿部材40によって開放されている状態(すなわち介挿部材付き光コネクタの状態)にて、前記挿入光ファイバ1をハウジング20の後端開口部からクランプ部33の素子35、36間に確保されたファイバ位置決め溝38に挿入し、前記挿入光ファイバ1の先端に予め口出ししておいた裸光ファイバ1a先端を内蔵光ファイバ320の後端(屈折率整合材層321)に突き合わせる。そして、ファイバ位置決め溝38奥側(前端側。フェルール31側)への挿入光ファイバ1の押し込み力によって挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1a先端の内蔵光ファイバ320後端に対する突き合わせ状態を維持したまま、クランプ部33の一対の素子35、36間に割り込ませてある介挿部材40を全て抜き去る(図6(b)参照)。
【0046】
これにより、挿入光ファイバ1のファイバ位置決め溝38に挿入された部分と内蔵光ファイバ320の後側延出部322とが、クランプ部33のばね35の弾性によってクランプ部33の一対の素子35、36間に把持固定され、挿入光ファイバ1のクランプ部33からの引き抜きが規制されることで、挿入光ファイバ1の先端部に光コネクタ10が取り付け(組み立て)られる。
クランプ部33について、挿入光ファイバ1のファイバ位置決め溝38に挿入された部分と内蔵光ファイバ320の後側延出部322とを一対の素子35、36間に把持固定した状態を、以下、ファイバ把持状態とも言う。
【0047】
なお、内蔵光ファイバ320の後側延出部322は、クランプ部33が開放状態にあるとき、内蔵光ファイバ本体32の剛性によって調心溝38aに収納された状態が維持される。このため、挿入側裸光ファイバ1aの突き当ては、挿入光ファイバ1をファイバ位置決め溝38に該ファイバ位置決め溝38のクランプ部33後端の開口部から押し込んでいくだけで簡単に行える。
【0048】
クランプ部33のファイバ位置決め溝38に挿入する挿入光ファイバ1は、現場にてその先端部の被覆除去(裸光ファイバ1aの口出し)及びカットを行ってからファイバ位置決め溝38に挿入する。この挿入光ファイバ1は、裸光ファイバ1aの口出し長L(図1参照)の設定により、図3に示すように、ファイバ位置決め溝38に挿入した裸光ファイバ1aの先端を内蔵光ファイバ320後端に突き当てたときに、裸光ファイバ1aがファイバ位置決め溝38の調心溝38aに収納され、被覆部1bがファイバ位置決め溝38の被覆部収納溝38b、38cに収納される。したがって、挿入側裸光ファイバ1aの先端を内蔵光ファイバ320後端に突き当て、クランプ部33の一対の素子35、36間に割り込ませてある介挿部材40を抜き去りクランプ部33をファイバ把持状態としたときには、挿入光ファイバ1先端の裸光ファイバ1aが内蔵光ファイバ320の後側延出部322とともに前側素子361とベース側素子35との間に把持固定され、挿入光ファイバ1の被覆部1bが後側素子362とベース側素子35との間に把持固定される。
【0049】
挿入光ファイバ1としては、裸光ファイバ1a外径が、内蔵光ファイバ320の光ファイバ32(内蔵光ファイバ本体。ここでは裸光ファイバ)と同じであるものを採用する。
また、蓋側素子36のベース側素子35の対向面351に対面する対向面(ここでは前側素子361の対向面361f。図5参照)の調心溝38aに対面する部分は、高い平面度が確保された平坦面になっている。クランプ部33の一対の素子35、36間に割り込ませてある介挿部材40を抜き去ったときには、挿入光ファイバ1先端の裸光ファイバ1aと内蔵光ファイバ320の後側延出部322とがクランプ部33のばね35の弾性によって調心溝38aに押し付けられ、調心溝38aの調心精度によって精密に位置決め(調心)され互いに光接続(突き合わせ接続)された状態で前側素子361とベース側素子35との間に把持固定される。
【0050】
この光コネクタ10によれば、図7(a)、(b)に示すように、ハウジング20に挿入した挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1aの先端面1cを内蔵光ファイバ320後端の屈折率整合材層321に突き当てることで、屈折率整合材層321を介して内蔵光ファイバ本体32と挿入光ファイバ1との光接続を実現できる。このため、挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1aの先端面1cが平坦でなく凹凸が存在していても、内蔵光ファイバ後端面32aと挿入光ファイバ先端面1cとの間がクッション層としても機能する屈折率整合材層321によって埋め込まれることで、低損失での光接続を実現できる。
挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cの中央部が凹所となっている場合や、前記先端面1cの外周部に凸部1dが存在する場合でも、内蔵光ファイバ本体32及び挿入側裸光ファイバ1aのコア部32c、1e(あるいはモードフィールド径部分)同士の間が軟質の屈折率整合材層321によって埋め込まれ、これにより低損失での光接続を実現できる。
なお、図中符号1fは挿入側裸光ファイバ1aのクラッド部である。
【0051】
また、この光コネクタ10によれば、上述のように、面取り部32bの形成によってテーパ状とされた内蔵光ファイバ本体32の後端部の端面(後端面32a)に設けられている屈折率整合材層321に挿入光ファイバ1の先端面1cを突き当てることになるため、挿入光ファイバ1先端外周のエッジ部や挿入光ファイバ先端面1cに形成された凸部の内蔵光ファイバ外周部に対する直接突き当てが生じにくい。このため、挿入光ファイバ1先端や内蔵光ファイバ本体32後端の欠けが生じにくい。
【0052】
仮に挿入光ファイバ1先端の凸部が内蔵光ファイバ本体32後端の面取り部32bに当接して挿入光ファイバ1及び/又は内蔵光ファイバ本体32に欠けが生じたとしても、挿入光ファイバ1先端の凸部の内蔵光ファイバ本体32後端に対する当接位置は屈折率整合材層321と挿入光ファイバ1先端との接合界面からずれた所に位置するため、欠けによって生じた破片が屈折率整合材層321と挿入光ファイバ1先端との間に挟み込まれるといった不都合が生じにくい。したがって、破片の挟み込みによる屈折率整合材層321と挿入光ファイバ1先端との間の空隙形成の防止に有利である。
【0053】
また、上述のように、面取り部32bの形成によってテーパ状とされた内蔵光ファイバ本体32の後端部の端面(後端面32a)に屈折率整合材層321が設けられている構成であれば、例えば図7(a)、(b)に示すように、挿入光ファイバ先端面1cの外周部に凸部1dが存在する場合であっても、この凸部1dの挿入光ファイバ先端面1c中央部からの突出寸法が屈折率整合材層321の厚みよりも小さければ、この凸部1dが内蔵光ファイバ本体32後端外周の面取り部32bに直接当接することはなく、屈折率整合材層321に対する挿入光ファイバ先端面1cの押し付け、接合を確実に行える。前記凸部1dが内蔵光ファイバ本体32後端外周の面取り部32bに直接当接しない限り、屈折率整合材層321に対する挿入光ファイバ先端面1cの押し付け、接合を確実に行える。
【0054】
面取り部32bの形成によってテーパ状とされた内蔵光ファイバ本体32の後端部の端面(後端面32a)に屈折率整合材層321が設けられている構成は、屈折率整合材層321の厚みと内蔵光ファイバ本体32後端外周の面取り部32bとが挿入光ファイバ先端面1cの外周部に存在する凸部1dの内蔵光ファイバ本体32に対する直接当接の回避に有効に寄与する構成であり、例えば屈折率整合材層321が存在せず面取り部32bによってテーパ状とされた内蔵光ファイバ本体32の後端部の端面(後端面32a)に挿入側裸光ファイバ1a先端面が直接突き合わせ接続される構成に比べて、挿入光ファイバ先端面1c外周部の凸部1dの内蔵光ファイバ本体32に対する直接当接が生じにくく、この直接当接の回避の点で有利である。
【0055】
また、本発明によれば、内蔵光ファイバ本体32後端の屈折率整合材層321に突き合わせた挿入光ファイバ1先端に内蔵光ファイバ本体32後端に対する僅かな傾斜が生じていたとしても、屈折率整合材層321のクッション性によって屈折率整合材層321に対する挿入光ファイバ先端面1cの接合状態を確保することができる。そして、屈折率整合材層321がその全体にわたって光屈折率が一様に揃っている光透過層として機能することで、この屈折率整合材層321を介して内蔵光ファイバ本体32と挿入光ファイバ1(具体的には裸光ファイバ1a)との光結合を確実に実現できる。
【0056】
また、この光コネクタ10によれば、挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1aの先端面1cを内蔵光ファイバ320後端の屈折率整合材層321に突き当ててクランプ部33から介挿部材40を抜き去り、クランプ部33をファイバ把持状態としたときに、例えば挿入側裸光ファイバ1a自体の曲げ癖や内蔵光ファイバ320後端に対する突き当て時の突き当て力に起因する残存撓み等によって挿入側裸光ファイバ1aに調心溝38aからの微小な浮き上がり(内蔵光ファイバ本体32と挿入側裸光ファイバ1aとの光接続が可能な充分に可能な範囲の微小な浮き上がり)が生じている場合であっても、屈折率整合材層321のクッション性(柔軟性)によって経時的に挿入側裸光ファイバ1aの調心溝38aからの浮き上がりが解消され、可及的に高い調心精度を確保できる。
【0057】
内蔵光ファイバ320後端の屈折率整合材層321に挿入側裸光ファイバ1a先端を突き当てる構成であれば、屈折率整合材層321の変形によって内蔵光ファイバ本体32後端に対する挿入側光ファイバ1a先端の変位が容易に生じる。例えば屈折率整合材層321を省略して内蔵光ファイバ本体32の後端部の端面(後端面32a)に挿入側裸光ファイバ1a先端面を直接突き合わせ接続した場合に比べて、クランプ部33をファイバ把持状態にした後の挿入側裸光ファイバ1aの可及的な調心進行を確実に実現できる。
【0058】
また、上述のように、屈折率整合材層321を省略して内蔵光ファイバ本体32の後端面32aに挿入側裸光ファイバ1a先端面を直接突き合わせ接続した場合は、挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cに存在する凸部が面取り部32bに当接していると、内蔵光ファイバ本体32後端に対する挿入側光ファイバ1a先端の変位が不可能になるケースがあるなど、挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cに存在する凸部が挿入側裸光ファイバ1a先端の変位に与える影響が大きい。これに対して、本発明のように、内蔵光ファイバ本体32後端に屈折率整合材層321が設けられている内蔵光ファイバ320を採用した構成であれば、挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cに凸部が存在していても、この凸部の内蔵光ファイバ本体32に対する直接当接が生じていない限り、内蔵光ファイバ本体32後端に対する挿入側光ファイバ1a先端の変位が容易であり、クランプ部33をファイバ把持状態にした後の挿入側裸光ファイバ1aの調心進行を実現する点で有利である。
【0059】
(ケーブル引き留め部を有する光コネクタの例)
本発明に係る光コネクタとしては、上述の実施形態のように、光ファイバ心線あるいは光ファイバ素線といった被覆光ファイバである挿入光ファイバ1の先端部に組み立てられる構成のものに限定されず、例えば図9(a)、(b)に示すように、クランプ部付きフェルール30をスリーブ状のハウジング511に収納してなる光コネクタ本体51の後端側(図9(a)、(b)右側)に、光ファイバケーブル2端末を引き留めるためのケーブル引き留め部52を有し、光ファイバケーブル2端末に組み立てられる構成のもの(光コネクタ50)も採用可能である。
【0060】
図10に示すように前記光ファイバケーブル2は、光ファイバ2aを該光ファイバ2aに縦添えした線状の抗張力体2bとともに樹脂被覆材2c(以下、外被とも言う)中に埋め込んで一体化した構成の断面略長方形の光ファイバケーブルであり、光ドロップケーブル、光インドアケーブル等として用いられるものである。
前記光ファイバ2aは光ファイバケーブル2の断面中央部に配置され、前記抗張力体2bは光ファイバ2aから光ファイバケーブル2の断面長手方向両側に離隔した位置に配置されている。前記光ファイバ2aは、例えば光ファイバ心線、光ファイバ素線といった被覆光ファイバである。
【0061】
前記光ファイバケーブル2の端末に前記光コネクタ50を組み立てる(取り付ける)には、まず、図11、図12に示すように、光ファイバ2aを口出し済みの光ファイバケーブル2の端末に、光ファイバケーブル2を嵌め込んで固定するためのケーブル嵌め込み溝61aを具備する外被把持部材60を固定する。
図11、図12に例示した前記外被把持部材60は、プラスチック製の一体成形品であり、前記ケーブル嵌め込み溝61aが形成された把持部材本体61と、この把持部材本体61にヒンジ部として機能する薄肉部63を介して回転可能に連結された蓋体62とを具備している。前記蓋体62は、把持部材本体61は前記ケーブル嵌め込み溝61aを介して両側の側壁部61b、61cが前記ケーブル嵌め込み溝61aの溝底を形成する底板部61d上に互いに並行に突設された断面コ字状の部材となっている。ケーブル嵌め込み溝61aの長手方向両端は外被把持部材60の外面に開口されている。
【0062】
図示例の外被把持部材60の蓋体62はL字板状になっており、一対の側壁部61b、61cの片方(図示例では符号61bの側壁部。以下、第1側壁部とも言う)の突端に前記薄肉部63を介して把持部材本体61に回転可能に連結されている。そして、この蓋体62は、前記把持部材本体61に対して閉じたときに、前記薄肉部63から連続する第1蓋板部62aが側壁部61b、61cの突端と該突端間のケーブル嵌め込み溝61aの開口部とを覆い、前記第1蓋板部62aの前記薄肉部63とは反対の端部に垂直に突設された第2蓋板部62bが前記把持部材本体61の前記第1側壁部61bにケーブル嵌め込み溝61aを介して対面する第2側壁部61cのケーブル嵌め込み溝61aとは反対側の側面(以下、外面とも言う)に重ね合わされる。
【0063】
前記外被把持部材60を光ファイバケーブル2端末に固定するには、把持部材本体61に対して蓋体62を開いた状態にて、光ファイバケーブル2端末を前記ケーブル嵌め込み溝61aに嵌め込んだ後、蓋体62を把持部材本体61に閉じ合わせる。ここで、蓋体62は、第2蓋板部62bに形成されている係止用開口部62cに把持部材本体61の第2側壁部61c外面に突設されている係止爪61eを入り込ませることで前記係止爪61eによって前記第2側壁部61cに係止し、前記把持部材本体61に対する開放を規制する。これにより、外被把持部材60が光ファイバケーブル2端末を囲繞するようにして光ファイバケーブル2に取り付けられ、光ファイバケーブル2端末に口出しされた前記光ファイバ2aが、外被把持部材60から外側に延出された状態となる。
【0064】
光ファイバケーブル2端末を前記ケーブル嵌め込み溝61aに嵌め込むと、把持部材本体61の一対の側壁部61b、61cのケーブル嵌め込み溝61aに臨む面(内面)にそれぞれ複数突設されている突爪61fが光ファイバケーブル2の外被2cに食い込み、一対の側壁部61b、61cの間に光ファイバケーブル2端末が把持固定される。
また、上述のように、把持部材本体61の第2側壁部61c外面の係止爪61eによってL字板状の前記蓋体62を係止して把持部材本体61に対する閉じ合わせ状態を維持することで、把持部材本体61の一対の側壁部61b、61cの突端間の離隔、及び一対の側壁部61b、61cの突端間からのケーブル嵌め込み溝61aからの離脱を確実に防ぐことができ、外把持部材60の光ファイバケーブル2端末に対する固定状態を安定に保つことができる。
【0065】
光ファイバケーブル2端末への外被把持部材60の固定を完了したら、次いで、光ファイバケーブル2端末から延出する前記光ファイバ2aを、前記光コネクタ本体51のハウジング511後端の開口部(後端開口部513)からハウジング511内に送り込んで、予め裸光ファイバ2a1を口出ししておいた前記光ファイバ2a先端をクランプ部付きフェルール30のクランプ部33の素子部31のファイバ位置決め溝38(図5参照)に挿入し、前記裸光ファイバ2a1先端を調心溝38aに沿って送り込んで内蔵光ファイバ320後端の屈折率整合材層321に突き合わせる。この作業は、図9(a)に示すように、前記光コネクタ本体51のハウジング511の後端部に枢着されている前記引き留めカバー522を、前記ハウジング511の後端部に該ハウジング511から後方へ延出するように突設された台部521に対して開いた状態にて行う。
光ファイバケーブル2の前記光ファイバ2aは本発明に係る挿入光ファイバとして機能する。
【0066】
光コネクタ本体51のクランプ部付きフェルール30のクランプ部33の素子部331は、素子35、36間に介挿された介挿部材40の先端部40aによって、光ファイバケーブル2の光ファイバ2aの挿入が可能な開放状態とされている。介挿部材40は、蓋側素子36を構成する2部材(前側素子361,後側素子362)に対応して、素子部331の2箇所(介挿部材41、42)に介挿されている。
前記介挿部材40は、前記先端部40aとは反対の基端側がハウジング511に形成されている介挿部材挿通孔(図示略)からハウジング511の外側に突出されており、このハウジング511から外側に突出された部分を、光コネクタ50から介挿部材40を引き抜くための抜き去り操作用の抜き去り操作部として使用できる。
【0067】
光コネクタ本体51のクランプ部付きフェルール30の素子部311のファイバ位置決め溝38に沿わせるようにして素子35、36間に挿入した前記光ファイバ2a先端の内蔵光ファイバ320後端に対する突き合わせが完了したら、図9(b)に示すように、前記台部521に対して前記引き留めカバー522を閉じる。これにより、引き留めカバー522と前記台部521とによって外被把持部材60を収納する把持部材収納ケース54が組み立てられ、光コネクタ本体51に対して光ファイバケーブル2端末を引き留めることができる。
前記引き留めカバー522、台部521は、この光コネクタ50のケーブル引き留め部52を構成する。
【0068】
前記引き留めカバー522は、台部521上に設置された外被把持部材60上を覆う天板部522aと、前記外被把持部材60の後側に配置される後板部522bとを具備しており、前記把持部材収納ケース54内に外被把持部材60を収納したときには、外被把持部材60はコネクタ前後方向において光コネクタ本体51のハウジング511後端と前記後板部522bとの間に、コネクタ前後方向の移動を規制あるいは微動を許容して配置される。
また、外被把持部材60から後側へ延出する光ファイバケーブル2は、前記後板部522bに形成された切り欠き状のケーブル挿通口522cに通された状態で把持部材収納ケース54から後側へ延出された状態となる。
【0069】
把持部材収納ケース54を組み立てて外被把持部材60を収納したら、クランプ部付きフェルール30のクランプ部33の素子35、36間に介挿されている介挿部材40を素子部311から引き抜く。これにより、クランプ部付きフェルール30の内蔵光ファイバ320後端と光ファイバケーブル2の光ファイバ2aとの突き合わせ状態が維持され、光ファイバケーブル2端末に対する光コネクタ50の組み立てが完了する。
【0070】
また、この光コネクタ50の組み立ては、外被把持部材60を把持部材収納ケース54に収納したときに、クランプ部付きフェルール30の後端と光ファイバケーブル2端末との間にて光ファイバ2aに若干の撓みが形成されるように、光ファイバケーブル2の光ファイバ2aの口出し長を設定して行い、光ファイバ2a自体の弾性によって、クランプ部付きフェルール30の内蔵光ファイバ320に対する光ファイバ2aの突き当て力が与えられるようにする。
クランプ部付きフェルール30のクランプ部33の素子35、36間に介挿されている介挿部材40の引き抜きは、内蔵光ファイバ320と光ファイバ2a先端の裸光ファイバ2a1(以下、挿入側裸光ファイバとも言う)との間に前記突き当て力が与えられた状態で行われるため、前記挿入側裸光ファイバ2a1は内蔵光ファイバ320後端の屈折率整合材層321に対する突き合わせ状態を保ったまま、クランプ部33の素子35、36間に把持固定されることとなる。光ファイバケーブル2の光ファイバ2a(具体的には挿入側裸光ファイバ2a1)は、内蔵光ファイバ320後端の屈折率整合材層321を介して内蔵光ファイバ本体32と光接続されるので、挿入側裸光ファイバ2a1先端面に凹凸が存在していても、内蔵光ファイバ320に対する突き合わせ接続、内蔵光ファイバ本体32との光接続を確実に実現できる。
【0071】
(別実施形態)
図13は、本発明に係る他の実施形態の光コネクタ70を示す。
この光コネクタ70は、フェルール71として、該フェルール71を貫通するファイバ孔71a内に該ファイバ孔71aよりも長さが短い内蔵光ファイバ320Aを、その長手方向片端(先端)が前記フェルール71先端の接合端面71bに揃うようにして内挿固定された構成のものを採用し、このフェルール71をスリーブ状のハウジング72に収納したものである。
【0072】
既述のように、挿入光ファイバ1は、例えば光ファイバ心線、光ファイバ素線といった被覆光ファイバである。また、この挿入光ファイバ1としては、光ファイバケーブル2端末に口出しした光ファイバ(被覆光ファイバ)であっても良い。
この光コネクタ70は、前記フェルール71の接合端面71bが配置されている前記ハウジング72の前端側とは反対の後端側からハウジング72内に前記挿入光ファイバ1を挿入できる。そして、前記挿入光ファイバ1の先端の被覆を除去して露出させた裸光ファイバ1aを、フェルール71の後端側からファイバ孔71aに挿入して、内蔵光ファイバ320A後端の屈折率整合材層321に突き当て状態とすることで、内蔵光ファイバ320Aに突き合わせ接続することができるようになっている。
【0073】
この光コネクタ70の場合、フェルール71のファイバ孔71a自体が、内蔵光ファイバ320Aに対して、挿入側裸光ファイバ1aを突き合わせ接続可能に調心する調心部として機能する。前記ファイバ孔71aには、内蔵光ファイバ320Aから後端側に、前記挿入側裸光ファイバ1aを調心するための空の部分(調心部71c)が確保されている。
内蔵光ファイバ320Aは、ファイバ孔71aよりも長さが短く、その全長がファイバ孔71a内に内挿固定されていること以外は、既述の内蔵光ファイバ320との構成の違いは無く、同様の構成になっている。
【0074】
(検証試験1)
本発明者は、挿入光ファイバとして単心の光ファイバ心線を用い、図14に示すようにこの挿入光ファイバ先端に口出しした裸光ファイバ1a先端のカットに爪切り91を用いてカット時の端面不良を故意に形成したサンプル(以下、第1供試光ファイバとも言う)と、裸光ファイバ先端のカットをクリーバを用いて行ったサンプル(以下、第2供試光ファイバとも言う)とを作製し、これら供試光ファイバ先端に図1、図2等に例示した光コネクタ10を組み立て光学特性の評価(接続損失特性の比較)を実施した。
【0075】
第1、第2供試光ファイバの作製に使用した光ファイバ心線の裸光ファイバは、径125μmの石英系シングルモード光ファイバである。
また、光コネクタ10のクランプ部付きフェルール30の内蔵光ファイバ320は、内蔵光ファイバ本体32として径125μmの石英系シングルモード光ファイバを用い、この内蔵光ファイバ本体32の後端面32aに屈折率整合フィルムを貼着して屈折率整合材層321を設けたものを使用した。内蔵光ファイバ本体32は、該内蔵光ファイバ本体32を作製するための裸光ファイバの端面外周に放電加工により面取り部32bを形成したものである。
屈折率整合フィルムは、屈折率整合性を有する高分子フィルムであり、巴川製紙所製 FW2L−30−EF(商標)からなる自己接着性を有するものを使用した。前記屈折率整合フィルムのフィルム厚は5〜40μm、挿入損失は1dB以下である。
【0076】
試験は、第1、第2供試光ファイバをそれぞれ10本用意し、各供試光ファイバについて光コネクタ10の組み立てを行い、挿入光ファイバに波長1310nm、1550nmの2種類を試験光を送入して各波長について接続損失を計測した。
その結果を表1に纏めて示す。
なお、表1において、「爪切り」は挿入光ファイバとして第1供試光ファイバを用いた場合、「高精度クリーバ」は挿入光ファイバとして第2供試光ファイバを用いた場合、「損失」は接続損失を指す。
【0077】
【表1】

【0078】
表1に示すように、試験光波長1310nm、1550nmのいずれについても、裸光ファイバのカットに爪切りを使用した第1供試光ファイバを用いて光コネクタの組み立てを行った場合に、第2供試光ファイバを用いた場合と遜色のない接続損失特性が得られることを確認できた。
【0079】
(検証試験2)
第1、第2供試光ファイバ先端に光コネクタを組み立てた供試体(コネクタ付き光ファイバ)について、ヒートサイクル試験を行った。このヒートサイクル試験では、供試体を試験室内に収納し、試験室内部の温度(気温)を−35℃〜75℃の範囲で変化させ、供試体の接続損失変動を調べた。試験室内部の温度は、常温(ここでは25℃)から75℃への昇温、75℃から常温への降温、常温から−35℃への降温、−35℃から常温への昇温、常温から75℃への昇温、をこの順でそれぞれ1時間の所要時間を以て変化させた。つまり、常温から75℃まで昇温した後−35℃まで降温し、その後、再び75℃まで昇温させた。また、75℃、−35℃での保持時間、75℃から−35℃への降温途中及び−35℃から75℃への昇温途中の常温での保持時間をそれぞれ1時間確保し、合計12時間の試験を行った。
【0080】
前記ヒートサイクル試験の結果を図15に示す。なお、図15において、「サンプル1」は第1供試光ファイバを用いて組み立てた供試体(以下、第1供試体とも言う)、「サンプル2」は第2供試光ファイバを用いて組み立てた供試体(以下、第2供試体とも言う)を指す。
図15を参照して判るように、第2供試体は、試験室内の温度変化に対する接続損失の変動が殆ど見られなかった。一方、第1供試体は、第2供試体に比べて接続損失の変動が若干大きい温度域(−35℃)が存在するものの、当該温度域における接続損失の変動幅は0.02dB程度の非常に狭い範囲であり、第1供試体と比べて遜色のない特性が得られることを確認できた。
【0081】
第1供試体について0.02dB程度の変動幅での接続損失の変動が現れたのは試験室内部の温度が−35℃付近にあるときのみであった。この点はさらなる検証を要するものの、ひとつの推察として屈折率整合フィルムの形成樹脂の低温脆性が考えられる。この推察に従えば、屈折率整合フィルムとしてその形成樹脂の脆化温度が低いものを採用することで、低温環境下での接続損失の変動を一層小さくできるものと考えられる。
【0082】
検証試験1、2の結果から、第1供試体は、第1供試体と比べて遜色のない特性が得られることを確認できた。
本発明に係る光コネクタにあっては、爪切り等の簡易な切断器具を用いて挿入光ファイバの裸光ファイバ先端のカットを行っても、専用のクリーバを用いた場合とほぼ同等の接続損失特性(内蔵光ファイバと挿入光ファイバとを突き合わせ接続した接続部の接続損失特性)を確保できるため、現場への専用クリーバの搬入を省略することが可能となる。また、挿入光ファイバ先端に口出しした裸光ファイバ先端のカット後の先端面に凹凸が存在していても良好な接続損失特性を容易に確保できるため、裸光ファイバのカット失敗に起因するコネクタ組み立て作業のやり直しを少なくすることができるといった利点もある。
【0083】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、その主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、クランプ部付きフェルールのクランプ部の素子部は、上述のように、フェルール31に固定のベース側素子35と、前側素子361、後側素子362の2部材からなる蓋側素子36とによって構成されるものに限定されず、蓋側素子として1部材からなるものを採用することも可能である。
また、調心溝がベース側素子に形成されている構成に限定されず、蓋側素子に前記調心溝が形成されている構成も採用可能である。
【0084】
また、クランプ部付きフェルールを収納する光コネクタのハウジングとしては特には限定は無く、例えば、SC形光コネクタ、いわゆるSC2形光コネクタ(SC形光コネクタからつまみを省略したもの)、MU形光コネクタと同様のハウジングに介挿部材挿通孔を形成したもの等を採用できる。
【0085】
上述の実施形態では、予め素子間に介挿部材が介挿され素子間を開放状態とした構成の光コネクタ(介挿部材付き光コネクタ)を例示したが、本発明に係る光コネクタとしてはこれに限定されず、クランプ部付きフェルールのクランプ部の素子間に介挿部材が挿入されておらず、素子間への挿入光ファイバの挿入作業を行う際に、素子間に介挿部材を挿入して素子間を開放状態とする作業を行えるようにした構成も採用可能である。
例えば図2、図6(b)に示すように、上述の実施形態に例示したクランプ部付きフェルールのクランプ部33の素子35,36には、素子35、36間に割り込ませるように介挿される介挿部材40の先端部40aが配置される介挿用凹所35a、36aが、ばね37の側部開口部37dに臨む位置に開口するように形成されている。図4に示すように、介挿用凹所35a、36aは、素子35、36の対向面の前記側部開口部37d側の端部を窪ませた形成されている。この介挿用凹所35a、36aに先端部40aが収納された状態で素子35、36間に介挿されていた前記介挿部材40を前記素子35、36間から引き抜いた後、前記介挿用凹所35a、36aに介挿部材40を挿入して素子35、36間に割り込ませることで素子35、36間を開放状態とすることができる。つまり、上述の実施形態の光コネクタ10、50は、素子35、36間に介挿部材40が介挿されていない状態から、素子35、36間に介挿部材40を割り込ませて素子35、36を開放状態とすることができる。
【0086】
内蔵光ファイバの内蔵光ファイバ本体としては、裸光ファイバに限定されず、光ファイバ心線、光ファイバ素線等であっても良い。
また、本発明は、挿入光ファイバの先端に露出させた裸光ファイバを内蔵光ファイバ後端に突き当てる構成に限定されず、光ファイバ心線あるいは光ファイバ素線といった被覆光ファイバである挿入光ファイバの被覆材によって被覆された被覆部を内蔵光ファイバ後端に直接突き合わせ接続する構成も採用可能である。
また、上述の実施形態においては、挿入側裸光ファイバ1a、2a1自体も挿入光ファイバとして機能する。
【0087】
上述の実施形態では、クランプ部付きフェルールをハウジングに収納した構成の光コネクタを例示したが、本発明はこれに限定されず、調心部を具備しフェルールとは別体になっているクランプ部をハウジングに収納した構成の光コネクタも含む。
また、本発明は、内蔵光ファイバと挿入光ファイバとを突き合わせた接続部にシリコーングリス等の液状屈折率整合材を設けても良い。
【符号の説明】
【0088】
1…挿入光ファイバ、1a…挿入光ファイバ(裸光ファイバ)、2…光ファイバケーブル、2a…光ファイバ、2a1…挿入光ファイバ(裸光ファイバ)、2b…抗張力体、2c…樹脂被覆材、
10…光コネクタ、20…ハウジング、30…クランプ部付きフェルール、31…フェルール、31a…接合端面、31b…ファイバ孔、32…内蔵光ファイバ本体、32a…後端面、32b…面取り部、33…クランプ部、35…ベース側素子、35f…対向面、36…蓋側素子、361…蓋側素子(前側素子)、361f…対向面、362…蓋側素子(後側素子)、362f…対向面、37…ばね、38a…調心部(調心溝)、40、41、42…介挿部材、
50…光コネクタ、511…ハウジング、52…ケーブル引き留め部、
70…光コネクタ、71…フェルール、72…ハウジング、71c…調心部(ファイバ孔の内蔵光ファイバから後端側の部分)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルール(31、71)と、このフェルールを収納するハウジング(20、511、72)と、前記フェルールに内挿固定された光ファイバ(32)の前記フェルール先端の接合端面(31a、71b)に位置合わせされた先端とは反対の後端面(32a)に光透過性の高分子材料からなる屈折率整合材層(321)が設けられた構成の内蔵光ファイバ(320、320A)と、この内蔵光ファイバに対して別途前記ハウジングに挿入される光ファイバである挿入光ファイバ(1、2a)の先端を突き合わせ接続可能に位置決めするための調心部(38a、71c)とを有し、
前記フェルールに内挿固定された光ファイバである内蔵光ファイバ本体(32)はその後端の外周に面取り部(32b)が形成され、前記屈折率整合材層に突き当てた前記挿入光ファイバが、クッション層として機能する前記屈折率整合材層を介して前記内蔵光ファイバ本体と光接続されることを特徴とする光コネクタ(10、50、70)。
【請求項2】
前記屈折率整合材層が、前記内蔵光ファイバ本体の後端面に貼着した合成樹脂製フィルムによって形成されていることを特徴とする請求項1記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記屈折率整合材層が、前記内蔵光ファイバ本体の後端面への液状高分子材料の塗布あるいは蒸着によって形成された樹脂膜であることを特徴とする請求項1記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記面取り部が前記内蔵光ファイバ本体の後端面の外縁から前記内蔵光ファイバ本体の外周面にわたって湾曲する湾曲面とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記内蔵光ファイバと、この内蔵光ファイバの後端の前記屈折率整合材層に突き合わせた前記挿入光ファイバとを半割りの素子(35、36)の間にばね(37)の弾性によって挟み込んで前記内蔵光ファイバと前記挿入光ファイバとの突き合わせ接続状態を維持するクランプ部(33)を具備し、このクランプ部の一対の素子の互いに対面する対向面(35f、361f)の一方又は両方には、前記内蔵光ファイバと前記挿入光ファイバとを突き合わせ接続可能に調心するための調心溝(38a)が形成され、前記調心溝が前記調心部として機能することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記フェルールの後側に、スリーブ状のばねの内側に前記半割りの素子を収納した構成の前記クランプ部が組み立てられてなるクランプ部付きフェルール(30)を具備することを特徴とする請求項5記載の光コネクタ。
【請求項7】
前記クランプ部の一対の素子の間に前記素子間の開放状態を維持する介挿部材(40、41、42)が、前記素子間から抜き去り可能に介挿されていることを特徴とする請求項5又は6記載の光コネクタ。
【請求項8】
前記フェルールを貫通するファイバ孔(31b)内に該ファイバ孔よりも長さが短い前記内蔵光ファイバ本体が内挿固定されており、前記ファイバ孔にフェルール後端側から挿入された前記挿入光ファイバがファイバ孔内にて前記内蔵光ファイバの後端に突き合わせ接続されるように構成され、前記ファイバ孔の前記内蔵光ファイバから後端側の部分(71c)が前記調心部として機能することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光コネクタ(70)。
【請求項9】
前記ハウジングの前記フェルールの接合端面が配置される前端側とは反対の後端部に、光ファイバ(2a)を該光ファイバに縦添えした線状の抗張力体(2b)とともに樹脂被覆材(2c)中に埋め込んで一体化した構成の光ファイバケーブル(2)の端末を保持して前記ハウジングに引き留めるケーブル引き留め部(52)が設けられ、前記挿入光ファイバが前記光ファイバケーブルの光ファイバであり、この光ファイバの光ファイバケーブル端末に口出しされた部分の先端が前記内蔵光ファイバ後端に突き合わせ接続されるようになっていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光コネクタ(50)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−33731(P2011−33731A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178357(P2009−178357)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】