説明

光コネクタ

【課題】外被把持部材を備えた被覆除去部内蔵のメカニカルスプライス部一体型光コネクタにおいて、被覆除去部に被覆付き光ファイバを押し当ててその被覆を除去する被覆除去中に、被覆付光ファイバが座屈しない許容隙間mを確保する部分以外に、被覆付光ファイバが座屈する恐れのある無用な隙間が生じないようにする。
【解決手段】前記許容隙間mを確保する被覆付光ファイバ保持構造として、メカニカルスプライス部の一部として設けられファイバ半径方向に移動可能な開放ガイドと、外被把持部材で前方に押されることで前記開放ガイドを設定されたタイミングで前方に押して前進させることが可能な可動ガイドとを備え、外被把持部材はその前部に円錐状凸部を、可動ガイドは外被把持部材側に円錐状凹部を有し、可動ガイドはその円錐状凹部に外被把持部材の円錐状凸部が接触した状態で、光ファイバ把持部材により押し込まれる。外被把持部材と可動ガイドとの間に隙間は生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内蔵光ファイバを内蔵するフェルール部の後部にメカニカルスプライス部を一体に備えるとともに、被覆付光ファイバを直接又は光ケーブルの外被を介して把持する光ファイバ把持部材を備えたメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタに関し、特に、被覆付き光ファイバの被覆を剥がす作用をする被覆除去部を内部に備えて被覆付き光ファイバ押込みによる突合せ接続が可能なメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
内蔵光ファイバ(裸ファイバ)を内蔵するフェルール部の後部にメカニカルスプライス部を一体に備えるとともに、光ケーブルの外被を把持する外被把持部材を備えたメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタは、光ケーブルの外被を直接把持して組み立てることができるので、光コネクタを光ファイバに現場で取り付けることが可能な現場組立光コネクタとして、施工性その他の点で良好である。
【0003】
ところで、予め被覆付き光ファイバの被覆を剥がして裸ファイバを露出させることなく、光コネクタに被覆付き光ファイバのまま押し込んで対向光ファイバ(内蔵光ファイバ)と突き合わせ接続する技術が報告されている(非特許文献1)。この報告では、裸ファイバ径が0.125mm、被覆部外径が0.25mmの被覆付き光ファイバを対象としている。
この被覆付き光ファイバ押込みによる突合せ接続は、突合せ部の接続モデルとしては、円錐体の軸芯部に内径126mmの孔(調心部)をあけた被覆除去部材を用い、この円錐体状の被覆除去部材の孔先端部(挿入端)に、被覆付き光ファイバの被覆除去に必要な力以上の力で押し当てて、被覆付き光ファイバの被覆を剥がすというものである。
この細い被覆付き光ファイバを被覆除去部材の孔先端部に押し当てて、薄い被覆を裸ファイバを傷つけずに剥がすにためには、被覆付き光ファイバを極めて高い精度で孔先端部に押し当てる必要があり、したがって、被覆付き光ファイバを高い精度で孔先端部まで案内する必要がある。
【0004】
細い被覆付き光ファイバを被覆除去部材の孔先端部に押し当ててその被覆を剥がすという、上記のような被覆付き光ファイバ押込みによる被覆除去技術を、実際の現場組立光コネクタにおいて実現するには、多くの部分について、具体的な構造を考案する必要がある。
例えば、特許文献1の光コネクタは、内蔵光ファイバを有する突合せ接続方式の光コネクタでなく、光コネクタに挿入した被覆付光ファイバの被覆を除去した裸ファイバをフェルール部の光ファイバ孔に挿入して、その先端を直接接続端面とするものであるが、この光コネクタは、フェルール部に被覆除去部を設けている。
すなわち、フェルール部に設けた光ファイバ保持孔37を、被覆付き光ファイバの外径と略同一内径の第1孔部53と、裸光ファイバの外径と略同一内径の第2孔部55と、第1孔部53と第2孔部55との間に設けた被覆受け部57とを備えた構成として、被覆付き光ファイバ19を被覆付きのまま装着可能にする、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−128422
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】2009年電子情報通信学会ソサイエティ大会の通信講演論文集2「被覆付き光ファイバ心線の突合せ接続に関する考察」(B−13−8)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の通り、光コネクタ内に被覆除去部を設けたものとして、フェルール部に被覆除去部を設けたもの(特許文献1)があるが、裸ファイバ径が0.125mm、被覆付き光ファイバの被覆部外径が0.25mmという細い被覆付き光ファイバにおける薄い被覆を、細いフェルール部の内部で裸ファイバを傷つけずにかつきれいに剥がすことは簡単なことではないので、フェルール部内に被覆除去部を設ける構造を実用化するには、種々困難な面があると思われる。
【0008】
ところで、前述の外被把持部材を備えたメカニカルスプライス部一体型光コネクタは、現場組立光コネクタとして優れた特徴を持つが、この外被把持部材を備えたメカニカルスプライス部一体型光コネクタの内部に被覆除去部を備えた構造とすれば、現場組立光コネクタとして一層優れたものとなる。
また、被覆付光ファイバを光ケーブルの外被を介して把持する光ファイバ把持部材(外被把持部材)でなく、被覆付光ファイバを直接把持する光ファイバ把持部材(被覆付光ファイバ把持部材)を備えたメカニカルスプライス部一体型光コネクタの場合でも、同様のことが言える。
しかし、前記の通り、裸ファイバ径が0.125mm、被覆付き光ファイバの被覆部外径が0.25mmという細い被覆付き光ファイバにおける薄い被覆を、裸ファイバを傷つけずにかつきれいに剥がすことは簡単なことではないので、光ファイバ把持部材を備えたメカニカルスプライス部一体型光コネクタにおいて内部に被覆除去部を備えた構成とするには種々の点で具体的な構造を考案することが必要となる。
【0009】
例えば、光コネクタに被覆除去部を内蔵させる場合、被覆除去部に被覆付き光ファイバを押し当ててその被覆を除去する被覆除去中に、押し当て力で被覆付き光ファイバが座屈してしまうと被覆除去を行うことができなくなるので、被覆付光ファイバが拘束されていない隙間(光ファイバ長さ方向の隙間)は、被覆付光ファイバが押し当て力で座屈しない程度の隙間m(狭い隙間)である必要がある。
光ファイバ把持部材を備えたメカニカルスプライス部一体型光コネクタにおいて内部に被覆除去部を備えた構成とする場合には、その光コネクタ構造に適した構造で、前記座屈を生じさせない許容隙間m以上の隙間が生じないようにする必要があるが、そのためには、許容隙間mを確保する部分以外の部分に、被覆付光ファイバが座屈する恐れのある無用な隙間が生じないようにする必要がある。
【0010】
本発明は上記背景のもとになされたもので、光ファイバ把持部材を備えたメカニカルスプライス部一体型光コネクタにおいて内部に被覆除去部を備えた構成とする場合に、被覆除去部に被覆付き光ファイバを押し当ててその被覆を除去する被覆除去中に、被覆付光ファイバが押し当て力で座屈しない程度の隙間mを確保する部分以外に、被覆付光ファイバが座屈する恐れのある無用な隙間が生じないメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する請求項1の発明のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタは、内蔵光ファイバを内蔵したフェルール部と、前記フェルール部の後部に取り付けられて、前記内蔵光ファイバと外部から挿入される被覆付光ファイバの被覆を除去した挿入光ファイバとを突き合わせ接続するメカニカルスプライス部と、前記被覆付き光ファイバの被覆を除去する被覆除去部と、メカニカルスプライス部の後方で被覆付光ファイバを直接又は光ケーブルの外被を介して把持する光ファイバ把持部材と、この光ファイバ把持部材で把持した被覆付き光ファイバを前記被覆除去部に押し当ててその被覆を除去する被覆除去中に、前記押し当て力で被覆付き光ファイバが座屈しない程度の光ファイバ長さ方向の許容隙間mを確保する被覆付光ファイバ保持構造を備え、
前記被覆付光ファイバ保持構造は、前記被覆付光ファイバをメカニカルスプライス部に誘導するための円錐状凹部を有する部材を備え、
前記光ファイバ把持部材はその前部に、前記円錐状凹部を有する部材の円錐状凹所内に入り込む円錐状凸部を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2は請求項1のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタにおいて、
前記光ファイバ把持部材は、把持部材本体とこの把持部材本体に取り付けられた蓋体とを備え、前記把持部材本体の被覆付光ファイバ把持部分と蓋体の被覆付光ファイバ把持部分とを合せたものが、前記円錐状凸部を形成していることを特徴とする。
【0013】
請求項3は請求項1又は2のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタにおいて、
前記光ファイバ把持部材が、被覆付光ファイバの外周に外被を有する光ケーブルの前記外被部分を介して被覆付光ファイバを把持する光ファイバ把持部材であることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタは、
内蔵光ファイバを内蔵したフェルール部と、前記フェルール部の後部に取り付けられて、前記内蔵光ファイバと外部から挿入される光ケーブルの外被を除去した被覆付き光ファイバの被覆を除去した挿入光ファイバとを突き合わせ接続するメカニカルスプライス部と、前記被覆付き光ファイバの被覆を除去する被覆除去部と、コネクタ後端部で前記被覆付光ファイバを前記光ケーブルの外被を介して把持する光ファイバ把持部材とを備え、
前記メカニカルスプライス部で被覆付光ファイバを把持した状態において被覆付光ファイバが拘束されていない空間であって、前記被覆除去部に被覆付き光ファイバを押し当ててその被覆を除去する被覆除去中に、前記押し当て力で被覆付き光ファイバが座屈しない程度の光ファイバ長さ方向の許容隙間mを確保する被覆付光ファイバ保持構造を備え、
前記被覆付光ファイバ保持構造は、前記許容隙間を形成する態様でメカニカルスプライス部の一部として設けられファイバ半径方向に移動可能な開放ガイドと、前記光ファイバ把持部材で前方に押されることで前記開放ガイドを設定されたタイミングで前方に押して前進させることが可能な可動ガイドとを備え、
前記光ファイバ把持部材はその前部に円錐状凸部を有し、前記可動ガイドは光ファイバ把持部材側に前記円錐状凸部が嵌合する円錐状凹部を有し、可動ガイドはその円錐状凹部に光ファイバ把持部材の前記円錐状凸部が接触した状態で、光ファイバ把持部材により押し込まれるようになっていることを特徴とする。
【0015】
請求項5は請求項4のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタにおいて、
前記光ファイバ把持部材の円錐状凸部は、光ケーブルの外被部分を把持する外被把持部分の前部に設けられて被覆付光ファイバの被覆部を把持する被覆把持部分として形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6は請求項5のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタにおいて、
前記光ファイバ把持部材は、把持部材本体とこの把持部材本体に取り付けられた蓋体とを備え、前記把持部材本体及び蓋体がともに光ケーブルの外被部分を把持する外被把持部分と被覆付光ファイバの被覆部を把持する被覆把持部分とを備えており、前記把持部材本体の被覆保持部分と蓋体の被覆把持部分とを合せたものが、前記光ファイバ把持部材の円錐状凸部を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタによれば、光ファイバ把持部材の前部に円錐状凸部を有し可動ガイドの後部に円錐状凹部を有しているので、光ファイバ把持部材で可動ガイドを前方に押し込む際、その円錐状凸部の円錐状凸面が可動ガイドの円錐状凹部の円錐状凹面に接触した状態で、可動ガイドを押して前進させる。したがって、光ファイバ把持部材と可動ガイドとの間には、被覆付光ファイバが座屈する恐れのある無用な隙間は生じない。
また、光ファイバ把持部材側の円錐状凸部は請求項3のように、被覆付光ファイバの被覆部を把持する被覆把持部分として形成することで、被覆付光ファイバにたわみや軸ずれが生じることを防止する作用が得られ、また、可動ガイド側の円錐状凹部は被覆付光ファイバを挿入するための案内面として機能するので、被覆付光ファイバを円滑に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタの一実施例の斜視図であり、光コネクタを光ケーブルの被覆付き光ファイバに押込み補助治具及びクサビ部材を用いて取り付ける状況を示す図である。
【図2】図1において、押込み補助治具及びクサビ部材を除いて示した斜視図である。
【図3】(a)は図2の平面図、(b)は同正面図、(c)は同底面図である。
【図4】上記光コネクタの縦断面を一部を省略しかつ簡略化して示した図である。
【図5】上記光コネクタにおけるプラグフレームの斜視図である。
【図6】図5のプラグフレームの詳細を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)のA−A断面図、(d)は(a)のB−B断面図、(e)は(a)のB’−B’断面図である。
【図7】上記光コネクタにおけるストップリングの斜視図である。
【図8】図7のストップリングの詳細を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は(a)のC−C断面図、(e)は(b)のD−D断面図、(f)は(b)の左側面図、(g)は(b)の右側面図である。
【図9】上記光コネクタにおける可動ガイドの斜視図である。
【図10】図9の可動ガイドの詳細を示すもので、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は(a)の左側面図、(e)は(a)の右側面図である。
【図11】図10(b)のE−E断面図である。
【図12】上記光コネクタの内部の部材であるメカニカルスプライス部のベース部の詳細を示すもので、(a)はベース部の正面図、(b)は同平面図、(c)は(a)のF−F断面図、(d)は(b)の右側面図、(e)は(a)のG−G断面図である。
【図13】図12のベース部に取り付けられる開放ガイドを示すもので、(a)は底面図(図12(c)に対応する図)、(b)は(a)を下から見た図、(d)は(a)の2倍に拡大した左側面図である。
【図14】図12(a)のベース部にフェルールを固定したものに蓋、可動ガイド、被覆除去部材を装着した状態をクサビ部材とともに示す図である。
【図15】(a)は図12(d)を拡大した図、(b)は図14の右側面図である。
【図16】図14における被覆除去部材を拡大して示したもので、(a)は斜視図、(b)は、被覆付き光ファイバの被覆を除去する状況を併せて示した平面図である。
【図17】図1〜図3における外被把持部材を蓋体を開いた状態で示した斜視図である。
【図18】(a)は図17の外被把持部材の平面図、(b)はH−H断面で示した位置決め溝の部分の要部拡大断面図である。
【図19】図17の外被把持部材の詳細を示すもので、(a)は平面図(図18を縮小したもの)、(b)は正面図、(c)は左側面図、(d)は右側面図、(e)は(c)で蓋を閉じた状態を示した図である。
【図20】上記外被把持部材で光ケーブルの外被及び被覆付き光ファイバの被覆部を把持する要領を説明するもので、(a)は光ケーブルを外被把持部材の内部に収容した段階、(b)は蓋をして光ケーブルの外被及び被覆付き光ファイバの被覆部を把持した状態を示す。
【図21】上記のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタの組立作業において、外被把持部材で光ケーブルの外被部分を把持して被覆付光ファイバを光コネクタ本体内に挿入する際に、外被把持部材を光コネクタ本体側に装着する状況を説明する図であり、(a)は外被把持部材が光コネクタ本体から離れている状態、(b)は外被把持部材の円錐状凸部が可動ガイドの円錐状凹部に接触して、可動ガイドを押し込み可能になった時点の状態を示す。
【図22】(a)は図21(b)を拡大した図、(b)は可動ガイドのみを示した右側面図である。
【図23】図21(b)の水平断面図(図22(b)のI−I断面に相当する高さ位置での水平断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施したメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタについて、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の一実施例のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ1の斜視図であり、メカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ1を光ケーブル4の被覆付き光ファイバ5に押込み補助治具14及びクサビ部材15を用いて取り付ける状況を示す図である。図2は図1において、押込み補助治具14及びクサビ部材15を除いて示した斜視図、図3(a)は図2の平面図、(b)は同正面図、(c)は同底面図である。図4は上記メカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ1の内部構造の概略を示す縦断面図であり、一部を省略しかつ簡略化して示している。
【0021】
このメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ(以下、略して単に光コネクタともいう)1は、内蔵光ファイバ(裸ファイバ)2を内蔵したフェルール部3と、前記フェルール部3の後部に一体に取り付けられて、前記内蔵光ファイバ2と外部から挿入される光ケーブル4の外被4aを除去した被覆付き光ファイバ5の被覆5aを除去された挿入光ファイバ(図16に符号6で示す)とを突き合わせ接続するメカニカルスプライス部7と、前記フェルール部3とメカニカルスプライス部7とが一体化されたメカニカルスプライス部一体化フェルール部8をその前進限を規定して前後に摺動可能に収容するプラグフレーム9と、前記プラグフレーム9に固定されるとともに前記メカニカルスプライス部7をC形板バネを26介して前方に弾性的に付勢するストップリング10と、コネクタ後端部で、被覆付光ファイバ5を光ケーブル4の外被4aを介して把持する光ファイバ把持部材(以下、主として「外被把持部材」と呼ぶ)11とを備えている。
【0022】
図5は前記プラグフレーム9の斜視図、図6(a)はプラグフレーム9の平面図、(b)は正面図、(c)は(b)のA−A断面図、(d)は(a)のB−B断面図、(e)は(a)のB’−B’断面図である。
プラグフレーム9は、前記の通りメカニカルスプライス部一体化フェルール部8をその前進限を規定して前後に摺動可能に収容するもので、メカニカルスプライス部一体化フェルール部8の鍔部8aを摺動可能に嵌合させる円筒内面9aを持ち、その先端の段差部9bによって前進限を規定する。また、ストップリング10の前方側の円筒部分10aを嵌入させる円筒内面9cを有する。9dはカバー13の側面にあけた穴部に係合してカバー13を係止する係止部分、9eはストップリング10の係合突起10bに係合してストップリング10を係止する係止部である。9fはクサビ部材15の差込片15aを通過させる孔である。
カバー13は、プラグフレーム9の部分に装着されており、光コネクタ接続の際に挿入するアダプタ内面形状に合せた外形を有するが、コネクタの種類によってカバーの形状及びプラグフレームの形状が変わる。
【0023】
図7は前記光コネクタにおけるストップリング10の斜視図、図8(a)はストップリング10の平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は(a)のC−C断面図、(e)は(b)のD−D断面図、(f)は(b)の左側面図、(g)は(b)の右側面図である。
ストップリング10は、前記の通り、その円筒部分10aがプラグフレーム9内に嵌合し係合突起10bで係止されるとともに、メカニカルスプライス部7をコイルバネ27を介して前方に弾性的に付勢する。円筒部分10aと反対側の後端側に、後述の可動ガイド21の被覆付光ファイバ誘導部24を収容するコ字形枠部10cで囲まれた空間10c’を持つ。コ字形枠部10cの両側壁10dの内面に可動ガイド21を案内する溝10eを持つ。10fはクサビ部材15の差込片15aを通過させる孔である。
ストップリング10の上部には、外被把持部材11が脱落しないように拘束するレバー12がヒンジ軸12aにより回転可能に取り付けられている。
【0024】
ストップリング10内には、図9〜図11に示す可動ガイド21の円筒部分22が挿入されている。図9は可動ガイド21の斜視図、図10(a)は可動ガイドの正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は(a)の左側面図、(e)は(a)の右側面図である。図11は図10(b)のE−E断面図である。
可動ガイド21は、詳細は後述するが、図14、図16に示した被覆除去部材20に被覆付き光ファイバ5を押し当ててその被覆5aを除去する被覆除去中に、前記押し当て力で被覆付き光ファイバ5が座屈しない程度の光ファイバ長さ方向の許容隙間mを確保するための被覆付光ファイバ保持構造の一部をなす部材である。前記許容隙間mは2.1mm程度とされている。
前記許容隙間mを確保するための被覆付光ファイバ保持構造としては、この可動ガイド21と後述の開放ガイド31とが中心的な部材であるが、メカニカルスプライス部のベース部30の特に斜め凸条30eや外被把持部材11などもその作動に関与する。
この可動ガイド21は、円筒外周面を持つ筒状部22を備えて、この筒状部22が前記メカニカルスプライス部7に被せられるとともに、筒状部22の円筒外周面がストップリング10内に摺動可能に嵌装されており、メカニカルスプライス部7に対して前後方向に移動可能である。
この可動ガイド21は、前記筒状部22の後端に、被覆付光ファイバ5を導入する概略角形の被覆付光ファイバ誘導部24を一体に備えている。この被覆付光ファイバ誘導部24は、図11にも示すように、円錐面状の案内面24aの先端に被覆付光ファイバ径より僅かに大きな内径の被覆付光ファイバ挿通孔24bを備えている。
可動ガイド21の被覆付光ファイバ誘導部24に設けた円錐面状案内面24aを形成する凹部(この円錐状凹部と呼び、円錐状凹面24aと区別せずに用いる)は、詳細は後述するが、外被把持部材11の円錐体部(円錐状凸部とも呼ぶ)60の円錐状凸面に合せた円錐状凹面をなしており、円錐状凸部60と円錐状凹部24aとは円錐面どうしで隙間なく面接触する。
前記筒状部22の筒状中空部23は被覆付光ファイバ誘導部24の内部まで延出しており、被覆付光ファイバ誘導部24の突き当り部に垂直内壁24cを有する。この垂直内壁24cが後述するように、開放ガイド31の後端面を押す。外被把持部材11で押されて前進する可動ガイド21はその垂直内壁24cがメカニカルスプライス部7の後端面に当たって止まる。この時点では、メカニカルスプライス部7のベース部30の設けた突起30fが、可動ガイド21に設けた係止孔22bに入り込んでいるので、可動ガイド21はその位置から後退しない。
なお、被覆付光ファイバ誘導部24の円錐状の案内面24a及び被覆付光ファイバ挿通孔24bは、その一部を可動片25の案内面25a及び部分孔面25bが形成している。この可動片25は、可動ガイド21に向かって前進させた外被把持部材11の後述するツメ部29がこの可動片5に当たった時に下降する。可動片25が下降すると、その案内面25aが被覆付光ファイバ挿通孔24bの部分から離れることで半径方向外方に拡がった案内面25aとなり、したがって、外被把持部材11の後述する円錐体部60の円錐面が可動ガイド21の被覆付光ファイバ誘導部24の円錐状案内面24aに合わさった際に、外被把持部材11の位置決め溝67aから出てきた被覆付光ファイバ5と被覆付光ファイバ誘導部24の光ファイバ挿通孔24bとにズレがあったときに、案内面24a、25aに突き当たって曲がる被覆付光ファイバ5に生じる曲げRを大きくする作用をするので、被覆付光ファイバ5に無理な曲げが生じるのを防ぐことができる。
図9ではこの可動片25を外した状態で示している。
なお、被覆付光ファイバ誘導部24の側面には、外被把持部材11の後述するアーム50が通過する溝24dが形成されている。22aはクサビ部材15の差込片15aを通過させる孔である。なお、その他の孔(開口)もある。
なお、図10に示したロックレバー35は、詳細説明は省略するが、可動ガイド21を位置決めされた所定の位置にセットしておき、光ケーブル4の外被を把持した外被把持部材11を前進させて被覆付光ファイバ5を前進させる際に、外被把持部材11が適切なタイミングで可動ガイド21を前方に移動させるように、その適切なタイミングまで可動ガイド21の前進を拘束するためのロック機能を持つ。
【0025】
図12は上記光コネクタ1におけるメカニカルスプライス部7の詳細を示すもので、(a)はメカニカルスプライス部7のベース部30の正面図、(b)は同平面図、(c)は(a)のF−F断面図、(d)は(b)の右側面図、(e)は(a)のG−G断面図である。図13は図12のベース部に取り付けられる開放ガイド31を示すもので、(a)は底面図(図12(c)に対応する図)、(b)は(a)を下面から見た図、(d)は(a)の2倍に拡大した左側面図である。
メカニカルスプライス部7は、ベース部30とこのベース部30に被せられる蓋部33と前記ベース部30と蓋部33とを弾性的にクランプするC形板バネとを備えるとともに、ベース部30の蓋部33との合わせ面30cに、内蔵光ファイバ2と挿入光ファイバ6とを収容する調心溝32a及び前記被覆付き光ファイバ5の部分を収容する被覆部収容溝32bを一直線上に備えた構造である。また、被覆部収容溝32bと調心溝32aとの間に、被覆除去部材20を装着する凹所30aを設けている。30b(30b、30b、30b、30b)は、クサビ部材15が差し込まれるクサビ差込部である。このクサビ差込部30bの部分以外の部分はベース部30の合せ面30cより隆起した隆起部30dとなっている。また、ベース部30の合せ面30cに、開放ガイド31を斜めに移動させる作用をする斜め凸条30eを設けている。
【0026】
開放ガイド31は、図13に示すように、概ね長方形断面の角部に被覆付光ファイバ5を把持するための円弧部と直線部とを持つ切欠き31aを有し、また、ベース部30の合せ面30cの斜め凸条30eに嵌合する斜め凹溝31bを持つ。
図14は 図12(a)のメカニカルスプライス部7にフェルール部3を一体化したメカニカルスプライス部一体化フェルール部8のベース部30に蓋33、開放ガイド31、被覆除去部材20を装着した状態をクサビ部材15ととも簡略化して示す図である。また、可動ガイド21を2点鎖線で示す。
【0027】
図15(a)は図12(d)を拡大した図、(b)は(a)に開放ガイド31及び蓋部33を装着した状態で示した図である。
一般的なメカニカルスプライス部一体化光コネクタにおけるメカニカルスプライス部は、概ね半円形断面のベース部と蓋部とを向かい合せC形板バネで弾性的にクランプする構造であるが、この実施例の光コネクタでは、内部で被覆付き光ファイバの被覆除去を行う被覆除去部(被覆除去部材20の部分を指す)を設けることに伴い開放ガイド31をベース部30に設けることなどから、前記の通りベース部30の合せ面30cが平面でなく部分的に隆起部30dを持つ形状としており、その他種々の点で工夫を施した構造となっている。
【0028】
被覆除去部材20は、図16に示すように、例えば幅2mm、長さ3.3mm、厚さ1mmなどの薄い直方体の前方寄りの位置に図示例では貫通の空所40を形成し、この空所40の前方側(フェルール7側(図16(b)で左側))の部分に裸ファイバを挿通させる0.126mmφの裸ファイバ挿通孔41、後方側に被覆付光ファイバ5を挿通させる被覆付光ファイバ挿通孔42を設けるとともに、前記裸ファイバ挿通孔41の後端側部分を空所40において後方側に突出するような円錐体状にしたもので、この円錐体状部(部分を被覆除去作用部43と呼ぶ)の先端部43aは、裸ファイバ挿通孔41の内面に対して厚みが極めて薄くされて、円筒状刃となっている。
この被覆除去作用部43の先端面部(すなわち円筒状刃)43a分に、被覆付光ファイバ挿通孔42を通した被覆付光ファイバ5を押し当てることで、被覆付光ファイバ5の被覆を裸ファイバから剥がすように除去する。
【0029】
図17は前記外被把持部材11の蓋体を開いた状態の斜視図、図18は同平面図である。図19は外被把持部材11の詳細を示すもので、(a)は平面図(図18を縮小したもの)、(b)は正面図、(c)は左側面図、(d)は右側面図、(e)は(c)で蓋を閉じた状態を示した図である。
この実施例の外被把持部材11は、把持部材本体51とこの把持部材本体51にヒンジ部52を介して開閉可能に取り付けられた蓋体53とを備え、前記把持部材本体51の前方側の左右両側に、可動ガイド21に係合させるための係合爪50aを設けたアーム50を設けている。
前記把持部材本体51は光ケーブル4の外被部分を把持する外被把持部分55と被覆付光ファイバ5の被覆部を把持する被覆把持部分56とを一体に備え、また蓋体53も光ケーブル4の外被部分を把持する外被把持部分57と被覆付光ファイバ5の被覆部を把持する被覆把持部分58とを一体に備えている。すなわち、光ケーブル4の外被部分と被覆付き光ファイバ5の被覆部分とが一体部材で把持される。
【0030】
把持部材本体51の外被把持部分55は、実施例では概ね断面長方形の外被を持つドロップケーブルである光ケーブル4の外形に合せた深いコ字形枠部61を有し、このコ字形枠部61の左右側壁62の内面に断面三角形の縦長の突起62aを設け、底部63に小突起63aを設けている。
蓋体53の外被把持部分57は、把持部材本体51のコ字形枠部61に被せられる天井部65と、コ字形枠部61に設けた係止用突起61aに係止される係止孔66aを持つ係止部66とからなり、直角状をなしている。
蓋体53の前記天井部65の内側面に円錐状突起65aを設けている。
【0031】
把持部材本体51側の被覆把持部分56は、その上面56aに、被覆付光ファイバ5を収容する図示例ではV溝である位置決め溝67aを有するとともに、前記位置決め溝67の外被把持部分55側の部分に、外被把持部分55側に向かってテーパ状に拡がるテーパ状溝67bを有している。
また、把持部材本体51側の被覆把持部分56の位置決め溝67aの長さ方向中間位置に、溝幅方向(図18で上下方向)に延びる隆起部68を有し、図18(b)にも示すようにこの隆起部68における位置決め溝67a’の上端縁が、上面56aより高くなっている。
なお、把持部材本体51側の被覆把持部分56と蓋体53側の被覆把持部分58とは、蓋体53を閉ざして重ね合わした状態では円錐体状をなしている。重ね合わされて円錐体状をなす被覆把持部分56と被覆把持部分58との全体を円錐体部(=円錐状凸部)60と呼ぶ。
なお、被覆付光ファイバの被覆部分を把持する被覆把持部分56、58については、被覆付光ファイバのたわみや軸ずれを防止する作用をする程度に被覆付光ファイバ5を緩く保持するものでよい。
29は前述した可動ガイド21に設けた可動片25を下降させる機能を持つツメである。
【0032】
上記のメカニカルスプライス型現場組立光コネクタ1を組み立てる際の作業手順及び動作について説明する。
(1)光ケーブル4の外被4aを例えば5cmなどの適宜の長さだけ削除して被覆付き光ファイバ5を露出させる。
(2)次いで、光ケーブル5の外被部分を、蓋体53を開けた外被把持部材11のコ字形枠部61内に収容し、蓋体53を閉じて光ケーブル4の外被を把持した後、被覆付き光ファイバ5を光ファイバ用カッターで正確に所定の長さで切断する。
(3)メカニカルスプライス部7のベース部30にC形板バネで弾性的に装着されている蓋33を、クサビ部材15の差込片15aをメカニカルスプライス部7のクサビ差込部30bに差し込んで開いておく。
(4)この段階で可動ガイド21は、ロックレバー35で位置決めされた所定の位置にセットされており、前に進まない状態になっている。
(5)外被把持部材11で外被を把持された光ケーブル4の被覆付き光ファイバ5を可動ガイド21内に通しメカニカルスプライス部7の被覆部収容溝32bに挿入し、外被把持部材11を前進させて被覆部収容溝32bに沿って送り込む。その際、光コネクタ1の後端部に取り付けた押し込み補助治具14に載せて外被把持部材11を前進させる。
(6)外被把持部材11を、さらに前方に押し込むと、被覆付き光ファイバ5の先端面が被覆除去部材20の被覆除去作用部43の先端面部(円筒状刃)43aに当たり(この当たった時点をA時点と呼ぶ)、引き続き被覆付き光ファイバ5が押し込まれることで、被覆除去作用部43の円筒状刃43aで被覆5aが裸ファイバから剥がされつつ、露出した裸ファイバ6が裸ファイバ挿通孔41を通過してメカニカルスプライス部7の裸ファイバ用の調心溝32a内を前進する。この頃に(この前進の段階で)外被把持部材11が可動ガイド21に当たり(この当たった時点をB時点と呼ぶ)
、外被把持部材11と可動ガイド21とが一体となって動く。詳細は後述するが、外被把持部材11が可動ガイド21に当たるのは、外被把持部材11の円錐体部(=円錐状凸部)60が可動ガイド21の被覆付光ファイバ誘導部24の円錐状凹部(=円錐状案内面)24aに当たった時である。
なお、被覆5aは、例えば円周方向の2、3箇所で光ファイバ長さ方向に裂けるなどして、裸ファイバ6から除去される。図16(b)に示すように、除去される被覆5a’は、被覆付き光ファイバ5の被覆5aから取り去られるのでなく、根元の部分で被覆付き光ファイバ5の被覆5aに繋がった状態で裸ファイバ6から剥される。
(7)なお、前記の外被把持部材11を押し込む過程における前記A時点(被覆付き光ファイバ5の先端面が被覆除去部材20の被覆除去作用部43の先端面43aに当たった時点)からB時点(外被把持部材11が可動ガイド21に当たった時点)の間に、外被把持部材11のアーム50の先端がロックレバー35を押してロックレバー35を可動ガイド21の側面から離間させる動作があり、この動作で、可動ガイド21の前進を規制していたロックレバー35のロックが解除され、可動ガイド21が前進できる状態となる。
(8)外被把持部材11をさらに前方に押し込むと、外被把持部材11と一体に前進する可動ガイド21の被覆付光ファイバ誘導部24の垂直内壁24cがメカニカルスプライス部7の開放ガイド31の後端面に当たり(接触し)、開放ガイドが作動する状態となる。
(10)外被把持部材11をさらに前方に押し込むと、被覆付き光ファイバ5の被覆除去(剥がし)がさらに進行しつつ裸ファイバ(挿入光ファイバ)6がメカニカルスプライス部7の調心溝32a内を前進して内蔵光ファイバ2に突き当たり、かつ(厳密には突き当たった次の瞬間に)所定の突き合わせ圧力が発生する。被覆除去時の押込み力は5N以下とする。
(11)外被把持部材11・可動ガイド21をさらに押し込むと、可動ガイド21で押された開放ガイド31が、その斜め凹溝31bが嵌合しているメカニカルスプライス部7のベース部30の斜め凸条30eに沿って斜めに前進して断面中心側から外方に離れることで、被覆付き光ファイバ5の把持が開放される。これにより、断面中心側から外方に移動した開放ガイド31が存在していた空間の部分がたわみ空間となって、その空間において被覆付き光ファイバ5にたわみが生じる。すなわち、挿入ファイバ6の内蔵光ファイバ2に対する突き合わせ圧力が被覆付き光ファイバ5のたわみに変換される。このたわみで良好な光接続がなされる適性な突き合わせ圧力が確保される。
(12)この状態でクサビ部材15を抜き取るとC形板バネの挟持力が作用し、メカニカルスプライス部7のベース部30と蓋部33とで内蔵光ファイバ2と裸ファイバである挿入光ファイバ6と被覆付き光ファイバ5とを把持する。
(13)次いで、ストップリング10に取り付けたレバー12を、光ケーブル4の外被を把持している外被把持部材11に被せるように倒して、外被把持部材11が脱落しないように拘束する。
以上でメカニカルスプライス型現場組立光コネクタの組立が完了する。
【0033】
上述のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ組立の作業手順及び動作において、外被把持部材11が可動ガイド21にあたった時点(前述のB時点)の動作(前記(6)の後半部で説明した動作)の詳細を、図21〜図23を参照して説明する。
図21(a)は外被把持部材が光コネクタ本体(光コネクタ1から外被把持部材11を除いた部分全体を指す)から離れている状態、(b)は外被把持部材11の円錐状凸部(円錐体部)60が可動ガイド21の円錐状凹部(円錐状案内面)24aに接触して、可動ガイド21を押し込み可能になった時点の状態を示す。図22(a)は図21(b)を拡大した図、(b)は可動ガイドのみを示した右側面図である。図23は図21(b)の水平断面図(図21(c)のI−I断面に相当する高さ位置での水平断面図)である。
前述の通り、外被把持部材11が可動ガイド21に当たった時点(B時点)から 、外被把持部材11と可動ガイド21とが一体となって動くが、外被把持部材11が可動ガイド21に当たるのは、図21(b)、図22(a)、図23に示す通り、外被把持部材11の円錐状凸部(円錐体部)60が可動ガイド21の被覆付光ファイバ誘導部24の円錐状凹部(円錐状案内面)24aに当たった時である。このように、外被把持部材11の前部に円錐状凸部60を有し可動ガイド21の後部に円錐状凹部24aを有しているので、外被把持部材11で可動ガイド21を前方に押し込む際、その円錐状凸部60の凸面が可動ガイド21の円錐状凹部24aの凹面に接触した状態で、可動ガイド21を押して前進させる。したがって、外被把持部材11と可動ガイド21との間に隙間はない。したがって、被覆付光ファイバ5の先端が被覆除去作用部43に当たって押込み力で被覆除去を行っている段階で、被覆付光ファイバ5が座屈する恐れのある無用な隙間は生じることはない。
また、実施例では、外被把持部材11側の円錐状凸部(円錐体部)60が、被覆付光ファイバ5の被覆部を把持する被覆把持部分56、58となっているので、被覆付光ファイバ5にたわみや軸ずれが生じることを防止する作用が得られる。また、可動ガイド21側の円錐状凹部24aは被覆付光ファイバ5を挿入するための案内面として機能するので、被覆付光ファイバ5を円滑に挿入することができる。
【0034】
上述した実施例では、被覆付光ファイバをメカニカルスプライス部に誘導するための円錐状凹部を有する部材が、被覆付光ファイバの被覆除去中に押し当て力で被覆付き光ファイバが座屈しない程度の光ファイバ長さ方向の許容隙間mを確保する被覆付光ファイバ保持構造を構成する一部材として設けられた可動ガイドであるが、必ずしもこのような可動ガイドである必要はない。要するに、被覆付光ファイバをメカニカルスプライス部に誘導するための円錐状凹部を有する部材であればよい。
したがって、必ずしも、可動ガイドのように可動である必要はない。
【0035】
上述の実施例では、光ファイバ把持部材が、被覆付光ファイバ5を直接把持する被覆付光ファイバ把持部材でなく、被覆付光ファイバ5を光ケーブル4の外被4aを介して把持する外被把持部材であるが、本発明は、光ファイバ把持部材が、被覆付光ファイバ5を直接把持する被覆付光ファイバ把持部材である場合にも、適用することができる。
この場合は、例えば、上述した外被把持部材11における外被把持部分(すなわち55、57で示す部分)が単なる被覆付光ファイバ挿通部である構造などとなる。
【符号の説明】
【0036】
1 メカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ(光コネクタ)
2 内蔵光ファイバ(裸ファイバ)
3 フェルール部
4 光ケーブル
4a 外被(外被部分)
5 被覆付光ファイバ
5a 被覆(被覆部分)
6 挿入光ファイバ(裸ファイバ)
7 メカニカルスプライス部
8 メカニカルスプライス部一体フェルール部
9 プラグフレーム
10 ストップリング
11 外被把持部材(光ファイバ把持部材)
12 レバー
13 カバー
14 押し込み補助治具
15 クサビ部材
20 被覆除去部材
21 可動ガイド
22 筒状部
24 被覆付光ファイバ誘導部
24a 円錐状凹部(円錐状案内面)
24c 垂直内壁
30 ベース部
33 蓋部
32a 調心溝
32b 被覆部収容溝
30a (被覆除去部材を配置する)凹所
30e 斜め凸条
31 開放ガイド
31a 切欠き
31b 斜め凹溝
35 ロックレバー
40 空所
41 裸ファイバ挿通孔
42 被覆付光ファイバ挿通孔
43 被覆除去作用部(円錐体状部)
50 アーム
51 把持部材本体
52 ヒンジ部
53 蓋体
55 (把持部材本体側の)外被把持部分
56 (把持部材本体側の)被覆把持部分
57 (蓋体側の)外被把持部分
58 (蓋体側の)被覆把持部分
60 円錐状凸部(=円錐体部(56と58を合せたもの))
61 コ字形枠部
62 左右側壁
65 天井部
56a 上面
67a 位置決め溝
67a’(隆起部における位置決め溝)
67b テーパ状溝
68 隆起部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵光ファイバを内蔵したフェルール部と、前記フェルール部の後部に取り付けられて、前記内蔵光ファイバと外部から挿入される被覆付光ファイバの被覆を除去した挿入光ファイバとを突き合わせ接続するメカニカルスプライス部と、前記被覆付き光ファイバの被覆を除去する被覆除去部と、メカニカルスプライス部の後方で被覆付光ファイバを直接又は光ケーブルの外被を介して把持する光ファイバ把持部材と、この光ファイバ把持部材で把持した被覆付き光ファイバを前記被覆除去部に押し当ててその被覆を除去する被覆除去中に、前記押し当て力で被覆付き光ファイバが座屈しない程度の光ファイバ長さ方向の許容隙間mを確保する被覆付光ファイバ保持構造を備え、
前記被覆付光ファイバ保持構造は、前記被覆付光ファイバをメカニカルスプライス部に誘導するための円錐状凹部を有する部材を備え、
前記光ファイバ把持部材はその前部に、前記円錐状凹部を有する部材の円錐状凹所内に入り込む円錐状凸部を有することを特徴とするメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
【請求項2】
前記光ファイバ把持部材は、把持部材本体とこの把持部材本体に取り付けられた蓋体とを備え、前記把持部材本体の被覆付光ファイバ把持部分と蓋体の被覆付光ファイバ把持部分とを合せたものが、前記円錐状凸部を形成していることを特徴とする請求項1記載のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
【請求項3】
前記光ファイバ把持部材が、被覆付光ファイバの外周に外被を有する光ケーブルの前記外被部分を介して被覆付光ファイバを把持する外被把持部材であることを特徴とする請求項1又は2記載のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
【請求項4】
内蔵光ファイバを内蔵したフェルール部と、前記フェルール部の後部に取り付けられて、前記内蔵光ファイバと外部から挿入される光ケーブルの外被を除去した被覆付き光ファイバの被覆を除去した挿入光ファイバとを突き合わせ接続するメカニカルスプライス部と、前記被覆付き光ファイバの被覆を除去する被覆除去部と、コネクタ後端部で前記被覆付光ファイバを前記光ケーブルの外被を介して把持する光ファイバ把持部材とを備え、
前記メカニカルスプライス部で被覆付光ファイバを把持した状態において被覆付光ファイバが拘束されていない空間であって、前記被覆除去部に被覆付き光ファイバを押し当ててその被覆を除去する被覆除去中に、前記押し当て力で被覆付き光ファイバが座屈しない程度の光ファイバ長さ方向の許容隙間mを確保する被覆付光ファイバ保持構造を備え、
前記被覆付光ファイバ保持構造は、前記許容隙間を形成する態様でメカニカルスプライス部の一部として設けられファイバ半径方向に移動可能な開放ガイドと、前記光ファイバ把持部材で前方に押されることで前記開放ガイドを設定されたタイミングで前方に押して前進させることが可能な可動ガイドとを備え、
前記光ファイバ把持部材はその前部に円錐状凸部を有し、前記可動ガイドは光ファイバ把持部材側に前記円錐状凸部が嵌合する円錐状凹部を有し、可動ガイドはその円錐状凹部に光ファイバ把持部材の前記円錐状凸部が接触した状態で、光ファイバ把持部材により押し込まれるようになっていることを特徴とするメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
【請求項5】
前記光ファイバ把持部材の円錐状凸部は、光ケーブルの外被部分を把持する外被把持部分の前部に設けられて被覆付光ファイバの被覆部を把持する被覆把持部分として形成されていることを特徴とする請求項4記載のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。
【請求項6】
前記光ファイバ把持部材は、把持部材本体とこの把持部材本体に取り付けられた蓋体とを備え、前記把持部材本体及び蓋体がともに光ケーブルの外被部分を把持する外被把持部分と被覆付光ファイバの被覆部を把持する被覆把持部分とを備えており、前記把持部材本体の被覆保持部分と蓋体の被覆把持部分とを合せたものが、前記光ファイバ把持部材の円錐状凸部を形成していることを特徴とする請求項4記載のメカニカルスプライス型の現場組立光コネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−15747(P2013−15747A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149753(P2011−149753)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591044647)株式会社 スズキ技研 (36)
【Fターム(参考)】