説明

光スイッチ

第1光経路と第2光経路との間で光信号をスイッチングするための光学装置であって、基板と、前記基板上に形成され、前記基板から分離された可動部を備え、前記第1光経路の少なくとも一部を形成している第1ガイドと、前記第1ガイドに隣接して配置され、前記第2光経路の少なくとも一部を形成している第2ガイドと、前記第1ガイドを前記第2ガイドへと光学的に連結させるように前記可動部を静電的に湾曲させる手段と、を備えた装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スイッチ、光スイッチの形成方法、光スイッチを備えた装置、並びにスイッチを相互接続、マルチプレクサー及びその他オプトエレクトロニクス構造体へと組み込む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバー通信用の電子スイッチは、高額且つ複雑である。スイッチングが起こる前に、信号は光モードから電子モードへと変換されなければならない。あらゆる光スイッチは、そのような変換を行わないことによって通信信号の伝達を単純化するが、従来のあらゆる光スイッチは、スイッチング速度、波長域または機械的複雑性に問題がある。
【0003】
最速の光スイッチは、製造コストだけでなく、動作に必要な電力のために高額である。さらに、従来のミラー型スイッチは、スイッチ内の光通信信号を切り替える複雑な作動機構のために、振動の影響を受けやすい。現在、光通信伝達回路の主なラインに大規模で高額な光スイッチを使用することは一般的であり、高額な費用は多量のデータによって正当化されている。近い将来、光スイッチは、消費者により近いものとなり、消費者の家庭内で必要なものとなるだろう。従って、安価、小型、且つ安定な光スイッチが必要である。
【0004】
光ファイバーの中には、住宅の近くに備えられているものもあり、室内に直接備えられている場合もある。しかしながら、現在の住宅内のエンターテインメント機器(テレビ、セットトップ受信機、モデム他)は、電子信号を必要とするため、光信号のプロバイダーは一般的に光ファイバーを通じて提供された光信号を、住宅機器へと供給される電子信号へと変換する。光ファイバーの能力を完全に活用するためには、光学機器は住宅内で使用されるべきである。そのような用途のためには、低価格且つ高容量のスイッチが必要となる。
【0005】
また、光学回路は航空機、さらには自動車に設置されていることが知られている。そのような用途では、特に振動の影響を受けにくい光スイッチが利用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6169827号明細書
【特許文献2】米国特許第6144780号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Herding、「A new micromachined optical fiber switch for instrumentation purposes」、MEMS, MOEMS, and Micromachining, Proc. of SPIE, Vol 5455, Bellingham, WA, 2004
【非特許文献2】F.L.W. Rabbering, J.F.P. van Nunen and L. Eldada, 「Polymeric 16×16 Digital Optical Switch Matrix」, 27th European Conference on Optical Communication, Volume 6, Pages 78−79, 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のスイッチは、静電的に作動するスイッチを含むアクチュエータ駆動型スイッチである。典型的に、静電作動は移動ガイドを備えないミラースイッチに見られる。この典型的スイッチは、固定式入力光学ガイドと、可動式基板上に形成された小型ミラーとを備える。基板は、入力光学ガイドからミラーへの入射光をミラーの移動とともに変化させるように作動して、様々な位置に移動する。受入光学ガイドに対するミラーの移動を計算することによって、入力光学ガイドからの光は所望の通りに受入光学ガイドの1つへと偏位させることができる。しかしながら、これらの従来のスイッチは振動の影響を受けやすく、構築及び整列が困難である。
【0009】
その他の光スイッチは、1つの作動チャンバに設置された1つの入力ファイバーと、2つの出力ファイバーとを使用する。電極は、非特許文献1に記載されているように、入力ファイバーと出力ファイバーとが互いに並ぶように両者を移動させるように、作動チャンバの下部に設けられている。非特許文献1は参照により全体がここに組み込まれる。
【0010】
スイッチ要素の全光路が単一の材料から成るその他の光スイッチもある。それらのスイッチは、全てポリマーから成るガイドを含む。1実施例は、光を一方向に向けるために全反射が使用されたポリマースイッチである。このスイッチは、ヒーターでポリマーの温度を変化させることでガイドの部分の屈折率を変化させることによって作動する。屈折率に応じて、光は全反射によって1出力ガイドに導かれるかまたは直接伝達によって別のガイドへと導かれる。屈折率を変化させる同様の機構を使用して干渉計スイッチを製造することもできる。いずれの場合の設計も静電機構よりも多くの電力を使用するヒーターを必要とする。
【0011】
例えば、スイッチ部材と光ファイバーとを配置させるポリマー配列特性を備えたマイクロ光スイッチがHolmanによる特許文献1に記載されており、参照により全体がここに組み込まれる。Holmanは、2つの接触部のうちの1つと接続されるように光ファイバーを曲げる方法を示している。しかしながら、Holmanはスイッチング動作に必要とされるように光ファイバーを配置するために使用される複雑な微細加工装置を使用している。しかしながら、それぞれ周知のMEMS機構は、配列が困難であるアクチュエータ及びガイドの組み合わせを使用し、ガイドは基板に固定される。
【0012】
ポリマーガイドスイッチ及び方法がMarcuseによる特許文献2に記載されており、参照により全体がここに組み込まれる。Marcuseは、光ガイドとして使用されるポリマー部材を示している。しかしながら、Marcuseのポリマー部材は基板に固定され、スイッチは熱機構を通じて作動する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の側面によると、第1光経路と第2光経路との間で光信号をスイッチングするための光学装置は、基板と、基板上に形成され、基板から分離された可動部を備え、第1光経路の少なくとも一部を形成している第1ガイドと、第1ガイドに隣接して配置され、第2光経路の少なくとも一部を形成している第2ガイドと、第1ガイドを第2ガイドへと光学的に連結させるよう可動部を静電的に湾曲させる手段と、を備える。
【0014】
本発明の別の側面によると、第1光経路と第2光経路との間で光信号をスイッチングするための光学装置は、基板と、その長手方向の端部に位置する端面並びに端面に隣接する第1側壁及び第2側壁を備えて基板から分離された可動部を備え、基板上に形成され、第1光経路を形成している第1ガイドと、可動部の第1側壁上に形成された第1導電層と、可動部に対向して基板から突出し、第1電極と第1導電層との間に第1電圧が印加された場合に第1ガイドの可動部を静電的に湾曲させるように構成された第1電極と、第1ガイドの端面に隣接して配置され、第1電圧によって第1ガイドの可動部が静電的に湾曲された場合に第1ガイドと光学的に連結され、第2光経路を形成している第2ガイドと、を備える。
【0015】
本発明の別の側面によると、入力光経路から複数の出力光経路の1つへと光信号をスイッチングするための光学装置は、基板と、その長手方向の端部に位置する端面及び端面に隣接する側壁を備えて基板から分離された入力ガイドの可動部を備え、基板上に形成され、入力光経路を形成している入力ガイドと、可動部の側壁上に形成された導電層と、基板に接続されて入力ガイドから分離され、対応する導電層に対向し、入力ガイドの可動部を少なくとも部分的に覆い、電極のうちの1つと導電層のうちの1つとの間に対応する電圧が印加された場合に入力ガイドの可動部を静電的に湾曲させるように構成された電極と、入力ガイドの可動部が静電的に曲げられた場合に複数の出力ガイドのうちの選択された1つと光学的に連結される入力ガイドの端面に隣接して配置され、出力光経路を形成している出力ガイドと、を備える。
【0016】
本発明の別の実施形態によると、第1ガイドと第2ガイドとの間で光信号をスイッチングするための方法は、基板上に形成された第1ガイドの可動部を支持する基板から分離された可動部に光信号を導入する段階と、第1ガイドの可動部の第1側壁上に形成された第1導電層と基板上の第1電極との間に第1電圧を印加して、第1ガイドの可動部を静電的に湾曲させて第1ガイドの端面に隣接し、基板上に位置する第2ガイドに第1ガイドを光学的に連結させる段階と、を含む。
【0017】
本発明の別の実施形態によると、入力ガイドから多様な出力光学ガイドの1つへと光学信号をスイッチングするための方法は、基板上に形成された入力ガイドの可動部を支持する基板から分離された可動部に光信号を導入する段階と、入力ガイドの可動部の側壁上に形成された導電層の1つと入力ガイドの可動部を少なくとも部分的に覆う電極のうちの1つの電極との間に電圧を印加して、入力ガイドの可動部を静電的に湾曲させて、隣接した出力光学ガイドのうちの選択された1つに入力ガイドを光学的に連結させる段階と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】2つの電極の間に形成されたガイドの全体像を表す図である。
【図2】入力ガイドと2つの出力ガイドを備えた光学スイッチを表す図である。
【図3】出力ガイドと並列された電極ブロックを備えた図2の装置を表す図である。
【図4】曲がった入力ガイドを備えた図3の装置を表す図である。
【図5】本発明の別の実施形態による光学スイッチを表す図である。
【図6】ガイドの垂直方向の移動を定める出力ガイド及び入力ガイドを表す図である。
【図7】複数の電極によって取り囲まれた入力ガイドを表す図である。
【図8a】光スイッチ及び複数の光スイッチを含む回路の略図である。
【図8b】光スイッチ及び複数の光スイッチを含む回路の略図である。
【図8c】光スイッチ及び複数の光スイッチを含む回路の略図である。
【図9】12の光スイッチを備えた統合光クロスコネクトの略図である。
【図10】複数の光スイッチを備えたルーターの略図である。
【図11】光スイッチ及び使用される材料の略図である。
【図12】ガイドの処理における様々な段階の略図である。
【図13】ガイドの処理における様々な段階の略図である。
【図14】ガイドの処理における様々な段階の略図である。
【図15】ガイドの処理における様々な段階の略図である。
【図16】ガイドの処理における様々な段階の略図である。
【図17】ガイドの処理における様々な段階の略図である。
【図18】ガイドの処理における様々な段階の略図である。
【図19】ガイドの処理における様々な段階の略図である。
【図20】ガイドの処理における様々な段階の略図である。
【図21】ガイドの処理における様々な段階の略図である。
【図22】ガイドの処理における様々な段階の略図である。
【図23】ガイドの処理における様々な段階の略図である。
【図24】処理が行われたガイドの異なる断面の略図である。
【図25】処理が行われたガイドの異なる断面の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面に関連して以下の詳細な説明を参照することによって本発明へのより深い理解が得られ、付随する多くの利点がさらに理解されるだろう。
【0020】
図面において同一の参照符号はいくつかの図にわたって同一または対応する部分を示し、これらの図面を参照すると、図1は基板4上の2つの電極3及び5の間に形成されたガイド1の概略図を示す。ガイド1は、一体的に取り付けられるが基板から分離された可動部を有する。一体的取り付け及び所望の分離によって、その位置は明確に画定され且つその弾性特性は予測可能であり長期サイクルで再現性のある堅固な可動部が提供される。その機構は、可動部を静電的に曲げてガイド1から別のガイドへと光信号を伝達する。以下でさらに詳細に説明する。
【0021】
1実施形態において、ガイド1は導波管例えば光ファイバーであり得る。しかしながら、ガイド1は光信号の全反射、つまりはガイドの一端からガイドの他端への光信号の伝播を許容する光学材料であり得る。言い換えると、ガイド1の横断面サイズは、カットオフ周波数を考慮せずに無作為に選択されることができる。この実施形態におけるガイド1は、電極3及び5に電圧が印加されない静止位置を有する。この実施形態におけるガイド1は、ガイド1の側面1a上に形成された少なくとも1つの電極2aを備える。ガイド1は、ガイド1の側面1a上に第1電極2aと、ガイド1の側面1b上に第2電極2bとの2つの電極を備え得る。
【0022】
1実施形態におけるガイド1は、後述のように、(i)端面1cと、(ii)ガイド1の端面1c及び隣接する側面が可動できるような端面1cに隣接する側面1a及び1bとを備えて形成され、つまり可動部1dが形成される。言い換えると、この実施形態において、ガイドの端部はカンチレバー構造を有する。
【0023】
この場合、電極2aと5との間または電極2bと3との間に適当な電圧が印加された場合、端面1c及び端面の隣接部分は電極3または5に向かって曲げられ得る。1実施形態において、ブロック電極3は、絶縁材料から成る本体を有し、ブロック電極3の表面上に導電部3−1が形成され、導電部3−1と電極2bとが直接接触することを防ぐための導電部3−1を被覆する絶縁体3−2を備えることができる。適当な電圧(後述する)を印加することによって、ガイド1の端面1cがガイド7または9の端面7aまたは9aとそれぞれ面するようになるまでガイド1の端面1cは移動して、別のガイド7または9(図2参照)と整列される。従って、この実施形態において、ガイド1に入力される光信号11は、適当な電圧を印加することによって、ガイド7またはガイド9へと伝達され、所望の光スイッチングが実現される。
【0024】
この実施形態によると、ガイド1を曲げるためにいかなるヒーターまたはロッドも必要としない。この実施形態によると、電極2a及び2bは、ガイド1自体がアクチュエータとなるようにガイド1と一体的に形成される。さらに、この実施形態において示されたスイッチは、加えられた静電力によって適切な位置に堅固に支えられる移動スイッチング部材を備える。従って、この実施形態の装置は振動の影響を受けにくい。
【0025】
1実施形態において、入力ガイドの端部と出力ガイド7または9との間の空間が流体媒体で充填され、端部とガイド間の空間との界面での反射が制限される。この機能を遂行するために、媒体の屈折率は空気よりも大きく、光ガイドの光伝導コアよりも小さく設定され得る。このような媒体の例には、屈折率整合流体LS−5229及びLS−5241−10(NuSil Technology, Wareham, MAから入手可能)が挙げられ、これらの屈折率はそれぞれ約1.3及び1.4である。
【0026】
1実施形態において、ガイド1が形成された基板4に可動部1dが接着することを防止するために、基板4上に、可動部1dに対向する直接下部に導電金属電極6が設けられる。光ガイドの可動部上の電極2a及び2bが帯電された場合、光ガイド下部の誘電表面において逆の電荷が発生し、可動部1dが基板4の表面に接着し得る。可動部にとってこれは、可動部の端部のそれに続く光ガイドへの整列において問題となる。金属電極6が絶縁誘電体の下部に位置し、電極6が可動部上の電極2a及び2bと同等の電気的電位(電圧)に維持されるならば、異なる電荷は誘起されず、可動部を基板方向へ引き寄せる力は生じない。
【0027】
1実施形態において、光ガイドの可動部1dは、約8μm×10μm×700μmの寸法を有する。これは、5.6×10μmまたは5.6×10−5mmまたは5.6×10−8cmの体積を産出する。これは、約5.6×10−8cm×1.42g/cm=8×10−8gの質量を産出する。この例は、例示を目的とするものであって、可動部を上記で算出した質量に限定するものではない。また、可動部の長さは500から1500μmの範囲であり得る。これは、約5.7×10−8gから1.7×10−7gの質量の範囲を産出する。さらに、光ガイドの横断面は、正方形、直線的またはその他形状の断面であり得る。
【0028】
図2に示す光スイッチの1特徴は、ガイドを使用して入力から出力へと光信号を伝達すると同時に、同一のガイドがスイッチング機構のアクチュエータとなることであり、この実施形態のガイドは、小型、安価且つ振動に対して安定となることができる。この実施形態の別の利点は、可動部を備えたガイドが基板と一体的に形成されることである。さらに、1実施形態において、1つまたは複数のスイッチを形成し得る複数のファイバー及び電極を基板上に形成することができる。これらの部材は同一の工程の間に形成されるため、時間、空間及び資源を節約することができる。
【0029】
図3は、ガイド7及び9の間で静止位置にあるガイド1の1実施形態を示す。この位置では、ガイド1の電極並びに電極3及び5には電圧が印加されない。電極3及び5は、ガイド1の作動に必要な静電力を生成するために作用するだけでなく、ガイド1とガイド7及び9との間に必要な整列を提供するためにも作用する。これに関して、それぞれ電極3及び5の側面3a及び5bは、ガイド7及び9の側面7b及び9bとそれぞれ整列されている。
【0030】
ガイド1の電極2bと電極3との間に適当な電圧が印加された場合、この配列に基づいてガイド1は、ガイド1が電極3に接触するまで図4に示す位置に曲げられる。電極3と電極2bとの間には、ガイド1または電極3の側面のいずれかに絶縁層が配置されており、電極間での電気的短絡が防止される。絶縁層については、図22から25に関して後により詳細に説明する。この位置では、ガイド1の側面1bは、電極7の側面7bと整列され、入力光信号はガイド1からガイド7へと伝達される。
【0031】
1実施形態において電極ブロック3及び5は、V形状、図2に示すような斜位、または図3に示すようなガイド1と相互に平行に位置することができる。電極ブロック3及び5は、任意で互いに整列されずに位置することもできる。また、間隙に最も近い電極3及び5の位置は、整列を強化するためにガイド7及び9と平行であり得、間隙から遠い電極の位置は、電極間の静電的“ジッパー”効果を増強するために傾斜し得る。
【0032】
別の実施形態によると、ガイド1はガイド1と電極ブロック5との間に電圧が印加された場合、ガイド7と中立位置で、ガイド9と整列される。この実施形態では、第2電極ブロック3を必要としない。ガイド1は、電極ブロック5とガイド1の電極2aとの間の電圧をゼロ以外に低下することによって、ガイド9から取り外される。従って、可動部の湾曲によって発生する弾性力に起因してガイド1は中立位置に戻る。
【0033】
図4は、ガイド1をガイド7と整列させるために、ガイド1とブロック電極3との間に50Vの電圧が印加される実施形態を示す。ガイド1からブロック電極3に転流(スイッチング)させるために5msの期間が想定される。
【0034】
図5は、本発明の別の実施形態によるガイド1、7及び9と、電極2及び5との概略図を示す。図5において、電極3及び5と対応するパッド13及び15の電気的接続が導電フィルム17及び19として示されている。また、図5は、導電フィルム23を介して電極2aと接続されたガイド1に対応するパッド21を示す。図5において光信号がガイド1に入力されてガイド7及び9から出力されることが示されているため、この実施形態にでは、ガイド1は入力ガイドであり、ガイド7及び9は出力ガイドである。しかしながら、いずれのガイドも入力または出力ガイドとなることができる。言い換えると、単一の入力を2つの出力のうちの1つに向けるというよりも、2つの入力のうちの1つの間で選択することができる。
【0035】
光スイッチは、後述されるようなシリコンウエハの一部であり得る基板上に形成される。基板は、従来の方法でパッケージされることができ、例えば光ファイバーを配置するために例えばシリコンにおけるV型溝を使用して光ファイバーを基板上の入力及び出力ガイドに接続する方法がある。ポリマーガイドは、光を入力ファイバーからスイッチング領域25へと誘導し、スイッチング領域から他の光学部材及び出力ファイバーへと誘導する。ガイドは基板27の表面に取り付けられるが、クラッド層によって表面から任意で分離される。ガイドの上面及び側面は、空気またはガイドよりも屈折率の低いその他の流体にさらされるため、ガイドの周囲に効果的な光学クラッドを形成する。この場合、光はガイドに沿って損失せずに伝達される。クラッド層は任意で光学ガイドを覆って被覆される。
【0036】
次に、図5に示すスイッチを使用する方法について説明する。入力ガイド1は、スイッチング領域25に連続的に進入する。スイッチング領域25内の入力ガイドとスイッチング領域の外の入力ガイドとの違いは、スイッチング領域25内の入力ガイドが基板の表面から分離され、基板及びスイッチング領域25の外のガイドに対応して移動することができることである。スイッチング領域25の出力端において、カンチレバー入力ガイド端は、光を出力ガイド7及び9へとスイッチすることができる。
【0037】
スイッチング領域25において、2つの電極ブロック3及び5は入力ガイド1のいずれかの側面上に位置する。これらの電極ブロック3及び5は、入力ガイド1の端部(可動部)を帯電したいずれかの電極に向かって引き寄せるための電圧を可能とする。この場合、電極ブロックは停止ブロックとしても作用し、入力ガイドを固定位置に保持する。入力ガイド1からの光が2つの出力ガイド7及び9のうちの1つへと向かうように、2つの固定位置が用意される。ガイド1の中央の中立位置は、いずれの出力ガイドとも接続されず、スイッチの“オフ”位置を提供する。あらゆる電極及びガイドは微細加工プロセスにおいて同一のポリマー層を使用して形成されることができる。スイッチング領域25における入力ガイド1の静電動作を可能にするために、例えばAl及び/またはAu等の金属が入力ガイド1の短い部分の上、電極ブロック3及び5の近辺、及びガイドに面する電極ブロックの側面上に堆積(例えば斜め蒸着)される。金属は、チタニウム薄膜に続いてタングステン厚膜等のその他の材料を含み得る。
【0038】
金属電極は、外部の電気接触パッド13、15及び21と接続され得る。この場合、静電ブロック3及び5に印加された電圧に応じて、ガイド1が左または右に引き寄せられる構造が得られる。
【0039】
スイッチ動作領域25において、カンチレバー入力ガイドは基板の表面から分離され、可動部1dは移動することができる。ガイド1の可動部は、後述のように、微細加工プロセスの間に除去材料を使用することによって基板27の表面から分離される。この除去材料は、スイッチング動作が行われる領域特有のものであり、ガイド1の残りの部分はクラッド層によって基板27の表面に接着されたままである。
【0040】
図5に示すスイッチの動作についてここで説明する。静電ブロックとガイドの電極との間に約50Vが印加された場合、この電圧によってガイドの入力可動部1dは中立位置から対応する電極ブロックに接触するように移動される。後述するように、可動部がこれらの電極ブロックに接触する場合、可動部上に形成された導電膜は、電極ブロック3及び5と電気的に接続されないように絶縁される。
【0041】
第1電極ブロックに印加された50Vを停止すると同時に、同様の50Vの電圧が対向する電極ブロックに印加され、ガイドは対向する電極ブロックへと引き寄せられる。1実施形態において、移動するガイド1が電極ブロック3に隣接する場合にガイド1の出力が出力ガイド7へと向かうように2つの出力ガイド7及び9は配置される。同様に、ガイド1の可動部が電極ブロック5側に引き寄せられている場合、ガイド1の出力は出力ガイド9に向けられる。
【0042】
1実施形態において、出力ガイド7及び9は、入力ガイド1と同様の方法で適当なクラッド層を介して基板27の表面に取り付けられる。出力ガイド7及び9は、多重スイッチング要素を形成するためのさらなるスイッチまたは他のガイド回路要素への入力として作用するように基板27上に配置され得る。1実施形態によると、光通信用の多重スイッチング要素は、図8及び9に示すようなクロスコネクト35等の構造を含む。図8に示すクロスコネクトは、2つの入力と2つの出力とを備え、入力信号は2つの出力のいずれかで出力され得る。
【0043】
図5に示す光スイッチ要素は、基板25の表面上のポリマー層から構成される3つのガイドを含む。しかしながら、3つより多くのガイドが構成され得ることは当業者に容易に理解される。ここではガイド材料の例としてポリマーが使用される。ガラス等のほかの材料も使用されることができる。その他使用可能な有機材料は、ベンゾシクロブテン、さまざまなアクリレート(例えばポリメチルメタクリレート、Plexiglas(登録商標))、オレフィン(例えば環状オレフィンポリマー、商標Zeonex(登録商標)、環状オレフィンコポリマー、Topas(登録商標))、ポリカーボネート(例えばLexan(登録商標))、並びにポリイミド及びその他プラスチックのフッ化物を含む。
【0044】
入力ガイド1の一部及び2つの出力ガイド7及び9の全体は、基板25の表面に取り付けられている。しかしながら、別の実施形態では、出力ガイド7及び9の端面もまた基板27の表面に対応して移動し得る可動部を備え、対応する導電膜を備えて出力ガイドを入力ガイド1またはその他のガイドとさらに整列させるように電極ブロックを停止し得る。
【0045】
出力ガイド7及び9に隣接する入力ガイド1の可動部1dは、基板27の表面から分離されてカンチレバーを形成し、この部分は移動することができる。1実施形態によると、可動部の長さは1mm未満であり、基板の上を覆う可動部と基板との距離は約1μmである。一般的に、可動部の長さはさまざまな因子に依存し、例えばガイドを形成する材料の剛性及びその他機械的特性に依存する。
【0046】
上述の構造は、電極ブロックをさらに追加することによって2以上の配置を有するガイドまで拡張され得る。この点において、図6は、電極3及び5以外に、ガイド1を垂直方向に沿って作動させるためにガイド1の上部に配置された少なくとも1つの電極29を示す。この場合、ガイド1は、電極29と静電的に相互作用するための補助電極を備える。
【0047】
さらなる実施形態において、図7は、6つの異なる出力ガイド(図示せず)に対応する6つの異なる位置へのガイドの移動を可能にする複数の外側電極3、3’、5、5’、29及び31を示す。この実施形態において、3つの出力は上記で説明した2つの出力の場合と同様の方法、すわなち、表面が3つの出力のいずれかと整列され得る可動部を備えた入力ガイドを備えて表面が形成される方法で製造される。6つの出力を製造するために、3つの追加の出力が出力と電極ブロックとを備え、入力ガイドを備えていない表面上に製造される。この追加の表面は、第1表面の上に返され、“バンプ接合”または“フリップチップ”技術によって整列され定位置に保持される。電極ブロックの頂面からの静電力は、入力ファイバーの可動部を底面から持ち上げ、出力ガイドの頂面と整列させる。3つの出力では、頂面の中央に埋設された電極が光ガイドを頂面の中央に引き寄せるために使用される。この配置については後に詳細に説明する。
【0048】
図7に示すような2×3の電極またはガイドの周囲の1つの垂直側面及び水平側面上の配置された電極を含むがそれらに限定されず、いかなる電極の組み合わせも可能である。
【0049】
1実施形態において説明した静電スイッチの設計を使用して集積された光クロスコネクトが形成される。単純化するために、図5に示す2出力スイッチは図8aにおいて長方形の記号で示す。図8bに示すように2つのスイッチを使用して、図5に示すポリマーガイドを使用した2×2光クロスコネクトを作製することができる。単純化した記号をした回路の概略図を図8cに示す。
【0050】
12の処理された光スイッチを使用して、図9に示すような集積された4×4光クロスコネクトを作製することができる。記号は図8cに示すものと同一である。同様に、スイッチをガイド格子と組み合わせて光学マルチプレクサーを作製することができる。
【0051】
別の実施形態において、図10はルーターを形成するための複数のスイッチを示す。例えば、3列の光スイッチの2つのグループは、平面ガイド回路を使用していずれかの方向に、8つの入力のいずれかが8つの出力のいずれかにスイッチされることを可能にする。図10における小さな三角形は、1つの入力と2つの出力を備えた光スイッチを表す。直角連結部41は、全反射コーナー反射を表す。コーナーレフレクタは、直角連結に起因して光損失が増加するコストのかかるより小さな光回路を形成する。別の実施形態において、集積された光スイッチマトリックスを形成する曲がった交差部を備えた“再帰的ツリー構造”(非特許文献2に記載され、参照により全体がここに組み込まれる)等を使用することによって滑らかに曲がったガイドを使用して方向を変更することができる。
【0052】
本発明の実施形態は、光ファイバーまたはその他のソースから入力を取り込み、同じバンクのスイッチまたは隣接するバンクのスイッチにおける多くの可能な出力経路のうちの1つへと信号を明確に方向付けるスイッチング構造を提供する。この構造は、MEMSミラースイッチよりも単純かつ安価で、典型的な熱スイッチよりも動作が速い。
【0053】
本発明の1実施形態によるとさらに、微細加工された光スイッチ33のアレイ(図8参照)が提供され、このアレイは入力光信号を同じバンクのスイッチまたは隣接するバンクにおける多くの可能な出力のうちの1つへと送る。単純な設計は、低電流静電動作で作動する。
【0054】
さらに、本発明の1実施形態によると、光スイッチアレイ35(図9及び10参照)は、複数の出力を備えた単一の基板上に作製される。この設計は動作に使用される電力が小さい。光入力1は、中間電子信号へと変換することなく選択された光出力37へとスイッチされることができる。平面に製造することによって安価な製品を製造することが可能となる。ガイドの移動を停止するために集積されたブロックは、移動中車両においてでさえ構造体を頑丈且つ安定なものとする。スイッチ33の静電駆動は、その他の設計において使用される熱駆動よりもずっと高速且つ少ない電力で作動する。
【0055】
ガイドは、用途に応じて適当なサイズに設定される。単一モード光ファイバーとともに使用する場合、ガイドの幅は約10μmである。多重モード光ファイバーとともに使用する場合、ガイドの幅は約60μmである。用途に応じてその他のサイズを選択することも可能である。スイッチの長さは、ファイバーの幅及びファイバーが形成される材料の弾性に応じて変化する。
【0056】
スイッチ33のアレイは、平面基板上に形成される。所定の入力信号が多数の可能性のある出力の1つへと送られることができるように、スイッチユニットの出力は、後続のスイッチユニットの入力へと送られる。1平面配列からの信号が別の隣接する配列へとスイッチされることができるように、スイッチの平面配列は、“フリップ基板”技術等によって積層されることができる。これにより、低コストでスイッチの密度が増加される。
【0057】
本発明の実施形態では様々な形態が可能である。基本スイッチユニット33の出力が、光ファイバー39、さらなるガイドまたはその他の手段によってさらなるスイッチユニット33の入力へと伝達されることが予測される。基本スイッチユニットは、さまざまな出力形態を有し得る。図5に示すような入力ガイドの中立中央配置(すなわち、可動部の端面が出力ガイドの端面と整列されない入力ガイドの休止位置)を有するよりもむしろ、中央で出力位置出力配置であり得る。このような出力配置により、3つの可能な出力位置が生じる。停止ブロック上の電極に加えて、平面基板上のガイド下部に適当な電極を配置することによって、スイッチユニットあたり4つの出力位置を有することが可能となる。“フリップ基板”技術などの手段で第1表面上部に第2表面を配置することによって、3つまたは4つの出力位置を追加することが可能となるため、スイッチユニットあたり6または8の出力が生じる。出力位置間の距離は、光がガイドから漏出して意図したもの以外の出力に進入することを防ぐために十分大きくなくてはならない。
【0058】
この点において、光信号の伝達を最大限にすることを助けるために、入力光ガイドに面する出力光ガイドの端部は、わずかに張り出している。この場合、2つの光ガイドが完全な整列を満たさなくても張り出した端部が依然としてほとんどの光を集める。光ガイドの幅が一般的に約10μmである一方で、1実施形態において張り出した端部の幅は約12μmである。しかしながら、その他の幅であることも可能である。
【0059】
さらに、出力光ガイドは、ある出力に意図された光が別の出力に進入する可能性を制限するために距離が置かれる。1実施形態において、分離距離は、約18μmである。例えば赤外線通信波長の場合、入力光ガイドの幅プラス各側で伝達される光2波長と同等の分離距離を選択すると、10μm+(2×2×1.5μm)=16μmとなる。
【0060】
次に、ガイド1の製造方法について説明する。上述の光スイッチは、ポリマーガイドだけでなくスピンオンガラス等のその他の材料を使用してもよいがそれらに限定されるものではない。
【0061】
図5に示すようなポリマー光スイッチの製造は、典型的にシリコンウエハであるウエハ基板100上で開始される。電極ブロック3及び5並びにカンチレバー入力ガイド1への電気接続と同様に電気及び光分離を提供するために、パターン化された基層が追加される。層は典型的に金属、ポリマーまたは酸化物である。ガイド1の下部のスイッチング領域25において、化学作用、熱昇華またはその他の方法で除去されることができる層108が設けられる。これにより入力ガイドの対応部分が、層の除去後に自由に移動できるようになる。
【0062】
これらの層の上部に追加の層114が追加され入力ガイドと、2つの出力ガイドと、2つの静電ブロックとを形成するようにパターン化される。次の段階は、基板の静電的駆動のために金属116を堆積することである。この段階の1方法には、静電電極ブロックに面するガイドのエッジ及び電極ブロック自体に金属を斜め蒸着する方法がある。金属はまた、制御回路の接触パッドにこれらの側面要素を接続するように作用する。
【0063】
構造設計及び製造方法は、金属を必要とせず後に従来の物理または化学エッチング法によって除去されるその他の部分の領域を全てマスクするように制御される。追加の製造段階では、ショートを防ぐために金属側壁を被覆する絶縁側壁126を形成する。最終製造段階では、剥離層108を除去して入力ガイド1の部分1dを機械的に自由にする。
【0064】
光伝達を向上させるための更なる改良は、反射を減少させるためのガイドの端部の反射防止膜を含み得る。更なる変更は、空気以外の流体のスイッチ周囲への使用を含み得る。流体の屈折率は、クラッド要件を満たすために空気より大きくガイドより小さくなるよう選択され得る。
【0065】
上述の設計は、従来の光スイッチより小型である。ガイドがそれ自体のアクチュエータであり、停止ブロック間の距離が短いため、多くのスイッチが単一のウエハ上に製造されることができる。これによりスケールメリットが可能となり、スイッチの価格が低下する。この構造体はさらに、大規模集積の利益を提供する単一ウエハ上のスイッチを含む複雑な回路の製造を可能にする。ガイドの静電駆動によって、スイッチが必要とする電力が低下する。
【0066】
上述の光スイッチの製造工程を、図11から24を参照してさらに詳細に説明する。図11は、製造の間に使用される材料とともに処理された光スイッチを示す。しかしながら、光ファイバーを製造する当業者に周知であるようにその他の材料も使用することができる。図11はさらに、後に説明されるさまざまな横断面図を表示する。
【0067】
図12に示されるように、例えばLPCVDによって基板100上にSi層102が蒸着される。基板100はシリコンウエハであり得る。Si層は、1500Åの厚さを有し得る。このLPCVD法は、基板100全体の上に均一な被膜を形成する。窒化物は、形成されるガイド1の可動部の下部から犠牲酸化物を除去するために使用される工程の最後に“リリースエッチング”を停止するための“エッチングバリア”を提供する。この窒化物はまた、電気接点と基板100との間に絶縁層を提供する。窒化物層を保護するために基板100の前側を任意でレジストで被覆することができ、そこの窒化物を除去するために基板100の背部を反応性イオンエッチング(RIE)することができる。この任意の段階により、必要に応じてシリコン基板と電気的接触が可能となる。この工程の後に、レジストはウエハの前面から除去され得る。
【0068】
次に、レジスト層がウエハの前面に堆積され、レジストは第1マスクを通してパターン化される。第1マスクの目的は、ガイドが静電気引力によって基板に向かって湾曲することを防止するために、ガイド1の可動部の下部に導電金属電極を形成することである。
【0069】
厚さ1000Åを有するCr層104が、シリコン窒化物層102上に形成される。Cr層104において応力が大きい場合、150Å/1000Å/150Åの厚さを有するCr/Au/Crの層の組み合わせが蒸着によってシリコン窒化物102上に堆積され得る。その後、レジスト及び余剰の金属はリフトオフ工程で除去される。
【0070】
さらに、1μmの厚さを有する第1ポリイミド層106がウエハ全体の上に均一に被覆される。ポリイミドは被覆の後に硬化される。金属電極の底部までビアホールを形成するために、パターン化されたレジストが第2マスクを使用してポリイミドの上に堆積される。その後、ポリイミドは反応性イオンエッチングでエッチングされ、レジストは除去される。次に、PECVDによって酸化物108が1μmの厚さを有するように堆積される。別のレジストが堆積され、第3マスクを使用してパターン化される(ガイドの可動部の下部の剥離層用)。酸化物層108は湿式エッチングされて図12に示されるようなより傾斜したエッジを形成する。その後、レジストは除去される。
【0071】
次に、図13に示すように(装置の一部のB‐B断面図)、レジストは第4マスクを使用してパターン化される(ポリマーガイドをエッチングするためのエッチング停止を提供する薄い金属ブランケット層用)。アルミニウムが蒸着されて1000Åの厚さを有する層110を形成する。任意でAl/Cuが蒸着される。ここでCuはヒロックの形成を低減するために加えられる。次に、レジスト及び余剰の金属が除去される。剥離層の除去によってガイドが空間に張り出している場合は反射クラッドを必要とせず、金属層110はガイド1底部の反射クラッドとしても作用する。光学的に優れた方法は、反射クラッドの代わりに、全反射によるクラッド用の低透過度材料を使用するものであり、後に説明される。
【0072】
図13に示すように、レジストは第5マスクを使用してパターン化され、完成した装置のワイヤボンディングのためのパッド金属並びにガイド及び電極への金属リードラインを形成する。アルミニウム(またはAl/Cu)が堆積されて9000Åの厚さを有する層112を形成する。その後、レジスト及び余剰の金属が除去される。
【0073】
ガイドの光学特性を高めるために金属層は任意でより薄いこともでき、ワイヤボンディングパッド用のより厚い金属を堆積及びパターン化するために、これらの段階の後に追加のマスクを使用することもできる。
【0074】
第2ポリイミド層114は9μmの厚さで堆積(被覆及び硬化)される。単一のポリイミド層114は、任意で3層のポリマー積層体に置き換えることも可能である。積層体の上部及び底部は薄い低屈折率材料であり、中間のポリイミドを被覆してガイドのコアを形成する。ここで光はポリイミドに捕捉される。パリレンはクラッドに可能な材料である。Ti/W層116は、例えばスパッタリングによって3000Åの厚さに堆積される。レジストは第6マスクを使用してパターン化されてガイド及び偏向電極を画定する。Ti/W層は、9μmのポリイミド層を反応性イオンエッチングする次の段階のエッチングマスクとして使用される。その後、Ti/Wの層は反応性イオンエッチングされる。
【0075】
図14は、A−A横断面における装置の一部を示し、図15はB−B横断面における同じ装置の一部を示し、図16は、C−C横断面における同じ装置の一部を示す。
【0076】
図17に示すように、本実施形態では、Alが斜め蒸着されて250Åの厚さを有する層118が形成され、次いで2000ÅのAu層120、次いで180度回転して斜め蒸着された250ÅのAl層122、次いで2000ÅのAu層124が形成される。この層118〜124の積層体によって、図17(横断面A−A)、図18(横断面B−B)、図19(横断面C−C)に示すようにガイド1の両面の被覆が提供される。次の段階では、Au/Al/Au/Alの積層体の上部及び1000ÅのAl底層をイオンミルオフする。
【0077】
図20は、優れた選択性を得るために湿式エッチング工程でエッチングされたTi/W層を示す。選択性が優れていれば反応性イオンエッチングを使用してもよい。フォトレジストが第7マスクを使用してパターン化され、光ガイドの端部及び受動ガイドの側面が露出される。光損失を低減するために金属側壁はガイドから除去され、より優れた光伝達のためにガイドの端部から金属が除去される。Au/Al/Au/Alの層は露出された側壁から湿式エッチングされ、その後フォトレジストは除去される。
【0078】
4000Åの厚さを有するパリレンの層126が堆積されて装置全体に均一な被膜が形成され、その後パリレンの層126は異方性エッチングである反応性イオンエッチングされ、図21に示すようにパリレンはガイドの上面から除去され、ガイドの側面上には残される。パリレン層126はガイドの電極と偏向電極との間の電気的絶縁体として作用する。
【0079】
図22はガイドの側面に堆積されたパリレン層126を示し、さらにB−B横断面におけるガイドの導電膜118、120、122及び124を示す。
【0080】
図24に示すように、酸化物層108は湿式エッチングされてガイド1の可動部が分離され、その後全構造体は超臨界CO乾燥される。図25は、C−C横断面における最終的な光スイッチを示す。上述の段階の変形例として、斜め蒸着の代わりに平面蒸着またはスパッタリングを使用してもよく、TiW層は例えばポリイミドエッチングの後等プロセスの間の別の段階で除去されてもよい。
【0081】
従って、上述の方法を使用することによって、図1〜5の1つに示される光スイッチが得られる。同様の段階を使用して図8a〜11に示される光スイッチを製造することもできる。
【0082】
本発明は、上述の技術に照らしてさまざまに修正及び変更することが可能である。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲内においてここで特に説明した方法以外でも実施され得ることが理解される。
【符号の説明】
【0083】
1、7、9 ガイド
1a、1b 側面
1d 可動部
2a、2b 電極
3、5 電極
4 基板
6 導電金属電極
13、15、21 パッド
19、23 導電フィルム
25 スイッチング領域
29、31 電極
33 光スイッチ
35 クロスコネクト
37 光出力端
39 光ファイバー
41 直角連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光経路と第2光経路との間で光信号をスイッチングするための光学装置であって、
基板と、
前記基板上に形成され、前記基板から分離されて第1ガイドが前記基板に接している部分の反対側に前記第1ガイドの端部を形成している可動部を備え、前記第1光経路の少なくとも一部を形成している第1ガイドと、
前記第1ガイドに隣接して配置され、前記第2光経路の少なくとも一部を形成している第2ガイドと、
前記第1ガイドを前記第2ガイドへと光学的に連結させるように前記可動部を静電的に湾曲させる手段と、を備えた装置。
【請求項2】
前記第1ガイドに隣接して配置され、静電的に湾曲させる前記手段によって前記第1ガイドの前記可動部が静電的に湾曲された場合に前記第1ガイドと光学的に連結されるように構成され、第3光経路の少なくとも一部を形成している第3ガイドをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1ガイドに隣接して配置され、前記第1ガイドの前記可動部が湾曲されない場合に前記第1ガイドと光学的に連結されるように構成され、第3光経路の少なくとも一部を形成している第3ガイドをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
第1光経路と第2光経路との間で光信号をスイッチングするための光学装置であって、
基板と、
可動部の長手方向の端部に位置する端面並びに前記端面に隣接する第1側壁及び第2側壁を備えて基板から分離されて第1ガイドが前記基板に接している部分の反対側に前記第1ガイドの端部を形成している可動部を備え、前記基板上に形成され、前記第1光経路を形成している第1ガイドと、
前記可動部の前記第1側壁上に形成された第1導電層と、
前記可動部に対向して前記基板から突出し、第1電極と前記第1導電層との間に第1電圧が印加された場合に前記第1ガイドの前記可動部を静電的に湾曲させるよう構成された第1電極と、
前記第1ガイドの前記端面に隣接して配置され、前記第1電圧によって前記第1ガイドの前記可動部が静電的に湾曲された場合に前記第1ガイドと光学的に連結され、前記第2光経路を形成している第2ガイドと、を備えた装置。
【請求項5】
前記第1ガイドと前記第2ガイドとが光学的に連結された場合に、前記第1ガイドが前記第1電極と接触することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1ガイドと前記第2ガイドとの間に伸びて、その間の光散乱を低減する媒体をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記可動部の前記第2側壁上に形成された第2導電層と、
前記可動部に対向して前記基板から突出し、第2電極と前記第2導電層との間に第2電圧が印加された場合に前記第1ガイドの前記可動部を静電的に湾曲させるよう構成された第2電極と、
前記第1ガイドの前記端面に隣接して配置され、前記第2電圧によって前記第1ガイドの前記可動部が静電的に湾曲された場合に前記第1ガイドと光学的に連結されるよう構成され、第3光経路を形成している第3ガイドと、をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記第1ガイドと前記第3ガイドとが光学的に連結された場合に、前記第1ガイドが前記第2電極と接触することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1ガイドと前記第3ガイドとの間に伸びて、その間の光散乱を低減する媒体をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記第1ガイドが前記第1電極と前記第2電極との間に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記第1電極と前記第2電極とが前記第1ガイドに対して等しい角度で配置されていることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記第1ガイドの前記端面に隣接して配置され、前記第1ガイドの前記可動部が湾曲されない場合に前記第1ガイドと光学的に連結されるように構成され、第3光経路を形成している第3ガイドをさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項13】
前記可動部が所定の距離だけ前記基板から分離されていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも前記可動部の前記端面または前記第2ガイドの端面に被覆された反射防止層をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項15】
請求項4に記載の複数の光学装置と、
前記複数の光学装置を接続する複数の光ファイバーと、を備えた光ルーティング装置。
【請求項16】
請求項4に記載の複数の光学装置と、
前記複数の光学装置を接続する複数の光ファイバーと、
前記光学装置の間で前記光ファイバーを連結するように構成された複数の光接続と、を備えた光ルーター。
【請求項17】
前記光接続が直角接続であることを特徴とする請求項16に記載の光ルーター。
【請求項18】
入力光経路から複数の出力光経路の1つへと光信号をスイッチングするための光学装置であって、
基板と、
可動部の長手方向の端部に位置する端面及び前記端面に隣接する側壁を備えて基板から分離されて入力ガイドが前記基板に接している部分の反対側に前記入力ガイドの端部を形成している入力ガイドの可動部を備え、前記基板上に形成され、前記入力光経路を形成している入力ガイドと、
前記可動部の前記側壁上に形成された導電層と、
前記基板に接続されて前記入力ガイドから分離され、対応する前記導電層に対向し、入力ガイドの前記可動部を少なくとも部分的に覆い、前記電極のうちの1つと前記導電層のうちの1つとの間に対応する電圧が印加された場合に前記入力ガイドの前記可動部を静電的に湾曲させるよう構成された電極と、
前記入力ガイドの前記可動部が静電的に湾曲された場合に複数の前記出力ガイドのうち選択された1つと光学的に連結される前記入力ガイドの前記端面に隣接して配置され、前記出力光経路を形成している出力ガイドと、を備えた装置。
【請求項19】
前記電極が3から12の電極を含むことを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記導電層が4の導電層を含むことを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記導電層の数が前記電極の数と同一であることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記基板が複数の基板部分を含むことを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項23】
前記基板が、それぞれが同一の数の電極がそこに形成された複数の基板部分を含むことを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項24】
各導電層が前記可動部の前記側壁のうちの各側壁上に形成されたことを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項25】
第1ガイドと第2ガイドとの間で光信号をスイッチングするための方法であって、
基板上に形成された前記第1ガイドの可動部を支持する前記基板から分離されて第1ガイドが前記基板に接している部分の反対側に前記第1ガイドの端部を形成している前記可動部に光信号を導入する段階と、
前記第1ガイドの前記可動部を静電的に湾曲させて前記第1ガイドを前記第2ガイドと光学的に連結させる段階と、を含む方法。
【請求項26】
前記静電的にが、第1電圧を印加して前記第1ガイドの前記可動部を静電的に湾曲させて前記第1ガイドを前記第2ガイドと光学的に連結させることを含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
第2電圧を印加して前記第1ガイドの前記可動部を静電的に湾曲させて前記第1ガイドを前記第1ガイドに隣接して配置された第3ガイドと光学的に連結させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
入力ガイドから複数の出力光ガイドのうちの1つへと光信号をスイッチングするための方法であって、
基板上に形成された前記入力ガイドの可動部を支持する前記基板から分離されて入力ガイドが前記基板に接している部分の反対側に前記入力ガイドの端部を形成している前記可動部に光信号を導入する段階と、
前記入力ガイドの前記可動部を静電的に湾曲させて前記入力ガイドを前記複数の出力光ガイドのうちの選択された1つと選択された程度選択的に光学的に連結させる段階と、を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2010−529504(P2010−529504A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511229(P2010−511229)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/060482
【国際公開番号】WO2008/154071
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(500240896)リサーチ・トライアングル・インスティチュート (36)
【出願人】(310013381)
【Fターム(参考)】