説明

光センサ装置及びその製造方法

【課題】リードフレームの開口部のアスペクト比を高めることができ、装置の小型化を実現できるようにした光センサ装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】赤外線を検出するIR素子10と、IR素子10に積層された光学フィルタ20と、貫通した第1の開口部を有する第1のリードフレーム31と、貫通した第2の開口部を有する第2のリードフレーム36と、IR素子10及び光学フィルタ20を覆うモールド樹脂50と、を備え、第2のリードフレーム36上に第1のリードフレーム31が配置されて、第1の開口部と第2の開口部とが平面視で重なり、第1の開口部と第2の開口部とが平面視で重なる領域(即ち、開口部51)に、IR素子10及び光学フィルタ20が配置され、光学フィルタ20の受光面21はモールド樹脂から露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線等の光を検出する光センサ装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。かかる文献には、その図2に示されているように、赤外線のみを透過させる光学フィルタ付きのセンサ素子が、その受光面を除いて樹脂で覆われた構造の赤外線センサが開示されている。センサ素子は、赤外線によって光起電力効果を生じる量子型のフォトダイオードである。また、光学フィルタは、特定の波長の赤外線のみを透過させる機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−133946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているように、センサ素子に光学フィルタを取り付け、これらをリードフレームの貫通した開口部内に配置して1パッケージ化する場合、リードフレームの開口部にはセンサ素子の厚さと光学フィルタの厚さ、及び、Au等からなるワイヤーのループ高さとを合計した大きさ以上の深さが必要とされる。即ち、図17に示すように、リードフレーム90の厚さ(=開口部91の深さ)をT1とし、センサ素子95の厚さT2とし、光学フィルタ96の厚さT3と、センサ素子95とリードフレーム90を電気的に接続するワイヤー97のループ高さをT4としたとき、T1は下記の(1)式を満たす必要がある。
T1>T2+T3+T4…(1)
【0005】
しかしながら、リードフレーム90を厚くすると開口部91の深さT1だけでなく、開口部91の幅Wも広がってしまうため、赤外線センサを小型化することができない、という課題があった。
詳しく説明すると、図17に示すようなリードフレーム90の貫通した開口部91は、例えば、リードフレーム90を表面90a及び裏面90bの側からそれぞれエッチングすることにより形成することができる。このエッチングは等方性のウェットエッチングであり、リードフレーム90の深さ方向(Z方向)へのエッチングと同時に水平方向(X方向、Y方向)へのエッチングも進行する。このため、リードフレーム90の厚さが大きいほど、形成される開口部91の幅Wも大きくなってしまう。
【0006】
また、このような開口部91を形成する他の方法として、金型を用いてリードフレーム90をパンチングする方法も考えられるが、この方法においても、リードフレーム90の厚さT1よりも幅Wの小さい開口部を形成することはできない。
そこで、この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、リードフレームの開口部のアスペクト比を高めることができ、光センサ装置の小型化を実現できるようにした光センサ装置及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る光センサ装置は、光を検出する光センサ素子と、前記光センサ素子に積層された光学フィルタと、貫通した第1の開口部を有する第1のリードフレームと、貫通した第2の開口部を有する第2のリードフレームと、前記光センサ素子及び前記光学フィルタを覆う封止部材と、を備え、前記第2のリードフレーム上に前記第1のリードフレームが配置されて、前記第1の開口部と前記第2の開口部とが平面視で重なり、前記第1の開口部と前記第2の開口部とが平面視で重なる領域に、前記光センサ素子及び前記光学フィルタが配置され、前記光学フィルタの受光面は前記封止部材から露出していることを特徴とする。
【0008】
このような構成であれば、第1のリードフレームと第2のリードフレームとの組み合わせにより、1つのリードフレームが構成される。また、この1つのリードフレームの開口部(即ち、第1の開口部と前記第2の開口部とが平面視で重なる領域)について、その幅は第1の開口部(又は、第2の開口部)の幅と同じ大きさに抑えられ、その深さは第1の開口部と第2の開口部のそれぞれの深さを合計した深さとなる。これにより、幅が狭くて深い(即ち、アスペクト比の大きい)開口部が実現する。光センサ装置の小型化が可能である。なお、「封止部材」としては、例えば、後述するモールド樹脂50が該当する。また、「第1の開口部と第2の開口部とが平面視で重なる領域」としては、例えば、後述する開口部51、61、62が該当する。
【0009】
また、上記の光センサ装置において、前記光センサ素子は、第1の光センサ素子と第2の光センサ素子とを含み、前記光学フィルタは、前記第1の光センサ素子に積層された第1の光学フィルタと、前記第1の光学フィルタと特性が異なり且つ前記第2の光センサ素子に積層された第2の光学フィルタとを含み、前記第1の開口部と前記第2の開口部とが平面視で重なる領域は、第1の領域と、前記第1の領域と位置が異なる第2の領域とを含み、前記第1の光センサ素子及び前記第1の光学フィルタは前記第1の領域に配置され、前記第2の光センサ素子及び前記第2の光学フィルタは前記第2の領域に配置されていることを特徴としてもよい。
【0010】
ここで、「特性」としては、例えば、波長に依存した光の透過率特性が挙げられる。例えば、第1の光学フィルタは、その特性として、第1の波長範囲の光のみを選択的に(即ち、透過率高く)透過させる機能を有する。第2の光学フィルタは、その特性として、第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲の光のみを選択的に透過させる機能を有する。このような方法であれば、例えば、第1の光センサ素子から出力される電気信号と、第2の光センサ素子から出力される電気信号とに基づいて、外界から入射してくる光の強度を波長範囲毎に特定することが可能となる。従って、例えば、人感センサや炎センサなどに極めて好適に用いることができる。なお、「第1の領域」としては、例えば、後述する開口部61が該当する。「第2の領域」としては、例えば、後述する開口部62が該当する。
【0011】
また、上記の光センサ装置において、前記第2のリードフレームの第1の面上に前記第1のリードフレームが配置されており、前記第2のリードフレームの前記第1の面の反対側の第2の面は前記封止部材により全て覆われていることを特徴としてもよい。このような構成であれば、パッケージに含まれる第2のリードフレームの第2の面は樹脂部材により全て覆われており、光学フィルタの受光面の側には第1、第2のリードフレーム(以下、これらを合わせて単にリードフレームともいう。)の何れも露出していない。このため、例えば、受光面の側に液滴等が付着した場合でも、この液滴がリードフレームに触れることはなく、液滴を介して光学フィルタとリードフレームとがショートしてしまうことを防ぐことができる。また、光学フィルタの受光面の側には、リードフレームが露出していないため、例えば、ユーザーがリードフレームを光学フィルタの受光面であると誤認してしまうようなことも防ぐことができる。なお、「第1の面」としては、例えば、後述する表面66a、86aが該当する。また、「第2の面」としては、例えば、後述する裏面66b、86bが該当する。
【0012】
また、本発明の別の態様に係る光センサ装置の製造方法は、第1のリードフレームが有する貫通した第1の開口部と、第2のリードフレームが有する貫通した第2の開口部とが平面視で重なるように、前記第2のリードフレームの第1の面上に前記第1のリードフレームを配置する工程と、前記第2のリードフレームの前記第1の面の反対側の第2の面に、粘着テープの粘着性を有する面を貼付する工程と、前記第1の開口部と前記第2の開口部とが平面視で重なる領域に、光センサ素子及び当該光センサ素子に積層された光学フィルタを配置して、前記光学フィルタの受光面を前記粘着テープの前記粘着性を有する面に貼付する工程と、前記光センサ素子及び前記光学フィルタを封止部材で覆う工程と、前記封止部材及び前記第2のリードフレームから前記粘着テープを除去する工程と、前記封止部材と前記第1のリードフレーム及び前記第2のリードフレームを切断してパッケージを形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
このような方法であれば、第1のリードフレームと第2のリードフレームとの組み合わせにより、1つのリードフレームを構成することができる。また、この1つのリードフレームの開口部(即ち、第1の開口部と前記第2の開口部とが平面視で重なる領域)について、その幅を第1の開口部や第2の開口部の各幅と同じ大きさに抑えつつ、その深さを第1の開口部と第2の開口部のそれぞれの深さを合計した深さにすることができる。これにより、幅が狭くて深い(即ち、アスペクト比の大きい)開口部を実現することができるため、光センサ装置の小型化が可能である。
【0014】
また、上記の光センサ装置の製造方法において、前記光センサ素子は、第1の光センサ素子と第2の光センサ素子とを含み、前記光学フィルタは、前記第1の光センサ素子に積層された第1の光学フィルタと、前記第1の光学フィルタと特性が異なり且つ前記第2の光センサ素子に積層された第2の光学フィルタとを含み、前記第1の開口部と前記第2の開口部とが平面視で重なる領域は、第1の領域と、前記第1の領域と位置が異なる第2の領域とを含み、前記光センサ素子及び前記光学フィルタを配置する工程は、前記第1の光センサ素子及び前記第1の光学フィルタを前記第1の領域に配置して、前記第1の光学フィルタの受光面を前記粘着テープの前記粘着性を有する面に貼付する工程と、前記第2の光センサ素子及び前記第2の光学フィルタを前記第2の領域に配置して、前記第2の光学フィルタの受光面を前記粘着テープの前記粘着性を有する面に貼付する工程と、を含み、前記パッケージを形成する工程では、前記第1の光センサ素子及び前記第1の光学フィルタと前記第2の光センサ素子及び前記第2の光学フィルタとが同一のパッケージ内に含まれるように、前記封止部材と前記第1のリードフレーム及び前記第2のリードフレームを切断することを特徴としてもよい。
【0015】
このような方法であれば、例えば、外界から入射してくる光を複数の波長範囲毎にそれぞれ検出することが可能な光センサ装置を提供することができる。この光センサ装置は、第1の光センサ素子から出力される電気信号と、第2の光センサ素子から出力される電気信号とに基づいて、入射してくる光の強度を波長範囲毎に特定することが可能となる。従って、例えば、人感センサや炎センサなどに極めて好適な光センサ装置を提供することができる。
【0016】
また、上記の光センサ装置の製造方法において、前記第2のリードフレームは、前記パッケージの内側となる第1の部位と、前記パッケージの外側となる第2の部位とを有し、前記第1の部位は前記第2の部位よりも厚さが小さく、且つ、前記第1の面を上側に向け、前記第2の面を下側に向けたときに、前記第1の部位の前記第2の面は前記第2の部位の前記第2の面よりも上側に位置することを特徴としてもよい。このような方法であれば、パッケージに含まれる第2のリードフレームの第2の面を全て封止部材で覆うことができる。このため、光学フィルタの受光面の側にリードフレーム露出していない光センサ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、リードフレームの開口部のアスペクト比を高めることができ、光センサ装置の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係るIRセンサ装置100の構成例を示す図。
【図2】IRセンサ装置100の外観の一例を示す図。
【図3】IR素子10の構成例を示す図。
【図4】第1実施形態に係る第1のリードフレーム31の構成例を示す図。
【図5】第1実施形態に係る第2のリードフレーム36の構成例を示す図。
【図6】IRセンサ装置100の製造方法を示す図。
【図7】第1、第2のリードフレーム31、36の仮止め方法の一例を示す図。
【図8】第2実施形態に係るIRセンサ装置200等の構成例を示す図。
【図9】IRセンサ装置200の外観の一例を示す図。
【図10】IRセンサ装置200の製造方法を示す図。
【図11】第3実施形態に係るIRセンサ装置300の構成例を示す図。
【図12】IRセンサ装置300の外観の一例を示す図。
【図13】第3実施形態に係る第1のリードフレーム71の構成例を示す図。
【図14】第3実施形態に係る第2のリードフレーム76の構成例を示す図。
【図15】第4実施形態に係るIRセンサ装置400等の構成例を示す図。
【図16】IRセンサ装置400の外観の一例を示す図。
【図17】課題を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合もある。
(1)第1実施形態
(1.1)IRセンサ装置の概略構成
図1(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係るIRセンサ装置100の構成例を示す平面図と、この平面図をA1−A´1線で切断した断面図である。なお、図1(a)では図面の複雑化を回避するためにモールド樹脂の図示を省略している。また、図1(a)において、ハッチングを付した領域は表面の側からハーフエッチングされた領域(以下、ハーフエッチング領域ともいう。)を示し、グレーの領域は表面の側からハーフエッチングされていない領域(以下、非エッチング領域)を示している。さらに、図1(b)では、IR素子とリードフレームとの接合の状態を明確にするために、当該断面において紙面の手前側又は奥側にあるワイヤーも図示している。
【0020】
図1(a)及び(b)に示すように、このIRセンサ装置100は、IR素子10と、IR素子10の受光面に積層された(取り付けられた)光学フィルタ20と、リードフレーム30と、IR素子10とリードフレーム30とを電気的に接続する金(Au)等からなるワイヤー40と、IR素子10と光学フィルタ20とを覆うモールド樹脂50と、を備える。
図1(b)に示すように、リードフレーム30は、第1のリードフレーム31と、第2のリードフレーム36とを含み、これらが重なって1つのリードフレーム30を構成している。そして、このリードフレーム30の貫通した開口部51にIR素子10及び光学フィルタ20が配置されている。
【0021】
また、図1(b)に示すように、このIRセンサ装置100において、光学フィルタ20の受光面21は、モールド樹脂50から露出しており、第2のリードフレーム36の裏面36bと同一平面となるように(即ち、面一となるように)配置されている。
図2は、IRセンサ装置100の外観の一例を示す斜視図である。図2に示すように、このIRセンサ装置100のパッケージの形状は例えば直方体である。光学フィルタの受光面21は、パッケージの上面(即ち、第2のリードフレームの裏面36bであり、モールド樹脂50の表面でもある。)と面一となるように配置されている。外界の光は、光学フィルタの受光面21に入射し、光学フィルタを通ってIR素子の受光面に到達するようになっている。以下、IRセンサ装置100を構成する各要素と、その製造方法について詳しく説明する。
【0022】
(1.2)IR素子及び光学フィルタの構成
図3(a)及び(b)は、IR素子10の構成例を示す図である。図3(a)はIR素子10の表面側を示し、図3(b)は光電変換素子13の断面を示す。図3(a)に示すIR素子10は、赤外線を検出する光センサ素子であり、赤外線等の光を透過する光透過基板11と、この光透過基板11の表面側に形成された受光部12と、を備える。
【0023】
これらの中で、光透過基板11としては、GaAs基板が用いられる。また、GaAs基板の他に、例えば、Si、InAs、InP、GaP、Geなどの半導体基板、若しくは、GaN、AlN、サファイヤ基板、ガラス基板などの基板が用いられる。このような基板によれば、赤外線等の特定波長の光を、光透過基板11の裏面16から表面にかけて効率的に透過させることができる。
【0024】
また、受光部12は、複数の光電変換素子13と、光電変換素子13で光電変換された電気信号を出力するためのパッド部14と、配線15と、を有する。光電変換素子13はいずれも量子型のフォトダイオードであって、配線15によって直列に接続されている。接続される光電変換素子13の数が大きいほど発生する起電力は大きくなり、センサとしての感度が高まる。
【0025】
図3(b)に示すように、光電変換素子13は、例えば、光透過基板11上に形成されたインジウム(ln)及びアンチモン(Sb)を含むInSbのようなn型化合物半導体層(n層)13aと、このn層13a上に形成されたノンドープの化合物半導体層層(π層)13bと、このπ層13b上に形成され、バンドギャップがn層13a及びπ層13bよりも大きいAlInSbのような化合物半導体層13cと、この化合物半導体層13c上に形成され、p型の不純物が高濃度にドーピングされているp型化合物半導体層(p層)13dとにより構成されている。このように、n層13aと、π層13bと、n層13a及びπ層13bよりもバンドギャップが大きい化合物半導体層13cと、p層13dとが順次積層されてなる光電変換素子13は、2000nm〜7400nmの赤外線を検出することができる。
【0026】
図3(a)に示すパッド部14は、受光部12の光電変換で得られた電気信号をIC素子に出力するために設けられている。このパッド部14は、例えば、互いに離間して配置された一対のパッド電極14a及び14bを有する。一方のパッド電極14aと複数の光電変換素子13からなる列の一端との間、及び、他方のパッド電極14bと上記列の他端との間がそれぞれ、配線15によって電気的に接続されている。
【0027】
ところで、このIR素子10において、パッド部14は、IR素子10の表面のより中心に近い一部範囲(中心部)に配置されている。また、複数の光電変換素子13は、このパッド部14の周囲に配置されている。このような配置によれば、パッド電極14a、14bにワイヤーボンディングする際、圧力や超音波が加わっても光透過基板11が欠損し難いという利点がある。また、光透過基板11が欠損し難いため、パッド電極14a、14bに対して、Au等からなるワイヤーを充分な圧力や超音波で接合することができる。このため、ワイヤーをパッド電極14a、14bにより確実に圧着することができ、ワイヤーボンディングの信頼性を高めることができる。
【0028】
一方、このIR素子10の裏面(即ち、受光面)16に積層された光学フィルタ20(図1(b)参照。)は、所望の波長範囲の光を選択的に(即ち、透過率高く)透過させる機能を有するものである。例えば、この光学フィルタ20は、赤外線のみを透過する機能を有する。
或いは、この光学フィルタ20は、赤外線の中でも、特定の波長範囲の赤外線のみを透過する機能を有するものであってもよい。例えば、光学フィルタ20は、光学部材と、この光学部材上に多層で形成された薄膜とで、長波長又は短波長、又はその両方の波長の赤外線を透過させない機能を有するものであり、これらの透過機能を組み合わせて結果的に、特定の波長の赤外線のみを透過させる機能を有するものであってもよい。
【0029】
この光学フィルタ20は、特定の波長の赤外線のみを透過させる機能を1枚で行っても良いし、場合によっては複数枚を使用することもできる。また、この光学部材の材料としては、シリコン(Si)、硝子(SiO)、サファイヤ(Al)、Ge、ZnS、ZnSe、CaF、BaFなどの所定の赤外線が透過する材料が用いられ、また、これに蒸着される薄膜材料としては、シリコン(Si)、硝子(SiO)、サファイヤ(Al)、Ge、ZnS、TiO、MgF、SiO、ZrO、Taなどが使用される。また、光学部材上に異なる屈折率を有する誘電体を層状に積層した誘電体多層膜フィルタは、表面、裏面異なる所定の厚み構成で両面に作られていてもよいし、また、片面のみに形成されていてもよい。また、不要な反射を防止する目的で反射防止膜が表面、裏面の両面、又は片面の最表層に形成されていても構わない。
【0030】
(1.3)リードフレームの構成
図4(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係る第1のリードフレーム31の構成例を示す平面図である。図4(a)は第1のリードフレーム31の表面31aを示し、図4(b)は第1のリードフレーム31の裏面31bを示している。
図4(a)及び(b)に示す第1のリードフレーム31は、例えば、銅(Cu)板を、フォトリソグラフィ技術により、その表面31a及び裏面31bの側からそれぞれ選択的にエッチングし、ニッケル(Ni)−パラジウム(Pd)−金(Au)等のめっき(鍍金)処理を施すことにより形成されたものである。
【0031】
図4(a)において、第1のリードフレーム31内の白色の領域は表面31aと裏面31bとの間を貫通した第1の開口部32を示し、ハッチングを付した領域は表面31aの側からハーフエッチングされた領域(即ち、ハーフエッチング領域)33aを示す。また、グレーの領域はエッチング時にフォトレジスト等で表面31aがマスクされることにより、エッチングされなかった領域(即ち、非エッチング領域)34aを示す。
【0032】
同様に、図4(b)において、第1のリードフレーム31内の白色の領域は第1の開口部32を示し、ハッチングを付した領域は裏面31bの側からハーフエッチングされたハーフエッチング領域33bを示す。また、グレーの領域はエッチング時にフォトレジスト等で裏面31bがマスクされることにより、エッチングされなかった非エッチング領域34bを示す。
なお、図4(a)及び(b)に示す第1のリードフレーム31の外周部は、後述のダイシング工程で、ダイシングブレード等により切断される領域(カーフ幅という。)35となっている。
【0033】
図5(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係る第2のリードフレーム36の構成例を示す平面図である。図5(a)は第2のリードフレーム36の表面36aを示し、図5(b)は第2のリードフレーム36の裏面36bを示している。
図5(a)及び(b)に示す第2のリードフレーム36は、図4(a)及び(b)に示した第1のリードフレーム31と同様に、例えば、Cu板を、フォトリソグラフィ技術により、その表面36a及び裏面36bの側からそれぞれ選択的にエッチングし、Ni−Pd−Au等のめっき処理を施すことにより形成されたものである。
【0034】
図5(a)において、第2のリードフレーム36内の白色の領域は表面36aと裏面36bとの間を貫通した第2の開口部37を示し、グレーの領域はエッチング時に表面36aがフォトレジスト等でマスクされることにより、エッチングされなかった非エッチング領域39aを示す。なお、図5(a)において、ハーフエッチング領域は無い。リードフレーム36の表面36aは平坦である。
【0035】
同様に、図5(b)において、第2のリードフレーム36内の白色の領域は第2の開口部37を示し、グレーの領域はエッチング時にフォトレジスト等で裏面36bがマスクされことによりエッチングされなかった、非エッチング領域39bを示す。また、ハッチングを付した領域は裏面36bの側からハーフエッチングされた、ハーフエッチング領域38aを示す。なお、図5(a)及び(b)に示す第2のリードフレーム36の外周部は、後述のダイシング工程で、ダイシングブレード等により切断されるカーフ幅35となっている。
【0036】
図4(a)及び(b)と、図5(a)及び(b)を比較して分かるように、第1のリードフレーム31の第1の開口部32と、第2のリードフレーム36の第2の開口部37は、平面視による形状(即ち、平面形状)が互いに同一で、且つ、平面視による長さ(即ち、縦横の長さ)も互いに同一となるように形成されている。このため、図1(a)及び(b)に示したように、第1のリードフレーム31と第2のリードフレーム36とを重ねると、これら2つの開口部32、37が重なって一つの連続した開口部51が構成される。この開口部51の平面視による形状と大きさ(即ち、縦横の寸法)は、第1、第2の開口部32、37とそれぞれ同じである。また、この開口部51の深さは、第1、第2の開口部32、37のそれぞれの深さを合計した深さとなる。
【0037】
次に、これら第1、第2のリードフレーム31、36を用いて、IRセンサ装置100を製造する方法について説明する。
(1.4)IRセンサ装置の製造方法
図6(a)〜(g)は、本発明の第1実施形態に係るIRセンサ装置100の製造方法を示す工程図である。なお、この工程図における各断面は、例えば図1(a)に示したIRセンサ装置100のA1−A´1線による切断面に対応している。
【0038】
図6(a)に示すように、まず始めに、第1のリードフレーム31´と、第2のリードフレーム36´を用意する。ここでは、図4(a)及び(b)に示した第1のリードフレーム31を1つの単位パターンとし、この単位パターンが平面視で縦方向及び横方向にそれぞれ連続して並ぶように配置されたリードフレーム31´を用意する。同様に、図5(a)及び(b)に示した第2のリードフレーム36を1つの単位パターンとし、この単位パターンが平面視で縦方向及び横方向にそれぞれ連続して並ぶように配置されたリードフレーム36´を用意する。
【0039】
次に、第2のリードフレーム36´の裏面36bに粘着テープ41を貼付する。第2のリードフレーム36´の裏面36b側に粘着テープ41を貼付することによって、第2の開口部37の底面に粘着テープ41の粘着層が露出した状態となる。
なお、粘着テープ41としては、粘着性を有すると共に、耐熱性を有する樹脂製のテープが用いられる。粘着性については、粘着層の糊厚がより薄いほうが好ましい。また、耐熱性については、約150℃〜200℃の温度に耐えることが必要とされる。このような粘着テープ41として、例えばポリイミドテープを用いていることができる。ポリイミドテープは、約280℃に耐える耐熱性を有している。このような高い耐熱性を有するポリイミドテープは、後のモールドやワイヤーボンディング時に加わる高熱にも耐えることが可能である。また、粘着テープ41としては、ポリイミドテープの他に、以下のテープを用いることも可能である。
【0040】
・ポリエステルテープ 耐熱温度、約130℃(但し使用条件次第で耐熱温度は約200℃にまで達する)。
・テフロン(登録商標)テープ 耐熱温度:約180℃
・PPS(ポリフェニレンサルファイド) 耐熱温度:約160℃
・ガラスクロス 耐熱温度:約200℃
・ノーメックペーパー 耐熱温度:約150〜200℃
・他に、アラミド、クレープ紙が粘着テープ41として利用し得る。
【0041】
次に、第2のリードフレーム36´の表面36a上に第1のリードフレーム31´を配置する。ここでは、第2のリードフレーム36´の表面36aと第1のリードフレーム31´の裏面31bとを向かい合わせ、この状態で開口部32が開口部37の真上にくるように第1のリードフレーム31´と第2のリードフレーム36´とを位置合わせする。そして、図6(b)に示すように、この位置合わせした状態で第2のリードフレーム36´の表面36a上に第1のリードフレーム31´を配置し、固定する。これにより、リードフレーム30´が構成される。
【0042】
なお、ここでは、第1のリードフレーム31´と第2のリードフレーム36´とを接着剤等によって接着する必要はない。第1のリードフレーム31´と第2のリードフレーム36´とが相対的に位置ずれしないように仮止めするだけで十分である。その理由は、後述の樹脂封止の工程で、第1のリードフレーム31´と第2のリードフレーム36´とがモールド樹脂50で固定されるからである。仮止めの方法として、例えば下記の方法がある。
【0043】
即ち、図7に示すように、第1のリードフレーム31´の外周部と、第2のリードフレーム36´の外周部にはそれぞれ貫通穴55、56が設けられており、第1のリードフレーム31´と第2のリードフレーム36´とを位置合わせすることにより、これらの貫通穴55、56が平面視で重なるようになっている。このような貫通穴55、56は、第1のリードフレーム31´と第2のリードフレーム36´とにそれぞれ2箇所以上設けられている。ここで、複数の箇所(例えば、2箇所)でそれぞれ重なっている貫通穴55、56にそれぞれピン63を嵌合することによって、第1のリードフレーム31´と第2のリードフレーム36´とを位置ずれしないように仮止めすることができる。また、位置合わせした後、四隅をアーク溶接しても良いし、四隅のみ接着剤で接着させてもよい。
【0044】
次に、図6(c)に示すように、このリードフレーム30´の開口部51に、IR素子10及び光学フィルタ20を配置する。ここでは、粘着テープ41の粘着性を有する面であって、開口部51の底面となっている領域に、光学フィルタ20の受光面21を貼付する。なお、この貼付に際して、光学フィルタ20の受光面21には予め保護膜(図示せず)を形成しておいてもよい。保護膜としては、例えばフォトレジストを用いることができる。このような保護膜は、例えば、光学フィルタ20の基材である光学部材をダイシングする前に成膜しておくことができる。
【0045】
次に、図6(d)に示すように、IR素子10とリードフレーム30´を電気的に接続する。ここでは、図1に示したように、IR素子10のパッド電極14a、14bと、リードフレーム30´のボンディング用端子部42とをAu等からなるワイヤー40で接続する。
なお、IR素子10とリードフレーム30´との接続は、リードフレーム30´のボンディング用端子部42からIR素子10のパッド電極14a、14bに向かってワイヤーを伸ばすこと(つまり、IR素子10から見て逆ボンディング)によって行うことが好ましい。即ち、ボールの形成を伴う1stボンドをリードフレーム30´のボンディング用端子部42に対して行い、2ndボンドをIR素子10のパッド電極14a、14bに対して行う。このような方法であれば、IR素子10のパッド電極14a、14bよりもリードフレーム30´のボンディング用端子部42の方が低い位置にあるため、ボンディング後のワイヤーの高さを低くすることができる。
【0046】
次に、図6(e)に示すように、リードフレーム30´の表面側に上金型47を配置すると共に、リードフレーム30´の裏面側に下金型48を配置する。そして、上金型47と下金型48とによりリードフレーム30´を挟み込み、上金型47と下金型48とに挟まれた空間内にサイドからモールド樹脂50を注入し、充填する。これにより、IR素子10と光学フィルタ20及びワイヤー40を樹脂封止する。
【0047】
なお、モールド樹脂50としては、例えばエポキシ樹脂を用いることが可能である。また、この樹脂封止の工程では、上金型47と第1のリードフレーム31´の表面31a側の非エッチング領域とが隙間無く接触し、且つ、下金型48と、リードフレーム30´の裏面36b側の非エッチング領域と光学フィルタ20に貼り付けられた粘着テープ41とが隙間無く接触した状態で、両金型の重ね合わせにより形成される空間のサイドからモールド樹脂50が供給される。このため、樹脂封止後は、第1のリードフレーム31´の非エッチング領域と、第2のリードフレーム36´の非エッチング領域と光学フィルタ20はそれぞれモールド樹脂50から露出した状態となる。
【0048】
次に、図6(f)に示すように、リードフレーム30´の裏面側から粘着テープを除去する。粘着テープの除去後、ポストキュア、ウェットブラストを施し、さらに、光学フィルタ20の受光面21に図示しない保護膜が形成されている場合は、当該保護膜を除去する。
その後、図6(g)に示すように、モールド樹脂50及びリードフレーム30´を、ダイシング装置によりダイシングし、カーフ幅35を切断する。これにより、モールド樹脂50及びリードフレーム30´は個々の製品に切り離されてパッケージ化され、図1(a)及び(b)と、図2に示したIRセンサ装置100が完成する。
【0049】
なお、図1(a)及び(b)に示したように、第1のリードフレーム31は、複数の端子部を有する。これら端子部には、モールド樹脂50で覆われたボンディング用端子部42と、このボンディング用端子部42と一体に形成されており、その一部がモールド樹脂50から露出している外部配線基板接続用端子部43とがある。IRセンサ装置100を、各種の機器に組み込む際は、この外部配線基板接続用端子部43を、例えばインターポーザ等の配線基板の端子部に電気的に接続する。これにより、光学フィルタ20の受光面21が遮られることなく、IRセンサ装置100を配線基板に実装することができる。
【0050】
以上説明したように、本発明の第1実施形態によれば、第1のリードフレーム31と第2のリードフレーム36との組み合わせにより、1つのリードフレーム30を構成することができる。また、このリードフレーム30の開口部51(即ち、第1の開口部32と第2の開口部37とが平面視で重なる領域)について、その幅は第1、第2の開口部32、37のそれぞれの幅と同じ大きさに抑えつつ、その深さは第1、第2の開口部32、37のそれぞれの深さを合計した深さにすることができる。これにより、幅が狭くて深い(即ち、アスペクト比の大きい)開口部を実現することができるため、IRセンサ装置100の小型化が可能である。
【0051】
さらに、本発明の第1実施形態は、上記以外にも種々の効果を奏する。即ち、本発明の第1実施形態によれば、光学フィルタ20の受光面21を粘着テープ41に貼付した状態で樹脂封止を行い、その後、粘着テープ41を除去する。これにより、モールド樹脂50をエッチングすることなく、光学フィルタ20の受光面21に光を入射させるための窓を形成することができる。この方法では、光を導入するための窓を形成するために、モールド樹脂50をエッチングする必要はなく、エッチング工程とこれに付随するフォトリソグラフィ工程が不要であるため、工程数の増加や製造コストの上昇を抑えることができる。また、光学フィルタ20の受光面21にエッチングダメージを与えずに済むため、例えば光の透過性など、受光に関する性能の品質低下を防ぐことができる。
【0052】
(2)第2実施形態
上記の第1実施形態では、例えば図2に示したように、第2のリードフレームの裏面がパッケージの上面に露出する場合について説明した。しかしながら、本発明において、第2のリードフレームの裏面がパッケージの上面に露出することは必須ではない。第2実施形態では、この点について説明する。
【0053】
図8(a)及び(b)は、本発明の第2実施形態に係るIRセンサ装置200の構成例を示す断面図と、第2のリードフレーム66の構成例を示す平面図である。
図8(a)及び(b)に示す第2のリードフレーム66の、第1実施形態で説明した第2のリードフレーム36との相違点は、裏面においてハーフエッチング領域と非エッチング領域との配置が異なる点である。
【0054】
具体的には、第2のリードフレーム66の裏面66b(即ち、第2の面)において、カーフ幅35で囲まれた領域にはハーフエッチング領域38bのみが存在し、非エッチング領域39bは存在しない。非エッチング領域39bはカーフ幅35と重なる領域にのみ存在する。なお、第2のリードフレーム66の表面66a(即ち、第1の面)は、第1実施形態で説明した第2のリードフレーム36の表面36a(例えば、図5(a)を参照。)と同じである。
【0055】
換言すると、この第2のリードフレーム66は、パッケージの内側となる(即ち、カーフ幅35で囲まれた)第1の部位と、パッケージの外側となる第2の部位とを有する。第2のリードフレーム66の第1の部位は第2の部位よりも厚さが小さい。また、図8(a)に示すように、第2のリードフレーム66の表面66aを上側に向け、裏面66bを下側に向けたときに、第1の部位の裏面66bは、第2の部位の裏面66bよりも上側に位置する。
【0056】
このような構成であれば、図8(a)に示すように、パッケージの内側において、第2のリードフレーム66の裏面66bは全てモールド樹脂50で覆われる。このため、図9に示すように、IRセンサ装置200のパッケージの上面にはリードフレームが露出しない。パッケージの上面には光学フィルタの受光面21のみがモールド樹脂50から露出した状態となる。次に、図8(a)及び図9に示したIRセンサ装置200の製造方法について説明する。
【0057】
図10(a)〜(g)は、本発明の第2実施形態に係るIRセンサ装置200の製造方法を示す工程図である。このIRセンサ装置200の製造方法は、第1実施形態で説明した製造方法と同様の手順で行う。
即ち、図10(a)に示すように、まず始めに、第1のリードフレーム31´と、第2のリードフレーム66´とを用意する。ここでは、図8(a)を参照しながら説明した第2のリードフレーム66を1つの単位パターンとし、この単位パターンが平面視で縦方向及び横方向にそれぞれ連続して並ぶように配置されたリードフレーム66´を用意する。次に、第2のリードフレーム66´の裏面36bに粘着テープ41を貼付する。
【0058】
次に、図10(b)に示すように、第2のリードフレーム66´の表面36a上に第1のリードフレーム31´を配置する。ここでは、第1実施形態と同様の方法で位置合わせし、固定する。これにより、リードフレーム30´が構成される。
次に、図10(c)に示すように、このリードフレーム30´の開口部51に、IR素子10及び光学フィルタ20を配置する。そして、図10(d)に示すように、IR素子10とリードフレーム30´をワイヤー40で電気的に接続する。
【0059】
次に、図10(e)に示すように、上金型47と下金型48とによりリードフレーム30´を挟み込み、上金型47と下金型48とに挟まれた空間内にモールド樹脂50を注入し、充填する。これにより、IR素子10及びワイヤー40を樹脂封止する。
次に、図10(f)に示すように、リードフレーム30´の裏面側から粘着テープを除去する。粘着テープの除去後、ポストキュア、ウェットブラストを施し、さらに、光学フィルタ20の受光面21に図示しない保護膜が形成されている場合は、当該保護膜を除去する。
【0060】
その後、図10(g)に示すように、モールド樹脂50及びリードフレーム30´を、ダイシング装置によりダイシングし、カーフ幅35を切断する。これにより、モールド樹脂50及びリードフレーム30´は個々の製品に切り離されてパッケージ化され、図8(a)と図9に示したIRセンサ装置200が完成する。
以上説明したように、本発明の第2実施形態によれば、パッケージの内側に残される第2のリードフレーム66の裏面36bを全てモールド樹脂50で覆うことができる。このため、受光面21の側(即ち、パッケージの上面の側)にリードフレーム30が一切露出していないIRセンサ装置200を提供することができる。
【0061】
このIRセンサ装置200によれば、パッケージの上面の側に液滴等が付着した場合でも、この液滴がリードフレーム30に触れることはなく、液滴を介して光学フィルタ20とリードフレーム30とがショートしてしまうことを防ぐことができる。また、パッケージの上面にリードフレーム30が一切露出していないため、例えば、ユーザーがリードフレーム30を光学フィルタ20の受光面21であると誤認してしまうようなことも防ぐことができる。
【0062】
(3)第3実施形態
上記の第1、第2実施形態では、1つのパッケージ内に1つのIR素子を配置する場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られることはない。本発明では、1つのパッケージ内に2つ以上のIR素子を配置してもよい。第3実施形態では、この点について説明する。
【0063】
図11(a)及び(b)は、本発明の第3実施形態に係るIRセンサ装置300の構成例を示す平面図と、この平面図をA11−A´11線で切断した断面図である。なお、図11(a)では図面の複雑化を回避するためにモールド樹脂の図示を省略している。また、図11(a)において、ハッチングを付した領域は表面の側からハーフエッチングされたハーフエッチング領域を示し、グレーの領域はハーフエッチングされていない非エッチング領域を示す。さらに、図11(b)では、IR素子とリードフレームとの接合の状態を明確にするために、当該断面図において紙面の手前側又は奥側にあるワイヤーも図示している。
【0064】
図11(a)及び(b)に示すように、このIRセンサ装置300は、例えば、第1のIR素子10aと、第1のIR素子10aの受光面に積層された第1の光学フィルタ20aと、第2のIR素子10bと、第2のIR素子10bの受光面に積層された第2の光学フィルタbとを備える。また、リードフレーム70には、第1のIR素子10aと第1の光学フィルタ20aとを配置するための貫通した開口部61と、第2のIR素子10bと第2の光学フィルタ20bとを配置するための貫通した開口部62がそれぞれ設けられている。
【0065】
図11(b)に示すように、リードフレーム70は第1のリードフレーム71と第2のリードフレーム76とを含み、これらが重なって1つのリードフレーム70を構成している。また、図1(b)に示すように、このIRセンサ装置300において、第1の光学フィルタ20aの受光面21a及び第2の光学フィルタ20bの受光面21bは、モールド樹脂50からそれぞれ露出しており、これらの受光面21a、21bは第2のリードフレーム76の裏面76bと同一平面となるように(即ち、面一となるように)配置されている。
【0066】
図12は、IRセンサ装置300の外観の一例を示す斜視図である。図12に示すように、このIRセンサ装置300のパッケージの形状は例えば直方体である。第1の光学フィルタの受光面21aと第2の光学フィルタの受光面21bは、パッケージの上面(即ち、第2のリードフレーム76の裏面76bであり、モールド樹脂50の表面でもある。)とそれぞれ面一となるように配置されている。外界の光は、受光面21a、21bにそれぞれ入射し、光学フィルタを通ってIR素子の受光面にそれぞれ到達するようになっている。
【0067】
ところで、この第3実施形態において、第1の光学フィルタ20aと第2の光学フィルタ20bは、その特性が異なる。例えば、第1の光学フィルタ20aは第1の波長範囲の赤外線を選択的に透過させるものであり、第2の光学フィルタ20bは第2の波長範囲の赤外線を選択的に透過させるものである。一例を挙げると、第1の波長範囲は長波長であり、第2の波長範囲は短波長である。一方、第1のIR素子10aと第2のIR素子10bは、例えば同一種類のセンサ素子であり、その構成と機能は第1実施形態で説明したIR素子10と同じである。次に、このIRセンサ装置300に用いられるリードフレーム70の構成について説明する。
【0068】
図13(a)及び(b)は、本発明の第3実施形態に係る第1のリードフレーム71の構成例を示す平面図である。図13(a)は第1のリードフレーム71の表面71aを示し、図13(b)は第1のリードフレーム71の裏面71bを示している。
図13(a)において、第1のリードフレーム71内の白色の領域は貫通した開口部82、83を示し、ハッチングを付した領域は表面71aの側からハーフエッチングされたハーフエッチング領域73aを示す。また、グレーの領域は表面71aの側からエッチングされていない非エッチング領域74aを示す。同様に、図13(b)において、第1のリードフレーム71内の白色の領域は開口部82、83を示し、ハッチングを付した領域は裏面71bの側からハーフエッチングされたハーフエッチング領域73bを示す。また、グレーの領域は裏面71bの側からエッチングされていない非エッチング領域74bを示す。
【0069】
図13(a)及び(b)に示す第1のリードフレーム71において、第1実施形態で説明した第1のリードフレーム31との相違点は、IRセンサ素子の数に応じて、これらを配置するための貫通した開口部が複数用意されている点である。他の点は、第1のリードフレーム31と同じである。なお、第1のリードフレーム71の外周部は、ダイシング工程で切断されるカーフ幅75となっている。
【0070】
図14(a)及び(b)は、本発明の第3実施形態に係る第2のリードフレーム76の構成例を示す平面図である。図14(a)は第2のリードフレーム76の表面76a側を示し、図14(b)は第2のリードフレーム76の裏面76b側を示している。
図14(a)において、第2のリードフレーム76内の白色の領域は開口部84、85を示し、グレーの領域は表面76aの側からエッチングされていない非エッチング領域79aを示す。なお、図14(a)において、ハーフエッチング領域は無い。リードフレーム76の表面76aは平坦である。
【0071】
同様に、図14(b)において、第2のリードフレーム76内の白色の領域は開口部84、85を示し、グレーの領域は裏面76bの側からエッチングされていない非エッチング領域79bを示す。また、ハッチングを付した領域は裏面76bの側からハーフエッチングされたハーフエッチング領域78bを示す。
図14(a)及び(b)に示す第2のリードフレーム76において、第1実施形態で説明した第2のリードフレーム36との相違点は、IRセンサ素子の数に応じて、これらを配置するための貫通した開口部が複数用意されている点である。他の点は、第2のリードフレーム36と同じである。なお、第2のリードフレーム76の外周部は、ダイシング工程で切断されるカーフ幅75となっている。
【0072】
図13(a)及び(b)と、図14(a)及び(b)を比較して分かるように、第1のリードフレーム71の開口部82と、第2のリードフレーム76の開口部84は、平面形状が互いに同一で、且つ、縦横の長さも互いに同一となるように形成されている。また、第1のリードフレーム71の開口部83と、第2のリードフレーム76の開口部85も、平面形状が互いに同一で、且つ、縦横の長さも互いに同一となるように形成されている。
【0073】
そして、図1(b)に示したように、第1のリードフレーム71と第2のリードフレーム76とを重ねることにより、開口部82、84からなる第1の開口部61と、開口部83、85からなる第2の開口部62とがそれぞれ構成される。
本発明の第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、第1のリードフレーム71と第2のリードフレーム76とを組み合わせることにより、アスペクト比の高い第1、第2の開口部83、85を実現することができる。このため、IRセンサ装置300の小型化が可能である。
【0074】
また、このIRセンサ装置300は、外界から入射してくる赤外線を異なる波長範囲毎にそれぞれ検出することが可能である。第1のIR素子10aから出力される電気信号と、第2のIR素子10bから出力される電気信号とに基づいて、入射してくる光の強度を波長範囲毎(例えば、長波長毎、短波長毎)に特定することが可能となる。従って、例えば、人感センサや炎センサなどに極めて好適に用いることができる。
【0075】
(4)第4実施形態
上記の第3実施形態では、例えば図12に示したように、第2のリードフレームの裏面がパッケージの上面に露出する場合について説明した。しかしながら、本発明において、第2のリードフレームの裏面がパッケージの上面に露出することは必須ではない。つまり、上記の第2実施形態を第3実施形態に適用してもよい。第4実施形態では、この点について説明する。
【0076】
図15(a)及び(b)は、本発明の第4実施形態に係るIRセンサ装置400の構成例を示す断面図と、第2のリードフレーム86の構成例を示す平面図である。
図15(a)及び(b)に示す第2のリードフレーム86の、第3実施形態で説明した第2のリードフレーム76との相違点は、裏面においてハーフエッチング領域と非エッチング領域との配置が異なる点である。
【0077】
具体的には、第2のリードフレーム86の裏面86b(即ち、第2の面)において、カーフ幅75で囲まれた領域にはハーフエッチング領域78bのみが存在し、非エッチング領域79bは存在しない。非エッチング領域79bはカーフ幅75と重なる領域にのみ存在する。なお、第2のリードフレーム86の表面86a(即ち、第1の面)は、第3実施形態で説明した第2のリードフレーム76の表面76a(例えば、図14(a)を参照。)と同じである。
【0078】
換言すると、この第2のリードフレーム86は、パッケージの内側となる(即ち、カーフ幅75で囲まれた)第1の部位と、パッケージの外側となる第2の部位とを有する。第2のリードフレーム86の第1の部位は第2の部位よりも厚さが小さい。また、図15(a)に示すように、第2のリードフレーム86の表面86aを上側に向け、裏面86bを下側に向けたときに、第1の部位の裏面86bは、第2の部位の裏面86bよりも上側に位置する。
【0079】
このような構成であれば、図15(a)に示すように、パッケージの内側において、第2のリードフレーム86の裏面86bは全てモールド樹脂50で覆われる。このため、図16に示すように、IRセンサ装置400のパッケージの上面にはリードフレームが露出しない。パッケージの上面には光学フィルタの受光面21a、21bのみがモールド樹脂50から露出した状態となる。この第4実施形態によれば、第2実施形態及び第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0080】
(5)その他の実施形態
なお、上記の第1実施形態では、例えば図2(a)に示したように、IR素子10のパッド部14として、IR素子10の表面の中心部に一対のパッド電極14a、14bを配置した構造を示したが、これはあくまで一例である。本発明において、IR素子10のパッド部14は、例えば、IR素子10の表面の中心部で互いに離間して配置された3つ以上のパッド電極で構成されていてもよい。このような構成であっても、IR素子とリードフレームとを電気的に接続することが可能であり、IR素子から電気信号を出力させることができる。
【0081】
さらに、上記の各実施形態では、光センサ素子の一例として、2000nm〜7400nmの赤外線を検出可能なIR素子を例示した。しかしながら、本発明において光センサ素子はこれに限定されるものではない。本発明において、光センサ素子は例えば紫外線のみを検出する素子であってもよく、又は、紫外線と赤外線の両方を検出する素子であってもよい。
【0082】
一例を挙げると、光透過基板上にn層と、π層と、n層及びπ層よりもバンドギャップが大きい化合物半導体層と、p層とが順次積層されてなる光電変換素子13において、n層にInSbではなく、AlN、InGaP、InGaAsP、InAsSbといった他の材料を用いれば、波長が約250nmの紫外線から、波長が約12μmの赤外線までを検出可能な光センサ素子を作成することが可能である。このような場合は、紫外線から赤外線までを検出可能な光センサ装置を提供することができる。
また、この場合は、光学フィルタも例えば紫外線のみを透過させる機能を有するものであってもよく、又は、紫外線と赤外線の両方を透過させるものであってもよい。光学フィルタの透過可能な波長範囲は、光センサ素子の検出可能な波長範囲に応じて、任意に設定可能である。
【符号の説明】
【0083】
10、10a、10b IR素子
11 光透過基板
12 受光部
13 光電変換素子
13a n層
13b π層
13c 化合物半導体層
13d p層
14 パッド部
14a パッド電極
14b パッド電極
15 配線
16 IR素子10の裏面(受光面)
20、20a、20b 光学フィルタ
21、21a、21b (光学フィルタの)受光面
30、70 (重ね合わせにより構成される)リードフレーム
31、71 第1のリードフレーム
31a、36a、66a、71a、76a、86a 表面
31b、36b、66b、71b、76b、86b 裏面
32、37、51、61、62、82、83、84、85 開口部
33a、33b、38a、38b、73a、73b、78a、78b ハーフエッチング領域
34a、34b、39a、39b、74a、74b、79a、79b 非エッチング領域
35、75 カーフ幅
36、66、76、86 第2のリードフレーム
40 ワイヤー
41 粘着テープ
42 ボンディング用端子部
43 外部配線基板接続用端子部
47 上金型
48 下金型
50 モールド樹脂
55 貫通穴
63 ピン
100、200、300、400 IRセンサ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を検出する光センサ素子と、
前記光センサ素子に積層された光学フィルタと、
貫通した第1の開口部を有する第1のリードフレームと、
貫通した第2の開口部を有する第2のリードフレームと、
前記光センサ素子及び前記光学フィルタを覆う封止部材と、を備え、
前記第2のリードフレーム上に前記第1のリードフレームが配置されて、前記第1の開口部と前記第2の開口部とが平面視で重なり、
前記第1の開口部と前記第2の開口部とが平面視で重なる領域に、前記光センサ素子及び前記光学フィルタが配置され、
前記光学フィルタの受光面は前記封止部材から露出していることを特徴とする光センサ装置。
【請求項2】
前記光センサ素子は、第1の光センサ素子と第2の光センサ素子とを含み、
前記光学フィルタは、前記第1の光センサ素子に積層された第1の光学フィルタと、前記第1の光学フィルタと特性が異なり且つ前記第2の光センサ素子に積層された第2の光学フィルタとを含み、
前記第1の開口部と前記第2の開口部とが平面視で重なる領域は、第1の領域と、前記第1の領域と位置が異なる第2の領域とを含み、
前記第1の光センサ素子及び前記第1の光学フィルタは前記第1の領域に配置され、
前記第2の光センサ素子及び前記第2の光学フィルタは前記第2の領域に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光センサ装置。
【請求項3】
前記第2のリードフレームの第1の面上に前記第1のリードフレームが配置されており、
前記第2のリードフレームの前記第1の面の反対側の第2の面は前記封止部材により全て覆われていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光センサ装置。
【請求項4】
第1のリードフレームが有する貫通した第1の開口部と、第2のリードフレームが有する貫通した第2の開口部とが平面視で重なるように、前記第2のリードフレームの第1の面上に前記第1のリードフレームを配置する工程と、
前記第2のリードフレームの前記第1の面の反対側の第2の面に、粘着テープの粘着性を有する面を貼付する工程と、
前記第1の開口部と前記第2の開口部とが平面視で重なる領域に、光センサ素子及び当該光センサ素子に積層された光学フィルタを配置して、前記光学フィルタの受光面を前記粘着テープの前記粘着性を有する面に貼付する工程と、
前記光センサ素子及び前記光学フィルタを封止部材で覆う工程と、
前記封止部材及び前記第2のリードフレームから前記粘着テープを除去する工程と、
前記封止部材と前記第1のリードフレーム及び前記第2のリードフレームを切断してパッケージを形成する工程と、を備えることを特徴とする光センサ装置の製造方法。
【請求項5】
前記光センサ素子は、第1の光センサ素子と第2の光センサ素子とを含み、
前記光学フィルタは、前記第1の光センサ素子に積層された第1の光学フィルタと、前記第1の光学フィルタと特性が異なり且つ前記第2の光センサ素子に積層された第2の光学フィルタとを含み、
前記第1の開口部と前記第2の開口部とが平面視で重なる領域は、第1の領域と、前記第1の領域と位置が異なる第2の領域とを含み、
前記光センサ素子及び前記光学フィルタを配置する工程は、
前記第1の光センサ素子及び前記第1の光学フィルタを前記第1の領域に配置して、前記第1の光学フィルタの受光面を前記粘着テープの前記粘着性を有する面に貼付する工程と、
前記第2の光センサ素子及び前記第2の光学フィルタを前記第2の領域に配置して、前記第2の光学フィルタの受光面を前記粘着テープの前記粘着性を有する面に貼付する工程と、を含み、
前記パッケージを形成する工程では、
前記第1の光センサ素子及び前記第1の光学フィルタと前記第2の光センサ素子及び前記第2の光学フィルタとが同一のパッケージ内に含まれるように、前記封止部材と前記第1のリードフレーム及び前記第2のリードフレームを切断することを特徴とする請求項4に記載の光センサ装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2のリードフレームは、
前記パッケージの内側となる第1の部位と、前記パッケージの外側となる第2の部位とを有し、
前記第1の部位は前記第2の部位よりも厚さが小さく、且つ、
前記第1の面を上側に向け、前記第2の面を下側に向けたときに、前記第1の部位の前記第2の面は前記第2の部位の前記第2の面よりも上側に位置することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の光センサ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−112728(P2012−112728A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260535(P2010−260535)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】