説明

光ディスク、光ディスク記録方法、光ディスク再生方法、および光ディスク装置

【課題】簡単な制御で安定した再生信号を得ることができる光ディスクおよび光ディスク装置を提供する。
【解決手段】前記光ディスクは、厚み方向に複数の記録層を有し、前記複数の記録層の同一半径位置に、nT(nは2以上の整数、Tはビット周期)マークとnTスペースを繰り返したデータ繰り返し信号を記録するための記録領域を有し、各記録層の前記記録領域には、互いに異なるデータ繰り返し信号が記録される。記録領域に記録されている前記データ繰り返し信号を各記録層毎に再生して、再生している記録層以外の他の記録層からの前記データ繰り返し信号の漏れこみ量を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク記録装置および光ディスク再生装置に関し、特に多層光ディスクの層間クロストークを低減して、再生信号品質改善を可能とする多層光ディスク、多層光ディスク記録方法、多層光ディスク再生方法、および多層光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する層間クロストーク検出技術として、例えば、特許文献1(特開平9−54957号公報)がある。特許文献1には、このクロストークの定量化という課題に対する一解決方法である多層記録媒体のクロストーク測定方法が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−54957号公報 第5頁 図2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DVDに代表される光ディスクの市場においては、記録情報の大容量化に適応するため高密度化が進んでおり、最近では光源として青色レーザを使用するBlu−rayが製品化され、片面25GBの記録容量を実現した。また、青色レーザの高出力化によって複数層媒体の記録も可能となり、たとえばBlu−ray2層ディスクでは片面で50GBの情報データを記録できる。この大記録容量化への開発は今後も多層化技術開発を中心として推進されると予測されている。多層化において課題となるのは当該層を再生した場合の他層からの信号漏れこみ(以下クロストークと記す)よる再生信号の悪化である。
【0005】
特に層間隔の狭い多層光ディスクにおいては、当該記録層に対して隣接および隣隣接の記録層からのクロストークが増加することが予測される。
【0006】
本発明の目的は、簡単な制御で安定した再生信号を得ることができる多層光ディスクおよび多層光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、一例として、特許請求の範囲に記載の発明により達成される。本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば次のとおりである。
【0008】
すなわち、上記目的を達成するために、本発明に従う光ディスクは、厚み方向に複数の記録層を有する光ディスクであって、前記複数の記録層の同一半径位置に、nT(nは2以上の整数、Tはビット周期)マークとnTスペースを繰り返したデータ繰り返し信号を記録するための記録領域を有し、各記録層の前記記録領域には、互いに異なるデータ繰り返し信号が記録される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な制御でエラーレートの良い安定した再生信号を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明による多層光ディスク記録再生装置の一実施形態を示すブロック図であり、1はディスク、2はモータ、3はサーボ駆動回路、4はピックアップ、5はレーザ駆動回路、6は光検出回路、7はサーボ回路、8はバッファメモリ、9は再生系信号処理回路、10は記録系信号処理回路、110はL0記録層、111はL1記録層、112はL2記録層、113はL3記録層、12はレーザビーム、13は信号処理回路、14は光ディスク記録再生装置、15はドライブ制御装置、16はスペクトラム解析回路、17は係数メモリである。
【0012】
図1の実施形態では、ディスク1として4層ディスクを使用し、各層の内周部同一半径位置にはn(nは2以上の整数)が異なったnT(Tはビット周期)の“1”、“0”繰り返し信号からなるクロストーク検出信号があらかじめ記録されている。“1”は、例えば、マーク、“0”は、例えば、スペースとなる。ここでは、L0記録層110には5T−5T繰り返し信号が、以下L1記録層111には6T−6T、L2記録層112には7T−7T、L3記録層113には8T−8T繰り返し信号がそれぞれ記録されている。これらのnTの値は使用されている1−7変調信号のうちの“1”連続、“0”連続の長い信号に相当する。
【0013】
まず、光ディスク記録再生装置14の基本的な動作について説明する。たとえばBlu−Ray方式の1回書きディスクであるBD−Rディスク1が光ディスク記録再生装置14に挿入されると、モータ2、サーボ回路7、サーボ駆動回路3によってディスク1を回転させ、ピックアップ4からは再生用のパワー値に制御されたレーザビーム12をディスク1の記録面に照射する。光検出回路6はディスク1から反射してきたレーザビーム12の反射光の強弱を検出し、これより再生ディジタル信号列を得る。
【0014】
次にバッファメモリ8、再生系信号処理回路9でこの再生ディジタル信号列を復号し、ディスク1上に記録されたコントロール信号などの情報を読み取り、ディスク媒体判別を行う。ここで挿入されたディスク1がBD−Rと判別されると光ディスク記録再生装置14は動作待ち状態(セットアップ終了)となり、その後は、たとえばホストコンピュータで構成されるドライブ制御装置15の指令に基づきデータの記録または再生状態に制御される。
【0015】
データ記録時には、サーボ回路7は光検出回路6の出力信号であるサーボ用信号C1からサーボ駆動用信号S1を生成し、サーボ駆動回路3はS1信号を基にディスク1を所定のスピードで回転させるとともにレーザビーム12のフォーカス、トラッキング制御を行う。次に信号処理回路14中の記録系信号処理回路10から出力されるディジタルデータ列W1がレーザ駆動回路5に送出され、レーザ駆動回路5は記録データ信号の記録パワー値を所定の値に設定して情報データを順次ディスク1のトラック上に記録していく。
【0016】
再生時も同様にサーボ駆動回路3はディスク1を所定のスピードで回転させるとともに、レーザビーム12のフォーカスおよびトラッキング制御を行い、レーザビーム12の照射により記録されている再生ディジタルデータ列R1を順次再生していく。
【0017】
ここで図1に示したような多層光ディスク1における層間クロストークについて説明する。
【0018】
図2は多層光ディスクにおけるクロストーク発生の模式図である。図2において、(a)はレーザビーム12がL0記録層110に焦点を結ぶ様子を示したものであるが、層間隔D0-1が狭くなってくるとL1記録層111上にも焦点が合い始め、L1記録層111の記録信号も再生してしまう可能性が出てくる。また、層間隔D1-2の値によってはレーザビーム12の一部の信号がL1記録層111の反射面で反射し、その戻り光がL2記録層112上に焦点を結び(以下、これを共焦点と記す)、L2記録層112の記録信号を再生する場合がある。これらの他層からの不要なクロストーク信号はL0記録層110の再生信号に対してノイズとなり系のエラーレートを悪化させる原因となる。
【0019】
同様に図2(b)はレーザビーム12がL1記録層111に焦点を結ぶ様子を示したものであるが、層間隔D0-1、D1-2が狭くなってくるとL0記録層110、L2記録層112からのクロストークが増し、層間隔D2-3の値によってはL3記録層113上の共焦点によるクロストーク発生の可能性がある。
【0020】
これに対し(c)に示したL2記録層112再生時、(d)に示したL3記録層113再生時には、それぞれ隣接層からのクロストークが発生する可能性があるが、共焦点によるクロストークは発生しないという特徴がある。
【0021】
このように共焦点を含む層間のクロストークは層間隔と密接な関係があるため、ディスク1はなるべくクロストークを発生させないような層間隔D0-1、D1-2、D2-3が選ばれる。しかし、実際には数μm単位の膜面制御は非常に難しく、また面振れなどの影響もあり、このクロストークを完全になくすことはできないと予測される。
【0022】
次に本発明による他層からのクロストーク量検出方法について説明する。
図3に本発明による多層光ディスクの信号配置の一例を示す。
前述したクロストーク検出信号は図3に示すようにディスク1のリードインエリアの外周側、または外周リードアウト部の内周側、またはその両方の記録領域に記録される。また、この記録領域はそれぞれの記録層の同一半径位置に設けられ、記録層毎に記録信号周波数が異なっている。ここで新たにクロストーク検出信号記録エリアを含んだ形でリードインエリアおよびリードアウトを定義しても良い。
【0023】
図4に本発明によるクロストーク検出信号記録トラック配置の一例を示す。図4において231はクロストーク検出信号記録トラック1、232はクロストーク検出信号記録トラック2、233はクロストーク検出信号記録トラック3であり、クロストーク検出信号記録エリアは連続した3トラックで構成されている。なお、ここでの1トラックとはディスク1周分の記録領域を示している。
【0024】
各記録層のクロストーク信号レベルの検出は1トラックあれば十分に可能であるが、本実施形態においては3トラックのうち真ん中のクロストーク検出信号記録トラック232を使用してクロストーク量を検出する方式としている。これは記録層間にトラックずれがあった場合に両端のクロストーク検出信号記録トラック231,233を再生すると、再生時のレーザビーム12の位置によっては無記録部をトラッキングすることになって、正確なクロストーク量が検出できなくなるのを防ぐためである。これに対して両隣接トラックが記録されているクロストーク検出信号記録トラック232を再生すれば、記録層間にトラックずれがあっても無記録部を再生することなく正確なクロストーク量が測定できるという効果がある。ここでGroove記録方式の場合、Land部が無記録となっているが、Land幅はトラックピッチに対して狭いのでクロストーク量測定に対する影響は少ない。
【0025】
以上、連続した3トラックの実施形態について説明したが、これは3トラックに限定されるものではなく、1トラックや2トラックでも良いし、連続3トラック以上設けても良い。ただし、トラック数を増すとデータゾーン領域が減少するため、3トラック程度が望ましい。
【0026】
図5にそれぞれの記録層を再生したときの再生信号スペクトルを示す。この信号は図1中に示したR1である。図5(a)にL0記録層110のクロストーク検出信号を再生したときの信号スペクトルの一例を示す。L0記録層110には5T−5T繰り返し信号が記録されており、フォーカス、トラッキングサーボはL0記録層に合っているのでその再生信号レベルは大きく、たとえば図5(a)中に示した信号レベルとなる。この時、層間クロストークが存在した場合には、再生信号レベルは小さいがL1記録層111の記録信号6T−6T、L2記録層112の記録信号7T−7T、L3記録層113の記録信号8T−8T信号スペクトルも現れることになるので、L0記録層110の5T−5T再生信号レベルに対する各記録層からのクロストーク量CT0-1、CT0-2、CT0-3を測定し、その結果を係数メモリ17に記憶させる。ここで図中CT0-2が他のクロストーク量に比べて大きいが、これは図2(a)に示した共焦点によるクロストークが存在することを示している。
【0027】
同様の操作で図5(b)から(d)に示したようにL1記録層111の記録信号6T−6T再生信号に対する各記録層からのクロストーク量CT1-0、CT1-2、CT1-3、L2記録層112の記録信号7T−7T再生信号に対する各記録層からのクロストーク量CT2-0、CT2-1、CT2-3、L3記録層113の記録信号8T−8T再生信号に対する各記録層からのクロストーク量CT3-0、CT3-1、CT3-2を測定し係数メモリ17に記憶すれば、各記録層における層間クロストーク量を求めることができる。以上のクロストーク量測定は、図1中に示したスペクトラム解析回路16によって行われる。
【0028】
また実際のクロストーク量検出動作は前述した一連のセットアップ動作終了後に各記録層の当該記録領域を再生するようにすれば良い。
【0029】
図6に本発明によるクロストーク検出信号記録トラック配置の他の実施形態を示す。これは現状の2層BD−Rディスクフォーマットに対して、4層ディスクにおいてクロストーク検出信号記録エリアを含んだ形で新たにリードインエリアおよびリードアウトを定義した例である。
【0030】
前述の例と同様に、本実施形態でもクロストーク検出信号記録領域は、連続した3トラック以上を確保する。これをクラスター数に置き換えると、内周でおよそ6クラスター、外周で15クラスター程度であり、他のディスク情報信号に対して十分少なくて良く、ユーザー記録領域を減少させることはない。
【0031】
また、図5に示した方法で検出されたクロストーク量は図6に示したリードインエリア、リードアウトエリア中の、たとえばINFO1〜4などの一部分に記録しておけば、次回から一連の測定は必要なく、本データを読み出すことにより容易に層間クロストーク量を知ることができる。
【0032】
以上は再生信号スペクトルからクロストーク量を求める方法について説明したが、この方法では再生波形を取り込んだ後、スペクトラム解析回路16でフーリエ演算を行うため、容量の大きなメモリを用いることが好ましく、また演算に時間がかかるおそれがあることから高速の演算処理回路を用いることが好ましい。
【0033】
図7に本発明による層間クロストーク検出手段を備えた多層光ディスク記録再生装置の他の実施形態を示す。図1と同一部品は同一番号で示し、18はバンドパスフィルタ回路、19は信号レベル検出回路である。本発明においては、クロストーク検出信号はビット周期Tの整数倍nの“1”、“0”繰り返しデータで構成されているので、再生系信号処理回路9の出力制御信号Fsによってバンドパスフィルタ回路18の中心周波数nTを順次変更し、その出力信号レベルを信号レベル検出回路19によって測定すれば各層からの漏れ込みレベルを独立に、また短時間で検出できる。測定した結果は係数メモリ17に記憶され、必要な時に読み出される。
【0034】
以上の説明はクロストーク検出信号として、5T−5Tから8T−8Tまでの4種類の信号を使用したが、本発明ではそれに限定されない。
【0035】
【表1】

表1にクロストーク検出信号の層別周波数設定の一例を示す。本実施形態ではL0記録層から順にnの値を増している(Case1)が、Case2、3に示したように各層で記録周波数が異なっていれば良い。また周波数も9T−9Tから12T−12T(Case4、5)など、さらに低周波数の信号としてもよい。また、Case6に示したようにたとえば7T−7T、9T−9T、11T−11T、13T−13Tの2T間隔の固定周波数信号を選択すれば、バンドパスフィルタ回路18の必要分解能を下げることができる効果がある。
【0036】
以上はディスク1が4層の場合であるが、さらに層数が増した場合も対応可能である。
【0037】
【表2】

【0038】
表2に20層以上の多層ディスクに対するクロストーク検出信号の層別周波数設定の一例を示す。すべての層に対して独立してクロストーク検出信号周波数を与えればよいが、周波数測定ダイナミックレンジを広く取る必要がある。このため本発明では、層間クロストーク量が当該層の再生信号品質に影響を与えるのは隣隣接層までと考え、5層毎にクロストーク検出信号を同一信号とした(表中Case2、3)。この構成により、記録層ナンバーとクロストーク検出信号繰り返しビット周期(nT)をあらかじめ定めておけば、サーボ回路7、および再生系信号処理回路9の動作によって、レーザビーム12がどの層に焦点が合っているかは容易に判断できるため、各層間クロストークの検出が可能となる。
【0039】
また、Case1に示したように4層毎にクロストーク検出信号を同一信号としてもよい。ただし、この場合は隣隣接層からのクロストークが非常に少ないディスクの場合に限られる。これは、たとえば記録層8(7T−7T)再生時に検出されるクロストーク信号(9T−9T)が、記録層6による成分であるのか、あるいは記録層10による成分であるのか判別できないためである。
【0040】
以上ディスク1にクロストーク検出信号が記録済みの例について述べたが、光ディスク記録再生装置14で記録することも可能である。
【0041】
図7に示した実施形態において記録系信号処理回路10から出力されるディジタルデータ列W1をnTの繰り返しで構成される固定周波数信号とし、たとえばL0記録層110に5T−5T繰り返し信号を、以下L1記録層111には6T−6T、L2記録層112には7T−7T、L3記録層113には8T−8T繰り返し信号をそれぞれ同一半径位置に記録する。この時、各記録層に対する記録パワー値はそれぞれの最適値に制御し、記録トラック数は図4に示したように3トラック以上を選ぶとよい。
【0042】
記録順序は共焦点による干渉を防止するため、最深層のL0記録層110を最初に、以下L1記録層111、L2記録層112、最表層のL3記録層113の順に記録するのが好ましい。この順序で記録すれば、たとえばL0記録層110に対してL2記録層112に共焦点が存在した場合に、L0記録層110記録中に生じるL2記録層112のクロストーク記録成分は、後で記録される本来のL2記録層112の7T−7T信号記録によって十分に消去される。ここで記録順序を逆にした場合には、先に記録されたL2記録層112の記録済み信号成分が、後から記録されるL0記録層110記録時の共焦点による記録信号の漏れこみによって干渉を受け、記録レベルが変化してしまう可能性がある。したがってL0記録層110を最初に記録することにより、L2記録層112の記録信号品質を高めることができる効果がある。
【0043】
このクロストーク検出信号は図3に示したようにディスク1のリードインエリアの外周側、または外周リードアウト部の内周側に記録すればよいが、光ディスク記録再生装置14で記録する場合にはそれにとらわれずデータ領域に記録しても良い。ただし、BD−Rのような追記型ディスクの場合にはクロストーク検出信号を記録したアドレスを管理情報として記録しておき、オーバーライトされないように制御する。このようにしておけば、クロストーク測定時の情報がそのまま保存できる効果がある。また、BD−REのような書き換え可能型ディスクの場合には、一旦クロストーク検出信号をデータ領域で記録再生してディスクの管理情報領域または係数メモリ17に各層間のクロストーク量を記憶すればクロストーク検出信号そのものは不要になるため消去、あるいはデータ記録時のオーバーライトによって消去すればよい。もちろん上述したBD−Rの例のようにクロストーク検出信号を記録したアドレスを管理情報として記録しておき、オーバーライトされないように制御するようにしてもよい。
【0044】
なお上述した記録順序は、クロストーク検出信号の記録だけでなく通常のデータ記録の場合にも適用可能で、最深層のL0記録層110から最表層のL3記録層113の順に記録することにより、各記録層の記録信号品質を悪化させないという効果がある。
【0045】
以上、本発明の多層光ディスクおよび多層光ディスク記録再生装置を使用すれば、各層間のクロストーク量の絶対値を検出することができる。
【実施例2】
【0046】
以下、層間クロストークによるエラーレート劣化を低減した多層光ディスク装置の動作について述べる。
【0047】
図7において、たとえばレーザビーム12によってL0記録層110を再生する場合のクロストークについて考えると、図3(a)に示したように予想される再生レベルが大きなクロストークは共焦点によるL2記録層112からのクロストークCT0-2である。しかし、このクロストーク量は層間隔D0-1、D1-2によって決まるのでL2記録層112の信号レベルが大きいとクロストーク量も増すことになる。そこで本発明においては、この共焦点によるクロストーク低減に着目し、係数メモリ17に記憶されたクロストーク量CT0-2が規定の閾値を超えた場合に、記録系信号処理回路10、またはレーザ駆動回路5を制御して、L2記録層112の記録時に記録変調度を下げるようにした。この結果、L2記録層112の記録レベルが低下するのでクロストークCT0-2量が減少し、その結果L0記録層110再生時のエラーレートを悪化させることが無いという効果が得られる。同様にL1記録層111を再生する場合に問題となるクロストーク信号は、図3(b)に示したL3記録層113からの共焦点によるクロストークCT1-3であるから、係数メモリ17に記憶されたクロストーク量CT1-3が規定の閾値を超えた場合に、記録系信号処理回路10、またはレーザ駆動回路5を制御して、L3記録層113の記録時に記録変調度を下げるようにする。
【0048】
ここで記録変調度切り換えに対してクロストーク量に閾値を設けたのは、なるべくL2記録層112、L3記録層113の記録品質を下げないためである。記録変調度を下げるということは信号のSN比を低下させることにつながるが、前述したようにL2記録層112、L3記録層113の再生時には共焦点によるクロストークが存在しないため、L0記録層110およびL1記録層111の再生時に比べてSN比マージンが広く、記録変調度を下げて記録するという手段が可能になる。一方、L0記録層110およびL1記録層111に対するクロストーク量が問題ない低レベルの場合には、記録変調度はL2記録層112およびL3記録層113の最適値に設定するように制御する。再生系エラーレートの許容値から計算すると、このクロストーク量の閾値としては−20dB以上に設定するのが望ましい。
【0049】
また、上記のように一つの閾値で記録変調度を切り換えるのではなく、係数メモリ17に記憶されているクロストーク量に応じて記録変調度あるいはレーザビーム12の記録パワーを順次変えるように制御しても良い。
【0050】
以上、本実施形態では共焦点によるクロストーク量を低減でき、L0記録層110、L1記録層111のエラーレートの悪化を防ぐことができる効果がある。また、上記は共焦点クロストークに着目した例について述べたが、通常の層間クロストークであるCT0-1、CT0-3の低減にも適用可能であり、前記のクロストーク量がそれぞれ規定値を超えている場合には、L1記録層111、およびL3記録層113の記録変調度を下げて記録するようにすればよい。
【実施例3】
【0051】
次に層間クロストークによるエラーレート劣化を再生系信号処理によって低減する動作について述べる。
【0052】
図8に本発明による多層光ディスク記録再生装置の他の実施形態を示す。
図8において、121は第1レーザビーム、122は第2レーザビーム、20は遅延回路、21はアッテネータ回路、22は減算回路である。
【0053】
共焦点によるクロストーク信号成分は、共焦点を結んでいる記録層の再生信号レベルを、検出したクロストーク量分だけ減衰させ、現在再生している記録層の再生信号から減算することで打ち消すことができる。
【0054】
図8において再生時には、第1レーザビーム121、第2レーザビーム122は再生用レーザパワーにそれぞれ設定され、記録時と同様のサーボ処理により第1レーザビーム121はL0記録層110を、第2レーザビーム122はL2記録層112を同時に再生し、再生信号列R1、R2を得る。ここで第1レーザビーム121でL0記録層110を再生する場合に、同時に第2レーザビーム122でL2記録層112を再生して得られた信号R2を前述したL2記録層112からのクロストーク量CT0-2だけアッテネータ回路21で減衰させ、減算回路22によってL0記録層110の再生信号R1から減算すれば、L0記録層110の再生信号にはクロストークが含まれず良好な特性が得られる。
遅延回路20は第1レーザビーム121、第2レーザビーム122の再生時刻誤差吸収用として動作する。
【0055】
図9に本実施例に使用するマルチレーザビーム配置の一例を示す。
図9において第1レーザビーム121と第2レーザビーム122はインライン状に配置される。
本実施例においては2つのレーザビームの再生位置を厳密に管理することが望ましい。このレーザビーム間距離DRをディスク回転スピードで除して時間に変換し、その値分先行するレーザビーム121の再生信号を遅延回路20によって遅延させる。遅延量を正確に合わせるには、まずレーザビーム間距離DRを時間に変換した値を設定し粗調整とし、次に遅延時間を順次変更して第1レーザビーム121で再生される信号R1のエラーレートがもっとも低くなる遅延時間を抽出するように制御する。
【0056】
以上は第1レーザビーム121と第2レーザビーム122をインライン状に配置した例について述べたが、これは同心となるように制御しても良い。この場合は再生時刻誤差吸収は最小限ですむが、第1レーザビーム121と第2レーザビーム122との相互干渉が発生し、再生信号のエラーレートを悪化させる可能性がある。
【0057】
ここで本実施例に使用する多層ディスク1では製作の過程で各記録層毎に偏芯量が異なることが予想されるが、第1レーザビーム121、第2レーザビーム122のフォーカス、トラッキング制御は光検出回路6のサーボ用制御信号であるC1、C2およびサーボ回路7の出力信号S1、S2によってそれぞれ独立に制御されるため、従来手法にて容易に対応でき、複雑な調整は必要としない。
【0058】
以上、本実施形態によれば共焦点クロストークを打ち消すことが可能となり、高品質の再生信号を得ることができるという効果がある。また、上記は共焦点クロストークに着目した例について述べたが、通常の層間クロストークであるCT0-1、CT0-3の低減にも適用可能である。ただし、補正できるのは1つの記録層からのクロストークであるため、2〜3の記録層からのクロストークを打ち消す場合には、3〜4のレーザビームを同時に発光、受光する手段を用いればよい。
【0059】
以上、本発明の詳細を、記録型の記録媒体としてBD−R、BD−REディスク、また、それらを記録又は再生するBlu−rayディスク装置を例として説明してきたが、BD−ROM多層ディスクのような再生専用の多層光ディスクやそれを再生する光ディスク装置、およびDVD装置に対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明による多層光ディスク記録再生装置のブロック図、
【図2】多層光ディスクにおけるクロストーク発生の模式図、
【図3】本発明による多層光ディスクの信号配置の一例を示す図、
【図4】本発明によるクロストーク検出信号のトラック配置の一例を示す図、
【図5】本発明によるそれぞれの記録層の再生スペクトルの一例を示す図、
【図6】本発明による多層光ディスクの信号配置の一例を示す図、
【図7】本発明による多層光ディスク記録再生装置のブロック図、
【図8】本発明による多層光ディスク記録再生装置のブロック図、
【図9】本発明によるレーザビーム配置の一例を示す図、である。
【符号の説明】
【0061】
1‥ディスク、2‥モータ、3‥サーボ駆動回路、4‥ピックアップ、
5‥レーザ駆動回路、6‥光検出回路、7‥サーボ回路、
8‥バッファメモリ、9‥再生系信号処理回路、10‥記録系信号処理回路
110〜115‥記録層、121‥第1レーザビーム、122‥第2レーザビーム、
13‥信号処理回路、14‥光ディスク記録再生装置、15‥ドライブ制御装置、
16‥スペクトラム解析回路、17‥係数メモリ、18‥バンドパスフィルタ回路、
19‥信号レベル検出回路、20‥遅延回路、21‥アッテネータ回路、
22‥減算回路、231‥クロストーク検出信号記録トラック1、
232‥クロストーク検出信号記録トラック2、
233‥クロストーク検出信号記録トラック3、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に複数の記録層を有する光ディスクであって、
前記複数の記録層の同一半径位置に、nT(nは2以上の整数、Tはビット周期)マークとnTスペースを繰り返したデータ繰り返し信号を記録するための記録領域を有し、
各記録層の前記記録領域には、互いに異なるデータ繰り返し信号が記録される光ディスク。
【請求項2】
請求項1記載の光ディスクにおいて、前記光ディスクはM層(Mは2以上の整数)の記録層を有し、
各記録層に記録される前記データ繰り返し信号が、nTから(n+M−1)Tのいずれかの長さのマークとスペースのデータ繰り返し信号で構成したM種類の固定周波数信号であることを特徴とする光ディスク。
【請求項3】
請求項1記載の光ディスクにおいて、各記録層間のデータ繰り返し信号が2T間隔で構成されていることを特徴とする光ディスク。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の光ディスクにおいて、前記記録領域を内周リードインエリア、および外周リードアウトエリアの少なくとも一方に設けることを特徴とする光ディスク。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の光ディスクにおいて、前記記録領域を内周リードインエリアの外周側、及び外周リードアウトエリアの内周側の少なくとも一方に設けることを特徴とする光ディスク。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の光ディスクにおいて、前記記録領域は、少なくとも連続した3つ以上のトラックで構成されていることを特徴とする光ディスク。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の光ディスクにおいて、前記他層からの前記データ繰り返し信号の漏れこみ量を前記光ディスクの管理情報記録領域に記録しておくことを特徴とする光ディスク。
【請求項8】
厚み方向に複数の記録層を有する光ディスクの記録及び再生の少なくとも一方を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスクは、前記複数の記録層の同一半径位置に、nT(nは2以上の整数、Tはビット周期)マークとnTスペースを繰り返したデータ繰り返し信号を記録するための記録領域を有し、各記録層の前記記録領域には、互いに異なるデータ繰り返し信号が記録されており、
前記記録領域に記録されている前記データ繰り返し信号を各記録層毎に再生して、再生している記録層以外の他の記録層からの前記データ繰り返し信号の漏れこみ量を測定する光ディスク装置。
【請求項9】
請求項8記載の光ディスク装置において、前記光ディスクはM層(Mは2以上の整数)の記録層を有し、
前記データ繰り返し信号が、nTから(n+M−1)Tのいずれかの長さのマークとスペースのデータ繰り返し信号で構成したM種類の固定周波数信号であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項10】
請求項8又は9記載の光ディスク装置において、前記漏れこみ量が規定の閾値を超えた場合に、前記他の記録層の記録変調度を下げて記録することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項11】
請求項10記載の光ディスク装置において、前記光ディスクの記録層が4層で、厚み方向で内側に位置する記録層から順に第0層、第1層、第2層、第3層としたときに、第0層に対する第2層からの漏れこみ量が閾値を超えた場合には第2層の記録変調度を、第1層に対する第3層からの漏れこみ量が閾値を超えた場合には第3層の記録変調度をそれぞれ下げて記録することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項12】
厚み方向に複数の記録層を有する光ディスクの記録と再生の少なくとも一方を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスクは、前記複数の記録層の同一半径位置に、nT(nは2以上の整数、Tはビット周期)マークとnTスペースを繰り返したデータ繰り返し信号を記録するための記録領域を有し、
各記録層のそれぞれの記録領域に、互いに異なるデータ繰り返し信号を記録し、各記録層の前記記録領域に記録した前記データ繰り返し信号をそれぞれ再生して、再生している記録層以外の他の記録層からの前記データ繰り返し信号の漏れこみ量を測定する光ディスク装置。
【請求項13】
請求項12記載の光ディスク装置において、前記複数の記録層のうち、厚み方向で最も内側に位置する記録層から順に前記データ繰り返し信号記録していくことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項14】
請求項8から13のいずれかに記載の光ディスク装置において、所定の記録層を再生したときに得られる他の記録層からの前記データ繰り返し検出信号の漏れこみ量を前記光ディスクの管理情報記録領域に記録することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項15】
厚み方向に複数の記録層を有する光ディスクの記録と再生の少なくとも一方を行う光ディスク装置であって、
L個(Lは2以上の整数)のレーザビームを発光させる光ピックアップと、
信号処理部とを備え、
前記光ディスクは、前記複数の記録層の同一半径位置に、nT(nは2以上の整数、Tはビット周期)マークとnTスペースを繰り返したデータ繰り返し信号を記録するための記録領域を有し、各記録層のそれぞれの記録領域に、互いに異なるデータ繰り返し信号が記録されているものであり、
前記光ディスク装置は、各記録層の前記記録領域の前記データ繰り返し信号再生して、他の記録層からの前記データ繰り返し信号の漏れこみ量を記憶しておき、
前記光ピックアップの前記L個のレーザビームを同時に発光させるとともに、それぞれのレーザビームを前記光ディスクの異なるL層の記録層に集光させて同時に再生信号を検出し、
前記信号処理部は、所望する記録層の再生信号から他の記録層の再生信号を、前記記憶した他の記録層からのデータ繰り返し信号の漏れこみ量だけ減算する光ディスク装置。
【請求項16】
請求項15記載の光ディスク装置において、前記光ディスクはM層(Mは2以上の整数)の記録層を有し、
各記録層に記録される前記データ繰り返し信号が、nTから(n+M−1)Tのいずれかの長さのマークとスペースのデータ繰り返し信号で構成したM種類の固定周波数信号であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項17】
請求項15記載の光ディスク装置において、前記光ディスクの記録層が4層の場合で、厚み方向で最も内側に位置する記録層から順に第0層、第1層、第2層、第3層としたときに、2個のレーザビームの一方を第0層に、他方を第2層にそれぞれ集光させる、または、一方を第1層に、他方を第3層にそれぞれ集光させることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項18】
厚み方向に複数の記録層を有する光ディスクの記録方法であって、
前記光ディスクは、前記複数の記録層の同一半径位置に所定長の記録領域を有しており、
前記記録領域にnT(nは2以上の整数、Tはビット周期)マークとnTスペースを繰り返したデータ繰り返し信号を、各記録層の前記データ繰り返し信号が互いに異なるように記録する光ディスク記録方法。
【請求項19】
請求項18記載の光ディスク記録方法において、前記光ディスクはM層(Mは2以上の整数)の記録層を有し、
各記録層に記録される前記データ繰り返し信号が、nTから(n+M−1)Tのいずれかの長さのマークとスペースのデータ繰り返し信号で構成したM種類の固定周波数信号であることを特徴とする光ディスク記録方法。
【請求項20】
請求項18又は19記載の光ディスク記録方法において、前記記録領域を少なくとも連続した3つ以上のトラックで構成し、同一の記録層の前記各トラックに同一周波数の前記繰り返し信号を記録することを特徴とする光ディスク記録方法。
【請求項21】
請求項18から20のいずれかに記載の光ディスク記録方法において、前記複数の記録層のうち、厚み方向で最も内側に位置する記録層から順に前記データ繰り返し信号を記録していくことを特徴とする光ディスク記録方法。
【請求項22】
請求項17から21のいずれかに記載の光ディスク記録方法において、前記他の記録層からの前記データ繰り返し信号の漏れこみ量を前記光ディスクの管理情報記録領域に記録しておくことを特徴とする光ディスク記録方法。
【請求項23】
厚み方向に複数の記録層を有する光ディスクの再生方法であって、
前記光ディスクは、前記複数の記録層の同一半径位置に少なくとも連続した3トラック以上で構成される記録領域を有し、前記記録領域には、nT(nは2以上の整数、Tはビット周期)の1とnTの“0”を繰り返したデータ繰り返し信号が、各記録層の前記データ繰り返し信号が互いに異なるように記録されており、
前記3トラック以上で構成する記録領域のうち、両端以外の1つ以上のトラックに記録されているデータ繰り返し信号を再生して、他の記録層からの前記データ繰り返し信号の漏れこみ量を測定する光ディスク再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−129111(P2010−129111A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300339(P2008−300339)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】