光ディスク媒体及び光ディスク装置
【課題】3次元ピット選択方式ディスクに対して,狭トラック化を可能にする媒体構造とそれに対応する光ディスク装置を提供する。
【解決手段】トラック案内溝の間に複数のデータピット列を設け,相変化記録膜をデータピット列内にのみ形成するディスク構成とする。スペース部とマーク部の反射率と位相を適切に設定することによって,常解像信号キャンセルを実現し,データクロストークとプッシュプル信号の劣化を防止する。メインビームのプッシュプル信号とサブビームのプッシュプル信号から信号を選択してからウォブルアドレス情報を読み出す構成の光ディスク装置によって,本発明の光ディスク媒体に対応する。
【解決手段】トラック案内溝の間に複数のデータピット列を設け,相変化記録膜をデータピット列内にのみ形成するディスク構成とする。スペース部とマーク部の反射率と位相を適切に設定することによって,常解像信号キャンセルを実現し,データクロストークとプッシュプル信号の劣化を防止する。メインビームのプッシュプル信号とサブビームのプッシュプル信号から信号を選択してからウォブルアドレス情報を読み出す構成の光ディスク装置によって,本発明の光ディスク媒体に対応する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,記録媒体上に物理的性質が他の部分とは異なる記録マークを形成し,情報を記憶する光ディスク媒体及びその媒体から情報を再生する光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク媒体としてはCD-R/RW,DVD-RAM,DVD±R/RW,Blu-ray Disc(以下BD),HD DVD等多くのものが存在し,データ層を2層持つ媒体も含めて広く一般に普及している。対応する光ディスク装置としては,CD-R/RW,DVD-RAM,DVD±R/RWの記録/再生に対応した,いわゆるDVDスーパーマルチドライブが普及している。今後はBDやHD DVDに対応する高機能ドライブが普及してゆくものと考えられる。
【0003】
次世代の大容量光ディスクとして超解像技術やSIL(Solid Immersion Lens)などが提案されているが,超解像技術の中の1つとして,特開2006-107588号公報に記載されたものがある。これは溶融時に光学特性が変化する相変化記録膜をピットに埋め込むことによって超解像再生を行い,かつ記録マーク同士を空間的に分離することによって記録マーク間の熱的な干渉や超解像領域の揺らぎを低減するものである。こうした構成によって線密度とトラック密度が同時に向上でき,光ディスクの記録容量を大幅に増加させることが可能である。また,データピットの間の領域の透過率を大きくすることによってデータ面の平均透過率を大きくできるので,光利用効率が高く多層化にも有利である。以下,この方式を3次元ピット選択方式と呼ぶことにする。ピット内に記録膜を埋め込む手段としては,特開2005-100526号公報に記載の相変化エッチング法(結晶とアモルファスのエッチング速度の違いを利用する方法)やCMP(Chemical Mechanical Polishing)法等の物理的研磨加工法を利用することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2006-107588号公報
【特許文献2】特開2005-100526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ディスクのトラッキング制御方法として代表的なものには,案内溝の回折光を利用するプッシュプル法及びピットエッジ部の再生信号の位相差を利用するDPD(Differential Phase Detection)法がある。プッシュプル法は記録型光ディスクに用いられ,光ディスク媒体の偏心に対するオフセット発生を抑圧するDPP(Differential Push-Pull)法が広く一般に用いられている。DPD法はデータピット列が形成された再生専用光ディスクのトラッキング方法として広く用いられている。従来の光ディスクのトラックピッチは概ね光スポット径の1/2程度である。トラックピッチを小さくするとプッシュプル法ではトラック誤差信号の振幅が減少し,DPD法でも隣接トラックとのクロストークの影響等によりトラック誤差信号の品質が劣化するため,何れの場合にも安定なトラッキング制御を実現できなくなる。また,DPD法では記録マーク(ピット)を小さくすると,エッジ部で発生する位相差が小さくなって安定なトラック誤差信号が得られなくなる。特開2006-107588号公報によれば,波長405nmの半導体レーザを光源として開口数0.85の光ヘッドを用い,トラックピッチ0.24μmの3次元ピット選択方式ディスクに対して通常のROMと同じDPD法によりトラッキング制御を実施している。光ヘッドはBD対応の仕様であるため,通常のトラックピッチ0.32μmに対して1.5倍の狭トラック化を実現しているが,トラッキング制御の安定性についての記述がない。前述の理由によってさらなる狭トラック化は困難と考えられる。
【0006】
本発明は上記問題点を解決し,3次元ピット選択方式ディスクに対して,狭トラック化を可能にする媒体構造とそれに対応する光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光ディスク媒体は,トラック案内溝と,隣接する2つのトラック案内溝の間の領域に設けられたデータトラックとを有し,データトラックに形成されたデータピット内にのみ,照射する光ビームのパワーに応じて光学特性が変化する材料が埋め込まれている。隣接する2つのトラック案内溝の間の領域には複数のデータトラックを設けることができる。ここで,照射する光ビームのパワーが第1のパワーのとき,データピットからの反射光量がデータピット間の領域の反射光量と略等しく,照射する光ビームのパワーが第1のパワーよりも大きい第2のパワーのとき,データピットからの反射光量がデータピット間の領域の反射光量と異なるように構成される。
【0008】
以上により,本発明の課題を解決することができ,3次元ピット選択方式ディスクのトラック密度を高めつつ,安定なトラック制御を実現する光ディスク媒体を提供することができた。対応する光ディスク装置としては,従来のプッシュプル又はDPP方式のトラック誤差信号を用いたトラッキング制御を基本とするが,案内溝間に複数のデータトラックがあることに対応して,指定データトラックに対応するオフセット量をトラック誤差信号に印加する手段を設ける必要がある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光ディスク媒体及び光ディスク装置によって,超解像効果を活用した大容量光ディスクシステムを提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
3次元ピット選択方式ディスクで狭トラック化を可能にするには,BD等の従来の光ディスクと同等な間隔で案内溝を形成し,2つの案内溝の間の領域に複数のデータトラックを形成すればよい。こうしたディスク構成によってトラッキング制御は通常のプッシュプル法又はDPP法によって安定に実施でき,かつ案内溝間に複数のデータトラックを形成することによって,データのトラック密度を高めることができる。この方式の課題とその解決手段を以下に示す。
【0011】
本発明の光ディスク媒体を実現する上での課題は,(1)データトラックの狭トラック化によるデータトラック間クロストークの低減,(2)具体的なディスクの構成と作成方法の提供である。以下,これらの解決手段について説明する。
【0012】
(1)データトラックの狭トラック化によるデータトラック間クロストークの低減
3次元ピット選択方式ディスクでは,ピットに埋め込まれた相変化記録膜の溶融時の光学特性変化を利用して光学分解能より小さなマークを超解像再生する。一方,光学分解能よりも大きなマークがあると,通常の光ディスクと同様の信号が得られる。以下,これらを超解像再生及び常解像再生とよぶことにする。データトラックを狭トラック化した場合,再生中のトラックは光エネルギーが強く超解像再生をしているが,隣接トラックでは光エネルギーが弱いため,常解像再生状態にある。隣接データトラックの常解像再生信号はクロストークとして当該トラックの超解像再生信号に漏れ込むため,これが大きいと再生信号品質が劣化してしまう。この問題を解決するには常解像再生信号をできるだけ小さく,好ましくはゼロにすればよい。常解像再生信号を小さくして超解像再生信号へのクロストークを低減する技術のことを,以下では常解像キャンセル技術と呼ぶ。
【0013】
図2は常解像キャンセルの概念をまとめたものであり,2つのタイプが考えられる。ここで,スペース部の反射率をRs,マークが結晶状態の反射率をRc,溶融状態の反射率をRmとする。タイプ1の構成は,Rs=Rcとするものである。これによって,常解像再生信号の振幅(Rc-Rs)はゼロにでき,超解像再生信号の振幅(Rm-Rs)を確保することが可能になる。タイプ2の構成は,ピットとスペースの物理的な段差やピットとスペースの膜構成に依存する光学的な位相差を利用するものである。このときRs<Rcとし,ピット部での回折によって対物レンズの開口外に回折された光量と反射率差(Rc-Rs)に相当する光量を等しくすることによって常解像再生信号の振幅をゼロにすることができる。超解像再生時には,マークの反射率が変化することによって,上の光量バランスが崩れ,これが信号振幅として検出される。
【0014】
図3は,常解像信号の振幅とマークの反射率及び実効ピット深さ(マークの光学的位相差/2)の関係を示すものである。ここではHopkinsの手法に基づく線形回折シミュレータを用い,光源の波長405nm,対物レンズの開口数0.85,マークの幅0.16μm,マークの長さ0.60μmとしたときの計算結果を示している。図中のSc及びSsはそれぞれ光ヘッドで検出したマーク(結晶状態)及びスペースの信号強度を表しており,回折の効果を含んだ計算結果である。常解像キャンセルの条件はSc=Ssである。タイプ1の条件は反射率比Rc/Rs=1,かつ実効ピット深さ=0λの1点であるのに対して,図に見られるようにタイプ2の場合には反射率比Rc/Rsと実効ピット深さの組み合わせが広い領域に広がっている。この結果は,タイプ2の方がディスク構成の自由度が大きく,作成し易いことを示すものである。
【0015】
ディスクの構造を定めるためにはマーク部とスペース部の反射率と位相を計算する必要がある。3次元ピット選択方式ディスクのマーク部の反射率と位相を計算するには従来の方法に比較して工夫が必要である。図4はCMP加工された3次元ピット選択方式ディスクの光学計算のモデルである。ここでは,特性行列を用いた通常の多層膜干渉計算手法を用いる。光入射側のカバー層(図中ではBD光学系に対応してUV樹脂)中に位相計算のための基準面を仮想的に設け,ピット部とスペース部のそれぞれの膜構成に従って特性行列を用いた干渉計算を行い複素振幅反射率を求め,ピット部の反射率,スペース部の反射率,スペース部に対するピット部の実効ピット深さ(光学位相)を計算する。これによって,基板に形成したピットの物理的な深さとマークとスペースのそれぞれの膜構成に応じた反射率と位相とを算出することができ,結果を前述の線形回折シミュレータに入力することによって再生信号を算出することができる。図中のディスク構成は,以下の検討での基本的な構成である。基板としては最短ピット長0.15μm,ピット深さ68nmのPC基板,反射膜としてAgPdCu合金薄膜,記録膜としてBiGeSbTe合金薄膜,保護膜としてAl2O3薄膜を用いた。
【0016】
図5は,試作したディスクのスペース部とマーク部の反射率の設計結果と実測結果をまとめたものである。実験に用いた光ヘッドは,光源の波長λ=405nm,対物レンズの開口数NA=0.85のものであり,集光スポットの1/e2径(λ/NA)は約476nmである。実験に用いたディスクはAgPdCu合金薄膜の厚さを10nmから200nm,BiGeSbTe合金薄膜の厚さを10nmから30nm,Al2O3薄膜の厚さを10nmから90nmの範囲で変化させたものを複数枚準備した。スペース部の反射率に関しては,設計値と実測値がよく一致している。ピット部の反射率に関しては,設計値よりも実測値の方が全体に小さくなっているが,これは主にピットの大きさが波長よりも小さいため,平坦な無限に広い多層膜をモデルとする多重干渉計算のモデルとのずれが生じるためと考えている。上に示した計算手法によって膜構成の設計が十分に実現でき,実験によって修正を加えれば常解像信号の振幅をゼロに近づけることが可能であることが確認できた。この結果からスペース部の反射率に対して,約10%程度の超解像信号の振幅が得られることが判った。
【0017】
以下, FDTD(Finite Differential Time Domain)法による電磁界計算の結果について述べる。ここでは計算の簡略化のためタイプ1の常解像キャンセル構造についての結果を中心に示すが,タイプ2の常解像キャンセルについても,基本的に計算手法は変わらない。
【0018】
図6は,FDTD法によって電磁界計算を実施した結果の一例を示す図である。ここでは反射膜でコーティングされたピット内に相変化記録膜を配置し,その膜厚方向(図中Z方向)の位置によって電界強度分布が変化する様子を示している。図6(b)がタイプ1の構成に対する適正な条件であり,マークによる回折が最小でかつマークとスペースの反射率が等しくなっている。このとき,膜厚方向に対してスペース部の反射膜とピット内の記録膜が概ね同じ位置にある。これがタイプ1の常解像キャンセル構造の要点である。
【0019】
図7は,繰り返し信号のマーク長と信号振幅の関係をFDTD法で計算した結果を示す図である。ここでは図6(b)のモデルの結果を示す。図に示すように,通常のROMディスクに比較して,常解像キャンセル構造の3次元ピット選択ディスクでは,BDに対して線密度を4倍にした100GBの条件でも十分な信号振幅が得られることが判った。
【0020】
(2)具体的なディスクの構成と作成方法の提供
CMP加工を前提として具体的なディスクの構成を考える。CMP加工を施すとディスク表面を平坦に加工することができる。前述のように常解像キャンセル構造を用いればデータトラックを高密度化可能である。トラック案内溝に関しては,十分な大きさのプッシュプル信号が得られるようにすればよいが,トラック案内溝の中に超解像応答をする相変化記録膜があると,常解像キャンセル効果によってプッシュプル信号自体も小さくなることが課題となる。
【0021】
これを解決するためには,図8に示す構成と加工手順を用いればよい。図において,トラック案内溝は所謂V溝構造である。V溝構造は光磁気ディスクなどで実用化されている構成であり,光磁気信号の品質がトラック案内溝の影響で劣化しないように,トラック案内溝を狭く,光磁気信号を記録する(ランド部)を広くする構成である。ここでは,V溝構造のトラック案内溝の間に複数のデータトラックとなるピット列を形成した基板を用いる。このように,1つの基板内で深さの異なるピットや溝を形成する技術としては,前述の光磁気ディスクの案内溝とセクターアドレスピットや,DVD-RWのデータ領域とコントロールデータ領域のような形で既に実用化されている。これらは主としてカッティングマシンの記録パワーやパルス幅を変化させることによってトラック案内溝とデータピットを形成している。基板作成には,こうした技術を応用すればよい。
【0022】
図8(a)は,基板に保護膜と相変化膜を形成した場合のディスクの断面構造を模式的に示している。図8(b)は,CMP加工により平坦化処理をした後の構成である。案内溝とデータピットで溝深さが異なることを利用してCMP加工を施すことによって,データピットの中にだけ相変化記録膜を残すことが可能になる。図8(c)は,保護膜と透明カバー層を形成して完成したディスクの断面構造である。トラック案内溝には記録膜がなく,トラック案内溝のピッチは安定したプッシュプル信号が得られるように広く,かつトラック案内溝の間に複数のデータトラックを設けることでデータトラック密度を高めることができた。この構造によればトラック案内溝内に相変化記録膜がないため,大きな回折が発生して良好なプッシュプル信号が得られることは言うまでもない。
【0023】
図9は,スペース部に反射膜がある場合のディスクの断面構造を示している。スペース部の反射膜と記録マーク(ピット)の反射率と光学的な位相を制御することによって常解像キャンセル構造が可能になる。このとき,データトラックによる光の回折があると案内溝からのプッシュプル信号の品質を低下させるため,タイプ1型の常解像キャンセル構造が望ましいが,安定なトラック制御が実現できる範囲で位相差を利用したタイプ2型の構造も媒体の作成プロセスマージンや超解像再生信号の品質に応じて選択することが大切である。
【0024】
図9のディスク構成において,タイプ1とタイプ2の常解像キャンセル構造を実現する上での要点についてまとめておく。タイプ1については図2に示した基本概念のように,結晶状態のマークとスペースの反射率を等しくし,かつ位相差をゼロにするものである。図9の構成の場合,結晶状態のマークの反射率は主に相変化膜の膜厚によって,スペース部の反射率と独立に制御することができる。スペース部に相変化膜が形成されていないことから,これは容易に理解できるであろう。使用する相変化膜の材料組成としては,GeSbTe合金,AgInSbTe合金,GeTe合金,SbTe合金の他にも,低融点金属であるInやSb等を選択することができる。本発明でいう相変化材料とは,固相と液相の光学定数が異なる材料であって,結晶化速度が十分に速く,液相から固相に戻るときに瞬時に結晶化するという特性を持った薄膜材料の総称の意味で用いている。これらの薄膜材料では膜厚が約50nm以下の範囲で,ほぼ膜厚に比例して反射率が高くなるため,膜厚設計によって結晶状態のマークの反射率を制御できる。同様にスペース部の反射率に関しても,反射膜材料の膜厚によって制御が可能である。
【0025】
マーク部の位相に関しては,マーク部の保護膜の膜厚を制御することによって,相対的にスペース部の反射膜とマーク部の相変化膜の位置を制御することができる。このとき,基板に形成するピットが浅すぎると,保護膜の厚さによるマーク部の位相制御の範囲が狭くなるので,ピットの深さは保護膜の厚さと記録膜の厚さの和と同等程度にしておくとよい。こうした反射率と位相の制御指針に基づけば,タイプ1の膜構成を基準として,例えば記録膜の膜厚を厚くし,かつ保護膜の膜厚を薄くすることによって,結晶状態のマークの反射率をスペースよりも大きくし,かつマークとスペースの位相差を適当に設定することによってタイプ2のディスク構造とすることができる。
【0026】
タイプ1とタイプ2の構造のどちらが適しているかは,選択した薄膜材料によって異なるが,例えば,結晶状態と溶融状態の反射率の変化が大きい相変化膜を用いる場合には反射率差によって超解像信号を得るタイプ1の構造が適しており,位相の変化が大きい相変化膜を用いる場合には位相差によって超解像信号を得るタイプ2の構造が適していると言える。
【0027】
以下,本発明の詳細を,実施例を用いて説明する。
図1は,本発明による光ディスク媒体のトラック構成例を示す図である。案内溝の間に複数の超解像データトラックを形成することによって,安定なトラッキング制御とデータトラックの高密度化を実現することができる。層変化記録膜はデータトラックのマーク部分にのみ埋め込まれており,案内溝の中には超解像応答をする層変化記録膜は存在しない。なお,データトラックへの高速アクセスや記録型ディスク媒体への拡張を考えた場合,案内溝を半径方向にウォブリングさせてクロック信号やアドレスデータを埋め込むことができる。これに対応する光ディスク装置の構成については後述する。
【0028】
直径120mmの光ディスク媒体の1面で記憶容量100GBを実現するためには,例えばBDと同じ論理フォーマットと変調符号を用いて,最短マーク2Tの長さを75nmとし,320nmピッチのトラック案内溝の中に2本のデータトラックを配置する構成とすればよい。これをBD光学系で再生する場合,波長λ=405nm,開口数NA=0.85の対物レンズを用いるため,光学分解能(振幅がゼロになるマーク長さ)はλ/NA/4=119nmであり,常解像再生では最短マーク2Tの振幅がゼロとなるが,マーク内にのみ相変化材料を配置した本発明のディスク媒体であれば,光スポットの中心部のマーク内の相変化材料のみを選択的に溶融させることができるので,超解像効果によって信号振幅を得ることができる。また,こうしたスポットの強度分布を利用した超解像効果はトラック幅方向にも同様に作用するため,光スポットの中心からずれた位置にある隣接トラックのマークを溶融させないように再生パワーを適正な値に定めることによって,狭トラック条件においても隣接トラックからのクロストークに影響されずに良好な再生信号を得ることができる。
【0029】
図10は,本発明の光ディスク媒体の別のトラック構成例を示す図である。この例は,案内溝の間にデータトラックが一本ある場合を示している。これは図1の構成と比較すると,データトラックが案内溝の間にただ1つあるため,従来の光ディスクドライブによって再生が可能であるという特長がある。
【0030】
図1や図10のような本発明の光ディスク媒体を用いれば,トラック案内溝の間のデータトラック数を変化させることによって,同じデータフォーマットで異なる容量の光ディスク媒体を提供でき,ユーザのニーズや技術開発の状況に応じた世代型の光メモリシステムを提供することができるようになる。
【0031】
図11は,基板越しに光ビームを入射する光学系に対応する本発明の光ディスク媒体の構成例を示す図である。BD光学系に対応する光ディスク媒体については既に述べた。本実施例では基板越しの光ビームの入射に対応するが,基本的なディスク構成は前述のものと同様であり,最後に透明カバー層の替わりに保護用のレジン層を形成する点が異なる。
【0032】
次に,本発明の光ディスク装置の実施例について説明する。図12は,一般に用いられるDPP方式のトラッキングに対応した3ビーム光ヘッドの光検出器とその検出信号を示す図である。光検出器113はメインビーム用の4分割検出器(A,B,C,D)と2つのサブビーム用の2分割検出器(E,F,G,H)から構成され,それぞれI-V変換アンプを介して電圧信号に変換した後,データ再生用のRF信号51,メイビームのプッシュプル信号52,非点収差方式のフォーカス誤差信号53,サブビームのプッシュプル信号54及び55が生成される。一般の光ディスク装置では回路規模の削減のためにサブビーム用の2分割検出器をそれぞれ(E+G),(F+H)のように直接電気的に接続して合計のサブビームのプッシュプル信号を生成する場合も多いが,本発明の光ディスク装置ではウォブル信号を再生するためにそれぞれ独立の電気信号として取り出す必要がある。BDに対応した光学系の場合,使用する光源は波長405nmの半導体レーザ,図示していない対物レンズの開口数は0.85のものを用いればよい。
【0033】
1つの半導体レーザ光源から3つのビームを生成して光ディスク上に光スポットを形成する方法について簡単に述べる。図18は,回折格子を用いた方法の摸式図である。半導体レーザから出射したレーザ光は等間隔にピッチをもつ回折格子を透過するときに回折次数0及び±1の3つ角度に分離される。0次回折光をメインスポットに,±1次回折光をサブスポットに対応させるような光学系を用いることによって簡単に3つの光スポットをディスク上に形成することができる。この手法は光ディスク装置において広く一般に用いられている手法である。
【0034】
図13は,DPP信号を生成するトラック誤差信号生成回路の構成例を示す図である。トラック誤差信号生成回路80はオフセット調整回路81〜83,ゲイン調整回路84〜86,サブビームプッシュプル信号用の加算器87,DPP信号を生成するための減算器88から構成される。本回路ではメインビームのプッシュプル信号MPPと2つのサブビームのプッシュプル信号SPP1及びSPP2を用い,それぞれオフセット調整とゲイン調整をした後,(MPP-SPP)としてDPP信号を算出する。このときオフセット調整やゲイン調整はCPU140の指示によって制御される。生成されたDPP信号はトラッキング制御に用いられる。
【0035】
図14は,本発明の光ディスク装置のトラッキング制御回路の構成例を示すブロック図である。図において,光検出器113で検出された反射光は電気信号に変換された後トラック誤差信号生成回路80に送られDPP信号が生成される。これをサーボゲイン制御回路91,位相フィルター92,電流ドライバ93を介して対物レンズアクチュエータ114を制御することによってトラッキング制御が実施される。本発明の光ディスク媒体ではトラック案内溝の間に複数のデータトラックが形成されるので,これに対応するためオフセット制御回路95は,指定されたデータトラックに対応したトラックオフセット量を生成し,加算器96を介してトラッキング制御ループに加えることによって,所定のデータトラックの再生を実現する。
【0036】
図15は,本発明光ディスク装置に好適なデータ再生回路の構成例を示す図である。図示していない光ヘッドで検出したRF信号51はアナログ等化器10で等化処理とAGC処理が施された後,デジタル信号処理部20に入力する。デジタル信号処理部20内では,入力したRF信号をADコンバータ21でクロックごとにデジタル信号化した後,DC補正器22でDC補正を施し,FIRフィルター23でデジタル等化されてビタビ復号器40によって2値化され,2値化出力58として取り出される。ビタビ復号器40の内部構成については本発明の範囲を超えるので詳細には記述しないが,2値化ビット列とPRクラスの畳み込みから生成される目標信号と再生信号とを比較して,誤差が最小になる2値化ビット列を逐次選択してゆくものである。FIRフィルターのタップ係数の学習処理はLSE制御部24により実施される。クロック信号を生成するPLL(Phase Locked Loop)回路30は位相検出器31,ローパスフィルター33,VCO(Voltage Controlled Oscillator)34から構成される。こうした構成によって,RF信号51から2値化データ58を得ることができる。これを図示していない論理フォーマットデコーダに入力することによって,復調処理が施され光ディスク媒体に記録されたデータを再生することが可能である。
【0037】
図16は,本発明の光ディスク媒体からウォブルデータを再生するための回路構成例を示す図である。一般の記録型光ディスクでは案内溝の中に(上に)データマークを記録・再生する。従って,ウォブル信号はメインビームのプッシュプル信号MPP52から生成される。一方,本発明の光ディスク媒体では案内溝上を走査するのはサブビームである。従って,本発明の光ディスク媒体からウォブルデータを再生するにはサブビームのプッシュプル信号SPP1又はSPP2を用いる。従来の光ディスクに対応し,かつ本発明の大容量光ディスクにも対応する光ディスク装置では用いるウォブル信号を選択するためのセレクタ61が必要である。本発明のウォブル信号処理回路60は,セレクタ61,バンドパスフィルター62,2値化器63,PLL回路64,及びアドレスデコーダ65から構成される。ウォブル信号からアドレスデータを再生する原理の詳細については本発明の範囲を超えるので記さないが,基本的は正弦波信号に変調信号が重畳されたウォブル信号からPLL回路64でクロックを生成し,これを用いて2値化回路でデータの2値化を行い所定の復号規則に応じてアドレスデコーダ65でアドレス情報を得る。ウォブル信号処理回路60の動作制御はCPU140により実施される。
【0038】
図17は,本発明の光ディスク装置の構成例を示す模式図である。装置に装着された光ディスク媒体100は,スピンドルモータ160により回転される。再生時には,CPU140によって指令された光強度になるようにレーザパワー/パルス制御器120が光ヘッド110内のレーザドライバ116を介して半導体レーザ112に流す電流を制御し,レーザ光114を発生させる。レーザ光114は対物レンズ111によって集光され,光スポット101を光ディスク媒体100上に形成する。この光スポット101からの反射光115は対物レンズ111を介して,光検出器113で検出される。光検出器は複数に分割された光検出素子から構成されている。再生信号処理回路130は,光ヘッド110で検出された信号を用いて,光ディスク媒体100上に記録された情報を再生する。本発明のトラック誤差信号生成回路,トラッキング制御回路,データ再生回路,及びウォブル信号処理回路はシステム制御回路200に内蔵される。こうした構成によって,本発明の光ディスク装置によって,本発明の光ディスク媒体からデータ再生,ウォブルアドレス再生,トラッキング制御を実現することができる。以上の構成によって本発明光ディスク装置を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は,超解像効果を使った大容量光ディスク媒体とそれに対応する光ディスク装置に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の光ディスク媒体のトラック構成例を示す図。
【図2】常解像キャンセルの概念図。
【図3】常解像信号の振幅とマークの反射率及び実効ピット深さの関係を示す図。
【図4】本発明の光ディスク媒体の光学計算のモデル図。
【図5】試作ディスクのスペース部とマーク部の反射率の設計結果と実測結果を示す図。
【図6】FDTD法による電磁界計算の結果を示す図。
【図7】繰り返し信号のマーク長と信号振幅の関係をFDTD法で計算した結果を示す図。
【図8】本発明の光ディスク媒体の断面構成と加工方法を示す図。
【図9】本発明の光ディスク媒体の断面構成と加工方法を示す図。
【図10】本発明の光ディスク媒体のトラック構成例を示す図。
【図11】本発明の光ディスク媒体の構成を示す図。
【図12】DPP方式のトラッキングに対応した3ビーム光ヘッドの光検出器とその検出信号を示す図。
【図13】DPP信号を生成するトラック誤差信号生成回路の構成例を示す図。
【図14】本発明の光ディスク装置のトラッキング制御回路の構成例を示す図。
【図15】本発明光ディスク装置に好適なデータ再生回路の構成例を示す図。
【図16】ウォブルデータ再生回路の構成例を示す図。
【図17】光ディスク装置の構成例を示す模式図。
【図18】3ビーム生成方法の説明図。
【符号の説明】
【0041】
100 光ディスク
101 光スポット
110 光ヘッド
111 対物レンズ
112 半導体レーザ
113 光検出器
114 レーザ光
115 反射光
116 レーザドライバ
120 レーザパワー/パルス制御器
130 再生信号処理器
140 CPU
160 スピンドルモータ
【技術分野】
【0001】
本発明は,記録媒体上に物理的性質が他の部分とは異なる記録マークを形成し,情報を記憶する光ディスク媒体及びその媒体から情報を再生する光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク媒体としてはCD-R/RW,DVD-RAM,DVD±R/RW,Blu-ray Disc(以下BD),HD DVD等多くのものが存在し,データ層を2層持つ媒体も含めて広く一般に普及している。対応する光ディスク装置としては,CD-R/RW,DVD-RAM,DVD±R/RWの記録/再生に対応した,いわゆるDVDスーパーマルチドライブが普及している。今後はBDやHD DVDに対応する高機能ドライブが普及してゆくものと考えられる。
【0003】
次世代の大容量光ディスクとして超解像技術やSIL(Solid Immersion Lens)などが提案されているが,超解像技術の中の1つとして,特開2006-107588号公報に記載されたものがある。これは溶融時に光学特性が変化する相変化記録膜をピットに埋め込むことによって超解像再生を行い,かつ記録マーク同士を空間的に分離することによって記録マーク間の熱的な干渉や超解像領域の揺らぎを低減するものである。こうした構成によって線密度とトラック密度が同時に向上でき,光ディスクの記録容量を大幅に増加させることが可能である。また,データピットの間の領域の透過率を大きくすることによってデータ面の平均透過率を大きくできるので,光利用効率が高く多層化にも有利である。以下,この方式を3次元ピット選択方式と呼ぶことにする。ピット内に記録膜を埋め込む手段としては,特開2005-100526号公報に記載の相変化エッチング法(結晶とアモルファスのエッチング速度の違いを利用する方法)やCMP(Chemical Mechanical Polishing)法等の物理的研磨加工法を利用することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2006-107588号公報
【特許文献2】特開2005-100526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ディスクのトラッキング制御方法として代表的なものには,案内溝の回折光を利用するプッシュプル法及びピットエッジ部の再生信号の位相差を利用するDPD(Differential Phase Detection)法がある。プッシュプル法は記録型光ディスクに用いられ,光ディスク媒体の偏心に対するオフセット発生を抑圧するDPP(Differential Push-Pull)法が広く一般に用いられている。DPD法はデータピット列が形成された再生専用光ディスクのトラッキング方法として広く用いられている。従来の光ディスクのトラックピッチは概ね光スポット径の1/2程度である。トラックピッチを小さくするとプッシュプル法ではトラック誤差信号の振幅が減少し,DPD法でも隣接トラックとのクロストークの影響等によりトラック誤差信号の品質が劣化するため,何れの場合にも安定なトラッキング制御を実現できなくなる。また,DPD法では記録マーク(ピット)を小さくすると,エッジ部で発生する位相差が小さくなって安定なトラック誤差信号が得られなくなる。特開2006-107588号公報によれば,波長405nmの半導体レーザを光源として開口数0.85の光ヘッドを用い,トラックピッチ0.24μmの3次元ピット選択方式ディスクに対して通常のROMと同じDPD法によりトラッキング制御を実施している。光ヘッドはBD対応の仕様であるため,通常のトラックピッチ0.32μmに対して1.5倍の狭トラック化を実現しているが,トラッキング制御の安定性についての記述がない。前述の理由によってさらなる狭トラック化は困難と考えられる。
【0006】
本発明は上記問題点を解決し,3次元ピット選択方式ディスクに対して,狭トラック化を可能にする媒体構造とそれに対応する光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光ディスク媒体は,トラック案内溝と,隣接する2つのトラック案内溝の間の領域に設けられたデータトラックとを有し,データトラックに形成されたデータピット内にのみ,照射する光ビームのパワーに応じて光学特性が変化する材料が埋め込まれている。隣接する2つのトラック案内溝の間の領域には複数のデータトラックを設けることができる。ここで,照射する光ビームのパワーが第1のパワーのとき,データピットからの反射光量がデータピット間の領域の反射光量と略等しく,照射する光ビームのパワーが第1のパワーよりも大きい第2のパワーのとき,データピットからの反射光量がデータピット間の領域の反射光量と異なるように構成される。
【0008】
以上により,本発明の課題を解決することができ,3次元ピット選択方式ディスクのトラック密度を高めつつ,安定なトラック制御を実現する光ディスク媒体を提供することができた。対応する光ディスク装置としては,従来のプッシュプル又はDPP方式のトラック誤差信号を用いたトラッキング制御を基本とするが,案内溝間に複数のデータトラックがあることに対応して,指定データトラックに対応するオフセット量をトラック誤差信号に印加する手段を設ける必要がある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光ディスク媒体及び光ディスク装置によって,超解像効果を活用した大容量光ディスクシステムを提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
3次元ピット選択方式ディスクで狭トラック化を可能にするには,BD等の従来の光ディスクと同等な間隔で案内溝を形成し,2つの案内溝の間の領域に複数のデータトラックを形成すればよい。こうしたディスク構成によってトラッキング制御は通常のプッシュプル法又はDPP法によって安定に実施でき,かつ案内溝間に複数のデータトラックを形成することによって,データのトラック密度を高めることができる。この方式の課題とその解決手段を以下に示す。
【0011】
本発明の光ディスク媒体を実現する上での課題は,(1)データトラックの狭トラック化によるデータトラック間クロストークの低減,(2)具体的なディスクの構成と作成方法の提供である。以下,これらの解決手段について説明する。
【0012】
(1)データトラックの狭トラック化によるデータトラック間クロストークの低減
3次元ピット選択方式ディスクでは,ピットに埋め込まれた相変化記録膜の溶融時の光学特性変化を利用して光学分解能より小さなマークを超解像再生する。一方,光学分解能よりも大きなマークがあると,通常の光ディスクと同様の信号が得られる。以下,これらを超解像再生及び常解像再生とよぶことにする。データトラックを狭トラック化した場合,再生中のトラックは光エネルギーが強く超解像再生をしているが,隣接トラックでは光エネルギーが弱いため,常解像再生状態にある。隣接データトラックの常解像再生信号はクロストークとして当該トラックの超解像再生信号に漏れ込むため,これが大きいと再生信号品質が劣化してしまう。この問題を解決するには常解像再生信号をできるだけ小さく,好ましくはゼロにすればよい。常解像再生信号を小さくして超解像再生信号へのクロストークを低減する技術のことを,以下では常解像キャンセル技術と呼ぶ。
【0013】
図2は常解像キャンセルの概念をまとめたものであり,2つのタイプが考えられる。ここで,スペース部の反射率をRs,マークが結晶状態の反射率をRc,溶融状態の反射率をRmとする。タイプ1の構成は,Rs=Rcとするものである。これによって,常解像再生信号の振幅(Rc-Rs)はゼロにでき,超解像再生信号の振幅(Rm-Rs)を確保することが可能になる。タイプ2の構成は,ピットとスペースの物理的な段差やピットとスペースの膜構成に依存する光学的な位相差を利用するものである。このときRs<Rcとし,ピット部での回折によって対物レンズの開口外に回折された光量と反射率差(Rc-Rs)に相当する光量を等しくすることによって常解像再生信号の振幅をゼロにすることができる。超解像再生時には,マークの反射率が変化することによって,上の光量バランスが崩れ,これが信号振幅として検出される。
【0014】
図3は,常解像信号の振幅とマークの反射率及び実効ピット深さ(マークの光学的位相差/2)の関係を示すものである。ここではHopkinsの手法に基づく線形回折シミュレータを用い,光源の波長405nm,対物レンズの開口数0.85,マークの幅0.16μm,マークの長さ0.60μmとしたときの計算結果を示している。図中のSc及びSsはそれぞれ光ヘッドで検出したマーク(結晶状態)及びスペースの信号強度を表しており,回折の効果を含んだ計算結果である。常解像キャンセルの条件はSc=Ssである。タイプ1の条件は反射率比Rc/Rs=1,かつ実効ピット深さ=0λの1点であるのに対して,図に見られるようにタイプ2の場合には反射率比Rc/Rsと実効ピット深さの組み合わせが広い領域に広がっている。この結果は,タイプ2の方がディスク構成の自由度が大きく,作成し易いことを示すものである。
【0015】
ディスクの構造を定めるためにはマーク部とスペース部の反射率と位相を計算する必要がある。3次元ピット選択方式ディスクのマーク部の反射率と位相を計算するには従来の方法に比較して工夫が必要である。図4はCMP加工された3次元ピット選択方式ディスクの光学計算のモデルである。ここでは,特性行列を用いた通常の多層膜干渉計算手法を用いる。光入射側のカバー層(図中ではBD光学系に対応してUV樹脂)中に位相計算のための基準面を仮想的に設け,ピット部とスペース部のそれぞれの膜構成に従って特性行列を用いた干渉計算を行い複素振幅反射率を求め,ピット部の反射率,スペース部の反射率,スペース部に対するピット部の実効ピット深さ(光学位相)を計算する。これによって,基板に形成したピットの物理的な深さとマークとスペースのそれぞれの膜構成に応じた反射率と位相とを算出することができ,結果を前述の線形回折シミュレータに入力することによって再生信号を算出することができる。図中のディスク構成は,以下の検討での基本的な構成である。基板としては最短ピット長0.15μm,ピット深さ68nmのPC基板,反射膜としてAgPdCu合金薄膜,記録膜としてBiGeSbTe合金薄膜,保護膜としてAl2O3薄膜を用いた。
【0016】
図5は,試作したディスクのスペース部とマーク部の反射率の設計結果と実測結果をまとめたものである。実験に用いた光ヘッドは,光源の波長λ=405nm,対物レンズの開口数NA=0.85のものであり,集光スポットの1/e2径(λ/NA)は約476nmである。実験に用いたディスクはAgPdCu合金薄膜の厚さを10nmから200nm,BiGeSbTe合金薄膜の厚さを10nmから30nm,Al2O3薄膜の厚さを10nmから90nmの範囲で変化させたものを複数枚準備した。スペース部の反射率に関しては,設計値と実測値がよく一致している。ピット部の反射率に関しては,設計値よりも実測値の方が全体に小さくなっているが,これは主にピットの大きさが波長よりも小さいため,平坦な無限に広い多層膜をモデルとする多重干渉計算のモデルとのずれが生じるためと考えている。上に示した計算手法によって膜構成の設計が十分に実現でき,実験によって修正を加えれば常解像信号の振幅をゼロに近づけることが可能であることが確認できた。この結果からスペース部の反射率に対して,約10%程度の超解像信号の振幅が得られることが判った。
【0017】
以下, FDTD(Finite Differential Time Domain)法による電磁界計算の結果について述べる。ここでは計算の簡略化のためタイプ1の常解像キャンセル構造についての結果を中心に示すが,タイプ2の常解像キャンセルについても,基本的に計算手法は変わらない。
【0018】
図6は,FDTD法によって電磁界計算を実施した結果の一例を示す図である。ここでは反射膜でコーティングされたピット内に相変化記録膜を配置し,その膜厚方向(図中Z方向)の位置によって電界強度分布が変化する様子を示している。図6(b)がタイプ1の構成に対する適正な条件であり,マークによる回折が最小でかつマークとスペースの反射率が等しくなっている。このとき,膜厚方向に対してスペース部の反射膜とピット内の記録膜が概ね同じ位置にある。これがタイプ1の常解像キャンセル構造の要点である。
【0019】
図7は,繰り返し信号のマーク長と信号振幅の関係をFDTD法で計算した結果を示す図である。ここでは図6(b)のモデルの結果を示す。図に示すように,通常のROMディスクに比較して,常解像キャンセル構造の3次元ピット選択ディスクでは,BDに対して線密度を4倍にした100GBの条件でも十分な信号振幅が得られることが判った。
【0020】
(2)具体的なディスクの構成と作成方法の提供
CMP加工を前提として具体的なディスクの構成を考える。CMP加工を施すとディスク表面を平坦に加工することができる。前述のように常解像キャンセル構造を用いればデータトラックを高密度化可能である。トラック案内溝に関しては,十分な大きさのプッシュプル信号が得られるようにすればよいが,トラック案内溝の中に超解像応答をする相変化記録膜があると,常解像キャンセル効果によってプッシュプル信号自体も小さくなることが課題となる。
【0021】
これを解決するためには,図8に示す構成と加工手順を用いればよい。図において,トラック案内溝は所謂V溝構造である。V溝構造は光磁気ディスクなどで実用化されている構成であり,光磁気信号の品質がトラック案内溝の影響で劣化しないように,トラック案内溝を狭く,光磁気信号を記録する(ランド部)を広くする構成である。ここでは,V溝構造のトラック案内溝の間に複数のデータトラックとなるピット列を形成した基板を用いる。このように,1つの基板内で深さの異なるピットや溝を形成する技術としては,前述の光磁気ディスクの案内溝とセクターアドレスピットや,DVD-RWのデータ領域とコントロールデータ領域のような形で既に実用化されている。これらは主としてカッティングマシンの記録パワーやパルス幅を変化させることによってトラック案内溝とデータピットを形成している。基板作成には,こうした技術を応用すればよい。
【0022】
図8(a)は,基板に保護膜と相変化膜を形成した場合のディスクの断面構造を模式的に示している。図8(b)は,CMP加工により平坦化処理をした後の構成である。案内溝とデータピットで溝深さが異なることを利用してCMP加工を施すことによって,データピットの中にだけ相変化記録膜を残すことが可能になる。図8(c)は,保護膜と透明カバー層を形成して完成したディスクの断面構造である。トラック案内溝には記録膜がなく,トラック案内溝のピッチは安定したプッシュプル信号が得られるように広く,かつトラック案内溝の間に複数のデータトラックを設けることでデータトラック密度を高めることができた。この構造によればトラック案内溝内に相変化記録膜がないため,大きな回折が発生して良好なプッシュプル信号が得られることは言うまでもない。
【0023】
図9は,スペース部に反射膜がある場合のディスクの断面構造を示している。スペース部の反射膜と記録マーク(ピット)の反射率と光学的な位相を制御することによって常解像キャンセル構造が可能になる。このとき,データトラックによる光の回折があると案内溝からのプッシュプル信号の品質を低下させるため,タイプ1型の常解像キャンセル構造が望ましいが,安定なトラック制御が実現できる範囲で位相差を利用したタイプ2型の構造も媒体の作成プロセスマージンや超解像再生信号の品質に応じて選択することが大切である。
【0024】
図9のディスク構成において,タイプ1とタイプ2の常解像キャンセル構造を実現する上での要点についてまとめておく。タイプ1については図2に示した基本概念のように,結晶状態のマークとスペースの反射率を等しくし,かつ位相差をゼロにするものである。図9の構成の場合,結晶状態のマークの反射率は主に相変化膜の膜厚によって,スペース部の反射率と独立に制御することができる。スペース部に相変化膜が形成されていないことから,これは容易に理解できるであろう。使用する相変化膜の材料組成としては,GeSbTe合金,AgInSbTe合金,GeTe合金,SbTe合金の他にも,低融点金属であるInやSb等を選択することができる。本発明でいう相変化材料とは,固相と液相の光学定数が異なる材料であって,結晶化速度が十分に速く,液相から固相に戻るときに瞬時に結晶化するという特性を持った薄膜材料の総称の意味で用いている。これらの薄膜材料では膜厚が約50nm以下の範囲で,ほぼ膜厚に比例して反射率が高くなるため,膜厚設計によって結晶状態のマークの反射率を制御できる。同様にスペース部の反射率に関しても,反射膜材料の膜厚によって制御が可能である。
【0025】
マーク部の位相に関しては,マーク部の保護膜の膜厚を制御することによって,相対的にスペース部の反射膜とマーク部の相変化膜の位置を制御することができる。このとき,基板に形成するピットが浅すぎると,保護膜の厚さによるマーク部の位相制御の範囲が狭くなるので,ピットの深さは保護膜の厚さと記録膜の厚さの和と同等程度にしておくとよい。こうした反射率と位相の制御指針に基づけば,タイプ1の膜構成を基準として,例えば記録膜の膜厚を厚くし,かつ保護膜の膜厚を薄くすることによって,結晶状態のマークの反射率をスペースよりも大きくし,かつマークとスペースの位相差を適当に設定することによってタイプ2のディスク構造とすることができる。
【0026】
タイプ1とタイプ2の構造のどちらが適しているかは,選択した薄膜材料によって異なるが,例えば,結晶状態と溶融状態の反射率の変化が大きい相変化膜を用いる場合には反射率差によって超解像信号を得るタイプ1の構造が適しており,位相の変化が大きい相変化膜を用いる場合には位相差によって超解像信号を得るタイプ2の構造が適していると言える。
【0027】
以下,本発明の詳細を,実施例を用いて説明する。
図1は,本発明による光ディスク媒体のトラック構成例を示す図である。案内溝の間に複数の超解像データトラックを形成することによって,安定なトラッキング制御とデータトラックの高密度化を実現することができる。層変化記録膜はデータトラックのマーク部分にのみ埋め込まれており,案内溝の中には超解像応答をする層変化記録膜は存在しない。なお,データトラックへの高速アクセスや記録型ディスク媒体への拡張を考えた場合,案内溝を半径方向にウォブリングさせてクロック信号やアドレスデータを埋め込むことができる。これに対応する光ディスク装置の構成については後述する。
【0028】
直径120mmの光ディスク媒体の1面で記憶容量100GBを実現するためには,例えばBDと同じ論理フォーマットと変調符号を用いて,最短マーク2Tの長さを75nmとし,320nmピッチのトラック案内溝の中に2本のデータトラックを配置する構成とすればよい。これをBD光学系で再生する場合,波長λ=405nm,開口数NA=0.85の対物レンズを用いるため,光学分解能(振幅がゼロになるマーク長さ)はλ/NA/4=119nmであり,常解像再生では最短マーク2Tの振幅がゼロとなるが,マーク内にのみ相変化材料を配置した本発明のディスク媒体であれば,光スポットの中心部のマーク内の相変化材料のみを選択的に溶融させることができるので,超解像効果によって信号振幅を得ることができる。また,こうしたスポットの強度分布を利用した超解像効果はトラック幅方向にも同様に作用するため,光スポットの中心からずれた位置にある隣接トラックのマークを溶融させないように再生パワーを適正な値に定めることによって,狭トラック条件においても隣接トラックからのクロストークに影響されずに良好な再生信号を得ることができる。
【0029】
図10は,本発明の光ディスク媒体の別のトラック構成例を示す図である。この例は,案内溝の間にデータトラックが一本ある場合を示している。これは図1の構成と比較すると,データトラックが案内溝の間にただ1つあるため,従来の光ディスクドライブによって再生が可能であるという特長がある。
【0030】
図1や図10のような本発明の光ディスク媒体を用いれば,トラック案内溝の間のデータトラック数を変化させることによって,同じデータフォーマットで異なる容量の光ディスク媒体を提供でき,ユーザのニーズや技術開発の状況に応じた世代型の光メモリシステムを提供することができるようになる。
【0031】
図11は,基板越しに光ビームを入射する光学系に対応する本発明の光ディスク媒体の構成例を示す図である。BD光学系に対応する光ディスク媒体については既に述べた。本実施例では基板越しの光ビームの入射に対応するが,基本的なディスク構成は前述のものと同様であり,最後に透明カバー層の替わりに保護用のレジン層を形成する点が異なる。
【0032】
次に,本発明の光ディスク装置の実施例について説明する。図12は,一般に用いられるDPP方式のトラッキングに対応した3ビーム光ヘッドの光検出器とその検出信号を示す図である。光検出器113はメインビーム用の4分割検出器(A,B,C,D)と2つのサブビーム用の2分割検出器(E,F,G,H)から構成され,それぞれI-V変換アンプを介して電圧信号に変換した後,データ再生用のRF信号51,メイビームのプッシュプル信号52,非点収差方式のフォーカス誤差信号53,サブビームのプッシュプル信号54及び55が生成される。一般の光ディスク装置では回路規模の削減のためにサブビーム用の2分割検出器をそれぞれ(E+G),(F+H)のように直接電気的に接続して合計のサブビームのプッシュプル信号を生成する場合も多いが,本発明の光ディスク装置ではウォブル信号を再生するためにそれぞれ独立の電気信号として取り出す必要がある。BDに対応した光学系の場合,使用する光源は波長405nmの半導体レーザ,図示していない対物レンズの開口数は0.85のものを用いればよい。
【0033】
1つの半導体レーザ光源から3つのビームを生成して光ディスク上に光スポットを形成する方法について簡単に述べる。図18は,回折格子を用いた方法の摸式図である。半導体レーザから出射したレーザ光は等間隔にピッチをもつ回折格子を透過するときに回折次数0及び±1の3つ角度に分離される。0次回折光をメインスポットに,±1次回折光をサブスポットに対応させるような光学系を用いることによって簡単に3つの光スポットをディスク上に形成することができる。この手法は光ディスク装置において広く一般に用いられている手法である。
【0034】
図13は,DPP信号を生成するトラック誤差信号生成回路の構成例を示す図である。トラック誤差信号生成回路80はオフセット調整回路81〜83,ゲイン調整回路84〜86,サブビームプッシュプル信号用の加算器87,DPP信号を生成するための減算器88から構成される。本回路ではメインビームのプッシュプル信号MPPと2つのサブビームのプッシュプル信号SPP1及びSPP2を用い,それぞれオフセット調整とゲイン調整をした後,(MPP-SPP)としてDPP信号を算出する。このときオフセット調整やゲイン調整はCPU140の指示によって制御される。生成されたDPP信号はトラッキング制御に用いられる。
【0035】
図14は,本発明の光ディスク装置のトラッキング制御回路の構成例を示すブロック図である。図において,光検出器113で検出された反射光は電気信号に変換された後トラック誤差信号生成回路80に送られDPP信号が生成される。これをサーボゲイン制御回路91,位相フィルター92,電流ドライバ93を介して対物レンズアクチュエータ114を制御することによってトラッキング制御が実施される。本発明の光ディスク媒体ではトラック案内溝の間に複数のデータトラックが形成されるので,これに対応するためオフセット制御回路95は,指定されたデータトラックに対応したトラックオフセット量を生成し,加算器96を介してトラッキング制御ループに加えることによって,所定のデータトラックの再生を実現する。
【0036】
図15は,本発明光ディスク装置に好適なデータ再生回路の構成例を示す図である。図示していない光ヘッドで検出したRF信号51はアナログ等化器10で等化処理とAGC処理が施された後,デジタル信号処理部20に入力する。デジタル信号処理部20内では,入力したRF信号をADコンバータ21でクロックごとにデジタル信号化した後,DC補正器22でDC補正を施し,FIRフィルター23でデジタル等化されてビタビ復号器40によって2値化され,2値化出力58として取り出される。ビタビ復号器40の内部構成については本発明の範囲を超えるので詳細には記述しないが,2値化ビット列とPRクラスの畳み込みから生成される目標信号と再生信号とを比較して,誤差が最小になる2値化ビット列を逐次選択してゆくものである。FIRフィルターのタップ係数の学習処理はLSE制御部24により実施される。クロック信号を生成するPLL(Phase Locked Loop)回路30は位相検出器31,ローパスフィルター33,VCO(Voltage Controlled Oscillator)34から構成される。こうした構成によって,RF信号51から2値化データ58を得ることができる。これを図示していない論理フォーマットデコーダに入力することによって,復調処理が施され光ディスク媒体に記録されたデータを再生することが可能である。
【0037】
図16は,本発明の光ディスク媒体からウォブルデータを再生するための回路構成例を示す図である。一般の記録型光ディスクでは案内溝の中に(上に)データマークを記録・再生する。従って,ウォブル信号はメインビームのプッシュプル信号MPP52から生成される。一方,本発明の光ディスク媒体では案内溝上を走査するのはサブビームである。従って,本発明の光ディスク媒体からウォブルデータを再生するにはサブビームのプッシュプル信号SPP1又はSPP2を用いる。従来の光ディスクに対応し,かつ本発明の大容量光ディスクにも対応する光ディスク装置では用いるウォブル信号を選択するためのセレクタ61が必要である。本発明のウォブル信号処理回路60は,セレクタ61,バンドパスフィルター62,2値化器63,PLL回路64,及びアドレスデコーダ65から構成される。ウォブル信号からアドレスデータを再生する原理の詳細については本発明の範囲を超えるので記さないが,基本的は正弦波信号に変調信号が重畳されたウォブル信号からPLL回路64でクロックを生成し,これを用いて2値化回路でデータの2値化を行い所定の復号規則に応じてアドレスデコーダ65でアドレス情報を得る。ウォブル信号処理回路60の動作制御はCPU140により実施される。
【0038】
図17は,本発明の光ディスク装置の構成例を示す模式図である。装置に装着された光ディスク媒体100は,スピンドルモータ160により回転される。再生時には,CPU140によって指令された光強度になるようにレーザパワー/パルス制御器120が光ヘッド110内のレーザドライバ116を介して半導体レーザ112に流す電流を制御し,レーザ光114を発生させる。レーザ光114は対物レンズ111によって集光され,光スポット101を光ディスク媒体100上に形成する。この光スポット101からの反射光115は対物レンズ111を介して,光検出器113で検出される。光検出器は複数に分割された光検出素子から構成されている。再生信号処理回路130は,光ヘッド110で検出された信号を用いて,光ディスク媒体100上に記録された情報を再生する。本発明のトラック誤差信号生成回路,トラッキング制御回路,データ再生回路,及びウォブル信号処理回路はシステム制御回路200に内蔵される。こうした構成によって,本発明の光ディスク装置によって,本発明の光ディスク媒体からデータ再生,ウォブルアドレス再生,トラッキング制御を実現することができる。以上の構成によって本発明光ディスク装置を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は,超解像効果を使った大容量光ディスク媒体とそれに対応する光ディスク装置に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の光ディスク媒体のトラック構成例を示す図。
【図2】常解像キャンセルの概念図。
【図3】常解像信号の振幅とマークの反射率及び実効ピット深さの関係を示す図。
【図4】本発明の光ディスク媒体の光学計算のモデル図。
【図5】試作ディスクのスペース部とマーク部の反射率の設計結果と実測結果を示す図。
【図6】FDTD法による電磁界計算の結果を示す図。
【図7】繰り返し信号のマーク長と信号振幅の関係をFDTD法で計算した結果を示す図。
【図8】本発明の光ディスク媒体の断面構成と加工方法を示す図。
【図9】本発明の光ディスク媒体の断面構成と加工方法を示す図。
【図10】本発明の光ディスク媒体のトラック構成例を示す図。
【図11】本発明の光ディスク媒体の構成を示す図。
【図12】DPP方式のトラッキングに対応した3ビーム光ヘッドの光検出器とその検出信号を示す図。
【図13】DPP信号を生成するトラック誤差信号生成回路の構成例を示す図。
【図14】本発明の光ディスク装置のトラッキング制御回路の構成例を示す図。
【図15】本発明光ディスク装置に好適なデータ再生回路の構成例を示す図。
【図16】ウォブルデータ再生回路の構成例を示す図。
【図17】光ディスク装置の構成例を示す模式図。
【図18】3ビーム生成方法の説明図。
【符号の説明】
【0041】
100 光ディスク
101 光スポット
110 光ヘッド
111 対物レンズ
112 半導体レーザ
113 光検出器
114 レーザ光
115 反射光
116 レーザドライバ
120 レーザパワー/パルス制御器
130 再生信号処理器
140 CPU
160 スピンドルモータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラック案内溝と,隣接する2つのトラック案内溝の間の領域に設けられたデータトラックとを有し,
前記データトラックにはデータピットが形成され,前記データピット内にのみ,照射する光ビームのパワーに応じて光学特性が変化する材料が埋め込まれていることを特徴とする光ディスク媒体。
【請求項2】
請求項1記載の光ディスク媒体において,前記照射する光ビームのパワーが第1のパワーのとき,前記データピットからの反射光量がデータピット間の領域の反射光量と略等しく,前記照射する光ビームのパワーが前記第1のパワーよりも大きい第2のパワーのとき,前記データピットからの反射光量が前記データピット間の領域の反射光量と異なることを特徴とする光ディスク媒体。
【請求項3】
請求項2記載の光ディスク媒体において,前記隣接する2つのトラック案内溝の間の領域に複数のデータトラックが設けられていることを特徴とする光ディスク媒体。
【請求項4】
光ディスク媒体を回転駆動するモータと,
レーザ光源と,
前記レーザ光源から出射したレーザ光をメインビームと2つのサブビームに分割し,光ディスク媒体上にそれぞれの光スポットを形成する集光手段と,
光ディスク媒体による前記メインビームと2つのサブビームの反射光をそれぞれ検出する光検出器手段と,
前記メインビームの検出信号から記録データを再生するデータ再生手段と,
前記メインビームの検出信号とサブビームの検出信号を演算して生成されたトラック誤差信号に基づいてトラッキング制御を行うトラック制御手段と,
前記メインビームの検出信号と前記サブビームの検出信号のうち少なくとも1つとを選択するウォブル信号選択手段と,
前記選択されたウォブル信号から光ディスク媒体に形成されたトラック案内溝のアドレス情報を再生するウォブルアドレスデコード手段と,
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項4記載の光ディスク装置において,前記トラッキング制御手段はオフセット制御回路を有し,隣接する2つのトラック案内溝の間の領域に複数のデータトラックが設けられた光ディスク媒体が装着されたとき,前記オフセット制御回路は前記複数のデータトラックのうちの所望のトラックに対応するオフセット量を前記トラック誤差信号に加算することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項1】
トラック案内溝と,隣接する2つのトラック案内溝の間の領域に設けられたデータトラックとを有し,
前記データトラックにはデータピットが形成され,前記データピット内にのみ,照射する光ビームのパワーに応じて光学特性が変化する材料が埋め込まれていることを特徴とする光ディスク媒体。
【請求項2】
請求項1記載の光ディスク媒体において,前記照射する光ビームのパワーが第1のパワーのとき,前記データピットからの反射光量がデータピット間の領域の反射光量と略等しく,前記照射する光ビームのパワーが前記第1のパワーよりも大きい第2のパワーのとき,前記データピットからの反射光量が前記データピット間の領域の反射光量と異なることを特徴とする光ディスク媒体。
【請求項3】
請求項2記載の光ディスク媒体において,前記隣接する2つのトラック案内溝の間の領域に複数のデータトラックが設けられていることを特徴とする光ディスク媒体。
【請求項4】
光ディスク媒体を回転駆動するモータと,
レーザ光源と,
前記レーザ光源から出射したレーザ光をメインビームと2つのサブビームに分割し,光ディスク媒体上にそれぞれの光スポットを形成する集光手段と,
光ディスク媒体による前記メインビームと2つのサブビームの反射光をそれぞれ検出する光検出器手段と,
前記メインビームの検出信号から記録データを再生するデータ再生手段と,
前記メインビームの検出信号とサブビームの検出信号を演算して生成されたトラック誤差信号に基づいてトラッキング制御を行うトラック制御手段と,
前記メインビームの検出信号と前記サブビームの検出信号のうち少なくとも1つとを選択するウォブル信号選択手段と,
前記選択されたウォブル信号から光ディスク媒体に形成されたトラック案内溝のアドレス情報を再生するウォブルアドレスデコード手段と,
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項4記載の光ディスク装置において,前記トラッキング制御手段はオフセット制御回路を有し,隣接する2つのトラック案内溝の間の領域に複数のデータトラックが設けられた光ディスク媒体が装着されたとき,前記オフセット制御回路は前記複数のデータトラックのうちの所望のトラックに対応するオフセット量を前記トラック誤差信号に加算することを特徴とする光ディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−165927(P2008−165927A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356034(P2006−356034)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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