説明

光ディスク媒体及び光ディスク記録方法

【課題】 高密度光ディスクにおいてマークエッジ位置を高精度に制御する。
【解決手段】 nを2以上の整数とし,nを2で割った商をqとしたとき,長さnTのマーク対応するパルス列がq本のライトパワーレベルのパルスから構成されるいわゆるn/2記録ストラテジを用いる光ディスク記録方法において,n=4以上のマークに対応したパルス列における,各パルスの開始時刻,終了時刻あるいは時間幅のうち少なくとも1種類を,少なくともn=4の場合,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合に分けてそれぞれ制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,パルス状に強度変調されたレーザ光を照射することにより情報を記録する光ディスク媒体及び光ディスク記録方法に関し,特に情報の高密度記録に適した光ディスク媒体及び光ディスク記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録型光ディスクでは,パルス状に強度変調されたレーザ光を光ディスクに照射することにより記録膜の状態を変化させ,マークとマーク間部(スペース)を形成することにより情報を記録する。記録型光ディスクのうち,情報を1回のみ記録可能な追記型光ディスクとして,DVD−R,DVD+Rが,情報を上書き可能な書き換え型光ディスクとして,DVD−RAM,DVD−RW,DVD+RWがよく知られている。また最近では,青色光源を用いることで記録層1層あたり25GBの情報記録容量を実現した大容量光ディスクであるBlu-ray Disc(BD)が実用化されている。
【0003】
記録速度の高速化に適した記録方式として「N/2記録ストラテジ」があり,BD等で用いられている。図1は,N/2記録ストラテジにおける記録パルス波形を示した図である。ここでは,BDのRLL(1,7)コードに用いられる2T〜8Tと、Frame Syncで用いられる9T(Tはチャネルビット長)の長さのマークに対応した記録パルス波形を,NRZIデータ信号とともに示した。N/2記録ストラテジでは,nを整数,nを2で割った商をqとしたとき,長さnTのマークに対応する記録パルス列は,q本のライトパワーレベルのパルスから構成されるのが特徴である。すなわち,2Tマークおよび3Tマークに対応するパルス列は1本,4Tマークおよび5Tマークに対応するパルス列は2本,6Tマークおよび7Tマークに対応するパルス列は3本,8Tマークおよび9Tマークに対応するパルス列は4本のライトパワーレベルのパルスから構成される。このように,記録マーク長が2T増加する毎にパルスが1本ずつ増加し,パルス間隔は約2Tとなる。「N−1記録ストラテジ」のようなパルス間隔が約1Tとなる記録方式と比較したときの本方式の利点の1つは,各パルスの時間幅を大きくできるため,レーザ発光の立ち上がり時間や立ち下がり時間の影響を低減できる点である。もう1つの利点は,パルス間隔が大きく冷却期間を十分長く取れるため,相変化記録膜を用いた書き換え型ディスクに対してアモルファス相のマークを安定に形成できる点である。これらの利点により,N/2記録ストラテジは高速記録に適しているとされる。
【0004】
図2は,記録パルスのパワーレベルを示した図である。ここでは,8Tマークの記録パルスを例に示した。レーザ光の出力パワーレベルとしては,ライトパワーP,スペースパワー(イレーズパワー)P(P),バイアスパワーP,クーリングパワーPがある。ライトパワーPは,記録膜にエネルギーを投入して状態変化を起こさせるためのパワーレベルである。バイアスパワーPは,ライトパワーのパルス間のギャップに対応するパワーレベルである。スペースパワーPは,追記型ディスクに対してマーク間(スペース)となる部分に照射するパワーレベルであり,主に次のマークを形成するための予熱に用いられる。イレーズパワーPは,相変化記録膜を用いた書き換え型ディスクに対してスペースとなる部分に照射するパワーレベルであり,マークを消去してスペースに変化させることで直接書き換えを行うために用いられる。クーリングパワーPは,クーリングパルスのパワーレベルであり,追記型ディスクに対しては後続マーク記録部への熱の拡散を遮断し熱干渉を低減する目的で用いられ,書き換え型ディスクに対しては記録膜の加熱後の急冷により非晶質のマークを形成する目的で用いられる。上記の各パワーレベルはマーク長によらず一律の値が用いられる。
【0005】
次に,各パワーレベルに対応したパルスの名称について,図2を用いて説明する。ライトパワーレベルPを持つパルスのうち,最初のパルスはファーストパルス,最終のパルスはラストパルスと呼ばれる。ファーストパルスとラストパルスの間の複数のパルスはマルチパルスと呼ばれる。2Tから5Tのマークに対応するパルス列にはマルチパルスは存在しない。2Tマークおよび3Tマークに対応するパルス列における1本のライトパワーレベルPを持つパルスはファーストパルスであると定義する。また,ラストパルスの直後のクーリングパワーレベルPを持つパルスはクーリングパルスと呼ばれる。
【0006】
次に,各パルスの制御パラメータについて,図1を用いて説明する。パルスの制御パラメータとしては,ファーストパルスの開始時刻dTtop,ファーストパルスの時間幅Ttop,マルチパルスの開始時刻dTmp,マルチパルスの時間幅Tmp,ラストパルスの開始時刻dTlp,ラストパルスの時間幅Tlpおよびクーリングパルスの終了時刻dTs(dTe)がある。dTsは追記型ディスクに対して用いられ,dTeは書き換え型ディスクに対して用いられるパラメータであり,ともにクーリングパルスの幅を制御するためのものである。パルスの開始時刻または終了時刻を指定するパラメータdTtop,dTmp,dTlpおよびdTs(dTe)は,NRZI信号のタイミングを基準として図1に示したように定義される。これらのパラメータの符号は,NRZI信号の基準時刻に対して進んだ方向(図の左方向)のときにプラス,遅れた方向(図の右方向)のときにマイナスと定義される。
【0007】
以上の制御パラメータの値は可変であり,各パラメータの値を調整することによりマークエッジ位置を適切に制御することができる。dTtopおよびTtopは主にマークの前エッジ位置を制御するのに用いられ,dTlp,TlpおよびdTs(dTe)は主にマークの後エッジ位置を制御するのに用いられる。
【0008】
また,マークのエッジ位置は,そのマークの前後のマークを記録するときの熱の影響も考慮して制御する必要があるため,パルスの始端の時刻やパルスの時間幅を当該マークの長さと隣接スペースの長さの組み合わせのパターンで分類して制御する適応記録制御が用いられる。
【0009】
図3(a)〜(e)は,上記のパルスの制御パラメータの指定値を与えるテーブルを示した図である。(a)dTtopおよびTtopは記録マーク長(2T,3T,4T以上の偶数および5T以上の奇数)と先行スペース長(2T,3T,4Tおよび5T以上)の組み合わせのパターンで分類して指定される。(b)dTmpは記録マーク長(4T以上の偶数および5T以上の奇数)のみで分類して指定される。(c)Tmpは6T以上の記録マークについて,記録マーク長によらず一律の値が指定される。(d)dTlpおよびTlpは記録マーク長(4T以上の偶数および5T以上の奇数)と後続スペース長(2T,3T,4Tおよび5T以上)の組み合わせのパターンで分類して指定される。(e)dTs(dTe)は記録マーク長(2T,3T,4T以上の偶数および5T以上の奇数)と後続スペース長(2T,3T,4Tおよび5T以上)の組み合わせのパターンで分類して指定される。なお,各パラメータの調整単位はチャネルビット周期(Tw)の1/16である。
【0010】
以上のような記録方法の基本的な考え方は,例えば特許文献1に開示されている。
【0011】
各制御パラメータの値は,チャネルビット周期の1/16で除した商(整数値)に変換され,ディスク媒体上のユーザデータ記録領域とは別に設けられたコントロール情報記録領域に,ディスク媒体製造時に格納される。
【0012】
各パルスの制御パラメータを最適値に調整する方法として,例えばエッジシフトを最小にする方法がある。図4は媒体上に記録されたマーク/スペース,それに対応した等化再生信号,ダイレクトスライス方式によって等化再生信号を2値化した2値化再生信号及び2値化再生信号から生成されたチャネルビットクロック信号の波形を模式的に示した図である。エッジシフトとは,2値化再生信号とチャネルクロック信号のエッジにおける時間差の平均値をチャネルクロック周期で規格化したものであり,特定のパターンのエッジ位置の平均的なずれの大きさと方向を示している。エッジシフトの符号は,チャネルビットクロック信号に対して再生信号が遅れた方向(図の右方向)のときはプラス,進んだ方向(図の左方向)のときはマイナスと定義する。
【0013】
図5は,N/2記録ストラテジを用いたパルス調整手順の一例を示したフローチャートである。各パルスの制御パラメータは,図3(a)〜(e)に示したテーブルに従い分類して指定される。
【0014】
処理開始後,ステップ11では,パルスの制御パラメータdTtop,Ttop,dTmp,Tmp,dTlp,Tlp及びdTs(dTe)の初期値が設定される。これらの初期値は,前述のコントロール情報記録領域に格納されたデータを読み出すことによって取得される。次にステップ12では,光ディスク媒体上に設けられた試し書き専用領域にランダムデータが記録され,記録されたデータが再生される。次にステップ13では,再生信号を用いてエッジシフトを算出する。ここで,マークの前エッジのエッジシフトについては,前エッジの制御に用いられるdTtopおよびTtopの指定値のテーブルの形に合わせて,図6(a)に示したように記録マーク長(2T,3T,4T以上の偶数および5T以上の奇数)と先行スペース長(2T,3T,4Tおよび5T以上)の組み合わせのパターンで分類して算出される。後エッジのエッジシフトについては,後エッジの制御に用いられるdTlp,TlpおよびdTs(dTe)の指定値のテーブルの形に合わせて,図6(b)に示したように記録マーク長(2T,3T,4T以上の偶数および5T以上の奇数)と後続スペース長(2T,3T,4Tおよび5T以上)の組み合わせのパターンで分類して算出される。次にステップ14では,全てのパターンのエッジシフトの絶対値がそれぞれ最小になったかを判定し,Yesであれば処理が終了し,Noであればステップ15でエッジシフトが残留しているパターンに対応する制御パラメータの値が更新され,再びステップ12に戻る。
【0015】
以上のようにして全てのパターンのエッジシフトの絶対値がそれぞれ最小になるまで処理が繰り返され,各制御パラメータが調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−149540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
最近,光ディスクにおいて更なる大容量化を実現するために,BDのフォーマットをベースにして線記録密度を高めることにより,記録層1層あたりの記録容量を増加させる技術の研究が行われている。
【0018】
しかしながら,従来のN/2記録ストラテジを用いて,30GB/層以上の記録密度で記録を行うと,マークエッジ位置を高精度に制御できなくなるという課題があった。これについて,実験結果を用いて説明する。
【0019】
実験は,市販の書き換え型BD(BD−RE)ディスクを用いて行った。記録ストラテジとして従来のN/2記録ストラテジを用い,記録層1層あたりの記録容量が33.4GB(チャネルビット長=55.8nm相当)となるようにした。記録パルスの制御パラメータは図3のテーブルに従い指定した。各パラメータの調整単位はチャネルビット周期の1/16とした。dTmpおよびTmpについては,それぞれ固定値として与えることとし,dTmp(4T,6T,8T)=0,dTmp(5T,7T,9T)=0,Tmp=6とした。
【0020】
ここで,制御パラメータdTtop,Ttop,dTlp,TlpおよびdTeを,前述のパルス調整手順に従い,各パターンのエッジシフトの絶対値が最小になるように調整した。その結果,各制御パラメータの値は図7A,図7Bに示した通りとなった。このとき記録した箇所を再生し,図6(a)および(b)に示したテーブルに従ってエッジシフトを算出したところ,各パターンのエッジシフトの値は図8(a)および図8(b)のようになった。また,このときのビットエラー率(総ビット数におけるエラービット数の割合)の推定値は1.7×10−7であった。
【0021】
図8(a)および図8(b)によると,パルス調整後の各エッジシフトの絶対値は十分に小さい値に抑えられており,その記録品質は問題ないように見える。しかしながら,より詳細な解析を行うことにより,課題が明らかとなった。
【0022】
図8(c)および(d)は,それぞれ図8(a)および(b)に示した前エッジおよび後エッジのエッジシフトのテーブルにおいて,記録マーク長が4T以上の偶数(4T,6T,8T)であるグループを更に分解し,4Tのグループと6T以上の偶数(6T,8T)のグループに分けたテーブルである。前エッジの場合,図8(c)のように4Tのグループと6T以上の偶数(6T,8T)のグループとでエッジシフトの値はほぼ等しいのに対して,後エッジの場合,図8(d)のように記録マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数(6T,8T)のグループとでエッジシフトの値が正負にスプリットしている。なお,図示しないが,記録マーク長が5T以上の奇数(5T,7T,9T)であるグループについては,5Tのグループと7T以上の奇数(7T,9T)のグループとで,上記のようなスプリットは発生しなかった。
【0023】
図9は,マークの後エッジについてエッジ位置ずれの分布を示したヒストグラムであり,横軸はエッジ位置ずれ,縦軸は計測エッジ数を示している。ここで,エッジ位置ずれは図4における2値化再生信号とチャネルクロック信号の各エッジにおける時間差をチャネルクロック周期で規格化したものに相当する。図9(a)には,マーク長が4T以上の偶数(4T,6T,8T)のグループのエッジ位置ずれの分布を,2T〜9Tの全マーク長についての分布(Total)とともに示した。また,図9(b)には,マーク長が5T以上の奇数(5T,7T,9T)のグループのエッジ位置ずれの分布を,2T〜9Tの全マーク長についての分布(Total)とともに示した。図9によると,(b)5T以上の奇数(5T,7T,9T)のグループについては,エッジシフトの分布がほぼエッジシフト=0を中心にしてひと山にまとまっているのに対して,(a)4T以上の偶数(4T,6T,8T)のグループについては,エッジシフトの分布がふた山にスプリットしている。
【0024】
図9(a)に示した4T以上の偶数(4T,6T,8T)のグループの場合のエッジシフトのヒストグラムは,図8(d)において4Tのグループと6T以上の偶数(6T,8T)のグループでエッジシフトの値がスプリットしていることから推測すると,図10(a)のようになっていると考えられる。すなわち,マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数(6T,8T)のグループのエッジシフトの分布は互いにスプリットしており,4T以上のグループの分布(破線)はプラス側,6T以上の偶数(6T,8T)のグループの分布(一点鎖線)はマイナス側にそれぞれ寄っている。
【0025】
上記のようなエッジシフトの分布のスプリットにより,4T以上の偶数(4T,6T,8T)のグループのトータルのエッジシフトの分布の幅が広がり,再生エラーが発生しやすくなると考えられる。従来のN/2記録ストラテジでは,4T以上の偶数(4T,6T,8T)のグループで,パルスの制御パラメータを一律に制御するため,上記のようなエッジシフトのスプリットを補正することはできない。
【0026】
従来のN/2記録ストラテジを用いて30GB/層以上の記録密度で記録を行う場合に上記のようなマークの後エッジのエッジシフトのスプリットが生じるのは,チャネルビット長,すなわち1Tあたりのマーク長が従来のBDと比較して小さいため,記録時の熱の蓄積がマークの後エッジ部に与える影響の度合いが,4Tとそれ以外(6Tおよび8T)とで大きく異なるためであると考えられる。
【0027】
図20は,マークの前エッジについて,図9の後エッジの場合と同様にマーク長が(a)4T以上の偶数(4T,6T,8T)のグループと(b)5T以上の奇数(5T,7T,9T)のグループについて,それぞれマークの後エッジのエッジシフトの分布を示したヒストグラムである。図20から分かるように,マークの前エッジの場合は(a)4T以上の偶数(4T,6T,8T)のグループおよび(b)5T以上の奇数(5T,7T,9T)のグループともにエッジシフトの分布はひと山にまとまっており,後エッジの場合に見られた分布のスプリットは見られない。このことは,図8(c)に示した通りである。
【0028】
本発明の目的は,上記の課題を解決し,N/2記録ストラテジを用いた高密度記録を行うことを可能とする光ディスク媒体,光ディスク記録方法及び光ディスク記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明では,上記の目的を達成するために以下の手段を用いた。
(1)記録方法;制御パラメータの少なくとも一つを制御
光ディスク媒体に,パルス列状に強度変調されたレーザ光を照射してマーク及びマーク間部(スペース)を形成することにより情報を記録する光ディスク記録方法であって,
nを2以上の整数とし,nを2で割った商をqとしたとき,長さnTのマークに対応した前記パルス列がq本のライトパワーレベルを有するパルスから構成された光ディスク記録方法において,
n=4以上のマークに対応したパルス列における,各パルスの開始時刻,終了時刻あるいは時間幅のうち少なくとも1種類を,少なくともn=4の場合,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合に分けてそれぞれ制御することとした。
【0030】
これにより,パルスの制御パラメータを,記録マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数のグループとで分けて制御することができるようになるため,上記の課題で述べたようなエッジシフト分布のスプリットを適切に補正することができるようになった。
【0031】
(2)記録方法;dTlp,Tlp,dTs(dTe)のうち少なくとも1つを制御
n=4以上のマークに対応したパルス列における,最終のライトパワーレベルのパルスであるラストパルスの開始時刻および時間幅,ラストパルスの直後のパルスであるクーリングパルスの終了時刻のうち少なくとも1種類を,n=4の場合,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合の3通りの場合に分けてそれぞれ制御することとした。
【0032】
この構成は基本的には上記(1)と同じであるが,記録マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数のグループとで指定値を分けるパラメータを,後エッジの制御に関わるパラメータdTlp,TlpおよびdTs(dTe)の少なくとも何れかのみに限定したものである。これは,先にも述べたように記録マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数のグループとの間でエッジシフト分布のスプリットが生じるのは主に後エッジであり,前エッジには殆ど生じないためである。これにより,制御パラメータの種類を上記(1)の所定のケースの場合より少なくすることができるため,記録パルス調整時間の短縮等のメリットがある。
【0033】
(3)記録方法;dTs(dTe)のみを制御
n=4以上のマークに対応したパルス列における,ラストパルスの直後のパルスであるクーリングパルスの終了時刻を,n=4の場合,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合の3通りの場合に分けてそれぞれ制御することとした。
【0034】
この構成は基本的には上記(2)と同じであるが,記録マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数のグループとで指定値を分けるパラメータを,クーリングパルス幅を指定するパラメータdTs(dTe)のみに限定したものである。これは,特に書き換え型ディスクでは,マークの後エッジ位置はクーリングパルス幅の寄与が最も大きいことによる。これにより,制御パラメータの種類を上記(2)の場合より更に減少させることができるため,記録パルス調整時間をより短縮できるというメリットがある。
【0035】
(4)記録方法;前エッジと後エッジのシフトテーブルを4T分離
上記(1)〜(3)の記録方法で、更に、n=4以上のマークに対応した前エッジおよび後エッジのエッジシフトを,n=4の場合,6T以上の偶数グループおよび5T以上の奇数グループに分けてそれぞれ算出し,
各エッジシフトの絶対値がそれぞれ最小になるように,前記パラメータを調整することとした。
【0036】
これは,上記(1)〜(3)の記録方法を,より理想的に実施するための構成である。すなわち,エッジシフトの値を記録マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数グループとで分けて検出することにより,記録マーク長が4Tのグループのパラメータおよび6T以上の偶数のグループのパラメータのそれぞれについて最適な指定値を得ることができる。
【0037】
(5)記録方法;後エッジのシフトテーブルのみ4T分離
上記(1)〜(3)の記録方法で、更に、n=4以上のマークに対応した後エッジのエッジシフトを,n=4の場合,6T以上の偶数グループおよび5T以上の奇数グループに分けてそれぞれ算出し,各エッジシフトの絶対値がそれぞれ最小になるように,前記パラメータを調整することとした。
【0038】
この構成は,基本的には上記(4)と同じであるが,エッジシフトの値を記録マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数グループとで分けて検出するのをマークの後エッジに限定したものである。これは,先にも述べたように記録マーク長が4Tと6T以上の偶数とでエッジシフト分布がスプリットするのは主に後エッジであるため,前エッジのエッジシフトに関しては4Tと6T以上の偶数とで分けて検出する必要が小さいからである。これにより,上記(4)に比べてエッジシフト検出工程を簡略化することができる。
【0039】
(6)記録方法;高密度
前記光ディスクは記録層1層あたり30GB以上の記録容量を有することとした。
【0040】
上記に述べた,記録マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数のグループの間のエッジシフトのスプリットは,30GB/層以上の高記録密度で特に顕著となってくるため,上記(1)〜(5)の光ディスク記録方法は,30GB/層以上の記録密度での記録の際に適用することにより,より効果的なものとなる。
【0041】
(7)記録方法;RE
前記光ディスク媒体は書き換え型であることとした。
【0042】
N/2記録ストラテジは主に書き換え型ディスクにおいて用いられる。従って,上記(1)〜(6)の光ディスク記録方法は,書き換え型ディスクに適用することにより,より効果的なものとなる。
【0043】
(8)媒体;制御パラメータの少なくとも一つを制御
nを2以上の整数とし,nを2で割った商をqとしたとき,長さnTのマークに対応した前記パルス列がq本のライトパワーレベルを有するパルスから構成されたパルス列状に強度変調されたレーザ光を照射することによりラン長制限されたマークおよびスペースを形成することにより情報が記録され,
前記マークを形成するための記録パルス列における各パルスの開始時刻および時間幅を指定するパラメータの値が,ユーザデータ記録領域とは異なる場所に配置されたディスク情報領域に格納された光ディスク媒体において,
n=4以上のマークに対応したパルス列における,各パルスの開始時刻,終了時刻あるいは時間幅を指定するパラメータの値のうち少なくとも1種類が,n=4の場合,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合に分られ,それぞれ前記ディスク情報領域に格納されたものとした。
【0044】
これは,上記(1)の光ディスク記録方法を光ディスク記録装置において実施することを可能にする光ディスク媒体である。すなわち,ドライブ装置は本構成の光ディスク媒体のコントロール情報記録領域に格納された記録パルスパラメータの指定値を読み出し,設定することで,高品質な記録を行うことが可能となる。
【0045】
(9)媒体;制御パラメータの少なくとも一つを制御,差分形式
nを2以上の整数とし,nを2で割った商をqとしたとき,長さnTのマークに対応した前記パルス列がq本のライトパワーレベルを有するパルスから構成されたパルス列状に強度変調されたレーザ光を照射することによりラン長制限されたマークおよびスペースを形成することにより情報が記録され,
n=5以上のマークに対応したパルス列における,各パルスの開始時刻,終了時刻あるいは時間幅を指定するパラメータの値のうち少なくとも1種類が,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合に分られ,それぞれ前記ディスク情報領域に格納され,n=4のマークに対応したパルス列における前記パラメータの値とn=6以上の偶数の場合の前記パラメータの値との差分の値が,前記ディスク情報領域に格納されたものとした。
【0046】
この構成は,上記(8)の構成と基本的に同じであるが,記録マーク長が4Tのグループの制御パラメータの値については,6T以上の偶数のグループの制御パラメータの値との差分の値をディスク情報領域に格納するものである。これは,制御パラメータの値そのものと比較して,4Tのグループの制御パラメータの値と6T以上の偶数グループの制御パラメータの値との差分の方が指定値の範囲が小さくなるため,少ないビット数で制御パラメータの値を表現することができるからである。これにより,上記(4)の構成と比較してディスク情報領域に格納するデータ量を小さくできるというメリットがある。
【0047】
(10)媒体;dTlp,Tlp,dTs(dTe)のうち少なくとも1つを制御
n=4以上のマークに対応したパルス列における,最終のライトパワーレベルのパルスであるラストパルスの開始時刻および時間幅,ラストパルスの直後のパルスであるクーリングパルスの終了時刻を指定するパラメータの値のうち少なくとも1種類が,n=4の場合,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合の3通りの場合に分けられ,それぞれ前記ディスク情報領域に格納されたものとした。
【0048】
これは,上記(2)の光ディスク記録方法を光ディスク記録装置において実施することを可能にする光ディスク媒体である。すなわち,ドライブ装置はディスクから読み出した指定値を設定することで,高品質な記録を行うことが可能となる。
【0049】
更に上記(4)の構成と比較して光ディスク媒体上のディスク情報領域に格納する制御パラメータの種類が少なくなるため,ディスク情報領域のデータ量を節約できるというメリットもある。
【0050】
(11)媒体;dTlp,Tlp,dTs(dTe)のうち少なくとも1つを制御,差分形式
n=5以上のマークに対応したパルス列における,最終のライトパワーレベルのパルスであるラストパルスの開始時刻および時間幅,ラストパルスの直後のパルスであるクーリングパルスの終了時刻を指定するパラメータの値のうち少なくとも1種類が,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合に分けられ,それぞれ前記ディスク情報領域に格納され,
n=4のマークに対応したパルス列における前記少なくとも1種類のパラメータの値とn=6以上の偶数の場合の前記少なくとも1種類のパラメータの値との差分の値が,前記ディスク情報領域に格納されたものとした。
【0051】
この構成は,上記(10)の構成と基本的に同じであるが,記録マーク長が4Tのグループの制御パラメータの値については,6T以上の偶数のグループの制御パラメータの値との差分の値をディスク情報領域に格納するものである。これにより,上記(9)の構成と同様の理由により,上記(10)の構成と比較してディスク情報領域に格納するデータ量を小さくすることができるというメリットがある。
【0052】
(12)媒体;dTs(dTe)のみ制御
n=4以上のマークに対応したパルス列における,ラストパルスの直後のパルスであるクーリングパルスの終了時刻を指定するパラメータの値が,n=4の場合,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合の3通りの場合に分けられ,それぞれ前記ディスク情報領域に格納されたものとした。
【0053】
これは,上記(3)の光ディスク記録方法を光ディスク記録装置において実施することを可能にする光ディスク媒体である。すなわち,ドライブ装置はディスクから読み出した指定値を設定することで,高品質な記録を行うことが可能となる。
【0054】
また,上記(8)の所定の場合の構成と比較して光ディスク媒体上のディスク情報領域に格納する制御パラメータの種類が更に少なくなるため,ディスク情報領域のデータ量を更に節約できるというメリットもある。
【0055】
(13)媒体;dTs(dTe)のみ,差分形式
n=5以上のマークに対応したパルス列における,ラストパルスの直後のパルスであるクーリングパルスの終了時刻を指定するパラメータの値が,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合に分けられ,それぞれ前記ディスク情報領域に格納され,
n=4のマークに対応したパルス列における前記パラメータの値とn=6以上の偶数の場合の前記パラメータの値との差分の値が,前記ディスク情報領域に格納されたものとした。
【0056】
この構成は,上記(12)の構成と基本的に同じであるが,記録マーク長が4Tのグループの制御パラメータの値については,6T以上の偶数のグループの制御パラメータの値との差分の値をディスク情報領域に格納するものである。これにより,上記(9)の構成と同様の理由により,上記(12)の構成と比較してディスク情報領域に格納するデータ量を小さくすることができるというメリットがある。
【0057】
(14)媒体;高密度
記録層1層あたり30GB以上の記録容量を有するものとした。
上記に述べた,記録マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数のグループの間のエッジシフトのスプリットは,30GB/層以上の高記録密度で特に顕著となってくるため,上記(8)〜(13)の光ディスク媒体の構成は,30GB/層以上の光ディスク媒体に適用することにより,より効果的なものとなる。
【0058】
(15)媒体;RE
書き換え型であるものとした。
【0059】
N/2記録ストラテジは特に書き換え型ディスクに対して有効である。これは,前述のようにN/2記録ストラテジではパルス間隔が大きく冷却期間を十分長く取れるため,相変化記録膜を用いた書き換え型ディスクにおいてアモルファス相のマークを安定に形成できるからである。従って,上記(8)〜(13)の光ディスク媒体の構成は,書き換え型ディスクに適用することにより,より効果的なものとなる。また,書き換え型ディスクにおいてはマークの後エッジ位置に対してクーリングパルス幅の寄与が最も大きいため,特に(12)及び(13)の光ディスク媒体の構成を書き換え型ディスクに適用することにより,更に効果的なものとなる。
【発明の効果】
【0060】
上記のように、記録パルスの制御パラメータを、n=4の場合,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合に分けることにより、エッジシフトのスプリットを適切に補正することができるので、結果的にビットエラー率の改善が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】従来のN/2記録ストラテジの記録パルス波形を示した図。
【図2】記録パルスのパワーレベルを示した図。
【図3】従来のN/2記録ストラテジの記録パルスパラメータテーブルを示した図。
【図4】エッジシフト算出方法を示した図。
【図5】従来の記録パルス調整フローを示した図。
【図6】従来のN/2記録ストラテジに対応したエッジシフト値のテーブルを示した図。
【図7A】従来のN/2記録ストラテジを用いた場合のパルスの制御パラメータの設定値を示した図。
【図7B】従来のN/2記録ストラテジを用いた場合のパルスの制御パラメータの設定値を示した図。
【図8】従来のN/2記録ストラテジを用いた場合の検出されたエッジシフト値を示した図。
【図9】従来のN/2記録ストラテジを用いた場合の後エッジのエッジシフトの分布を示した図。
【図10】従来のN/2記録ストラテジを用いた場合のエッジシフトの分布を模式的に示した図。
【図11A】本発明を適用した場合のパルスの制御パラメータの設定値を示した図。
【図11B】本発明を適用した場合のパルスの制御パラメータの設定値を示した図。
【図12】本発明のエッジシフト検出テーブルを示した図。
【図13】本発明を適用した場合のエッジシフト値のテーブルを示した図。
【図14】本発明を適用した場合のエッジシフトの分布を示した図。
【図15】本発明の光ディスク装置の構成例を示した図。
【図16】本発明のパルス制御パラメータテーブルの実施例を示した図。
【図17】本発明の記録パルス調整フローを示した図。
【図18】本発明のパルス制御パラメータテーブルの実施例を示した図。
【図19】本発明のパルス制御パラメータテーブルの実施例を示した図。
【図20】従来のN/2記録ストラテジを用いた場合の前エッジのエッジシフトの分布を示した図。
【図21A】本発明を適用した場合のパルスの制御パラメータの設定値を示した図。
【図21B】本発明を適用した場合のパルスの制御パラメータの設定値を示した図。
【図22】本発明を適用した場合のエッジシフト値のテーブルを示した図。
【図23】本発明を適用した場合のエッジシフトの分布を示した図。
【図24A】本発明を適用した場合のパルスの制御パラメータの設定値を示した図。
【図24B】本発明を適用した場合のパルスの制御パラメータの設定値を示した図。
【図25】本発明の光ディスク媒体におけるディスク情報領域のデータ構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下,図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0063】
下記の通り、実験結果を用いて説明する。実験は次の手順で行った。
【0064】
まず,市販の書き換え型BD(BD−RE)ディスクにN/2記録ストラテジを用いて,記録パルスの各制御パラメータdTtop,Ttop,dTmp,Tmp,dTlp,TlpおよびdTeに適当な初期値を与えてランダムデータを記録する。記録層1層あたりの記録容量は33.4GB(チャネルビット長=55.8nm)とする。各パラメータの調整単位はチャネルビット周期の1/16とする。dTmpおよびTmpについては,それぞれdTmp(4T,6T,8T)=0,dTmp(5T,7T,9T)=0,Tmp=6を与え,これらは固定値として以降調整しないこととする。
【0065】
次に記録した箇所を再生し,再生信号からエッジシフトを検出する。検出したエッジシフトは図12に示したテーブルに従って,(a)マークの前エッジシフトと(b)マークの後エッジシフトに分類する。
【0066】
次に,エッジシフト検出テーブルにおける各エッジシフトの絶対値がそれぞれ最小になるように,マークの前エッジまたは後エッジを制御するパラメータdTtop,Ttop,dTlp,TlpおよびdTeを調整する。
【0067】
以上の実験を本発明に基づく2種類の制御パラメータテーブルを用いて行った。
【0068】
1つ目のテーブルは,前記解決手段(2)に基づいてラストパルスの開始時刻dTlp,ラストパルスの時間幅Tlpおよびクーリングパルスの終了時刻dTEについて,記録マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数グループに分けて指定するものである。
【0069】
このとき,各制御パラメータの値は調整の結果,図11A,図11Bに示した通りとなった。また,このときの各パターンのエッジシフトの値は図13に示した通りとなった。
【0070】
図14は,エッジシフトの分布を示したヒストグラムである。図14によると,本発明のパルスの制御パラメータを適用したN/2記録ストラテジを用いることより,従来のN/2記録マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数(6T,8T)のグループの間に見られたマークの後エッジのエッジシフトのスプリットが適切に補正され,4T以上の偶数(4T,6T,8T)のグループのトータルの分布はひと山にまとまった。
【0071】
また,ビットエラー率の推定値は,従来のN/2記録ストラテジを用いた場合に1.7×10−7であったのに対して,本発明を適用することにより6.3×10−8に改善した。
【0072】
2つ目のテーブルは,前記解決手段(3)に基づいてクーリングパルスの終了時刻dTEのみについて,記録マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数グループに分けて指定するものである。
【0073】
このとき,各制御パラメータの値は調整の結果,図21A,図21Bに示した通りとなった。また,このときの各パターンのエッジシフトの値は図22に示した通りとなった。
【0074】
図23は,エッジシフトの分布を示したヒストグラムである。このように,記録マーク長が4Tの場合と6T以上の偶数の場合とで分けて制御するパラメータをクーリングパルスの終了時刻のみに限定した場合にも,マークの後エッジのエッジシフトのスプリットが適切に補正され,4T以上の偶数(4T,6T,8T)のグループのトータルの分布はひと山にまとまった。
また,本構成を適用した場合のビットエラー率は6.1×10−8と,従来のN/2記録ストラテジを用いた場合に対して改善した。
【0075】
上記のビットエラー率の改善は,いずれのテーブルを用いた場合にも,エッジシフトの分布が図10(b)に示したような理想的な分布に補正されたことによることは明らかである。ビットエラー率の改善は,ドライブ装置の動作時の種々の外乱に対するマージンを拡大し,記録再生速度の高速化や記録密度の高密度化に寄与する。以上の結果より,本発明の効果が示された。
【実施例2】
【0076】
本実施例では、全パラメータで4T分離した例を説明する。
【0077】
本発明を実施するのに好適な光ディスク装置の構成例について述べる。ここではBDのシステムを前提とする。図15は,本発明を適用した光ディスク装置の構成例を示す模式図である。装置に装着された光ディスク媒体100は,スピンドルモータ160により回転される。再生時には,dTs(dTe)U140によって指令された光強度になるようにレーザパワー/パルス制御器120が光ヘッド110内のレーザドライバ116を介して半導体レーザ112に流す電流を制御し,レーザ光114を発生させる。レーザ光114は対物レンズ111によって集光され,光スポット101を光ディスク媒体100上に形成する。この光スポット101からの反射光115は対物レンズ111を介して,光検出器113で検出される。光検出器は複数に分割された光検出素子から構成されている。再生信号処理回路130は,光ヘッド110で検出された信号を用いて,光ディスク媒体100上に記録された情報を再生する。これら装置全体は,システムコントローラ200によって制御される。
【0078】
再生信号処理回路130は,光ヘッド110で検出された信号に対して帯域制限フィルタ,オートスライサ,PLL(Phase Locked Loop)等の処理を行うことにより,チャネルビットクロック信号を生成し,2値化再生信号を生成する。エッジシフト検出器135は,再生信号処理回路130が生成したチャネルビットクロック信号と2値化再生信号を用いて,再生信号エッジにおける2値化再生信号とチャネルビットクロック信号の間の時間差をチャネルビットクロック周期で規格化した値をエッジシフトとして計測する。更に各計測エッジにおけるエッジシフトの値を,2値化再生信号のデータパターンに基づいて当該マーク長と先行スペース長と先行マーク長の組み合わせのパターンで分類し,パターン毎に集計してエッジシフトの平均値を算出して出力する。
【0079】
次に,レーザパワー/パルス制御部120の構成例について説明する。ここでは,記録方式として図1に示したN/2記録ストラテジを用いるものとする。
【0080】
レーザ光の出力パワーレベルP,P(P),P及びPとして,光ディスク媒体のコントロール情報記憶領域に記録されたデータによって指定された値を用いる。パワーレベルの指定値が無い場合は試し書きを行うことにより各パワーレベルを決定する。
【0081】
パルスパラメータについては,図16(a)に示したテーブルに従い,ファーストパルスの始端の時刻dTtop及びファーストパルスの時間幅Ttopの設定値を与え,図16(b)に示したテーブルに従い,マルチパルスの開始時刻dTmpの設定値を与え,図16(c)に示したテーブルに従い,マルチパルスの時間幅Tmpの設定値を与え,図16(d)に示したテーブルに従い,ラストパルスの始端の時刻dTlp,ラストパルスの時間幅Tlpの設定値を与え,図16(e)に示したテーブルに従い,クーリングパルスの終了時刻dTs(dTe)の設定値を与える。すなわち,dTtop及びTtopは,図16(a)のパラメータテーブルに従い,当該マーク長と先行スペース長の組み合わせのパターン毎に設定し,dTlp,Tlp及びdTs(dTe)は,図16(b)のパラメータテーブルに従い,当該マーク長と後続スペース長の組み合わせのパターン毎に設定する。
【0082】
次に,本発明による記録パルス調整方法の実施例を説明する。図17は,パルスの制御パラメータの調整手順の一例を示したフローチャートである。記録ストラテジとしてN/2記録ストラテジを用い,図16に示したテーブルに従って前エッジ位置の制御に関するパラメータdTtop及びTtopは記録マーク長(2T,3T,4T,6T以上の偶数及び5T以上の奇数)と先行スペース長(2T,3T,4T及び5T以上)の5×4の組み合わせのパターンで分類され,後エッジの制御に関するパラメータdTlp,Tlp及びdTs(dTe)は記録マーク長(2T,3T,4T,6T以上の偶数及び5T以上の奇数)と後続スペース長(2T,3T,4T及び5T以上)の5×4の組み合わせのパターンで分類される。
【0083】
処理開始後,ステップ21では,パルスの制御パラメータdTtop,Ttop,dTmp,Tmp,dTlp,Tlp及びdTs(dTe)の初期値が設定される。制御パラメータの設定値のテーブルは,図15に示したものと同じである。ステップ22では,光ディスク媒体上の所定の場所にランダムデータが記録され,記録されたデータが再生される。ステップ23では,再生信号を用いてエッジシフトを算出し,記録マーク長と先行・後続スペース長の組み合わせのパターンに分類される。ここで,マークの前エッジのエッジシフトについては図16(a)のテーブルと同一の形に分類され,マークの後エッジのエッジシフトについては図16(d)および(e)のテーブルと同一の形に分類される。ステップ24では,全てのパターンのエッジシフトの絶対値がそれぞれ最小であるかどうかを判定し,Yesであれば処理が終了し,Noであればステップ25でエッジシフトが残留しているパターンに対応するパターンの制御パラメータの値が更新され,ステップ22に戻る。
【0084】
以上のようにして全てのパターンのエッジシフトの絶対値がそれぞれ最小になるように各制御パラメータが決定される。
【実施例3】
【0085】
本実施例では、各制御パラメータの指定値がディスク情報領域に格納された光ディスク媒体の実施例について述べる。
【0086】
制御パラメータの指定値は,ディスクの記録や再生に必要な種々の情報の集合である「ディスク情報」にまとめられ,光ディスク媒体上においてユーザデータ記録領域より内周に位置したディスク情報領域に記録される。
【0087】
図25は,ディスク情報のデータ構成を示した模式図である。ディスク情報の1単位(図25の上段の図)はヘッダ,ディスク情報の本体,およびフッタからなる。
【0088】
このうち,ディスク情報の本体には記録パルスの制御パラメータの他に媒体種別に関する情報,データ転送速度に関する情報,あるいは記録/再生パワーに関するパラメータなどが含まれる。
【0089】
記録パルスの制御パラメータ(図の網掛け部分)の構成について述べる。ここでは例として,前記解決手段(11)に基づき,dTlp,Tlp及びdTeの値を,記録マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数グループに分けて指定する構成を用いる。本構成では,各制御パラメータは図18に示したように分類され,分類された各パラメータに対して1バイトずつのデータが割り当てられる。
【0090】
1バイト(8ビット)データの内訳は,例えば図25の下段の図のようになる。この図はファーストパルスの時間幅Ttopの場合の例である。8ビットのうち上位6ビット(ビット7〜ビット2)には指定する時間幅をチャネルビットクロック周期の1/16で除した商(整数値)が2進数の形で格納される。この場合,時間幅は0以上63以下の範囲で指定される。また,残りの2ビット(ビット1〜ビット0)は不使用ビットであり,固定値として“00”が格納される。
【0091】
他の制御パラメータの指定値も同様の方法でディスク情報領域に格納される。但し,dTtop,dTlp及びdTeについては正負の値を取り得るため,整数値の指定には2の補数表現が用いられる。例えばファーストパルスの開始時刻dTtopの場合,図示しないが8ビットのうち上位5ビットを用いることにより整数値は−16以上15以下の範囲で指定される。
【0092】
また,本構成の光ディスク媒体がドライブ装置において用いられる際,上記整数値にチャネルビット周期を乗ずることにより,各制御パラメータの値が算出される。
【実施例4】
【0093】
次に,記録マーク長が4Tのグループの制御パラメータの値について,6T以上の偶数グループとの差分をディスク情報領域に格納された光ディスク媒体の実施例について述べる。
【0094】
ここでは実施例3と同様に,例として前記解決手段(11)に基づき,dTlp,Tlp及びdTeの値を,記録マーク長が4Tのグループと6T以上の偶数グループに分けて指定する構成を用いる。各制御パラメータは図18に示したように分類される。
【0095】
本構成において実施例3と異なるのは,dTlp,Tlp及びdTeについて,記録マーク長が4Tのグループの場合には,4Tグループの値と6T以上の偶数グループの値との差分を,ディスク情報領域に格納する点である。
【0096】
差分の値は4ビットに割り当てられ,2の補数表現の場合に−4以上+3以下の範囲で指定される。この指定範囲は,4Tグループと6T以上の偶数グループとの差分を指定するのに十分な大きさである。
【0097】
各制御パラメータの指定値が,図11A及び図11Bの通りであるとする。このとき,ディスク情報領域に格納する値は図24A及び図24Bのようになる。すなわち,記録マーク長が4Tのグループについては,ディスク情報領域に格納する値は,4Tグループの値と6T以上の偶数グループの値との差分となり,dTlpについては0−0=0,Tlpについては6−7=(−1),dTeについては(−1)−(−2)=(+1)となる。
指定値の範囲が小さくなるため,より少ないビット数で表現することが可能となる。
【0098】
ここで,本構成のように差分の値を4ビットで指定することとし,1バイトデータにおける上位4ビット(ビット7〜ビット4)に1つのパラメータ,下位4ビット(ビット3〜ビット0)に別のパラメータを割り当てることにより,パラメータ2つ分の指定値を1バイトに格納することが可能となる。このようにすると,本構成では記録マーク長が4Tのグループの制御パラメータは,dTtop,dTlp及びdTeに関して合計12種類あるため,実施例3の構成と比較してディスク情報のデータ量は6バイト少なくなる。
【0099】
また,本構成の光ディスク媒体がドライブ装置において用いられる際,記録マーク長が6T以上の偶数グループの場合の整数値に上記差分を加算することにより記録マーク長が4Tの場合の整数値が得られ,これにチャネルビット周期を乗ずることにより,記録マーク長が4Tの場合の制御パラメータの値が算出される。
【0100】
本発明の効果は,以上説明した実施例に限られるものではない。
【0101】
上記の実施例ではエッジシフトとして,チャネルビットクロック信号と2値化再生信号の時間差に基づいて算出されるエッジシフトを用いたが,これに限られるものではない。広義のエッジシフトとして,PRMLを用いた再生システムにおいて目標信号と再生信号のユークリッド距離差に基づいて算出されるエッジシフトを用いても構わない。また、RLL(1,7)に限らず、N/2記録ストラテジを用いるものであれば、同様の効果が得られることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0102】
100:光ディスク
101:光スポット
110:光ヘッド
111:対物レンズ
112:半導体レーザ
113:光検出器
114:レーザ光
115:反射光
116:レーザドライバ
120:レーザパワー/パルス制御器
130:再生信号処理器
135:エッジシフト検出器
140:dTs(dTe)U
160:スピンドルモータ
200:システムコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスク媒体に,パルス列状に強度変調されたレーザ光を照射してマーク及びマーク間部(スペース)を形成することにより情報を記録する光ディスク記録方法であって,
nを2以上の整数とし,nを2で割った商をqとしたとき,長さnTのマークに対応した前記パルス列がq本のライトパワーレベルを有するパルスから構成された光ディスク記録方法において,
n=4以上のマークに対応したパルス列における,各パルスの開始時刻,終了時刻あるいは時間幅のうち少なくとも1種類を指定するパラメータを,少なくともn=4の場合,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合に分けてそれぞれ制御することを特徴とする光ディスク記録方法。
【請求項2】
前記n=4以上のマークに対応したパルス列における,最終のライトパワーレベルのパルスであるラストパルスの開始時刻および時間幅,ラストパルスの直後のパルスであるクーリングパルスの終了時刻のうち少なくとも1種類を,n=4の場合,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合の3通りの場合に分けてそれぞれ制御することを特徴とする請求項1記載の光ディスク記録方法。
【請求項3】
前記n=4以上のマークに対応したパルス列における,ラストパルスの直後のパルスであるクーリングパルスの終了時刻を,n=4の場合,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合の3通りの場合に分けてそれぞれ制御することを特徴とする請求項1記載の光ディスク記録方法。
【請求項4】
前記n=4以上のマークに対応した前エッジおよび後エッジのエッジシフトを,n=4の場合,6T以上の偶数グループおよび5T以上の奇数グループに分けてそれぞれ算出し,
各エッジシフトの絶対値がそれぞれ最小になるように,前記パラメータを調整することを特徴とする,請求項1乃至3何れかに記載の光ディスク記録方法。
【請求項5】
前記n=4以上のマークに対応した後エッジのエッジシフトを,n=4の場合,6T以上の偶数グループおよび5T以上の奇数グループに分けてそれぞれ算出し,
各エッジシフトの絶対値がそれぞれ最小になるように,前記パラメータを調整することを特徴とする,請求項1乃至3何れかに記載の光ディスク記録方法。
【請求項6】
前記光ディスクは記録層1層あたり30GB以上の記録容量を有することを特徴とする,請求項1乃至5何れかに記載の光ディスク記録方法。
【請求項7】
前記光ディスク媒体は書き換え型であることを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載の光ディスク記録方法。
【請求項8】
nを2以上の整数とし,nを2で割った商をqとしたとき,長さnTのマークに対応したパルス列がq本のライトパワーレベルを有するパルスから構成されたパルス列状に強度変調されたレーザ光を照射することによりラン長制限されたマークおよびスペースを形成することにより情報が記録され,
前記マークを形成するための前記パルス列における各パルスの開始時刻および時間幅を指定するパラメータの値が,ユーザデータ記録領域とは異なる場所に配置されたディスク情報領域に格納された光ディスク媒体において,
n=4以上のマークに対応した前記パルス列における,各パルスの開始時刻,終了時刻あるいは時間幅を指定するパラメータの値のうち少なくとも1種類が,n=4の場合,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合に分られ,それぞれ前記ディスク情報領域に格納されたことを特徴とする光ディスク媒体。
【請求項9】
nを2以上の整数とし,nを2で割った商をqとしたとき,長さnTのマークに対応した前記パルス列がq本のライトパワーレベルを有するパルスから構成されたパルス列状に強度変調されたレーザ光を照射することによりラン長制限されたマークおよびスペースを形成することにより情報が記録され,
前記マークを形成するための前記パルス列における各パルスの開始時刻および時間幅を指定するパラメータの値が,ユーザデータ記録領域とは異なる場所に配置されたディスク情報領域に格納された光ディスク媒体において,
n=5以上のマークに対応した前記パルス列における,各パルスの開始時刻,終了時刻あるいは時間幅を指定するパラメータの値のうち少なくとも1種類が,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合に分られ,それぞれ前記ディスク情報領域に格納され,
n=4のマークに対応した前記パルス列における前記パラメータの値とn=6以上の偶数の場合の前記パラメータの値との差分の値が,前記ディスク情報領域に格納されたことを特徴とする光ディスク媒体。
【請求項10】
前記n=4以上のマークに対応したパルス列における,最終のライトパワーレベルのパルスであるラストパルスの開始時刻および時間幅,ラストパルスの直後のパルスであるクーリングパルスの終了時刻を指定するパラメータの値のうち少なくとも1種類が,n=4の場合,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合の3通りの場合に分けられ,それぞれ前記ディスク情報領域に格納されたことを特徴とする,請求項8記載の光ディスク媒体。
【請求項11】
前記n=5以上のマークに対応したパルス列における,最終のライトパワーレベルのパルスであるラストパルスの開始時刻および時間幅,ラストパルスの直後のパルスであるクーリングパルスの終了時刻を指定するパラメータの値のうち少なくとも1種類が,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合に分けられ,それぞれ前記ディスク情報領域に格納され,
n=4のマークに対応したパルス列における前記少なくとも1種類のパラメータの値とn=6以上の偶数の場合の前記少なくとも1種類のパラメータの値との差分の値が,前記ディスク情報領域に格納されたことを特徴とする,請求項9記載の光ディスク媒体。
【請求項12】
前記n=4以上のマークに対応したパルス列における,ラストパルスの直後のパルスであるクーリングパルスの終了時刻を指定するパラメータの値が,n=4の場合,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合の3通りの場合に分けられ,それぞれ前記ディスク情報領域に格納されたことを特徴とする,請求項8記載の光ディスク媒体。
【請求項13】
前記n=5以上のマークに対応したパルス列における,ラストパルスの直後のパルスであるクーリングパルスの終了時刻を指定するパラメータの値が,n=6以上の偶数の場合およびn=5以上の奇数の場合に分けられ,それぞれ前記ディスク情報領域に格納され,
n=4のマークに対応したパルス列における前記パラメータの値とn=6以上の偶数の場合の前記パラメータの値との差分の値が,前記ディスク情報領域に格納されたことを特徴とする,請求項9記載の光ディスク媒体。
【請求項14】
前記光ディスク媒体は、記録層1層あたり30GB以上の記録容量を有することを特徴とする請求項8乃至13何れかに記載の光ディスク媒体。
【請求項15】
前記光ディスク媒体は、書き換え型であることを特徴とする請求項8乃至14何れかに記載の光ディスク媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−101727(P2013−101727A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55273(P2010−55273)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】