説明

光ディスク装置および多層光ディスク

【課題】SILを用いた光ディスク装置において、多層光ディスクの記録容量を可能な限りおおきくする。
【解決手段】多層光ディスクの光ビームの入射側に近い情報層ほど集光する光ビームのスポットサイズを小さくして記録再生をおこなう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報層に対する光ビームの集光が、ソリッドイマージョンレンズ(SIL)を有する光学ヘッドによってなされる、多層光ディスクを駆動する光ディスク装置および多層光ディスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスクの高密度化へのアプローチとして、対物レンズとソリッドイマージョンレンズ(以下SILと記す)を組合せて、高い開口数を得る集光系が構成された光ヘッドを用いるものが提案されている。
【0003】
この方式(以下SIL方式)は、SILおよび光ディスクの保護層に高屈折率(1.8から2.0程度)の材料を用い、ギャップ制御をおこなってSILと光ディスク保護層のギャップを25nm程度の微小な値に近接させることによって得られるSILからの出射光により、記録再生をおこなうものであって、図8はSIL方式による記録再生をおこなうための光ディスクを含めた光学系の基本的な構成を示したものである。
【0004】
図8において、光ディスク101は基板300、カバー層111、情報層112で構成されており、固定具104で連結されているSIL102と対物レンズ103により、光ビーム150を前記光ディスク101の情報層112に集光させている。
【0005】
また105は、光ディスク101の樹脂材料からなるカバー層111の表面とSIL102の光出射面とのギャップであり、25nm程度の大きさに制御されているものである。
【0006】
なお、ギャップ105の制御方法またはその制御装置の構成については特許文献1にその一例が詳細に記されているため、ここでの説明は省略する。
【0007】
一方、120は光源であり、その出射光はコリーメートレンズ201により平行光に変換され、偏光ビームスプリッタ202を介することにより、前述した光ビーム150となる。
【0008】
なお、偏光ビームスプリッタ202は光ディスク101からの反射光を、レンズ181を介して再生信号を得るための光電変換部(ディテクタ)121に入射させる。また図8に示すように偏光ビームスプリッタ202をλ/4板180と光源120で挟んで配置することにより、光源への戻り光を遮断することができる。
【0009】
なお、光電変換部(ディテクタ)121は、トラッキング誤差信号、RF信号、および前述したギャップ制御のためのギャップ誤差信号を生成するために設けられたものであり、必要なトラッキング誤差信号を合成するため、適宜分割されて構成されている場合もあり、あるいは複数の独立したディテクタより構成されている場合もある。
【0010】
以上のように構成された光学系により、SIL102によって光ビームが集光され、光ディスクの情報層に照射された光ビームのスポットサイズの一例について、本件発明者らが検討した結果を述べると、図8における対物レンズ103の開口数を0.42、SIL102の屈折率を2.00としたとき、対物レンズ103とSIL102とを組合せて算出される実効的な開口数は、1.70となってそのときのスポットサイズは0.14μmとなる。一方、BD(Blu-Ray Disc)におけるスポットサイズをBD規格に規定されている緒元より算出すると0.280μmとなって、前述したSIL方式におけるスポットサイズはBDの場合の2分の1となり、従って、単位面積あたりの記録容量、即ち、記録密度は4倍に向上させることができる。
【0011】
また、さらに記録容量を向上させるための手立てとしては、DVDやBD(Blu-ray Disc)ですでに商品化がなされている情報層の2層化が施された2層ディスクがあり、最近では3層以上の情報層を有する多層構造の光ディスクも提案されている。
【0012】
従って、前述したSILを備えた光学系と光ディスクの情報層の多層化の手立てを組合せることにより、光ディスクの有する記録容量を飛躍的に増大させることが可能となる。
【特許文献1】特開2002−319160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述したようにSILを用いた集光系により記録密度を増加させ、加えて多層化による更なる記録容量の増大を図るとすると以下の課題が生じる。
【0014】
図9は、入射ビーム152が光ディスク101に対する入射角βで入射し、入射ビーム152の入射側に最も近い情報層(以下最上情報層)112-1に集光させたしたときの状況を示していて、光の波長をλ、SIL102と光ディスク101のカバー層100の屈折率をnで等しいとすれば、そのスポットサイズΦ1は[式1]となる。
【0015】
[式1]Φ1=0.6xλ/(nxsinβ)
また、[式1]より入射ビーム152が光ディスク101に対する入射角βが大きいほど、スポットサイズが小さくなることは明らかであり、最上情報層112-1に集光させるために必要な入射角βは、光ディスク101が有する情報層に集光させるための入射角のうち最大の入射角である。
【0016】
つまり、[式1]で示したスポットサイズΦ1は、光ディスク101が有する情報層に集光するスポットサイズのなかで、最小のスポットサイズとなる。
【0017】
従って、[式1]に示したスポットサイズΦ1が、最下情報層112-2に光ビームを集光させた場合においても得られれば、光ディスク101が有するすべての情報層に対して、最小のスポットサイズΦ1に適合する記録容量を得ることができ、当該光ディスク1枚の記録容量を最大とすることが可能となる。
【0018】
しかしながら、その場合は、図10に示すように、図9と同様の入射角βで入射ビーム152を入射させ、最下情報層112−2に集光させることになり、入射ビーム152は最下情報層112−2にて反射し、反射ビーム151となるが、図9に示す状況とは異なり、光ディスク101のカバー層111を出た後の反射ビーム151は、SIL102に戻らなくなる状況が発生する。
【0019】
この事実は、光学的な説明は省略するが、最下情報層112−2に対して記録再生を試みるとき、トラッキング誤差信号やRF信号等の記録再生に必要な信号の検出が不可能となることを示しており、光ディスク101の有するすべての情報層に対して、最小のスポットサイズを適用することが不可能なことを示している。
【0020】
この状況を回避するための手段として、SIL102の光出射面、即ち、SIL102が光ディスク101のカバー層111とギャップ105を介して向かい合う面の径を大きくすることが考えられる。しかし、図9、図10に示すSIL102の光出射面の径を40μmとしたとき、光ディスク101とSIL102との衝突を考慮したときのディスク傾きの許容値は、ギャップ105を前述したように25nm程度と仮定して算出すると0.07度と極めて小さい値となるため、SIL102の光出射面の径をさらに大きくすることは、ディスク傾きの許容値はさらに小さくする方向となって好ましくない。
【0021】
一方、図11は、入射ビーム151が、先に説明した光ディスク101に対する入射角βより小さい入射角β´で光ディスク101に入射し、入射ビーム151の入射側に最も遠い情報層(以下最下情報層)112-2に集光させたときの状況を示していて、光の波長をλとし、SIL102と光ディスク101のカバー層111の屈折率をnで等しいとすれば、そのスポットサイズΦ2は[式2]となって、β>β´であるのでスポットサイズの大小関係がΦ1<Φ2となる。
【0022】
[式2]Φ2=0.6xλ/(nxsinβ´)
また、図12は入射ビーム151が光ディスク101に対する入射角β´で入射し、最上情報層112-1に集光させたときの状況を示していて、そのときに最上情報層112-1において得られるスポットサイズは上述したΦ2に等しい。
【0023】
もちろん、この場合には、図10に示すように、最上情報層112-1で反射した反射ビーム151が、SIL102に戻らないという状況は発生せず、記録再生時には、トラッキング誤差信号やRF信号等の記録再生に必要な信号の検出が正しく行なわれることとなる。
【0024】
しかしながら、先に説明したように、最上情報層112−1ではスポットサイズを最小とすることが可能であるにもかかわらず、それより大きいΦ2としているため最上情報層112−1での記録容量はスポットサイズΦ2で制限されることになり、その記録容量を十分に大きくとることができなくなって、SIL方式を用いた光ディスクの多層化による大容量化の効果としては不十分と言わざるを得ない。
【0025】
以上説明したように、光ディスクの記録容量の増大を図るため、より小さいスポットサイズを光ディスクの有するすべての情報層に適用すれば、光ビームの入射側より遠い情報層の記録再生に支障をきたす状況が発生し、より大きいスポットサイズの適用は、光ディスクの多層化による大容量化の効果を十分に得ることができないこととなる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するため、本発明の光ディスク装置は少なくとも光源とソリッドイマージョンレンズを含む集光系と、多層光ディスクに設けられた情報層によって反射された光を電気信号に変換するための光電変換部と、前記光源より出射された光ビームが前記多層光ディスクの有する情報層に集光したときのスポットサイズを可変とするためのスポットサイズ調整部を有する光ヘッドを有し、前記多層光ディスクの、前記光ビームの入射側に近い情報層ほど、集光される前記光ビームの前記スポットサイズを小さくして記録再生を行うことを特徴とした光ディスク装置である。
【0027】
また、本発明の光ディスクは前記光ディスク装置によって記録再生がなされる多層光ディスクであって、前記光ビームの入射側に近い情報層ほどトラックピッチが小さいことを特徴とした多層光ディスクである。
【0028】
また、本発明の光ディスクは前記光ディスク装置によって再生される多層光ディスクであって、前記光ビームの入射側に近い情報層ほど前記光ビームの走査方向に形成されるマークの長さ及び幅が短いことを特徴とした多層光ディスクである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の光ディスクおよび光ディスク装置によれば、多層化された光ディスクの各々の情報層毎に記録密度が最大となるように記録再生が行われるため、光ディスク一枚あたりの記録容量を最大とすることができる。
【0030】
また、一枚あたりの記録容量が最大となるような多層構造を有する多層光ディスクの提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光ディスク装置の構成を示している。
【0033】
図1では光ディスク101を多層構造化して図示し、最上情報層と最下情報層をそれぞれ112−1、112-2とし、最上情報層112−1と最下情報層112-2の間にカバー層100と同様の材料で充填された中間層203を記している。
【0034】
なお、基板300は図8に示したものと同様である。
【0035】
また、図1の光ディスク101では簡単のため、情報層としては最上情報層112−1と最下情報層112-2のみで構成された2層構造の光ディスクとしている。
【0036】
図1において101は光ディスク、102はSIL、103は対物レンズであり、SIL102と対物レンズ103は固定具104で連結されている。
【0037】
また、105は光ディスク101とSIL102のギャップであり、107はトラッキング制御用アクチュエータ、108はギャップ制御用アクチュエータであり、SIL102と対物レンズ103は、固定具104と一体となって構成されている。
【0038】
次に凸レンズ109と凹レンズ110の作用について図2および図3を用いて説明する。
【0039】
図2は、光ディスク101の最下情報層112−2に集光する光ビーム150が適切なスポットサイズとなるように図1に示す凸レンズ109、凹レンズ110、S1L102、対物レンズ103が配置されている状況を示している。
【0040】
なお、詳細は後述するが、凹レンズ110は紙面上下方向に移動可能である。
【0041】
この状況下での光ディスク101に対する光ビーム150の入射角は図11および図12で説明したβ´であり、そのときのスポットサイズは[式2]で示したΦ2である。
【0042】
図2に示す状況下では、本件発明者らが検討したところによると、SIL102の屈折率を2.07、光ディスク101のカバー層111および中間層203の屈折率を1.90、光ディスク101のカバー層111の厚みを10μm、中間層203の厚みを5μm、即ち、光ディスク101の表面より最下情報層112-2までの距離を15μmとしたとき、最下情報層112-2上でのスポットサイズΦは略0.160μmとなる。
【0043】
また図3は図2に示す状況から、凹レンズ110を光軸方向に凸レンズ109に適宜近づけたときの状況を示したものであり、図2と比較して光ビーム150の幅は凹レンズ110より光ディスク101側で拡大され、最上情報層112-1に集光する光ビーム150が適切なスポットサイズとなっている。
【0044】
この状況下での光ディスク100に対する光ビーム105の入射角は図9および図10で説明したβであり、そのときのスポットサイズは[式1]で示したΦ1である。
【0045】
本件発明者らが検討したところによると、図3に示す状況下では、SIL102の屈折率、光ディスク101のカバー層111の屈折率、光ディスク1の表面より最上情報層112-1までの距離、即ち光ディスク101のカバー層111の厚みを図2の場合と同様としたとき、最上情報層112-1上でのスポットサイズΦ1は略0.140μmとなって、前述した最下情報層112-2でのスポットサイズΦ2の略0.875倍となる。
【0046】
つまり、凸レンズ109と凹レンズ110の両者の距離の増減は、光ビーム150のビーム幅を拡大、縮小し、光ビーム150が集光する各々の情報層でのスポットサイズの大きさを可変とすることができることを意味する。
【0047】
また、図1に示すように凹レンズ110は可動ステージ113に固定され、可動ステージ113は送りねじ114を介してステッピングモータ115に連結されていて、CPU200より供給される駆動パルス118により駆動される。
【0048】
従って、最下情報層112-2あるいは最上情報層112-1に光ビーム150を集光させ、各々の情報層で所定のスポットサイズを得るためには、上述したようにCPU200よりステッピングモータ114に対して必要な数の駆動パルス118供給し、凸レンズ109と凹レンズ110を適切な位置関係に設定すればよい。
【0049】
以上より、凸レンズ109とCPU200より供給される駆動パルス118により駆動されるステッピングモータ115、および送りねじ、可動ステージ113、凹レンズ110はスポットサイズ調整部を構成していることになる。
【0050】
以上、説明したように、実施の形態1では、上述したスポットサイズ調整部を作用させることにより、光ディスク101の最上情報層112-1に照射する光ビームのスポットサイズを最下情報層112-2のそれより小さくすることが可能となり、記録再生もそれらのスポットサイズ用いておこなわれることになる。
【0051】
従って、実施の形態1においては、光ディスク101の最下情報層112−2より最上情報層112−1の記録密度を高めることが可能となり、前述した最下情報層112−2でのスポットサイズ0.160μmから計算した最下情報層112−2が有する記録容量は略78GBとなり、最上情報層112−1でのスポットサイズ0.140μmから計算した最上情報層112−1が有する記録容量は略101GBとなって、実施の形態1における2層構造の多層光ディスク1枚あたりの記録容量は179GBとなって、二つの情報層でのスポットサイズを最下情報層112−2でのスポットサイズ0.160μmに統一して記録再生を行う場合の多層光ディスク1枚あたりの記録容量156GBに対し、略1.15倍の記録容量とすることができる。
【0052】
また、図2、図3に示す状況から明らかなように、最下情報層112−2からの反射光はSIL102の光出射面に戻っており、先に課題として説明したようなトラッキング誤差信号やRF信号等の記録再生に必要な信号の検出が不可能となることはない。
【0053】
なお、上述した記録容量は、光ディスク101と光ビーム150の相対走査速度と記録信号の有する周波数を適宜設定し、各々の情報層でのスポットサイズに適合したマーク長を有するマークを各々の情報層に形成することにより得られる。
【0054】
なお、図1によれば、前述した記録信号は記録パルス列163として示されており、データ化された記録情報160、記録信号の周波数を含む記録条件データ161、記録制御指令、即ち記録ON/OFF指令162がCPU200より記録制御回路136に供給されており、さらに記録パルス列163は光源120に対して供給され、強度変調された光ビーム150が光源120より出力される。
【0055】
本件発明者らが検討したところによると、最下情報層112−2のスポットサイズ0.160μmに適合した最短マーク長は略0.085μmであり、最上情報層112−1のスポットサイズ0.140μmに適合した最短マーク長は略0.074μmであって、そのような各々のマーク長が得られるように前述した光ディスク101と光ビーム150の相対走査速度を決定し、記録信号の有する周波数を選択して記録条件設定データ161に設定した。
【0056】
なお、光ディスク101と光ビーム150の所望の相対走査速度を得るには、図1に示すように、所定の相対走査速度データ142をCPU200よりスピンドルモータ制御回路140に対して設定し、光ディスク101に連結したスピンドルモータ141を駆動する。
【0057】
また、凹レンズ110を移動し、記録再生の対象となる情報層上で所望のスポットサイズに集光したか否かは、実施の形態1では、図4に示すように、図1におけるディテクタ121の出力信号122よりトラッキング誤差信号生成回路125で合成されたトラッキング誤差信号130を観測し、その振幅が実線で示すような低レベル状態から、破線で示すような最大レベルとなることをもって記録再生の対象となる情報層上で所望のスポットサイズに集光したと判定した。
【0058】
なお、図1に示すようにトラッキング誤差信号130をCPU200に入力し、その観測機能をCPU200に包含させることにより、トラッキング誤差信号130最適な状態をCPU200に判定させることも可能である。
【0059】
なお、図1におけるギャップ誤差信号生成回路124は、光電変換部121の出力信号122を受け、所定の手順によりギャップ誤差信号129を生成し、ギャップ制御回路134により適宜処理されることによって、ギャップ制御用アクチュエータ108の駆動電流138を生成してギャップ制御を成立させる。
【0060】
なお、ギャップ制御のON−OFF指令143はCPU200よりギャップ制御回路134に供給される。
【0061】
また、図1におけるトラッキング誤差信号生成回路125は、光電変換部121の出力信号122を受け、所定の手順によりトラッキング誤差信号130を生成し、トラッキング制御回路135により適宜処理されることによって、トラッキング制御用アクチュエータ107の駆動電流139を生成してトラッキング制御を成立させる。
【0062】
なお、トラッキング制御のON−OFF指令144はCPU200よりトラッキング制御回路135に供給される。
【0063】
また、図1におけるRF信号生成回路127は光電変換部121の出力信号122を受け、所定の手順によりRF信号132を生成し、再生信号処理回路204により再生データ205の生成と再生クロック206の抽出を行う。
【0064】
なお、再生データ205の生成と再生クロック206は、たとえば再生データ205が画像データであれば、CPU200に画像処理機能を設けることにより適切な画像処理が施されることになる。
【0065】
また、本件発明者らが検討したところによると、最下情報層112−2のスポットサイズ0.160μmに適合したトラックピッチは0.183μmであり、最上情報層112−1でのスポットサイズ0.140μmに適合したトラックピッチは0.160μmである。
【0066】
従って、本発明の実施の形態1における光ディスクは、最上情報層112−1のトラックピッチを最下情報層112−2より小さくした、即ち、光ビーム150の入射側に近い情報層ほどトラックピッチを小さくした多層光ディスクであり、その光ディスク101を図5に示す。
【0067】
また、図6は、図5に示した光ディスク101のA−B間の断面図を示したものであって、先に説明したように、図6における最下情報層のトラックピッチ250は最下情報層112−2でのスポットサイズ0.160μmに適合したトラックピッチの0.183μmであり、最上情報層のトラックピッチ251は、最上情報層112−1のスポットサイズ0.140μmに適合したトラックピッチの0.160μmである。
【0068】
また、本発明の実施の形態1における光ディスクは、図5に示す光ディスク101の最上情報層112−1に形成された最短マークのマーク長が最下情報層112−2に形成された最短マークのマーク長より短い多層光ディスクであり、最上情報層112−1と最下情報層112−2に形成された各々の情報層における最短マークのマーク列を図7に示す。
【0069】
図7において、252は最下情報層112−2における最短マークのマーク列を示しており、253は最上情報層112−1における最短マークのマーク列を示していて、先に説明したように、最下情報層の最短マーク長254は最下情報層112−2でのスポットサイズ0.160μmに適合した長さの0.085μmであり、最上情報層の最短マーク長255は、最上情報層112−1でのスポットサイズ0.140μmに適合した長さの0.074μmである。
【0070】
なお、実施の形態1では、光ディスク101の有する情報層に相変化型の材料を用い、レーザ光の照射による結晶状態の変化させることによる「マーク」を形成するものとしたが、再生専用型の光ディスクにおけるピットであっても、最上情報層112−1における最短ピット長は最下情報層112−2における最短ピット長より短くすることができる。
【0071】
以上、説明したように、本発明の実施の形態1による光ディスク装置は、多層光ディスクの光ビームの入射側に近い情報層ほど集光させる光ビームのスポットサイズを小さくすることにより、記録密度を高める、即ち当該光ディスク1枚当たりの記録容量を大きくすることを可能とし、また本発明の実施の形態1による光ディスクは、光ビームの入射側に近い情報層ほど小さいスポットサイズに適合したディスク構造により、より大きな記録容量を実現することが可能な光ディスクである。
【0072】
また、実施の形態1では、多層光ディスクとして2層構造の光ディスクを用いたが、3層以上の情報層を有する多層光ディスクの場合にも、前述したスポットサイズ調整部を適用し、最下情報層および最上情報層以外の中間の情報層にも、最下情報層より大きいスポットサイズ(最上情報層より小さいスポットサイズ)で光ビームを集光させることが可能であり、従って、その中間の情報層の記録容量も最下情報層の記録容量より大きくとることが可能となって、結果として3層以上の情報層を有する多層光ディスクの場合にもその多層光ディスク一枚当たりの記録容量を大きくすることができる。
【0073】
また、実施の形態1における光ディスクは、最上情報層112−1と最下情報層112−2でマーク長あるいはピット長が異なって記録されているため、この両者の情報層の再生時における光ディスク101と光ビーム150の相対走査速度を同一にして再生処理を実行するという再生方法をとれば、以下に記す効果を得ることができる。
【0074】
それは、図1における再生信号処理回路で適宜処理されて抽出された再生クロック206の有する周波数が、マーク長あるいはピット長が異なって記録されている最上情報層112−1と最下情報層112−2の再生時では異なるという事実に基づくものであり、実施の形態1の例では、最短マーク長が長い最下情報層112−2の再生時では周波数の低い再生クロック206が得られ、短マーク長が短い最上情報層112−1の再生時では周波数の高い再生クロック206が得られる。
【0075】
従って、図1に示すように、再生クロック206をCPU200に入力し、その周波数の計数機能をCPU200に設けておけば、当該光ディスク装置の初期の起動時において、情報層の判別に特別な処理あるいは専用のハードウェアの増設を必要とすることなく、実際に再生している情報層が所望の情報層であるかどうかを即座に判定することができ、光ディスク装置が当該情報層に対してあらかじめ定められた処理、例えば当該情報層に対する記録条件データ(図1に161として示す)等の設定処理をすばやく実行することが可能となって、光ディスク装置の起動時間の短縮に貢献するものである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は多層光ディスクの光ビームの入射側に近い情報層ほど集光させる光ビームのスポットサイズを小さくすることにより、多層光ディスクの記録容量を大きくすることが可能な光ディスク装置と多層光ディスクを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態1の構成図
【図2】本発明のスポットサイズ調整部の作用を示す図
【図3】本発明のスポットサイズ調整部の作用を示す図
【図4】本発明のスポットサイズ調整部の調整指標を示すトラッキング誤差信号を示す図
【図5】本発明の光ディスクの説明図
【図6】本発明の光ディスクの説明図
【図7】本発明の光ディスクの説明図
【図8】従来の光ディスク装置(光学系)の構成図
【図9】従来の光ディスク装置の課題説明図
【図10】従来の光ディスク装置の課題説明図
【図11】従来の光ディスク装置の課題説明図
【図12】従来の光ディスク装置の課題説明図
【符号の説明】
【0078】
101 光ディスク
102 ソリッドイマージョンレンズ(SIL)
103 対物レンズ
105 ギャップ
109 凸レンズ
110 凹レンズ
111 カバー層
112−1 最上情報層
112−2 最下情報層
113 可動ステージ
114 送りねじ
115 ステッピングモータ
120 光源
121 光電変換部
130 トラッキング誤差信号
150 光ビーム
180 λ/4板
181 レンズ
200 CPU
201 コリメートレンズ
202 偏光ビームスプリッタ
203 中間層
250 最下情報層のトラックピッチ
251 最上情報層のトラックピッチ
252 最下情報層のマーク列
253 最上情報層のマーク列
254 最下情報層の最短マーク長
255 最上情報層の最短マーク長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一フォーマットの情報層から構成される多層構造を有する多層光ディスクを駆動する光ディスク装置であって、少なくとも光源とソリッドイマージョンレンズを含む集光系と、前記多層光ディスクに設けられた前記情報層によって反射された光を電気信号に変換するための光電変換部と、前記光源より出射された光ビームが前記多層光ディスクの有する前記情報層に集光したときのスポットサイズを可変とするためのスポットサイズ調整部を有する光ヘッドを有し、前記多層光ディスクの、前記光ビームの入射側に近い情報層ほど、集光される前記光ビームの前記スポットサイズを小さくして記録再生を行うことを特徴とした光ディスク装置。
【請求項2】
前記光ディスク装置によって記録再生がなされる多層光ディスクであって、前記光ビームの入射側に近い情報層ほどトラックピッチが小さいことを特徴とした多層光ディスク。
【請求項3】
前記光ディスク装置によって再生される多層光ディスクであって、前記光ビームの入射側に近い情報層ほど、前記光ビームの走査方向に形成される最短マークのマーク長が短いことを特徴とした多層光ディスク。
【請求項4】
請求項3記載の多層光ディスクの再生方法であって、あらかじめ最短マーク長が所定の長さで形成された各々の情報層に対して再生をおこなうための、前記光ビームの前記マークに対する走査速度を等しくすることを特徴とした光ディスクの再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−123851(P2012−123851A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89905(P2009−89905)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】