説明

光ディスク装置及びそのフォーカスオフセット設定方法

【課題】
光ディスク装置において、複数の記録層のフォーカスオフセット処理時、処理時間の短縮や処理精度の確保を図る。
【解決手段】
互いに隣接する記録層のそれぞれについて、記録層の記録面に形成された案内溝からの反射光による信号に基づき、該案内溝に対する光学系のフォーカスオフセットを学習し、該学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットに基づき、記録または再生時用のフォーカスオフセットを演算して設定する。3層以上の記録層の場合は、上記学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットとの差が光学系の特性に対応した値となるフォーカスオフセットを、それぞれの記録層のまたはそれぞれの記録層に共通のフォーカスオフセットとして設定したり、または、該学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となるフォーカスオフセットの平均値を1つの記録層のフォーカスオフセットとして設定したりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置におけるフォーカスオフセット処理に係り、特に、光ディスクが複数の記録層を有する場合の該複数の記録層に対するフォーカスオフセットの設定に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連した従来技術としては、例えば、特許第3465413号明細書(特許文献1)や特開2003−217140号公報(特許文献2)や、特開2003−248940号公報(特許文献3)に記載されたものがある。特許第3465413号明細書には、トラッキングエラー信号の振幅、ジッタ、RF信号振幅等により、フォーカスオフセット値を設定するとした技術が記載され、特開2003−217140号公報には、各記録層に対してフォーカスオフセットを独立に設定する技術が記載され、特開2003−248940号公報には、装置内に温度検出器を設け、装置内温度が所定値以上変化しかつフォーカスジャンプやシークを完了した時にオフセット再調整を行うとした技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3465413号明細書
【特許文献2】特開2003−217140号公報
【特許文献3】特開2003−248940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、各記録層のフォーカスオフセット量をそれぞれ独立に求めたり、記録層切替え前後のトラッキングエラー信号の振幅、ジッタ、RF信号振幅等の差に基づき、該切替え後の記録層のフォーカスオフセット量を求めたりするため、オフセット処理の所要時間が長くなり易いし、また、未記録状態の記録層の場合には処理精度を確保できないおそれがある。
【0005】
本発明の課題点は、上記従来技術の状況に鑑み、光ディスク装置において、複数の記録層のフォーカスオフセット処理時における、該処理時間の短縮や、記録済み状態の記録層(再生専用ディスクも含む)や未記録状態の記録層に対するフォーカスオフセット処理精度の確保が図れるようにすることである。また、装置内の温度変化にも対応してフォーカスオフセット処理精度を確保することができるようにすることである。
本発明の目的は、かかる課題点を解決し、光ディスク装置において、使い勝手性を向上させ得る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題点を解決するために、本発明では、光ディスク装置において、光ディスクが有する複数の記録層のうち互いに隣接する記録層のそれぞれについて、記録層の記録面に形成された案内溝からの反射光による信号に基づき、該案内溝に対する光学系のフォーカスオフセットを学習し、該学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットに基づき、記録または再生時用のフォーカスオフセットを演算して設定する。記録または再生時用の光学系のフォーカスオフセットとしては、上記学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットの平均値を、該それぞれの記録層に共通のフォーカスオフセットとして設定したり、または、上記学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となるフォーカスオフセットを、それぞれの記録層のまたはそれぞれの記録層に共通のフォーカスオフセットとして設定したり、または、該学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となるフォーカスオフセットの平均値を1つの記録層のフォーカスオフセットとして設定したりする。また、装置内の温度変化に対応して、上記学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットの平均値または該学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となるフォーカスオフセットを、記録または再生時用の光学系のフォーカスオフセットとして設定する。
なお、本発明において、上記学習によって求めるフォーカスオフセットは、本発明を有効に構成するに足る適正範囲のフォーカスオフセットを意味するものとする。また、本発明における「記録層」は、情報が記録される層(記録層)であって、既に情報が記録されている記録層(再生専用ディスクの記録層も、記録可能ディスクすなわち書き換え可能なディスクや追記可能なディスクの記録層も含む)も、また、未だ情報が記録されていないがいずれ情報が記録される記録層(この場合は記録可能ディスクの記録層)も含む意味のものであるとする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光ディスク装置において、複数の記録層のフォーカスオフセット処理を短時間で行うことができ、情報の記録または再生動作の迅速な開始が可能となる。また、記録済み状態の記録層(再生専用ディスクも含む)や未記録状態の記録層に対してもフォーカスオフセットの処理精度を確保することができる。また、装置内の温度変化にも対応してフォーカスオフセット処理精度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施例につき、図面を用いて説明する。
図1〜図10は、本発明の第1の実施例としての光ディスク装置の説明図である。図1は、本発明の第1の実施例としての光ディスク装置の構成図、図2は、図1の光ディスク装置における光ディスクの複数の記録層の基準面位置と、光ピックアップの光学系の位置の説明図、図3は、図1の光ディスク装置におけるフォーカスオフセット学習と、記録または再生時用のフォーカスオフセット設定の説明図、図4は、実測データに基づく図1の光ディスク装置におけるフォーカスオフセット学習と、記録または再生時用のフォーカスオフセットの演算及び設定の説明図、図5は、他の実測データに基づく図1の光ディスク装置におけるフォーカスオフセット学習と、記録または再生時用のフォーカスオフセットの演算及び設定の説明図、図6は、図1の光ディスク装置の、光ディスク中の隣接する記録層に対するフォーカスオフセット処理の動作フロー図、図7は、図1の光ディスク装置において、3層以上の記録層を有する光ディスクに対するフォーカスオフセット処理の説明図、図8は、図7のフォーカスオフセット処理の動作フロー図、図9は、図1の光ディスク装置において、3層以上の記録層を有する光ディスクに対する他のフォーカスオフセット処理の説明図、図10は、図9のフォーカスオフセット処理の動作フロー図である。
なお、以下の説明において用いる「記録層」は、情報が記録される層(記録層)であって、既に情報が記録されている記録層(再生専用ディスクの記録層も、記録可能ディスクの記録層も含む)も、また、未だ情報が記録されていないがいずれ情報が記録される記録層(この場合は記録可能ディスクの記録層)も含む意味のものとする。
【0009】
図1において、1aは、本発明の実施例としての光ディスク装置、2は、複数の記録層を有するDVD+/−R DLなどの光ディスク、3は、光ディスク2を回転駆動するディスクモータ、4は光ピックアップ、5は、光ピックアップ4内にあって、対物レンズ(図示なし)を含んで構成され、レーザ光を集光し、該集光したレーザ光を光ディスク2の記録面に照射する光学系、6は、光ピックアップ4内にあって記録または再生のために所定の強さのレーザ光を発生するレーザダイオード、7は、光ピックアップ4内にあって、レーザダイオード6を駆動するレーザ駆動回路、8は、光ピックアップ4内にあって、光学系5を介し光ディスク2の記録面(ディスク面)からの反射光を受光して電気信号(再生信号)に変換して出力する受光部、9は、光学系5中の対物レンズ(図示なし)の位置や姿勢を変化させるアクチュエータ、10は、受光部8から出力された再生信号を、RF信号として増幅や復調などを行って信号処理する再生信号処理部、11は、直線のガイド部材(図示なし)やリードスクリュー部材(図示なし)などを備えて構成され、光ピックアップ4を光ディスク2の略半径方向に移動させる移動・案内機構部、12は、該移動・案内機構部11内にあってリードスクリュー部材(図示なし)を回転駆動するスライドモータ、14は、アクチュエータ9を駆動する駆動信号を生成するフォーカス/トラッキング制御部、15は、ディスクモータ3やスライドモータ12を回転駆動するモータ駆動回路、30は、当該光ディスク装置1a全体を制御する制御部としてのシスコン、31は、シスコン30内にあってモータ駆動回路15を制御するモータ制御部、32は、シスコン30内のマイコン、321は、マイコン32内に構成され、再生信号処理部10から出力された信号から上記光学系5の最適フォーカスオフセット(最適な範囲にあるフォーカスオフセットすなわち本発明を有効に構成するに足る適正範囲にあるフォーカスオフセットを意味するものとする。以下の説明中における「最適フォーカスオフセット」は全てこの意味であるとする)を学習(検出)する第1の制御手段としてのフォーカスオフセット学習手段、322は、マイコン32内に構成され、上記フォーカスオフセット学習手段321が学習した最適フォーカスオフセットに基づき、記録または再生時用の上記光学系5のフォーカスオフセットを演算し設定する第2の制御手段としてのフォーカスオフセット演算・設定手段である。上記第1の制御手段としてのフォーカスオフセット学習手段321は、上記最適フォーカスオフセットの学習時、再生信号処理部10から出力された信号すなわち、光ディスク2の複数の記録層のうち、互いに隣接する記録層のそれぞれの記録面に形成された案内溝からの反射光に基づいた信号から、それぞれの該案内溝に対する光学系5の最適フォーカスオフセットを学習(検出)する。
【0010】
また、図1において、33は、レーザダイオード6を駆動するための記録用信号を生成し出力する記録用信号生成部、40は、光学系5の特性情報や、フォーカスオフセット学習手段321が学習した隣接するそれぞれの記録層の最適フォーカスオフセットの情報や、フォーカスオフセット演算・設定手段322が演算・設定した記録または再生時用の上記光学系5のフォーカスオフセットの情報や、フォーカスオフセット学習手段321に上記学習動作の一連の手順を実行させるプログラムや、上記フォーカスオフセット演算・設定手段322に上記演算・設定動作の一連の手順を実行させるプログラムなどが格納されるメモリである。光学系5の特性情報や、上記学習動作実行用のプログラムや、上記演算・設定動作実行用のプログラムは、フォーカスオフセット学習手段321による最適フォーカスオフセットの学習動作前に予め、メモリ40に格納されているものとする。
【0011】
再生信号処理部10からは、上記最適フォーカスオフセットの学習時、互いに隣接する複数の記録層の記録面に形成された案内溝からの反射光に基づく信号として、プッシュプル信号またはウォブル信号が出力される。
【0012】
第1の制御手段としてのフォーカスオフセット学習手段321は、最適フォーカスオフセットの学習時、上記再生信号処理部10から出力されたプッシュプル信号またはウォブル信号を用い、互いに隣接する複数の記録層のそれぞれの案内溝に対するそれぞれの最適フォーカスオフセットとして、上記プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大(実質的な最大の範囲にある値という意味であって、真の最大値を含み例えば真の最大値の95%以上となる範囲にある値を意味するものとする。以下、プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅における「最大」または「最大値」とはこの意味であるとする)となるフォーカスオフセットを学習(検出)する構成を有する。プッシュプル信号により最適フォーカスオフセットを学習する場合は、トラッキング制御はオフ(OFF)状態とされ、ウォブル信号により最適フォーカスオフセットを学習する場合は、トラッキング制御はオン(ON)状態とされる。フォーカスオフセット学習手段321は、メモリ40から読み出したプログラムに従って、最適フォーカスオフセット学習動作における所定の手順を実行する。
【0013】
第2の制御手段としてのフォーカスオフセット演算・設定手段322は、互いに隣接する複数の記録層に情報を記録または再生するときのためのフォーカスオフセットを演算、設定する時、上記フォーカスオフセット学習手段321が学習した、該隣接する複数の記録層のそれぞれの最適フォーカスオフセットすなわち上記プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大となるフォーカスオフセットの平均値(平均のフォーカスオフセット)を演算し該演算した平均値を、記録または再生時における該両記録層に共通のフォーカスオフセットとして設定したり、または、フォーカスオフセット学習手段321が学習したそれぞれの記録層の最適フォーカスオフセットとの差が光学系5の特性に対応した値となるフォーカスオフセットすなわち光学系5の特性に対応して記録層毎に重み付けしたフォーカスオフセットを演算し該演算したフォーカスオフセットを上記互いに隣接する複数の記録層のそれぞれにおける記録または再生時用のフォーカスオフセットとして該記録層毎に個々に設定したりする。
【0014】
フォーカスオフセット学習手段321による学習結果を用いて、記録または再生時用の上記平均のフォーカスオフセットを演算して設定するとき、フォーカスオフセット演算・設定手段322は以下のようにして該フォーカスオフセットの設定を行う。すなわち、例えば、レーザ光入射側(光学系5が配された側)から第1の記録層(L0層)、第2の記録層(L1層)が配されているときであって、該第1の記録層(L0層)に対するフォーカスオフセット学習手段321による学習により、プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大となるフォーカスオフセットとしてFA0が得られ、また、該第2の記録層(L1層)に対する学習によっては、プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大となるフォーカスオフセットとしてFA1が得られたとき、第1の記録層(L0層)及び第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQCとして、例えば、
QC=(FA0+FA1)/2 (数1)
により演算した値を、該第1の記録層(L0層)及び該第2の記録層(L1層)に共通のフォーカスオフセット(記録または再生時用のフォーカスオフセット)として設定する。
【0015】
また、フォーカスオフセット学習手段321による学習結果を用いてかつ光学系5の特性に対応して隣接記録層毎に個々に記録または再生時用のフォーカスオフセットを演算して設定する場合には、フォーカスオフセット演算・設定手段322は以下のようにして該記録または再生時用のフォーカスオフセットの設定を行う。すなわち、例えば、レーザ光入射側から第1の記録層(L0層)、第2の記録層(L1層)の順で記録層が配されているときであって、該第1の記録層(L0層)に対するフォーカスオフセット学習手段321による学習により、プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大となるフォーカスオフセットとしてFA0が得られ、また、該第2の記録層(L1層)に対する学習によっては、プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大となるフォーカスオフセットとしてFA1が得られたとき、第1の記録層(L0層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ0としては、例えば、
Q0=(3×FA0+FA1)/4 (数2)
により演算した値を設定し、
また、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ1としては、例えば、
Q1=(FA0+3×FA1)/4 (数3)
により演算した値を設定する。
【0016】
フォーカスオフセット演算・設定手段322は、メモリ40から読み出したプログラムに従い、記録または再生動作用の上記光学系5の上記フォーカスオフセットを演算・設定する動作手順を実行する。
なお、上記数1〜数3は、発明者が、本発明を検討する過程において、複数の光ディスクを用いた実験から得た数式であり、本発明の課題点を解決し顕著な効果が得られる実用的な数式である。
【0017】
上記構成の光ディスク装置1aにおいて、複数の記録層を有する光ディスク2に対して情報の記録または再生を行うとき、例えば、光ディスク2が、装置内にローディングされ、所定速度で回転された状態において、光ピックアップ4内のレーザダイオード6が発生したレーザ光が、光学系5を通して光ディスク2の複数の記録層の記録面に照射され、複数の記録層に対するフォーカスオフセット処理が行われる。フォーカスオフセット処理は、互いに隣接する記録層のそれぞれについて、該各記録層に形成された案内溝の溝情報(溝の構造や状態を示す情報)を利用して行われる。すなわち、互いに隣接する記録層のそれぞれについて、記録層の記録面に形成された案内溝からの反射光を受光部8で受けて電気信号(再生信号)に変換し、再生信号処理部10からプッシュプル信号またはウォブル信号として出力する。フォーカスオフセット処理時、再生信号処理部10からプッシュプル信号が出力される構成とした場合は、光ディスク装置1aにおいて、トラッキング制御は行われず、フォーカス/トラッキング制御部14からはフォーカス制御信号のみが出力される。一方、再生信号処理部10からウォブル信号を出力する構成とした場合は、トラッキング制御も行われ、フォーカス/トラッキング制御部14からはフォーカス制御信号とトラッキング制御信号が出力される。互いに隣接する各記録層の案内溝の溝情報として再生信号処理部10から出力された該プッシュプル信号またはウォブル信号は、マイコン32内のフォーカスオフセット学習手段321に入力される。フォーカスオフセット学習手段321は、互いに隣接する記録層のそれぞれについて、該入力されたプッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大となるときのフォーカスオフセットを最適フォーカスオフセットとして学習(検出)する。マイコン32内のフォーカスオフセット演算・設定手段322は、上記のように、フォーカスオフセット学習手段321が学習した互いに隣接する記録層それぞれの最適フォーカスオフセットの平均値、または、該学習された各最適フォーカスオフセットとの差が、光学系5の特性に対応した値となるフォーカスオフセットを演算し、記録または再生時用の上記光学系のフォーカスオフセットとして設定する。
以下、説明中で用いる図1の光ディスク装置1aの構成要素には、図1の場合と同じ符号を付して用いる。
【0018】
図2は、図1の光ディスク装置1aにおいて、光ディスク2の複数の記録層の基準面(フォーカスオフセットが0(ゼロ)となる面)の位置と、それに対する光ピックアップ4の光学系5の位置の説明図である。(a)は、光学系5で集光されたレーザ光が第1の記録層(L0層)に照射され、該第1の記録層(L0層)の記録面の案内溝からの反射光に基づくプッシュプル信号またはウォブル信号から、該第1の記録層(L0層)に対する最適フォーカスオフセットの学習を行うときの状態を示し、(b)は、光学系5で集光されたレーザ光が、上記第1の記録層(L0層)に隣接する第2の記録層(L1層)に照射され、該第2の記録層(L1層)の記録面の案内溝からの反射光に基づくプッシュプル信号またはウォブル信号から、該第2の記録層(L1層)に対する最適フォーカスオフセットの学習を行うときの状態を示す。5aは、光学系5中の対物レンズ、hは、第1の記録層(L0層)の基準面と第2の記録層(L1層)の基準面との間の距離である。最適フォーカスオフセットの学習時においても、対物レンズ5aは、フォーカス/トラッキング制御部14からのフォーカス制御信号に基づき、アクチュエータ9によってフォーカス方向(±Z軸方向)の位置を制御される。第1の記録層(L0層)に対する最適フォーカスオフセットの学習を行うときは、第1の記録層(L0層)の基準面位置を含む該第1の記録層(L0層)の基準面の近傍で対物レンズ5aのフォーカス方向位置がアクチュエータ9によって変えられ、プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大となる対物レンズ5aのフォーカス方向位置によるフォーカスオフセットが、フォーカスオフセット学習手段321によって、第1の記録層(L0層)に対する最適フォーカスオフセットとして学習される。同様に、第2の記録層(L1層)に対する最適フォーカスオフセットの学習を行うときは、該第2の記録層(L1層)の基準面位置を含む該第2の記録層(L1層)の基準面の近傍で対物レンズ5aのフォーカス方向位置がアクチュエータ9によって変えられ、プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大となる対物レンズ5aのフォーカス方向位置によるフォーカスオフセットが、フォーカスオフセット学習手段321によって、第2の記録層(L1層)に対する最適フォーカスオフセットとして学習される。第3の記録層(L2層)(図示なし)に対する最適フォーカスオフセットの学習を行うときも同様である。
【0019】
以下の説明中においても、第1の記録層(L0層)と第2の記録層(L1層)とは、レーザ光入射方向(対物レンズ5aが配された方向)に対して上記図2に示す位置関係にあるものとする。また、図7〜図10で説明する記録層が3層以上の光ディスクの場合は、第3の記録層(L2層)(図示なし)は、第2の記録層(L1層)よりもさらにZ軸方向側の位置に配されているものとする。
【0020】
図3は、図1の光ディスク装置1aにおける光ディスク2に対するフォーカスオフセット学習と、記録または再生時用のフォーカスオフセット設定の説明図である。本図3では、フォーカスオフセット学習はプッシュプル信号を用いて行うとしている。図3において、横軸にはフォーカスオフセットFをとり、縦軸には、プッシュプル信号振幅Aと分解能Dとをとっている。
【0021】
図3において、Aは、第1の記録層(L0層)の案内溝からの反射光により再生信号処理部10から出力されるプッシュプル信号の振幅特性曲線のモデル、A0maxは、振幅特性曲線A上の最大値すなわち第1の記録層(L0層)によるプッシュプル信号振幅の最大値、FA0は、振幅特性曲線A上においてプッシュプル信号振幅が最大値A0maxとなるときのフォーカスオフセットすなわち最適フォーカスオフセット、Aは、第2の記録層(L1層)の案内溝からの反射光により再生信号処理部10から出力されるプッシュプル信号の振幅特性曲線のモデル、A1maxは、振幅特性曲線A上の最大値すなわち第2の記録層(L1層)によるプッシュプル信号振幅の最大値、FA1は、振幅特性曲線A上においてプッシュプル信号振幅が最大値A1maxとなるときのフォーカスオフセットすなわち最適フォーカスオフセット、Dは、第1の記録層(L0層)からの反射光による分解能特性曲線のモデル、FD0は、該分解能特性曲線Dが最大値となるときのフォーカスオフセット、Dは、第2の記録層(L1層)からの反射光による分解能特性曲線のモデル、FD1は、該分解能特性曲線Dが最大値となるときのフォーカスオフセットである。上記プッシュプル信号振幅の最大値A0maxとそのときのフォーカスオフセットFA0(最適フォーカスオフセット)及び、上記プッシュプル信号振幅の最大値A1maxとそのときのフォーカスオフセットFA1(最適フォーカスオフセット)は、第1の制御手段としてのフォーカスオフセット学習手段321によって学習(検出)される。なお、上記分解能Dは、光ディスク2の各記録層の案内溝中の最短マーク(DVDにおいては3Tマーク)からの反射光による信号の振幅の、同最長マーク(DVDにおいては11Tマーク)からの反射光による信号の振幅に対する比で定義されるものとする。
【0022】
また、図3において、Qは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記フォーカスオフセット(最適フォーカスオフセット)FA0、FA1に基づき、フォーカスオフセットFA0との差が光学系5の特性に対応した値となるように演算し設定したフォーカスオフセットの位置すなわち、光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA0側に重み付けされた(=フォーカスオフセットFA1との差よりもフォーカスオフセットFA0との差を小さくされた)フォーカスオフセットの位置、FQ0は、該位置Qに対応するフォーカスオフセット、Qは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記フォーカスオフセットFA0、FA1に基づき、フォーカスオフセットFA1との差が光学系5の特性に対応した値となるように演算し設定したフォーカスオフセットの位置すなわち、光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA1側に重み付けされた(=フォーカスオフセットFA0との差よりもフォーカスオフセットFA1との差を小さくされた)フォーカスオフセットの位置、FQ1は、該位置Qに対応するフォーカスオフセット、Qは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が上記フォーカスオフセットFA0、FA1に基づき演算し設定するフォーカスオフセットであって、該両フォーカスオフセットFA0、FA1の平均値のフォーカスオフセットの位置、FQCは、該位置Qに対応するフォーカスオフセットである。図3は、フォーカスオフセット演算・設定手段322によるフォーカスオフセットの演算に用いられる数式の精度が高く、フォーカスオフセット演算・設定手段322が演算し設定したフォーカスオフセットFQ0と、分解能特性曲線Dが最大値となるときのフォーカスオフセットFD0とが同値、かつ、フォーカスオフセット演算・設定手段322が演算し設定したフォーカスオフセットFQ1と、分解能特性曲線Dが最大値となるときのフォーカスオフセットFD1とが同値となる場合を示している。フォーカスオフセットFQCは、例えば数1を用いて演算され、フォーカスオフセットFQ0は、例えば数2を用いて演算され、フォーカスオフセットFQ1は、例えば数3を用いて演算され、該フォーカスオフセットFQC、FQ0、FQ1のそれぞれが、分解能特性曲線D、Dや、フォーカスオフセットFD0、FD1を求めることなく、情報の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして設定される。
なお、図3の横軸上で、第1の記録層(L0層)におけるフォーカスオフセットF=0の位置と、第2の記録層(L1層)におけるフォーカスオフセットF=0の位置とを重ねている。すなわち、図3は、図2における距離hを0(ゼロ)として上記両位置を重ねた状態としている。
【0023】
図4は、実測データに基づく図1の光ディスク装置1aにおけるフォーカスオフセット学習と、情報の記録または再生時用のフォーカスオフセット設定の説明図である。横軸にはフォーカスオフセットFをとり、縦軸には、プッシュプル信号の振幅Aと、3Tマークによる信号の振幅Bとをとっている。図4においては、フォーカスオフセット学習手段321によるプッシュプル信号による学習結果を用い、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、該学習で求めた最適フォーカスオフセット(最適な範囲にあるフォーカスオフセットすなわち本発明を有効に構成するに足る適正範囲にあるフォーカスオフセットを意味する)の平均値を演算し、該演算したフォーカスオフセットを記録または再生用のフォーカスオフセットとして設定する場合と、上記学習で求めた最適フォーカスオフセットとの差が光学系5の特性に対応した値となるフォーカスオフセットすなわち光学系5の特性に対応して重み付けしたフォーカスオフセットを演算で求め、該求めたフォーカスオフセットを記録または再生用のフォーカスオフセットとして設定する場合とについて述べる。
【0024】
図4において、Aは、第1の記録層(L0層)の案内溝からの反射光により再生信号処理部10から出力されるプッシュプル信号の実測振幅特性曲線、A0maxは、フォーカスオフセット学習手段321によって学習される振幅値であって、実測振幅特性曲線A上の最大値すなわち第1の記録層(L0層)によるプッシュプル信号振幅の最大値(実測データを用いて多項式近似により求めた最大値)、FA0は、フォーカスオフセット学習手段321によって学習されるフォーカスオフセットであって、実測振幅特性曲線A上においてプッシュプル信号振幅が最大となるときのフォーカスオフセットすなわち最適フォーカスオフセットである。また、Aは、第2の記録層(L1層)の案内溝からの反射光により再生信号処理部10から出力されるプッシュプル信号の実測振幅特性曲線、A1maxは、フォーカスオフセット学習手段321によって学習される振幅値であって、実測振幅特性曲線A上の最大値すなわち第2の記録層(L1層)によるプッシュプル信号振幅の最大値(実測データを用いて多項式近似により求めた最大値)、FA1は、フォーカスオフセット学習手段321によって学習されるフォーカスオフセットであって、実測振幅特性曲線A上においてプッシュプル信号振幅が最大となるときのフォーカスオフセットすなわち最適フォーカスオフセットである。
【0025】
また、図4において、Bは、第1の記録層(L0層)の案内溝中の3Tマークからの反射光により再生信号処理部10から出力される信号の実測振幅特性曲線、FB0は、実測振幅特性曲線Bが最大値B0max(実測データを用いて多項式近似により求めた最大値)をとるときのフォーカスオフセットである。また、Bは、第2の記録層(L1層)の案内溝中の3Tマークからの反射光により再生信号処理部10から出力される信号の実測振幅特性曲線、FB1は、実測振幅特性曲線Bが最大値B1maxを(実測データを用いて多項式近似により求めた最大値)をとるときのフォーカスオフセットである。
【0026】
また、図4において、Qは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記フォーカスオフセット(最適フォーカスオフセット)FA0、FA1に基づき、フォーカスオフセットFA0との差が光学系5の特性に対応した値となるように、前述の数2を用いて演算し設定したフォーカスオフセットの位置すなわちフォーカスオフセットFA0側に光学系5の特性に対応して重み付けした(=フォーカスオフセットFA1との差よりもフォーカスオフセットFA0との差を小さくした)フォーカスオフセットの位置、FQ0は、該位置Qに対応するフォーカスオフセットである。また、Qは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記学習された両最適フォーカスオフセットFA0、FA1に基づき、最適フォーカスオフセットFA1との差が光学系5の特性に対応した値となるように、前述の数3を用いて演算し設定したフォーカスオフセットの位置すなわちフォーカスオフセットFA1側に光学系5の特性に対応して重み付けした(=フォーカスオフセットFA0との差よりもフォーカスオフセットFA1との差を小さくした)フォーカスオフセットの位置、FQ1は、該位置Qに対応するフォーカスオフセットである。また、Qは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記学習された最適フォーカスオフセットFA0、FA1に基づき、前述の数1を用いて演算し設定したフォーカスオフセットであって該両最適フォーカスオフセットFA0、FA1の平均値のフォーカスオフセットの位置、FQCは、該位置Qに対応したフォーカスオフセットである。
なお、図4においては、横軸上で、第1の記録層(L0層)におけるフォーカスオフセットF=0の位置と、第2の記録層(L1層)におけるフォーカスオフセットF=0の位置とを重ねている。すなわち、図2における距離hを0(ゼロ)として上記両位置を重ねた状態としている。
【0027】
具体的には、図4において、フォーカスオフセット学習手段321によって学習された第1の記録層(L0層)の最適フォーカスオフセットFA0は約7×0.05μm、同じく第2の記録層(L1層)の最適フォーカスオフセットFA1は約0×0.05μmである。また、実測振幅特性曲線Bが最大値B0maxとなるときのフォーカスオフセットFB0は約3×0.05μm、実測振幅特性曲線Bが最大値B1maxとなるときのフォーカスオフセットFB1は約2×0.05μmである。また、フォーカスオフセット演算・設定手段322が上記学習された最適フォーカスオフセットFA0、FA1に基づきかつ光学系5の特性に対応して、第1の記録層(L0層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定するフォーカスオフセットFQ0は約5×0.05μm、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定するフォーカスオフセットFQ1は約2×0.05μm、第1の記録層(L0層)及び第2の記録層(L1層)に共通の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定する該両フォーカスオフセットFA0、FA1の平均値のフォーカスオフセットFQCは約3.5×0.05μmである。
【0028】
上記から明らかなように、第1の記録層(L0層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして設定されたフォーカスオフセットFQ0(約5×0.05μm)は、該第1の記録層(L0層)の実測振幅特性曲線Bが最大値B0maxとなるときのフォーカスオフセットFB0(約3×0.05μm)と近い値であり、また、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして設定されたフォーカスオフセットFQ1(約2×0.05μm)は、該第2の記録層(L1層)の実測振幅特性曲線Bが最大値B1maxとなるときのフォーカスオフセットFB1(約2×0.05μm)と一致し、また、第1の記録層(L0層)及び第2の記録層(L1層)の記録または再生時用の共通のフォーカスオフセットとして設定された平均値のフォーカスオフセットFQC(約3.5×0.05μm)は、上記実測フォーカスオフセットFB0(約3×0.05μm)や、上記実測フォーカスオフセットFB1(約2×0.05μm)と近い値である。この結果、互いに隣接する記録層のそれぞれが、図4のようなプッシュプル信号振幅特性及び3Tマークによる信号振幅特性を有する光ディスクの場合には、光ディスク装置1aにおいては、記録または再生時用のフォーカスオフセットとしては、第1の記録層(L0層)及び第2の記録層(L1層)に共通の上記学習された最適フォーカスオフセットFA0、FA1の平均値のフォーカスオフセットを数1に基づいて演算して設定してもよいし、または、第1の記録層(L0層)と第2の記録層(L1層)とのそれぞれに対応したものを、数2や数3により演算して設定してもよいことが明らかである。
【0029】
図5は、図1の光ディスク装置1aにおいて、互いに隣接する記録層のそれぞれが、図4の場合とは異なる光ディスク2について、図4とは異なるプッシュプル信号振幅特性の実測データに基づき、フォーカスオフセット学習と、記録または再生時用のフォーカスオフセット設定とを行う場合の説明図である。図5も、図4の場合と同様、横軸にはフォーカスオフセットFをとり、縦軸には、プッシュプル信号の振幅Aと、3Tマークによる信号の振幅Bとをとっている。図5においても、フォーカスオフセット学習手段321によるプッシュプル信号による学習結果を用い、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、該学習で求めた最適フォーカスオフセットの平均値を演算し、該演算したフォーカスオフセットを情報の記録または再生用のフォーカスオフセットとして設定する場合と、上記学習で求めた最適フォーカスオフセットとの差が光学系5の特性に対応した値となるフォーカスオフセットすなわち光学系5の特性に対応して重み付けしたフォーカスオフセッを演算で求め、該求めたフォーカスオフセットを情報の記録または再生用のフォーカスオフセットとして設定する場合とについて述べる。
【0030】
図5において、Aは、第1の記録層(L0層)の案内溝からの反射光により再生信号処理部10から出力されるプッシュプル信号の実測振幅特性曲線、A0maxは、フォーカスオフセット学習手段321によって学習される振幅値であって、実測振幅特性曲線A上の最大値すなわち第1の記録層(L0層)によるプッシュプル信号振幅の最大値(実測データを用いて多項式近似により求めた最大値)、FA0は、フォーカスオフセット学習手段321によって学習されるフォーカスオフセットであって、実測振幅特性曲線A上においてプッシュプル信号振幅が最大となるときのフォーカスオフセットすなわち最適フォーカスオフセットである。また、Aは、第2の記録層(L1層)の案内溝からの反射光により再生信号処理部10から出力されるプッシュプル信号の実測振幅特性曲線、A1maxは、フォーカスオフセット学習手段321によって学習される振幅値であって、実測振幅特性曲線A上の最大値すなわち第2の記録層(L1層)によるプッシュプル信号振幅の最大値(実測データを用いて多項式近似により求めた最大値)、FA1は、フォーカスオフセット学習手段321によって学習されるフォーカスオフセットであって、実測振幅特性曲線A上においてプッシュプル信号振幅が最大となるときのフォーカスオフセットすなわち最適フォーカスオフセットである。
【0031】
また、図5において、Bは、第1の記録層(L0層)の案内溝中の3Tマークからの反射光により再生信号処理部10から出力される信号の実測振幅特性曲線、FB0は、実測振幅特性曲線Bが最大値B0maxを(実測データを用いて多項式近似により求めた最大値)をとるときのフォーカスオフセットである。また、Bは、第2の記録層(L1層)の案内溝中の3Tマークからの反射光により再生信号処理部10から出力される信号の実測振幅特性曲線、FB1は、実測振幅特性曲線Bが最大値B1max(実測データを用いて多項式近似により求めた最大値)をとるときのフォーカスオフセットである。
【0032】
また、図5において、Qは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記フォーカスオフセット(最適フォーカスオフセット)FA0、FA1に基づき、フォーカスオフセットFA0との差が光学系5の特性に対応した値となるように、前述の数2を用いて演算し設定したフォーカスオフセットの位置、すなわちフォーカスオフセットFA0側に光学系5の特性に対応して重み付けした(=フォーカスオフセットFA1との差よりもフォーカスオフセットFA0との差を小さくした)フォーカスオフセットの位置、FQ0は、該位置Qに対応するフォーカスオフセットである。また、Qは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記フォーカスオフセットFA0、FA1に基づき、フォーカスオフセットFA1との差が光学系5の特性に対応した値となるように、前述の数3を用いて演算し設定したフォーカスオフセットの位置、すなわちフォーカスオフセットFA1側に光学系5の特性に対応して重み付けした(=フォーカスオフセットFA0との差よりもフォーカスオフセットFA1との差を小さくした)フォーカスオフセットの位置、FQ1は、該位置Qに対応するフォーカスオフセットである。また、Qは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が上記フォーカスオフセットFA0、FA1に基づき、前述の数1を用いて演算し設定したフォーカスオフセットであって該両フォーカスオフセットFA0、FA1の平均値のフォーカスオフセットの位置、FQCは、該位置Qに対応するフォーカスオフセットである。
【0033】
なお、図5においても、上記図4の場合と同様、横軸上で、第1の記録層(L0層)におけるフォーカスオフセットF=0の位置と、第2の記録層(L1層)におけるフォーカスオフセットF=0の位置とを重ねている。すなわち、図5も、図2における距離hを0(ゼロ)として上記両位置としている。
【0034】
具体的には、図5において、フォーカスオフセット学習手段321によって学習された第1の記録層(L0層)の最適フォーカスオフセットFA0は約3×0.05μm、同じく第2の記録層(L1層)の最適フォーカスオフセットFA1は約−8×0.05μmである。また、実測振幅特性曲線Bが最大値B0maxとなるときのフォーカスオフセットFB0は約0×0.05μm、実測振幅特性曲線Bが最大値B1maxとなるときのフォーカスオフセットFB1は約−4×0.05μmである。また、フォーカスオフセット演算・設定手段322が上記学習された最適フォーカスオフセットFA0、FA1に基づきかつ光学系5の特性に対応して、第1の記録層(L0層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定するフォーカスオフセットFQ0は約0×0.05μm、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定するフォーカスオフセットFQ1は約−5×0.05μm、第1の記録層(L0層)及び第2の記録層(L1層)に共通の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定する該両フォーカスオフセットFA0、FA1の平均値のフォーカスオフセットFQCは約−2.5×0.05μmである。
【0035】
上記から明らかなように、第1の記録層(L0層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして設定されたフォーカスオフセットFQ0(約0×0.05μm)は、該第1の記録層(L0層)の実測振幅特性曲線Bが最大値B0maxとなるときのフォーカスオフセットFB0(約0×0.05μm)とほぼ一致し、また、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして設定されたフォーカスオフセットFQ1(約−5×0.05μm)は、該第2の記録層(L1層)の実測振幅特性曲線Bが最大値B1maxとなるときのフォーカスオフセットFB1(約−4×0.05μm)に近い値となる。しかしながら、第1の記録層(L0層)及び第2の記録層(L1層)の記録または再生時用の共通のフォーカスオフセットとして設定された平均値のフォーカスオフセットFQC(約−2.5×0.05μm)は、上記実測フォーカスオフセットFB0(約0×0.05μm)や、上記実測フォーカスオフセットFB1(約−4×0.05μm)との差が大きい。この結果、互いに隣接する記録層のそれぞれが、図5のようなプッシュプル信号振幅特性及び3Tマークによる信号振幅特性を有する光ディスクの場合には、光ディスク装置1aは、記録または再生時用のフォーカスオフセットとしては、第1の記録層(L0層)と第2の記録層(L1層)とのそれぞれに対応したものを、数2や数3により演算し別々に設定することで、適切なフォーカスオフセット処理が可能となる。
【0036】
図6は、図1の光ディスク装置1aが、光ディスク2中の隣接する記録層である第1の記録層(L0層)と第2の記録層(L1層)に対して行うフォーカスオフセット処理の動作フロー図である。該フォーカスオフセット処理では、フォーカスオフセット学習手段321は、図4、図5の場合と同様、プッシュプル信号により最適フォーカスオフセットを学習するものとする。
【0037】
光ディスク装置1aが、複数の記録層を有する光ディスク2に対してフォーカスオフセット処理を行うとき、図6において、a、c間が接続状態とされた場合は、
(1)まず、制御部としてのシスコン30は、光ディスク装置1aを、トラッキング制御オフ(OFF)、フォーカス制御オン(ON)の状態にする。すなわち、シスコン30は、フォーカス/トラッキング制御部14を制御し、該フォーカス/トラッキング制御部14が、トラッキング制御信号を出力せず、フォーカス制御信号のみを出力する状態にする(ステップS601)。
(2)光ディスク2内において互いに隣接する記録層のうちの第1の記録層(L0層)に、光学系5からレーザ光が照射され、シスコン30内においてマイコン32の一部を構成するフォーカスオフセット学習手段321は、再生信号処理部10から出力されたプッシュプル信号の振幅が最大となるときのフォーカスオフセットFA0を、第1の記録層(L0層)の最適フォーカスオフセットとして学習(検出)する(ステップS602)。該学習された最適フォーカスオフセットFA0はメモリ40に格納される。
(3)光ディスク2内において互いに隣接する記録層のうちの第2の記録層(L1層)に、光学系5からレーザ光が照射され、フォーカスオフセット学習手段321は、再生信号処理部10から出力されたプッシュプル信号の振幅が最大となるときのフォーカスオフセットFA1を、第2の記録層(L1層)の最適フォーカスオフセットとして学習(検出)する(ステップS603)。該学習された最適フォーカスオフセットFA1はメモリ40に格納される。
(4)シスコン30内においてマイコン32の一部を構成するフォーカスオフセット演算・設定手段322は、上記フォーカスオフセット学習手段321が学習した最適フォーカスオフセットFA0、FA1に基づき、第1の記録層(L0層)に対する情報の記録または再生用のフォーカスオフセットFQ0を演算し設定する(ステップS606)。フォーカスオフセット演算・設定手段322は、該フォーカスオフセットFQ0を、例えば数2により、光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA0側に重み付けされた(=フォーカスオフセットFA1との差よりもフォーカスオフセットFA0との差を小さくされた)フォーカスオフセットとして演算する。設定された該フォーカスオフセットFQ0はメモリ40に格納される。
(5)フォーカスオフセット演算・設定手段322は、学習された最適フォーカスオフセットFA0、FA1に基づき、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ1を演算し設定する(ステップS607)。フォーカスオフセット演算・設定手段322は、該フォーカスオフセットFQ1を、例えば数3により、光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA1側に重み付けされた(=フォーカスオフセットFA0との差よりもフォーカスオフセットFA1との差を小さくされた)フォーカスオフセットとして演算する。設定された該フォーカスオフセットFQ1はメモリ40に格納される。
(6)シスコン30は、光ディスク装置1aに、上記設定したフォーカスオフセットFQ0、FQ1による光ディスク2に対する記録または再生動作を開始させる(ステップS608)。光ディスク装置1aは、設定されたフォーカスオフセットFQ0により、第1の記録層(L0層)の記録または再生を行い、設定されたフォーカスオフセットFQ1により、第2の記録層(L1層)の記録または再生を行う。
【0038】
なお、上記フォーカスオフセットの学習及び演算・設定においてはいずれも、第1の記録層(L0層)についての処理が、第2の記録層(L1層)についての処理よりも先行されるようにしたが、第2の記録層(L1層)についての処理が先行されるようにしてもよい。
【0039】
光ディスク2に対する上記フォーカスオフセット処理は、フォーカスオフセット学習手段321及びフォーカスオフセット演算・設定手段322がそれぞれ、メモリに格納されたプログラムに従って上記一連の動作手順を実行することにより行われる。
【0040】
また、光ディスク装置1aは、複数の記録層を有する光ディスク2に対してフォーカスオフセット処理を行うとき、図6においてa、b間が接続状態とされた場合は、
(1)まず、制御部としてのシスコン30は、光ディスク装置1aを、トラッキング制御オフ(OFF)、フォーカス制御オン(ON)の状態にする。すなわち、シスコン30は、フォーカス/トラッキング制御部14を制御し、該フォーカス/トラッキング制御部14が、トラッキング制御信号を出力せず、フォーカス制御信号のみを出力する状態にする(ステップS601)。
(2)光ディスク2内において互いに隣接する記録層のうちの第1の記録層(L0層)に、光学系5からレーザ光が照射され、シスコン30内においてマイコン32の一部を構成するフォーカスオフセット学習手段321は、再生信号処理部10から出力されたプッシュプル信号の振幅が最大となるときのフォーカスオフセットFA0を、第1の記録層(L0層)の最適フォーカスオフセットとして学習(検出)する(ステップS602)。該学習された最適フォーカスオフセットFA0はメモリ40に格納される。
(3)光ディスク2内において互いに隣接する記録層のうちの第2の記録層(L1層)に、光学系5からレーザ光が照射され、フォーカスオフセット学習手段321は、再生信号処理部10から出力されたプッシュプル信号の振幅が最大となるときのフォーカスオフセットFA1を、第2の記録層(L1層)の最適フォーカスオフセットとして学習(検出)する(ステップS603)。該学習された最適フォーカスオフセットFA1はメモリ40に格納される。
(4)シスコン30内においてマイコン32の一部を構成するフォーカスオフセット演算・設定手段322は、上記フォーカスオフセット学習手段321が学習した最適フォーカスオフセットFA0、FA1に基づき、第1の記録層(L0層)及び第2の記録層(L1層)に共通のフォーカスオフセットを記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定する(ステップS604)。フォーカスオフセット演算・設定手段322は、該フォーカスオフセットFQCを、例えば数1により該両フォーカスオフセットFA0、FA1の平均値として演算する。設定された該フォーカスオフセットFQCはメモリ40に格納される。
(5)シスコン30は、光ディスク装置1aに、上記設定したフォーカスオフセットFQCによる光ディスク2に対する記録または再生動作を開始させる(ステップS605)。光ディスク装置1aは、フォーカスオフセットFQCにより、第1の記録層(L0層)の記録または再生を行うとともに、第2の記録層(L1層)の記録または再生も該フォーカスオフセットFQCによって行う。
【0041】
なお、上記フォーカスオフセットの学習においては、第1の記録層(L0層)についての学習が、第2の記録層(L1層)についての学習よりも先行されるようにしたが、第2の記録層(L1層)についての学習が先行されるようにしてもよい。
【0042】
光ディスク2に対する上記フォーカスオフセット処理は、フォーカスオフセット学習手段321及びフォーカスオフセット演算・設定手段322がそれぞれ、メモリ40に格納されたプログラムに従って上記一連の動作手順を実行することにより行われる。
【0043】
図7は、光ディスク2が3層以上の記録層を有し、光ディスク装置1aが該光ディスク2に対してフォーカスオフセット処理をする場合の説明図である。フォーカスオフセット学習手段321におけるフォーカスオフセットの学習はやはり、プッシュプル信号で行うものとする。図7において、横軸にはフォーカスオフセットFをとり、縦軸にはプッシュプル信号振幅Aをとっている。
【0044】
図7において、Aは、第1の記録層(L0層)の案内溝からの反射光により再生信号処理部10から出力されるプッシュプル信号の振幅特性曲線、A0maxは、フォーカスオフセット学習手段321によって学習される振幅値であって、振幅特性曲線A上の最大値すなわち第1の記録層(L0層)によるプッシュプル信号振幅の最大値、FA0は、フォーカスオフセット学習手段321によって学習されるフォーカスオフセットであって、振幅特性曲線A上においてプッシュプル信号振幅が最大となるときのフォーカスオフセットすなわちプッシュプル信号から学習した第1の記録層(L0層)の最適フォーカスオフセット、Aは、第2の記録層(L1層)の案内溝からの反射光により再生信号処理部10から出力されるプッシュプル信号の振幅特性曲線、A1maxは、フォーカスオフセット学習手段321によって学習される振幅値であって、振幅特性曲線A上の最大値すなわち第2の記録層(L1層)によるプッシュプル信号振幅の最大値、FA1は、フォーカスオフセット学習手段321によって学習されるフォーカスオフセットであって、振幅特性曲線A上においてプッシュプル信号振幅が最大となるときのフォーカスオフセットすなわちプッシュプル信号から学習した第2の記録層(L1層)の最適フォーカスオフセット、Aは、第3の記録層(L2層)の案内溝からの反射光により再生信号処理部10から出力されるプッシュプル信号の振幅特性曲線、A2maxは、フォーカスオフセット学習手段321によって学習される振幅値であって、振幅特性曲線A上の最大値すなわち第3の記録層(L2層)によるプッシュプル信号振幅の最大値、FA2は、フォーカスオフセット学習手段321によって学習されるフォーカスオフセットであって、振幅特性曲線A上においてプッシュプル信号振幅が最大となるときのフォーカスオフセットすなわちプッシュプル信号から学習した第3の記録層(L2層)の最適フォーカスオフセットである。
【0045】
また、図7において、Qは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記フォーカスオフセット(最適フォーカスオフセット)FA0、FA1に基づき、フォーカスオフセットFA0との差が、光学系5の特性に対応した値となるように、前述の数2を用いて演算し設定したフォーカスオフセットの位置、すなわち光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA0側に重み付けされた(=フォーカスオフセットFA1との差よりもフォーカスオフセットFA0との差を小さくされた)フォーカスオフセットの位置、FQ0は、該位置Qに対応するフォーカスオフセット、Q1aは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記フォーカスオフセットFA0、FA1に基づき、フォーカスオフセットFA1との差が光学系5の特性に対応した値となるように、前述の数3を用いて演算したフォーカスオフセットの位置、すなわち光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA1側に重み付けされた(=フォーカスオフセットFA0との差よりもフォーカスオフセットFA1との差を小さくされた)フォーカスオフセットの位置、FQ1aは、該位置Q1aに対応するフォーカスオフセット、Q1bは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記フォーカスオフセットFA1、FA2に基づき、フォーカスオフセットFA1との差が光学系5の特性に対応した値となるように、前述の数2を用いて演算したフォーカスオフセットの位置、すなわち、光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA1側に重み付けされた(=フォーカスオフセットFA2との差よりもフォーカスオフセットFA1との差を小さくされた)フォーカスオフセットの位置、FQ1bは、該位置Q1bに対応するフォーカスオフセット、Qは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記フォーカスオフセットFA1、FA2に基づき、フォーカスオフセットFA2との差が光学系5の特性に対応した値となるように、前述の数3を用いて演算し設定したフォーカスオフセットの位置、すなわち光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA2側に重み付けされた(=フォーカスオフセットFA1との差よりもフォーカスオフセットFA2との差を小さくされた)フォーカスオフセットの位置、FQ2は、該位置Qに対応するフォーカスオフセット、Q1cは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が演算し設定した上記フォーカスオフセットFQ1a、FQ1bの平均値のフォーカスオフセットの位置、FQ1cは、該位置Q1cに対応するフォーカスオフセットである。なお、図7においては、横軸上で、第1の記録層(L0層)におけるフォーカスオフセットF=0の位置と、第2の記録層(L1層)におけるフォーカスオフセットF=0の位置と、第3の記録層(L2層)におけるフォーカスオフセットF=0の位置とを重ねた状態にしている。
【0046】
図8は、図7のフォーカスオフセット処理の動作フロー図である。
図8において、
(1)制御部としてのシスコン30は、光ディスク装置1aを、トラッキング制御オフ(OFF)、フォーカス制御オン(ON)の状態にする(ステップS801)。
(2)光ディスク2内において互いに隣接する記録層のうちの第1の記録層(L0層)に、光学系5からレーザ光が照射され、フォーカスオフセット学習手段321は、再生信号処理部10から出力されたプッシュプル信号の振幅が最大となるときのフォーカスオフセットFA0を、第1の記録層(L0層)の最適フォーカスオフセットとして学習(検出)する(ステップS802)。該学習された最適フォーカスオフセットFA0はメモリ40に格納される。
(3)光ディスク2内において互いに隣接する記録層のうちの第2の記録層(L1層)に、光学系5からレーザ光が照射され、フォーカスオフセット学習手段321は、再生信号処理部10から出力されたプッシュプル信号の振幅が最大となるときのフォーカスオフセットFA1を、第2の記録層(L1層)の最適フォーカスオフセットとして学習(検出)する(ステップS803)。該学習された最適フォーカスオフセットFA1はメモリ40に格納される。
(4)光ディスク2内の第3の記録層(L2層)に、光学系5からレーザ光が照射され、フォーカスオフセット学習手段321は、再生信号処理部10から出力されたプッシュプル信号の振幅が最大となるときのフォーカスオフセットFA2を、第3の記録層(L2層)の最適フォーカスオフセットとして学習(検出)する(ステップS804)。該学習された最適フォーカスオフセットFA2はメモリ40に格納される。
(5)フォーカスオフセット演算・設定手段322は、上記フォーカスオフセット学習手段321が学習した最適フォーカスオフセットFA0、FA1に基づき、第1の記録層(L0層)における情報の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ0を演算し設定する(ステップS805)。フォーカスオフセット演算・設定手段322は、該フォーカスオフセットFQ0を、数2により、光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA0側に重み付けした(=フォーカスオフセットFA1との差よりもフォーカスオフセットFA0との差を小さくした)フォーカスオフセットとして演算する。設定された該フォーカスオフセットFQ0はメモリ40に格納される。
【0047】
(6)フォーカスオフセット演算・設定手段322は、上記学習された最適フォーカスオフセットFA0、FA1に基づき、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ1aを演算する(ステップS806)。フォーカスオフセット演算・設定手段322は、該フォーカスオフセットFQ1aを、数3により、光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA1側に重み付けした(=フォーカスオフセットFA0との差よりもフォーカスオフセットFA1との差を小さくした)フォーカスオフセットとして演算する。演算された該フォーカスオフセットFQ1aはメモリ40に格納される。
(7)フォーカスオフセット演算・設定手段322は、上記学習された最適フォーカスオフセットFA1、FA2に基づき、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ1bを演算する(ステップS807)。フォーカスオフセット演算・設定手段322は、該フォーカスオフセットFQ1bを、数2により、光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA1側に重み付けした(=フォーカスオフセットFA2との差よりもフォーカスオフセットFA1との差を小さくした)フォーカスオフセットとして演算する。ただし、この演算では、数2において、「FA0」は「FA1」に置き換えられ、「FA1」は「FA2」に置き換えられて、演算が行われる。演算された該フォーカスオフセットFQ1bはメモリ40に格納される。
(8)フォーカスオフセット演算・設定手段322は、上記学習された最適フォーカスオフセットFA1、FA2に基づき、第3の記録層(L2層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ2を演算する(ステップS808)。フォーカスオフセット演算・設定手段322は、該フォーカスオフセットFQ2を、数3により、光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA2側に重み付けした(=フォーカスオフセットFA1との差よりもフォーカスオフセットFA2との差を小さくした)フォーカスオフセットとして演算する。ただし、この演算では、数3において、「FA0」は「FA1」に置き換えられ、「FA1」は「FA2」に置き換えられて、演算が行われる。設定された該フォーカスオフセットFQ2はメモリ40に格納される。
【0048】
(9)フォーカスオフセット演算・設定手段322は、上記フォーカスオフセットFQ1a、FQ1bに基づき、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ1cを、フォーカスオフセットFQ1a、FQ1bの平均値として演算し設定する(ステップS809)。設定された該フォーカスオフセットFQ1cはメモリ40に格納される。
(10)シスコン30は、光ディスク装置1aに、上記設定したフォーカスオフセットFQ0、FQ1c、FQ2による光ディスク2に対する情報の記録または再生動作を開始させる(ステップS810)。光ディスク装置1aは、設定されたフォーカスオフセットFQ0により、第1の記録層(L0層)に対する情報の記録または再生を行い、設定されたフォーカスオフセットFQ1cにより、第2の記録層(L1層)に対する情報の記録または再生を行い、設定されたフォーカスオフセットFQ2により、第3の記録層(L2層)に対する情報の記録または再生を行う。
【0049】
なお、上記図7、図8におけるフォーカスオフセットの学習及び演算・設定においては、フォーカスオフセット演算・設定手段322は、第2の記録層(L1層)に対しては、フォーカスオフセットFQ1a、FQ1bの平均値としてのフォーカスオフセットFQ1cを演算して設定したが、この他、これらフォーカスオフセットFQ1a、FQ1bとの差が光学系5の特性に対応した値となるフォーカスオフセットを演算して設定してもよい。また、上記図7、図8におけるフォーカスオフセットの学習及び演算・設定においては、処理順序を、第1の記録層(L0層)についての処理、第2の記録層(L1層)についての処理、第2の記録層(L1層)についての処理とされているが、処理順序はこれに限定されないものとする。
【0050】
光ディスク2に対する上記フォーカスオフセット処理は、フォーカスオフセット学習手段321及びフォーカスオフセット演算・設定手段322がそれぞれ、メモリ40に格納されたプログラムに従って上記ステップS801〜ステップS809の一連の動作手順を実行することにより行われる。
【0051】
図9は、光ディスク2が3層以上の記録層を有し、光ディスク装置1aが該光ディスク2に対して、上記図7、図8の場合とは異なるフォーカスオフセット処理をする場合の説明図である。フォーカスオフセット学習手段321におけるフォーカスオフセットの学習はやはり、プッシュプル信号で行うものとする。図9において、横軸にはフォーカスオフセットFをとり、縦軸にはプッシュプル信号振幅Aをとっている。
【0052】
図9において、Aは、第1の記録層(L0層)の案内溝からの反射光により再生信号処理部10から出力されるプッシュプル信号の振幅特性曲線、A0maxは、フォーカスオフセット学習手段321によって学習される振幅値であって、振幅特性曲線A上の最大値すなわち第1の記録層(L0層)によるプッシュプル信号振幅の最大値、FA0は、フォーカスオフセット学習手段321によって学習されるフォーカスオフセットであって、振幅特性曲線A上においてプッシュプル信号振幅が最大となるときのフォーカスオフセットすなわちプッシュプル信号から学習した第1の記録層(L0層)の最適フォーカスオフセット、Aは、第2の記録層(L1層)の案内溝からの反射光により再生信号処理部10から出力されるプッシュプル信号の振幅特性曲線、A1maxは、フォーカスオフセット学習手段321によって学習される振幅値であって、振幅特性曲線A上の最大値すなわち第2の記録層(L1層)によるプッシュプル信号振幅の最大値、FA1は、フォーカスオフセット学習手段321によって学習されるフォーカスオフセットであって、振幅特性曲線A上においてプッシュプル信号振幅が最大となるときのフォーカスオフセットすなわちプッシュプル信号から学習した第2の記録層(L1層)の最適フォーカスオフセット、Aは、第3の記録層(L2層)の案内溝からの反射光により再生信号処理部10から出力されるプッシュプル信号の振幅特性曲線、A2maxは、フォーカスオフセット学習手段321によって学習される振幅値であって、振幅特性曲線A上の最大値すなわち第3の記録層(L2層)によるプッシュプル信号振幅の最大値、FA2は、フォーカスオフセット学習手段321によって学習されるフォーカスオフセットであって、振幅特性曲線A上においてプッシュプル信号振幅が最大となるときのフォーカスオフセットすなわちプッシュプル信号から学習した第3の記録層(L2層)の最適フォーカスオフセットである。
【0053】
また、図9において、Qは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記フォーカスオフセット(最適フォーカスオフセット)FA0、FA1に基づき、フォーカスオフセットFA0との差が光学系5の特性に対応した値となるように、前述の数2を用いて演算し設定したフォーカスオフセットの位置、すなわち光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA0側に重み付けされた(=フォーカスオフセットFA1との差よりもフォーカスオフセットFA0との差を小さくされた)フォーカスオフセットの位置、FQ0は、該位置Qに対応するフォーカスオフセット、Q1aは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記フォーカスオフセットFA0、FA1に基づき、フォーカスオフセットFA1との差が光学系5の特性に対応した値となるように、前述の数3を用いて演算したフォーカスオフセットの位置、すなわち光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA1側に重み付けした(=フォーカスオフセットFA0との差よりもフォーカスオフセットFA1との差を小さくした)フォーカスオフセットの位置、FQ1aは、該位置Q1aに対応するフォーカスオフセット、Q1bは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記フォーカスオフセットFA1、FA2に基づき、フォーカスオフセットFA1との差が光学系5の特性に対応した値となるように、前述の数2を用いて演算し設定したフォーカスオフセットの位置、すなわち光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA1側に重み付けした(=フォーカスオフセットFA2との差よりもフォーカスオフセットFA1との差を小さくした)フォーカスオフセットの位置、FQ1bは、該位置Q1bに対応するフォーカスオフセット、Qは、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、上記フォーカスオフセットFA1、FA2に基づき、フォーカスオフセットFA2との差が光学系5の特性に対応した値となるように、前述の数3を用いて演算し設定したフォーカスオフセットの位置、すなわち光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA2側に重み付けした(=フォーカスオフセットFA1との差よりもフォーカスオフセットFA2との差を小さくした)フォーカスオフセットの位置、FQ2は、該位置Qに対応するフォーカスオフセットである。なお、図9においても、図7の場合と同様、横軸上で、第1の記録層(L0層)におけるフォーカスオフセットF=0の位置と、第2の記録層(L1層)におけるフォーカスオフセットF=0の位置と、第3の記録層(L2層)におけるフォーカスオフセットF=0の位置とを重ねている。
【0054】
図10は、図9のフォーカスオフセット処理の動作フロー図である。
図10において、
(1)制御部としてのシスコン30は、光ディスク装置1aを、トラッキング制御オフ(OFF)、フォーカス制御オン(ON)の状態にする(ステップS1001)。
(2)光ディスク2内において互いに隣接する記録層のうちの第1の記録層(L0層)に、光学系5からレーザ光が照射され、フォーカスオフセット学習手段321は、再生信号処理部10から出力されたプッシュプル信号の振幅が最大となるときのフォーカスオフセットFA0を、第1の記録層(L0層)の最適フォーカスオフセットとして学習(検出)する(ステップS1002)。該学習された最適フォーカスオフセットFA0はメモリ40に格納される。
(3)光ディスク2内において互いに隣接する記録層のうちの第2の記録層(L1層)に、光学系5からレーザ光が照射され、フォーカスオフセット学習手段321は、再生信号処理部10から出力されたプッシュプル信号の振幅が最大となるときのフォーカスオフセットFA1を、第2の記録層(L1層)の最適フォーカスオフセットとして学習(検出)する(ステップS1003)。該学習された最適フォーカスオフセットFA1はメモリ40に格納される。
(4)光ディスク2内の第3の記録層(L2層)に、光学系5からレーザ光が照射され、フォーカスオフセット学習手段321は、再生信号処理部10から出力されたプッシュプル信号の振幅が最大となるときのフォーカスオフセットFA2を、第3の記録層(L2層)の最適フォーカスオフセットとして学習(検出)する(ステップS1004)。該学習された最適フォーカスオフセットFA2はメモリ40に格納される。
(5)フォーカスオフセット演算・設定手段322は、上記フォーカスオフセット学習手段321が学習した最適フォーカスオフセットFA0、FA1に基づき、第1の記録層(L0層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ0を演算し設定する(ステップS1005)。フォーカスオフセット演算・設定手段322は、該フォーカスオフセットFQ0を、例えば数2により、光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA0側に重み付けされた(=フォーカスオフセットFA1との差よりもフォーカスオフセットFA0との差を小さくされた)フォーカスオフセットとして演算する。設定された該フォーカスオフセットFQ0はメモリ40に格納される。
【0055】
(6)フォーカスオフセット演算・設定手段322は、上記学習された最適フォーカスオフセットFA0、FA1に基づきフォーカスオフセットFQ1aを、例えば数3により、光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA1側に重み付けされた(=フォーカスオフセットFA0との差よりもフォーカスオフセットFA1との差を小さくされた)フォーカスオフセットとして演算するとともに、上記学習された最適フォーカスオフセットFA1、FA2に基づき、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ1bを演算して設定する(ステップS1006)。フォーカスオフセット演算・設定手段322は、該フォーカスオフセットFQ1bを、例えば数2により、光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA1側に重み付けされた(=フォーカスオフセットFA2との差よりもフォーカスオフセットFA1との差を小さくされた)フォーカスオフセットとして演算する。ただし、この演算では、数2において、「FA0」は「FA1」に置き換えられ、「FA1」は「FA2」に置き換えられて、演算が行われる。演算された該フォーカスオフセットFQ1bはメモリ40に格納される。なお、上記演算されたフォーカスオフセットFQ1aは、フォーカスオフセットFQ1bよりもレーザ光入射側(対物レンズ5aが配された側)に位置するため、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットとしては採用されない。このため、該フォーカスオフセットFQ1aはメモリ40に格納されない。
【0056】
(7)フォーカスオフセット演算・設定手段322は、上記学習された最適フォーカスオフセットFA1、FA2に基づき、第3の記録層(L2層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ2を演算する(ステップS1007)。フォーカスオフセット演算・設定手段322は、該フォーカスオフセットFQ2を、例えば数3により、光学系5の特性に対応してフォーカスオフセットFA2側に重み付けされた(=フォーカスオフセットFA1との差よりもフォーカスオフセットFA2との差を小さくされた)フォーカスオフセットとして演算する。ただし、この演算では、数3において、「FA0」は「FA1」に置き換えられ、「FA1」は「FA2」に置き換えられて、演算が行われる。設定された該フォーカスオフセットFQ2はメモリ40に格納される。
(8)シスコン30は、光ディスク装置1aに、上記設定したフォーカスオフセットFQ0、FQ1b、FQ2による光ディスク2に対する記録または再生動作を開始させる(ステップS1008)。光ディスク装置1aは、設定されたフォーカスオフセットFQ0により、第1の記録層(L0層)の記録または再生を行い、設定されたフォーカスオフセットFQ1bにより、第2の記録層(L1層)の記録または再生を行い、設定されたフォーカスオフセットFQ2により、第3の記録層(L2層)の記録または再生を行う。
【0057】
なお、上記図9、図10におけるフォーカスオフセットの学習及び演算・設定においては、処理順序が、第1の記録層(L0層)についての処理、第2の記録層(L1層)についての処理、第2の記録層(L1層)についての処理の順とされているが、処理順序はこれに限定されないものとする。
【0058】
光ディスク2に対する上記フォーカスオフセット処理は、フォーカスオフセット学習手段321及びフォーカスオフセット演算・設定手段322がそれぞれ、メモリ40に格納されたプログラムに従って上記ステップS1001〜ステップS1007の一連の動作の手順を実行することにより行われる。
【0059】
本発明の第1の実施例としての光ディスク装置1aによれば、プッシュプル信号またはウォブル信号の最大振幅の学習結果から直接に、互いに隣接する記録層における記録または再生時用のフォーカスオフセットを演算・設定することができるため、光ディスク2の複数の記録層についてのフォーカスオフセット処理時間を短くすることができ、記録または再生動作を短時間で開始することができる。また、プッシュプル信号やウォブル信号など記録面の案内溝の溝情報を利用してフォーカスオフセットの学習を行うため、記録済み状態の記録層(再生専用ディスクも含む)や未記録状態の記録層においてもフォーカスオフセットの学習を行うことができ、フォーカスオフセット処理の精度の向上を図ることができる。
【0060】
なお、上記実施例では、フォーカスオフセット演算・設定手段322は、光ディスク2内において互いに隣接する第1の記録層(L0層)、第2の記録層(L1層)に対して共通のフォーカスオフセットを、記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算・設定するとき、フォーカスオフセット学習手段321が学習したフォーカスオフセットFA0、FA1の平均値(FA0+FA1)/2を数1により演算して設定するとしたが、この他、例えば光学系5の特性に対応して、該平均値以外のフォーカスオフセットすなわちそれぞれの記録層の最適フォーカスオフセットFA0、FA1との差が異なる共通のフォーカスオフセットを、(m×FA0+n×FA1)/(m+n)により演算して設定してもよい。ただし、m、nはそれぞれ、光学系5の特性に対応して決定される係数である。また、図7に示した実施例においては、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ1cを、フォーカスオフセットFQ1a、FQ1bの平均値として演算し設定する(ステップS809)としたが、この他、例えば光学系5の特性に対応して、このフォーカスオフセットFQ1cを、フォーカスオフセットFQ1a、FQ1bとの差が異なる共通のフォーカスオフセットとして演算し設定するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施例では、光ディスク2が3層以上の記録層を有する場合において、光ディスク装置1aが該光ディスク2の少なくとも第1、第2、第3の記録層に対して実施するフォーカスオフセット処理の例につき述べたが、光ディスク装置1aはさらに、光ディスク2のこれ以外の記録層に対しても、基本的にはこれと同様のフォーカスオフセット処理を行うものとする。すなわち、互いに隣接する記録層について、該記録層の記録面に形成された案内溝からの反射光に基づく信号から、それぞれの記録層の該案内溝に対する光学系のフォーカスオフセットを学習し、該学習結果に基づき、記録または再生時用のフォーカスオフセットを演算して設定する。
【0062】
図11〜図13は、本発明の第2の実施例としての光ディスク装置の説明図である。本第2の実施例は、記録または再生時用の光学系のフォーカスオフセットを、装置内の温度変化に対応して演算・設定する構成とした場合である。図11は、本発明の第2の実施例としての光ディスク装置の構成図、図12は、光ディスク装置の光学系のフォーカスオフセットの温度特性例を示す図、図13は、図11の光ディスク装置により図12の温度特性を改善したときの状態を示す図である。
【0063】
なお、以下の説明において用いる「記録層」は、上記第1の実施例の場合と同様、情報が記録される層(記録層)であって、既に情報が記録されている記録層(再生専用ディスクの記録層も、記録可能ディスクの記録層も含む)も、また、未だ情報が記録されていないがいずれ情報が記録される記録層(この場合は記録可能ディスクの記録層)も含む意味のものとする。
【0064】
図11において、1bは、本発明の実施例としての光ディスク装置、2は、複数の記録層を有するDVD+/−R DLなどの光ディスク、3は、光ディスク2を回転駆動するディスクモータ、4は光ピックアップ、5は、光ピックアップ4内にあって、対物レンズ(図示なし)を含んで構成され、レーザ光を集光し、該集光したレーザ光を光ディスク2の記録面に照射する光学系、6は、光ピックアップ4内にあって記録または再生のために所定の強さのレーザ光を発生するレーザダイオード、7は、光ピックアップ4内にあって、レーザダイオード6を駆動するレーザ駆動回路、8は、光ピックアップ4内にあって、光学系5を介し光ディスク2の記録面(ディスク面)からの反射光を受光して電気信号(再生信号)に変換して出力する受光部、9は、光学系5中の対物レンズ(図示なし)の位置や姿勢を変化させるアクチュエータ、20は、光ディスク装置1b内の温度を検出する温度検出手段としての温度センサ、10は、受光部8から出力された再生信号を、RF信号として増幅や復調などを行って信号処理する再生信号処理部、11は、直線状のガイド部材(図示なし)やリードスクリュー部材(図示なし)などを備えて構成され、光ピックアップ4を光ディスク2の略半径方向に移動させる移動・案内機構部、12は、該移動・案内機構部11内にあってリードスクリュー部材(図示なし)を回転駆動するスライドモータ、14は、アクチュエータ9を駆動する駆動信号を生成するフォーカス/トラッキング制御部、15は、ディスクモータ3やスライドモータ12を回転駆動するモータ駆動回路、30は、当該光ディスク装置1a全体を制御する制御部としてのシスコン、31は、シスコン30内にあってモータ駆動回路15を制御するモータ制御部、32は、シスコン30内のマイコン、321は、マイコン32内に構成され、再生信号処理部10から出力された信号から上記光学系5の最適フォーカスオフセット(最適な範囲にあるフォーカスオフセットすなわち本発明を有効に構成するに足る適正範囲にあるフォーカスオフセットを意味するものとする。以下の説明中における「最適フォーカスオフセット」は全てこの意味であるとする)を学習(検出)する第1の制御手段としてのフォーカスオフセット学習手段、322は、マイコン32内に構成され、上記フォーカスオフセット学習手段321が学習した最適フォーカスオフセット及び上記温度センサ20が検出した温度情報に基づき、記録または再生時用の上記光学系5のフォーカスオフセットを演算し設定する第2の制御手段としてのフォーカスオフセット演算・設定手段である。上記第1の制御手段としてのフォーカスオフセット学習手段321は、上記最適フォーカスオフセットの学習時、再生信号処理部10から出力された信号すなわち、光ディスク2の複数の記録層のうち、互いに隣接する記録層のそれぞれの記録面に形成された案内溝からの反射光に基づいた信号から、それぞれの該案内溝に対する光学系5の最適フォーカスオフセットを学習(検出)する。温度センサ20は、光ピックアップ4内においてレーザダイオード6の近傍に配され、レーザダイオード6の周辺の温度を光ディスク装置1b内の温度として検出する。
【0065】
また、図11において、33は、レーザダイオード6を駆動するための記録用信号を生成し出力する記録用信号生成部、40は、光学系5の特性情報や、フォーカスオフセット学習手段321が学習した隣接するそれぞれの記録層の最適フォーカスオフセットの情報や、フォーカスオフセット演算・設定手段322が演算・設定した記録または再生時用の上記光学系5のフォーカスオフセットの情報や、フォーカスオフセット学習手段321に上記学習動作の一連の手順を実行させるプログラムや、上記フォーカスオフセット演算・設定手段322に上記演算・設定動作の一連の手順を実行させるプログラムなどが格納されるメモリである。光学系5の特性情報や、上記学習動作実行用のプログラムや、上記演算・設定動作実行用のプログラムは、フォーカスオフセット学習手段321による最適フォーカスオフセットの学習動作前に予め、メモリ40に格納されているものとする。
フォーカスオフセット処理を行うとき、再生信号処理部10からは、上記最適フォーカスオフセットの学習時、互いに隣接する複数の記録層の記録面に形成された案内溝からの反射光に基づく信号として、プッシュプル信号またはウォブル信号が出力される。
【0066】
第1の制御手段としてのフォーカスオフセット学習手段321は、最適フォーカスオフセットの学習時、上記再生信号処理部10から出力されたプッシュプル信号またはウォブル信号を用い、互いに隣接する複数の記録層のそれぞれの案内溝に対するそれぞれの最適フォーカスオフセットとして、上記プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大(実質的な最大の範囲にある値という意味であって、真の最大値を含み例えば真の最大値の95%以上となる範囲にある値を意味するものとする。以下、プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅における「最大」または「最大値」とはこの意味であるとする)となるフォーカスオフセットを学習(検出)する構成を有する。プッシュプル信号により最適フォーカスオフセットを学習する場合は、トラッキング制御はオフ(OFF)状態とされ、ウォブル信号により最適フォーカスオフセットを学習する場合は、トラッキング制御はオン(ON)状態とされる。フォーカスオフセット学習手段321は、メモリ40から読み出したプログラムに従って、最適フォーカスオフセット学習動作における所定の手順を実行する。
【0067】
第2の制御手段としてのフォーカスオフセット演算・設定手段322は、互いに隣接する複数の記録層に情報を記録または再生するときのためのフォーカスオフセットを演算、設定する時、上記温度センサ20が検出した温度に対応して、該複数の記録層のそれぞれの最適フォーカスオフセットすなわち上記プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大となるフォーカスオフセットの平均値(平均のフォーカスオフセット)を演算し該演算した平均値を、記録または再生時における該両記録層に共通のフォーカスオフセットとして設定したり、または、フォーカスオフセット学習手段321が学習したそれぞれの記録層の最適フォーカスオフセットとの差が光学系5の特性に対応した値となるフォーカスオフセットすなわち光学系5の特性に対応して記録層毎に重み付けしたフォーカスオフセットを演算し該演算したフォーカスオフセットを上記互いに隣接する複数の記録層のそれぞれにおける記録または再生時用のフォーカスオフセットとして該記録層毎に個々に設定したりする。
【0068】
フォーカスオフセット学習手段321による学習結果を用いて、記録または再生時用の上記平均のフォーカスオフセットを演算して設定するとき、フォーカスオフセット演算・設定手段322は以下のようにして該フォーカスオフセットの設定を行う。すなわち、例えば、レーザ光入射側(光学系5が配された側)から第1の記録層(L0層)、第2の記録層(L1層)が配されているときであって、上記温度センサ20が検出した温度が相対的に低温(=第1の温度)のとき、例えば、該温度(第1の温度)が0℃から25℃の範囲内の温度のとき、該第1の記録層(L0層)に対するフォーカスオフセット学習手段321による学習により、プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大となるフォーカスオフセットとしてFA0が得られ、また、該第2の記録層(L1層)に対する学習によっては、プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大となるフォーカスオフセットとしてFA1が得られたとき、第1の記録層(L0層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ0及び第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ1を、
Q0=FQ1=(FA0+FA1)/2 (数4)
により演算した値を、該第1の記録層(L0層)及び該第2の記録層(L1層)に共通のフォーカスオフセット(記録または再生時用のフォーカスオフセット)FQC(図3)として設定する。
【0069】
また、上記温度センサ20が検出した温度が相対的に高温(=第2の温度)のとき例えば、該温度(第2の温度)が50℃から65℃の範囲内の温度のときには、フォーカスオフセット演算・設定手段322は、フォーカスオフセット学習手段321による学習結果を用いてかつ光学系5の特性に対応して隣接記録層毎に個々に記録または再生時用のフォーカスオフセットを演算して設定する。すなわち、例えば、レーザ光入射側から第1の記録層(L0層)、第2の記録層(L1層)の順で記録層が配されているときであって、該第1の記録層(L0層)に対するフォーカスオフセット学習手段321による学習により、プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大となるフォーカスオフセットとしてFA0が得られ、また、該第2の記録層(L1層)に対する学習によっては、プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大となるフォーカスオフセットとしてFA1が得られたとき、第1の記録層(L0層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ0としては、
Q0=(3×FA0+FA1)/4 (数2)
により演算した値を設定し、
また、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ1としては、
Q1=(FA0+3×FA1)/4 (数3)
により演算した値を設定する。
【0070】
フォーカスオフセット演算・設定手段322は、メモリ40から読み出したプログラムに従い、記録または再生動作用の上記光学系5の上記フォーカスオフセットを演算・設定する動作手順を実行する。
【0071】
上記構成の光ディスク装置1bにおいて、複数の記録層を有する光ディスク2に対して情報の記録または再生を行うとき、例えば、光ディスク2が、装置内にローディングされ、所定速度で回転された状態において、光ピックアップ4内のレーザダイオード6が発生したレーザ光が、光学系5を通して光ディスク2の複数の記録層の記録面に照射され、複数の記録層に対するフォーカスオフセット処理が行われる。フォーカスオフセット処理は、互いに隣接する記録層のそれぞれについて、該各記録層に形成された案内溝の溝情報(溝の構造や状態を示す情報)を利用して行われる。すなわち、互いに隣接する記録層のそれぞれについて、記録層の記録面に形成された案内溝からの反射光を受光部8で受けて電気信号(再生信号)に変換し、再生信号処理部10からプッシュプル信号またはウォブル信号として出力する。フォーカスオフセット処理時、再生信号処理部10からプッシュプル信号が出力される構成とした場合は、光ディスク装置1bにおいて、トラッキング制御は行われず、フォーカス/トラッキング制御部14からはフォーカス制御信号のみが出力される。一方、再生信号処理部10からウォブル信号を出力する構成とした場合は、トラッキング制御も行われ、フォーカス/トラッキング制御部14からはフォーカス制御信号とトラッキング制御信号が出力される。互いに隣接する各記録層の案内溝の溝情報として再生信号処理部10から出力された該プッシュプル信号またはウォブル信号は、マイコン32内のフォーカスオフセット学習手段321に入力される。フォーカスオフセット学習手段321は、互いに隣接する記録層のそれぞれについて、該入力されたプッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大となるときのフォーカスオフセットを最適フォーカスオフセットとして学習(検出)する。マイコン32内のフォーカスオフセット演算・設定手段322は、温度センサ20からの温度情報に対応して、上記のように、フォーカスオフセット学習手段321が学習した互いに隣接する記録層それぞれの最適フォーカスオフセットの平均値、または、該学習された各最適フォーカスオフセットとの差が、光学系5の特性に対応した値となるフォーカスオフセットを演算し、記録または再生時用の上記光学系のフォーカスオフセットとして設定する。
【0072】
上記第2の実施例では、上記温度センサ20が検出した温度が相対的に高温(=第2の温度)のとき、フォーカスオフセット演算・設定手段322は、光ディスク2内の第1の記録層(L0層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ0は、数2により、フォーカスオフセットFA0側に重み付けした(=フォーカスオフセットFA1との差よりもフォーカスオフセットFA0との差を小さくした)フォーカスオフセットとして演算して設定し、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ1は、数3により、フォーカスオフセットFA1側に重み付けした(=フォーカスオフセットFA0との差よりもフォーカスオフセットFA1との差を小さくした)フォーカスオフセットとして演算して設定するとしたが、この他、例えば光学系5の特性に対応して、それぞれの記録層の最適フォーカスオフセットFA0、FA1との差が異なる共通のフォーカスオフセットを、(m×FA0+n×FA1)/(m+n)により演算して設定してもよい。ただし、m、nはそれぞれ、光学系5の特性に対応して決定される係数である。
以下、説明中で用いる図11の光ディスク装置1bの構成要素には、図11の場合と同じ符号を付して用いるとする。
【0073】
図12は、光ディスク装置1bの光学系5のフォーカスオフセットの温度特性の実験結果を示す図であり、フォーカスオフセット演算・設定手段322が温度センサ20からの温度情報に基づいた処理動作をしていない場合(対温度非対応の場合)である。
【0074】
図12において、横軸は、センサ20の位置で測定される光ディスク装置1bの装置内温度t(℃)、縦軸は、記録または再生時用の光学系5のフォーカスオフセットF(×0.05μm)である。図12において、FQ0は、対温度非対応の場合の光ディスク2の第1の記録層(L0層)の記録または再生時用のフォーカスオフセット、FQ1は、対温度非対応の場合の光ディスク2の第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットであり、FQ0は、常温(25℃)時に、フォーカスオフセット学習手段321が学習した最適フォーカスオフセットに基づき、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、数2によって演算・設定し、FQ1は、常温(25℃)時に、フォーカスオフセット学習手段321が学習した最適フォーカスオフセットに基づき、フォーカスオフセット演算・設定手段322が、数3によって演算・設定したものである。この結果、装置内温度tが、常温(25℃)から低下して0℃となった場合には、フォーカスオフセットFは、FQ0、FQ1とも増大し、特にFQ0の場合は、基準値(F=0)からのずれ量が大きく、約4×0.05μmにもなる。また、装置内温度tが、常温(25℃)から上昇して55℃となった場合には、フォーカスオフセットFは、FQ0は減少し、FQ1は増大して、FQ0、FQ1とも基準値(F=0)に一層近づくとともに、FQ0、FQ1間の差も縮減される。
【0075】
図13は、光ディスク装置1bの光学系5のフォーカスオフセットの温度特性の実験結果を示す図であり、フォーカスオフセット演算・設定手段322が温度センサ20からの温度情報に基づいた処理動作をしている場合(対温度対応の場合)である。
【0076】
図13において、横軸及び縦軸は、図12の場合と同じである。図13において、FQ0は、対温度対応の場合の光ディスク2の第1の記録層(L0層)の記録または再生時用のフォーカスオフセット、FQ1は、対温度対応の場合の光ディスク2の第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットである。フォーカスオフセット演算・設定手段322は、温度センサ20からの温度情報に基づいた処理動作として、装置内温度tが常温を含む相対的に低温(=第1の温度)のとき、例えば0℃〜25℃ときには、フォーカスオフセット演算・設定手段322は、光ディスク2内の第1の記録層(L0層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ0、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ1を、数4により演算し、該演算した値を、該第1の記録層(L0層)及び該第2の記録層(L1層)に共通のフォーカスオフセット(記録または再生時用のフォーカスオフセット)FQC(図3)として設定する。また、装置内温度tが相対的に高温(=第2の温度)のとき、例えば55℃ときには、フォーカスオフセット演算・設定手段322は、光ディスク2内の第1の記録層(L0層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ0は、数2により、フォーカスオフセットFA0側に重み付けしたフォーカスオフセットとして演算して設定し、第2の記録層(L1層)の記録または再生時用のフォーカスオフセットFQ1は、数3により、フォーカスオフセットFA1側に重み付けしたフォーカスオフセットとして演算して設定する。この結果、装置内温度tが、常温(25℃)から低下して0℃となった場合でも、フォーカスオフセットFは、FQ0、FQ1とも増大するものの、基準値(F=0)からのずれ量は小さく約2×0.05μmとなる。また、装置内温度tが、常温(25℃)から上昇して55℃となった場合には、フォーカスオフセットFは、常温(25℃)時に比べて、FQ0は増大、FQ1は不変で、FQ0、FQ1とも基準値(F=0)からのずれ量は小さく約0〜1×0.05μmとなる。従って、装置内温度tが低温側に変化した場合にも、また、高温側に変化した場合にも、FQ0、FQ1とも、基準値(F=0)からのずれ量を、約2×0.05μm以内にすることが可能となり、装置内温度tの、フォーカスオフセットFへの影響を抑えることができる。なお、光学系5のフォーカスオフセットの温度特性の要因としては、光学系5自体の温度特性、光学系5の支持部の温度特性、光ディスク2の温度特性、光ディスク2の支持部の温度特性等が考えられるが、未確認である。
【0077】
なお、上記説明では、上記第1の温度の範囲を0℃〜25℃、上記第2の温度の範囲を50℃〜65℃としたが、上記光ディスク装置1bにおいては、該第1の温度の温度範囲や該第2の温度の温度範囲は、光学系5のフォーカスオフセットの温度特性に対応して予め設定されるものとする。
【0078】
本発明の第2の実施例としての光ディスク装置1bによれば、プッシュプル信号またはウォブル信号の最大振幅の学習結果から直接に、互いに隣接する記録層における記録または再生時用のフォーカスオフセットを演算・設定することができるため、光ディスク2の複数の記録層についてのフォーカスオフセット処理時間を短くすることができ、記録または再生動作を短時間で開始することができる。また、装置内温度の、フォーカスオフセットへの影響を抑えることができる。また、プッシュプル信号やウォブル信号など記録面の案内溝の溝情報を利用してフォーカスオフセットの学習を行うため、記録済み状態の記録層(再生専用ディスクも含む)や未記録状態の記録層においてもフォーカスオフセットの学習を行うことができ、フォーカスオフセット処理の精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施例としての光ディスク装置の構成図である。
【図2】図1の光ディスク装置における光ディスクの複数の記録層の基準面位置と、光ピックアップの光学系の位置の説明図である。
【図3】図1の光ディスク装置におけるフォーカスオフセット学習と、記録または再生時用のフォーカスオフセット設定の説明図である。
【図4】実測データに基づく図1の光ディスク装置におけるフォーカスオフセット学習と、記録または再生時用のフォーカスオフセット設定の説明図である。
【図5】他の実測データに基づく図1の光ディスク装置におけるフォーカスオフセット学習と、記録または再生時用のフォーカスオフセット設定の説明図である。
【図6】図1の光ディスク装置の、光ディスク中の隣接する記録層に対するフォーカスオフセット処理の動作フロー図である。
【図7】図1の光ディスク装置の、記録層が3層以上の光ディスクに対するフォーカスオフセット処理の説明図である。
【図8】図7のフォーカスオフセット処理の動作フロー図である。
【図9】図1の光ディスク装置の、記録層が3層以上の光ディスクに対する他のフォーカスオフセット処理の説明図である。
【図10】図9のフォーカスオフセット処理の動作フロー図である。
【図11】本発明の第2の実施例としての光ディスク装置の構成図である。
【図12】光学系のフォーカスオフセットの温度特性例を示す図である。
【図13】図11の光ディスク装置により図12の温度特性を改善したときの状態を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1a、1b…光ディスク装置、
2…光ディスク、
3…ディスクモータ、
4…光ピックアップ、
5…光学系、
5a…対物レンズ、
6…レーザダイオード、
7…レーザ駆動回路、
8…受光部、
9…アクチュエータ、
10…再生信号処理部、
11…移動・案内機構部、
12…スライドモータ、
14…フォーカス/トラッキング制御部、
15…モータ駆動回路、
20…温度センサ、
30…シスコン、
31…モータ制御部、
32…マイコン、
321…フォーカスオフセット学習手段、
322…フォーカスオフセット演算・設定手段、
33…記録用信号生成部、
40…メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層以上の複数の記録層を有する光ディスクに対して情報の記録または再生が可能な光ディスク装置であって、
レーザ光を集光して上記記録層に照射する光学系と、
上記光ディスクの互いに隣接する記録層であって上記光学系側から第1の記録層、第2の記録層、第3の記録層の順で配されたそれぞれの記録層について、記録層の記録面に形成された案内溝からの反射光に基づく信号から、それぞれの記録層の該案内溝に対する上記光学系のフォーカスオフセットを学習し、上記第1の記録層の記録または再生時用のフォーカスオフセットは、上記学習した第1、第2の記録層のフォーカスオフセットから、該学習した第1の記録層のフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となるフォーカスオフセットを演算し、上記第3の記録層の記録または再生時用のフォーカスオフセットは、上記学習した第2、第3の記録層のフォーカスオフセットから、該学習した第3の記録層のフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となるフォーカスオフセットを演算し、上記第2の記録層の記録または再生時用のフォーカスオフセットは、上記学習した第1、第2及び第3の記録層のフォーカスオフセットの平均値を演算するまたは上記学習した第2、第3の記録層のフォーカスオフセットから、該学習した第2の記録層のフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となるフォーカスオフセットを演算して、それぞれの演算結果を設定する制御部と、
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
複数の記録層を有する光ディスクに対して情報の記録または再生が可能な光ディスク装置であって、
レーザ光を集光して上記記録層に照射する光学系と、
上記光ディスクの互いに隣接する記録層のそれぞれについて、記録層の記録面に形成された案内溝からの反射光に基づく信号から、それぞれの記録層の該案内溝に対する上記光学系のフォーカスオフセットを学習する第1の制御手段と、
上記第1の制御手段が学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットに基づき、記録または再生時用の上記光学系のフォーカスオフセットを演算して設定する第2の制御手段と、
を備え、
上記第2の制御手段は、
上記複数の記録層が、上記光学系側から第1の記録層、第2の記録層、第3の記録層の順で配されているとき、
学習された上記第1の記録層のフォーカスオフセットと学習された上記第2の記録層のフォーカスオフセットとから、該第1の記録層の該学習されたフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となる第1のフォーカスオフセットと、該第2の記録層の該学習されたフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となる第2のフォーカスオフセットとを演算するとともに、
上記学習された上記第2の記録層の上記フォーカスオフセットと上記学習された上記第3の記録層のフォーカスオフセットとから、該第2の記録層の該学習されたフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となる第3のフォーカスオフセットと、該第3の記録層の該学習されたフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となる第4のフォーカスオフセットとを演算し、
さらに、上記演算した第2のフォーカスオフセットと第3のフォーカスオフセットとから、該両フォーカスオフセットの平均値である第5のフォーカスオフセットを演算または該両フォーカスオフセットとの差が、上記光学系の特性に対応した値となる第6のフォーカスオフセットを演算し、
記録または再生時用のフォーカスオフセットとして、上記第1の記録層に対しては上記第1のフォーカスオフセットを設定し、上記第2の記録層に対しては上記第5のフォーカスオフセットまたは上記第6のフォーカスオフセットを設定し、上記第3の記録層に対しては上記第4のフォーカスオフセットを設定する
構成であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
複数の記録層を有する光ディスクに対して情報の記録または再生が可能な光ディスク装置であって、
レーザ光を集光して上記記録層に照射する光学系と、
上記光ディスクの互いに隣接する記録層のそれぞれについて、記録層の記録面に形成された案内溝からの反射光に基づく信号から、それぞれの記録層の該案内溝に対する上記光学系のフォーカスオフセットを学習する第1の制御手段と、
上記第1の制御手段が学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットに基づき、記録または再生時用の上記光学系のフォーカスオフセットを演算して設定する第2の制御手段と、
を備え、
上記光ディスク内で複数の記録層が、上記光学系側から第1の記録層、第2の記録層、第3の記録層の順で配されているとき、
上記第2の制御手段は、
学習された上記第1の記録層のフォーカスオフセットと学習された上記第2の記録層のフォーカスオフセットとから、上記学習された第1の記録層のフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となる第1のフォーカスオフセットを演算し、該演算した第1のフォーカスオフセットを第1の記録層における記録または再生時用のフォーカスオフセットとして設定するとともに、
学習された上記第2の記録層のフォーカスオフセットと学習された上記第3の記録層のフォーカスオフセットとから、上記学習された第2の記録層のフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となる第2のフォーカスオフセットと、上記学習された第3の記録層のフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となる第3のフォーカスオフセットとを演算し、該演算した第2のフォーカスオフセットを第2の記録層における記録または再生時用のフォーカスオフセットとして設定し、該演算した第3のフォーカスオフセットを第3の記録層における記録または再生時用のフォーカスオフセットとして設定する
構成であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
上記第1の制御手段が学習した上記隣接する記録層のうちの第1の記録層のフォーカスオフセットをFA0、第2の記録層のフォーカスオフセットをFA1、第3の記録層のフォーカスオフセットをFA2、上記第2の制御手段が上記第1の記録層の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定するフォーカスオフセットをFQ0、同じく上記第2の記録層の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定するフォーカスオフセットをFQ1c、同じく上記第2の記録層の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定するフォーカスオフセットをFQ2とするとき、
上記第2の制御手段は、FQ0、FQ1c、FQ2を、
Q0=(3×FA0+FA1)/4
Q1c={(FA0+3×FA1)/4+(3×FA1+FA2)/4}/2
Q2=(FA1+3×FA2)/4
により演算して設定する構成である
請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
上記第1の制御手段が学習した上記隣接する記録層のうちの第1の記録層のフォーカスオフセットをFA0、第2の記録層のフォーカスオフセットをFA1、第3の記録層のフォーカスオフセットをFA2、上記第2の制御手段が上記第1の記録層の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定するフォーカスオフセットをFQ0、同じく上記第2の記録層の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定するフォーカスオフセットをFQ1b、同じく上記第2の記録層の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定するフォーカスオフセットをFQ2とするとき、
上記第2の制御手段は、FQ0、FQ1b、FQ2を、
Q0=(3×FA0+FA1)/4
Q1b=(3×FA1+FA2)/4
Q2=(FA1+3×FA2)/4
により演算して設定する構成である
請求項3に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
複数の記録層を有する光ディスクに対して情報の記録または再生が可能な光ディスク装置であって、
レーザ光を集光して上記記録層に照射する光学系と、
当該光ディスク装置内の温度を検出する温度検出手段と、
上記光ディスクの互いに隣接する記録層のそれぞれについて、記録層の記録面に形成された案内溝からの反射光に基づく信号から、それぞれの記録層の該案内溝に対する上記光学系のフォーカスオフセットを学習し、該学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセット及び上記温度検出手段が検出した温度情報に基づき、記録または再生時用の上記光学系のフォーカスオフセットを演算して設定する制御部と、
を備えた構成を特徴とする光ディスク装置。
【請求項7】
複数の記録層を有する光ディスクに対して情報の記録または再生が可能な光ディスク装置であって、
レーザ光を集光して上記記録層に照射する光学系と、
当該光ディスク装置内の温度を検出する温度検出手段と、
上記光ディスクの互いに隣接する記録層のそれぞれについて、記録層の記録面に形成された案内溝からの反射光に基づく信号から、それぞれの記録層の該案内溝に対する上記光学系のフォーカスオフセットを学習する第1の制御手段と、
上記第1の制御手段が学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセット及び上記温度検出手段が検出した温度情報に基づき、記録または再生時用の上記光学系のフォーカスオフセットを演算して設定する第2の制御手段と、
を備えた構成を特徴とする光ディスク装置。
【請求項8】
上記第1の制御手段は、上記反射光に基づく信号として、プッシュプル信号またはウォブル信号を用い、上記それぞれの案内溝に対するそれぞれのフォーカスオフセットとして、上記プッシュプル信号またはウォブル信号の振幅が最大範囲の振幅となるフォーカスオフセットを学習する構成である請求項7に記載の光ディスク装置。
【請求項9】
上記温度検出手段が検出した温度が相対的に低温の第1の温度のとき、上記第2の制御手段は、上記第1の制御手段が学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットの平均値を演算し、上記温度検出手段が検出した温度が相対的に高温の第2の温度のとき、上記第2の制御手段は、上記第1の制御手段が学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットとの差が異なるフォーカスオフセットを演算し該演算したフォーカスオフセットを該両記録層に共通の記録または再生時用の上記光学系のフォーカスオフセットとして設定する、または、上記第1の制御手段が学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットとの差が上記光学系の特性に対応した値となるフォーカスオフセットを演算し、該演算したフォーカスオフセットを上記それぞれの記録層の記録または再生時用の上記光学系のフォーカスオフセットとして設定する構成である請求項7また請求項8に記載の光ディスク装置。
【請求項10】
上記第1の制御手段が学習した上記隣接する記録層のうちの第1の記録層のフォーカスオフセットをFA0、第2の記録層のフォーカスオフセットをFA1、上記第2の制御手段が上記第1の記録層の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定するフォーカスオフセットをFQ0、同じく上記第2の記録層の記録または再生時用のフォーカスオフセットとして演算し設定するフォーカスオフセットをFQ1とするとき、
上記第1の温度が、0℃から25℃の範囲の温度のとき、上記第2の制御手段は、FQ0、FQ1を、
Q0=FQ1=(FA0+FA1)/2
により演算し、
上記第2の温度が、50℃から65℃の範囲の温度のとき、上記第2の制御手段は、FQ0、FQ1を、
Q0=(3×FA0+FA1)/4
Q1=(FA0+3×FA1)/4
により演算する
構成である請求項9に記載の光ディスク装置。
【請求項11】
複数の記録層を有する光ディスクに対し光学系によりレーザ光を集光して照射し情報の記録または再生が可能な光ディスク装置のフォーカスオフセット設定方法であって、
上記光ディスクの互いに隣接する記録層のそれぞれについて、記録層の記録面に形成された案内溝からの反射光に基づく信号から、それぞれの記録層の該案内溝に対する上記光学系のフォーカスオフセットを学習するとともに、当該光ディスク装置内の温度を検出する第1のステップと、
上記学習したそれぞれのフォーカスオフセット及び上記検出した温度情報に基づき、記録または再生時用の上記光学系のフォーカスオフセットを演算し設定する第2のステップと、
を備えた構成を特徴とする光ディスク装置のフォーカスオフセット設定方法。
【請求項12】
上記検出した装置内の温度が、相対的に低温の第1の温度のとき、上記第2のステップでは、上記第1のステップにおいて学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットの平均値を演算し、該平均値を記録または再生時用の該両記録層に共通のフォーカスオフセットとして設定する請求項11に記載の光ディスク装置のフォーカスオフセット設定方法。
【請求項13】
上記検出した装置内の温度が、相対的に高温の第2の温度のとき、上記第2のステップでは、上記第1のステップにおいて学習したそれぞれの記録層のフォーカスオフセットとの差が、上記光学系の特性に対応した値となるフォーカスオフセットを演算し、該演算したフォーカスオフセットを上記それぞれの記録層の記録または再生時用の上記光学系のフォーカスオフセットとして設定する請求項11に記載の光ディスク装置のフォーカスオフセット設定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−129119(P2010−129119A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302616(P2008−302616)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】