説明

光ディスク装置

【課題】エラー信号を生成するメディアタイプの数を限定することで、スピンアップに要する時間を短縮する光ディスク装置を提供する。
【解決手段】光ディスクの種類及び情報記録層の層数を判別する光ディスク判別部8と、前記光ディスク判別部8によって判別された前記光ディスクの種類及び情報記録層の層数に基づいて、前記光ディスクが予め分類されている複数のメディアタイプ群のいずれのメディアタイプ群に属するかを特定して、特定したメディアタイプ群についてエラー信号生成回路9、10にトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号を生成させた後に前記光ディスクのメディアタイプを仮決定する制御部2と、仮決定されたメディアタイプに関するトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号に対してオフセット調整を行うオフセット調整手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はBD(Blu−Ray Disc;登録商標)などの光ディスクに対応してデータの記録再生を行う光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録媒体である光ディスクとして、様々な種類の光ディスクが開発されている。代表的なものでは、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD等の光ディスクが存在する。このような複数種類の光ディスクに対して記録再生を行う光ディスク装置では、光ディスクの再生や記録に用いるレーザー光の波長、対物レンズの開口数、光ディスクのトラックピッチなどの仕様が、各光ディスクに対して規定されている。
【0003】
従って、複数種類の光ディスクに対して記録再生を行う光ディスク装置では、光ディスク装置内に装着された光ディスクに対して記録再生を行う前に、その光ディスクの種類の判別を行い、光ディスクの種類に応じて適したレーザー光の波長、対物レンズの開口数、光ディスクのトラックピッチなどを選択している。
【0004】
また、光ディスクは、情報の記録再生を行う情報記録層が単一の一層光ディスクの他、情報記録層を複数層とした複数層(多層化)光ディスクが開発されている。光ディスクが複数の情報記録層を備えることで、光ディスク一枚に記憶させることができる容量を増加させることができる。このような複数層光ディスクは一層光ディスクに比べて反射層におけるレーザー光の反射率が低くなる。従って、複数層光ディスクにおいて例えば記録されている情報を読み出すときには、再生レーザー光のパワーを高くし、強いレーザー光を照射する必要がある。
【0005】
よって、光ディスクの記録再生を行う光ディスク装置は、記録再生を行う前に、上述した光ディスクの種類の判別に加え、その光ディスクが何層ディスクであるかについても判別する必要がある。
【0006】
例えば特許文献1に記載されている光ディスク装置は、第1の速度で照射した光ビームが光ディスクによって反射されてなる反射光ビームに基づいて光ディスクの方式が第1の方式であるか否か判別する方式判別部を備えている。また、特許文献1に記載されている光ディスク装置は、第1の方式であると判別された光ディスク対して第1の速度よりも遅い第2の速度で光ビームを照射しながら対物レンズをフォーカス方向に移動させて、反射光ビームに基づいて情報記録層の層数に応じた数の記録層位置を検出させ、当該記録層位置の数に基づいて層数を判別する層数判別部を備えている。
【0007】
また、特許文献2に記載されている光ディスク装置は、レーザー光源と、レーザー光を略平行光に変換するコリメートレンズと、レーザー光を光ディスクに光スポットとして集束させる対物レンズと、光スポットの球面収差を補正する球面収差補正手段と、光ディスクからの反射光を検出する光検出手段と、光ディスクの情報層の数を検出する層数検出手段と、検出した情報層の数を記憶するメモリ手段とを備えている。そして、光ディスクの層数を判別する方法は、球面収差補正手段に第1の球面収差補正値を設定しフォーカスサーチを行う第1のステップと、球面収差補正手段に第2の球面収差補正値を設定しフォーカスサーチを行う第2のステップとを備え、これらの判別結果に基づいて情報層の数を判別することとしている。
【0008】
また、特許文献3に記載されている光ディスク装置は、対向レンズ開口数NA1、レーザー波長λを使用するディスクに対し、対向レンズ開口数NA2(NA1>NA2)、レーザー波長λの組み合わせでレーザーを光ディスクに照射しながら対物レンズを駆動し、レーザー焦点が光ディスクを透過することで得られる戻り光の変動からS字カーブ及びS字カーブの数を取得し、光ディスクの判別及び記録層数を判別することが開示されている。
【0009】
また、特許文献4に記載されている光ディスク装置は、フォーカスアクチュエータを揺動させて、光ディスクに照射された光の反射光から得られるフォーカスエラー信号により、その時のフォーカスエラー信号のS字カーブを時間との関係により、光ディスクの記録層数を判別することが開示されている。
【0010】
ところで、光ディスクが装着される光ディスク装置は、上述したように、情報の記録及び再生を行うときに光ピックアップを使用している。光ピックアップは、レーザー光源、レーザー光源から出射されたレーザー光を光ディスク上に集光させる対物レンズ、対物レンズを移動可能に支持するアクチュエータなどを備えている。
【0011】
光ディスク装置は光ディスクのトラックにレーザー光を照射してレーザスポットを形成し、その反射光を受光素子で受光して電気信号に変換している。そして、レーザー光の照射位置を光ディスクの情報記録層および層上のトラックに正確に追従させるために、その電気信号に基づいてトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号等を生成し、照射位置のフィードバック制御を行っている。
【0012】
しかし、エラー信号の生成回路には多数の増幅器(アンプ)が含まれている。アンプには完全に防ぐことが困難な電気的オフセットが存在するため、生成されるエラー信号にはこのような電気的オフセットが重畳される。このようなエラー信号を用いてレーザー光の照射位置を制御すると、目的のトラックの中央からずれた位置で記録再生を行うことになり、記録再生品質を著しく低下させることになる。よって、従来の光ディスク装置は、情報の記録再生を行う前に電気的オフセットを予め調整するという対策を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−070431号公報
【特許文献2】特開2006−344268号公報
【特許文献3】特開2006−134367号公報
【特許文献4】特開2000−011387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような電気的オフセット調整に必要なエラー信号の生成方式は、光ディスクの種類及びメディアタイプ毎に切り替える必要がある。従って、例えばBDを例に説明すると、BDにはメディアタイプとして、再生専用のメディア媒体である1層〜2層のBD−ROM、一度だけ記録可能なメディア媒体である1層〜4層のBD−R(BD−Recordable)、一度だけ記録可能なメディア媒体である1層のBD−LTH(BD−Low To High)、何度も書き換え可能な1層〜4層のBD−RE(BD−Rewritable)の11種類が実用化されており、11通りの生成方式でエラー信号が生成される。
【0015】
しかしながら、スピンアップ時に行われる光ディスク判別は、光ディスク装置に装着された光ディスクの種類を判別することはできるが、メディアタイプまで特定することはできず、例えば光ディスクがBDであると判別されても、そのメディアタイプまで特定できないことにより、上記11種類の全てのメディアタイプに関するエラー信号を生成し、その後、オフセット調整処理を行うので、オフセット調整を行うまでの時間が長くなり、スピンアップに要する時間が長期化するという問題があった。
【0016】
本発明は上述した問題点に鑑み、エラー信号を生成するメディアタイプの数を限定することで、スピンアップに要する時間を短縮する光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明の光ディスク装置は、光源からのレーザー光を光ディスクの情報記録層面に集光させる光ピックアップと、前記光ディスクの情報記録層面からの反射光に基づいてトラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号の少なくとも一方を生成するエラー信号生成回路と、前記光ディスクの種類及び情報記録層の層数を判別する光ディスク判別部と、前記光ディスク判別部によって判別された前記光ディスクの種類及び情報記録層の層数に基づいて、前記光ディスクが予め分類されている複数のメディアタイプ群のいずれのメディアタイプ群に属するかを特定して、特定したメディアタイプ群について前記エラー信号生成回路にトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号を生成させた後に前記光ディスクのメディアタイプを仮決定する制御部と、仮決定されたメディアタイプに関するトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号に対してオフセット調整を行うオフセット調整手段と、を備えることを特徴としている。
【0018】
この構成によれば、制御部は、種類が特定された光ディスクが、予め分類されている複数のメディアタイプ群のいずれのメディアタイプ群に属するものであるか否かを特定し、特定されたメディアタイプ群についてエラー信号生成回路にトラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号の少なくとも一方を生成させる。また、制御部は、光ディスクのメディアタイプを仮決定して、オフセット調整手段に、仮決定されたメディアタイプに関するトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号に対してオフセット調整を行わせる。従って、エラー信号生成回路にトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号を生成させるメディアタイプの数が制限されるので、スピンアップに要する時間を短縮することができる。
【0019】
また上記構成の光ディスク装置において、メディアタイプ群は、光ディスクの種類毎に、所定層数以上の情報記録層を有するメディアタイプからなるメディアタイプ群と所定層数未満の情報記録層を有するメディアタイプからなるメディアタイプ群の2つに分類されていることが望ましい。
【0020】
この構成によれば、光ディスクの種類毎にメディアタイプ群が2つに分類されているだけなので、光ディスク判別部が光ディスクの情報記録層の層数を誤判別にした際にオフセット調整処理が不能となる可能性を低くすることができる。
【0021】
また上記構成の光ディスク装置において、前記制御部は、前記光ディスク判別部によって、前記光ディスクの種類がBDであると判別されたときは、当該BDの情報記録層の層数が3層以上であるか否かに基づいて、当該BDが属するメディアタイプ群がBDXLであるか否かを判定し、前記BDが属するメディアタイプ群がBDXLであると特定されたときにはBDXLについて前記エラー信号生成回路にトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号を生成させ、前記BDが属するメディアタイプ群がBDXLでないと特定されたときにはBDSL及びBDDLについて前記エラー信号生成回路にトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号を生成させることが望ましい。
【0022】
この構成によれば、光ディスクがBDであるときに、BDXLであるか否かによってオフセット調整を行うので、BDSL又はBDDLにBDXL用の強いレーザー光を照射されることがなく、既記録部分が消去されたり、情報記録層が破壊されたりすることがない。
【0023】
また上記構成の光ディスク装置において、前記制御部は、前記光ディスク判別部によって、前記光ディスクの種類がDVDであると判別されたときは、当該DVDの情報記録層の層数が2層以上であるか否かに基づいて、当該DVDが属するメディアタイプ群がDVDDLであるか否かを判定し、前記DVDが属するメディアタイプ群がDVDDLであると特定されたときにはDVDDLについて前記エラー信号生成回路にトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号を生成させ、前記DVDが属するメディアタイプ群がDVDDLでないと特定されたときにはDVDSLについて前記エラー信号生成回路にトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号を生成させることが望ましい。
【0024】
この構成によれば、光ディスクがDVDであるときに、DVDDLであるか否かによってオフセット調整を行うので、DVDSLにDVDDL用の強いレーザー光を照射されることがなく、既記録部分が消去されたり、情報記録層が破壊されたりすることがない。
【0025】
また上記構成の光ディスク装置において、前記制御部は前記オフセット調整手段によるオフセット調整が行われた後に、前記光ディスクからメディアタイプを示す情報を含むアドレス情報を取得して、仮決定したメディアタイプと一致するか否かを判定し、仮決定したメディアタイプと一致しないときは、取得したメディアタイプのトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号に対してオフセット調整を行うことが望ましい。
【0026】
この構成によれば、仮決定した光ディスクのメディアタイプと、取得したアドレス情報に含まれる光ディスクのメディアタイプとが一致しないときには、オフセット調整手段に、アドレス情報から取得した光ディスクのメディアタイプに関するトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号に対してオフセット調整を行わせるので、情報の再生や記録をスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、制御部は、種類が特定された光ディスクが、予め分類されている複数のメディアタイプ群のいずれのメディアタイプ群に属するものであるか否かを特定し、特定されたメディアタイプ群についてエラー信号生成回路にトラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号の少なくとも一方を生成させる。また、制御部は、光ディスクのメディアタイプを仮決定して、オフセット調整手段に、仮決定されたメディアタイプに関するトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号に対してオフセット調整を行わせる。従って、エラー信号生成回路にトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号を生成させるメディアタイプの数が制限されるので、スピンアップに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】は、本発明の光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】は、本発明の光ディスク装置の制御部が実行する処理の流れを示す第1のフローチャートである。
【図3】は、本発明の光ディスク装置の制御部が実行する処理の流れを示す第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の光ディスク装置について図面を参照して説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために本発明の光ディスク装置の一例を示すものであって、本発明をこの光ディスク装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の装置にも等しく適応し得るものである。
【0030】
図1は、本発明の光ディスク装置の構成を示すブロック図である。光ディスク装置1は制御部2、操作部3、表示部4、光ピックアップ5、スピンドルモータ6、光ディスク判別部8、フォーカスエラー信号生成回路9、トラッキングエラー信号生成回路10などを備えている。なお、本実施形態において光ディスク装置1は、DVDやBDなど複数種類の光ディスクが再生可能である。また、BDに対しては、情報記録層の層数が1層〜4層のいずれのBDも再生可能である。
【0031】
制御部2は光ディスク装置1全体を総括的に制御する制御手段である。制御部2はCPUとROMとRAM(いずれも不図示)とを含んでいる。ROMには制御部2が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なパラメータやデータが記憶されている。CPUはROMに記憶されている各種プログラムを実行する。RAMは各種処理の過程で得られるデータや各種処理の結果得られるデータを一時的に格納する。これらCPU、RAM、ROM等は、バスを介して接続されている。なお、CPU、ROM及びRAMはこれらの一部または全部を1チップに集積化しても構わない。
【0032】
操作部3は、光ディスク装置1が有する各種機能を使用するための操作手段である。操作部3としては、光ディスク装置1本体に各種のキーやボタンを設けてもよいし、後述する表示部4にタッチパネル機能を付加してもよい。また、操作部3として光ディスク装置1本体を遠隔操作するためのリモートコントローラを操作部3として用いても構わない。
【0033】
表示部4は、画像を表示するものである。表示部4は、制御部2から映像データ、トラック情報、ファイル情報が供給され、これらのデータ、情報に基づいて、映像や文字等を表示する。表示部4は光ディスク装置1本体に設けてもよいし、光ディスク装置1に無線又は有線で接続された、例えば、液晶ディスプレイ、EL(Electro-Luminescence)ディスプレイを備える表示装置であってもよい。
【0034】
光ピックアップ5は、光ディスクからデータを読み出すためのものであり、レーザーダイオード51と、対物レンズ52と、アクチュエータ53と、受光素子54と、不揮発性メモリ55とを備えている。
【0035】
レーザーダイオード51は、光ディスクに照射するためのレーザー光(光ビーム)を発する光源である。レーザーダイオード51は、DVD再生用レーザー及びBD再生用レーザーなど光ディスクの種類に応じて選択的にレーザー光を射出する。対物レンズ52は、レーザーダイオード51から射出されたレーザー光を光ディスクの記録面(光ディスクに設けられている情報記録層)に集束させ、また、光ディスクによって反射されたレーザー光(反射光)を平行光にするためのレンズである。
【0036】
アクチュエータ53は、対物レンズ52の位置を制御するものである。受光素子54は、反射光を受光し、反射光の強度を検出して電気信号に変換するものである。不揮発性メモリ55は、制御部2からメディアタイプ毎の再生時最適オフセット値、記録時最適オフセット値を受け、これらのオフセット値を記憶する。また、制御部2の要求に従ってこれらのオフセット値を制御部2に提供する。
【0037】
スピンドルモータ6は、ターンテーブルやクランプ機構にて保持する光ディスクを、所定の回転速度で回転駆動する。スピンドルモータ6はスピンドルドライバ7によって駆動され、スピンドルドライバ7は制御部2からの指示に基づいてスピンドルモータ6を駆動する。
【0038】
光ディスク判別部8は光ディスク装置1に装着された光ディスクの種類及び情報記録層の層数を判別する。光ディスクの種類及び情報記録層の層数を判別する方法は例えばフォーカスサーチによって行われる。本発明では説明の簡略化のために、光ディスク判別部8を制御部2とは別構成としているが、制御部2が光ディスク判別部8を備える構成としてもよい。
【0039】
具体的には、レーザーダイオード51から射出されたレーザー光を、対物レンズ52を介して光ディスクに照射しながら、対物レンズ52を光軸方向に等速で上下に移動させてレーザー光の焦点位置を光ディスクの光入射面と記録層とを含む範囲で制御し光ディスクからの反射光から信号を検出するフォーカスサーチ動作時に、光ディスクの表面と記録層とで発生するフォーカスエラー信号中のフォーカスS字信号やデータ信号(又は、和信号)中のパルス波形の出現間隔を用いて透明基板の厚さを測定することで光ディスクの種類を判別する。また、フォーカスサーチ動作時のフォーカスS字信号の発生回数で情報記録層の層数を判別する。
【0040】
なお、光ディスクの種類及び情報記録層の層数を判別する方法は上述したものに限られず、例えば受光素子54が受光する反射光の状態(レーザーダイオード51から射出されたレーザー光に対する反射率)に基づいて行われることとしてもよい。
【0041】
フォーカスエラー信号生成回路9は受光素子54からの受光信号に基づいてフォーカスエラー信号を生成し、オフセット加算回路(オフセット調整手段)12に出力する。トラッキングエラー信号生成回路10は受光素子54からの受光信号に基づいてトラッキングエラー信号を生成し、オフセット加算回路(オフセット調整手段)13に出力する。
【0042】
なお、本発明においては説明の簡略化のため、フォーカスエラー信号生成回路9とトラッキングエラー信号生成回路10を別個の構成としているが、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号などを生成するサーボエラー信号生成回路を備えることとしてもよい。
【0043】
オフセット発生回路11は、制御部2に制御されて所定のオフセット信号を発生させる。オフセット発生回路11から出力されたオフセット信号はそれぞれオフセット加算回路12、オフセット加算回路13に入力される。
【0044】
オフセット加算回路(オフセット調整手段)12は、フォーカスエラー信号(エラー値)とオフセット発生回路17から入力されるオフセット信号(オフセット値)を加算し、オフセットを調整する。オフセット加算回路(オフセット調整手段)13は、トラッキングエラー信号(エラー値)とオフセット発生回路17から入力されるオフセット信号(オフセット値)を加算し、オフセットを調整する。
【0045】
位相補償回路14は、オフセット加算回路12の出力信号が、制御部2によって一定の振幅となるようにゲイン調整されてから入力され、当該入力信号に対して位相補償を行ってフォーカス制御信号を生成し、フォーカスアクチュエータドライバ8に出力する。位相補償回路15は、オフセット加算回路13の出力信号が、制御部2によって一定の振幅となるようにゲイン調整されてから入力され、当該入力信号に対して位相補償を行ってトラッキング制御信号を生成し、トラックアクチュエータドライバ9に出力する。
【0046】
トラックアクチュエータドライバ16及びフォーカスアクチュエータドライバ17は、それぞれ後述するトラッキング制御信号、フォーカス制御信号に基づいてアクチュエータ53に駆動信号を出力する。
【0047】
[第1実施形態]
本発明の光ディスク装置1の第1実施形態について図2を用いて説明する。図2は、本発明の光ディスク装置の制御部が実行するスピンアップ処理の流れを示す第1のフローチャートである。
【0048】
ステップS01において制御部2は、光ディスク判別部8に、光ディスク装置1に装着された光ディスクの種類及び情報記録層の層数を判別させる。なお、光ディスクの種類とは、DVDやBDなどの光ディスクの規格のことである。光ディスクの層数は、後述するメディアタイプによって異なり、多層化することによって1枚の光ディスクに記憶可能なデータの量(容量)が大きくなる。
【0049】
ステップS02において制御部2は、ステップS01で判別された光ディスクの種類及び情報記録層の層数に基づいて、光ディスク装置1に装着された光ディスクが、所定層数以上の情報記録層を有するメディアタイプからなるメディアタイプ群に属するか否かを判定する。メディアタイプが有する情報記録層の層数は、光ディスクの種類によって上限値(最大層数)が異なるため、所定層数は特に限定されるものではなく、任意に定めることができる。また、光ディスクの種類に応じて所定層数を別々に定めることとしてもよい。
【0050】
メディアタイプとは同一種類の光ディスクにおいて、仕様及び層数に基づいて定められるものであり、上述したようにBDの場合には、メディアタイプとして1層〜2層のBD−ROM、1層〜4層のBD−R、1層のBD−LTH、1層〜4層のBD−REの合計11種類が実用化されている。
【0051】
光ディスク装置1に装着された光ディスクが、所定層数以上の情報記録層を有するメディアタイプからなるメディアタイプ群に属するものであれば(ステップS02のY)ステップS03に進み、光ディスク装置1に装着された光ディスクが、所定層数以上の情報記録層を有するメディアタイプからなるメディアタイプ群に属するものでなければ(ステップS02のN)ステップS04に進む。
【0052】
ステップS03において制御部2は、フォーカスエラー信号生成回路9及びトラッキングエラー信号生成回路10に対して、所定層数以上の情報記録層を有するメディアタイプからなるメディアタイプ群についてエラー信号を生成させ、また、オフセット発生回路11にオフセット信号を生成させてステップS05に進む。
【0053】
ステップS04において制御部2は、フォーカスエラー信号生成回路9及びトラッキングエラー信号生成回路10に対して、所定層数未満の情報記録層を有するメディアタイプからなるメディアタイプ群についてエラー信号を生成させ、また、オフセット発生回路11にオフセット信号を生成させてステップS06に進む。
【0054】
ステップS05、ステップS06において制御部2は、光ディスク装置1に装着された光ディスクがどのディスクタイプであるかについて仮決定する(仮決めを行う)。そして仮決定されたメディアタイプのエラー信号とオフセット信号とをオフセット加算回路12、オフセット加算回路13に入力し、オフセット加算回路12、オフセット加算回路13にオフセット調整を行わせる。
【0055】
光ディスク装置1に装着された光ディスクのメディアタイプを仮決定する方法は特に限られるものではないが、例えば、トラッキングエラー信号とオフセット信号に基づいて行われる。具体的には、光ディスクはメディアタイプによって溝深さ(溝の断面の中心部における上部開口部から溝底部までの長さである)が異なることにより、トラッキングエラー信号に重畳されるオフセット信号が異なる。
【0056】
つまり、溝深さが深いメディアタイプは溝深さが浅いメディアタイプに比べてトラッキングエラー信号に重畳されるオフセット信号の割合が小さい。従って、トラッキングエラー信号とオフセット信号に基づいてトラッキングエラー信号に重畳されるオフセット信号の割合を算出し、所定値と比較した結果の大小関係より、光ディスクのメディアタイプを判別することができ、光ディスクのメディアタイプが仮決定される。
【0057】
ステップS07において制御部2は、ステップS05で仮決定されたメディアタイプに対するパワーでレーザー光を射出する。ステップS08において制御部2は、ステップS06で仮決定されたメディアタイプに対するパワーでレーザー光を射出する。
【0058】
ステップS09において制御部2は、光出力の自動調整を行う。ステップS10において制御部2は、光ディスクの物理情報を取得し、ステップS11において、光ディスク装置1に装着された光ディスクがどのメディアタイプであるか(例えば2層のBD−Rである)が特定される。
【0059】
ステップS12において制御部2は、ステップS05又はステップS06で仮決定されたメディアタイプとステップS11で特定されたメディアタイプとが一致するか否かを判定する。メディアタイプが一致する場合(ステップS12のY)にはスピンアップ処理を終了し、メディアタイプが一致しない場合(ステップS12のN)にはステップS13に進む。
【0060】
ステップS13において制御部2は、ステップS11で特定されたメディアタイプについてオフセット調整を行うと共にレーザー光の射出、自動調整等のシーケンス処理を行い、スピンアップ処理を終了する。
【0061】
本実施形態によれば、種類が特定された光ディスクが、所定層数以上の層数を有するメディアタイプからなるメディアタイプ群に属するものであるか否かを判定し、層数が所定層数以上であれば、所定層数以上のメディアタイプからなるメディアタイプ群のみについてフォーカスエラー信号生成回路9及びトラッキングエラー信号生成回路10にエラー信号を生成させ、また、オフセット発生回路11にオフセット信号を生成させる。一方、層数が所定層数未満であれば、所定層数未満のメディアタイプからなるメディアタイプ群のみについてフォーカスエラー信号生成回路9及びトラッキングエラー信号生成回路10にエラー信号を生成させ、また、オフセット発生回路11にオフセット信号を生成させる。このように、エラー信号、オフセット信号を生成させるメディアタイプを限定することによって、スピンアップに要する時間を短縮することができる。
【0062】
[第2実施形態]
本発明の光ディスク装置1の第2実施形態について図3を用いて説明する。図3は、本発明の光ディスク装置の制御部が実行するスピンアップ処理の流れを示す第2のフローチャートである。なお、本実施形態のステップS25〜ステップS33は、第1実施形態のステップS15〜ステップS23と同一であるため説明を省略する。本実施形態では、光ディスクがBDであるときの制御部2が実行する処理の流れについて説明する。
【0063】
ステップS21において制御部2は光ディスク装置1に装着された光ディスクがBDか否かを判定する。光ディスク装置1に装着された光ディスクがBDであればステップS22に進み、光ディスク装置1に装着された光ディスクがBDでなければステップS21に戻る。
【0064】
なお、本実施形態では説明の簡略化のために、光ディスク装置1に装着された光ディスクがBDでないときにステップS21に戻ることとしているが、光ディスク装置1に装着された光ディスクがDVDであるか否かなどの判定に進むこととして、光ディスクの種類を特定し、特定された光ディスクの種類について、第1実施形態のステップS02以降の処理を行うこととしてもよい。
【0065】
ステップS22において制御部2は、光ディスク装置1に装着されたBDが、BDXLであるか否かを判定する。BDXLとは、上述したように情報記録層が3層以上のBDである(以下、情報記録層が3層以上のBDを「BDXL」という。)。すなわち本ステップにおいて制御部2は、そのBDが3層以上の情報記録層を有するBDであるか否かを判定する。
【0066】
ここで本実施形態において所定層数を3層とした理由について説明する。一般に多層化光ディスクは、反射層におけるレーザー光の反射率が低くなるために、情報を再生する場合には再生用レーザー光のパワーを高く設定し、強いレーザー光を照射することが行われる。
【0067】
特にBDにおいては、情報記録層が3層以上のBDに対して照射されるレーザー光のパワーは、情報記録層が2層以下のBDに対して照射されるレーザー光のパワーに比べて非常に高くなっている。
【0068】
従って、仮に情報記録層が1層のBD(以下、情報記録層が1層のBDを「BDSL」という。)又は情報記録層が2層のBD(以下、情報記録層が1層のBDを「BDDL」という。)を、情報記録層が3層のBD(以下、情報記録層が3層のBDを「BDTL」という。)と誤認識し、BDSL又はBDDLに対してBDTLに対するレーザー光を照射すると、既記録部分が消去されたり、情報記録層が破壊されたりするという問題があった。そこで本実施形態では、所定層数以上を3層以上としている。
【0069】
ステップS23において制御部2は、フォーカスエラー信号生成回路9及びトラッキングエラー信号生成回路10に対して、BDXLについてエラー信号を生成させ、また、オフセット発生回路11にオフセット信号を生成させてステップS15に進む。ステップS14において制御部2は、フォーカスエラー信号生成回路9及びトラッキングエラー信号生成回路10に対して、BDXL以外のBD(例えばBDSL)についてエラー信号を生成させ、また、オフセット発生回路11にオフセット信号を生成させてステップS16に進む。
【0070】
なお、現在実用化されているBDにおいてBDXLは、3層〜4層のBD−R、3層〜4層のBD−REの4種類であり、BDXL以外のBDは、1層〜2層のBD−ROM、1層〜2層のBD−R、1層〜2層のBD−RE、1層のBD−LTHの7種類である。
【0071】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。加えて、レーザー光のパワーが非常に強いBDXLであるか否かで処理が異なるので、BDXL用のレーザー光がBDSLなどBDXL以外のBDに照射されることによって、既記録部分が消去されたり、情報記録層が破壊されたりすることがない。
【0072】
[その他]
上記第2実施形態では光ディスクがBDである場合について説明したが、その他の種類の光ディスク(DVD、CD、HD−DVDなど)について、情報記録層の層数に基づいてエラー信号、オフセット信号を生成させるメディアタイプを限定し、スピンアップに要する時間を短縮することとしてもよい。例えばDVDであれば、情報記録層の層数が2層以上であるか否か(DVDの層数が1層(DVDSL)であるか、2層(DVDDL)あるか)によって、エラー信号、オフセット信号を生成させるメディアタイプを制限することとしてもよい。
【0073】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態において、情報記録層の層数が所定層数以上であるか否か、すなわちメディアタイプを光ディスクの種類毎に2つのメディアタイプ群に分類して、光ディスク装置1に装着された光ディスクがいずれのメディアタイプ群に属するかに基づいて処理を行うこととしたが、光ディスクの種類毎の分類数はこれに限られず3つ以上のメディアタイプ群に分類するものであってもよい。
【0074】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態において、BDのメディアタイプを11種類としているが、これは現在実用化されているBDを基準として記載したものであり、メディアタイプをこの11種類に限る意図ではない。例えばBD−ROMについては8層構造まで実用可能とされている。従って新たなメディアタイプが実用化されたときには、それらメディアタイプも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、BDなどの光ディスクに対応してデータの記録再生を行う光ディスク装置に利用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 光ディスク装置
2 制御部
5 光ピックアップ
6 スピンドルモータ
9 フォーカスエラー信号生成回路
10 トラッキングエラー信号生成回路
12 オフセット加算回路(オフセット調整手段)
13 オフセット加算回路(オフセット調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からのレーザー光を光ディスクの情報記録層面に集光させる光ピックアップと、
前記光ディスクの情報記録層面からの反射光に基づいてトラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号の少なくとも一方を生成するエラー信号生成回路と、
前記光ディスクの種類及び情報記録層の層数を判別する光ディスク判別部と、
前記光ディスク判別部によって判別された前記光ディスクの種類及び情報記録層の層数に基づいて、前記光ディスクが予め分類されている複数のメディアタイプ群のいずれのメディアタイプ群に属するかを特定して、特定したメディアタイプ群について前記エラー信号生成回路にトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号を生成させた後に前記光ディスクのメディアタイプを仮決定する制御部と、
仮決定されたメディアタイプに関するトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号に対してオフセット調整を行うオフセット調整手段と、
を備えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
メディアタイプ群は、光ディスクの種類毎に、所定層数以上の情報記録層を有するメディアタイプからなるメディアタイプ群と所定層数未満の情報記録層を有するメディアタイプからなるメディアタイプ群の2つに分類されていることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記光ディスク判別部によって、前記光ディスクの種類がBDであると判別されたときは、当該BDの情報記録層の層数が3層以上であるか否かに基づいて、当該BDが属するメディアタイプ群がBDXLであるか否かを判定し、前記BDが属するメディアタイプ群がBDXLであると特定されたときにはBDXLについて前記エラー信号生成回路にトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号を生成させ、前記BDが属するメディアタイプ群がBDXLでないと特定されたときにはBDSL及びBDDLについて前記エラー信号生成回路にトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号を生成させることを特徴とする請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記光ディスク判別部によって、前記光ディスクの種類がDVDであると判別されたときは、当該DVDの情報記録層の層数が2層以上であるか否かに基づいて、当該DVDが属するメディアタイプ群がDVDDLであるか否かを判定し、前記DVDが属するメディアタイプ群がDVDDLであると特定されたときにはDVDDLについて前記エラー信号生成回路にトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号を生成させ、前記DVDが属するメディアタイプ群がDVDDLでないと特定されたときにはDVDSLについて前記エラー信号生成回路にトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号を生成させることを特徴とする請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記制御部は前記オフセット調整手段によるオフセット調整が行われた後に、前記光ディスクからメディアタイプを示す情報を含むアドレス情報を取得して、仮決定したメディアタイプと一致するか否かを判定し、仮決定したメディアタイプと一致しないときは、取得したメディアタイプのトラッキングエラー信号及び/又はフォーカスエラー信号に対してオフセット調整を行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−4121(P2013−4121A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131405(P2011−131405)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】