説明

光ディスク

【課題】 蛍光灯等の室内灯に曝露された場合であっても、銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜が黒変することがなく、該反射膜の反射率低下を起こすことがない光ディスクを提供することにある。
【解決手段】 第1の基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射するための第1の反射膜を備え、更に前記第1の反射膜上に紫外線硬化型組成物の硬化皮膜からなる樹脂層を備えた光ディスクであって、
前記第1の反射膜が、銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜であり、
前記紫外線硬化型組成物が、
(1)ラジカル重合性化合物、
(2)式(1)で表される化合物、及び


(3)ラジカル性の光重合開始剤
を含有することを特徴とする光ディスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀又は銀を主成分とする合金の反射膜を有する光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
貼り合わせ型光ディスクの代表例としては、DVD(ディジタルバーサタイルディスク又はディジタルビデオディスク)がある。このDVDは、少なくとも1枚の光ディスク用基板に情報記録層を形成した2枚の光ディスク用基板を貼り合わせる方法で作製する。その際に使用する貼り合わせ剤としては、紫外線硬化型組成物からなる接着剤を使用することが一般的である。
情報記録層とは、ポリカーボネート等の合成樹脂からなる光ディスク用基板上に形成した、ピットと称する凹凸、相変化材料又は色素等からなる層と、その上に形成された情報読み取り用のレーザー光を反射するための半透明反射膜又は完全反射膜とからなる積層体である。半透明反射膜及び完全反射膜は情報記録層の最上部に形成される層であり、一般的には金属又は金属合金の薄膜からなる層である。
【0003】
2枚の光ディスク用基板を貼り合わせた構造を有する再生専用型のDVDにおいては、種々のタイプが存在する。例えば、「DVD−10」と称する光ディスクは、基板の片面に記録情報に対応するピットと称する凹凸を設け、その上に情報読み取り用のレーザー光を反射するための層として、例えばアルミニウムの層を形成した光ディスク用ポリカーボネート基板を2枚用意して、それらをアルミニウムの層を接着面として貼り合わせたものである。「DVD−5」は、「DVD−10」を製造するための前記基板と、情報記録層を設けていない通常の透明なポリカーボネート基板とを貼り合わせたものである。また、「DVD−9」は、基板の片面に設けたピット上にアルミニウムの反射膜を形成した基板と、基板の片面に設けたピット上に金又は金を主成分とする合金、銀又は銀を主成分とする合金或いはケイ素化合物等からなる半透明反射膜を形成した基板とを、反射膜同士を接着面として貼り合わせたものである。更に、「DVD−18」は、片面に2層の情報記録層を有する基板を2枚貼り合わせた構造のものである。現在では記録容量が大きく片面から2層の情報を読み取れる「DVD−9」が主流になっている。
【0004】
このDVD−9等の半透明反射膜としては、金またはケイ素化合物が主として使用されている。しかし、金は材料の値段が非常に高くコスト面で不利であり、またケイ素化合物は成膜が非常に困難であるという欠点がある。そこで、金と比較して低コストであり成膜も容易であることから銀または銀を主成分とする合金への置き換えが盛んに検討されている。
【0005】
しかしながら、金またはケイ素化合物を半透明反射膜として有するDVD−9を製造するための従来の紫外線硬化型接着剤を使用すると、銀または銀を主成分とする合金を半透明反射膜として使用したDVD−9の耐久性を著しく劣化させるという問題が発生した。具体的には、従来の接着剤を使用した銀または銀を主成分とする合金を半透明反射膜として使用したDVD−9を高温高湿環境下に長時間曝露した場合、その接着剤の影響により銀または銀を主成分とする合金の表面が変質して、信号の読み取りエラーの増加や外観不良などが生じ、当該DVD−9の耐久性を著しく低下させるという問題である。
【0006】
前記高温高湿環境下での問題の解決に対しては、例えば、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート類を含有する紫外線硬化型組成物をDVD−9の接着剤として用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。該特許文献には、銀又は銀を主成分とする合金を半透明反射膜として使用したDVD−9でも、80℃85%RH500時間の高温高湿環境下での試験を行った後に、半透明反射膜の変色やピンホール発生がなく、金を半透明反射膜として使用したDVD−9と同等の耐久性が得られることが記載されている。
【0007】
また、DVD−9等の金属反射膜を備えた光ディスクにおける別の課題として、接着剤として使用する紫外線硬化型組成物による金属反射膜の腐食がある。この課題を解決するための技術として、例えば、カチオン重合性化合物、光カチオン重合開始剤、及びアルミニウム腐食防止剤としてヒドロキシカルボン酸を含有する接着剤組成物をアルミニウムの蒸着膜等の薄膜に塗布する技術が報告されている(例えば、特許文献2参照)。ヒドロキシカルボン酸の例としては、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、2−メチル乳酸、ヒドロキシピルビン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α,α−ジフェニルグリコール酸、マンデル酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、p−ヒドロキシ安息香酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、シトラジン酸、ケリダム酸、没食子酸等が挙げられている。
【0008】
更に、金属反射膜を備えた光ディスクにおいては、接着剤として使用する紫外線硬化型組成物の金属反射膜に対する密着性も重要な課題である。これを解決するための技術として、例えば、アモルファスシリコン樹脂基板と金、銀、銅、アルミニウム等の金属反射膜の両方に優れた密着性を有する組成物に関する技術が報告されている(例えば、特許文献3参照)。当該技術では、ジシクロペンタジエンジアクリレート、チオキサントン系化合物及びリン酸基を有する(メタ)アクリレートを含有する光ディスク用紫外線硬化型組成物に関する技術が提案さている。更に、重合禁止剤として、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、p−ベンゾキノン、2,5−t−ブチル−ハイドロキノン、フェノチアジン等を光ディスク用紫外線硬化型組成物全体に対し0.1〜5質量%の範囲で使用できることが記載されている。
【0009】
ところで、接着性に優れ、且つ速硬性の二液型のアクリル系接着剤として、(メタ)アクリル酸及びそのエステルから選ばれるアクリル系化合物とパーオキシエステル系重合開始剤と没食子酸誘導体とその他添加剤を含有する接着剤組成物を第一液として使用する技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。更に、接着時に接着部分からはみ出した第一液を硬化させるため、接着剤組成物に光重合開始剤を添加し、紫外線を照射することにより、はみ出した接着剤を硬化させることが提案されている。
【特許文献1】特開2002−212514号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開2002−146331号公報(特許請求の範囲、第6段落、第25段落)
【特許文献3】特開2002−285042号公報(特許請求の範囲、第28段落、第29段落、第34段落)
【特許文献4】特開平3−134081号公報(特許請求の範囲、第6頁右上欄5行目〜同左下欄17行目、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の如く、光ディスク技術分野においては、これまで高温高湿環境下に長時間曝露した時の耐久性、金属反射膜の耐腐食性、紫外線硬化型組成物の金属反射膜に対する密着性等の改善が検討されてきた。本発明者等は、このような従来公知の課題を含め、銀又は銀を主成分とする合金の反射膜を有する光ディスクの開発に関して種々検討を進めてきた。その結果、上記課題以外に新たに別の課題があることを見出した。その課題とは、銀又は銀を主成分とする合金の反射膜を備えた光ディスクが蛍光灯等の室内灯に暴露された場合、該反射膜が黒変して反射率の低下やPIエラー(parity of inner-code error)の増加を引き起こし、極端な場合には情報の読み取りが不可能になるという問題である。この課題の克服は、銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜を備えた光ディスクの実用特性を向上させるため非常に重要である。
したがって、本発明の目的は、蛍光灯等の室内灯に曝露された場合であっても反射膜が黒変することがなく、信号の読み取りエラー(PIエラー)の増加や反射率低下を起こすことがない、耐光性に優れた、銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜を備えた光ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、本発明の課題の解決を試みるにあたり、前記の各従来技術(特許文献1〜特許文献3)の実施例に記載された紫外線硬化型組成物を使用した光ディスクを検討した。しかしながら、前記の各従来技術においては、銀又は銀を主成分とする合金を半透明反射膜として使用した光ディスクの耐光性に関しては全く触れられておらず、また、銀又は銀を主成分とする合金からなる半透明反射膜を備えた光ディスクに使用する具体的な紫外線硬化型組成物に関すること、及び、該紫外線硬化型組成物に使用する具体的な添加剤について全く記載されていない。実際に前記技術を用いた光ディスクの耐光試験を行うと銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜の変色が著しく、反射率が低下し、更にPIエラーが増加するという問題が確認された。
なお、特許文献4には光ディスクの接着に関することは全く開示されておらず、まして、銀又は銀を主成分とする合金を反射膜として使用した光ディスクの耐光性を改善する方法に関して特段の手段を指し示すものではない。
【0012】
次に、本発明者らは、蛍光灯等の室内灯に曝露した後に銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜が黒変する現象を反射膜の表面酸化によるものと推測し、該反射膜上に設ける樹脂層を形成するための組成物として、種々の酸化防止剤、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、ヒドロキシピルビン酸、ジメチロールプロピオン酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、マンデル酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、p−ヒドロキシ安息香酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、没食子酸等を添加した紫外線硬化型組成物を検討した。その結果、上記化合物の中では没食子酸を添加した系のみが上記課題を解決できることが判った。
【0013】
更に検討を進め、没食子酸と類似の化学構造を有する化合物、例えば、フェノール、クレゾール、メシトール等のモノヒドロキシ化合物、ハイドロキノン、2−ヒドロキシハイドロキノン、2,5−t−ブチル−ハイドロキノン、カテコール、t−ブチルカテコール、レソルシノール、オルシノール等のジヒドロキシ化合物、ピロガロール等のトリヒドロキシ化合物等を検討したところ、これらの中でもフェノール性水酸基を2個以上有する特定構造の化合物が没食子酸と同様な効果を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち本発明は、第1の基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射するための第1の反射膜を備え、更に前記第1の反射膜上に紫外線硬化型組成物の硬化皮膜からなる樹脂層を備えた光ディスクであって、
前記第1の反射膜が、銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜であり、
前記紫外線硬化型組成物が、
(1)ラジカル重合性化合物、
(2)式(1)
【0015】
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4及びRはそれぞれ独立的に、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)水酸基、(iv)炭素数1〜8のアルコキシル基、(v)カルボキシル基、(vi)式(2)
【0016】
【化2】

(式中、Rは、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルケニル基を表す。)で表される基、或いは(vii)置換基としてカルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシル基又はアルコキシル基を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基若しくはアルケニル基を表すが、R1、R2、R3、R4及びRの中の少なくともひとつは水酸基である。)で表される化合物、及び
(3)ラジカル性の光重合開始剤
を含有することを特徴とする光ディスクを提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蛍光灯等の室内灯に曝露された場合でも銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜が黒変することがなく、信号の読み取りエラー(PIエラー)の増加や反射率変化が少ない光ディスクを得ることができる。このため、情報記録層を形成する半透明反射膜又は反射膜の材料として、銀又は銀を主成分とする合金を使用することが容易となり、低価格で信頼性の高い「DVD−9」タイプ等の光ディスクの供給が可能になるという著しい効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜を備えた光ディスクに使用する紫外線硬化型組成物は前記式(1)で表される化合物を含有する。
なお、本明細書中で反射膜とは、情報読み取り用のレーザー光を反射するための半透明反射膜又は該レーザー光を実質的に透過しない完全反射膜のことであり、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸のことであり、アクリル酸又はメタクリル酸の誘導体についても同様である。
【0019】
前記式(1)で表される化合物としては種々の構造の化合物があるが、中でも下記式(3)で表される没食子酸又は没食子酸エステルであることが好ましい。
【0020】
【化3】

(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルケニル基を表す。)
【0021】
アルキル基及びアルケニル基は分岐状又は直鎖状であって良く、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましい。中でも、Rは水素原子、又は無置換の炭素数1〜20の分岐鎖を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は無置換の炭素数1〜8の分岐鎖を有していてもよいアルキル基であることがより好ましい。更に、水素原子、又は無置換の炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい
【0022】
没食子酸エステルとしては、具体的には、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸イソプロピル、没食子酸イソペンチル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、没食子酸テトラデシル、没食子酸ヘキサデシル、没食子酸オクタデシル等がある。式(3)で表される化合物としては、没食子酸を使用することが好ましい。没食子酸は、市販品として、例えば、大日本製薬(株)製が容易に入手可能である。
【0023】
また、前記式(1)で表される化合物としては、下記式(4)で表される化合物も好ましい。
【0024】
【化4】

(式中、R8、R9、R10及びR11はそれぞれ独立的に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルコキシル基、置換基として-COOH、-COOR12、-OCOR13又は-OR14を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基、或いは置換基として-COOH、-COOR12、-OCOR13又は-OR14を有していても良い炭素数1〜24のアルケニル基を表す(式中、R12、R13、及びR14はそれぞれ独立的に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルケニル基を表す。)。)
【0025】
式(4)中、R8、R9、R10及びR11は、具体的には、(i)水素原子、(ii)フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等のハロゲン原子、(iii)メトキシ、エトキシ、ブトキシ、オクチロキシ等のアルコキシル基、(iv)メチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ラウリル又はオクタデシル等のアルキル基、(v)エテニル、プロペニル又は2−ブテニル等のアルケニル基、(vi)4−カルボキシブチル、2−メトキシカルボニルエチル、メトキシメチル、エトキシメチル等が挙げられる。
【0026】
式(4)で表される化合物中で好ましいのは、カテコール、3−sec−ブチルカテコール、3−tert−ブチルカテコール、4−sec−ブチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール、3,5−ジ−tert−ブチルカテコール、3−sec−ブチル−4−tert−ブチルカテコール、3−tert−ブチル−5−sec−ブチルカテコール、4−オクチルカテコール及び4−ステアリルカテコールであり、より好ましいのは、カテコール及び4−tert−ブチルカテコールである。特に4−tert−ブチルカテコールを使用することが好ましい。4−tert−ブチルカテコールの市販品としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製DIC TBC−5Pがある。
【0027】
更に、前記式(1)で表される化合物としては、下記式(5)及び式(6)で表される化合物も好ましい。
【0028】
【化5】

(式中、R15、R16、R17及びR18はそれぞれ独立的に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルコキシル基、置換基として-COOH、-COOR12、-OCOR13又は-OR14を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基、或いは置換基として-COOH、-COOR12、-OCOR13又は-OR14を有していても良い炭素数1〜24のアルケニル基を表す(式中、R12、R13、及びR14はそれぞれ独立的に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルケニル基を表す。)。)
【0029】
【化6】

(式中、R19、R20、R21及びR22はそれぞれ独立的に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルコキシル基、置換基として-COOH、-COOR12、-OCOR13又は-OR14を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基、或いは置換基として-COOH、-COOR12、-OCOR13又は-OR14を有していても良い炭素数1〜24のアルケニル基を表す(式中、R12、R13、及びR14はそれぞれ独立的に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルケニル基を表す。)。)
【0030】
式(5)中のR15、R16、R17及びR18、及び、式(6)中のR19、R20、R21及びR22は、具体的には、水素原子、メチル基、プロピル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、iso-ヘキシル基、tert-オクチル基等が挙げられる。
【0031】
式(5)で表される化合物の中で好ましいのは、ハイドロキノン、2−ヒドロキシハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン又は2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ハイドロキノンである。また、式(6)で表される化合物中で好ましいのは、レソルシノール(benzene-1,3-diol)、オルシノール(5-methylbenzene-1,3-diol)である。これらの中では、式(5)で表される化合物の方が式(6)で表される化合物よりも好ましく、式(5)で表される化合物の中でもハイドロキノン(benzene-1,4-diol)、2−ヒドロキシハイドロキノン(benzene-1,2,4-triol)を使用することがより好ましい。また、式(1)で表される化合物の中で本発明で使用することが好ましいその他の化合物としてピロガロール(1,2,3-trihydroxybenzene)がある。
【0032】
上記式(3)〜式(6)で表される化合物の中で、式(3)で表される没食子酸又は没食子酸エステル及び式(5)で表されるハイドロキノン系化合物は、銀又は銀を主成分とする合金を反射膜として使用した光ディスクを蛍光灯に曝露した場合における該反射膜の黒変を防止するだけでなく、高温高湿環境下における耐久性も向上させることができ、本発明の光ディスクに使用する紫外線硬化型組成物に添加する式(1)で表される化合物の中でも特に好ましい化合物である。また、式(3)及び式(5)で表される化合物の中では没食子酸が最も好ましい化合物である。
【0033】
式(1)で表される化合物の紫外線硬化型組成物中への添加量としては、紫外線硬化型組成物全体に対して、0.05〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。0.3〜7質量%であることが更に好ましく、1〜5質量部であることが特に好ましい。上記範囲であると耐光性の改良効果が顕著であり、また紫外線硬化型組成物中で式(1)で表される化合物が析出し難く、該組成物の取り扱いが容易である。
【0034】
式(1)の化合物を使用した紫外線硬化型組成物による硬化皮膜は、銀又は銀を主成分とする合金を反射膜として使用した光ディスクが、蛍光灯等の室内灯、例えば、中心波長領域が500〜650nmの光源に晒された場合でも、銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜が黒変することを防ぎ、信号の読み取りエラーや反射率の低下等を起こすことがない。
【0035】
ところで、式(I)で表される化合物は、従来より、光ディスク用紫外線硬化型組成物において、熱重合禁止剤、あるいは酸化防止剤の1種として添加しうることが知られている。しかしながら、銀または銀を主成分とする合金の薄膜層を有する光ディスクにおいて、式(I)で表される化合物が、蛍光灯等の室内灯に曝露された後における該薄膜層の黒変を防止する特性を有し、信号の読み取りエラー(PIエラー)の増加や反射率の低下を抑制する機能を有することは知られていない。この黒変を防止するメカニズムは解明されていないが、その効果は、後述する実施例からも明らかである。したがって、本発明では、周知化合物である式(I)で表される化合物の新たな作用機序、つまり銀または銀を主成分とする合金からなる薄膜層の耐光性を向上させるための耐光性向上剤としての作用機序を見出し、銀または銀を主成分とする合金の薄膜層を有する光ディスクに適用したものである。
【0036】
紫外線硬化型組成物に用いる、ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーが使用できる。ラジカル重合性モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレートや多官能(メタ)アクリレートを用いることができ、これらは、各々、単独又は2種類以上併用して用いることもできる。
【0037】
ラジカル重合性モノマーとしては、公知の化合物が使用できるが、単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
また、多官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチルー2−エチルー1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
更に、ラジカル重合性オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等がある。
【0040】
紫外線硬化型組成物に使用する光重合開始剤は、ラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性モノマー等の光ラジカル重合性化合物を硬化しうる公知慣用のものがいずれも使用できる。光重合開始剤としては、分子開裂型又は水素引き抜き型のものが本発明に好適である。
【0041】
ラジカル性の光重合開始剤としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が好適に用いられ、また、これら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等を併用しても良いし、更には、水素引き抜き型光重合開始剤であるベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等も併用できる。ラジカル性の光重合開始剤の使用量は、紫外線硬化型組成物の全体に対して、2質量%〜10質量%の範囲で含有することが好ましい。
【0042】
上記ラジカル性の光重合開始剤に対して増感剤を使用することができ、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、前述ラジカル重合性成分と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。もちろん、上記光重合開始剤や増感剤は、紫外線硬化型化合物への溶解性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0043】
また、紫外線硬化型組成物には、必要に応じて、他の添加剤を使用することができ、例えば、熱重合禁止剤、可塑剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト等の酸化防止剤、及びエポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン等のシランカップリング剤等を、各種特性を改良する目的で配合することもできる。これらは、紫外線硬化型化合物への溶解性に優れたもの、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いる。
【0044】
更に、紫外線硬化型組成物には、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加することが好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量は、紫外線硬化型組成物の全体に対して、0.01質量%〜5質量%であることが好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、下記式(7)で表される化合物を使用することが好ましい。中でも、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール(下記式(8))が特に好ましい。そのような化合物の市販品としては、IRGANOX 1520L(チバスペチャルティケミカルズ(株)製)がある。本発明で使用する紫外線硬化型組成物は、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾールを含有することにより、高温高湿環境下における耐久性が向上する。特に、高温高湿環境下における反射率低下を防止するため効果的である。
【0045】
【化7】

(式中、R23は分岐鎖を有していてもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、R24及びR25は、各々独立的に分岐鎖を有していてもよい炭素原子数1〜16のアルキル基を表し、mは1〜5の整数であり、nは0〜4の整数であり、m+n≦5である。)
【0046】
【化8】

【0047】
紫外線硬化型組成物としては、常温〜40℃において、液状であるものを用いるのが好ましい。溶媒は用いない方が好ましく、用いたとしても極力少量に留めるのがよい。また、前記組成物の塗布をスピンコーターで行う場合には、粘度を20〜1000mPa・sとなるように調整するのが好ましく、DVD用途で用いる場合は100〜1000mPa・sに調整するのが良い。
【0048】
上記式(1)で表される化合物を含有する紫外線硬化型組成物を使用した本発明の光ディスクは、第1の基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射するための第1の反射膜を備え、更に該第1の反射膜上に上記紫外線硬化型組成物の硬化皮膜からなる樹脂層を備えた構造を有する光ディスクである。本発明の光ディスクは、このような構造の光ディスク、或いはこのような構造を部分的に有する光ディスクである。そのような光ディスクとしては、銀又は銀を主成分とする合金の薄膜を光反射層とし、該光反射層上に保護層として紫外線硬化型組成物の硬化皮膜からなる樹脂層を備えたCD−ROM又はCD−R等がある。また、銀又は銀を主成分とする合金の薄膜からなる光反射層を有する基板を、該光反射層を接着面として紫外線硬化型組成物により他の基板と貼り合わせたDVD−5がある。
【0049】
また、本発明の光ディスクは、前記第1の反射膜上に設けた上記紫外線硬化型組成物の硬化皮膜からなる樹脂層上に、更に、情報読み取り用のレーザー光を反射するための第2の反射膜を備えた第2の基板が、前記樹脂層と前記第2の反射膜とが接するように、前記樹脂層上に設けられた構造の光ディスクであっても良い。このような構造の光ディスクとしては、情報読み取り用のレーザー光を反射するための反射膜を備えた2枚の光ディスク用基板の少なくとも一方の基板が、その表面に銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜を有し、2枚の基板の反射膜同士を接着面として前記2枚の光ディスク用基板を貼り合わせたDVD−9、DVD−18、DVD−10等の貼り合わせ型の光ディスクがある。
【0050】
本発明で使用する光ディスク用基板としては、光ディスク用基板として通常用いられるものが使用でき、特にポリカーボネート基板を好適に用いることができる。また、光ディスクに用いられる「銀を主成分とする合金」としては、例えば、米国特許第6007889号公報に記載されている銀と金の比率(AgAu)が以下の比率である銀合金があげられる。
0.9<x<0.999
0.001≦≦0.10
【0051】
本発明の光ディスクのタイプは、好ましくは再生専用型DVDである「DVD−5」、「DVD−10」、「DVD−9」及び「DVD−18」、書き込み可能型のDVD−R、DVD+R、書き換え可能型のDVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM等のDVDであり、特に好ましくは「DVD−9」及び「DVD−18」である。「DVD−9」及び「DVD−18」における銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜の膜厚は10〜30nmであり、他のタイプのDVDにおける銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜の膜厚よりも薄くなっている。本発明で使用する紫外線硬化型組成物は、このように薄い膜厚の銀又は銀を主成分とする合金の薄膜上で使用しても十分な耐光性を示すため、銀又は銀を主成分とする合金からなる半透明反射膜を有する再生専用型の「DVD−9」及び「DVD−18」に使用する紫外線硬化型組成物として最適である。
【0052】
また、本発明の光ディスクはこれらには限定されず、例えば、厚さ約1.1mmの光ディスク用基板の銀又は銀を主成分とする合金の薄膜上に、該組成物の硬化膜による、厚さ約0.1mm程度の保護層又はカバー層又は光透過層を形成したもの、すなわち、情報読み書き用のレーザー光として青紫色レーザー光に適したタイプのものであっても良いし、DVDと同様の厚さ0.6mmの基板を2枚貼り合わせた構造を有するSACD(スーパーオーディオCD)であっても良い。
【0053】
以下に、「DVD−5」、「DVD−10」、「DVD−9」及び「DVD−18」を製造する場合の例を記載する。本発明の光ディスクの例としてはこれらに限定されるものではない。また、下記製造例で使用する紫外線硬化型組成物は、本発明で使用する上記式(1)で表される化合物を含有した紫外線硬化型組成物を意味する。
【0054】
(DVD−9の製造)
記録情報を担うピットと称する凹凸の上に40〜60nmの金属薄膜(第2の反射膜)が積層された光ディスク用基板(A:第2の基板)1枚と、記録情報を担うピットと称する凹凸の上に10〜30nmの銀又は銀を主成分とする合金の半透明反射膜(半透明反射膜:第1の反射膜)が積層された光ディスク用基板(B:第1の基板)1枚を用意する。
【0055】
なお、前記第2の反射膜としては、例えばアルミニウムを主成分とするものや銀又は銀を主成分とする合金を使用することができる。また、前記光ディスク用基板としては、光ディスク用基板として公知のものが使用できる。例えば、アモルファスポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等が挙げられるが、特にポリカーボネート基板を使用することが好ましい。
【0056】
次いで、紫外線硬化型組成物を前記基板(A:第2の基板)の金属薄膜(第2の反射膜)上に塗布し、更に、半透明反射膜(第1の反射膜)が積層された前記基板(B:第1の基板)を、半透明反射膜(第1の反射膜)の膜面が接着面となるように、金属薄膜(第2の反射膜)面に塗布された紫外線硬化型組成物を介して基板(A:第2の基板)と貼り合わせ、この貼り合わせた2枚の基板の片面又は両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−9」とする。
【0057】
(DVD−18の製造)
更に、前記のDVD−9を製造した後に、基板(A:第2の基板)上に形成された金属薄膜(第2の反射膜)を基板(B:第1の基板)側に残したまま、基板(A:第2の基板)のみを剥離することにより、基板(B:第1の基板)/半透明反射膜(第1の反射膜)/紫外線硬化型組成物の硬化膜/金属薄膜(第2の反射膜)が順次積層されたディスク中間体を作製する。そのようなディスク中間体を2枚用意する。次いで、この2枚のディスク中間体の金属薄膜(第1の反射膜)を接着面として、それらが対向するように接着することにより「DVD−18」が得られる。
【0058】
(DVD−10の製造)
記録情報を担うピットと称する凹凸の上に、銀又は銀を主成分とする合金による40〜60nmの反射膜が積層された光ディスク用第2の基板枚(C1:第1の基板)及び(C2:第2の基板)を用意する。片方の基板(C1:第1の基板)の反射膜(第1の反射膜)上に紫外線硬化型組成物を塗布し、もう片方の基板(C2:第2の基板)を反射膜(第2の反射膜)の膜面が接着面となるように、基板(C1:第1の基板)の反射膜(第1の反射膜)面に塗布された前記組成物を介して基板(C1:第1の基板)と貼り合わせ、この貼り合わせた2枚の基板の片面又は両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−10」とする。
【0059】
(DVD−5の製造)
記録情報を担うピットと称する凹凸の上に、銀又は銀を主成分とする合金による40〜60nmの第1の反射膜が積層された光ディスク用基板(D:第1の基板)を用意する。別に、ピットを有さない光ディスク用基板(E)を用意する。基板(D:第1の基板)の前記第1の反射膜上に紫外線硬化型組成物を塗布し、該組成物を介して基板(D:第1の基板)と基板(E)を貼り合わせ、この貼り合わせた2枚の基板の片面又は両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−5」とする。
【0060】
紫外線照射にあたっては、例えばメタルハライドランプ、高圧水銀灯などを用いた連続光照射方式で行うこともできるし、米国特許第5904795号公報記載の閃光照射方式で行うこともできる。効率よく硬化出来る点で閃光照射方式がより好ましい。
【実施例】
【0061】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下実施例中の「部」は「質量部」を表す。
<実施例1>
ウレタンアクリレートとしてFAU−74SN(大日本インキ化学工業(株)製)7部、ビスフェノールA型エポキシアクリレートとしてユニディックV−5530(大日本インキ化学工業(株)製)8部、下記式9で表されるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(4モル)のジアクリレート40部、下記式10で表されるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(10モル)のジアクリレート18部、ジプロピレングリコールジアクリレート11部、ラウリルアクリレート8部、下記式11で表されるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート1.8部、下記式12で表されるエチレンオキサイド変性リン酸メタクリレート0.1部、ジメチルアミノ安息香酸エチル0.1部、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド2部及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン4部、没食子酸0.05部、酸化防止剤としてIRGANOX 1520L(チバスペチャルティケミカルズ(株)製)0.2部を配合し、60℃で1時間加熱混合して溶解し、淡黄色透明の紫外線硬化型組成物を調製した。紫外線硬化型組成物全体に対する没食子酸の含有比率は0.05質量%である。
【0062】
【化9】

(式9)
(式中、m及びnは1〜3の整数であり、m+n=4である。)
【0063】
【化10】

(式10)
(式中、p及びqは1〜9の整数であり、p+q=10である。)
【0064】
【化11】

(式11)
【0065】
【化12】

(式12)
【0066】
<実施例2>〜<実施例6>
没食子酸の含有比率を0.1質量%、0.5質量%、5質量%、6質量%とした以外は実施例1の組成物と同様にして、実施例2〜実施例5の紫外線硬化型組成物を調製した。また、没食子酸に換えて、没食子酸プロピルを0.5質量%使用した以外は実施例1の組成物と同様にして、実施例6の紫外線硬化型組成物を調製した。なお、実施例5の紫外線硬化型組成物は少量の没食子酸が溶解せずに残留したため、濾過処理を行った。
【0067】
<実施例7>〜<実施例10>
実施例1〜実施例4の組成物において、酸化防止剤(IRGANOX 1520L)を使用しない以外は実施例1〜実施例4の組成物と同様にして、実施例7〜実施例10の紫外線硬化型組成物を調製した。
【0068】
<実施例11>〜<実施例15>
実施例1の没食子酸を4−tert−ブチルカテコールとした以外は実施例1の組成物と同様にして、実施例11の紫外線硬化型組成物を調製した。更に、4−tert−ブチルカテコールの含有比率を0.1質量%(実施例12)、0.5質量%(実施例13)、1質量%(実施例14)、5質量%(実施例15)とした以外は実施例11の組成物と同様にして、実施例12〜実施例15の紫外線硬化型組成物を調製した。
【0069】
<実施例16>
実施例8の没食子酸0.5部をハイドロキノン0.5部とした以外は実施例8の組成物と同様にして、実施例16の紫外線硬化型組成物を調製した。
【0070】
<実施例17>
実施例8の没食子酸0.5部を2−ヒドロキシハイドロキノン0.5部とした以外は実施例8の組成物と同様にして、実施例17の紫外線硬化型組成物を調製した。
【0071】
<実施例18>
実施例8の没食子酸0.5部をレソルシノール0.5部とした以外は実施例8の組成物と同様にして、実施例17の紫外線硬化型組成物を調製した。
【0072】
<実施例19>〜<実施例21>
更に、実施例8における没食子酸をハイドロキノンとして、含有比率を1質量%(実施例19)、3質量%(実施例20)、5質量%(実施例21)とする以外は実施例8の組成物と同様にして、実施例19〜実施例21の紫外線硬化型組成物を調製した。
【0073】
<実施例22>
実施例1の没食子酸0.05部をハイドロキノン0.5部とした以外は実施例1の組成物と同様にして、実施例22の紫外線硬化型組成物を調製した。
【0074】
<比較例1>
没食子酸0.05部を用いない以外は実施例1の組成物と同様にして、紫外線硬化型組成物を調製した。
【0075】
<比較例2>
没食子酸0.05部、及び酸化防止剤(IRGANOX 1520L)0.2部を用いない以外は実施例1の組成物と同様にして、紫外線硬化型組成物を調製した。
【0076】
<比較例3>
没食子酸0.05部、及び酸化防止剤(IRGANOX 1520L)0.2部を用いないで、フェニルチオエチルアクリレート(BIMAX社製BX−PTEA)0.5部を使用した以外は実施例1の組成物と同様にして、紫外線硬化型組成物を調製した。
【0077】
<比較例4>
実施例13における4−tert−ブチルカテコールをハイドロキノンモノメチルエーテルとした以外は実施例13の組成物と同様にして紫外線硬化型組成物を調製した。
【0078】
<比較例5>
実施例8の没食子酸0.5部を4−エトキシフェノール0.5部とした以外は実施例8の組成物と同様にして、比較例5の紫外線硬化型組成物を調製した。
【0079】
<比較例6>
実施例8の没食子酸0.5部をp−n−ブチルフェノール0.5部とした以外は実施例8の組成物と同様にして、比較例6の紫外線硬化型組成物を調製した。
【0080】
<比較例7>
実施例8の没食子酸0.5部を2,3−ジヒドロキシナフタレン0.5部とした以外は実施例8の組成物と同様にして、比較例7の紫外線硬化型組成物を調製した。
【0081】
以上、実施例1〜実施例22及び比較例1〜比較例7までの紫外線硬化型組成物を用いて、下記試験方法により銀合金の半透明反射膜を備えた「DVD−9」型貼り合わせ光ディスクの耐光性試験(蛍光灯曝露試験)を行った。評価結果を表1〜表4にそれぞれ示した。また、実施例1〜実施例10、実施例16〜実施例22、比較例1〜比較例3及び比較例5〜比較例7までの紫外線硬化型組成物を用いて、下記試験方法により銀合金の半透明反射膜を備えた「DVD−9」型貼り合わせ光ディスクの高温高湿環境下における耐久性を評価した。評価結果を表5〜表7にそれぞれ示した。
【0082】
<耐光性試験(蛍光灯曝露試験)>
記録情報のピットが形成され、その上にアルミニウムの薄膜が50nmの厚さで積層されたポリカーボネート製の光ディスク用基板に上記各実施例及び比較例の紫外線硬化型組成物をディスペンサで塗布し、半透明反射膜として銀を主成分とする合金が15nmの厚さで積層されたポリカーボネート製の光ディスク用基板を重ね合わせた。次いでスピンコーターで硬化塗膜の膜厚が約50〜60μmになるよう回転させた。次いで、ウシオ電機株式会社製「クセノンフラッシュ照射装置 SBC−04型」を用い、設定電圧1800Vで、銀合金半透明反射膜付きの基板側から空気中で10ショット紫外線を照射して、各組成物のDVD−9サンプルを作製した。
【0083】
上記各サンプルについて蛍光灯下における曝露試験を実施し、耐光性を評価した。20Wの蛍光灯(三菱電気製、ネオルミスーパーFLR20SW/M(20ワット))3本を蛍光灯の中心間距離が9cmになるように同一平面上に並列させ、中央の蛍光灯から10cmの位置に光ディスクの読み取り面側(銀合金半透明反射膜側)が蛍光灯に対向するように配置して、蛍光灯の曝露試験を行った。72時間の曝露を行い、その前後の各サンプルのPIエラー、反射率を測定し耐光性を評価した。
【0084】
<高温高湿環境下での耐久性試験>
また、前記の耐光性試験とは別に、各サンプルについて高温高湿条件下での曝露試験を行った。
試験は、エスペック株式会社製「PR−2PK」を使用して、80℃85%RH240時間の高温高湿環境下での曝露試験を行った。試験前後のサンプルについて、銀合金半透明反射膜のついた情報記録層(L0と称す)のPIエラー及び反射率を測定し評価した。
【0085】
<PIエラー及び反射率の測定>
PIエラー及び反射率は、Audio Development 社製 「SA−300」により測定した。またPIエラー比(試験後のエラー数/試験前のエラー数)、及び反射率の比(%)[(試験後/試験前)×100]を計算により求め、評価した。
【0086】
PIエラーの判定の欄は、
PIエラー比が5以下である場合を○
PIエラー比が5を越えて6以下である場合を△
PIエラー比が6を越えた場合を×とした。
反射率の判定の欄はDVD−9の規格により、
試験後の反射率が18〜30%である場合を○
試験後の反射率が18%未満、16%以上である場合を△
試験後の反射率が16%未満である場合を×とした。
また、表中の化合物の略号は以下の化合物を意味する。
・DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート
・LAC:ラウリルアクリレート
・DMAEB:ジメチルアミノ安息香酸エチル
・TMBDPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド
・HCHPK:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
・PTEAC:フェニルチオエチルアクリレート
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
【表5】

【0092】
【表6】

【0093】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射するための第1の反射膜を備え、更に前記第1の反射膜上に紫外線硬化型組成物の硬化皮膜からなる樹脂層を備えた光ディスクであって、
前記第1の反射膜が、銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜であり、
前記紫外線硬化型組成物が、
(1)ラジカル重合性化合物、
(2)式(1)
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4及びRはそれぞれ独立的に、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)水酸基、(iv)炭素数1〜8のアルコキシル基、(v)カルボキシル基、(vi)式(2)
【化2】

(式中、Rは、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルケニル基を表す。)で表される基、或いは(vii)置換基としてカルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシル基又はアルコキシル基を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基若しくはアルケニル基を表すが、R1、R2、R3、R4及びRの中の少なくともひとつは水酸基である。)で表される化合物、及び
(3)ラジカル性の光重合開始剤
を含有することを特徴とする光ディスク。
【請求項2】
更に、情報読み取り用のレーザー光を反射するための第2の反射膜を備えた第2の基板が、前記樹脂層と前記第2の反射膜とが接するように、前記樹脂層上に設けられた請求項1記載の光ディスク。
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物が、式(3)
【化3】

(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルケニル基を表す。)で表される化合物である請求項1又は2のいずれかに記載の光ディスク。
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物が、カテコール、3−sec−ブチルカテコール、3−tert−ブチルカテコール、4−sec−ブチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール、3,5−ジ−tert−ブチルカテコール、3−sec−ブチル−4−tert−ブチルカテコール、3−tert−ブチル−5−sec−ブチルカテコール、4−オクチルカテコール、4−ステアリルカテコール、ハイドロキノン、2−ヒドロキシハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン、2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ハイドロキノン、レソルシノール、オルシノール又はピロガロールである請求項1又は2のいずれかに記載の光ディスク。

【公開番号】特開2006−66044(P2006−66044A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263786(P2004−263786)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】