説明

光デバイスおよびその製造方法

光ファイバの多段階膨張化を実施する方法が説明され、該方法は、断熱条件がファイバ全体で維持されるように連続的な膨張化工程を実施する工程を含む。このように多段階膨張された光ファイバを用いる様々な光デバイスならびにその光デバイスの製造方法もまた説明される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、とりわけ、シングルモード光ファイバデバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全内部反射によって光を導く光ファイバは、周囲のクラッドよりも高い屈折率を有する円筒状のコアから成る。シングルモード発振のために、コアの寸法およびコアとクラッドの間に屈折率差があり、特定の導波路の数またはV数により決定されるように、基本モードのみが所定のスペクトルバンド幅に対して伝搬される(シングルモードファイバは、単一の光線または光のモードを伝送するために設計されている光ファイバである)。
【0003】
図1を参照すると、シングルモード光ファイバシステムの例が10で示される。システム10は、外部クラッド18内に内部コア16を有するシングルモード光ファイバ12を含む。コア16とクラッド18は、外部バッファー14内で保護されており、外部バッファー14は、処理されるファイバの長さに沿って剥離されていることが示される。線A−Aに沿ったファイバ12の断面は20で示される。標準的な電話通信光ファイバ12の典型的な寸法は、コア16の直径が9μmおよびクラッド18の直径が125μmである。
【0004】
標準シングルモードファイバを通過して高出力伝送される場合、ファイバ末端およびインライン接続部または相互接続部は、システムの損傷および故障を引き起こす可能性がある好ましくない後方反射および面の歪みを導入し得る。更なる困難な事態が、例えば、末端における汚れおよび/またはファイバ末端と、関連するコネクタとの間における汚れにより生じ得る。この問題を軽減するように、モードフィールド直径を拡大させることにより出力密度を減少させることが好ましい。このことは、ファイバのテーパー化、熱によるコアの拡散、バルクならびにGRINレンズを含むレンズ化、ファイバ末端の整形および例えばマルチモードファイバ等を含む異種ファイバの接続を含む様々な技術を用いることにより実現できる。しかしながら、これらの各々の解決策は、50μm以下の通常のビーム直径が好ましい、関連した問題を有する。
【0005】
テーパー化の場合、ファイバは細くなり、取り扱うのが困難になりおよび外部の影響をより受けやすくなり、従って、パッケージするのが困難になる。拡散方法は、ビームが、損失が顕著になる前に拡大され得る範囲で制限される。レンズ化は、ファイバ端面での光出力密度を減少させず、概して、自由空間の面の導入、後方反射、接着剤、アラインメントの問題およびインラインファイバのピグテール型バルク光学サブシステム(pigtailed bulk-optic sub-system)内部の損失を含み、および高価である。異種ファイバの使用は、接続部を必要とし、および後方反射ならびに損失を導入し、そこではビーム直径がモード適合せず、および本明細書に記載された方法と比較して相対的に高価な処理であり得る。
【0006】
近年公開されている別の技術は、ファイバ膨張(ファイバのアップテーパー化(up-tapering)またはファイバの拡張とも言う)技術であり、[1]PhD論文、Elaine M. O’Brien、Lightwave Technology Research Centre、リムリック大学と、[2]”Up−tapering of optical fibres using a conventional flame tapering rig”, G. Kakarantzas, L. Prill−Sempere and P.St.J. Russell, CFK2, Optical Society of AmericaCLEO/QELS Conference, 2007と、[3]”Adiabatic dialated standard and speciality optical fibres”, N. Healy, D.F. Murphy, E.M. O’Brien and C.D. Hussey, Poster080 Photonics Ireland 2007 (Galway)と、にファイバ膨張技術に関する記載を見出すことができる。
【0007】
既知のファイバ膨張処理では、膨張されるファイバが一対の保持器の間に配置され、熱源が、ファイバの所定の長さに沿って適用され、コアおよびクラッド材料を軟化させる。熱源は、従来の炎であってよく、またはアーク、レーザーもしくは他の熱源を含む。圧縮力を受けるファイバをそのガラス遷移温度より高い温度で加熱する作業は、ファイバの長さの減少と同時にファイバの幅の拡大をもたらす。
【0008】
アップテーパー化の結果の例は、アップテーパー化が行われた後のファイバ12を示す図2に示される。図2から判るように、ファイバ12の長さが減少し、新たに膨張されたファイバ12aは、ファイバ12aの末端部分とファイバ12aの膨張された中間部分100との間の遷移部22を示している。線B−Bに沿ったファイバ12aの断面の表示は24で示される。アップテーパーされた後の拡大された断面の一般的な寸法は、コア16の直径が30μmおよびクラッド18の直径が375μmである。
【0009】
このようにアップテーパーされたファイバは、例えば、光出力密度の減少、接続された異種ファイバの間におけるモード適合の改善、および結合された、方向性のあるファイバの組における波長応答の平坦化等の多数の利点を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アップテーパー処理は、満たされる必要がある多くの条件により制限される:
1.断熱条件が、満たされる必要がある。すなわち、膨張部分と非膨張部分の間の遷移は、局所的な基本モードのみの発振を確実にして遷移によるいかなる損失をも避けるように、十分に滑らかである必要がある。遷移部が断熱されるために、処理されたファイバに沿った任意の場所において、遷移部は緩徐基準を満たさなければならない:

これは、断熱条件として知られ、aは、遷移部に添った任意の場所zにおけるコア半径であり、da/dzは、テーパー角を規定し、およびzは、システムの励起モード間における、ビート長または出入力振動周期である。最短のビート長は、HEllモード(すなわち、光ファイバの基本モードに対する明示)と、同様の対称性の最も近いモード、すなわちHE12モード、との間のビート長として考えることができる。断熱条件に適応しないことによる遷移部での損失は、ファイバのアップテーパー化におけるより大きな制限の1つである。
2.導波路が、維持される必要がある。従来の光ファイバにおいて、光は、コアとクラッドの間の屈折率差によって可能にされる全内部反射により導かれる。概して、用いられるクラッドは、シリカであり、コアは、シリカにゲルマニウムをドープすることにより達成される高い屈折率を有する。膨張処理中のファイバの加熱は、コアドーパント、すなわちゲルマニウム、の熱拡散をもたらす。拡散により、クラッドとコアの間の屈折率差が減少し、導波がより弱くなる。拡散が制御されない限り、屈曲率段差がもはや有効に存在しない程度まで拡散が起こる可能性があり、および光ファイバはもはや導波路として機能しない。さらに、起こるいかなる拡散も、上述された1.の所定の断熱条件を満たす必要がある。
3.物理的な寸法の不一致。ファイバが膨張されるにつれて、膨張部分は、標準ファイバのリードがもはやその重量を支持することができない程度までより大きくかつより重くなり、不可避なたるみが生じる。
4.モード面積の制限。レーザー発振のための大モード面積ファイバの例を挙げる。モード面積が増加されるにつれて、シングルモードのみの伝搬を維持するファイバの能力が低下し、光は、膨張部のその他のモードと結合し、従って、高度なマルチモード、すなわち構造(structure)、と結合する。多くの技術は、高次モードの影響を除去してシングルモードでの発振を維持するように用いることができる。このことは、膨張されるファイバ部分が短い長さに亘って膨張される場合の最小の懸念である。
【0011】
従って、現在のファイバ膨張技術は、実現可能な膨張、一般的に元のファイバの2.25倍以下の膨張、に制限される。上述された制限を満たしながら、ファイバのより大きな膨張を可能にするファイバ膨張方法の新規な方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、多段階膨張された光ファイバを製造するためのファイバ膨張方法が提供され、該方法は、
第1段階のファイバ膨張処理を光ファイバに行い、光ファイバの第1膨張部分を形成する工程と、
第2段階のファイバ膨張処理を光ファイバの前記第1膨張部分に行い、光ファイバの第2膨張部分を形成する工程と、
を含み、前記第1膨張部分と前記第2膨張部分の間に形成される直径遷移部が、光ファイバの非膨張部分と前記第1膨張部分の間に形成される直径遷移部から間隔が空けられるように、前記第2膨張部分が配置される。
【0013】
連続的な段階の間の遷移部(または転移部、transition)が、互いに間隔を空けて配置されているので、断熱条件を満たすことができ、遷移損失が許容可能な限度内に保たれる。この間隔は、各段階の間の顕著な遷移損失を防ぐように選択される。
【0014】
好ましくは、前記ファイバ膨張処理は、
熱源を光ファイバの長さの一部分に沿って適用して光ファイバの前記一部分を軟化させる工程と、
光ファイバの前記一部分に圧縮力を加えて前記一部分を膨張させる工程と、
を含む。
【0015】
好ましくは、当該方法は、少なくとも1つの連続したファイバ膨張処理を前の段階の膨張部分に繰り返し行う工程を更に含み、前記少なくとも1つの連続したファイバ膨張処理により形成される遷移部が、前の段階によって形成される遷移部から間隔が空けられる。
【0016】
連続的な段階の間の遷移部が、間隔を空けて配置されているので、結果として各段階の間の顕著な遷移損失が生じることが防止される。
【0017】
好ましくは、間隔が、断熱条件が満たされるように選択される。
【0018】
断熱条件が以下に示される:

[aは、直径遷移部に沿った任意の位置zにおけるコア半径であり、da/dzは、テーパー角を規定し、zは、HE11モードとHE12モードの間におけるビート長である。HEllは、光ファイバの基本モードに対する指定であり、HEl2は、同様の対称性の最も近いモードである。]。
【0019】
好ましくは、隣り合った(successive)遷移部の間の間隔は5mmである。このことは、固定した酸素ブタン炎が熱源として使用される場合に好ましい。 レーザー熱源が使用される場合、熱源のより鋭利な熱エッジ(thermal edges)のため、より小さな間隔が好まれるかもしれない。精巧なテーパー状リグ装置によって炎/レーザー熱源を移動させることにより、隣り合った遷移部の間の間隔は、ステップ(階段)状の遷移というよりむしろ、準連続的な遷移または「無間隔(zero-spacing)」まで減少される。
【0020】
好ましくは、前記第1段階のファイバ膨張処理は、前記光ファイバの一部分を前記光ファイバの直径の2倍〜3倍、更に好ましくは直径の2.25倍、に膨張させる工程を含む。
【0021】
好ましくは、前記第2段階のファイバ膨張処理は、光ファイバの前記第1膨張部分を元の前記光ファイバの直径の約4倍〜約5倍、更に好ましくは直径の4.5倍、に膨張させる工程を含む。
【0022】
上述した方法に従って製造される多段階膨張された光ファイバが更に提供される。
【0023】
本発明は、標準光ファイバを大モード面積光ファイバに低損失接続する方法を更に提供し、該方法は、
多段階膨張された光ファイバを製造する工程と、
前記多段階膨張された光ファイバを切断して大モード面積の切断末端を準備する工程と、
前記多段階膨張された光ファイバの前記切断末端を大モード面積光ファイバに接続する工程と、
を含む。
【0024】
一般に、標準ファイバは、大モード面積ファイバ、例えば、高出力ファイバレーザー型のファイバ、に適合する最適モード面積となるところ(マッチングポイント)まで多段階膨張される。次いで、多段階膨張された標準型のファイバは、膨張部分において切断され、大モード面積ファイバに接続されて、標準ファイバの膨張を介して大モード面積ファイバと標準ファイバとの間に低損失界面を形成する。加えてまたはこれに代えて、大モード面積ファイバは、標準ファイバの膨張部分に適合するようにテーパーダウン(taper down)されてよい。
【0025】
好ましくは、多段階膨張された光ファイバを切断する前記工程は、前記ファイバの最大断面に沿ってファイバを切断する工程を含む。
【0026】
好ましくは、当該方法は、前記大モード面積光ファイバのコアの直径が前記切断末端のコアの直径に実質的に一致するように、大モード面積光ファイバを選択する工程を含む。
【0027】
本発明は、更に、上述した方法に従って連結される、標準光ファイバの一部分と大モード面積光ファイバの一部分とを含む光ファイバを提供する。
【0028】
本発明は、更に、光波長変換器の製造方法を提供し、該方法は、
多段階膨張された光ファイバを製造する工程と、
多段階膨張された光ファイバの第1切断末端を準備するように、前記多段階膨張された光ファイバを切断する工程と、
第1末端と第2末端を有しドープされた大モード面積光ファイバを準備する工程と、
多段階膨張された光ファイバの前記切断末端と前記ドープされた大モード面積光ファイバとが光波長変換器を形成するように、多段階膨張された光ファイバの前記切断末端のコアを前記ドープされた大モード面積光ファイバのコアの第1末端に連結し、該光波長変換器が、前記多段階膨張された光ファイバの非切断非膨張末端で受ける第1波長の光信号を、前記ドープされた大モード面積光ファイバの前記第2末端における第2波長の光信号に変換するように作動できる工程と、
を含む。
【0029】
好ましくは、多段階膨張された光ファイバを切断する前記工程は、前記ファイバの最大断面に沿ってファイバを切断する工程を含む。
【0030】
好ましくは、当該方法は、前記大モード面積光ファイバのコアのモード直径が、前記切断末端のコアのモード直径と実質的に一致するように、大モード面積光ファイバを選択する工程を含む。
【0031】
モード直径/面積は、ファイバの物理的な寸法およびコアとクラッドの間の屈折率段差の両方により支配される。物理的な直径が適合していてもモードが適合していないことはあり得る。モード面積間の適合を最適化するように、物理的な直径と屈折率段差の大きさとの両方が、考慮されるべきである。
【0032】
本発明は、更に、上述された方法に従って製造された光波長変換器を提供する。
【0033】
本発明は、更に、光ファイバ増幅器の製造方法を提供し、該方法は、
多段階膨張された光ファイバを製造する工程と、
第1および第2の切断末端および非切断末端をそれぞれ有し多段階膨張された光ファイバの第1および第2部分を準備するように、前記多段階膨張された光ファイバを切断する工程と、
第1末端と第2末端を有しドープされた大モード面積光ファイバを準備する工程と、
多段階膨張された光ファイバの前記部分の前記第1および第2切断末端のコアを前記ドープされた大モード面積光ファイバの各第1および第2末端のコアに連結して、光ファイバ増幅器を形成し、該増幅器が、多段階膨張された光ファイバの前記部分と前記ドープされた大モード面積光ファイバとを通過して前記第1および第2非切断末端の間に伝送される光信号を増幅させるように作動できる工程と、
を含む。
【0034】
好ましくは、多段階膨張された光ファイバを切断する前記工程は、前記ファイバの最大断面に沿ってファイバを切断する工程を含む。
【0035】
本発明は、更に、上述された方法に従って製造された光ファイバ増幅器を提供する。
【0036】
本発明は、更に、光ファイバレーザーの製造方法を提供し、該方法は、
多段階膨張された光ファイバを製造する工程と、
第1および第2の切断末端および非切断末端をそれぞれ有し多段階膨張された光ファイバの第1および第2部分を準備するように、前記多段階膨張された光ファイバを切断する工程と、
前記切断末端に反射手段を備えるように、前記第1および第2切断末端を処理する工程と、
第1末端および第2末端を有しドープされた大モード面積光ファイバを準備する工程と、
共鳴レーザー共振器(resonant lasing cavity)を前記第1および第2切断末端の間に備えて光ファイバレーザーを形成するように、多段階膨張された光ファイバの前記部分の前記第1および第2切断末端のコアを、前記ドープされた大モード面積光ファイバの各第1および第2末端のコアに連結する工程と、
を含む。
【0037】
レーザーを発生させるために、共鳴利得共振器(resonant gain cavity)がファイバにおいて必要である。この共振器は、ポンプ光源により励起され、共鳴は、共振器のいずれかの端(両端)の反射体を用いてレーザー波長において共振器内で達成される。ファイバシステムにおいて、末端の反射体は、一般的にファイバブラッググレーティングであり、それは最も好都合かつ効率的かつ好適な方法である。しかしながら、更なる種類の反射手段が用いられてもよく、例えば、レーザー共振器としてファイバのいずれかの側(両側)に「穴を開け(drill)」、銀/金を堆積させて末端での反射を実現することが可能である。
【0038】
好ましくは、多段階膨張された光ファイバを切断する前記工程は、前記ファイバの最大断面に沿ってファイバを切断する工程を含む。
【0039】
好ましくは、前記処理工程は、切断された両末端に部分的な末端反射体を準備する工程を含む。好ましくは、前記処理工程は、前記切断末端にグレーティングパターンを形成する工程を含む。好ましくは、前記グレーティングパターンは、ファイバブラッググレーティングを含む。
【0040】
本発明は、更に、上述された方法に従って製造された光ファイバレーザーを提供する。
【0041】
好ましくは、ファイバは、以下の種類のガラスの1つから選択される:ホスフェート、シリカ、テルル化物、フッ化物、カルコゲニド。
【0042】
好ましくは、ファイバは、レアアース材料によりドープされている。好ましくは、ファイバは、以下のドーパンドの1つによりドープされている:エルビウム、ツリウム、クロム、イッテルビウム、ネオジム、プラセオジム、テルビウムまたはそれらの組み合わせ。
【0043】
一般的な用語「膨張、拡張、拡大およびアップテーパー」は、相互に置換可能であり、および本発明に記載されるように光ファイバの直径拡大のことを言うように用いられることが理解できる。
【0044】
本発明の実施形態は、単なる例として添付図面を参照して用いて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、既知の光ファイバシステムを示す図である。
【図2】図2は、1段階アップテーパー化が行われた後の図1の光ファイバを示す図である。
【図3】図3は、本発明に従って2段階アップテーパー化が行われた後の図1の光ファイバを示す図である。
【図4】図4は、図3のアップテーパーされたファイバを用いて製造できる一連の光デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、多段階のファイバ膨張処理に関する。第1段階の膨張のために、図1に示すように、そのバッファー14が剥離された光ファイバ12の一部分が、一対の真空チャックの間において引っ張られて保持されている。圧縮力がファイバ12に掛かりながら、光ファイバ12の長さよりも短い長さを有する熱源、例えば、酸素ブタン炎バーナー、が光ファイバ12の長さの一部分に沿って適用される。
【0047】
概して、熱源は、比較的長い炎を含んでよく、熱源の長さは、膨張されるのを望むファイバの当該一部分の長さに相当する。または、熱源は、ファイバ12の当該一部分の長さに沿って前後に移動される比較的短い炎を含んでよい。
【0048】
熱源が光ファイバの材料を軟化させると、圧縮はファイバ12の本体を拡張または膨張させるように働く。この処理は、ファイバの膨張またはアップテーパー化に関する限界、例えば、遷移部での損失、が顕著になり始めるまで繰り返される。大部分の光ファイバの場合、このことは、図2の膨張されたファイバ12aの部分100に示されるように、元のファイバ12の中間部分が元の断面積の概ね2倍〜3倍に拡大される時点に近づく。
【0049】
第2段階の膨張化が行われ、熱源が膨張されたファイバ12aの膨張部分100の一部分に沿って適用される。第2段階の膨張化のための熱源が、第1段階のための熱源よりも短いファイバ12aの長さに沿って適用され、その結果、第1段階の膨張化によって得られる光ファイバの直径遷移部22から離れて、第2段階の膨張化が起こる。第1段階の膨張化のように、圧縮力がファイバ12aに加えられ、ファイバ12aの加熱部分の膨張が起こる。第1の膨張化段階のように、第2の膨張化段階は、ファイバの膨張またはアップテーパーに関する限界が顕著になり始めるまで、または所望の膨張が実現されるまで、行うことができる。
【0050】
図3を参照すると、第2段階膨張された光ファイバは12bで示される。第2の膨張化段階の結果、部分100aの境界内で形成された、第1段階膨張されたファイバ12aの膨張部分100の直径よりも大きな直径を有する第2膨張部分102によって、第1段階膨張されたファイバ12aの膨張部分100は、長さが部分100aにまで効率的に縮められている。図3から判るように、第1段階膨張されたファイバ100aと第2段階膨張されたファイバ102との間の直径遷移部26が、元の非膨張光ファイバ12と第1段階膨張されたファイバ100aとの間の直径遷移部22から間隔を空けて配置されている。膨張部分100a、102が、遷移部22、26の間の間隔を維持するように配置されているので、このことが、断熱条件が満たされることに起因して境界部での遷移損失の発生を防ぐ。
【0051】
線C−Cに沿った第2段階膨張されたファイバ12bの断面の表示は28で示される。アップテーパーされた後の拡大された断面の一般的な寸法は、コア16の直径が45μmおよびクラッド18の直径が560μmである。
【0052】
2段階膨張および剥離されたファイバの例を考慮すると、最小の初期剥離長さは、約160mmであり、以下によって支配される:
・処理されるファイバの両末端における、剥離されたバッファー14からの間隔5mm
・直径が280ミクロン以下である、中央に位置した第1段階の膨張部分の長さ15mm(第2段階の膨張部分を含む)
・直径が560ミクロン以下である、中央に位置した第2段階の膨張部分の長さ5mm
【0053】
ファイバを膨張させるための条件、例えば、断熱条件、が満たされる限り、必要に応じて、膨張されたファイバの直径を更に増加させるように更なる膨張化段階が行われてよいことは理解できる。2段階膨張のための条件および限度を前提とすると、3段階膨張処理が、物理的な直径において元のファイバの寸法から6倍〜8倍の増加をもたらし得ることが予測される。好ましくは、約5mmの最小距離が、隣り合った遷移部分の間において維持される。
【0054】
アップテーパーされたファイバは、異なる光ファイバデバイスの構成に用いることができる。例えば、エルビウムがドープされたレーザーのような能動デバイスのために、膨張部分は、標準ファイバと、エルビウムがドープされた別の大モード面積ファイバ部分との間に界面を提供する。例えば、ファイバ分光計のために、レーザーを用いて所定のパターンを光により生じさせる、または端面に所定のパターンを形成する、ことにより、膨張された切断端面が処理されてよい。
【0055】
図3に示される多段階膨張されたファイバ12bについて、ファイバ12bは、まず、線C−Cに沿って、すなわち、ファイバ12bの最大断面に沿って、切断される。一旦、切断された多段階膨張ファイバ12bが準備されると、このファイバは、異なる製造方法でドープされたファイバの適切な部分と組み合わすことができ、多段階膨張されたファイバを用いる改良された光デバイスを製造することができる。このような光デバイスの例は、図4(a)〜(c)に見ることができる。
【0056】
ドープされたファイバの部分(図4に30で示される)が、元の非膨張光ファイバ12の直径よりも大きい直径を有するので、モード分布は、ガウス形モード(Gaussian shape mode)を有する非膨張ファイバに対してよりも平坦である。従って、膨張された光ファイバ30内のドーパントとのより効果的かつより均一な相互作用を、より平坦な利得応答を有する同じ長さの元の非膨張ファイバ12よりも、ファイバ30にもたらすことができる。
【0057】
さらに、特定のガラスファイバ、例えば、ホスフェートガラスファイバ、の使用は、例えばシリカガラスファイバよりも、ずっと高い濃度のドーパントを可能にする。従って、多段階膨張に適した第1ガラスファイバ(例えば、シリカ)を選択し、高濃度ドープに適したガラスファイバ(例えば、ホスフェート)に、膨張されたファイバを接続することによって、結果として、光デバイスは、デバイスの比較的小さな設置面積のために向上した増幅作用を有して製造できる。
【0058】
上述したデバイスは、ホスフェートガラスファイバを用いているが一方で、他の種類のガラスファイバ、例えば、ホスフェート、シリカ、テルル化物、フッ化物、カルコゲニドまたはビスマス等、が用いられてもよいことは理解できる。同様に、本明細書の例は、ドーパントとしてエルビウムを用いているが一方で、ファイバ部分が、以下のドーパントのいずれか1つによりドープされてよい:エルビウム、ツリウム、クロム、イッテルビウム、プラセオジム、ネオジム、テルビウムまたはそれらの組み合わせ。
【0059】
図4(a)を参照すると、光波長変換器は概して32で示される。変換器32は、適切なクラッド38を備えエルビウムがドープされたホスフェートコア36を有するファイバ30の所定の長さの第1末端30aに連結された、膨張ファイバ12bの切断末端34aを含む。ファイバ30は、ファイバ12bの切断末端34aの直径と実質的に同じ直径を有する。ファイバ12bの非切断非膨張末端は、光バッファー14に連結され、バッファー14とファイバ12bとは、光波長変換器32のために、膨張されたファイバの入力ランチ(launch)を一緒に形成する。ファイバの部分30の拘束されていない第2末端30bは、光バッファー14における信号入力に対して、波長変換された出力を提供するように用いることができる。このような変換器32は、様々な目的のために、例えば電荷結合素子(CCD)検出の目的のために赤外光を可視光に変換するように、高い利得を有する波長変換器を提供するように用いることができる。
【0060】
図4(b)を参照すると、光ファイバ増幅器は概して40で示される。増幅器40は、適切なクラッド38を備えエルビウムがドープされたホスフェートコア36を有するファイバ30の所定の長さの第1末端30aに連結された、膨張ファイバ12bの第1切断末端34aを含む。ファイバ30の第2末端30bは、膨張されたファイバ12bの第2切断末端34bに連結される。
【0061】
ファイバ12bのそれぞれの第1および第2非切断非膨張末端は、図4(b)に35a、35bで示される。ファイバ12bの第1切断および非切断末端34a、35bは、光増幅器40のために、膨張されたファイバの入力信号リードおよび前進ポンプランチ(forward pump launch)を形成する。同様に、第2切断および非切断末端34b、35bは、光増幅器40のために、膨張されたファイバの出力信号リードおよび後進ポンプランチ(reverse pump launch)を形成する。示される光増幅器40は、例えば再生する目的のために、光信号が比較的長いファイバに沿って伝播するように光信号を増幅させるシステムに用いるのに適している。
【0062】
図4(c)を参照すると、光ファイバレーザーは概して50で示される。膨張されたファイバ12bの切断末端34a、35bをファイバの部分30に連結する前に、切断末端34a、34bに部分的な末端反射をもたらすように切断末端34a、34bを処理するという相違点を伴って、レーザー50は、上述された光増幅器40と同様の様式で構成されてよい。ファイバ内でレーザーを発生させるために、共鳴利得共振器はファイバにおいて必要である。概して、いくつかの形態の反射体が共鳴利得共振器のいずれかの末端(両末端)に備えられ、その場合、共振器はポンプ光源によって励起される。共鳴は、レーザー波長の光を反射するように作動できる反射体を用いることにより共振器内で達成される。 ファイバシステムにおいて、末端の反射体は、一般的にファイバブラッググレーティングであり、それは最も好都合かつ効率的かつ好適な方法である。しかしながら、更なる種類の反射手段が用いられてもよく、例えば、レーザー共振器としてファイバのいずれかの側(両側)に「穴を開け(drill)」、銀/金を堆積させて末端での反射を実現することが可能である。図4(c)において、反射体は、ファイバグレーティング52の形態をして備えられる。グレーティング52は、ファイバの部分30に沿った特定の波長の光の部分的な反射のために備えられる。この更なる処理段階は、例えば、ファイバにグレーティングパターンを形成する、またはグレーティングパターンを光により生じさせる、等の任意の適切なグレーティング製造方法を含んでよい。
【0063】
本発明は、本明細書に記載された実施形態に制限されず、本発明の特許請求の範囲の技術的範囲から逸脱せずに変更または改良することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1段階のファイバ膨張処理を光ファイバに行い、光ファイバの第1膨張部分を形成する工程と、
第2段階のファイバ膨張処理を光ファイバの前記第1膨張部分に行い、光ファイバの第2膨張部分を形成する工程と、
を含み、
前記第1膨張部分と前記第2膨張部分の間に形成される直径遷移部が、光ファイバの非膨張部分と前記第1膨張部分の間に形成される直径遷移部から間隔が空けられるように、前記第2膨張部分が配置されることを特徴とする、多段階膨張された光ファイバを提供するファイバ膨張方法。
【請求項2】
前記ファイバ膨張処理が、
熱源を光ファイバの長さの一部分に沿って適用して光ファイバの前記一部分を軟化させる工程と、
光ファイバの前記一部分に圧縮力を加えて前記一部分を膨張させる工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、少なくとも1つの連続したファイバ膨張処理を前の段階の膨張部分に繰り返し行う工程を更に含み、前記少なくとも1つの連続したファイバ膨張処理により形成される遷移部が、前の段階によって形成される遷移部から間隔が空けられることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
多段階膨張された光ファイバに沿った任意の場所において、膨張部の角度が、以下の基準:

[式中、da/dzは膨張部のテーパー角を規定し、aはファイバの局所的なコア半径であり、zはHE11モードとHE12モードとの間のビート長である。]
を満たすように、間隔が選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
隣り合った遷移部の間の間隔が、5mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1段階のファイバ膨張処理が、前記光ファイバの一部分を前記光ファイバの直径の約2倍〜約3倍に膨張させる工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1段階のファイバ膨張処理が、前記光ファイバの一部分を前記光ファイバの直径の約2.25倍に膨張させる工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2段階のファイバ膨張処理が、光ファイバの前記第1膨張部分を前記光ファイバの直径の約4倍〜約5倍に膨張させる工程を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2段階の膨張処理が、光ファイバの前記第1膨張部分を前記光ファイバの直径の約4.5倍に膨張させる工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
多段階膨張された光ファイバを請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法に従って製造する工程と、
前記多段階膨張された光ファイバを切断して、多段階膨張された光ファイバの第1切断末端を準備する工程と、
第1末端および第2末端を有する大モード面積光ファイバを準備する工程と、
多段階膨張された光ファイバの前記切断末端のコアを、前記大モード面積光ファイバのコアの第1末端に連結する工程と、
を含むことを特徴とする、標準光ファイバと大モード面積ファイバの連結方法。
【請求項11】
多段階膨張された光ファイバを請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法に従って製造する工程と、
前記多段階膨張された光ファイバを切断して、多段階膨張された光ファイバの第1切断末端を準備する工程と、
第1末端と第2末端を有しドープされた大モード面積光ファイバを準備する工程と、
多段階膨張された光ファイバの前記切断末端と前記ドープされた大モード面積光ファイバとが光波長変換器を形成するように、多段階膨張された光ファイバの前記切断末端のコアを前記ドープされた大モード面積光ファイバのコアの第1末端に連結し、該光波長変換器が、前記多段階膨張された光ファイバの非切断非膨張末端で受ける第1波長の光信号を、前記ドープされた大モード面積光ファイバの前記第2末端における第2波長の光信号に変換するように作動できる工程と、
を含むことを特徴とする、光波長変換器の製造方法。
【請求項12】
多段階膨張された光ファイバを請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法に従って製造する工程と、
第1および第2の切断末端および非切断末端をそれぞれ有し多段階膨張された光ファイバの第1および第2部分を準備するように、前記多段階膨張された光ファイバを切断する工程と、
第1末端および第2末端を有しドープされた大モード面積光ファイバを準備する工程と、
多段階膨張された光ファイバの前記部分の前記第1および第2切断末端のコアを、前記ドープされた大モード面積光ファイバの各第1および第2末端のコアに連結する工程と、
光ファイバ増幅器を形成するように多段階膨張された光ファイバの前記部分の第1および第2非切断末端を連結し、該増幅器が、多段階膨張された光ファイバの前記部分と前記ドープされた大モード面積光ファイバとを通過して前記第1および第2非切断末端の間に伝送される光信号を増幅するように作動できる工程と、
を含むことを特徴とする、光ファイバ増幅器の製造方法。
【請求項13】
多段階膨張された光ファイバを請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法に従って製造する工程と、
第1および第2の切断末端および非切断末端をそれぞれ有し多段階膨張された光ファイバの第1および第2部分を準備するように、前記多段階膨張された光ファイバを切断する工程と、
前記切断末端に反射手段を備えるように、前記第1および第2切断末端を処理する工程と、
第1末端と第2末端を有しドープされた大モード面積光ファイバを準備する工程と、
共鳴レーザー共振器を前記第1および第2切断末端の間に備えて光ファイバレーザーを形成するように、多段階膨張された光ファイバの前記部分の前記第1および第2切断末端のコアを前記ドープされた大モード面積光ファイバの各第1および第2末端のコアに連結する工程と、
を含むことを特徴とする、光ファイバレーザーの製造方法。
【請求項14】
前記処理工程が、少なくとも1つの前記切断末端にグレーティングパターンを形成する工程;または少なくとも1つの前記切断末端にグレーティングパターンを光により生じさせる工程の1つを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
多段階膨張された光ファイバを切断する前記工程が、前記ファイバの最大断面に沿ってファイバを切断する工程を含むことを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ドープされた大モード面積光ファイバのコアのモード直径が前記切断末端のコアのモード直径に実質的に一致するように、ドープされた大モード面積光ファイバを選択する工程を更に含むことを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ドープされた大モード面積光ファイバが、以下の種類のガラス:ホスフェート、シリカ、テルル化物、フッ化物、カルコゲニド、ビスマスの1つから選択されることを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ドープされた大モード面積光ファイバが、レアアース材料によりドープされていることを特徴とする請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ドープされた大モード面積光ファイバが、以下のドーパント:エルビウム、ツリウム、クロム、イッテルビウム、ネオジム、プラセオジム、テルビウムまたはそれらの組み合わせの1つによりドープされていることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項11、または請求項11に従属する請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法に従って製造された光波長変換器。
【請求項21】
請求項12、または請求項12に従属する請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法に従って製造された光ファイバ増幅器。
【請求項22】
請求項14に従属する請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法に従って製造された光ファイバレーザー。
【請求項23】
請求項10、または請求項10に従属する請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法に従って連結された、標準光ファイバの一部分と大モード面積光ファイバの一部分とを含むファイバ。
【請求項24】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法に従って製造された多段階膨張された光ファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【公表番号】特表2013−507645(P2013−507645A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532522(P2012−532522)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063151
【国際公開番号】WO2011/042276
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512091121)ウォーターフォード・インスティテュート・オブ・テクノロジー (3)
【氏名又は名称原語表記】WATERFORD INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【出願人】(512091132)ユニバーシティー・オブ・リメリック (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF LIMERICK
【Fターム(参考)】