説明

光パルス発生装置

【課題】光パルス発生装置に関し、電源に直列接続した複数の半導体レーザダイオードを複数の光源として用いる簡単な構成で光パルス列を容易に発生させ得るようにする。
【解決手段】複数の半導体レーザダイオード12及び13からの発振光を混合して光パルスを発生させる光パルス発生装置に於いて、複数の半導体レーザダイオード12及び13を電源11に対して電気的に直列に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光周波数コムを作成して光パルス列を発生させる光パルス発生装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光時分割多重(optical time division multiplex:OTDM)などを利用する全光信号処理に依る光通信システム、或いは、マイクロ波/ミリ波通信などの高速化に向けて、任意の波長、周期を持つ光パルス列を安定に発生させることができる光源が必要とされている。
【0003】
従来、光パルス列を発生させる方法としては、(1)光に変調をかける方法、(2)モードロックレーザを用いる方法、(3)異なる周波数の光を混合し、そのビートにより光パルス列を発生させる方法が提案されている。
【0004】
前記(1)の方法は、CW信号を直接、或いは、外部変調器を用いて光をオンオフすることに依って光パルス列を作成する方法である。(2)の方法は、レーザ光の複数のモードの位相をある関係で一致させることによって光パルス列を発生させる方法であり、半導体レーザに過飽和吸収領域を加えることで、コンパクトな素子で高速の短パルス列を発生させることが可能である。(3)の方法は、発生する光の周波数が異なる複数の光源を同じ周波数間隔で並べ、その光のビートを採って、光パルス列を発生させる方法である。
【0005】
前記(3)の方法は、本発明に関連をもつので、その特徴とするところについて具体的に記述すると、前記(1)の方法のように、一つの光源に変調にかける方法に比較して高い繰り返し周波数の光パルス列を発生することができ、また、前記(2)のモードロックレーザを用いる場合に比較して光パルス列の繰り返し周波数を自由に変えることができる旨の特徴をもっている。
【0006】
然しながら、前記(3)の方法に依って発生する光パルス列の位相は、複数の光源の光の位相差に依って決まるので、光パルス列にジッターが発生しないようにする為には、前記異なる複数の光源の位相関係がずれないように固定(ロック)することが必要である。
【0007】
今まで用いられている方法では、一つのレーザ光源(マスターレーザ)に変調をかけ、その光を他の複数のレーザ光源(スレーブレーザ)に入射することで、複数のレーザ光源の位相関係を固定する方法が取られている。
【0008】
図3は異なる周波数の光を混合して得られるビートで光パルス列を発生させる従来例を表す要部ブロック図であり、図に於いて、1は発振周波数f0 のマスターレーザ。2は変調周波数fm の変調器、3及び4はフィルター、5は第1のスレーブレーザ、6は第2のスレーブレーザ、光カプラ7をそれぞれ示している。
【0009】
マスタレーザ1で発生させた周波数f0 の光を変調器2に於いて変調周波数fm で変調するとf0 +ΣNfm (Nは整数)の変調光が得られ、その変調光をフィルター3及び4で振り分け、f0 +Mfm (Mは整数)なる光を第1のスレーブレーザ5に入力し、そして、f0 −Nfm (Nは整数)なる光を第2のスレーブレーザ6にそれぞれ入力し、第1のスレーブレーザ5の出力光と第2のスレーブレーザの出力光とを混合器7で混合すると出力ビート光として、図3に付記してある波形の光パルス列が得られる。尚、この場合の光パルス列の繰り返し周波数は1/(M−N)fm である。
【0010】
さて、図3に見られる従来例に依る方法を実施するには、光パルス発生装置の構成が複雑であるばかりでなく、光パルス列の繰り返し周波数を高くする為に二つのスレーブレーザ3及び4の周波数差を大きく採った場合、マスタ光源であるマスターレーザのロックが難しくなるという問題があり、その理由は、マスターレーザ光の高調波成分のパワーが低下する為である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明では、電源に直列接続した複数の半導体レーザダイオードを複数の光源として用いる簡単な構成で光パルス列を容易に発生させ得るようにする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に依る光パルス発生装置に於いては、複数の半導体レーザダイオードからの発振光を混合して光パルスを発生させる光パルス発生装置に於いて、前記複数の半導体レーザダイオードを電源に対して電気的に直列に接続したことが基本的な特徴となっている。
【発明の効果】
【0013】
前記手段を採ることに依り、外部注入レーザ及び高速変調器を用いる従来例に比較して高い周波数の繰り返し光パルス列発生についてロックが可能である。また、簡単且つ容易に複数の光源の位相関係を固定することができ、小型化・低コスト化に有利な構成となっている。更にまた、発振波長を変えることができる半導体レーザダイオードを用いることに依り、パルスの繰り返し周波数を自由に変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の実施の形態を説明する為の光パルス発生装置を表す要部ブロック図であり、図に於いて、11は電源、12は第1の半導体レーザダイオード、13は第2の半導体レーザダイオード、14は光カプラをそれぞれ示している。
【0015】
レーザダイオード12とレーザダイオード13とは電源11に対して直列に接続されているので、電源11の揺らぎは二つの半導体レーザダイオード12及び13に対して同じ位相で加わるのみならず、何れか一方のレーザダイオードの内部揺らぎによって電流が増加し、屈折率が増加して光の位相が遅れた場合、他方のレーザダイオードに流れる電流も増加して位相が遅れることになる為、二つのレーザダイオード11及び12からの光の位相関係は両レーザダイオードが電気的に応答し得る範囲内で固定される。
【0016】
半導体レーザダイオードの線幅は、2〜3MHz程度であって、本来的に位相は電気的に応答できる範囲内で安定している為、前記した方法を採ることで、位相関係は完全に固定することができる。
【0017】
上記の構成は、通常の半導体技術で集積化することができるから、充分に小型化が図れると同時に両方のレーザダイオード12及び13の温度変動を同一に保たれ、繰り返し周波数は更に安定化させることができる。
【0018】
また、2 つのレーザダイオード12及び13のうち、何れか一方を可変波長レーザとすることにより、発生する光パルスの繰り返し周波数は自由に変えることができる。
【0019】
上記実施の形態では、2個の光源の場合について説明したが、光パルス幅を更に短くする為には3種類以上の周波数を混合する必要があり、その場合に於いては、3つ以上の光源の位相関係を安定化しなければならないが、本発明では、3個以上の半導体レーザダイオードを電源に対して直列に接続することのみに依って容易に目的を達成することができる。
【実施例1】
【0020】
図2は本発明の一実施例を説明する為の光パルス発生装置を表す要部ブロック図であって、図1に於いて用いた記号と同じ記号で指示した部分は同一或いは同効の部分を表すものとする。
【0021】
図に於いて、14は3dBの光カプラ、15は半導体レーザダイオードを取り付けるヒートシンク、16は温度コントローラをそれぞれ示している。
【0022】
この実施例では、光源である第1の半導体レーザダイオード12及び第2の半導体レーザダイオード13として、光通信用に多用されているInGaAsP−DFB(distributed feedback)レーザダイオードを用いている。尚、図2では各半導体レーザダイオードをInGaAsP−DFB−LDと表記してある。
【0023】
二つのレーザダイオード12及び13は、温度安定化のため、同一のヒートシンク上に設置され、温度コントローラ16に依って温度コントロールされるようになっていて、電源11に対して直列に接続され、10mAの電流が流される。
【0024】
一方のレーザダイオード12の発振周波数は195.8THz(波長1550nm)、他方のレーザダイオード13の発振周波数は195.9THz(波長1549nm)、出力はそれぞれ10mWで発振する。
【0025】
レーザダイオード12及び13の出力は1対1の例えば光ファイバ型の光カプラ14で結合されるようになっている。この構成に依って、光カプラ14で混合された光は、繰り返し周波数100GHz、平均出力10mWの正弦波変調された光出力となって得られるから、これをパルスにするには、例えば光導波路型の非線形デバイス(半導体過飽和吸収体)を通過させてパルス幅を圧縮すれば良い。
【0026】
実験に依れば、640GHz以上にもなる高い周波数の繰り返し光パルス列を確実にロックすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態を説明する為の光パルス発生装置を表す要部ブロック図である。
【図2】本発明の一実施例を説明する為の光パルス発生装置を表す要部ブロック図である。
【図3】異なる周波数の光を混合して得られるビートで光パルス列を発生させる従来例を表す要部ブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
11 電源
12 第1の半導体レーザダイオード
13 第2の半導体レーザダイオード
14 3dB光カプラ
15 半導体レーザダイオードを取り付けるヒートシンク
16 温度コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体レーザダイオードからの発振光を混合して光パルスを発生させる光パルス発生装置に於いて、
前記複数の半導体レーザダイオードを電源に対して電気的に直列に接続したこと
を特徴とする光パルス発生装置。
【請求項2】
複数の半導体レーザダイオードが一つの基板に集積されていること
を特徴とする請求項1記載の光パルス発生装置。
【請求項3】
複数の半導体レーザダイオードのうち少なくとも1つが発振波長を制御可能な半導体レーザダイオードであること
を特長とする請求項1記載の光パルス発生装置。
【請求項4】
電源に対して電気的に直列接続された第1のDFBレーザダイオード及び第2のDFBレーザダイオードと、
第1のDFBレーザダイオード及び第2のDFBレーザダイオードからの第1の光出力及び第2の光出力がそれぞれ入力され且つそれ等入力光の混合光を出力する光カプラと
を備えてなることを特徴とする光パルス発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−242978(P2007−242978A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65113(P2006−65113)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】