説明

光ビームステアリング装置

【課題】挿入損失を低減し,偏光不感受性を改善する。
【解決手段】本発明は,光ビームステアリング装置に関する。実質的に相互に直交する,少なくとも,第1の偏光を有する第1の部分と,第2の偏光を有する第2の部分とに光ビームを分割するように構成されるスプリッタと,上記第1の部分を受け,配向子の向きが上記第1の偏光に対して実質的に配向されるように構成される第1の液晶デバイス領域と,上記第2の部分を受け,配向子の向きが上記第2の偏光に対して実質的に配向されるように構成される第2の液晶デバイス領域とを具備する,光ビームステアリング装置が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,概して,光ビームステアリング装置と,光ビームステアリング装置を具備する光アド/ドロップマルチプレクサ(OADM:optical add drop multiplexer)と,光ビームステアリング用液晶デバイスと,光ビームステアリング用液晶デバイスの製造方法とに関する。より詳細には,本発明は,偏波ダイバーシティ再構成可能な光アド/ドロップマルチプレクサ(ROADM:reconfigurable optical add drop multiplexer)に関する。
【背景技術】
【0002】
電気通信システムにおいて,デバイスの入力ポートに入る光は,任意の偏光状態を有し,当該偏光状態は時間と共に変化し得る。このような光をデバイスを通じてルーティングする場合,出力ポートに現れる光が,入力された偏光状態に依存しない振幅を有していることが好ましい。
【0003】
変調信号による動作を可能にするために,デバイスまたはシステムが偏光に「対処する(honour)」,すなわち,異なる偏光ビームの相対的な偏光異常(disturbance:ばらつき)を生じさせることなく動作を可能にするために,異なる偏光ビーム経路をマッチングすることが好ましい。例えば,偏光不感受性位相変調を用いることによって,ステアリングまたはルーティングされる出力ビームの強度が実質的に入力ビームの偏光状態に影響されないことを保証することができる。より詳細には,偏光不感受性位相変調によって,挿入損失を,既知かつ最小限かつ/または時間非依存のものにすることができる。
【0004】
光学デバイスまたは 光学系は,液晶を用いる場合がある。ネマチックまたは強誘電体液晶位相を呈する材料中の液晶分子は通常,棒形状を有する。任意の点の近傍に存在する上記液晶分子の好ましい向きは,n(無次元単位ベクトル)で表される。ここで,nおよび−nは完全に等価である。換言すると,液晶デバイスは,矢印と見なすことができる液晶配向子(director:ダイレクタ)を有しており,これによって,液晶材料中の液晶分子の平均的な好ましい方向が示される。この矢印の(180°離れた)双方向の値は等しい。
【0005】
強誘電体液晶(Sc)材料は,LCOS(Liquid-Crystal-on-Silicon)デバイスの平面上で大幅にスイッチする。上記LCOSデバイスに電界を印加すると,配向子はLCOSデバイス平面上でその向きを変える。配向子コーンの周囲において,2つの対向する位置のうちの1つをとるようにスイッチするピクセルアレイによって,二位相レベル0およびpiを有するアレイが(一定の条件下で)生成される。このような二位相アレイは,LCOSデバイスの出力平面上において,第1の次数(ルーティング)ピークと,望ましくない対称的な高次数との両方を有する回折ピークを形成する。その結果,電力損失および潜在的なクロストークが生じる。この効果を用いるLCOSデバイスの損失は,入力された偏光状態に依存しない,すなわち,当該LCOSデバイスは偏光不感受性のものである。しかし,液晶層の厚さやスイッチング角度には依存している。
【0006】
液晶は,反射層によって被覆されたシリコン基板上に液晶材料を有するLCOSデバイスに提供される場合がある。このような反射性基板に塗布された液晶は,光を反射または遮蔽させるように制御可能である。詳細には,LCOSは,液晶によって被覆された(例えば,アルミニウムを含む)反射コーティングと,当該液晶上のガラス層とを有するシリコンCMOSチップを具備する。
【0007】
本発明を理解するために,以下の開示を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,760,149号明細書"Compensation of Polarisation Dependent Loss", 8/7/02, Nortel Networks LTD
【特許文献2】米国特許第6,807,371号明細書"Reconfigurable Add-Drop Multiplexer", 27/11/00, Nortel Networks LTD
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0161567号明細書"Tunable Wavelength Multiplexer", 28/2/02, Engana PTY LTD
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0210727号明細書"Narrowband Filter Method and Apparatus", 7/5/02, Engana PTY LTD
【特許文献5】米国特許第7,092,599号明細書"Wavelength Manipulation System and Method", 12/11/03, Engana PTY LTD
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0100277号明細書"Wavelength Manipulation System and Method", 12/11/03, Engana PTY LTD
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0276537号明細書"Dual-Source Optical Wavelength Processor", 14/6/04, Engana PTY LTD
【特許文献8】国際公開第2006/034533号"Wavelength Selective Reconfigurable Optical Cross-connect", 23/9/05, Engana PTY LTD
【特許文献9】国際公開第2006/047834号"Optical Calibration System and Method", 8/11/04, Engana PTY LTD
【特許文献10】米国特許出願公開第2002/131702号明細書"Combined multiplexer and demultiplexer for optical communication systems", Morey William W; Chen Ray T; Fluisar Corporation
【特許文献11】米国特許出願公開第20O4/136071号明細書"Diffractive optics assembly in an optical signal multiplexer/demultiplexer", Morey William W; Deng Xuegong; Chen Ray T
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】"High information-content projection display based on reflective LC-on-silicon light valves", R.L. Melcher, M. Ohhata, K. Enami, J. SID 6/4 (1998) p.253-256)
【非特許文献2】"Semiconductor manufacturing techniques for ferroelectric liquid crystal microdisplays", M. Handschy, Solid State Technology May 2000, 151-161
【非特許文献3】"The Silicon Backplane Design for an LCOS Polarization-Insensitive Phase Hologram SLM", Moore, J.R.; Collings, N.; Crossland et al.; IEEE Photonics Tehnology Letters, vol.20, Issue 1, Jan.l, 2008 Page(s):60-62
【非特許文献4】J. Ertel et al "Design and performance of a reconfigurable liquid crystal based optical add/drop multiplexer", JLT 24(4) (2006) pp. 1674-80
【非特許文献5】J.M. Roth et al., "Large-aperture wide field of view optical circulators", IEEE PTL 17(10) (2005) pp.2128-30
【非特許文献6】Dynamic digital holographic wavelength filtering; Parker, M.C. Cohen, A.D. Mears, RJ. ; Fujitsu Telecommun. Europe Ltd. Res., Colchester; Journal of Lightwave Technology, Publication Date: Jul 1998, Volume: 16, Issue 7, page(s): 1259-1270
【非特許文献7】Holographic optical switching: the "ROSES" demonstrator; Crossland, W.A., Manolis, I.G., Redmond, M.M. et al .; Journal of Lightwave Technology, 18 (12). pp. 1845-1854. ISSN 0733-8724
【非特許文献8】100-GHz-resolution dynamic holographic channel management for WDM; Cohen, A.D.; Parker, M.C; Mears, RJ. IEEE Photonics Technology Letters, Volume 11, Issue 7, Jul 1999 Page(s):851-853
【非特許文献9】Design and performance of a versatile holographic liquid-crystal wavelength-selective optical switch; Fracasso, B.; de Bougrenet de la Tocnaye, J. L.; Razzak, M.; Uche, C; Journal of Lightwave Technology , Volume 21, Issue 10, Oct. 2003 Page(s): 2405-2411
【非特許文献10】A polymer-dispersed liquid crystal-based dynamic gain equalizer; Barge, M.; Battarel, D.; de la Tocnaye, J.Ld.B.; Journal of Lightwave Technology, Volume 23, Issue 8, Aug. 2005 Page(s): 2531-2541
【非特許文献11】Reconfigurable free-space optical cores for storage area networks Wilkinson, T.D.; Crossland, B.; Collings, N.; Fan Zhang; Fan, M.; IEEE Communications Magazine, Volume 43, Issue 3, March 2005 Page(s): 93-99
【非特許文献12】Dynamic WDM equalizer using opto-VLSI beam processing; S. Ahderom; M. Raisi; K.E. Alameh; K. Eshraghian; IEEE Photonics Technology Letters, Volume 15, Issue 11, Nov. 2003 Page(s):1603-1605
【非特許文献13】Dynamic holographic spectral equalization for WDM; M.C. Parker; A.D. Cohen; R.J. Mears; IEEE Photonics Technology Letters, Volume 9, Issue 4, April 1997 Page(s):529-531
【非特許文献14】Reflective liquid crystal wavefront corrector used with tilt incidence; Zhaoliang Cao, Quanquan Mu, et al, Applied Optics, Vol. 47, Issue 11, pp. 1785-1789
【非特許文献15】Design and performance of a reconfigurable liquid-crystal-based optical add/drop multiplexer; Ertel, J.; Helbing, R.; Hoke, C; Landolt, O.; Nishimura, K.; Robrish, P.; Trutna, R.; Journal of Lightwave Technology; Volume 24, Issue 4, April 2006 Page(s): 1674-1680
【非特許文献16】Five-channel surface-normal wavelength-division demultiplexer using substrate-guided waves in conjunction with a polymer-based Littrow hologram, Maggie M. Li, Ray T Chen, Optics Letter, 1/4/95, Vol. 20, No. 7, p.797
【非特許文献17】Large-aperture wide field of view optical circulators; Roth, J.M.; Bland, R.E.; Libby, S.I.; IEEE Photonics Technology Letters, Volume 17, Issue 10, Oct. 2005 page(s): 2128-2130
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光ビームステアリングの分野では,例えば,挿入損失の低減および/または偏光不感受性等に関する改善が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によると,実質的に相互に直交する,少なくとも,第1の偏光を有する第1の部分と,第2の偏光を有する第2の部分とに光ビームを分割するように構成されるスプリッタと,上記第1の部分を受け,配向子の向きが上記第1の偏光に対して実質的に配向されるように構成される第1の液晶デバイス領域と,上記第2の部分を受け,配向子の向きが上記第2の偏光に対して実質的に配向されるように構成される第2の液晶デバイス領域とを具備する,光ビームステアリング装置が提供される
【0012】
上記第1の液晶デバイス領域および上記第2の液晶デバイス領域は,単一のLCOS(Liquid-Crystal-on-Silicon)素子またはデバイスと一体であってもよく,または別個のLCOSデバイス内に設けられてもよい。さらに,上記第1の液晶デバイス領域および上記第2の液晶デバイス領域のうちの一方は,ネマチック液晶を含んでいてもよい。
【0013】
LCOSデバイス/素子の液晶デバイス領域は,2つまたは3つ以上の一体領域に分割されていてもよい。ここで,隣同士の領域の配向子の向きは相互に直交する。より正確には,単一のLCOSデバイス/素子は,当該LCOSデバイス/素子と一体である複数の液晶領域を含んでいてもよい。ここで,複数の液晶領域は,上記第1の液晶領域および上記第2の液晶領域と,少なくとも1つのさらなる液晶領域とを有し,これら液晶領域のそれぞれは,少なくとも1つの他の液晶領域に隣接して配置される。この隣接液晶領域の各対の液晶領域の配向子の向きは相互に直交する。例えば,これらの液晶領域は,配向子の向きが交互になった領域の列として,または,配向子の向きがチェッカー盤のように交互になったアレイとして構成されてもよい。隣接液晶領域は,直接隣接していてもよい。
【0014】
上記光ビームステアリング装置は,光を上記スプリッタへ透過し,上記スプリッタから光を受ける少なくとも1つの広開口(wide aperture)光サーキュレータをさらに具備してもよい。
【0015】
さらなる態様において,上述の光ビームステアリング装置を具備する光アド/ドロップマルチプレクサ(OADM:optical add drop multiplexer)が提供される。したがって,ROADM(Reconfigurable Optical Add Drop Multiplexer)等の光アド/ドロップマルチプレクサに上記光ビームステアリング装置を実装することができる。(本明細書の光アド/ドロップマルチプレクサに対する言及は全てROADMを含むものとする)。例えば,ROADMに実装される本発明の一実施形態の上記または各LCOSは,電気信号によって遠隔制御可能としてもよい。光アド/ドロップマルチプレクサは,例えば,本発明の複数の実施態様を含み,40〜80ポートを有するように縮小化してもよい。
【0016】
本発明の第2の態様によると,第1の液晶領域と,第2の液晶領域とを具備し,上記第1の液晶領域および上記第2の液晶領域は,配向子の向きが実質的に相互に直交する,光ビームステアリング用液晶デバイスが提供される。
【0017】
上記光ビームステアリング用液晶デバイスは,様々な用途において,例えば,光アド/ドロップマルチプレクサまたは画像表示機器等における光ビームステアリング,特に,ビームが相互に直交する偏光に分割される場合等において,偏光不感受性光ビーム処理を好都合に実現するための素子を提供してもよい。
【0018】
上記光ビームステアリング用液晶デバイスの上記第1の液晶領域および上記第2の液晶領域は,単一のLCOS素子と一体であってもよく,または別々のLCOSデバイス内に設けてもよい。さらに,上記第1の液晶領域および上記第2の液晶領域のうちの一方または両方はネマチック液晶を含んでいてもよい。
【0019】
上記光ビームステアリング用液晶デバイスの上記第1の領域および上記第2の領域のうちの少なくとも一方は,LCOS上に,配向子の向きを確定するための材料の層を有していてもよい。好適な材料は,シリコン酸化物,例えば,SiOとすることができる。
【0020】
複数の上記光ビームステアリング用液晶デバイスは,並べて実装してもよい。換言すると,それぞれが第1の液晶領域および第2の液晶領域を有する,複数の光ビームステアリング用液晶デバイスのマトリックスまたはアレイを単一の光ビームステアリング装置内に設けてもよい。
【0021】
本発明の第3の態様によると,光ビームステアリング用液晶デバイスの製造方法が提供される。液晶は,配向子が第1の向きである第1の領域と,配向子が第2の向きである第2の領域とを有する。当該方法は,上記配向子が上記第1の向きになるように上記光ビームステアリング用液晶デバイスの上記第1の液晶領域を処理する第1の工程を含む。上記配向子の上記第1の向きは,上記光ビームステアリング用液晶デバイスの上記第2の液晶領域の上記配向子の上記第2の向きに対して実質的に相互に直交する。
【0022】
上記光ビームステアリング用液晶デバイスの製造方法は,上記配向子が上記第2の向きになるように上記光ビームステアリング用液晶デバイスの上記第2の液晶領域を処理する第2の工程をさらに含んでいてもよい。この第2の工程の要否は,元の液晶の配向子の向きが既知であるか否かによって決まる。
【0023】
上記第1の工程および上記第2の工程のうちの一方または両方は,材料層(例えば,上述のように,SiOxまたはSiO)の積層,液晶配向(rubbing:ラビング)または光配向のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。例えば,積層の後に,液晶配向または光配向を行ってもよい。さらに詳細には,積層には,蒸着,印刷またはスピンコーティングが含まれていてもよく,材料層を,LCOSの反射コーティングの上面に積層してもよい。
【0024】
本発明の第4の態様によると,実質的に相互に直交する,少なくとも,第1の偏光を有する第1の部分と,第2の偏光を有する第2の部分とにビームを分割するように構成されるスプリッタと,配向子が第1の向きであり,上記第1の部分を受けるように構成される第1の表面領域を有する第1の液晶デバイス領域と,配向子が第2の向きであり,上記第2の部分を受けるように構成される第2の表面領域を有する第2の液晶デバイス領域とを具備する光ビームステアリング装置が提供される。上記第1の液晶デバイス領域は,上記第1の部分の偏光が上記第1の表面領域に入射するときに上記配向子の上記第1の向きに対して第1の角度になるように構成され,上記第2の液晶デバイス領域は,上記第2の部分の偏光が上記第2の表面領域に入射するときに上記配向子の上記第2の向きに対して第2の角度になるように構成され,上記第1の角度および上記第2の角度のうち,一方は実質的に+45°であり,他方は実質的に−45°である。
【0025】
したがって,例えば,ビームは,配向子の向きが単一である単一のLCOS上に並列して入射する2つの相互に直交する部分に分割されてもよい。ビームは,配向子の向きに平行でありかつLCOSデバイス平面に垂直である平面によって,LCOSに入射するときに,相互に直交するビーム部分によって確定される実質的に90°の角度に二分割されていてもよい。2本の入射ビームのうちの一方が有する有効な屈折率は,(偏光状態によって算出される)当該ビームの電界ベクトルの相対的な向きと,デバイス内の配向される液晶材料の屈折率楕円体とによって決まる。配向子の,LCOSデバイスの平面への傾き(projection)は,第1の入射ビーム部分の偏光から+45°であってもよく,第2の入射ビーム部分の偏光から−45°であってもよい。
【0026】
したがって,一実施形態では,上記第1の角度および上記第2の角度のうち,一方が実質的に+45°であり,他方が実質的に−45°であるように構成してもよい。さらに,これらの角度は等しいことが有利であるが,係る角度が挿入損失を最小限にすることができる場合であっても,当該角度が正確に45°である必要はない。
【0027】
第4の態様による上記光ビームステアリング装置の第1の液晶領域および第2の液晶領域は,ネマチック液晶を含んでいてもよい。したがって,液晶デバイス平面のスイッチング等のネマチック液晶の特徴を活かして,アナログ位相制御および挿入損失の低減を可能にしてもよい。
【0028】
さらに,上記第1の液晶デバイス領域の上記配向子の上記第1の向きと,上記第2の液晶デバイス領域の上記配向子の第2の向きとは,実質的に互いに対して配向してもよい。これは特に,例えば,第1の液晶領域および第2の液晶領域が単一のLCOSと一体である場合に当てはまる。
【0029】
第4の態様による上記光ビームステアリング装置は,光を上記スプリッタへ透過し,上記スプリッタから光を受けるように構成される少なくとも1つの広開口光サーキュレータをさらに具備してもよい。これは,上記光ビームステアリング装置を,波長分割多重(WDM)システムの,複数の(例えば,80の)波長ポートに対応する,高密度の光ビームステアリング成分を有する,縮小化されたデバイスにおいて用いる場合に特に有利であり得る。
【0030】
本発明の第5の態様によると,光ビームステアリング方法が提供される。当該方法は,実質的に相互に直交する,少なくとも,第1の偏光を有する第1の部分と,第2の偏光を有する第2の部分とにビームを分割する工程と,第1の液晶デバイス領域が有する第1の表面領域に入射するときに,当該第1の液晶デバイス領域が有する配向子の第1の向きに対して第1の角度になるように,上記第1の部分を,上記第1の液晶デバイス領域に透過する工程と,第2の液晶デバイス領域が有する第2の表面領域に入射するときに,当該第2の液晶デバイス領域が有する配向子の第2の向きに対して第2の角度になるように,上記第2の部分を,上記第2の液晶デバイス領域に透過する工程とを有する。上記第1の角度および上記第2の角度は実質的に等しい。
【0031】
第5の態様において,上記第1の角度および上記第2の角度は,正負が反対であってもよい。より詳細には,上記第1の角度および上記第2の角度のうち,一方は実質的に+45°であり,他方は実質的に−45°である。
【0032】
さらなる態様によると,本発明は,上述の装置およびデバイスのそれぞれに対応する方法と,上述の方法によって製造される装置と,上述の装置またはデバイスを具備するかまたは上述の方法を用いて実現されるシステムとを提供する。
【0033】
好ましい実施形態は,添付の従属項に規定されている。
【0034】
本発明をより良く理解するために,また,本発明を実施する方法を示すために,例として添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】2つのLCOSによる方法を採用する第1の実施形態を示す図である。
【図2】単一のLCOSによる方法を採用する第2の実施形態を示す図である。
【図3】単一のLCOSが,配向子の向きが直交する,2つの領域に分割される第3の実施形態を示す図である。
【図4】単一のLCOSが,配向子の向きが実質的に同じである,第4の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に説明する実施形態は,光ビームステアリング(制御)に好適である。係る光ビームステアリングは,例えば,光アド/ドロップ(挿入(追加)/分岐(取り出し))マルチプレクサ等における選択的な波長のスイッチングを含んでいてもよい。
【0037】
本発明の任意の実施形態の任意の実施態様における光ビームのいずれかの偏光は,ポアンカレ球上の任意の点にあるものとすることができ,例えば,線形または円形であり得る。
【0038】
下記の実施形態のうちの任意の実施形態において,入力光を,(例えば,偏光ビームスプリッタ(PBS)を用いて)2つの相互に直交する成分に分割し,これらの成分に対してスイッチングが行われるまで,当該成分を空間内の別々の経路に通すことができる。換言すると,これらの成分は,スイッチングの前には再結合されない。概して,入力された偏光状態に関係なく,2つの相互に直交する線形の偏光状態によって偏光状態を常に表すことができるため,上記のように入射光を2つの成分に分離することは,理論上の損失を生じないことを意味する。到来するビームの偏光が変わる場合,単に,2本の入射ビーム間において異なる割合で光を結合する。すなわち,一方のビームの損失が,他方のビームにとっては利得となる。両方のビームに同位相変調を施す(see)(位相変調を用いてこれらのビームを出力ポートへルーティングする)場合,デバイスを偏光不感受性とすることができる。したがって,下記の実施形態のうちの任意の実施形態によって,偏光不感受性位相変調方法を提供することができる。
【0039】
本発明の実施形態において,偏光不感受性を以下のようにして改善することができる:
【0040】
(a)光の両方のビームが同じ屈折率プロファイルを有するように,同じデバイスの2つの異なる領域または2つのデバイス間において(偏光方向ではなく)配向子を回転させる。したがって,LCOSは,配向子の向きが実質的に直交する2つの領域に分割される。これは,SiOx(例えば,SiO)等の材料層を積層する(堆積させる)ことによって達成することができる。積層の後に,例えば,液晶配向または光配向技術が行ってもよい。積層には,蒸着,印刷またはスピンコーティングが含まれていてもよい。材料層は,LCOSの反射コーティングの上面に積層してもよい。
【0041】
(b)2つの成分の偏光状態が,配向子に対して同一の非ゼロ角度(例えば,実質的に45°(角度は正負が反対であってもよい))をなすように2つの成分を配向する。例えば,2つの領域に分割されているが,全体的に配向子の向きが同じであるLCOSが提供される。2つの領域は,単一のLCOSまたは別々のLCOSに設けることができる。2つの入力偏光状態の向きは,実質的に45°の角度で配向子の片側にぶつかるように固定される。
【0042】
単一のLCOSによる方法では,例えば,40〜80ポートを有する光アド/ドロップマルチプレクサ等の縮小化されたデバイスにおける費用を低減することができる。
【0043】
望ましくない次数,損失およびクロストークは,より多くの位相レベルが利用可能である場合に低減することができる。しかし,これは,デバイス平面上でスイッチする液晶材料を用いる場合には達成が難しい。配向子がデバイス内へ傾いている場合,さらなる位相レベルが可能となる。この場合,偏光不感受性位相変調は保証されず,偏光不感受性動作を保証するためにいくつかの工程が必要となる。一案として,4分の1波長板を導入する方法がある。特に有利には,下記の実施形態のうちの任意の実施形態によれば,本発明はネマチック液晶を用いる。
【0044】
ネマチック液晶材料は,液晶デバイス平面外でスイッチする場合がある。したがって,係るネマチック液晶の配向子がビームの偏光に対して配向されていない場合,ビームは液晶の典型的な屈折率(n⊥)を有することになる。また,ネマチック液晶に印加される電界は,アナログ位相レベルを可能にするように,アナログ式にデバイス平面外へ配向子を傾けることができる。これによって,例えば,ブレーズ位相プロファイルをデバイスに書き込ませることができる。このような位相プロファイルは,第2の高次スポットをもたらすことなく,出力ビームを出力ポートへステアリングするのに用いることができる。
【0045】
しかし,ネマチック液晶は一般的に,光学的に異方性(通常,一軸)であるため,到来する光線の電界ベクトルの屈折率は,光軸に対する電界ベクトルの向きによって決まる。この場合,液晶デバイスは偏光不感受性ではない。それゆえ,偏光不感受性を保証する方法を採用することが有利であり得る。到来するビームの偏光状態は,両方が同じ屈折率(好ましくは,最大位相深度を確保するにはn11)(「11」は,配向子に対して平行であることを示す)を有するように制御することができる。
【0046】
本発明の第1の実施形態は,例えば,上記(a)のように,光の両方のビームが同じ屈折率プロファイルを有するように,各々がLCOS領域を有する2つのデバイス間において配向子を回転させる,2つのLCOSによる方法を用いる。上記第1の実施形態を図1に示す。
【0047】
第1の実施形態(または本発明の任意の他の実施形態)の一方または両方の液晶領域における配向子の回転は,積層(例えば,蒸着)によって達成してもよく,積層の後には,液晶配向および/または光配向を行ってもよい。これらの技術のいずれかによって,製造を容易にすることができる。とりわけ,積層には,蒸着,印刷またはスピンコーティングが含まれていてもよい。
【0048】
図1にさらに示すように,波長分割はスイッチングの前に行われる。入力光は,直交する偏光状態を有する2つのビームに分離される。各ビームは,対応するLCOSデバイスに指向される。LCOSデバイスは,実質的に相互に直交する配向方向を有している。光の偏光向き状態およびLCOSの配向方向は,両方のビームが,表示される位相変調パターンの実質的に全深度を有するように,各LCOSにおいて実質的に平行であるように選択される。両方の偏光が実質的に同じ位相プロファイルを有する場合,LCOSデバイスは偏光不感受性とすることができる。
【0049】
入力ビームが,直交する偏光状態の2つのビームに分割されなければ,反射時に入力ビームの偏光状態を回転させるために,デバイスにおいて一体型4分の1波長板(一般的に,複屈折性結晶)を用いる必要がある。4分の1波長板では,全ての偏光状態が同じ正味屈折率プロファイルを有することを保証する必要があるため,デバイスを通過する際に位相後退が生じる。このため,上記4分の1波長板によって,デバイスの応答時間または解像度に対して制限が課される場合がある。これに対して,第1の実施形態は,偏光不感受性を確保するために4分の1波長板を採用することなく,液晶層に印加することができる利用可能な電界を増やすことができる。また,上記4分の1波長板によって,デバイスの応答時間または解像度に以下のようにさらなる制限が課される場合がある。
【0050】
とりわけ,(例えば,シリコンCMOSピクセル,液晶およびガラスを含む)LCOS構造体に4分の1波長板を挿入する場合,当該4分の1波長板をピクセル上に直接設ける必要がある。これによって,液晶電圧の低減を招く,当該4分の1波長板にわたる電圧の低下,および/またはフィールドの拡大といった副作用が引き起こされる。
【0051】
図1のような実施形態は,広開口光サーキュレータをさらに用いてもよい。広開口サーキュレータは,本発明の一実施形態の任意のPBSの損失を回避することができるため,複数のチャネルからの波長が分割される場合に有利であり得る。
【0052】
好適なサーキュレータは,"Large-aperture wide field of view optical circulators", M. Roth et al., IEEE PTL 17(10) (2005) pp.2128-30に記載されたようなものである。当該文献の要約によると,1.55μmという大口径の指向性ビーム分離用の自由空間光サーキュレータが記載されている。このデバイスは,11mmのクリアな口径,100W/cmに及ぶ高出力ハンドリング,および±10°視野を可能にするために,無磁石ファラデーローテータと,ポリマー製真ゼロオーダー波長板とを利用している。本発明の一実施形態において用いることができる広開口サーキュレータをより深く理解するためには,上記文献の全体を参照されたい。
【0053】
上記実施形態は,2つの液晶領域を有するように処理された単一のLCOSを用いて同様に実現される。同様に,本発明のさらなる実施形態において,図2〜図4に示すように,単一のまたは複数のLCOSによる方法を用いることができる。
【0054】
例えば,図2に示す第2の実施形態は,単一のLCOSによる方法を採用している。この場合,LCOSを,配向子の向きが直交する2つの領域に分割することができる。あるいは,LCOSの配向子を全体的に同じ向きとし,配向子の片側にぶつかるように2つの入射偏光状態の向きを,例えば,同一の非ゼロ角度(例えば,45°)に回転してもよい。
【0055】
図1および図2は,(2つのLCOSデバイスとして,または直交方向に配向された液晶配向子を有する2つの別個の領域を有する単一のLCOSデバイスとして)直交方向に配向された液晶配向子を有する液晶デバイスを用いる偏光不感受性ビームステアリングシステムを実現する2つのあり得る方法を示す。直交方向に配向された液晶配向子を用いる案は一般的に,ブレーズ位相プロファイルを参照して本明細書において後述するように,ブレーズ格子等の位相変調を用いる任意の液晶デバイスに適用可能である。上記/各液晶デバイスは,複数のピクセルを有していてもよく,かつ/または,ホログラムまたはブレーズ格子といった格子等の位相変調液晶デバイスとしてもよい。
【0056】
図3に示す第3の実施形態において,直交する偏光は,単一のLCOSデバイスの異なる領域,例えば,単一のLCOSデバイスの半分に指向される。LCOSデバイスは,領域の液晶配向子に関して実質的に相互に直交するように配向処理されたものとすることができる。
【0057】
例えば,入力光の位相は,図3の実施形態によって以下のようにして変調することができる:
(1)入力ファイバーポートによって,平坦な位相フロントを形成するように結像光学系を通じて光を指向する。
(2)この位相フロントに,相互に直交する偏光状態の2つのビームに分割するように偏光ビームスプリッタを通過させる。
(3)これらのビームを,LCOSデバイスの異なる領域に対して指向する。このLCOSデバイスは,均一に配向されたネマチック液晶材料を含む。
(4)LCOSデバイスを,同じ次元の2つの領域に分割する。当該2つの領域に対する配向処理によって,液晶配向子が相互に直交すること,すなわち,領域1の配向子が領域2の配向子に対して直交することが保証される。これは,例えば,好適なマスキングによって蒸着したSiOx(例えば,SiO)を用いることで達成することができる。
(5)LCOSに入射する2つのビームの偏光状態は相互に直交しており,LCOSデバイスの適切な半分に指向されることで,それぞれが同じ位相プロファイル(図2参照)を有することができる。このようにして,両方のビームは,アドレシング電界の作用下で,液晶配向子を回転させる潜在的な位相変調の全深度を有することができる。
(6)両方の偏光が同じ位相プロファイルを有する場合,LCOSデバイスは偏光不感受性とすることができる。
(7)LCOS位相プロファイルは,最もシンプルには回折格子の形態をとり,また,最も複雑なものとしてホログラフィックアレイの形態をとる。この位相プロファイルを用いて,選択された出力ポートに光をステアリングするか,または2つ以上の出力ポート間において光を分割する。
(8)LCOSデバイスが,位相プロファイルを用いて好適な出力ポートへ光を偏向させる。
(9)ビームが出力ポートに達した時点で,2つの偏光状態は再結合されている。
【0058】
図4に示す第4の実施形態において,光が,2つの実質的に相互に直交する偏光状態(Pl,P2)に分割され,これらの偏光状態が,例えば,上記(b)において述べたように,実質的に45°の角度で液晶材料にぶつかるように配向される。2つの成分の偏光状態が液晶配向子に対して(正負は反対だが)同じ角度にある場合,各電界ベクトルは,同じ潜在的な位相変調深度を有することになる。詳細には,2つの相互に直交する入射偏光状態の両方に関して,この技術によって,入射面に対する配向子の傾きに対して平行な電界ベクトルの成分のみが,実際に位相プロファイルを有することを可能にすることができる。このような実施形態は,例えば,3dBの,一定の損失ペナルティーを有し得る。
【0059】
したがって,第4の実施形態において,2つのビームの偏光状態は,有利には,相互に直交し,液晶配向子に対して実質的に45°の角度(互いに反対の正負を有する)にある。このような実施形態によって,LCOSデバイスを偏光不感受性とすることができる。
【0060】
第4の実施形態において,偏光ビームスプリッタは,少なくとも,第1の偏光を有する第1の部分と,第2の偏光を有する第2の部分とにビームを分割することができる。ここで,第1の偏光および第2の偏光は相互に直交している。配向子が第1の向きである第1の液晶デバイス領域は第1の部分を受け,同様に,配向子が第2の向きである第2の液晶デバイス領域が第2の部分を受ける。とりわけ,配向子の第1の向きおよび配向子の第2の向きは,実質的に配向される。また,第1の偏光は,上記配向子の向きに実質的に配向されている平面に対して第1の角度にあり,第2の偏光は,当該平面に対して第2の角度にある。この場合,第1の角度および第2の角度は,実質的に等しく,正負が異なる。例えば,上記角度のうち,一方が実質的に+45°であり,他方が実質的に−45°となる。
【0061】
したがって,配向子の第1の向きおよび配向子の第2の向きに対して実質的に配向された平面によって,第1のビーム部分および第2のビーム部分によって確定される角度が二分割されており,第1のビーム部分および第2のビーム部分はそれぞれ,正負は異なるが同じ角度で延びる。
【0062】
とりわけ,入力光の位相は,図4に示す第4の実施形態によって,以下のようにして変調することができる:
(1)入力ファイバーポートによって,平坦な位相フロントを形成するように結像光学機器を通じて光を指向する。
(2)この位相フロントに,相互に直交する偏光状態の2つのビームに分割されるように偏光ビームスプリッタを通過させる。
(3)ビームを,LCOSデバイスの異なる領域に対して指向する。LCOSデバイスは,全体的に配向子の向きが単一である,均一に配向されたネマチック液晶材料を含む。LCOSデバイスは,同じ次元の2つの領域に分割される。
(4)LCOSデバイス内における液晶配向子の向きおよび偏光ビームスプリッタから出現する2つの直交する偏光状態の向きは,両方の偏光状態の電界ベクトルが光軸に対して同じ角度,すなわち,45°をなすように互いに対して固定される。
(5)このようにして,アドレシング電界の作用下において,両方のビームの,有効な屈折率と,回転する液晶配向子の位相変調深度とが同じになる。
(6)両方の偏光が同じ位相プロファイルを有するため,LCOSデバイスは偏光不感受性とすることができる(しかし,この技術は,3dBの一定の損失ペナルティーを生じる(下記参照)。
(7)LCOS位相プロファイルは,最もシンプルには回折格子の形態をとり,また,最も複雑なものとしてホログラフィックアレイの形態をとる。この位相プロファイルを用いて,光を選択された出力ポートへステアリングするか,または2つ以上の出力ポート間において光を分割する。
(8)ビームが出力ポートに達した時点で,2つの偏光状態は再結合されている。
【0063】
第1の実施形態に関して上述したように,第2の実施形態〜第4の実施形態は同様に,偏光不感受性を確保するために4分の1波長板を必要としないため,ネマチック液晶デバイスの速度および解像度は最適のままである。単一のLCOSを用いる場合,2つのLCOSによる方法と比較して,費用は低減される。また,光損失を低減することができる。
【0064】
同様に,第2の実施形態〜第4の実施形態において,液晶配向,積層および/または光配向を用いて製造を容易にすることができる。
【0065】
本発明の任意の実施形態において残った任意の損失ペナルティーは,増幅装置を用いることで補償することができる。代替的に,波長を低下させるため,信号を監視するため,または他の目的のために任意の光損失を用いることも可能である。
【0066】
本明細書において説明した実施形態のうちの任意の実施形態において,偏光に対する対処をさらに改善するために,1つまたは複数のさらなる素子を分割ビームの一方または両方の経路に追加してもよい。ここで,上記素子は,経路の長さを光学的に確実にマッチングさせるのに適した形状(例えば,矩形)を有している。上記素子は,例えば,ガラスプリズムとすることができる。
【0067】
さらに,上述の実施形態のうちの任意の実施形態において,ビームスプリッタ(例えば,PBS)とLCOS素子(複数可)とは物理的に分離していなくてもよい。
【0068】
上述の実施形態のうちの任意の実施形態は,再構成可能な光アド/ドロップマルチプレクサ等の光アド/ドロップマルチプレクサにおいて実施することができる。任意の係る光アド/ドロップマルチプレクサは,例えば,40,60または80といった複数の入力ポートおよび出力ポートのそれぞれにおいて本発明の実施形態を具現化するために縮小化することができる。
【0069】
無論,多くの他の有効な代替形態が当業者には想定されるであろう。本発明は,上述の実施形態に限定されず,本発明の精神および添付の特許請求の範囲内において,当業者にとって明白な変更形態を包含していることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に相互に直交する,少なくとも,第1の偏光を有する第1の部分と,第2の偏光を有する第2の部分とに光ビームを分割するように構成されるスプリッタと,
前記第1の部分を受け,配向子の向きが前記第1の偏光に対して実質的に配向されるように構成される第1の液晶デバイス領域と,
前記第2の部分を受け,配向子の向きが前記第2の偏光に対して実質的に配向されるように構成される第2の液晶デバイス領域と
を具備する光ビームステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ビームステアリング装置であって,
前記第1の液晶デバイス領域および前記第2の液晶デバイス領域は,単一のLCOS(Liquid-Crystal-on-Silicon)素子と一体である
光ビームステアリング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ビームステアリング装置であって,
光を前記スプリッタへ透過し,前記スプリッタから光を受けるように構成される少なくとも1つの広開口光サーキュレータをさらに具備する
光ビームステアリング装置。
【請求項4】
先行の請求項のいずれか1項に記載の光ビームステアリング装置であって,
前記第1の液晶デバイス領域および前記第2の液晶デバイス領域のうちの少なくとも一方は,ネマチック液晶を含む
光ビームステアリング装置。
【請求項5】
先行の請求項のいずれか1項に記載の光ビームステアリング装置を具備する光アド/ドロップマルチプレクサ(OADM:optical add drop multiplexer)。
【請求項6】
第1の液晶領域と,
第2の液晶領域とを具備し,
前記第1の液晶領域および前記第2の液晶領域は,配向子の向きが実質的に相互に直交する
光ビームステアリング用液晶デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の光ビームステアリング用液晶デバイスであって,
前記第1の液晶領域および前記第2の液晶領域は,単一のLCOS素子と一体である
光ビームステアリング用液晶デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の光ビームステアリング用液晶デバイスであって,
前記単一のLCOS素子は,当該単一のLCOS素子に対して一体的な複数の液晶領域を有し,
前記複数の液晶領域は,前記第1の液晶デバイス領域および前記第2の液晶デバイス領域と,少なくとも1つのさらなる液晶領域とを有し,
前記複数の液晶領域の各前記液晶領域は,前記複数の液晶領域の少なくとも1つの他の液晶領域に隣接して配置され,
隣接する前記液晶領域の各対の前記液晶領域は,配向子の向きが相互に直交する
光ビームステアリング用液晶デバイス。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の光ビームステアリング用液晶デバイスであって,
前記第1の液晶デバイス領域および前記第2の液晶デバイス領域のうちの少なくとも一方は,LCOS素子上に前記少なくとも1つの液晶領域の配向子の向きを確定するための材料の層を有する
光ビームステアリング用液晶デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載の光ビームステアリング用液晶デバイスであって,
前記材料はシリコン酸化物である
光ビームステアリング用液晶デバイス。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項に記載の光ビームステアリング用液晶デバイスであって,
前記第1の液晶デバイス領域および前記第2の液晶デバイス領域のうちの少なくとも一方は,ネマチック液晶を含む
光ビームステアリング用液晶デバイス。
【請求項12】
光ビームステアリング用液晶デバイスの製造方法であって,前記液晶は,配向子が第1の向きである第1の領域と,配向子が第2の向きである第2の領域とを有し,
当該方法は,前記配向子が前記第1の向きになるように前記光ビームステアリング用液晶デバイスの前記第1の液晶領域を処理する第1の工程を含み,
前記第1の向きは,前記光ビームステアリング用液晶デバイスの前記第2の液晶領域の前記配向子の前記第2の向きに対して実質的に相互に直交する
光ビームステアリング用液晶デバイスの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の,光ビームステアリング用液晶デバイスの製造方法であって,
前記配向子の向きが前記第2の向きになるように前記光ビームステアリング用液晶デバイスの前記第2の液晶領域を処理する第2の工程をさらに含む
光ビームステアリング用液晶デバイスの製造方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の,光ビームステアリング用液晶デバイスの製造方法であって,
前記第1の工程および前記第2の工程のうちの少なくとも一方は,液晶配向,堆積,および光配向のうちの少なくとも1つを含む
光ビームステアリング用液晶デバイスの製造方法。
【請求項15】
実質的に相互に直交する,少なくとも,第1の偏光を有する第1の部分と,第2の偏光を有する第2の部分とにビームを分割するように構成されるスプリッタと,
配向子が第1の向きであり,前記第1の部分を受けるように構成される第1の表面領域を有する第1の液晶デバイス領域と,
配向子が第2の向きであり,前記第2の部分を受けるように構成される第2の表面領域を有する第2の液晶デバイス領域とを具備し,
前記第1の液晶デバイス領域は,前記第1の部分の偏光が前記第1の表面領域に入射するときに前記配向子の前記第1の向きに対して第1の角度になるように構成され,
前記第2の液晶デバイス領域は,前記第2の部分の偏光が前記第2の表面領域に入射するときに前記配向子の前記第2の向きに対して第2の角度になるように構成され,
前記第1の角度および前記第2の角度のうち,一方は実質的に+45°であり,他方は実質的に−45°である
光ビームステアリング装置。
【請求項16】
請求項15の光ビームステアリング装置であって,
前記配向子の前記第1の向きおよび前記配向子の前記第2の向きは,互いに対して実質的に配向される
光ビームステアリング装置。
【請求項17】
請求項15または16の光ビームステアリング装置であって,
前記第1の液晶デバイス領域および前記第2の液晶デバイス領域は,単一のLCOS素子と一体である
光ビームステアリング装置。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか一項に記載の光ビームステアリング装置であって,
光を前記スプリッタへ透過し,前記スプリッタから光を受けるように構成される少なくとも1つの広開口光サーキュレータをさらに具備する
光ビームステアリング装置。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか1項に記載の光ビームステアリング装置であって,
前記第1の液晶デバイス領域および前記第2の液晶デバイス領域のうちの少なくとも一方は,ネマチック液晶を含む
光ビームステアリング装置。
【請求項20】
実質的に相互に直交する,少なくとも,第1の偏光を有する第1の部分と,第2の偏光を有する第2の部分とにビームを分割し,
第1の液晶デバイス領域が有する第1の表面領域に入射するときに,当該第1の液晶デバイス領域が有する配向子の第1の向きに対して第1の角度になるように,前記第1の部分を,前記第1の液晶デバイス領域に透過し,
第2の液晶デバイス領域が有する第2の表面領域に入射するときに,当該第2の液晶デバイス領域が有する配向子の第2の向きに対して,前記第1の角度と実質的に等しい第2の角度になるように,前記第2の部分を,前記第2の液晶デバイス領域に透過する
光ビームステアリング方法。
【請求項21】
請求項20に記載の光ビームステアリング方法であって,
前記第1の角度および前記第2の角度は,正負が反対である
光ビームステアリング方法。
【請求項22】
請求項21項に記載の光ビームステアリング方法であって,
前記第1の角度および前記第2の角度のうち,一方は実質的に+45°であり,他方は実質的に−45°である
光ビームステアリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−508907(P2012−508907A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543816(P2011−543816)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051536
【国際公開番号】WO2010/055350
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(511117406)ケンブリッジ エンタープライズ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE ENTERPRISE LIMITED
【住所又は居所原語表記】Cambridge Enterprise, University of Cambridge, 10 Trumpington Street, Cambridge, Cambridgeshire CB2 1QA, United Kingdom
【Fターム(参考)】