説明

光ピックアップ装置およびこれを備えた光情報記録再生装置

【課題】
小型化、薄型化された光ディスク装置に搭載できるように小型化され、かつ光学部品の取り付け位置誤差等に対してFESやTES等の信号品質が良好に保たれた光ピックアップおよびこれを備えた光情報記録再生装置を提供する。
【解決手段】
ディスク半径方向に略平行の分割線によって少なくとも2つの領域に分割され、かつ±1次回折光束に前記分割線に対して略45度傾斜した方向を主軸とする所定量の非点収差を付加する機能を備えた2分割ホログラフィック回折格子からなる光導波素子と、複数の2分割受光面からなる光検出器を検出光学系に配置することにより、上記課題を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ピックアップ装置およびこれを備えた光情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスク装置の小型化、薄型化に伴い、それに搭載される光ピックアップ装置の小型化も急速に進められている。このような小型光ピックアップ装置の技術としては、特開2007−66486号公報(特許文献1)がある。この公報には、「レーザ光源と、受光センサと、第1の発光点からの光束を略合焦で受光センサに入射する光束と合焦後に入射する光束と合焦前に入射する光束とに分離する第1のホログラムと、第2の発光点からの光束を略合焦で受光センサに入射する光束と合焦後に入射する光束と合焦前に入射する光束とに分離する第2のホログラムとを備えた光ピックアップ」が記載されており、これにより発光点を近接して設けた2つのレーザ光源を用いても安定したフォーカス制御が行えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−66486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年においては、光ピックアップの製造コストを低減させるため、産業用ロボット等を積極的に利用することで、組み立て作業工程を自動化する動きが活発になっている。このような光ピックアップ装置の自動組み立てを実施した場合、光検出器など光学部品の取り付け位置精度が従来の作業者による緻密な組み立て調整作業と比較してある程度低下してしまうという問題は、どうしても避けられない。
【0005】
しかしながら、フォーカス誤差信号(以下、FESと称す)やトラッキング誤差信号(以下、TESと称す)の検出に前記のような既存の検出手段を用いた場合、光学部品の取り付け位置に誤差があると、それに伴い各制御信号に波形歪みや振幅の低下あるいは制御引き込み点のオフセットなど著しい信号品質の劣化が生じてしまう。すなわち、光ピックアップ装置組み立て作業の完全自動化を実現するためには、光検出器などの光学部品に取り付け位置誤差が生じても出来るだけ信号品質が良好に保たれる新たなFESあるいはTES検出手段の開発が必要不可欠である。
【0006】
以上のような状況に鑑み、本発明では、光学部品の取り付け位置誤差等の信号劣化要因に対してFESあるいはTES品質が良好に保たれ、光ピックアップ組み立て作業の自動化に適した光ピックアップ装置およびこれを備えた光情報記録再生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、レーザ光源と、該レーザ光源を出射したレーザ光束を集光して光学的情報記録媒体の情報記録面上に集光スポットを照射する対物レンズとを備え、光学的情報記録媒体に対してレーザ光束を照射して光学的情報記録媒体に記録された情報信号を再生または光学的情報記録媒体に所定の情報信号を記録する光ピックアップであって、集光スポットの情報記録面からの反射レーザ光束が入射されレーザ光束から0次光束と±1次回折光束を回折、出射する光導波素子と、光導波素子から出射された前記レーザ光束の0次光束または±1次回折光束が入射され受光した光量に応じた光検出信号を出力する複数の受光面を有する光検出器を有し、光導波素子は、光導波素子上において光学的情報記録媒体の記録トラック方向に相当する方向に対して略垂直な分割線により少なくとも2個の分割領域に分割され、該各分割領域は、前記レーザ光束の0次光束および+1次回折光束および−1次回折光束とを光検出器内で各々互いに異なる所定の受光面に入射させ、かつ前記レーザ光束の+1次回折光束および−1次回折光束に記録トラック方向または分割線に対して光軸回りに略45度回転した方向を主軸とする所定量の非点収差を付加する機能を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学部品に取り付け位置誤差等に対してFESやTESの信号品質が良好に保たれた光ピックアップおよびこれを備えた光情報記録再生装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の光ピックアップ装置の概略部品配置図である。
【図2】本発明の主要部品である光導波素子の第1の実施例を示す概略平面図である。
【図3】第1の実施例で光導波素子を出射し光検出器に照射される復路光束の集光状態の一部を示す光ピックアップ装置主要部の概略斜視図である。
【図4】第1の実施例における光検出器受光面の構成とそこに照射される光スポットの集光状態の一例を示した光ピックアップ装置主要部の概略平面図である。
【図5】光検出器受光面に照射される光スポットの集光状態の別の一例を示した光ピックアップ装置主要部の概略平面図である。
【図6】光検出器受光面に照射される光スポットの集光状態のさらに別の一例を示した光ピックアップ装置主要部の概略平面図である。
【図7】第1の実施例における、光検出器受光面とそこに照射される光スポットの配置および各受光面から得られた検出信号から所定の制御信号などを得るための演算処理の一例を示した概略平面図および概略回路図である。
【図8】光検出器の位置ずれに対して検出されたFESの振幅変化の一例を示した線図である。
【図9】光検出器の位置ずれに対して検出されたTESのオフセット変化の一例を示した線図である。
【図10】本発明の光ピックアップ装置の第2の実施例を示す概略部品配置図である。
【図11】本発明の主要部品である光導波素子の第2の実施例を示す概略平面図である。
【図12】第2の実施例における光検出器受光面の構成とそこに照射される光スポットの集光状態の一例を示した光ピックアップ装置主要部の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
以下、本発明の実施例につき図面を参照しながら説明する。図1は本発明における光ピックアップ装置の光学系構成の一例を示した概略部品配置図である。光ピックアップ1内には、例えばDVDの記録または再生用として波長650〜660nm帯のレーザ光束を出射する半導体レーザ素子10を収納したレーザ光源2が配置されている。
【0011】
このレーザ光源2を発した光束100は、ビームスプリッタ3を経てカップリングレンズ4に達し、このカップリングレンズ4によって略平行な光束に変換されたのち対物レンズ5に達する。そしてこの対物レンズ5により集光され、DVDなど所定の光ディスク6の記録トラック上に照射され光スポットを形成する。そして、この光ディスク6を反射した光束は、入射光束と逆の光路を辿り再び対物レンズ5、カップリングレンズ4を経てビームスプリッタ3に達し、少なくともその一部の光量に相当する光束がこのビームスプリッタ3を反射した後、信号検出用の復路光束101となって光導波素子7に達する。
【0012】
この光導波素子7は本実施例の主要部品であり、例えば回折格子等のようにこの素子に入射した光束を所定の方向に回折する機能備えている。またこの光導波素子7は、後述するように、所定の分割線により2個の領域に分割されており、この各分割領域に入射した光束101をそれぞれ互いに異なる回折角にて回折し、光検出器8上に配置された互いに異なる所定の受光面に導く機能を備えている。
【0013】
なお、前記した図1の実施例の光学系では、レーザ光源2を発し対物レンズ5を経てディスク6に入射する往路光束100はビームスプリッタ3を透過し、ディスク6に反射したのち光導波素子7を経て光検出器8上の所定の受光面に達する復路光束101は前記ビームスプリッタ3を反射する光学系構成となっている。しかし、当然のことながらこれとは逆に、前記往路光束100がビームスプリッタ3を反射し、前記復路光束101が前記ビームスプリッタ3を透過する構成でも一向に構わない。またビームスプリッタ3は図1に示したような四角形プリズムに限定されるものではなく、例えば斜めに傾斜して配置された平板のハーフミラー等でも構わない。
【0014】
次に前記光導波素子7と光検出器8に関する具体的な実施例について述べる。図2は光導波素子7の概略構成を示す概略平面図である。この光導波素子7は透明平板の基板面上に所定の格子溝を設けた回折格子になっている。また、この光導波素子7は該格子面上においてディスク6の記録トラック方向に略垂直な方向すなわちディスク半径方向に相当する方向(図2の例ではZ軸方向)に対し略平行に伸び、かつ復路光束101の中心光軸(図中に×印にて表示)上もしくはその近傍に配置された分割線73によって領域71および72の2個の領域に分割されている。そしてこの両分割領域には、共に入射した復路光束101を前記分割線73に略平行な方向すなわち図のZ軸方向に略平行な方向に回折するように格子溝が設けられている。
【0015】
ただし、前記両分割領域内での平格子溝のピッチは互いに異なっており、前記したように各分割領域に入射した復路光束101をそれぞれ異なる回折角で回折し、光検出器8上に配置された互いに異なる受光面に導くようになっている。しかも前記両分割領域は、該分割領域で回折された±1次回折光束に対して共に図のX軸およびZ軸に対して略45度に傾いた所定の方向74を主軸とする所定量の非点収差が付加されるようその配置パターンが最適設計され、不等間隔でかつ曲線状の格子溝パターンを備えたいわゆるホログラフィック回折格子になっている。
【0016】
このため、この光導波素子7に入射した復路光束101からは回折作用によって新たに+1次回折光束と−1次回折光束が発生するが、例えば図3(a)に示すように、このうち分割領域71に入射した復路光束101からは、±1次回折光束として光束102および103が生じ、それぞれ光検出器8内に配置された複数の受光面のうち2分割受光面82および83に入射して各受光面上で光スポット92および93を形成する。一方、分割領域72に入射した復路光束101からは、図3(b)に示すように±1次回折光束として光束104および105が生じ、前記回折光束102および103と同様に光検出器8内に配置された2分割受光面84および85に入射して各受光面上で光スポット94および95を形成する。
【0017】
ただし、図3(a)および(b)に示した例では、分割領域72での±1次回折光束の回折角が分割領域71での回折角よりも大きくなるように両分割領域での平均格子溝ピッチが設定されているため、前記回折光束104、105が入射する2分割受光面84および85は、それぞれ前記回折光束102、103が入射する2分割受光面82および83よりもさらに復路光束101の中心光軸から離れた位置に配置されている。
【0018】
また復路光束101からは前記光導波素子7をそのまま透過する0次光束106も生じるが、この光束は図3(a)(b)に示すように光検出器8内に配置された受光面86上に集光されて光スポット96を形成する。
【0019】
図4乃至図6は、本発明における光検出器8内の受光面の配置状態とそこに照射される前記光スポット92乃至96の集光状態を示した概略平面図である。このうち図4は光ディスク上の光スポットがジャストフォーカスの状態にある場合を示しており、図5はこのディスク上光スポットが所定の向き(例えば対物レンズとディスクの間隔が広がる向き)に所定量デフォーカスした場合、図6は図5とは反対の向きに所定量デフォーカスした場合を示している。
【0020】
各図が示すように、光検出器8内において受光面82乃至86は図のZ軸方向すなわち前記光導波素子7に設けた分割線に平行な方向にほぼ一直線状に配置されている。また前記+1次回折光束の集光スポット92および94が照射されている受光面82および84と、前記−1次回折光束の集光スポット93および95が照射されている受光面83および85は、前記0次光束の集光スポットが照射されている受光面86を中心としてそれぞれ対称な位置に配置されている。さらにこれら受光面82乃至85は、やはりZ軸方向すなわち前記光導波素子7に設けた分割線73に略平行に伸びた分割線によって各々2分割され、それぞれ独立した2個の受光領域すなわち82aと82b、83aと83b、84aと84b、そして85aと85bを形成している。そしてこれら分割受光領域の中央部すなわち各分割線の真上に前記集光スポット92乃至95がそれぞれ照射されている。
【0021】
この時、図4のように光ディスク上の集光スポットがジャストフォーカスの状態にある場合は、集光スポット92乃至95はそれぞれ略半円形の形状になっている。しかも前記光導波素子7のホログラフィック回折格子によって付加された45度方向の非点収差の影響により、ちょうど光導波素子7の前記各分割領域71および72に入射する復路光束101の断面形状が光軸回りに略90度回転したようなスポット形状になっている。したがって、集光スポット92乃至95にとっては図のX軸方向がディスクの半径方向に相当することになる。
【0022】
しかもこの際、集光スポット92と93および94と95は、それぞれ同じ光束の+1次回折光と−1次回折光の関係であるためにその位相(波面)が共役関係にあり、その結果付加される非点収差の主軸方向が互いに90度傾斜している。このため、例えば集光スポット92と94が図面上において時計回りに90度回転した集光スポット形状になっている場合、集光スポット93と95は反時計回りに90度回転した形状になっている。つまり、集光スポット92と93および94と95は相対的に180度回転し、互いに左右が反転したスポット形状になっている。以上のような集光スポットの配置および形状になっているため、図4の状態では、例えば受光領域82aと82b、83aと83b、84aと84b、そして85aと85bのそれぞれで検出される集光スポット92乃至95の検出光量はほぼ均等になる。
【0023】
一方、図5や図6のように、ディスク上集光スポットが所定の向きにデフォーカスした場合は、前記集光スポット92乃至95は図4に示したような半円形の形状から大きな歪みが生じ、図中に示すように各受光面の分割線に対して斜め45度方向に大きく伸びたような形状になっている。このため例えば図5の例では、受光面82内の受光領域82aの方が82bより検出光量が大きくなり、全く同様に受光面83内の受光領域83aの方が83bよりも検出光量が大きくなる。
【0024】
一方、受光面84内では受光領域84bの方が84aよりも検出光量が大きくなり、受光面85内の受光領域85bの方が83aよりも検出光量が大きくなる。
【0025】
これに対して、図5の場合とは反対向きにデフォーカスした図6の例では、図5と例と同様に各集光スポットは各受光面の分割線に対して斜め45度方向に大きく伸びるが、その伸びる向きは、図5の場合に対して各受光面の分割線に対して対称な向きになる。このため図6の場合は、図5の場合とは反対に受光領域82b、83b、84a、85aの方が、82a、83a、84b、85bよりも検出光量が大きくなる。
【0026】
以上述べたような受光面上での各集光スポット形状の変化とそれに伴う各分割受光領域での検出光量変化の特性を利用して、所定の演算によりFESやTESを検出するための回路構成を図7に示す。前記分割受光領域82aおよび82b乃至85aないし85bから検出された光量検出電流は、ぞれぞれ電流−電圧変換器302a乃至305bによってぞれぞれ独立に信号電圧に変換される。今、これらの信号電圧を図中に示すようにS2a乃至S5bで表す。
【0027】
これら各信号電圧は、図中に示すように加算器401乃至404および減算器501および502によって演算処理され、FESやTESが検出される。
【0028】
すなわち、FESは以下の演算式から検出することができる。
【数1】

【0029】
なお、上記(数1)に示すような演算処理によってFESを検出する手法は,基本的には所謂非点収差方式によるFES検出とほぼ同様の光学的特性を利用した手法と見なすことができる。したがって本実施例におけるFES検出原理の詳細な説明は省略する。
【0030】
一方、前記したように、集光スポット92乃至95にとっては図のX方向がディスクの半径方向に相当することになり、かつまた集光スポット92と93および94と95は相対互いに左右が反転したスポット形状になっている点を考えると、TESは以下の演算式から検出することができる。
【数2】

【0031】
なお、上記(数2)に示すような演算処理によってTESを検出する手法は,基本的には所謂プッシュプル方式によるTES検出とほぼ同様の光学的特性を利用した手法と見なすことができる。したがって本実施例におけるTES検出原理の詳細な説明は省略する。
【0032】
また本実施例では、ディスク上に照射された1個の光スポットの反射光からいわゆるプッシュプル方式と同等の演算処理によってTESを検出しているが、もちろん他の検出手段を用いても一向に構わない。例えば図1に示したような光学系構成において、レーザ光源2とビームスプリッタ3間の光路中に往路光束100を3本の光束に分割する回折格子を配置し、光ディスク上に3個の光スポットを照射させ、その各々から前記光学手段および演算手段によってTESを検出させ、それらを減算処理することで対物レンズのトラッキング変位に伴うTESのオフセットを良好に除去あるいは低減する所謂ディファレンシャル・プッシュプル方式を用いることも可能である。
【0033】
以上述べたような、本発明の光学的手段や演算手段を用いることにより、光検出器等の光ピックアップをする構成光学部品の位置ずれなどの誤差要因や経時変化に対し、極めて安定した信号品質でFESやTESを検出することができる。例えば、図8は光検出器受光面のX方向位置ずれ量に対するFES振幅の相対変化の一例を表したグラフである。本発明によって検出されたFESと比較検証のために従来の非点収差方式によって検出されたFESについてプロットしている。なおどちらも受光面上の集光スポット径は約60μmで統一している。図から明らかなように、本発明によって検出されたFESの方が光検出器受光面の位置ずれに伴う振幅低下が小さく、より良好な信号が得られていることが分かる。
【0034】
次に、図9は光検出器受光面のX方向位置ずれ量に対するTESのオフセット変化の一例を表したグラフである。このグラフにも図8と同様、本発明との比較検証を行うため従来のプッシュプル方式で検出されたFESも併せてプロットしている。
【0035】
図から明らかなように、従来のプッシュプル方式では受光面の位置ずれに対し、TESにはほぼ比例的にオフセットが発生しているのに対して、本発明でのTESでは受光面が位置ずれしてもオフセットはほとんど発生せず、明らかに従来方式より良好な特性になっていることがわかる。
【0036】
このように本発明によれば、光検出器受光面が位置ずれしてもFESやTESのほとんどオフセットは発生せず、振幅低下も従来方式より良好に抑えられている。これは前記したように集光スポット92と93および94と95が互いに±1次回折光の位相共役関係にあって、ジャストフォーカス時やデフォーカス時のスポットパターンが受光面の分割線に対して互いに対称に反転した関係になっているため、一方の集光スポットから検出される信号の劣化を他方の集光スポットが自動的に補償するためである。
【0037】
なお、図8および図9では、一例として光検出器受光面のX方向位置ずれを取り上げて信号特性の変化を示したが、他の誤差要因に対しても本発明FESやTESを良好に保つことができる。例えば、光検出器受光面のZ方向(X方向に対して垂直な方向)の位置ずれについては、受光領域分割線の伸びる方向に平行な位置ずれなので、当然のことながら各集光スポットが受光面をはみ出さない限り信号品質の劣化は一切ない。またレーザ光源から発した光束の波長が変化すると、光導波素子内のホログラフィック回折格子で回折される±1次回折光の回折角が変化するという問題があるが、この場合もこの回折角の変化によって生じる集光スポットの相対位置ずれは、やはり受光領域分割線の伸びる方向に平行な位置ずれなので、当然のことながら各集光スポットが受光面をはみ出さない限り信号品質の劣化は一切ない。
【実施例2】
【0038】
次に、実施例2として、波長の異なる2個以上のレーザ光源を同一のパッケージの中に収納したマルチレーザ光源を用いて、1個の光ピックアップ装置でDVDやCDなど異なるディスク媒体への記録または再生を実現させた互換光ピックアップ装置の実施例を示す。図10は、本実施例における光ピックアップ装置の光学系構成の一例を示した概略部品配置図である。
【0039】
光ピックアップ11内には、例えばDVDの記録または再生用として波長650〜660nm帯のレーザ光束を出射する半導体レーザ素子10に加えて、CDの記録または再生用として波長780nmのレーザ光束を出射する半導体レーザ12を収納したレーザ光源2が配置されている。このレーザ光源12を発した光束107は、レーザ光源2を発した光束100と同様、ビームスプリッタ3を経てカップリングレンズ4に達し、このカップリングレンズ4によって略平行な光束に変換されたのち対物レンズ5に達する。そしてこの対物レンズ5により集光され、CDなど所定の光ディスク6の記録トラック上に照射され光スポットを形成する。そして、この光ディスク6を反射した光束は、入射光束と逆の光路を辿り再び対物レンズ5、カップリングレンズ4を経てビームスプリッタ3に達し、少なくともその一部の光量に相当する光束がこのビームスプリッタ3を反射した後、信号検出用の復路光束108となって光導波素子13に達する。
【0040】
図11は光導波素子13の概略構成を示す概略平面図である。本実施例における光導波素子13は、この素子に入射した波長650〜660nm帯のレーザ光束である復路光束101を所定の方向に回折させるだけでなく、この素子に入射した波長780nm帯のレーザ光束である復路光束108も回折させる点で光導波素子7と異なるが、基本的には図2の光導波素子7と同様の構成である。
【0041】
図12は、第2の実施例における光検出器受光面の構成とそこに照射される光スポットの集光状態の一例を示した光ピックアップ装置主要部の概略平面図である。
【0042】
この光導波素子13に入射した復路光束108からは回折作用によって新たに+1次回折光束と−1次回折光束が発生するが、このうち分割領域71に入射した復路光束108から±1次回折光束が生じて、それぞれ光検出器14内に配置された複数の受光面のうち2分割受光面82’および83に入射して各受光面上で光スポット111および112を形成する。
【0043】
一方、分割領域72に入射した復路光束108から±1次回折光束が生じて、光検出器14内に配置された2分割受光面84’および85に入射して各受光面上で光スポット113および114を形成する。ここで、92〜96は実施例1と同様、波長650nm〜660nm帯のレーザ光束の光スポットである。
【0044】
ただし、実施例1と同様、分割領域72での±1次回折光束の回折角が分割領域71での回折角よりも大きくなるように両分割領域での平均格子溝ピッチが設定されているため、分割領域72による回折光束が入射する2分割受光面84’および85は、分割領域71による回折光束が入射する2分割受光面82’および83よりもさらに復路光束108の中心光軸から離れた位置に配置されている。また復路光束108からは前記光導波素子13をそのまま透過する0次光束も生じ、光検出器14内に配置された受光面86上に集光されて光スポット115を形成する。
【0045】
本実施例においては、波長650〜660nm帯のレーザ光束を出射するレーザ素子10と波長780nmのレーザ光束を出射するレーザ素子12はY軸方向に並んで配置されている。そのため、それぞれの光束が入射する回折格子上の位置は、図11に示したように、ディスク半径方向(Z軸方向)に所定の距離離れた位置となる。例えば0次光束が集光された光スポット115は、光スポット96と所定の距離離れた位置に形成される。
【0046】
光検出器14内において受光面82乃至85は、実施例1と同様に、図のZ軸方向すなわち前記光導波素子14に設けた分割線に平行な方向にほぼ一直線状に配置されている。また前記+1次回折光束の集光スポット111および113と、前記−1次回折光束の集光スポット112および114は、前記0次光束の集光スポット115を中心としてそれぞれ略対称な位置に形成される。
【0047】
さらにこれら受光面82乃至85は、やはりZ軸方向すなわち前記光導波素子14に設けた分割線73に略平行に伸びた分割線によって各々2分割され、それぞれ独立した2個の受光領域すなわち82aと82b、82’aと82’b、83aと83b、84aと84b、84’aと84’b、そして85aと85bを形成している。これら分割受光領域の各分割線の真上に前記集光スポット92乃至96、111乃至115がそれぞれ照射されている。
【0048】
ここで、回折格子による回折角は波長に比例するため、650〜660nm帯の波長の回折角に対して780nm帯の波長の回折角は大きくなり、0次光束による光スポットから±1次回折光による光スポットまでの距離は650〜660nm帯の場合よりも780nm帯の場合の方が大きくなる。例えば、光スポット115から光スポット114までの距離は、光スポット96から光スポット95までの距離よりも大きく、光スポット115から光スポット113までの距離は、光スポット96から光スポット94までの距離よりも大きい。
【0049】
図12を用いて、光スポット115が光スポット86よりも+1次回折光側に形成されるようにレーザ素子10とレーザ素子12が設置されている場合について説明する。この場合、+1次回折光側では、回折格子の領域71と領域72の格子溝ピッチが異なることに起因する光スポット形成位置のずれと、レーザ素子10とレーザ素子12とが所定の距離をもって配置されていることに起因する光スポット形成位置のずれとが同じ方向となって重畳されるため、光スポット93と光スポット112の形成位置、及び光スポット95と光スポット114との形成位置は比較的遠くなる。対して−1次回折光側では、回折格子の領域71と領域72の格子溝ピッチが異なることに起因する光スポット形成位置のずれと、レーザ素子10とレーザ素子12とが所定の距離をもって配置されていることに起因する光スポット形成位置のずれとが逆方向となり相殺されるため、光スポット92と光スポット111の形成位置、及び光スポット94と光スポット113との形成位置は比較的近くなる。このため、−1次回折光側では受光面を共通化することができる。例えば図12では、光スポット92と光スポット111を受光する受光面は受光面82に共通化し、光スポット94と光スポット113を受光する受光面は受光面84に共通化している。これにより、受光面の数を削減することができる。以上述べた他にも変更を加えた実施例を考えられるが、いずれも本発明の範疇にある。
【符号の説明】
【0050】
1:光ピックアップ
2:レーザ光源
5:応対物レンズ
6:光ディスク
7,13:光導波素子
8:光検出器
82〜86:受光面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
該レーザ光源を出射したレーザ光束を集光して光学的情報記録媒体の情報記録面上に集光スポットを照射する対物レンズとを有し、
前記光学的情報記録媒体に対して前記レーザ光束を照射して前記光学的情報記録媒体に記録された情報信号を再生または前記光学的情報記録媒体に所定の情報信号を記録する光ピックアップであって、
前記集光スポットの前記情報記録面からの反射レーザ光束が入射され該レーザ光束から0次光束と±1次回折光束を回折、出射する光導波素子と、
前記光導波素子から出射された前記レーザ光束の0次光束または±1次回折光束が入射され受光した光量に応じた光検出信号を出力する複数の受光面を有する光検出器とを備え、
前記光導波素子は、該光導波素子上において前記光学的情報記録媒体の記録トラック方向に相当する方向に対して略垂直な分割線により少なくとも2個に分割された分割領域を有し、該分割領域により前記レーザ光束の0次光束、+1次回折光束、−1次回折光束を前記光検出器内で互いに異なる所定の受光面に入射させ、かつ前記+1次回折光束および前記−1次回折光束に前記記録トラック方向または前記分割線に対して光軸回りに略45度回転した方向を主軸とする所定量の非点収差を付加することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
請求項1記載の光ピックアップであって、
前記分割線は、少なくとも前記光導波素子に入射されるレーザ光束の略中心光軸上に配置されていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項3】
請求項1または請求項2いずれか記載の光ピックアップであって、
前記光導波素子は、前記分割線により分割された分割領域毎に回折、出射させた+1次回折光束および−1次回折光束の回折方向が、共に前記記録トラック方向に対して略垂直な方向または前記分割線に対して略平行な方向であることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか記載の光ピックアップであって、
前記光導波素子は、前記分割線により分割された分割領域毎に互いに異なる平均格子溝ピッチを備えていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか記載の光ピックアップであって、
前記光導波素子は、不等間隔でかつ曲線状の格子溝パターンが形成されたホログラフィック回折格子であることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか記載の光ピックアップであって、
前記レーザ光束の+1次回折光束および−1次回折光束が入射する前記複数の受光面は、各々少なくとも2個の独立した受光面に分割されていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか記載の光ピックアップであって、
前記レーザ光束の+1次回折光束および−1次回折光束が入射する前記複数の受光面から得た前記光検出信号からフォーカス制御信号とトラッキング制御信号の双方を生成することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項8】
請求項7記載の光ピックアップを備えた光情報記録再生装置であって、
前記光検出器は、該光検出器の内部に前記フォーカス制御信号および前記トラッキング制御信号の双方を生成するための演算部を備えたことを特徴とする光情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−113767(P2012−113767A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259663(P2010−259663)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】