説明

光ファイバおよびその製造方法

【課題】アパーチャ機能を付加することによって出射端から出射される光の光線制御性が高められた光ファイバを提供する。
【解決手段】光ファイバ1Aは、光が入射する入射端および光が出射する出射端を備えており、出射端および/またはその近傍に位置する部分のコア4に、パルス幅が10-15秒以上10-11秒以下の超短パルスレーザ光を照射することによって形成されたアパーチャとして機能する光散乱領域5aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバおよびその製造方法に関し、特に出射端から出射される光の光線制御性が高められた光ファイバおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、入射端から入射した光源等の光を内部において伝播し、出射端からこれを外部に向けて出射する導光部材である。光ファイバは、芯線であるコアと、コアの外側を覆うクラッドと、クラッドの外側を覆う被覆材とによって構成されており、コアとクラッドとの屈折率差を利用してこれらの界面において光を反射させることにより、コアの内部において光が伝播されるように構成されたものである。
【0003】
通常、光ファイバの出射端には、各種レンズ等に代表される外部光学系がさらに接続される場合が多い。これにより、当該外部光学系によって光ファイバの出射端から出射された光の光線制御が行なわれる。
【0004】
また、光ファイバの出射端またはその近傍にレーザ加工を行なうことによって各種レンズを直接形成し、これにより光ファイバから出射される光の光線制御を行なうことも提案されている。
【0005】
たとえば、特表2006−510057号公報(特許文献1)には、出射端にレーザ光を照射することで表面除去加工を行なってレンズを形成し、当該レンズによって光ファイバから出射される光の光線制御が行なわれるように構成された光ファイバが開示されている。また、特開2005−292382号公報(特許文献2)には、出射端近傍にレーザ光を照射することで屈折率変化を誘起してレンズを形成し、当該レンズによって光ファイバから出射される光の光線制御が行なわれるように構成された光ファイバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−510057号公報
【特許文献2】特開2005−292382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、外部光学系を用いて光ファイバから出射される光を光線制御することとした場合には、光ファイバの出射端から出射される光に光ファイバの開口数に応じた広範な出射角を有する光が含まれているため、光ファイバのコア径に対して非常に大きい有効径を有する外部光学系を使用することが必要になる問題が生じる。これを解決するためには、外部光学系にアパーチャを含ませることが必要になるが、その場合には、外部光学系の部品点数が増加するといった問題や、アパーチャを含む外部光学系と光ファイバとの正確な位置決めが必要になるといった問題が生じてしまう。
【0008】
一方、上記特許文献1および2に開示の如くの光ファイバを使用することとした場合には、外部光学系の部品点数が削減できるメリットはあるものの、レーザ加工によって形成されたレンズに入射する光に開口制約になるもの(すなわち、アパーチャ機能を発揮するもの)が存在しないため、光線制御の制御性が低く、レンズに入射する光のうちの一部のみに対してしか所望の光線制御ができない結果となり、光ファイバから出射される光の信号対ノイズ比(S/N比)が非常に悪いものとなってしまう問題が生じる。
【0009】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、アパーチャ機能を付加することによって出射端から出射される光の光線制御性が高められた光ファイバおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に基づく光ファイバは、光が入射する入射端および光が出射する出射端を備えており、上記出射端および/またはその近傍に位置する部分のコアに、パルス幅が10-15秒以上10-11秒以下の超短パルスレーザ光を照射することで形成されたアパーチャが設けられてなるものである。
【0011】
上記本発明に基づく光ファイバにあっては、上記アパーチャが、上記超短パルスレーザ光が照射されることで上記コアの一部に損傷変化を誘起することにより形成された光散乱領域にて構成されていることが好ましい。
【0012】
上記本発明に基づく光ファイバにあっては、上記アパーチャが、上記超短パルスレーザ光が照射されることで上記コアの一部に黒色変化を誘起することにより形成された光吸収領域にて構成されていることが好ましい。
【0013】
上記本発明に基づく光ファイバにあっては、上記アパーチャが、上記コアの軸線を囲繞するように中央に開口部を有する円板状の形状を有していることが好ましい。
【0014】
上記本発明に基づく光ファイバにあっては、上記アパーチャが、上記コアの軸線に沿って互いに距離をもって複数設けられていてもよい。
【0015】
上記本発明に基づく光ファイバにあっては、上記アパーチャが、上記コアの軸線を囲繞するように中空部を有する円筒状の形状を有していることが好ましい。
【0016】
上記本発明に基づく光ファイバにあっては、上記アパーチャが、上記コアの軸線と直交する方向に沿って距離をもって複数設けられていてもよい。
【0017】
上記本発明に基づく光ファイバにあっては、上記アパーチャが形成された位置よりも上記出射端側に光学素子が設けられていてもよい。
【0018】
上記本発明に基づく光ファイバにあっては、上記光学素子が、パルス幅が10-15秒以上10-11秒以下の超短パルスレーザ光を照射することで形成されたものであることが好ましい。
【0019】
上記本発明に基づく光ファイバにあっては、上記光学素子が、レンズであることが好ましい。
【0020】
上記本発明に基づく光ファイバにあっては、上記光学素子が、体積型回折光学素子であってもよい。
【0021】
上記本発明に基づく光ファイバにあっては、上記アパーチャが、上記超短パルスレーザ光が照射されることで上記コアの一部に屈折率変化を誘起することにより形成された体積型回折光学素子にて構成されていることが好ましい。
【0022】
本発明に基づく光ファイバの製造方法は、上記本発明に基づく光ファイバを製造するための方法であって、上記超短パルスレーザ光を上記出射端側から上記出射端および/またはその近傍に位置する部分の上記コアに照射することで上記アパーチャを形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、アパーチャ機能を付加することによって出射端から出射される光の光線制御性が高められた光ファイバおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1における光ファイバの製造方法を実現するための製造装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における光ファイバの出射端近傍の光軸と直交する平面に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態3における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態4における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。
【図10】本発明の実施の形態4における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを示す図である。
【図11】本発明の実施の形態5における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。
【図12】本発明の実施の形態5における光ファイバの出射端近傍の光軸と直交する平面に沿った断面図である。
【図13】本発明の実施の形態5における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを示す図である。
【図14】本発明の実施の形態6における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。
【図15】本発明の実施の形態6における光ファイバの出射端近傍の光軸と直交する平面に沿った断面図である。
【図16】本発明の実施の形態7における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。
【図17】本発明の実施の形態7における光ファイバの出射端近傍の光軸と直交する平面に沿った断面図である。
【図18】本発明の実施の形態8における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。
【図19】本発明の実施の形態8における光ファイバの出射端近傍の光軸と直交する平面に沿った断面図である。
【図20】本発明の実施の形態9における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図であり、これに加えて光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを模式的に表わした図である。
【図21】本発明の実施の形態10における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図であり、これに加えて光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを模式的に表わした図である。
【図22】本発明の実施の形態11における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図であり、これに加えて光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを模式的に表わした図である。
【図23】本発明の実施の形態12における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図であり、これに加えて光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを模式的に表わした図である。
【図24】本発明の実施の形態13における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図であり、これに加えて光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを模式的に表わした図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す各実施の形態においては、同等のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は都度繰り返さないこととする。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光ファイバの製造方法を実現するための製造装置の構成を示す図である。まず、この図1を参照して、本実施の形態における光ファイバの製造方法について説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態における光ファイバの製造方法を実現するための製造装置100は、パルス幅が10-15秒(1フェムト秒)以上10-11秒(10ピコ秒)以下の超短パルスレーザ光(以下、フェムト秒レーザ光とも称する)を利用して、ワークであるアパーチャが未だ形成されていない光ファイバ1にアパーチャを形成するレーザ加工装置である。製造装置100は、レーザ源101と、レーザ源101に付設された各種光学系102〜106と、光ファイバ1を保持する保持具107とを主として備えている。
【0028】
レーザ源101は、保持具107によって保持された光ファイバ1に対してレーザ光200を照射するための手段であり、レーザ媒質としてたとえばチタン・サファイア結晶を含んでいる。当該レーザ源101から発せられるレーザ光200は、上述したフェムト秒レーザ光である。
【0029】
レーザ源101に付設された各種光学系は、NDフィルタ102と、アッテネータ103と、電磁シャッタ104と、アパーチャ105と、対物レンズ106とを含んでいる。これらNDフィルタ102、アッテネータ103、電磁シャッタ104、アパーチャ105および対物レンズ106は、レーザ光200のエネルギー(パルスエネルギー)や加工パターン、ビーム径、集光状態等を調整するためのものである。
【0030】
保持具107は、ワークである光ファイバ1を保持するための手段であり、図示しない保持具駆動機構によってX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向からなる並進3軸方向と、Z軸周りの回転方向であるθ方向とに駆動される。
【0031】
本実施の形態における光ファイバの製造方法にあっては、上述した製造装置100を用いることにより、ワークであるアパーチャが未だ形成されていない光ファイバ1を保持した保持具107を上述した図示しない保持具駆動機構を用いて駆動しつつ、レーザ源101にて発せされたレーザ光200を各種光学系102〜106を用いて制御することで光ファイバ1の出射端に当該出射端側から照射し、これにより光ファイバ1の出射端に位置する部分のコア4(図2および図3参照)にレーザ加工(損傷加工)を施すことで円板状の形状を有する光散乱領域5a(図2および図3参照)を形成する。これにより、後述する如くの、アパーチャが設けられた本実施の形態における光ファイバ1Aが製造されることになる。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態1における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。図3は、本実施の形態における光ファイバの出射端近傍の光軸と直交する平面に沿った断面図であり、図2中に示すIII−III線に沿って切断した場合の図である。また、図4は、本実施の形態における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを示す図であり、図2中に示す光ファイバ1Aの光軸OAと直交する観察面OPにおけるビームスポットを示す図である。次に、これら図2ないし図4を参照して、本実施の形態における光ファイバ1Aについて説明する。
【0033】
図2および図3に示すように、本実施の形態における光ファイバ1Aは、芯線であるコア4と、コア4の外側を覆うクラッド3と、クラッド3の外側を覆う被覆材2とを備えている。光ファイバ1Aは、好適にはPOF(Plastic Optical Fiber)またはGOF(Glass Optical Fiber)のいずれかからなり、コア4およびクラッド3は、光透過性の材料にて構成されている。
【0034】
ここで、コア4およびクラッド3を構成する具体的な材料としては、上述した損傷加工に適した材料を利用することが好ましく、POFの場合には、その分子構造にベンゼン環を含まない高分子材料が挙げられ、GOFの場合には、ガラス材料全般が挙げられる。分子構造にベンゼン環を含まない高分子材料としては、好適には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂やシクロオレフィンポリマー(COP)樹脂等が利用できる。なお、分子構造にベンゼン環を含む高分子材料(たとえばポリカーボネート(PC)樹脂やポリイミド(PI)樹脂)を使用した場合には、レーザ照射に伴って、後述する本発明の実施の形態5において説明する如くの黒色変化が誘起される場合が多くなるが、その場合であってもパルスエネルギーを最適化することにより、上述した損傷加工を施すことが可能であるため、その利用は可能である。
【0035】
光ファイバ1Aの出射端に位置する部分のコア4には、上述したフェムト秒レーザ光を用いたレーザ加工を施すによって光散乱領域5aが設けられている。当該光散乱領域5aは、中央に開口部を有する円板状の形状にて構成されており、コア4の軸線(すなわち光ファイバ1Aの光軸OA)を囲繞するように設けられている。当該光散乱領域5aの光軸OA方向に沿った厚みは、特に制限されるものではないが、たとえば0.005mm〜0.1mm程度が好適である。なお、当該円板状の形状を有する光散乱領域5aは、好ましくは光ファイバ1Aの光軸OAと同軸上に配置される。
【0036】
この光散乱領域5aは、上述したフェムト秒レーザ光を用いたレーザ加工を施すことによって損傷変化を誘起することで形成された部位であり、再凝固や気泡の形成が起こることで生じるおよそサブミクロンオーダーから数十ミクロンオーダーの微小凹凸を含む領域である。当該光散乱領域5aに光が照射されると、上記微小凹凸によって光の散乱が生じることになる。
【0037】
そのため、コア4の内部を図中矢印10方向に沿って伝播してきた光のうち、当該光散乱領域5aに照射された光は、当該光散乱領域5aに照射されない光(すなわち、光ファイバ1Aの光散乱領域5aが設けられていない部分の出射端に照射された光)に比べて、光散乱領域5aにおいて散乱される分だけ放射強度が弱められることになり、その結果、当該光散乱領域5aが設けられた部位においてアパーチャが構成されることになる。
【0038】
これにより、図4に示すように、光ファイバ1Aの出射端から出射される光の観察面OPにおけるビームスポットは、図中に示す放射強度の高い小径のビームスポットB(直径b)と、放射強度の低い大径のビームスポットC(直径c)とを含むことになる。このうちのビームスポットBは、光散乱領域5aを通過せずに光ファイバ1Aの出射端から出射された光が照射される領域であり、ビームスポットCは、光散乱領域5aを通過することで放射強度が弱められて光ファイバ1Aの出射端から出射された光が照射される領域である。また、図中に破線で示したビームスポットA(直径a)は、仮に光ファイバ1Aにおいて光散乱領域5aを設けなかった場合に観察面OPに光が照射される領域を表わしている。ここで、各ビームスポットの直径の関係は、b<a<<cの条件を満たすことになる。
【0039】
たとえば、コアの直径R1が1.0mmで開口数が0.5である光ファイバに、直径R2が0.5mmの開口部を有する厚さが0.05mmの円板状の光散乱領域を設けた場合には、出射端におけるコアの直径が0.5mmで開口数が0.5の光ファイバ(すなわち、出射径が0.5mmに制限された開口数0.5の光ファイバ)を形成することができる。
【0040】
このように、上述した如く、コア4の出射端に円板状の光散乱領域5aを形成することでアパーチャを構成することにより、光ファイバ1Aの出射端から出射される光は、当該アパーチャによって適度に絞られた光となる。すなわち、光ファイバ1Aの出射端から出射される光に光軸OAの近傍において放射強度が高くなる放射強度分布をもたせることが可能になり、ビーム径を適度に絞ることができる。そのため、上記構成を採用することにより、光ファイバ1Aの出射端から出射される光の光線制御性を高めることが可能になり、またS/N比を高めることも可能になる。
【0041】
したがって、当該光ファイバ1Aの出射端から出射される光を外部光学系を用いてさらに光線制御する場合であっても、有効径の小さなレンズの使用が可能になるといったメリットや、アパーチャを別途設ける必要がないといったメリットが得られることになり、外部光学系の小型化や部品点数の削減およびこれに起因する位置決めの簡略化等が実現可能になる。
【0042】
以上において説明したように、本実施の形態における光ファイバ1Aおよびその製造方法を採用することにより、アパーチャ機能を付加することによって出射端から出射される光の光線制御性が高められた光ファイバおよびその製造方法とすることができる。
【0043】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。また、図6は、本実施の形態における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを示す図であり、図5中に示す光ファイバ1Bの光軸OAと直交する観察面OPにおけるビームスポットを示す図である。次に、これら図5および図6を参照して、本実施の形態における光ファイバ1Bについて説明する。
【0044】
図5に示すように、本実施の形態における光ファイバ1Bにあっては、光ファイバ1Bの出射端近傍に位置する部分のコア4に、上述したフェムト秒レーザ光を用いたレーザ加工を施すによって光散乱領域5aが形成されることでアパーチャが設けられている。より詳細には、光ファイバ1Bの出射端から光ファイバ1Bの光軸OAに沿って距離L1だけ後退した位置に、円板状の形状を有する光散乱領域5aが当該光軸OAを囲繞するように形成されることでアパーチャが構成されている。
【0045】
ここで、上記距離L1は、当該光散乱領域5aに照射されない光(すなわち、光ファイバ1Bの光散乱領域5aが設けられていない部分を通過した光)が、当該光散乱領域5aよりも出射端側においてコア4とクラッド3との界面において反射されずに出射端に達する範囲内の距離とする。このように構成すれば、光散乱領域5aに照射されることで散乱した光のうちの多くが、光散乱領域5aよりも出射端側においてコア4とクラッド3との界面を透過してクラッド3に入光することになる。
【0046】
本実施の形態における光ファイバ1Bは、たとえば上述した本発明の実施の形態1において説明した製造装置100を用いることで製造される。具体的には、図1を参照して、ワークであるアパーチャが未だ形成されていない光ファイバ1を保持した保持具107を図示しない保持具駆動機構を用いて駆動しつつ、レーザ源101にて発せされたレーザ光200を各種光学系102〜106を用いて制御することで光ファイバ1の出射端近傍に当該出射端側から照射し、これにより光ファイバ1の出射端近傍に位置する部分のコア4(図5参照)にレーザ加工(損傷加工)を施すことで円板状の形状を有する光散乱領域5a(図5参照)が形成されることにより、上述の如くのアパーチャが設けられた光ファイバ1Bが製造される。
【0047】
本実施の形態における光ファイバ1Bにあっては、図6に示すように、光ファイバ1Bの出射端から出射される光の観察面OPにおけるビームスポットが、図中に示す放射強度の高い小径のビームスポットB(直径b)と、放射強度の低い大径のビームスポットC(直径c)とを含むことになる。このうちのビームスポットBは、光散乱領域5aを通過せずに光ファイバ1Bの出射端から出射された光が照射される領域であり、ビームスポットCは、光散乱領域5aを通過することで放射強度が弱められた光のうち、クラッド3に入光せずに光ファイバ1Bの出射端から出射された光が照射される領域である。また、図中に破線で示したビームスポットA(直径a)は、仮に光ファイバ1Bにおいて光散乱領域5aを設けなかった場合に観察面OPに光が照射される領域を表わしている。ここで、各ビームスポットの直径の関係は、b<a≦cの条件を満たすことになる。
【0048】
以上において説明した本実施の形態における光ファイバ1Bおよびその製造方法を採用することにより、上述した本発明の実施の形態1において説明した効果に加え、出射端から出射される光の光線制御性がさらに高められた光ファイバおよびその製造方法とすることができる効果が得られる。
【0049】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。また、図8は、本実施の形態における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを示す図であり、図7中に示す光ファイバ1Cの光軸OAと直交する観察面OPにおけるビームスポットを示す図である。次に、これら図7および図8を参照して、本実施の形態における光ファイバ1Cについて説明する。
【0050】
図7に示すように、本実施の形態における光ファイバ1Cにあっては、光ファイバ1Cの出射端近傍に位置する部分のコア4に、上述したフェムト秒レーザ光を用いたレーザ加工を施すによって光散乱領域5aが形成されることでアパーチャが設けられている。より詳細には、光ファイバ1Cの出射端から光ファイバ1Cの光軸OAに沿って距離L2だけ後退した位置に、円板状の形状を有する光散乱領域5aが当該光軸OAを囲繞するように形成されることでアパーチャが構成されている。
【0051】
ここで、上記距離L2は、当該光散乱領域5aに照射されない光(すなわち、光ファイバ1Cの光散乱領域5aが設けられていない部分を通過した光)の少なくとも一部が、当該光散乱領域5aよりも出射端側においてコア4とクラッド3との界面において反射されて出射端に達する範囲内の距離とする。このように構成すれば、光散乱領域5aに照射されることで散乱した光のうちの多くが、光散乱領域5aよりも出射端側においてコア4とクラッド3との界面を透過してクラッド3に入光することになる。
【0052】
本実施の形態における光ファイバ1Cは、たとえば上述した本発明の実施の形態1において説明した製造装置100を用いることで製造される。具体的には、図1を参照して、ワークであるアパーチャが未だ形成されていない光ファイバ1を保持した保持具107を図示しない保持具駆動機構を用いて駆動しつつ、レーザ源101にて発せされたレーザ光200を各種光学系102〜106を用いて制御することで光ファイバ1の出射端近傍に当該出射端側から照射し、これにより光ファイバ1の出射端近傍に位置する部分のコア4(図7参照)にレーザ加工(損傷加工)を施すことで円板状の形状を有する光散乱領域5a(図7参照)が形成されることにより、上述の如くのアパーチャが設けられた光ファイバ1Cが製造される。
【0053】
本実施の形態における光ファイバ1Cにあっては、図8に示すように、光ファイバ1Cの出射端から出射される光の観察面OPにおけるビームスポットが、図中に示す放射強度の高い小径のビームスポットB(直径b)と、放射強度の低い大径のビームスポットC(直径c)と、これらビームスポットBおよびCの中間程度の放射強度および径を有するビームスポットD(直径d)とを含むことになる。このうちのビームスポットDは、光散乱領域5aを通過せずにかつコア4とクラッド3との界面にて反射されずに光ファイバ1Cの出射端から出射された光が照射される領域であり、ビームスポットCは、光散乱領域5aを通過することで放射強度が弱められた光のうち、クラッド3に入光せずに光ファイバ1Cの出射端から出射された光が照射される領域であり、ビームスポットBは、光散乱領域5aを通過せずにかつコア4とクラッド3との界面にて反射されて光ファイバ1Cの出射端から出射された光が照射される領域である。また、図中に破線で示したビームスポットA(直径a)は、仮に光ファイバ1Cにおいて光散乱領域5aを設けなかった場合に観察面OPに光が照射される領域を表わしている。ここで、各ビームスポットの直径の関係は、b<d≦a≦cの条件を満たすことになる。
【0054】
以上において説明した本実施の形態における光ファイバ1Cおよびその製造方法を採用することにより、上述した本発明の実施の形態1において説明した効果に加え、出射端から出射される光の光線制御性がさらに高められた光ファイバおよびその製造方法とすることができる効果が得られる。
【0055】
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。また、図10は、本実施の形態における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを示す図であり、図9中に示す光ファイバ1Dの光軸OAと直交する観察面OPにおけるビームスポットを示す図である。次に、これら図9および図10を参照して、本実施の形態における光ファイバ1Dについて説明する。
【0056】
図9に示すように、本実施の形態における光ファイバ1Dにあっては、光ファイバ1Dの出射端および当該出射端近傍に位置する部分のコア4に、上述したフェムト秒レーザ光を用いたレーザ加工を施すによって光散乱領域5aが2層形成されることで2つのアパーチャが設けられている。より詳細には、光ファイバ1Dの出射端と、当該出射端から光ファイバ1Dの光軸OAに沿って距離L3だけ後退した位置のそれぞれに、円板状の形状を有する光散乱領域5aが当該光軸OAを囲繞するように2層形成されることにより、光軸OAに沿って互いに距離をもって位置する2つのアパーチャが構成されている。
【0057】
ここで、上記距離L3は、当該光散乱領域5aに照射されない光(すなわち、光ファイバ1Dの光散乱領域5aが設けられていない部分を通過した光)が、当該光散乱領域5aよりも出射端側においてコア4とクラッド3との界面において反射されずに出射端に達する範囲内の距離であってもよいし、上記光の少なくとも一部が、当該光散乱領域5aよりも出射端側においてコア4とクラッド3との界面において反射されて出射端に達する範囲内の距離であってもよい。このように構成すれば、入射端側に位置する光散乱領域5aに照射されることで散乱した光のうちの多くが、光散乱領域5aよりも出射端側においてコア4とクラッド3との界面を透過してクラッド3に入光するか、あるいは出射端側に位置する光散乱領域5aに照射されることでさらに散乱されることになる。
【0058】
本実施の形態における光ファイバ1Dは、たとえば上述した本発明の実施の形態1において説明した製造装置100を用いることで製造される。具体的には、図1を参照して、ワークであるアパーチャが未だ形成されていない光ファイバ1を保持した保持具107を図示しない保持具駆動機構を用いて駆動しつつ、レーザ源101にて発せされたレーザ光200を各種光学系102〜106を用いて制御することで光ファイバ1の出射端およびその近傍に当該出射端側から照射し、これにより光ファイバ1の出射端およびその近傍に位置する部分のコア4(図7参照)にレーザ加工(損傷加工)を施すことで円板状の形状を有する光散乱領域5a(図7参照)を2層形成することにより、上述の如くの2つのアパーチャが設けられた光ファイバ1Dが製造される。
【0059】
本実施の形態における光ファイバ1Dにあっては、図10に示すように、光ファイバ1Dの出射端から出射される光の観察面OPにおけるビームスポットが、図中に示す放射強度の高い小径のビームスポットB(直径b)と、放射強度の低い大径のビームスポットC(直径c)とを含むことになる。このうちのビームスポットBは、2層の光散乱領域5aを通過せずに光ファイバ1Dの出射端から出射された光が照射される領域であり、ビームスポットCは、2層の光散乱領域5aのいずれかを通過することで放射強度が弱められた光のうち、クラッド3に入光せずに光ファイバ1Dの出射端から出射された光が照射される領域である。また、図中に破線で示したビームスポットA(直径a)は、仮に光ファイバ1Dにおいて2層の光散乱領域5aを設けなかった場合に観察面OPに光が照射される領域を表わしている。ここで、各ビームスポットの直径の関係は、b<a<cの条件を満たすことになる。
【0060】
以上において説明した本実施の形態における光ファイバ1Dおよびその製造方法を採用することにより、上述した本発明の実施の形態1において説明した効果に加え、出射端から出射される光の光線制御性がさらに高められた光ファイバおよびその製造方法とすることができる効果が得られる。
【0061】
(実施の形態5)
図11は、本発明の実施の形態5における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。図12は、本実施の形態における光ファイバの出射端近傍の光軸と直交する平面に沿った断面図であり、図11中に示すXII−XII線に沿って切断した場合の図である。また、図13は、本実施の形態における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを示す図であり、図11中に示す光ファイバ1Eの光軸OAと直交する観察面OPにおけるビームスポットを示す図である。次に、これら図11ないし図13を参照して、本実施の形態における光ファイバ1Eについて説明する。
【0062】
図11および図12に示すように、本実施の形態における光ファイバ1Eは、芯線であるコア4と、コア4の外側を覆うクラッド3と、クラッド3の外側を覆う被覆材2とを備えている。光ファイバ1Eは、好適にはPOFからなり、コア4およびクラッド3は、光透過性の材料にて構成されている。
【0063】
ここで、コア4およびクラッド3を構成する具体的な材料としては、後述する黒色化加工に適した材料を利用することが好ましく、その分子構造にベンゼン環を含む高分子材料が挙げられる。分子構造にベンゼン環を含む高分子材料としては、好適には、ポリカーボネート(PC)樹脂やポリイミド(PI)樹脂等が利用できる。
【0064】
光ファイバ1Eの出射端に位置する部分のコア4には、後述するフェムト秒レーザ光を用いたレーザ加工を施すによって光吸収領域5bが設けられている。当該光吸収領域5bは、中央に開口部を有する円板状の形状にて構成されており、コア4の軸線(すなわち光ファイバ1Eの光軸OA)を囲繞するように設けられている。当該光吸収領域5bの光軸OA方向に沿った厚みは、特に制限されるものではないが、たとえば0.005mm〜0.1mm程度が好適である。なお、当該円板状の形状を有する光吸収領域5bは、好ましくは光ファイバ1Eの光軸OAと同軸上に配置される。
【0065】
本実施の形態における光ファイバ1Eは、たとえば上述した本発明の実施の形態1において説明した製造装置100を用いることで製造される。具体的には、図1を参照して、ワークであるアパーチャが未だ形成されていない光ファイバ1を保持した保持具107を図示しない保持具駆動機構を用いて駆動しつつ、レーザ源101にて発せされたレーザ光200を各種光学系102〜106を用いて制御することで光ファイバ1の出射端に当該出射端側から照射し、これにより光ファイバ1の出射端に位置する部分のコア4(図11および図12参照)にレーザ加工(黒色化加工)を施すことで円板状の形状を有する光吸収領域5b(図11および図12参照)が形成されることにより、上述の如くのアパーチャが設けられた光ファイバ1Eが製造される。
【0066】
この光吸収領域5bは、上述したフェムト秒レーザ光を用いたレーザ加工を施すことによって黒色変化を誘起することで形成された部位であり、炭化変質が起こることで生じる領域である。当該光吸収領域5bに光が照射されると、主として光の吸収が生じることになる。なお、炭化変質の生じ具合により、照射された光の一部が当該光吸収領域5bによって吸収されずに透過する場合もあるが、当該透過した光の強度は極端に弱められており、また別途散乱も生じているため、実質的には無視できる程度の放射強度の光となる。
【0067】
そのため、コア4の内部を図中矢印10方向に沿って伝播してきた光のうち、当該光吸収領域5bに照射された光は、当該光吸収領域5bに照射されない光(すなわち、光ファイバ1Eの光吸収領域5bが設けられていない部分の出射端に照射された光)に比べて、光吸収領域5bにおいて吸収されて放射強度が弱められることになり、その結果、当該光吸収領域5bが設けられた部位においてアパーチャが構成されることになる。
【0068】
これにより、図13に示すように、光ファイバ1Eの出射端から出射される光の観察面OPにおけるビームスポットは、図中に示す放射強度の高い小径のビームスポットB(直径b)のみを含むことになる。ここで、ビームスポットBは、光吸収領域5bを通過せずに光ファイバ1Eの出射端から出射された光が照射される領域である。また、図中に破線で示したビームスポットA(直径a)は、仮に光ファイバ1Eにおいて光吸収領域5bを設けなかった場合に観察面OPに光が照射される領域を表わしている。ここで、各ビームスポットの直径の関係は、b<aの条件を満たすことになる。
【0069】
たとえば、コアの直径R1が1.0mmで開口数が0.5である光ファイバに、直径R2が0.5mmの開口部を有する厚さが0.03mmの円板状の光吸収領域を設けた場合には、出射端におけるコアの直径が0.5mmで開口数が0.5の光ファイバ(すなわち、出射径が0.5mmに制限された開口数0.5の光ファイバ)を形成することができる。
【0070】
このように、上述した如く、コア4の出射端に円板状の光吸収領域5bを形成することでアパーチャを構成することにより、光ファイバ1Eの出射端から出射される光は、当該アパーチャによって適度に絞られた光となる。すなわち、光ファイバ1Eの出射端から出射される光に光軸OAの近傍において放射強度が高くなる放射強度分布をもたせることが可能になり、ビーム径を適度に絞ることができる。そのため、上記構成を採用することにより、光ファイバ1Eの出射端から出射される光の光線制御性を高めることが可能になり、またS/N比を高めることも可能になる。
【0071】
したがって、当該光ファイバ1Eの出射端から出射される光を外部光学系を用いてさらに光線制御する場合にあっても、有効径の小さなレンズの使用が可能になるといったメリットや、アパーチャを別途設ける必要がないといったメリットが得られることになり、外部光学系の小型化や部品点数の削減およびこれに起因する位置決めの簡略化等が実現可能になる。
【0072】
以上において説明したように、本実施の形態における光ファイバ1Eおよびその製造方法を採用することにより、アパーチャ機能を付加することによって出射端から出射される光の光線制御性が高められた光ファイバおよびその製造方法とすることができる。
【0073】
(実施の形態6)
図14は、本発明の実施の形態6における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。図15は、本実施の形態における光ファイバの出射端近傍の光軸と直交する平面に沿った断面図であり、図14中に示すXV−XV線に沿って切断した場合の図である。次に、これら図14および図15を参照して、本実施の形態における光ファイバ1Fについて説明する。
【0074】
図14および図15に示すように、本実施の形態における光ファイバ1Fにあっては、光ファイバ1Fの出射端およびその近傍に位置する部分のコア4に、上述したフェムト秒レーザ光を用いたレーザ加工を施すによって光散乱領域5aが形成されている。当該光散乱領域5aは、光ファイバ1Fの出射端から光ファイバ1Fの光軸OAに沿って距離L4だけ後退した位置にまで達するように連続して設けられることで中空部を有する円筒状の形状にて構成されており、コア4の軸線(すなわち光ファイバ1Fの光軸OA)を囲繞するように設けられている。
【0075】
当該円筒状の形状にて構成された光散乱領域5aは、その軸方向に沿った長さが相当程度の大きさを有するものであり、上述した本発明の実施の形態1における円板状の光散乱領域とは、光学的な特性から見た場合に区別されるものである。当該光散乱領域5aの径方向に沿った厚みは、特に制限されるものではないが、たとえば0.005mm〜0.1mm程度が好適である。なお、当該円筒状の形状を有する光散乱領域5aは、好ましくは光ファイバ1Fの光軸OAと同軸上に配置される。
【0076】
ここで、上記円筒状の形状にて構成された光散乱領域5aの軸方向長さ(すなわち距離L4)を所定の長さとすることにより、コア4の内部を伝播してきた光のうちの一部が、当該光散乱領域5aの内周面に照射されることになる。当該光散乱領域5aに照射された光は、全反射されずにその多くが光散乱領域5aによって散乱される。そのため、図中に示すように、光軸OAを含む断面において光散乱領域5aの内周面の入射端側の位置と光散乱領域5aの内周面の出射端側の位置との間を光軸OAと交わるように伝播する光の光軸OAに対する傾角αよりも大きい傾角を有する光については、これが当該光散乱領域5aに照射されることで散乱してその放射強度が弱められることになり、その結果、当該光散乱領域5aが設けられた部位においてアパーチャが構成されることになる。
【0077】
本実施の形態における光ファイバ1Fは、たとえば上述した本発明の実施の形態1において説明した製造装置100を用いることで製造される。具体的には、図1を参照して、ワークであるアパーチャが未だ形成されていない光ファイバ1を保持した保持具107を図示しない保持具駆動機構を用いて駆動しつつ、レーザ源101にて発せされたレーザ光200を各種光学系102〜106を用いて制御することで光ファイバ1の出射端およびその近傍に当該出射端側から照射し、これにより光ファイバ1の出射端およびその近傍に位置する部分のコア4(図14および図15参照)にレーザ加工(損傷加工)を施すことで円筒状の形状を有する光散乱領域5a(図14および図15参照)を形成することにより、上述の如くのアパーチャが設けられた光ファイバ1Fが製造される。
【0078】
本実施の形態における光ファイバ1Fにあっては、上述したように、光軸OAに対する傾角が所定の傾角αよりも大きい光について、これが光散乱領域5aによって散乱されることになる。そのため、光ファイバ1Fの出射端から出射される光は、その殆どが光散乱領域5aに照射されないで当該出射端に達した上記所定の傾角α以下の傾角を有する光となる。したがって、光ファイバ1Fの出射端から出射される光は、図示すように出射角の最大値が所定の大きさに制限された光11になることになり、光ファイバ1Fの開口数を出射端側において見かけ上減少させることができる。なお、図中に示す光11′は、仮に光ファイバ1Fにおいて光散乱領域5aを設けなかった場合に出射端から出射される光を示している。
【0079】
たとえば、コアの直径R1が1.0mmで開口数が0.5である光ファイバに、直径R3が0.9mmでかつ長さが5.0mmの中空部を有する径方向の厚さが0.05mmの円筒状の光散乱領域を設けた場合には、光ファイバの出射端側における出射光の特性を、開口数が0.3弱程度の光ファイバの出射端側における出射光の特性と同等にすることができる。
【0080】
このように、上述した如く、コア4の出射端およびその近傍に円筒状の光散乱領域5aを形成することでアパーチャを構成することにより、光ファイバ1Fの出射端から出射される光は、当該アパーチャによって適度に絞られた光となる。その結果、光ファイバ1Fの出射端から出射される光は、所望の出射角範囲内の光の放射強度のみが高められた低広がり角の光となる。すなわち、光ファイバ1Fの開口数に応じた出射角を有する光のうち、より低出射角を有する光のみを選択的に光ファイバ1Fの出射端から出射できるようになる。そのため、上記構成を採用することにより、光ファイバ1Fの出射端から出射される光の光線制御性を高めることが可能になり、またS/N比を高めることも可能になる。
【0081】
したがって、当該光ファイバ1Fの出射端から出射される光を外部光学系を用いてさらに光線制御する場合にあっても、有効径の小さなレンズの使用が可能になるといったメリットや、アパーチャを別途設ける必要がないといったメリットが得られることになり、外部光学系の小型化や部品点数の削減およびこれに起因する位置決めの簡略化等が実現可能になる。
【0082】
以上において説明したように、本実施の形態における光ファイバ1Fおよびその製造方法を採用することにより、アパーチャ機能を付加することによって出射端から出射される光の光線制御性が高められた光ファイバおよびその製造方法とすることができる。
【0083】
(実施の形態7)
図16は、本発明の実施の形態7における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。図17は、本実施の形態における光ファイバの出射端近傍の光軸と直交する平面に沿った断面図であり、図16中に示すXVII−XVII線に沿って切断した場合の図である。次に、これら図16および図17を参照して、本実施の形態における光ファイバ1Gについて説明する。
【0084】
図16および図17に示すように、本実施の形態における光ファイバ1Gにあっては、光ファイバ1Gの出射端およびその近傍に位置する部分のコア4に、上述したフェムト秒レーザ光を用いたレーザ加工を施すによって輪帯化された2層の光散乱領域5aが形成されることで光学的に一体に機能する1つのアパーチャが設けられている。より詳細には、輪帯化された2層の光散乱領域5aのそれぞれは、光ファイバ1Gの出射端から光ファイバ1Gの光軸OAに沿って距離L5だけ後退した位置にまで達するように連続して設けられることで中空部を有する円筒状の形状にて構成されており、これら2つの光散乱領域5aが光軸OAと直交する方向に沿って互いに距離をもって配置されることにより、当該光軸OAを囲繞するように1つのアパーチャが構成されている。
【0085】
本実施の形態における光ファイバ1Gは、たとえば上述した本発明の実施の形態1において説明した製造装置100を用いることで製造される。具体的には、図1を参照して、ワークであるアパーチャが未だ形成されていない光ファイバ1を保持した保持具107を図示しない保持具駆動機構を用いて駆動しつつ、レーザ源101にて発せされたレーザ光200を各種光学系102〜106を用いて制御することで光ファイバ1の出射端およびその近傍に当該出射端側から照射し、これにより光ファイバ1の出射端およびその近傍に位置する部分のコア4(図14および図15参照)にレーザ加工(損傷加工)を施すことで円筒状の形状を有する光散乱領域5a(図14および図15参照)を2層形成することにより、上述の如くの光学的に一体に機能する1つのアパーチャが設けられた光ファイバ1Gが製造される。
【0086】
本実施の形態の如くの光ファイバ1Gとした場合には、上述した本発明の実施の形態6における光ファイバ1Fに比較して、光学的に同等の機能を発揮するアパーチャを軸方向に沿ってより短小化した光散乱領域5aにて構成できるメリットが得られる。すなわち、図16に示すように、たとえば外側に位置する内径がR3である円筒状の光散乱領域5aの内側に、内径がR4(=(1/3)×R3)である円筒状の光散乱領域5aをさらに設けた場合には、光散乱領域5aの軸方向長さ(すなわち距離L5で表わされる大きさ)を、一層の円筒状の光散乱領域でこれを構成する場合に比べて約1/3の大きさに短小化することができる。
【0087】
たとえば、コアの直径R1が1.0mmで開口数が0.5である光ファイバに、直径R3が0.9mmでかつ長さが1.7mmの中空部を有する径方向の厚さが0.05mmの円筒状の外側光散乱領域を設けるとともに、その内側に直径R4が0.3mmでかつ長さが1.7mmの中空部を有する径方向の厚さが0.05mmの円筒状の内側光散乱領域をさらに設けることとした場合には、当該内側光散乱領域を設けずに外側光散乱領域の長さを5.0mmとした場合のものと同様に、光ファイバの出射端側における出射光の特性を、開口数が0.3弱程度の光ファイバの出射端側における出射光の特性と同等にすることができる。
【0088】
以上において説明した本実施の形態における光ファイバ1Gおよびその製造方法を採用することにより、上述した本発明の実施の形態6において説明した効果に加え、光散乱領域5aを形成するレーザ加工の際により深い位置にまでレーザ光を照射させる必要なくなるため、より容易にかつエネルギーロスなくアパーチャを形成することができる効果が得られる。
【0089】
(実施の形態8)
図18は、本発明の実施の形態8における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図である。図19は、本実施の形態における光ファイバの出射端近傍の光軸と直交する平面に沿った断面図であり、図18中に示すXIX−XIX線に沿って切断した場合の図である。次に、これら図18および図19を参照して、本実施の形態における光ファイバ1Hについて説明する。
【0090】
図18および図19に示すように、本実施の形態における光ファイバ1Hにあっては、光ファイバ1Hの出射端およびその近傍に位置する部分のコア4に、上述したフェムト秒レーザ光を用いたレーザ加工を施すによって光吸収領域5bが形成されている。当該光吸収領域5bは、光ファイバ1Hの出射端から光ファイバ1Hの光軸OAに沿って距離L4だけ後退した位置にまで達するように連続して設けられることで中空部を有する円筒状の形状にて構成されており、コア4の軸線(すなわち光ファイバ1Hの光軸OA)を囲繞するように設けられている。
【0091】
当該円筒状の形状にて構成された光吸収領域5bは、その軸方向に沿った長さが相当程度の大きさを有するものであり、上述した本発明の実施の形態5における円板状の光吸収領域とは、光学的な特性から見た場合に区別されるものである。当該光吸収領域5bの径方向に沿った厚みは、特に制限されるものではないが、たとえば0.005mm〜0.1mm程度が好適である。なお、当該円筒状の形状を有する光吸収領域5bは、好ましくは光ファイバ1Hの光軸OAと同軸上に配置される。
【0092】
ここで、上記円筒状の形状にて構成された当該光吸収領域5bの軸方向長さを所定の長さとすることにより、コア4の内部を伝播してきた光のうちの一部が、当該光吸収領域5bの内周面に照射されることになる。当該光吸収領域5bに照射された光は、全反射されずにその多くが光吸収領域5bによって吸収される。そのため、図中に示すように、光軸OAを含む断面において光吸収領域5bの内周面の入射端側の位置と光吸収領域5bの内周面の出射端側の位置との間を光軸OAと交わるように伝播する光の光軸OAに対する傾角αよりも大きい傾角を有する光については、これが当該光吸収領域5bに照射されることで吸収されてその放射強度が弱められることになり、その結果、当該光吸収領域5bが設けられた部位においてアパーチャが構成されることになる。
【0093】
本実施の形態における光ファイバ1Hは、たとえば上述した本発明の実施の形態1において説明した製造装置100を用いることで製造される。具体的には、図1を参照して、ワークであるアパーチャが未だ形成されていない光ファイバ1を保持した保持具107を図示しない保持具駆動機構を用いて駆動しつつ、レーザ源101にて発せされたレーザ光200を各種光学系102〜106を用いて制御することで光ファイバ1の出射端およびその近傍に当該出射端側から照射し、これにより光ファイバ1の出射端およびその近傍に位置する部分のコア4(図18および図19参照)にレーザ加工(黒色化加工)を施すことで円筒状の形状を有する光吸収領域5b(図18および図19参照)を形成することにより、上述の如くのアパーチャが設けられた光ファイバ1Hが製造される。
【0094】
本実施の形態における光ファイバ1Hにあっては、上述したように、光軸OAに対する傾角が所定の傾角αよりも大きい光について、これが光吸収領域5bによって吸収されることになる。そのため、光ファイバ1Hの出射端から出射される光は、その殆どが光吸収領域5bに照射されないで当該出射端に達した上記所定の傾角α以下の傾角を有する光となる。したがって、光ファイバ1Hの出射端から出射される光は、図示すように出射角の最大値が所定の大きさに制限された光11になることになり、光ファイバ1Hの開口数を出射端側において見かけ上減少させることができる。なお、図中に示す光11′は、仮に光ファイバ1Hにおいて光散乱領域5aを設けなかった場合に出射端から出射される光を示している。
【0095】
たとえば、コアの直径R1が1.0mmで開口数が0.5である光ファイバに、直径R3が0.9mmでかつ長さが5.0mmの中空部を有する径方向の厚さが0.03mmの円筒状の光吸収領域を設けた場合には、光ファイバの出射端側における出射光の特性を、開口数が0.3弱程度の光ファイバの出射端側における出射光の特性と同等にすることができる。
【0096】
このように、上述した如く、コア4の出射端およびその近傍に円筒状の光吸収領域5bを形成することでアパーチャを構成することにより、光ファイバ1Hの出射端から出射される光は、当該アパーチャによって適度に絞られた光となる。その結果、光ファイバ1Hの出射端から出射される光は、所望の出射角範囲内の光の放射強度のみが高められた低広がり角の光となる。すなわち、光ファイバ1Hの開口数に応じた出射角を有する光のうち、より低出射角を有する光のみを選択的に光ファイバ1Hの出射端から出射できるようになる。そのため、上記構成を採用することにより、光ファイバ1Hの出射端から出射される光の光線制御性を高めることが可能になり、またS/N比を高めることも可能になる。
【0097】
したがって、当該光ファイバ1Hの出射端から出射される光を外部光学系を用いてさらに光線制御する場合にあっても、有効径の小さなレンズの使用が可能になるといったメリットや、アパーチャを別途設ける必要がないといったメリットが得られることになり、外部光学系の小型化や部品点数の削減およびこれに起因する位置決めの簡略化等が実現可能になる。
【0098】
以上において説明したように、本実施の形態における光ファイバ1Hおよびその製造方法を採用することにより、アパーチャ機能を付加することによって出射端から出射される光の光線制御性が高められた光ファイバおよびその製造方法とすることができる。
【0099】
(実施の形態9)
図20は、本発明の実施の形態9における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図であり、これに加えて本実施の形態における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを模式的に表わした図である。次に、この図20を参照して、本実施の形態における光ファイバ1Iについて説明する。
【0100】
図20に示すように、本実施の形態における光ファイバ1Iは、出射端およびその近傍に、アパーチャとして機能する円板状の形状を有する光散乱領域5aに加えて、レンズ6を具備してなるものである。ここで、レンズ6は、たとえばフレネル型レンズやバイナリ型レンズ、屈折型レンズ等、種々のものが利用可能であるが、本実施の形態における光ファイバ1Iにあっては、フレネル型レンズを備えている。
【0101】
当該レンズ6は、上述したフェムト秒レーザ光を光ファイバ1Iの出射端およびその近傍に照射することにより、当該部分に屈折率変化を誘起することで形成されるものである。したがって、本実施の形態における光ファイバ1Iにあっては、上述した光散乱領域5aおよびレンズ6のいずれもが、たとえば上述した本発明の実施の形態1において説明した製造装置100を用いて実施されるレーザ加工によって形成できることになる。
【0102】
光散乱領域5aは、光ファイバ1Iの出射端から光ファイバ1Iの光軸OAに沿って距離LFだけ後退した位置に設けられている。ここで、当該距離LFは、レンズ6の焦点距離に相当する距離とする。
【0103】
このように構成した場合には、コア4の内部を図中矢印10方向に沿って伝播してきた光が、レンズ6の焦点位置に配置された、光散乱領域5aが形成されることで構成されたアパーチャによって適切に絞られた後にレンズ6に照射されることになるため、当該光ファイバ1Iの光軸OAと略平行方向に進む擬似コリメート光12に変換されて光ファイバ1Iの出射端から出射されることになる。
【0104】
そのため、光ファイバ1Iの光軸OAと直交する観察面OPにおけるビームスポットは、図中に示す放射強度の高い小径のビームスポットEのみを含むことになる。また、図中において破線で示す光12′およびビームスポットAは、仮に光ファイバ1Iにおいて光散乱領域5aおよびレンズ6を設けなかった場合に出射端から出射される光および当該光の観察面OPに対する照射領域を表わしており、図中において二点鎖線で示す光12″およびビームスポットE″は、仮に光ファイバ1Iにおいて光散乱領域5aを設けずにレンズ6のみを設けた場合に出射端から出射される光および当該光の観察面OPに対する照射領域を表わしている。
【0105】
たとえば、コアの直径R1が1.0mmで開口数が0.5である光ファイバの出射端近傍に開口数0.5のレンズを設けるとともに、当該レンズの焦点位置である、光ファイバの出射端からの距離が1.4mmの位置に直径R2が0.1mmの開口部を有する厚さが0.05mmの円板状の光散乱領域を設けた場合には、広がり角の半角が3°程度に制限された擬似コリメート光が出射端から出射されることになる。
【0106】
このように、上述した如く、コア4の出射端にレンズ6を形成するとともにその焦点位置に円板状の光散乱領域5aを形成することにより、光ファイバ1Iから出射される光を所望の光(ここでは、適切にビームスポットが絞られた略平行光化された光)に光線制御することが可能になる。そのため、上記構成を採用することにより、光ファイバ1Iの出射端から出射される光の光線制御性を高めることが可能になり、またS/N比を高めることも可能になる。
【0107】
したがって、当該光ファイバ1Iの出射端から出射される光を外部光学系を用いてさらに光線制御する場合にあっても、有効径の小さなレンズの使用が可能になるといったメリットや、アパーチャを別途設ける必要がないといったメリットが得られることになり、外部光学系の小型化や部品点数の削減およびこれに起因する位置決めの簡略化等が実現可能になる。
【0108】
以上において説明したように、本実施の形態における光ファイバ1Iおよびその製造方法を採用することにより、アパーチャ機能およびレンズ機能を付加することによって出射端から出射される光の光線制御性が高められた光ファイバおよびその製造方法とすることができる。
【0109】
(実施の形態10)
図21は、本発明の実施の形態10における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図であり、これに加えて本実施の形態における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを模式的に表わした図である。次に、この図21を参照して、本実施の形態における光ファイバ1Jについて説明する。
【0110】
図21に示すように、本実施の形態における光ファイバ1Jは、上述した本発明の実施の形態9における光ファイバ1Iと比較した場合に、光散乱領域5aが形成された位置においてのみ相違している。すなわち、本実施の形態における光ファイバ1Jにあっては、光散乱領域5aがレンズ6の焦点位置よりもさらに入射端側の有限位置に配置されている。具体的には、光散乱領域5aは、光ファイバ1Jの出射端から光ファイバ1Jの光軸OAに沿って距離s(ここで、距離sは、図20に示す距離LFよりも大きい)だけ後退した位置に設けられている。
【0111】
このように構成した場合には、コア4の内部を図中矢印10方向に沿って伝播してきた光が、光散乱領域5aが形成されることで構成されたアパーチャによって適切に絞られた後にレンズ6に照射されることになるため、光ファイバ1Jの出射端から出射される光13が、(n/s)+(1/s′)=1/fで決まる投影位置に結像されることになる。ここで、nは、コア4の屈折率であり、s′は、レンズ6からの投影方向における像面までの距離であり、fは、レンズ6の焦点距離である。
【0112】
そのため、光ファイバ1Jの光軸OAと直交する観察面OP(ここでは、当該観察面OPをレンズ6の像面とする)におけるビームスポットは、図中に示す放射強度の高い小径のビームスポットFのみを含むことになる。また、図中において破線で示す光12′およびビームスポットAは、仮に光ファイバ1Jにおいて光散乱領域5aおよびレンズ6を設けなかった場合に出射端から出射される光および当該光の観察面OPに対する照射領域を表わしており、図中において二点鎖線で示す光12″およびビームスポットE″は、仮に光ファイバ1Jにおいて光散乱領域5aを設けずにレンズ6のみを設けた場合に出射端から出射される光および当該光の観察面OPに対する照射領域を表わしている。
【0113】
このように、上述した如く、コア4の出射端にレンズ6を形成するとともにその有限位置に円板状の光散乱領域5aを形成することにより、光ファイバ1Iから出射される光を所望の光(ここでは、適切にビームスポットが絞られることで有限位置において集光される光)に光線制御することが可能になる。そのため、上記構成を採用することにより、光ファイバ1Jの出射端から出射される光の光線制御性を高めることが可能になり、またS/N比を高めることも可能になる。
【0114】
したがって、当該光ファイバ1Jの出射端から出射される光を外部光学系を用いてさらに光線制御する場合にあっても、有効径の小さなレンズの使用が可能になるといったメリットや、アパーチャを別途設ける必要がないといったメリットが得られることになり、外部光学系の小型化や部品点数の削減およびこれに起因する位置決めの簡略化等が実現可能になる。
【0115】
以上において説明したように、本実施の形態における光ファイバ1Jおよびその製造方法を採用することにより、アパーチャ機能およびレンズ機能を付加することによって出射端から出射される光の光線制御性が高められた光ファイバおよびその製造方法とすることができる。
【0116】
(実施の形態11)
図22は、本発明の実施の形態11における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図であり、これに加えて本実施の形態における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを模式的に表わした図である。次に、この図22を参照して、本実施の形態における光ファイバ1Kについて説明する。
【0117】
図22に示すように、本実施の形態における光ファイバ1Kは、上述した本発明の実施の形態9における光ファイバ1Iと比較した場合に、光散乱領域5aの形状において相違している。すなわち、本実施の形態における光ファイバ1Kにあっては、アパーチャが光ファイバ1Kの光軸OAを囲繞する複数の円筒状の形状を有する光散乱領域5aにて構成されており、レンズ6に近接して配置されている。
【0118】
このように構成した場合には、コア4の内部を図中矢印10方向に沿って伝播してきた光が、光散乱領域5aが形成されることで構成されたアパーチャによって光ファイバ1Kの光軸に対する傾角が所定の角度範囲内の光に制限されることで絞られた後にレンズ6に照射されることになるため、レンズ6に照射される光を略平行光化することが可能となって擬似無限遠投影状態を作り出すことができる。したがって、光ファイバ1Kの出射端から出射される光14が、レンズ6の略焦点位置(光ファイバ1Kの出射端からの距離がレンズ6の焦点距離Lfである位置の近傍)に集光されることになる。
【0119】
そのため、光ファイバ1Kの光軸OAと直交する観察面OP(ここでは、当該観察面OPをレンズ6の略焦点位置を含む面とする)におけるビームスポットは、図中に示す放射強度の高い小径のビームスポットGのみを含むことになる。また、図中において破線で示す光12′およびビームスポットAは、仮に光ファイバ1Kにおいて光散乱領域5aおよびレンズ6を設けなかった場合に出射端から出射される光および当該光の観察面OPに対する照射領域を表わしており、図中において二点鎖線で示す光12″およびビームスポットE″は、仮に光ファイバ1Kにおいて光散乱領域5aを設けずにレンズ6のみを設けた場合に出射端から出射される光および当該光の観察面OPに対する照射領域を表わしている。
【0120】
このように、上述した如く、コア4の出射端にレンズ6を形成するとともにその近傍に円筒状の光散乱領域5aを形成することにより、光ファイバ1Kから出射される光を所望の光(ここでは、適切にビームスポットが絞られることでレンズ6の略焦点位置において集光される光)に光線制御することが可能になる。そのため、上記構成を採用することにより、光ファイバ1Kの出射端から出射される光の光線制御性を高めることが可能になり、またS/N比を高めることも可能になる。
【0121】
したがって、当該光ファイバ1Kの出射端から出射される光を外部光学系を用いてさらに光線制御する場合にあっても、有効径の小さなレンズの使用が可能になるといったメリットや、アパーチャを別途設ける必要がないといったメリットが得られることになり、外部光学系の小型化や部品点数の削減およびこれに起因する位置決めの簡略化等が実現可能になる。
【0122】
以上において説明したように、本実施の形態における光ファイバ1Kおよびその製造方法を採用することにより、アパーチャ機能およびレンズ機能を付加することによって出射端から出射される光の光線制御性が高められた光ファイバおよびその製造方法とすることができる。
【0123】
(実施の形態12)
図23は、本発明の実施の形態12における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図であり、これに加えて本実施の形態における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを模式的に表わした図である。次に、この図23を参照して、本実施の形態における光ファイバ1Lについて説明する。
【0124】
図23に示すように、本実施の形態における光ファイバ1Lは、芯線であるコア4と、コア4の外側を覆うクラッド3と、クラッド3の外側を覆う被覆材2とを備えている。光ファイバ1Lは、好適にはPOFからなり、コア4およびクラッド3は、光透過性の材料にて構成されている。
【0125】
ここで、コア4およびクラッド3を構成する具体的な材料としては、後述する改質加工に適した材料を利用することが好ましく、POFの場合には、その分子構造にベンゼン環を含まない高分子材料が挙げられ、GOFの場合には、ガラス材料全般が挙げられる。分子構造にベンゼン環を含まない高分子材料としては、好適には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂やシクロオレフィンポリマー(COP)樹脂等が利用できる。なお、分子構造にベンゼン環を含む高分子材料(たとえばポリカーボネート(PC)樹脂やポリイミド(PI)樹脂)を使用した場合には、レーザ照射に伴って、上述した本発明の実施の形態5において説明した如くの黒色変化が誘起される場合が多くなるが、その場合であってもパルスエネルギーを最適化することにより、後述する改質加工を施すことが可能であるため、その利用は可能である。
【0126】
光ファイバ1Lの出射端に位置する部分のコア4には、後述するフェムト秒レーザ光を用いたレーザ加工を施すによって体積型回折光学素子としての体積型回折レンズ5cが設けられている。体積型回折レンズ5cは、後述するフェムト秒レーザ光を光ファイバ1Lの出射端およびその近傍に照射することにより、当該部分に屈折率変化を誘起することで形成された所定形状の改質層の集合体からなる。体積型回折レンズ5cは、当該レンズに入射する光に対して角度依存性を有しており、所定主光線角度以下で入射した光のみについてレンズ機能を発揮し、所定主光線角度よりも大きい入射角で入射した光をそのまま透過する種類のレンズである。そのため、当該体積型回折レンズ5cは、一種のアパーチャとして機能することになる。
【0127】
ここで、体積型回折レンズ5cの体積性質を示す指標であるQ値は、体積型回折レンズ5cに入射する光の波長をλ、体積型回折レンズ5cの改質厚をL、コア4の屈折率をn、体積型回折レンズ5cの回折周期をΛとした場合にQ=2πλL/nΛ2で表わされ、当該Q値が10以上であると体積性質が強く、角度依存性が高いことになる。なお、上記Q値は、最外郭周期と改質厚とを調整することで10以上になるように設定されていてもよいし、周期毎に10以上になるように改質厚を適宜変更することとしてもよい。
【0128】
本実施の形態における光ファイバ1Lは、たとえば上述した本発明の実施の形態1において説明した製造装置100を用いることで製造される。具体的には、図1を参照して、ワークであるアパーチャが未だ形成されていない光ファイバ1を保持した保持具107を図示しない保持具駆動機構を用いて駆動しつつ、レーザ源101にて発せされたレーザ光200を各種光学系102〜106を用いて制御することで光ファイバ1の出射端に当該出射端側から照射し、これにより光ファイバ1の出射端に位置する部分のコア4(図23参照)にレーザ加工(改質加工)を施すことで所望の形状の改質層が形成されることにより、上述の如くの体積型回折レンズ5cからなるアパーチャが設けられた光ファイバ1Lが製造される。
【0129】
このように構成した場合には、光ファイバ1Lの出射端から出射される光15に、体積型回折レンズ5cの角度依存性に基づいて光軸OAの近傍において放射強度が高くなる放射強度分布をもたせることが可能になる。換言すれば、コア4の内部を図中矢印10方向に沿って伝播してきた光のうち、体積型回折レンズ5cに対して所定角度よりも大きい入射角で入射した光15′をそのまま透過させることが可能になる。
【0130】
そのため、光ファイバ1Lの光軸OAと直交する観察面OPにおけるビームスポットは、図中に示す放射強度の高い小径のビームスポットHと、放射強度の弱い大径のビームスポットIとを含むことになる。このうちのビームスポットHは、体積型回折レンズ5cに照射されてそのレンズ機能により屈折した後に光ファイバ1Lの出射端から出射された光15が照射される領域であり、ビームスポットIは、体積型回折レンズ5cに照射されてそのまま透過することで光ファイバ1Lの出射端から出射された光15″が照射される領域である。
【0131】
したがって、当該光ファイバ1Lの出射端から出射される光を外部光学系を用いてさらに光線制御する場合にあっても、有効径の小さなレンズの使用が可能になるといったメリットや、アパーチャを別途設ける必要がないといったメリットが得られることになり、外部光学系の小型化や部品点数の削減およびこれに起因する位置決めの簡略化等が実現可能になる。
【0132】
以上において説明したように、本実施の形態における光ファイバ1Lおよびその製造方法を採用することにより、アパーチャ機能を付加することによって出射端から出射される光の光線制御性が高められた光ファイバおよびその製造方法とすることができる。
【0133】
(実施の形態13)
図24は、本発明の実施の形態13における光ファイバの出射端近傍の光軸を含む平面に沿った断面図であり、これに加えて本実施の形態における光ファイバの出射端から出射される光のビームスポットを模式的に表わした図である。次に、この図24を参照して、本実施の形態における光ファイバ1Mについて説明する。
【0134】
図24に示すように、本実施の形態における光ファイバ1Mは、上述した本発明の実施の形態12における光ファイバ1Lと比較した場合に、アパーチャとして機能する体積型回折レンズ5cに加え、さらにアパーチャとして機能する光散乱領域5aを具備している点において相違している。これら体積型回折レンズ5cおよび光散乱領域5aは、上述したように、いずれもたとえば上述した本発明の実施の形態1において説明した製造装置100を用いて実施されるレーザ加工によって形成できる。
【0135】
このように構成した場合には、光ファイバ1Mの出射端から出射される光15に、体積型回折レンズ5cの角度依存性に基づいて光軸OAの近傍において放射強度が高くなる放射強度分布をもたせることが可能になるばかりでなく、光散乱領域5aを形成することで構成されたアパーチャによっても光軸OAの近傍において放射強度が高くなる放射強度分布をもたせることが可能になる。換言すれば、コア4の内部を図中矢印10方向に沿って伝播してきた光であってかつ光散乱領域5aに照射されることで散乱した光のうち、体積型回折レンズ5cに対して所定角度よりも大きい入射角で入射した光15′をそのまま透過させることが可能になる。したがって、上述した本発明の実施の形態12における光ファイバ1Lと比べた場合に、本実施の形態における光ファイバ1Mでは、さらにS/N比を高めることが可能になる。
【0136】
そのため、光ファイバ1Mの光軸OAと直交する観察面OPにおけるビームスポットは、図中に示す放射強度の高い小径のビームスポットHと、放射強度の非常に弱い大径のビームスポットIとを含むことになる。このうちのビームスポットHは、光散乱領域5aと通過せずに体積型回折レンズ5cに照射されて屈折した後に光ファイバ1Mの出射端から出射された光15が照射される領域であり、ビームスポットIは、光散乱領域5aを通過することで放射強度が弱められて体積型回折レンズ5cに照射されてそのまま透過することで光ファイバ1Mの出射端から出射された光15″が照射される領域である。
【0137】
したがって、当該光ファイバ1Mの出射端から出射される光を外部光学系を用いてさらに光線制御する場合にあっても、有効径の小さなレンズの使用が可能になるといったメリットや、アパーチャを別途設ける必要がないといったメリットが得られることになり、外部光学系の小型化や部品点数の削減およびこれに起因する位置決めの簡略化等が実現可能になる。
【0138】
以上において説明したように、本実施の形態における光ファイバ1Mおよびその製造方法を採用することにより、複数のアパーチャ機能を付加することによって出射端から出射される光の光線制御性が高められた光ファイバおよびその製造方法とすることができる。
【0139】
以上において説明した本発明の実施の形態1ないし11および13にあっては、光ファイバのコアにのみ光散乱領域または光吸収領域を形成することでアパーチャを構成した場合を例示したが、当該光散乱領域または光吸収領域は、クラッドに達するように設けられていてもよい。
【0140】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし11および13にあっては、円板状または円筒状の形状を有するように形成された光散乱領域または光吸収領域でアパーチャを構成するようにした場合を例示したが、これらの形状はあくまでも典型例に過ぎない。すなわち、光散乱領域または光吸収領域の形状は、これらに限定されるものではなく、アパーチャとしての機能が発揮される限りにおいては、たとえば円錐台状の形状や段差を有するような形状等、様々な形状に変更することができる。
【0141】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし11および13においては、光散乱領域または光吸収領域を形成することで構成されたアパーチャの形成位置や大きさ、厚み等について、その典型例を示したに過ぎず、これらアパーチャの形成位置や大きさ、厚み等は、光ファイバの仕様や出射光の利用態様等に基づいて適宜変更することができる。
【0142】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし12にあっては、光散乱領域または光吸収領域あるいは体積型回折光学素子を個別に設けることでアパーチャを構成した場合を例示したが、たとえば上述した本発明の実施の形態13の如く、これらを併用することでアパーチャを構成することとしてもよい。
【0143】
また、以上において説明した本発明の実施の形態9ないし11においては、光ファイバの出射端およびその近傍にフェムト秒レーザを照射することでレンズを形成した場合を例示して説明を行なったが、光ファイバに形成されるレンズとしては、この他にも、光ファイバの成形時において光ファイバの出射端に凸面または凹面等を直接設けることでこれをレンズとして使用することも可能である。
【0144】
さらには、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし13において示した特徴的な構成は、本発明の目的に照らして許容される範囲で相互に組み合わせることが当然に可能である。
【0145】
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0146】
1,1A〜1L 光ファイバ、2 被覆材、3 クラッド、4 コア、5a 光散乱領域、5b 光吸収領域、5c 体積型回折レンズ、6 レンズ、100 製造装置、101 レーザ源、102 NDフィルタ、103 アッテネータ、104 電磁シャッタ、105 アパーチャ、106 対物レンズ、107 保持具、200 レーザ光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が入射する入射端および光が出射する出射端を備えた光ファイバであって、
前記出射端および/またはその近傍に位置する部分のコアに、パルス幅が10-15秒以上10-11秒以下の超短パルスレーザ光を照射することで形成されたアパーチャが設けられている、光ファイバ。
【請求項2】
前記アパーチャは、前記超短パルスレーザ光が照射されることで前記コアの一部に損傷変化を誘起することにより形成された光散乱領域からなる、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記アパーチャは、前記超短パルスレーザ光が照射されることで前記コアの一部に黒色変化を誘起することにより形成された光吸収領域からなる、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記アパーチャが、前記コアの軸線を囲繞するように中央に開口部を有する円板状の形状を有している、請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記アパーチャが、前記コアの軸線に沿って互いに距離をもって複数設けられている、請求項4に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記アパーチャが、前記コアの軸線を囲繞するように中空部を有する円筒状の形状を有している、請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記アパーチャが、前記コアの軸線と直交する方向に沿って距離をもって複数設けられている、請求項6に記載の光ファイバ。
【請求項8】
前記アパーチャが形成された位置よりも前記出射端側に光学素子が設けられている、請求項1から7のいずれかに記載の光ファイバ。
【請求項9】
前記光学素子が、パルス幅が10-15秒以上10-11秒以下の超短パルスレーザ光を照射することで形成されたものである、請求項8に記載の光ファイバ。
【請求項10】
前記光学素子が、レンズである、請求項8または9に記載の光ファイバ。
【請求項11】
前記光学素子が、体積型回折光学素子である、請求項8または9に記載の光ファイバ。
【請求項12】
前記アパーチャは、前記超短パルスレーザ光が照射されることで前記コアの一部に屈折率変化を誘起することにより形成された体積型回折光学素子からなる、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の光ファイバの製造方法であって、
前記超短パルスレーザ光を前記出射端側から前記出射端および/またはその近傍に位置する部分の前記コアに照射することで前記アパーチャを形成することを特徴とする、光ファイバの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−194263(P2012−194263A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56832(P2011−56832)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【特許番号】特許第4807476号(P4807476)
【特許公報発行日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】