説明

光ファイバアレイ用樹脂材料

【課題】樹脂材料で構成される樹脂層の膜厚が150μm以上の厚膜に設定されても硬化収縮に起因した樹脂層の剥離等が起こり難い光ファイバアレイ用樹脂材料を提供する。
【解決手段】光重合性化合物と光重合開始剤を含有する本発明の光ファイバアレイ用樹脂材料は、シランカップリング剤によって表面処理された2種類の球状シリカを70〜85重量%含んでおり、その平均粒径がそれぞれ0.3〜4μmと8〜15μmであることを特徴とする。そして、平均粒径が0.3〜4μmと8〜15μmである2種類の球状シリカを混合して適用しているため、硬化収縮率を例えば2%未満とすることができ、硬化する樹脂層の膜厚が150μm以上の厚膜に設定されても硬化収縮に起因した樹脂層の剥離等を回避することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合性化合物と光重合開始剤を含有しかつ光ファイバアレイの製造に適用される光ファイバアレイ用樹脂材料に係り、特に、樹脂層の膜厚が150μm以上の厚膜に設定されても硬化収縮に起因した樹脂層の剥離等が起こり難い光ファイバアレイ用樹脂材料の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の光ファイバアレイとしては、例えば、図1に示すように一対の平板部材1と、この平板部材1間に光ファイバアレイ用樹脂材料(接着剤)から成る樹脂硬化物2を介し固定された複数のファイバ素線3とを備え、固定された各ファイバ素線3の先端が対向して配置される光学素子等と光学的に接続されるものが知られている。
【0003】
ところで、近年、作業者に対する有毒性や環境汚染等の問題から、光ファイバアレイの製造に適用される光ファイバアレイ用樹脂材料(接着剤)については、従来慣用されていた有機溶剤を成分に含む接着剤に代えて、紫外線等活性エネルギー線の照射によって硬化する無溶剤型の接着剤に切り換える検討がなされている。
【0004】
そして、無溶剤型の接着剤に使用される光硬化性樹脂としては、従来、光重合性化合物と光重合開始剤を構成成分としラジカル反応を利用したアクリル系化合物が広く知られている(特許文献1参照)。但し、特許文献1に記載されたアクリル系化合物を光ファイバアレイ用樹脂材料(接着剤)に用いた光ファイバアレイについて、これを高温高湿下に長時間晒した場合、樹脂層が膨潤してファイバ素線の位置ずれを引き起こすことがあった。
【0005】
そこで、本発明者は、光ファイバアレイを長時間高温高湿条件下に晒してもファイバ素線の位置ずれが起こり難い光ファイバアレイ用樹脂材料(接着剤)を提案している。
【0006】
すなわち、この光ファイバアレイ用樹脂材料は、光重合性化合物と光重合開始剤を含有し、かつ、光重合性化合物が、式(I)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレートと、式(II)、式(III)、式(IV)または式(V)で表される少なくとも一種の化合物で構成されると共に、上記光重合開始剤が、式(VI)、式(VII)、式(VIII)または式(IX)で表される少なくとも一種の化合物で構成されていることを特徴とするものであった。
【0007】
【化3】

【0008】
【化4】

そして、この樹脂材料から成る樹脂硬化物はその耐湿性が極めて高いため、この樹脂材料を用いて製造された光ファイバアレイを、例えば、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて2000時間以上晒しても、ファイバ素線の位置ずれが起り難い利点を有するものであった。
【0009】
ところで、ラジカル反応を利用したこの種の光硬化性樹脂材料は10%以上の大きな硬化収縮率を有し、この硬化収縮によって発生する内部応力のため、カール、クラック、剥離等が生じ易く、光ファイバアレイの用途に利用し難い欠点があった。
【0010】
このような技術的背景の下、本発明者は、シラン系カップリング剤による表面処理が施された平均粒径0.3〜4μmの1種類の球状シリカを60〜80重量%含有させることにより硬化収縮率を6%程度に低減させた光ファイバアレイ用樹脂材料も提案している。
【0011】
しかし、樹脂材料で構成される樹脂層の膜厚が150μm以上と厚膜に設定される場合、6%程度の硬化収縮率では光ファイバアレイの組み立て時において上記硬化収縮に起因した樹脂層の剥離等を充分に回避できないことがあり、樹脂層における膜厚の設定如何によっては未だ改良の余地を有していた。
【特許文献1】特開2004−161845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、樹脂材料で構成される樹脂層の膜厚が150μm以上の厚膜に設定されても硬化収縮に起因した樹脂層の剥離等が起こり難い光ファイバアレイ用樹脂材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、この課題を解決するため本発明者が鋭意研究を継続したところ、平均粒径が異なる2種類の無機系充填材を特定割合で配合させた光硬化性樹脂材料が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、請求項1に係る発明は、
光重合性化合物と光重合開始剤を含有する光ファイバアレイ用樹脂材料を前提とし、
シランカップリング剤によって表面処理された2種類の無機系充填材が70〜85重量%含有されており、その平均粒径がそれぞれ0.3〜4μmと8〜15μmであることを特徴とし、
また、請求項2に係る発明は、
光重合性化合物と光重合開始剤を含有する光ファイバアレイ用樹脂材料を前提とし、
2種類の球状シリカが70〜85重量%含有されており、その平均粒径がそれぞれ0.3〜4μmと8〜15μmであることを特徴とする。
【0015】
次に、請求項3に係る発明は、
請求項1または2記載の発明に係る光ファイバアレイ用樹脂材料を前提とし、
粒子間に機械的エネルギーを加えるメカノフュージョンによるメカノケミカル処理若しくはシラン系カップリング剤のアルコール希釈溶液による湿式処理により上記無機系充填材または球状シリカが表面処理されていることを特徴とし、
また、請求項4に係る発明は、
請求項3記載の発明に係る光ファイバアレイ用樹脂材料を前提とし、
上記光重合性化合物として、式(I)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを14〜29重量%、および、式(II)、式(III)、式(IV)または式(V)で表される少なくとも一種の化合物を0.05〜0.5重量%含有し、上記光重合開始剤として、式(VI)、式(VII)、式(VIII)または式(IX)で表される少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とするものである。
【0016】
【化5】

【0017】
【化6】

【発明の効果】
【0018】
請求項1、3、4記載の発明に係る光ファイバアレイ用樹脂材料は、
シランカップリング剤によって表面処理された2種類の無機系充填材が70〜85重量%含有されており、その平均粒径がそれぞれ0.3〜4μmと8〜15μmであることを特徴とし、
また、請求項2、3、4記載の発明に係る光ファイバアレイ用樹脂材料は、
2種類の球状シリカが70〜85重量%含有されており、その平均粒径がそれぞれ0.3〜4μmと8〜15μmであることを特徴としている。
【0019】
そして、平均粒径が異なる2種類の無機系充填材若しくは球状シリカを混合して適用すると、1種類の充填材を使用する場合よりも高い充填率で添加きるため、硬化収縮率を、例えば2%未満とすることが可能となる。
【0020】
従って、硬化する樹脂層の膜厚が150μm以上の厚膜に設定されても硬化収縮に起因した樹脂層の剥離等を回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
まず、本発明に係る光ファイバアレイ用樹脂材料に適用される充填材としては、シランカップリング剤による表面処理が施されたアルミナ等の無機系充填材若しくは球状シリカであり、その平均粒径0.3〜4μmと8〜15μmの2種類であることを要する。また、光ファイバアレイ用樹脂材料中における充填材の配合比率は70〜85重量%であるが、硬化収縮率を2%未満とするには75〜85重量%の範囲であることが望ましい。尚、ここで言う平均粒径とは、透過電子顕微鏡(TEM)で観察される無機系充填材や球状シリカの平均粒径を示している。
【0023】
また、上記球状シリカについては、樹脂成分に対する濡れ性を向上させるため、上述したアルミナ等の無機系充填材と同様、シラン系カップリング剤による表面処理が施されていることが望ましい。この表面処理の手法として、粒子間に機械的エネルギーを加えるメカノフュージョンによるメカノケミカル処理、あるいはシラン系カップリング剤のアルコール希釈溶液による湿式処理が挙げられる。そして、上記シランカップリング剤として、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメロキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、その添加量は無機系充填材若しくは球状シリカの全重量に対して0.5〜1重量%であることが望ましい。
【0024】
また、本発明に係る光ファイバアレイ用樹脂材料は光重合性化合物と光重合開始剤を含有している。そして、光重合性化合物としては、上記式(I)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレートが好ましく、その純度は95%以上、配合比率は14〜29重量%の範囲が望ましい。更に、光重合性化合物には、上述した式(II)、式(III)、式(IV)または式(V)で表される少なくとも一種の化合物を0.05〜0.5重量%含有することが好ましい。
【0025】
また、本発明に係る光ファイバアレイ用樹脂材料の硬化手段は光硬化型であり、光重合開始剤を構成する成分としては、上述した式(VI)、式(VII)、式(VIII)または式(IX)で表される少なくとも一種の化合物が含まれていることが好ましく、かつ、この化合物は光ファイバアレイ用樹脂材料中に0.1〜0.5重量%含有されていることが望ましい。
【0026】
更に、必要に応じて上記樹脂材料中に、シランカップリング剤等の接着力向上剤、界面活性剤、濡れ性向上剤、消泡剤等を添加してもよい。
【0027】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲が以下の実施例の内容に限定されるものではない。
【0028】
尚、以下に述べるシリカの表面処理は、2kgのシリカと20mlのシラン系カップリング剤をメカノフュージョン[ホソカワミクロン(株)社製 AMS−LAB]に投入しかつ2650rpmで10分間撹拌する「メカノケミカル処理」、あるいは、1体積%のシラン系カップリング剤のメタノール溶液500mlにシリカ250gを混合しかつ30分間撹拌した後にシリカを取り出す共に90℃の対流式オーブンで1日乾燥させる「湿式処理」のいずれかの手法により行っており、これにより以下に述べる「処理済み球状シリカ」「処理済みシリカ」をそれぞれを得ている。
【0029】
また、硬化収縮率の測定はJIS K 7232に従って実施しており、その値が2%未満の場合を合格としている。
【実施例1】
【0030】
光重合性化合物として上記式(I)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート[共栄社化学(株)社製 DCP−A]14.5重量%に、上記式(II)で表されるミリスチルアセテート[購入元:SIGMA社]0.3重量%と、光重合開始剤として上記式(VI)で表される1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと式(VII)で表されるビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルオキサイドの1:3混合物[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製 IRGACURE1800]を0.2重量%加え、更に、3−メタクリロキシプロピルトリメロキシシランを用いた処理済み球状シリカ[扶桑化学工業(株)社製 SP−03B:平均粒径0.3μm]20重量%と、同じく処理済みシリカ[電気化学工業(株)社製 FB−35:平均粒径10μm]65重量%を加えて実施例1に係る光ファイバアレイ用樹脂材料を得た。
【0031】
得られた実施例1に係る光ファイバアレイ用樹脂材料の硬化収縮率について測定したところ、1.5%で合格であった。
【実施例2】
【0032】
光重合性化合物として上記式(I)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート[共栄社化学(株)社製 DCP−A]14.5重量%に、上記式(III)で表されるラウリルアクリレート[共栄社化学(株)社製 L−A]0.3重量%と、光重合開始剤として上記式(VI)で表される1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと式(VII)で表されるビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルオキサイドの1:3混合物[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製 IRGACURE1800]を0.2重量%加え、更に、3−メタクリロキシプロピルトリメロキシシランを用いた処理済み球状シリカ[扶桑化学工業(株)社製 SP−03B:平均粒径0.3μm]20重量%と、同じく処理済みシリカ[電気化学工業(株)社製 FB−35:平均粒径10μm]65重量%を加えて実施例2に係る光ファイバアレイ用樹脂材料を得た。
【0033】
得られた実施例2に係る光ファイバアレイ用樹脂材料の硬化収縮率について測定したところ、1.5%で合格であった。
【実施例3】
【0034】
光重合性化合物として上記式(I)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート[共栄社化学(株)社製 DCP−A]14.5重量%に、上記式(IV)で表されるイソミリスチルアクリレート[共栄社化学(株)社製 IM−A]0.3重量%と、光重合開始剤として上記式(VI)で表される1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと式(VII)で表されるビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルオキサイドの1:3混合物[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製 IRGACURE1800]を0.2重量%加え、更に、3−メタクリロキシプロピルトリメロキシシランを用いた処理済み球状シリカ[扶桑化学工業(株)社製 SP−03B:平均粒径0.3μm]20重量%と、同じく処理済みシリカ[電気化学工業(株)社製 FB−35:平均粒径10μm]65重量%を加えて実施例3に係る光ファイバアレイ用樹脂材料を得た。
【0035】
得られた実施例3に係る光ファイバアレイ用樹脂材料の硬化収縮率について測定したところ、1.5%で合格であった。
【実施例4】
【0036】
光重合性化合物として上記式(I)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート[共栄社化学(株)社製 DCP−A]14.5重量%に、上記式(V)で表される2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート[共栄社化学(株)社製 BEPG−A]0.3重量%と、光重合開始剤として上記式(VI)で表される1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと式(VII)で表されるビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルオキサイドの1:3混合物[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製 IRGACURE1800]を0.2重量%加え、更に、3−メタクリロキシプロピルトリメロキシシランを用いた処理済み球状シリカ[扶桑化学工業(株)社製 SP−03B:平均粒径0.3μm]20重量%と、同じく処理済みシリカ[電気化学工業(株)社製 FB−35:平均粒径10μm]65重量%を加えて実施例4に係る光ファイバアレイ用樹脂材料を得た。
【0037】
得られた実施例4に係る光ファイバアレイ用樹脂材料の硬化収縮率について測定したところ、1.5%で合格であった。
【実施例5】
【0038】
光重合性化合物として上記式(I)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート[共栄社化学(株)社製 DCP−A]14.5重量%に、式(II)で表されるミリスチルアセテート[購入元:SIGMA社]を0.3重量%と、光重合開始剤として上記式(VI)で表される1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製 IRGACURE184]を0.1重量%と、式(VIII)で表されるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製 IRGACURE819]を0.1重量%加え、更に、3−メタクリロキシプロピルトリメロキシシランを用いた処理済み球状シリカ[扶桑化学工業(株)社製 SP−03B:平均粒径0.3μm]20重量%と、同じく処理済みシリカ[電気化学工業(株)社製 FB−35:平均粒径10μm]65重量%を加えて実施例5に係る光ファイバアレイ用樹脂材料を得た。
【0039】
得られた実施例5に係る光ファイバアレイ用樹脂材料の硬化収縮率について測定したところ、1.5%で合格であった。
【実施例6】
【0040】
光重合性化合物として上記式(I)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート[共栄社化学(株)社製 DCP−A]14.5重量%に、上記式(II)で表されるミリスチルアセテート[購入元:SIGMA社]0.3重量%と、光重合開始剤として上記式(VI)で表される1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと式(VII)で表されるビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルオキサイドの1:3混合物[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製 IRGACURE1800]を0.1重量%と、上記式(IX)で表されるベンゾイル蟻酸メチル[購入元:関東化学(株)社]を0.1重量%加え、更に、3−メタクリロキシプロピルトリメロキシシランを用いた処理済み球状シリカ[扶桑化学工業(株)社製 SP−03B:平均粒径0.3μm]20重量%と、同じく処理済みシリカ[電気化学工業(株)社製 FB−35:平均粒径10μm]65重量%を加えて実施例6に係る光ファイバアレイ用樹脂材料を得た。
【0041】
得られた実施例6に係る光ファイバアレイ用樹脂材料の硬化収縮率について測定したところ、1.5%で合格であった。
[比較例1]
光重合性化合物として上記式(I)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート[共栄社化学(株)社製 DCP−A]29重量部に、上記式(II)で表されるミリスチルアセテート[購入元:SIGMA社]0.75重量部と、光重合開始剤として上記式(VI)で表される1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと式(VII)で表されるビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルオキサイドの1:3混合物[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製 IRGACURE1800]を0.25重量部加え、更に、3−メタクリロキシプロピルトリメロキシシランを用いた上記表面処理が施されていない1種類の球状シリカ[電気化学工業(株)社製 FB−35:平均粒径10μm]を75重量部加えて比較例1に係る光ファイバアレイ用樹脂材料を得た。
【0042】
そして、得られた比較例1に係る光ファイバアレイ用樹脂材料の硬化収縮率について測定したところ、3.5%となり不合格であった。
[比較例2]
光重合性化合物として上記式(I)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート[共栄社化学(株)社製 DCP−A]29重量部に、上記式(II)で表されるミリスチルアセテート[購入元:SIGMA社]0.75重量部と、光重合開始剤として上記式(VI)で表される1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと式(VII)で表されるビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルオキサイドの1:3混合物[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製 IRGACURE1800]を0.25重量部加え、更に、3−メタクリロキシプロピルトリメロキシシランを用いた上記表面処理が施されていない1種類の球状シリカ[電気化学工業(株)社製 FB−35:平均粒径10μm]を85重量部加えて硬化収縮率が3.5%(比較例1)より低い光ファイバアレイ用樹脂材料の調製を試みたところ、この組成物はペースト状にならず光ファイバアレイ用樹脂材料を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る樹脂材料は、平均粒径が0.3〜4μmと8〜15μmである2種類の無機系充填材若しくは球状シリカを混合して適用しているため硬化収縮率を例えば2%未満とすることができ、硬化する樹脂層の膜厚が150μm以上の厚膜に設定されても硬化収縮に起因した樹脂層の剥離等を回避することが可能となる。従って、光ファイバアレイ用の樹脂材料として産業上利用される可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】一対の平板部材間に光ファイバアレイ用樹脂材料から成る樹脂硬化物を介し複数のファイバ素線が固定されている光ファイバアレイの概略断面図。
【符号の説明】
【0045】
1 平板部材
2 樹脂硬化物
3 ファイバ素線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性化合物と光重合開始剤を含有する光ファイバアレイ用樹脂材料において、
シランカップリング剤によって表面処理された2種類の無機系充填材が70〜85重量%含有されており、その平均粒径がそれぞれ0.3〜4μmと8〜15μmであることを特徴とする光ファイバアレイ用樹脂材料。
【請求項2】
光重合性化合物と光重合開始剤を含有する光ファイバアレイ用樹脂材料において、
2種類の球状シリカが70〜85重量%含有されており、その平均粒径がそれぞれ0.3〜4μmと8〜15μmであることを特徴とする光ファイバアレイ用樹脂材料。
【請求項3】
粒子間に機械的エネルギーを加えるメカノフュージョンによるメカノケミカル処理若しくはシラン系カップリング剤のアルコール希釈溶液による湿式処理により上記無機系充填材または球状シリカが表面処理されていることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバアレイ用樹脂材料。
【請求項4】
上記光重合性化合物として、式(I)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを14〜29重量%、および、式(II)、式(III)、式(IV)または式(V)で表される少なくとも一種の化合物を0.05〜0.5重量%含有し、上記光重合開始剤として、式(VI)、式(VII)、式(VIII)または式(IX)で表される少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする請求項3記載の光ファイバアレイ用樹脂材料。
【化1】

【化2】


【図1】
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【公開番号】特開2007−249053(P2007−249053A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75401(P2006−75401)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】