光ファイバケーブル
【課題】 光ファイバテープ心線をシースから確実に分離して取り出せることができる光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】 支持線14にシース15を施して支持線部12を形成し、ファイバ心線30を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線40に、各光ファイバ心線30が上下に並ぶようにしてシース17を施してケーブル部11を形成し、上記支持線部12と上記ケーブル部11とを首部13で連結した光ファイバケーブルにおいて、光ファイバテープ心線40の左右両側に、その光ファイバテープ心線幅より幅の広い離形用シート20を縦添えし、その離形用シート20の上下方向両端部21で光ファイバテープ心線40の両側を覆うようにした。
【解決手段】 支持線14にシース15を施して支持線部12を形成し、ファイバ心線30を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線40に、各光ファイバ心線30が上下に並ぶようにしてシース17を施してケーブル部11を形成し、上記支持線部12と上記ケーブル部11とを首部13で連結した光ファイバケーブルにおいて、光ファイバテープ心線40の左右両側に、その光ファイバテープ心線幅より幅の広い離形用シート20を縦添えし、その離形用シート20の上下方向両端部21で光ファイバテープ心線40の両側を覆うようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下管路内や電柱間に架設し、電柱からビル、マンション、宅内等に引き込む光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber To The Home)等の用途で、高速、大容量通信を行うため、複数の光ファイバを積層して収容したテープ積層型光ファイバケーブルが、空中及び地下に広く布設されている。
【0003】
図10は、従来のテープ積層型光ファイバケーブルの断面図である。図10に示すように光ファイバケーブル100は、光ファイバテープ心線(ファイバテープユニット)101を収容するケーブル部102と、ケーブル部102を支持する支持線部103とからなり、ケーブル部102と支持線部103とは互いに平行に首部104を介して一対に結合されている。
【0004】
ケーブル部102は、積層された2枚の4心光ファイバテープ心線101,101の両側に一対のテンションメンバ(抗張力体)105,105が添設され、光ファイバテープ心線101及びテンションメンバ105が一括してPE、難燃性PEまたはPVC等の熱可塑性樹脂のケーブルシース106で被覆されてなる。ケーブル部102の両側面(図中左右方向)には、ケーブルシース106を破断してケーブル部102から光ファイバテープ心線101を取り出す際に使用するノッチ107が形成されている。光ケーブル用抗張力体105は、導電性金属線、またはガラス繊維、プラスチック等の非導電性金属線で形成されている。
【0005】
支持線部103は、鋼線等の金属線で形成された支持線108と、支持線108を被覆する支持線側シース109とからなる。支持線側シース109及び首部104は、ケーブルシース106と同様に熱可塑性樹脂で形成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−271870号公報
【特許文献2】特開2003−315640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年のFTTHの需要拡大に伴い、多心の光ファイバケーブルから単心の光ファイバ心線を分岐させるために、光ファイバケーブル100を布設した後、ケーブルの中間(架空)で分岐させて光ファイバテープ心線101を取り出す工法(以下、中間後分岐処理と称する)が適用されるようになっている。
【0008】
中間後分岐処理において、光ファイバケーブル100から光ファイバテープ心線101を取り出す方法について図11、図12(図10中の支持線部103及び首部104を省略する)に基づいて説明する。
【0009】
図11に示すように、光ファイバテープ心線101を取り出すには、ケーブルシース106を分割して取り出す。この際、ケーブルシース106の両側のノッチ107,107に、工具(ディタッチャ)111の爪112を挿入し、ケーブルシース106を上下方向に引き裂くべく、爪112でケーブルシース106を中心から互いに反対方向に力を加える。すると、ケーブルシース106がノッチ107から裂けて2つに分割される。
【0010】
しかしながら、図12に示すように、ケーブルシース106を2つに分割すると、片方のケーブルシース106bから光ファイバテープ心線101が分離せずに残ってしまい、光ファイバテープ心線101を取り出すことができないという問題がある。
【0011】
光ファイバテープ心線101が一方のケーブルシース106b内に残ってしまう理由は、両ノッチ107,107間に光ファイバテープ心線101が位置するので、ケーブルシース106を分割させる際に、両ノッチ107,107内に挿入された爪112が、ケーブルシース106をテープファイバ心線101側に押し込み、ケーブルシース106とファイバテープ心線101とを密着させてしまうためである。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、光ファイバテープ心線をケーブルシースから分離して取り出せることができる光ファイバケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、支持線にシースを施して支持線部を形成し、ファイバ心線を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線に、各光ファイバ心線が上下に並ぶようにしてシースを施してケーブル部を形成し、上記支持線部と上記ケーブル部とを首部で連結し、かつ上記ケーブル部の左右側面にシースを破断して光ファイバテープ心線を露出させるためのノッチを形成した光ファイバケーブルにおいて、上記光ファイバテープ心線の左右側に、その光ファイバテープ心線幅より幅の広い離形用シートを縦添えし、その離形用シートの上下方向両端部で光ファイバテープ心線の上下両側を覆うようにした光ファイバケーブルである。
【0014】
請求項2の発明は、光ファイバテープ心線の上下方向の両端から突出する離形用シートの両端部は、光ファイバ心線を、光ファイバ心線の直径の1/5以上を覆う請求項1記載の光ファイバケーブルである。
【0015】
請求項3の発明は、光ファイバテープ心線の上下方向の両端から突出する離形用シートの両端部は、30°以上曲げられて上記光ファイバテープ心線の上下側を覆うようにした請求項1記載の光ファイバケーブルである。
【0016】
請求項4の発明は、上記離形用シートは、ポリプロピレン或いはポリエチレンテレフタレートで形成され、その厚さが16μm以上50μm以下である請求項1〜3いずれかに記載の光ファイバケーブルである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光ファイバテープ心線をシースから確実に分離して取り出せることができるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
本実施の形態の光ファイバケーブルは、複数本の光ファイバ心線を並列に連結してなる光ファイバテープ心線を備えるものであり、まず、光ファイバ心線及び光ファイバテープ心線(以下、テープ心線と称する)について説明する。
【0020】
図2に示すように、光ファイバ心線30は、ガラス系材料で形成された光ファイバ(光ファイバ裸線)31と、光ファイバ31を被覆する一次被覆層32と、一次被覆層32を被覆する二次被覆層33と、二次被覆層33を被覆する着色層34と、着色層34を被覆するオーバコート層35とからなる。各層は、それぞれ光ファイバ31を中心とする同心円筒形状に形成されている。一次被覆層32及び二次被覆層33は、光ファイバ31を衝撃や外傷から保護するための層である。着色層34は、光ファイバを識別するための着色を施す層である。オーバコート層35は、光ファイバ心線30を複数本並列に連結して形成してなる光ファイバテープ心線から、1本の光ファイバ心線を分離させる際、その取扱い(ハンドリング)を容易にするために、ある程度の太さの直径を有する心線を形成するべく設けられる層である。一次被覆層32、二次被覆層33、着色層34及びオーバコート層35はいずれも紫外線硬化樹脂で形成されており、例えば、オーバコート層35は、一次被覆層32より軟性でかつ二次被覆層33より硬性な紫外線硬化樹脂で形成される。
【0021】
図3に示すように、テープ心線40は、図2の光ファイバ心線30を4本並列に連結して形成されるものである。テープ心線40は、各光ファイバ心線30を並列に並べ、各光ファイバ30間の一部を紫外線硬化樹脂41で埋めて連結してなる。
【0022】
本実施の形態の光ファイバケーブルについて説明する。
【0023】
図1に示すように、光ファイバケーブル10は、テープ心線40を収容するケーブル部11と、ケーブル部11を支持するための支持線部12と、ケーブル部11と支持線部12とを連結する首部13とからなる。
【0024】
支持線部12は、支持線(抗張力体)14とその外周を覆う支持線側シース15とで構成される。
【0025】
ケーブル部11は、2枚のテープ心線40と、テープ心線40に沿って配置される少なくとも一本(図1では2本)のテンションメンバ(抗張力体)16,16との周囲をケーブルシース17で覆われて形成されている。ケーブル部11では、複数の光ファイバ心線30が並ぶ方向において、テープ心線40の両側にそれぞれテンションメンバ16、16が配置され、同方向に首部13が接続されている。テンションメンバ16,16を設けることで、テンションメンバ16,16に張力を分散させ、テープ心線40に張力を掛けないようにしている。ケーブルシース17は、複数の光ファイバ心線30が並ぶ方向を縦方向とすると、その断面が略縦長長方形に形成されている。以後、テープ心線40の断面の長辺に平行である側のケーブルシース17表面を長辺側側面24とし、テープ心線40の断面の長辺に垂直である側のケーブルシース17表面を短辺側側面23とする。
【0026】
首部13は、ケーブル部11と支持線部12とを連結する部材であり、ケーブル部11長手方向に所定間隔ごとに(間欠的に)設けられている。ただし首部13は、ケーブル部11長手方向に連続して設けてもよい。
【0027】
光ファイバケーブル10は、テープ心線40、支持線14、テンションメンバ16の周囲にシースとなる樹脂を押し出し成形により形成されるもので、支持線側シース15とケーブルシース17と首部13とは、同じ材料で形成される。
【0028】
ケーブル部11の両長辺側側面21には、ケーブルシース17を破断してテープ心線40を露出させるためのノッチ19,18,19が3本ずつ形成されている。各ノッチ19,18,19は、ケーブル部11長手方向に連続して形成されるV溝(断面三角形状の溝)である。
【0029】
一つの長辺側側面24に形成される3本のノッチ19,18,19のうち中央に形成されるノッチ18は、ノッチ18の位置から短辺側側面23と平行に引いた直線(図中、破線25)上にテープ心線40が位置する場所に形成されている。3本のノッチ19,18,19のうち端側に形成されるノッチ19,19は、ノッチ19の位置から短辺側側面23と平行に引いた直線(図中、破線26)上にテープ心線40が位置しない場所に形成されている。また、中央のノッチ18は、端側のノッチ19,19の深さと等しいかまたは深く形成されている。
【0030】
さて、本実施の形態の光ファイバケーブル10は、テープ心線40の両側に、テープ心線幅より幅の広い離形用シート20を縦添えし、離形用シート20の幅方向両端部21でテープ心線40の両側(テープ心線40両端の光ファイバ心線30)を覆うようにしたことに特徴がある。
【0031】
離形用シート20は、ケーブルシース17を破断してテープ心線40を取り出す際に、テープ心線40を覆って、ケーブルシース17とテープ心線40との接触面積を低減し、中間後分岐処理の際にテープ心線40を取り出しやすくするためのものである。
【0032】
離形用シート20は、ケーブルシース17と密着しない材料で形成され、ケーブルシースからの離形性をよくしている。離形用シート20を形成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(登録商標名:ナイロン)等が挙げられる。離形用シート20は、これらの材料を圧延または延伸してテープ状に形成される。或いは、単体の材質または複数種類の材質の繊維をテープ状に織って形成してもよく(テープ状織布)、他に、繊維をシート状に押し固めてテープ状に形成してもよい(テープ状不織布)。
【0033】
図4に示すように、離形用シート20は、その両端部21,21を曲げてテープ心線40の両側を覆うために、離形用シート幅aがテープ心線幅bより広く形成され、離形用シート幅aは、テープ心線幅bに対して少なくとも1.01倍以上である。ここで、離形用シート幅aとは、離形用シート20の上下方向の長さを表す。
【0034】
図5に示すように、離形用シート20は、その両端部21,21がテープ心線40側に曲げられており、離形用シート20の幅aは、覆うテープ心線40の厚さに関係して設計される。
【0035】
具体的には、テープ心線40の上下方向の両端から突出する両端部21,21は、光ファイバ心線30を、光ファイバ心線30の直径の1/5以上の覆う長さに形成されている。すなわち、離形用シート20の平面部22に対して垂直方向の長さ)dが、少なくともテープ心線40の厚さの1/5倍以上に形成される。
【0036】
また、テープ心線40の幅方向の両端から突出する離形用シート20の両端部21は、その曲げ角度cが30°以上に曲げられてテープ心線40の両側を覆うのが好ましい。
【0037】
なお、曲げ角度cとは、図5に示される破線27と破線29とがなす角度のことである。ここで、破線27は、離形用シート20の平面部22に平行な直線のことである。破線29は、テープ心線40と平行で、かつ、テープ心線40の最も外側に位置し、離形用シート20の両端部21に最も近い光ファイバ心線30の中心を通る直線(図中、破線28)から、離形用シート20側に45°傾けた直線と、離形用シート20とが交わる点fにおける接線のことである。
【0038】
さらに、離形用シート20の厚さeは15〜50μmとするのが好ましい。なぜなら、離形用シート20の厚さeを15μm未満にすると、樹脂射出成形時の樹脂の押圧力により両端部がテープ心線を覆う形状を保持できなくなるためであり、離形用シートの厚さが50μmを超えると、離形用シート20自体の厚さにより両端部21,21で曲がりにくくなるためである。
【0039】
次に光ファイバケーブル10の製造方法について説明する。
【0040】
図6に示すように、製造装置60は、テープ心線40を送り出す光ファイバテープ心線送出装置61と、支持線14を送り出す支持線送出装置62と、テンションメンバ16,16を送り出すテンションメンバ送出装置63,63と、離形用シート20を送り出す離形用シート送出装置64と、テープ心線40を集合させる光ファイバテープ心線集合ロール65と、離形用シート20を集合させる離形用シート集合ロール66と、送り出された複数の線材をそれぞれ所定の位置に集合させる集合ダイス67,68と、集合された線材にシースを形成するための樹脂を被覆する押し出しヘッド69と、樹脂を冷却固化させる冷却水槽70と、光ファイバケーブル10を引き取る引取装置71と、光ファイバケーブル10を巻き取る巻取装置(ドラム)72とで構成される。
【0041】
テープ心線送出装置61,61から送り出された2枚のテープ心線40,40は、光ファイバテープ心線集合ロール65で積層されて集合し、離形用シート送出装置64,64から送り出された離形用シート20,20が、離形用シート集合ロール66及び集合ダイス67で、テープ心線40,40の外側に添えられて集合される。このとき、集合ダイス67の離形用シート20が通るガイドの幅(上下方向)を、離形用シート20より若干狭く形成しておくことで、離形用シート20の両端部21(図4参照)に曲げ癖を着けることができて好ましい。
【0042】
下流の集合ダイス68では、支持線送出装置62から送り出された支持線14と、テンションメンバ送出装置63,63から送り出されたテンションメンバ16,16が集合され、各々が所定の位置に配置されるようにガイドされる。押し出しヘッド69では、各線材(支持線14,テンションメンバ16、離形用シート20、テープ心線40)を通すと共に、線材の周囲に形成された型に加熱された樹脂が押し出される。これにより、支持線部12及びケーブル部11が形成され、同時に首部13も形成される。
【0043】
このとき、離形用シート20の両端部21,21(図4参照)は、テープ心線40より突出しているために、周囲から押し出される樹脂の圧力により互いに内側に押し込まれる。これにより、両端部21,21がテープ心線40の両側を覆うように曲げられる。
【0044】
また、ケーブルシース17にはノッチ18,19が形成される。樹脂が施された線材は、冷却装置70で樹脂が冷却されて硬化されて、光ファイバケーブル10が得られる。得られた光ファイバケーブル10は、巻取装置72でドラムに巻き取られる。
【0045】
光ファイバケーブル10は、光ファイバケーブル10を敷設した後に、中間後分岐処理を行うべく架空でケーブル部11内からテープ心線40を取り出すことがある。光ファイバテープ心線20の取り出し方法について説明する。ただし、図7、図8では支持線部及び首部を省略している。
【0046】
図7に示すように、架空の光ファイバケーブル10において、ファイバ分離用工具71の爪部72をケーブル部11の両長辺側側面24,24の端側のノッチ19,19に挿入する。爪部72を挿入した後、互いに反対方向(図7中矢印方向)に工具を引く。
【0047】
図8に示すように、分離用工具71で互いに反対方向に引かれる力により、中央のノッチ18からケーブルシース17が切り裂けて、2つのシース17a,17aに分割される。中央のノッチ18からケーブルシース17が裂ける理由は、光ファイバケーブル10では、深さの最も深い中央のノッチ18から短辺側側面23と平行に引いた直線25(図1参照)上にテープ心線40が収容されているので、中央のノッチ18が形成された箇所のシース厚さが、端側のノッチ19,19が形成されたシース厚さより薄くなっているためである。
【0048】
このとき、光ファイバケーブル10では、離形用シート20がテープ心線40を、そのテープ心線40の両側も含めて覆っているので、テープ心線40がケーブルシース17と接触する箇所が殆どなく、離形用シート20がケーブルシース17から分離される。したがって、2枚の離形用シート20,20間に位置するテープ心線40も離形用シート20と共に、ケーブルシース17から分離することができ、光ファイバケーブル10からテープ心線40を確実に取り出すことができる。
【0049】
2枚のテープ心線40,40と、それらテープ心線40,40に添えられる離形用シート20は、例えば、図9(a)に示される例のように配置されて、ケーブルシース17内に収容される。また、テープ心線40及び離形用シート20の配置の変形例を図9(b)〜図9(k)に示す。
【0050】
図9(a)に示される例は、2枚のテープ心線40,40が互いに1/2心線分ずれて積層され、各テープ心線40の両側を離形用シート20の両端部21,21で覆い、一方の離形用シート20の両端部21と他方の離形用シート20の両端部21,21が互いにずれている例である。
【0051】
図9(b)に示される変形例は、2枚のテープ心線40,40が互いに1/2心線分ずれて積層され、離形用シート20,20の両端部21,21が互いに突き合わされるように、各テープ心線40の両側を完全に離形用シート20で覆った例である。
【0052】
図9(c)に示される変形例は、2枚のテープ心線40,40が互いに1/2心線分ずれて積層され、離形用シート20の両端部21,21の曲げを図9(a)の離形用シート20より小さくして(或いは、短くして)、各テープ心線40,40の両側が一部開放されるように離形用シート20、20で覆った例である。
【0053】
図9(d)に示される変形例は、2枚のテープ心線が互いに1/2心線分ずれて積層され、離形用シート20,20が図9(a)の離形用シート20より長く形成され、一方の離形用シート20の両端部21aがテープ心線40の両側を覆い、さらに他方の離形用シート20の両端部21bが離形用シート20の両端部21aに重なり、テープ心線40,40の周囲を完全に覆った例である。
【0054】
図9(e)に示される変形例は、2枚のテープ心線40,40が互いに1/2心線分ずれて積層され、離形用シート20、20の両端部21,21が、テープ心線40の両端に密接して曲げられると共に、離形用シート20,20の両端部21,21が互いに突き合わされるように、各テープ心線40の両側まで完全に離形用シートで覆った例である。
【0055】
図9(f)に示される変形例は、2枚のテープ心線40,40が互いに1/2心線分ずれて積層され、離形用シート20の両端部21,21が、テープ心線40、40の両端に密接して曲げられると共に、各テープ心線40の両側が一部開放されるように離形用シート20,20で覆った例である。
【0056】
図9(g)に示される変形例は、各光ファイバ心線30,30がそれぞれ並行するように2枚のテープ心線40,40が積層され、離形用シート20の両端部21,21が互いに突き合わされるように、各テープ心線40の両側まで完全に離形用シート20,20で覆った例である。
【0057】
図9(h)に示される変形例は、各光ファイバ心線30,30がそれぞれ並行するように2枚のテープ心線40,40が積層され、離形用シート20の両端部21,21の曲げを図9(a)の離形用シート20より小さくして(或いは、短くして)、各テープ心線40,40の両側が一部開放されるように離形用シート20、20で覆った例である。
【0058】
図9(i)に示される変形例は、各光ファイバ心線30,30がそれぞれ並行するように2枚のテープ心線40,40が積層され、離形用シート20,20が図9(a)の離形用シート20より長く形成され、一方の離形用シート20の両端部21aがテープ心線40の両側を覆い、さらに他方の離形用シート20の両端部21bが離形用シート20の両端部21aに重なり、テープ心線40,40の周囲を完全に覆った例である。
【0059】
図9(j)に示される変形例は、各光ファイバ心線30,30がそれぞれ並行するように2枚のテープ心線40,40が積層され、離形用シート20、20の両端部21,21が、テープ心線40の両端に密接して曲げられると共に、離形用シート20,20の両端部21,21が互いに突き合わされるように、各テープ心線40の両側まで完全に離形用シートで覆った例である。
【0060】
図9(k)に示される変形例は、各光ファイバ心線がそれぞれ並行するように2枚のテープ心線が積層され、離形用シート20の両端部21,21が、テープ心線40、40の両端に密接して曲げられると共に、各テープ心線40の両側が一部開放されるように離形用シート20,20で覆った例である。
【0061】
図9(a)〜図9(k)に示された変形例においても、テープ心線40が離形用シート20と共にケーブルシース17から分離することができ、光ファイバケーブル10からテープ心線40を確実に取り出すことができる。
【0062】
尚、テープ心線40を覆う離形用シート20は図9(a)〜図9(k)に示される変形例に限られない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る好適な実施の形態の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図2】光ファイバ心線を示す断面図である。
【図3】光ファイバテープ心線を示す断面図である。
【図4】離形用シートの形状を説明するための断面図である。
【図5】離形用シートの形状を説明するための断面図である。
【図6】光ファイバケーブルの製造装置を示す模式図である。
【図7】図1の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【図8】図1の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【図9】(a)は、光ファイバテープ心線と離形用シートの一例を示す断面図であり、(b)〜(k)は、それぞれ(a)の光ファイバテープ心線と離形用シートの変形例を示す断面図である。
【図10】従来の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図11】図10の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【図12】図10の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
10 光ファイバケーブル
11 ケーブル部
12 支持線部
13 首部
14 支持線
15 支持線側シース
16 テンションメンバ
17 ケーブルシース
18,19 ノッチ
20 離形用シート
30 光ファイバ心線
40 光ファイバテープ心線
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下管路内や電柱間に架設し、電柱からビル、マンション、宅内等に引き込む光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber To The Home)等の用途で、高速、大容量通信を行うため、複数の光ファイバを積層して収容したテープ積層型光ファイバケーブルが、空中及び地下に広く布設されている。
【0003】
図10は、従来のテープ積層型光ファイバケーブルの断面図である。図10に示すように光ファイバケーブル100は、光ファイバテープ心線(ファイバテープユニット)101を収容するケーブル部102と、ケーブル部102を支持する支持線部103とからなり、ケーブル部102と支持線部103とは互いに平行に首部104を介して一対に結合されている。
【0004】
ケーブル部102は、積層された2枚の4心光ファイバテープ心線101,101の両側に一対のテンションメンバ(抗張力体)105,105が添設され、光ファイバテープ心線101及びテンションメンバ105が一括してPE、難燃性PEまたはPVC等の熱可塑性樹脂のケーブルシース106で被覆されてなる。ケーブル部102の両側面(図中左右方向)には、ケーブルシース106を破断してケーブル部102から光ファイバテープ心線101を取り出す際に使用するノッチ107が形成されている。光ケーブル用抗張力体105は、導電性金属線、またはガラス繊維、プラスチック等の非導電性金属線で形成されている。
【0005】
支持線部103は、鋼線等の金属線で形成された支持線108と、支持線108を被覆する支持線側シース109とからなる。支持線側シース109及び首部104は、ケーブルシース106と同様に熱可塑性樹脂で形成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−271870号公報
【特許文献2】特開2003−315640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年のFTTHの需要拡大に伴い、多心の光ファイバケーブルから単心の光ファイバ心線を分岐させるために、光ファイバケーブル100を布設した後、ケーブルの中間(架空)で分岐させて光ファイバテープ心線101を取り出す工法(以下、中間後分岐処理と称する)が適用されるようになっている。
【0008】
中間後分岐処理において、光ファイバケーブル100から光ファイバテープ心線101を取り出す方法について図11、図12(図10中の支持線部103及び首部104を省略する)に基づいて説明する。
【0009】
図11に示すように、光ファイバテープ心線101を取り出すには、ケーブルシース106を分割して取り出す。この際、ケーブルシース106の両側のノッチ107,107に、工具(ディタッチャ)111の爪112を挿入し、ケーブルシース106を上下方向に引き裂くべく、爪112でケーブルシース106を中心から互いに反対方向に力を加える。すると、ケーブルシース106がノッチ107から裂けて2つに分割される。
【0010】
しかしながら、図12に示すように、ケーブルシース106を2つに分割すると、片方のケーブルシース106bから光ファイバテープ心線101が分離せずに残ってしまい、光ファイバテープ心線101を取り出すことができないという問題がある。
【0011】
光ファイバテープ心線101が一方のケーブルシース106b内に残ってしまう理由は、両ノッチ107,107間に光ファイバテープ心線101が位置するので、ケーブルシース106を分割させる際に、両ノッチ107,107内に挿入された爪112が、ケーブルシース106をテープファイバ心線101側に押し込み、ケーブルシース106とファイバテープ心線101とを密着させてしまうためである。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、光ファイバテープ心線をケーブルシースから分離して取り出せることができる光ファイバケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、支持線にシースを施して支持線部を形成し、ファイバ心線を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線に、各光ファイバ心線が上下に並ぶようにしてシースを施してケーブル部を形成し、上記支持線部と上記ケーブル部とを首部で連結し、かつ上記ケーブル部の左右側面にシースを破断して光ファイバテープ心線を露出させるためのノッチを形成した光ファイバケーブルにおいて、上記光ファイバテープ心線の左右側に、その光ファイバテープ心線幅より幅の広い離形用シートを縦添えし、その離形用シートの上下方向両端部で光ファイバテープ心線の上下両側を覆うようにした光ファイバケーブルである。
【0014】
請求項2の発明は、光ファイバテープ心線の上下方向の両端から突出する離形用シートの両端部は、光ファイバ心線を、光ファイバ心線の直径の1/5以上を覆う請求項1記載の光ファイバケーブルである。
【0015】
請求項3の発明は、光ファイバテープ心線の上下方向の両端から突出する離形用シートの両端部は、30°以上曲げられて上記光ファイバテープ心線の上下側を覆うようにした請求項1記載の光ファイバケーブルである。
【0016】
請求項4の発明は、上記離形用シートは、ポリプロピレン或いはポリエチレンテレフタレートで形成され、その厚さが16μm以上50μm以下である請求項1〜3いずれかに記載の光ファイバケーブルである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光ファイバテープ心線をシースから確実に分離して取り出せることができるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
本実施の形態の光ファイバケーブルは、複数本の光ファイバ心線を並列に連結してなる光ファイバテープ心線を備えるものであり、まず、光ファイバ心線及び光ファイバテープ心線(以下、テープ心線と称する)について説明する。
【0020】
図2に示すように、光ファイバ心線30は、ガラス系材料で形成された光ファイバ(光ファイバ裸線)31と、光ファイバ31を被覆する一次被覆層32と、一次被覆層32を被覆する二次被覆層33と、二次被覆層33を被覆する着色層34と、着色層34を被覆するオーバコート層35とからなる。各層は、それぞれ光ファイバ31を中心とする同心円筒形状に形成されている。一次被覆層32及び二次被覆層33は、光ファイバ31を衝撃や外傷から保護するための層である。着色層34は、光ファイバを識別するための着色を施す層である。オーバコート層35は、光ファイバ心線30を複数本並列に連結して形成してなる光ファイバテープ心線から、1本の光ファイバ心線を分離させる際、その取扱い(ハンドリング)を容易にするために、ある程度の太さの直径を有する心線を形成するべく設けられる層である。一次被覆層32、二次被覆層33、着色層34及びオーバコート層35はいずれも紫外線硬化樹脂で形成されており、例えば、オーバコート層35は、一次被覆層32より軟性でかつ二次被覆層33より硬性な紫外線硬化樹脂で形成される。
【0021】
図3に示すように、テープ心線40は、図2の光ファイバ心線30を4本並列に連結して形成されるものである。テープ心線40は、各光ファイバ心線30を並列に並べ、各光ファイバ30間の一部を紫外線硬化樹脂41で埋めて連結してなる。
【0022】
本実施の形態の光ファイバケーブルについて説明する。
【0023】
図1に示すように、光ファイバケーブル10は、テープ心線40を収容するケーブル部11と、ケーブル部11を支持するための支持線部12と、ケーブル部11と支持線部12とを連結する首部13とからなる。
【0024】
支持線部12は、支持線(抗張力体)14とその外周を覆う支持線側シース15とで構成される。
【0025】
ケーブル部11は、2枚のテープ心線40と、テープ心線40に沿って配置される少なくとも一本(図1では2本)のテンションメンバ(抗張力体)16,16との周囲をケーブルシース17で覆われて形成されている。ケーブル部11では、複数の光ファイバ心線30が並ぶ方向において、テープ心線40の両側にそれぞれテンションメンバ16、16が配置され、同方向に首部13が接続されている。テンションメンバ16,16を設けることで、テンションメンバ16,16に張力を分散させ、テープ心線40に張力を掛けないようにしている。ケーブルシース17は、複数の光ファイバ心線30が並ぶ方向を縦方向とすると、その断面が略縦長長方形に形成されている。以後、テープ心線40の断面の長辺に平行である側のケーブルシース17表面を長辺側側面24とし、テープ心線40の断面の長辺に垂直である側のケーブルシース17表面を短辺側側面23とする。
【0026】
首部13は、ケーブル部11と支持線部12とを連結する部材であり、ケーブル部11長手方向に所定間隔ごとに(間欠的に)設けられている。ただし首部13は、ケーブル部11長手方向に連続して設けてもよい。
【0027】
光ファイバケーブル10は、テープ心線40、支持線14、テンションメンバ16の周囲にシースとなる樹脂を押し出し成形により形成されるもので、支持線側シース15とケーブルシース17と首部13とは、同じ材料で形成される。
【0028】
ケーブル部11の両長辺側側面21には、ケーブルシース17を破断してテープ心線40を露出させるためのノッチ19,18,19が3本ずつ形成されている。各ノッチ19,18,19は、ケーブル部11長手方向に連続して形成されるV溝(断面三角形状の溝)である。
【0029】
一つの長辺側側面24に形成される3本のノッチ19,18,19のうち中央に形成されるノッチ18は、ノッチ18の位置から短辺側側面23と平行に引いた直線(図中、破線25)上にテープ心線40が位置する場所に形成されている。3本のノッチ19,18,19のうち端側に形成されるノッチ19,19は、ノッチ19の位置から短辺側側面23と平行に引いた直線(図中、破線26)上にテープ心線40が位置しない場所に形成されている。また、中央のノッチ18は、端側のノッチ19,19の深さと等しいかまたは深く形成されている。
【0030】
さて、本実施の形態の光ファイバケーブル10は、テープ心線40の両側に、テープ心線幅より幅の広い離形用シート20を縦添えし、離形用シート20の幅方向両端部21でテープ心線40の両側(テープ心線40両端の光ファイバ心線30)を覆うようにしたことに特徴がある。
【0031】
離形用シート20は、ケーブルシース17を破断してテープ心線40を取り出す際に、テープ心線40を覆って、ケーブルシース17とテープ心線40との接触面積を低減し、中間後分岐処理の際にテープ心線40を取り出しやすくするためのものである。
【0032】
離形用シート20は、ケーブルシース17と密着しない材料で形成され、ケーブルシースからの離形性をよくしている。離形用シート20を形成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(登録商標名:ナイロン)等が挙げられる。離形用シート20は、これらの材料を圧延または延伸してテープ状に形成される。或いは、単体の材質または複数種類の材質の繊維をテープ状に織って形成してもよく(テープ状織布)、他に、繊維をシート状に押し固めてテープ状に形成してもよい(テープ状不織布)。
【0033】
図4に示すように、離形用シート20は、その両端部21,21を曲げてテープ心線40の両側を覆うために、離形用シート幅aがテープ心線幅bより広く形成され、離形用シート幅aは、テープ心線幅bに対して少なくとも1.01倍以上である。ここで、離形用シート幅aとは、離形用シート20の上下方向の長さを表す。
【0034】
図5に示すように、離形用シート20は、その両端部21,21がテープ心線40側に曲げられており、離形用シート20の幅aは、覆うテープ心線40の厚さに関係して設計される。
【0035】
具体的には、テープ心線40の上下方向の両端から突出する両端部21,21は、光ファイバ心線30を、光ファイバ心線30の直径の1/5以上の覆う長さに形成されている。すなわち、離形用シート20の平面部22に対して垂直方向の長さ)dが、少なくともテープ心線40の厚さの1/5倍以上に形成される。
【0036】
また、テープ心線40の幅方向の両端から突出する離形用シート20の両端部21は、その曲げ角度cが30°以上に曲げられてテープ心線40の両側を覆うのが好ましい。
【0037】
なお、曲げ角度cとは、図5に示される破線27と破線29とがなす角度のことである。ここで、破線27は、離形用シート20の平面部22に平行な直線のことである。破線29は、テープ心線40と平行で、かつ、テープ心線40の最も外側に位置し、離形用シート20の両端部21に最も近い光ファイバ心線30の中心を通る直線(図中、破線28)から、離形用シート20側に45°傾けた直線と、離形用シート20とが交わる点fにおける接線のことである。
【0038】
さらに、離形用シート20の厚さeは15〜50μmとするのが好ましい。なぜなら、離形用シート20の厚さeを15μm未満にすると、樹脂射出成形時の樹脂の押圧力により両端部がテープ心線を覆う形状を保持できなくなるためであり、離形用シートの厚さが50μmを超えると、離形用シート20自体の厚さにより両端部21,21で曲がりにくくなるためである。
【0039】
次に光ファイバケーブル10の製造方法について説明する。
【0040】
図6に示すように、製造装置60は、テープ心線40を送り出す光ファイバテープ心線送出装置61と、支持線14を送り出す支持線送出装置62と、テンションメンバ16,16を送り出すテンションメンバ送出装置63,63と、離形用シート20を送り出す離形用シート送出装置64と、テープ心線40を集合させる光ファイバテープ心線集合ロール65と、離形用シート20を集合させる離形用シート集合ロール66と、送り出された複数の線材をそれぞれ所定の位置に集合させる集合ダイス67,68と、集合された線材にシースを形成するための樹脂を被覆する押し出しヘッド69と、樹脂を冷却固化させる冷却水槽70と、光ファイバケーブル10を引き取る引取装置71と、光ファイバケーブル10を巻き取る巻取装置(ドラム)72とで構成される。
【0041】
テープ心線送出装置61,61から送り出された2枚のテープ心線40,40は、光ファイバテープ心線集合ロール65で積層されて集合し、離形用シート送出装置64,64から送り出された離形用シート20,20が、離形用シート集合ロール66及び集合ダイス67で、テープ心線40,40の外側に添えられて集合される。このとき、集合ダイス67の離形用シート20が通るガイドの幅(上下方向)を、離形用シート20より若干狭く形成しておくことで、離形用シート20の両端部21(図4参照)に曲げ癖を着けることができて好ましい。
【0042】
下流の集合ダイス68では、支持線送出装置62から送り出された支持線14と、テンションメンバ送出装置63,63から送り出されたテンションメンバ16,16が集合され、各々が所定の位置に配置されるようにガイドされる。押し出しヘッド69では、各線材(支持線14,テンションメンバ16、離形用シート20、テープ心線40)を通すと共に、線材の周囲に形成された型に加熱された樹脂が押し出される。これにより、支持線部12及びケーブル部11が形成され、同時に首部13も形成される。
【0043】
このとき、離形用シート20の両端部21,21(図4参照)は、テープ心線40より突出しているために、周囲から押し出される樹脂の圧力により互いに内側に押し込まれる。これにより、両端部21,21がテープ心線40の両側を覆うように曲げられる。
【0044】
また、ケーブルシース17にはノッチ18,19が形成される。樹脂が施された線材は、冷却装置70で樹脂が冷却されて硬化されて、光ファイバケーブル10が得られる。得られた光ファイバケーブル10は、巻取装置72でドラムに巻き取られる。
【0045】
光ファイバケーブル10は、光ファイバケーブル10を敷設した後に、中間後分岐処理を行うべく架空でケーブル部11内からテープ心線40を取り出すことがある。光ファイバテープ心線20の取り出し方法について説明する。ただし、図7、図8では支持線部及び首部を省略している。
【0046】
図7に示すように、架空の光ファイバケーブル10において、ファイバ分離用工具71の爪部72をケーブル部11の両長辺側側面24,24の端側のノッチ19,19に挿入する。爪部72を挿入した後、互いに反対方向(図7中矢印方向)に工具を引く。
【0047】
図8に示すように、分離用工具71で互いに反対方向に引かれる力により、中央のノッチ18からケーブルシース17が切り裂けて、2つのシース17a,17aに分割される。中央のノッチ18からケーブルシース17が裂ける理由は、光ファイバケーブル10では、深さの最も深い中央のノッチ18から短辺側側面23と平行に引いた直線25(図1参照)上にテープ心線40が収容されているので、中央のノッチ18が形成された箇所のシース厚さが、端側のノッチ19,19が形成されたシース厚さより薄くなっているためである。
【0048】
このとき、光ファイバケーブル10では、離形用シート20がテープ心線40を、そのテープ心線40の両側も含めて覆っているので、テープ心線40がケーブルシース17と接触する箇所が殆どなく、離形用シート20がケーブルシース17から分離される。したがって、2枚の離形用シート20,20間に位置するテープ心線40も離形用シート20と共に、ケーブルシース17から分離することができ、光ファイバケーブル10からテープ心線40を確実に取り出すことができる。
【0049】
2枚のテープ心線40,40と、それらテープ心線40,40に添えられる離形用シート20は、例えば、図9(a)に示される例のように配置されて、ケーブルシース17内に収容される。また、テープ心線40及び離形用シート20の配置の変形例を図9(b)〜図9(k)に示す。
【0050】
図9(a)に示される例は、2枚のテープ心線40,40が互いに1/2心線分ずれて積層され、各テープ心線40の両側を離形用シート20の両端部21,21で覆い、一方の離形用シート20の両端部21と他方の離形用シート20の両端部21,21が互いにずれている例である。
【0051】
図9(b)に示される変形例は、2枚のテープ心線40,40が互いに1/2心線分ずれて積層され、離形用シート20,20の両端部21,21が互いに突き合わされるように、各テープ心線40の両側を完全に離形用シート20で覆った例である。
【0052】
図9(c)に示される変形例は、2枚のテープ心線40,40が互いに1/2心線分ずれて積層され、離形用シート20の両端部21,21の曲げを図9(a)の離形用シート20より小さくして(或いは、短くして)、各テープ心線40,40の両側が一部開放されるように離形用シート20、20で覆った例である。
【0053】
図9(d)に示される変形例は、2枚のテープ心線が互いに1/2心線分ずれて積層され、離形用シート20,20が図9(a)の離形用シート20より長く形成され、一方の離形用シート20の両端部21aがテープ心線40の両側を覆い、さらに他方の離形用シート20の両端部21bが離形用シート20の両端部21aに重なり、テープ心線40,40の周囲を完全に覆った例である。
【0054】
図9(e)に示される変形例は、2枚のテープ心線40,40が互いに1/2心線分ずれて積層され、離形用シート20、20の両端部21,21が、テープ心線40の両端に密接して曲げられると共に、離形用シート20,20の両端部21,21が互いに突き合わされるように、各テープ心線40の両側まで完全に離形用シートで覆った例である。
【0055】
図9(f)に示される変形例は、2枚のテープ心線40,40が互いに1/2心線分ずれて積層され、離形用シート20の両端部21,21が、テープ心線40、40の両端に密接して曲げられると共に、各テープ心線40の両側が一部開放されるように離形用シート20,20で覆った例である。
【0056】
図9(g)に示される変形例は、各光ファイバ心線30,30がそれぞれ並行するように2枚のテープ心線40,40が積層され、離形用シート20の両端部21,21が互いに突き合わされるように、各テープ心線40の両側まで完全に離形用シート20,20で覆った例である。
【0057】
図9(h)に示される変形例は、各光ファイバ心線30,30がそれぞれ並行するように2枚のテープ心線40,40が積層され、離形用シート20の両端部21,21の曲げを図9(a)の離形用シート20より小さくして(或いは、短くして)、各テープ心線40,40の両側が一部開放されるように離形用シート20、20で覆った例である。
【0058】
図9(i)に示される変形例は、各光ファイバ心線30,30がそれぞれ並行するように2枚のテープ心線40,40が積層され、離形用シート20,20が図9(a)の離形用シート20より長く形成され、一方の離形用シート20の両端部21aがテープ心線40の両側を覆い、さらに他方の離形用シート20の両端部21bが離形用シート20の両端部21aに重なり、テープ心線40,40の周囲を完全に覆った例である。
【0059】
図9(j)に示される変形例は、各光ファイバ心線30,30がそれぞれ並行するように2枚のテープ心線40,40が積層され、離形用シート20、20の両端部21,21が、テープ心線40の両端に密接して曲げられると共に、離形用シート20,20の両端部21,21が互いに突き合わされるように、各テープ心線40の両側まで完全に離形用シートで覆った例である。
【0060】
図9(k)に示される変形例は、各光ファイバ心線がそれぞれ並行するように2枚のテープ心線が積層され、離形用シート20の両端部21,21が、テープ心線40、40の両端に密接して曲げられると共に、各テープ心線40の両側が一部開放されるように離形用シート20,20で覆った例である。
【0061】
図9(a)〜図9(k)に示された変形例においても、テープ心線40が離形用シート20と共にケーブルシース17から分離することができ、光ファイバケーブル10からテープ心線40を確実に取り出すことができる。
【0062】
尚、テープ心線40を覆う離形用シート20は図9(a)〜図9(k)に示される変形例に限られない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る好適な実施の形態の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図2】光ファイバ心線を示す断面図である。
【図3】光ファイバテープ心線を示す断面図である。
【図4】離形用シートの形状を説明するための断面図である。
【図5】離形用シートの形状を説明するための断面図である。
【図6】光ファイバケーブルの製造装置を示す模式図である。
【図7】図1の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【図8】図1の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【図9】(a)は、光ファイバテープ心線と離形用シートの一例を示す断面図であり、(b)〜(k)は、それぞれ(a)の光ファイバテープ心線と離形用シートの変形例を示す断面図である。
【図10】従来の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図11】図10の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【図12】図10の光ファイバケーブルから光ファイバテープ心線を取り出す一工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
10 光ファイバケーブル
11 ケーブル部
12 支持線部
13 首部
14 支持線
15 支持線側シース
16 テンションメンバ
17 ケーブルシース
18,19 ノッチ
20 離形用シート
30 光ファイバ心線
40 光ファイバテープ心線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持線にシースを施して支持線部を形成し、ファイバ心線を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線に、各光ファイバ心線が上下に並ぶようにしてシースを施してケーブル部を形成し、上記支持線部と上記ケーブル部とを首部で連結し、かつ上記ケーブル部の左右側面にシースを破断して光ファイバテープ心線を露出させるためのノッチを形成した光ファイバケーブルにおいて、
上記光ファイバテープ心線の左右側に、その光ファイバテープ心線幅より幅の広い離形用シートを縦添えし、その離形用シートの上下方向両端部で光ファイバテープ心線の上下両側を覆うようにしたことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
光ファイバテープ心線の上下方向の両端から突出する離形用シートの両端部は、光ファイバ心線を、光ファイバ心線の直径の1/5以上を覆う請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
光ファイバテープ心線の上下方向の両端から突出する離形用シートの両端部は、30°以上曲げられて上記光ファイバテープ心線の上下側を覆うようにした請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
上記離形用シートは、ポリプロピレン或いはポリエチレンテレフタレートで形成され、その厚さが16μm以上50μm以下である請求項1〜3いずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項1】
支持線にシースを施して支持線部を形成し、ファイバ心線を複数本並列に連結してなる光ファイバテープ心線に、各光ファイバ心線が上下に並ぶようにしてシースを施してケーブル部を形成し、上記支持線部と上記ケーブル部とを首部で連結し、かつ上記ケーブル部の左右側面にシースを破断して光ファイバテープ心線を露出させるためのノッチを形成した光ファイバケーブルにおいて、
上記光ファイバテープ心線の左右側に、その光ファイバテープ心線幅より幅の広い離形用シートを縦添えし、その離形用シートの上下方向両端部で光ファイバテープ心線の上下両側を覆うようにしたことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
光ファイバテープ心線の上下方向の両端から突出する離形用シートの両端部は、光ファイバ心線を、光ファイバ心線の直径の1/5以上を覆う請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
光ファイバテープ心線の上下方向の両端から突出する離形用シートの両端部は、30°以上曲げられて上記光ファイバテープ心線の上下側を覆うようにした請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
上記離形用シートは、ポリプロピレン或いはポリエチレンテレフタレートで形成され、その厚さが16μm以上50μm以下である請求項1〜3いずれかに記載の光ファイバケーブル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−41382(P2007−41382A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226738(P2005−226738)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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