説明

光ファイバスキャン装置

【課題】光ファイバスキャン装置を体内等に挿入しているときでも、キャリブレーションを実施可能にする。
【解決手段】内視鏡装置のスコープ内部に、光ファイバ12を挿入する。光ファイバ12のファイバ先端部12Aを、渦巻状の一定の経路に沿うように変位させる。内蔵チャート部材20を、ファイバ先端部12Aの前方に配置するようにスコープ内部に取り付ける。内蔵チャート部材20は、前方側から見ると、光ファイバ12を取り巻くように設けられた円環外側部21と、光ファイバ12に一致又は近接する位置に配置される十字中心部22とを備える。一定の経路に沿うように変位されたファイバ先端部12Aから出射された光は、一部が内蔵チャート部材20に照射され、その戻り光は、光ファイバ12に入射される。内蔵チャート部材20からの戻り光の画像に基づき、キャリブレーションを実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを変位させながら、観察対象物をスキャンする光ファイバスキャン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ先端部を変位させながら照明光を照射させつつ、観察対象物をスキャンする光ファイバスキャン装置が知られている。この装置において、ファイバ先端部は、例えば先端近傍に取り付けられたアクチュエータによって変位される。アクチュエータの駆動は、ファイバ先端部の変位が例えば真円渦巻状となるように制御される。しかし、アクチュエータが設定通りに駆動されても、その取付誤差や環境温度等の種々の要因により、ファイバ先端部は、設定通りの経路に沿って変位されないことがある。
【0003】
そのため、光ファイバスキャン装置では、光ファイバが真円渦巻状に変位するように、例えば使用前にキャリブレーションが行われるのが一般的である。従来、キャリブレーションは、チャートを撮影し、撮影されたチャート画像の形状に応じて、アクチュエータの駆動を補正することによって行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0165360号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のキャリブレーション方法では、専用のチャートを用意し人手によりファイバ前方に配置させる必要があったため、その作業性が良好ではない。また、ファイバスキャン装置が、例えば内視鏡に適用される場合には、体内に挿入されるため、使用中にキャリブレーションを行うことができないという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、専用のチャートを用意せず、また体内等で使用されているときであっても、キャリブレーションを行うことが可能な光ファイバスキャン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光ファイバスキャン装置は、スコープ部と、スコープ部内部に挿入され、かつ観察対象物に照射されるための照射光を先端から出射する光ファイバと、光ファイバの先端を変位させる駆動手段と、光ファイバの先端を、観察対象物を走査させるために一定の経路に沿うように変位させたときの観察対象物からの戻り光により、1フレームの観察画像を生成する画像生成手段と、光ファイバの前方に配置され、かつ、一定の経路のうちの一部に変位された光ファイバからの照射光によって照射されるように、スコープ部に取り付けられるチャート部材と、チャート部材からの戻り光に基づいて、光ファイバスキャン装置に対してキャリブレーションを行う較正手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
例えば、一定の経路で変位した光ファイバの先端が、一定の領域内に配置されたときに、観察対象物に照射光が照射され、得られた観察対象物からの戻り光により上記1フレームの観察画像が生成される。このとき、チャート部材の少なくとも一部は、上記ファイバの先端が一定の領域の外側に変位されているとき、照射光によって照射されることが好ましい。チャート部材は、例えば、前方側から見ると、光ファイバを取り巻くように設けられた外側部を有する。また、外側部は、環状であることが好ましい。また、チャート部材は、前方側から見ると、駆動手段により駆動されないときの光ファイバに一致し、又は近接する位置に配置される中心部を備えることが好ましい。
【0009】
例えば、光ファイバの先端部が、上記した一定の経路に沿うように変位される間、照射光の戻り光は所定のサンプリングレートでサンプリングされて画素信号が生成される。ここで、一定の経路のうち少なくとも一部は、他の部分に比べて画素信号をサンプリングするためのサンプリング点が相対的に密となっている。チャート部材の少なくとも一部は、サンプリング点が相対的に密である部分に配置された光ファイバからの照射光によって照射されることが好ましい。
【0010】
チャート部材の戻り光から生成される画素信号は、観察対象物の戻り光から生成される画素信号と分離されることが好ましい。この場合、例えば、チャート部材からの戻り光は、観察対象物からの戻り光よりも高強度となるようにされる。そして、出力値が相対的に大きい画素信号をチャート部材の戻り光から生成される画素信号とするとともに、出力値が相対的に小さい画素信号を観察対象物の戻り光から生成される画素信号として分離することが好ましい。
【0011】
チャート部材からの戻り光は、観察対象物からの戻り光と異なる波長にされても良い。このとき、チャート部材からの戻り光は、光学部材によって観察対象物からの戻り光と分離されることが好ましい。そして、観察画像は、第1の受光素子によって受光された観察対象物からの戻り光によって生成されるとともに、上記キャリブレーションは、第2の受光素子によって受光されたチャート部材からの戻り光によって行われることが好ましい。
【0012】
チャート部材からの戻り光は、上記光ファイバの先端から入射されて基端から出射されることが好ましい。光ファイバスキャン装置は、観察対象物からの戻り光を、上記光ファイバに入射させても良いが、光ファイバとは別に観察対象物からの戻り光が入射されるイメージファイバを備えていても良い。画像生成手段は、光ファイバから導かれた光、又はイメージファイバによって導かれた光によって観察画像を生成する。
【0013】
例えば、チャート部材は照射光を反射してその反射光を戻り光とし、又は照射光によって励起され、蛍光を戻り光として発する。また、光ファイバ先端は、例えば、渦巻状の経路に沿って変位される。また、較正手段は、光ファイバの変位を補正することにより、キャリブレーションを行うことが好ましい。
【0014】
光ファイバスキャン装置は、チャート部材からの戻り光に基づいてチャート画像を生成し、チャート画像が基準チャート画像に一致しない場合にキャリブレーションを行うことが好ましい。
【0015】
光ファイバスキャン装置は、光ファイバの先端を標準経路に沿って変位させたときに、チャート部材からの戻り光によって得られる基準チャート画像に関するデータを保存するメモリを備えることが好ましい。この場合、光ファイバスキャン装置は、基準チャート画像に関するデータと、チャート部材の戻り光から得られるチャート画像に関するデータとを比較して、チャート画像の形状が、基準チャート画像の形状に一致するように、キャリブレーションを行う。
【0016】
本発明に係る第2の光ファイバスキャン装置は、スコープ部と、スコープ部内部に挿入され、かつ観察対象物に照射されるための照射光を先端から出射する光ファイバと、光ファイバの先端を変位させる駆動手段と、光ファイバの先端を、観察対象物を走査させるために一定の経路に沿うように変位させたときの観察対象物からの戻り光により、1フレームの観察画像を生成する画像生成手段と、光ファイバの前方に配置され、かつ、一定の経路のうちの一部に変位された光ファイバからの照射光によって照射されるように、スコープ部に取り付けられるチャート部材と、チャート部材からの戻り光に基づいて、チャート部材に関する画像データを取得するチャートデータ生成手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、専用のチャートを用意せずに、また、光ファイバスキャン装置を体内等に挿入しているときでも、キャリブレーションを実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態における内視鏡装置の全体図を示したブロック図である。
【図2】スコープ先端部の内部を示した模式的な断面図である。
【図3】アクチュエータを駆動させるための駆動信号の波形を示したグラフである。
【図4】ファイバ先端部の変位経路を示した模式図である。
【図5】1フレーム期間において、蛍光受光素子で受光された蛍光の強度と時間経過の関係を示すグラフである。
【図6】十字中心部が走査される様子を示す模式図である。
【図7】走査期間開始直後における、蛍光受光素子で受光された蛍光の強度と時間経過の関係を示すグラフである。
【図8】観察画像生成ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】蛍光画像と、蛍光画像が観察画像と内蔵チャート画像に分離されたときの様子を示す模式図である。
【図10】基準チャート取得ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】外部チャートを示す平面図である。
【図12】基準チャート画像が得られる過程を示す模式図である。
【図13】外部チャート画像に歪みが見られる場合の基準チャート画像が得られる過程を示す模式図である。
【図14】内蔵チャート部材が楕円である場合に得られる、基準チャート取得用蛍光画像と基準チャート画像である。
【図15】内蔵チャート部材が偏心する場合に得られる、基準チャート取得用蛍光画像と基準チャート画像である。
【図16】第2の実施形態における内視鏡装置の全体図を示したブロック図である。
【図17】第3の実施形態における内視鏡装置の全体図を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態では、本発明に係る光ファイバスキャン装置が内視鏡装置に適用された例である。
【0020】
図1に示すように、内視鏡装置は、スコープ10とプロセッサ30とを備え、スコープ10の内部には、光ファイバ12が挿入されている。光ファイバ12は、その先端(ファイバ先端部12A)がスコープ10の先端(スコープ先端部10A)に配置されるとともに、基端部12Bがプロセッサ30に接続される。光ファイバ12は、シングルモード型の走査型光ファイバである。
【0021】
プロセッサ30には、集光レンズ31、レーザー光源32、レーザー駆動部33、及びフィルタ34が設けられる。レーザー光源32は、レーザー駆動部33によって駆動されて、励起光の光線を発光する。励起光は、例えば紫外線等の特定波長の光から成り、観察対象物OBを励起させて、観察対象物OBから蛍光を発光させる。蛍光は、励起光よりも長波長側の光であって、励起光と波長が異なる。フィルタ34は、励起光を反射し、蛍光を透過するダイクロックミラー等である。
【0022】
レーザー光源32が発した励起光は、フィルタ34で反射され、集光レンズ31を介して、光ファイバ12の基端部12Bに入射される。励起光は、光ファイバ12内部を伝送して、ファイバ先端部12Aのコア端面から出射する。コア端面から出射した励起光は、共焦点光学系14、カバーレンズ15を介して、観察対象物OBに照射される。なお、本実施形態では、共焦点観察が実施されるので、観察対象物OBはカバーレンズ15に接する状態で観察される。
【0023】
スコープ先端部10Aの内部には、内蔵チャート部材20が設けられる。ファイバ先端部12Aから出射した励起光は、内蔵チャート部材20にも照射される。内蔵チャート部材20は、蛍光体で構成されており、励起光が照射されることにより励起して蛍光を発する。内蔵チャート部材20は、励起光から蛍光への変換効率の高い材料で形成される。
【0024】
光ファイバ12の先端部12A近傍には、ファイバ先端部12Aを振動・変位させるためのアクチュエータ13が取り付けられる。アクチュエータ13は、プロセッサ30に設けられたファイバ駆動部41によって駆動される。ファイバ駆動部41は、波形生成処理部42で生成された信号波形を有する駆動信号に基づいてアクチュエータ13を駆動させる。下記で詳述するように、ファイバ先端部12Aは、アクチュエータ13によって、1フレーム期間において、渦巻状の経路(一定の経路)に沿って変位される。
【0025】
観察対象物OBや内蔵チャート部材20から発せられた蛍光(戻り光)は、ファイバ先端部12Aに入射されて、光ファイバ12の基端部12Bまで伝送される。蛍光は、基端部12Bから出射し、集光レンズ31で集光されかつフィルタ34を透過して、プロセッサ30内部の蛍光受光素子35に受光される。蛍光受光素子35は、例えば光電子増倍管(PMT)である。蛍光受光素子35は、所定の微小期間で受光した蛍光の強度に応じた画素信号を生成する。画素信号の生成は、1フレーム期間において繰り返される。
【0026】
蛍光受光素子35で得られた画素信号は、アンプ36で増幅された後、A/D変換器37によってデジタル画素信号に変換され画像生成部38に送られる。画像生成部38では、1フレーム期間中に順次送られる画素信号と励起光の走査位置とのマッピングにより、各画素信号の画素位置が特定される。そして、画素信号は、1フレームの画像を生成するように配列され、蛍光画像FI(図9参照)として一時的に画像メモリ40に格納される。なお、励起光の走査位置は、ファイバ駆動部41から出力される駆動信号に基づいて推定されたものである。
【0027】
図9に示すように蛍光画像FIは、観察対象物OBからの蛍光によって得られる観察画像OIと、内蔵チャート部材20からの蛍光によって得られる内蔵チャート画像CIとを含む。後述するように、これら観察画像OI及び内蔵チャート画像CIは分離され、観察画像OIは、エンコーダ39を介してモニタ50に出力される。また、内蔵チャート画像CIは、キャリブレーション用の画像として使用される。
【0028】
プロセッサ30には、タイミングコントローラ45及びコントローラ46が設けられる。タイミングコントローラ45は、レーザー駆動部33、ファイバ駆動部41に対して同期信号を出力し、ファイバ先端部12Aの振動と発光タイミングを同期させる。また、タイミングコントローラ45は、クロックパルス信号(駆動信号)を蛍光受光素子35へ出力し、蛍光受光素子35における画素信号の生成タイミングを制御する。コントローラ46は、プロセッサ30全体の駆動を制御するための回路であって、タイミングコントローラ45等に対して駆動信号を出力する。
【0029】
次に、図2を用いて、スコープ先端部の構造についてさらに詳細に説明する。スコープ先端部10Aは、各部材を内部に収納する円筒状のハウジング18を備える。スコープ先端部10Aにおいて、ファイバ先端部12Aの前方には、ハウジング18の内周面に保持される共焦点光学系14が配置される。共焦点光学系14の前方には、さらにハウジング18の端部を塞ぐようにカバーレンズ15が配置される。
【0030】
ファイバ先端部12Aのコア端面は、共焦点光学系14によって、カバーレンズ15に接するように配置される観察対象物OBと共焦点の関係とされる。すなわち、コア端面から射出された励起光が観察対象物OBで焦点を結び、そこから発せられた蛍光がファイバ先端部12Aのコア端面で焦点を結ぶことになる。
【0031】
アクチュエータ13は、ピエゾ素子によるチューブ型アクチュエータであり、ファイバ先端部12Aを二次元的に共振させる。アクチュエータ13には、X方向の共振、Y方向の共振を行うための圧電素子が設けられる。なお、X方向及びY方向はそれぞれ、光ファイバ12が屈曲していないときの光ファイバ12の軸方向(Z方向)に垂直な方向であって、かつ互いに垂直である。アクチュエータ13は、X方向、Y方向に沿って所定の共振モードでファイバ先端部12Aを振動させる。
【0032】
内蔵チャート部材20は、ハウジング18内部において、光ファイバ12からの光線が照射されるように、ファイバ先端部12Aより前方に配置される。内蔵チャート部材20は、円環状の円環外側部21と、十字状の十字中心部22から成る。円環外側部21は、ハウジング18の内周面に固定され、前方側から見ると、光ファイバ12を取り巻くように設けられる。これにより、円環外側部21は、被写体観察のための励起光の光路上に設けられず、励起光による被写体観察を阻害することはない。
【0033】
十字中心部22は、カバーレンズ15の背面中心に取り付けられ、前方側から見ると、屈曲していない(すなわち、アクチュエータ13により駆動されていないときの)光ファイバ12に一致する位置、又は近接する位置に配置される。これにより、十字中心部22は、被写体観察のための励起光の光路上に設けられるが、後述するように、サンプリング点Sが密である部分に対応して設けられるため、実質的に被写体観察を阻害することはない。なお、十字中心部22は、例えば蒸着によりレンズ15上に取り付けられる。
【0034】
円環外側部21に受光される励起光は、振幅幅が大きくZ方向に対し傾斜したファイバ先端部12Aから出射される光である。そのため、ファイバ先端部12Aに対向する円環外側部21の受光面21Aは、Z方向に対して傾斜しており、これにより、ファイバ先端部12Aから出射される光は、受光面21Aに略垂直に受光される。
【0035】
また、円環外側部21には遮光部材24が取り付けられている。遮光部材24は、円環外側部21の受光面21A以外の露出する部分を被覆し、かつ、受光面21Aに向かう光路を取り囲むように設けられる。これにより、円環外側部21から発せられた蛍光が散乱することが防止される。
【0036】
アクチュエータの圧電素子を駆動させるための駆動信号の信号波形を図3に示す。図3には、X方向共振用の圧電素子に入力される、1フレーム期間における駆動信号の信号波形を示す。1フレーム期間では、まず、ファイバ先端部を渦巻状に駆動させるための走査期間が開始される。走査期間では、下記式(1)で示されるような波形の駆動信号が圧電素子に入力される。
【0037】
なお、式(1)で示される駆動信号の波形は、理想的な標準波形であって、通常後述するキャリブレーション等によって補正されている。また、Y方向共振用の圧電素子に入力される駆動信号の波形は、図3と同様であるが、走査期間における信号波形の標準波形は式(2)で示される。
【0038】
x=tsin(wt)・・・・(1)
y=tcos(wt)・・・・(2)
式(1)、(2)において、x、yはそれぞれX、Y方向の位置、tは時間、wは振動数である。
【0039】
これら式(1)(2)から明らかなように、ファイバ先端部は、走査期間において、基準位置SPを中心に振動され、基準位置SPにある状態から、振幅幅を徐々にX方向、Y方向に大きくすることにより、渦巻状の一定の経路CPに沿って変位していく(図4参照)。経路CPは理想的には略円形の渦巻状になるが、アクチュエータの取付誤差や環境温度等によって、経路CPは歪んで、例えば楕円形の渦巻状になることがある。なお、基準位置SPは、通常、光ファイバが屈曲しないときに、ファイバ先端部が配置される位置である。また、渦巻きの巻き回数は、図3、4の例では10巻き程度であるが、通常はさらに多い。
【0040】
図2、4から明らかなように、ファイバ先端部12Aは、振幅幅が小さく、一定領域CR内部に配置されるときは、励起光は、共焦点光学系14、カバーレンズ15を介して、観察対象物OBに照射される。この間、観察対象物OBは、略円形(又は楕円形)の渦巻状に走査され、画像生成部38(図1参照)では略円形(又は楕円形)の観察画像OI(図9参照)が生成される。なお、一定領域CRは、基準位置SPを中心とし、前方から見ると略円形(又は楕円形)の領域である。
【0041】
一方、X方向、Y方向の振幅幅が相対的に大きくなり、ファイバ先端部12Aが、一定領域CRの外側に配置されると、励起光は、ファイバ先端部12Aから観察対象物OBに向かう光路から外れ、内蔵チャート部材20の円環外側部21に入射される。また、ファイバ先端部12Aが、一定領域CRの略中心である基準位置SP又は基準位置SP近傍にあるとき、励起光は、観察対象物OBを照射せず、内蔵チャート部材20の十字中心部22に入射される。
【0042】
すなわち、渦巻状の一定の経路CPのうちの一部に配置されたファイバ先端部12Aから出射された励起光は、内蔵チャート部材20に照射される。そのため、走査期間では、内蔵チャート部材20からの蛍光によっても画像が形成され、蛍光画像FIには、内蔵チャート部材20の画像である内蔵チャート画像CI(図9参照)も含まれる。
【0043】
なお、走査期間では、一定のサンプリングレートで画素信号がサンプリング(生成)される。そのため、一定の経路CPにおいて、画素信号をサンプリングする位置であるサンプリング点Sは、ファイバ先端部12AのX方向、Y方向の振幅幅が小さい間は密であるが、大きくなるに従って徐々に疎になっていく。すなわち、十字中心部22は、サンプリング点Sが相対的に密になった経路CP上に配置された、ファイバ先端部12Aからの励起光によって照射される。
【0044】
駆動信号は、図3に示すように、ファイバ先端部12Aの振幅幅が所定の大きさに達すると、走査期間から制動期間に移行される。制動期間では、ファイバ先端部12Aは、ブレーキング動作により振動が停止され、基準位置SPに戻される。
【0045】
図5は、1フレーム期間において、蛍光受光素子で受光された蛍光の出力電圧(強度)と時間経過の関係を示すグラフである。走査期間では、観察対象物OBからの蛍光と、内蔵チャート部材20からの蛍光が受光される。ここで、観察対象物OBからの蛍光は、比較的弱い強度を有する。一方、内蔵チャート部材20は、上記したように光変換効率が高いため、内蔵チャート部材20から発せされる蛍光は、コンスタントで、かつその発光強度が観察対象物OBからの蛍光よりも十分に大きい。
【0046】
そのため図5に示すように、走査期間の開始直後や、走査期間の後半では、光ファイバからの光が内蔵チャート部材に照射され、画素信号の強度が大きくなる。ただし、光ファイバからの光は、渦巻状に走査される一方、走査期間の開始直後に走査される内蔵チャート部材(十字中心部22)は十字状を呈するため、走査期間の開始直後では、図6に示すように、内蔵チャート部材への走査と、観察対象物への走査が繰り返される。したがって、画素信号の強度も、同様に、図7に示すように、高強度と低強度が繰り返される。
【0047】
そして、各サンプルタイミングで得られた画素信号は、その強度が大きいと、内蔵チャート画像CI(図9参照)の画素信号と判定できる一方、強度が相対的に小さいと観察画像OI(図9参照)の画素信号であると判定できる。なお、図5から明らかなように、制動期間でも、蛍光受光素子35は画素信号を生成するが、その画素信号は画像形成には使用されない。
【0048】
次に、図8を用いて、観察画像生成ルーチンを説明する。観察画像生成ルーチンは、スコープが体内に挿入され、観察画像が生成されるためのルーチンである。なお、本ルーチンでは、説明の簡素化のために、ステップS100〜S105が時系列的に順に進行する例を説明するが、これらは時系列的に進行する必要はなく、例えばステップS100とS101が同時に進行しても良い。また、1フレームの画像が生成される毎にキャリブレーションが実施される場合について説明するが、キャリブレーションは数フレームの画像が生成される毎に実施されて良いし、所定時間毎に実施されても良い。
【0049】
本ルーチンでは、まず、ステップS100において、走査期間で画素信号がサンプリングされ、1フレーム分の蛍光画像FI(図9参照)が生成される。このとき、ファイバ先端部12Aは、初期状態では、後述するようにステップS204で取得された基準補正波形を有する駆動信号で駆動される。一方、ステップS105でキャリブレーションされた後は、そのキャリブレーションで生成された信号波形を有する駆動信号で駆動される。ただし、初期状態では、式(1)(2)で示した標準波形の駆動信号で駆動されても良い。なお、蛍光画像FIには、上記したように観察画像OIと内蔵チャート画像CIが映り込んでいる。
【0050】
次いで、ステップS101では、図9に示すように、蛍光画像FIが観察画像OIと内蔵チャート画像CIに分離される。具体的には、蛍光画像FIの各画素信号の出力値が、閾値より大きいか否かが判定される。そして、図5を参照して説明したように、出力値が閾値以上の画素信号は、内蔵チャート画像CIの画素信号とされるとともに、出力値が閾値より小さい画素信号は、観察画像OIの画素信号とされる。
【0051】
内蔵チャート画像CIは、図9に示すように、円環外側部21を映した円環画像DIと、十字中心部22を映した中心画像EIから成る。一方、観察画像OIは、観察対象物OBを撮影した画像であるが、蛍光画像FIから内蔵チャート画像CIが取り除かれた画像であるため、観察画像OIの中央は画素信号が欠落した画素欠落部分MIとなる。
【0052】
ステップS102では、観察画像OIにおける画素欠落部分MIの画素信号が、画素補間によって周辺画素の画素信号から生成される。上記したように、観察画像OIの中央はサンプリング点S(図4参照)が密である部分に対応するため、画素補間によって画素信号を生成しても、画質低下がもたらされることはほとんどない。そして、画素欠落部分MIの画素信号が補間によって得られた観察画像OIは、ステップS103においてモニタ50に出力される。
【0053】
ステップS104では、内蔵チャート画像CIが、コントローラ46内のROMに予め保存された基準チャート画像とマッチングされる。ここで、基準チャート画像とは、後述する基準チャート取得ルーチンにより、ファイバ先端部12Aの変位経路が、適切な経路である標準経路を辿っているときに生成された内蔵チャート画像である。すなわち、基準チャート画像は、内蔵チャート部材20の形状を歪みなく真に表したものである。
【0054】
ステップS104におけるマッチングの結果、内蔵チャート画像CIが、基準チャート画像に一致していると判定されると、走査期間におけるファイバ先端部12Aの変位経路が、適切な経路を辿っているとして、ステップS100に戻る。すなわち、キャリブレーションされることなく、ステップS100にて次のフレームの画像生成が開始される。
【0055】
一方、ステップS104において、内蔵チャート画像CIが、基準チャート画像に一致していないと判定されると、ステップS105に進み、キャリブレーションが実施される。すなわち、ステップS101で得られた内蔵チャート画像CIの形状が、基準チャート画像の形状に一致するように、駆動信号の信号波形が補正される。そして、キャリブレーション後、ステップS100に戻って次のフレームの画像が生成される。
【0056】
本実施形態において、ステップS104におけるマッチングは、例えば、2値化された内蔵チャート画像CIと基準チャート画像の円環画像DIが楕円又は円であるとして行われる。そして、例えば、円環画像DIの長軸長さ、短軸長さ及び傾き、並びに円環画像DIの中心画像EIに対する位置等のパラメータが実質的に互いに一致しているかどうかにより判定される。また、ステップS105にて行われるキャリブレーションは、これらパラメータの差が無くなるように、信号波形の振幅、位相、及びx、y切片等が調整されて行われる。ただし、これらマッチングやキャリブレーションは、一例であって、これらに限定されるわけではなく、他の公知の方法で実施することが可能である。
【0057】
次に、図10を用いて、基準チャート画像を得るための基準チャート取得ルーチンを説明する。なお、本ルーチンは、製品出荷前や出荷後の定期メンテナンス時等に実施されるものである。
【0058】
本ルーチンでは開始前に、まず、図11に示すような紙等から成る例えばアルファベット“A”が記されたチャート(以下、外部チャート51とする)が用意される。そして、その外部チャート51が観察対象物OBとして、スコープ先端部10Aの前方に置かれた状態で、例えばプロセッサの所定のスイッチ等が入力されることにより、本ルーチンは開始される。
【0059】
本ルーチンでは、まずステップS200において、ファイバ先端部12Aが1フレーム期間にわたって駆動され、1フレームの蛍光画像が生成される。このとき、ファイバ先端部12Aは、初期状態では、式(1)(2)で示した標準波形の駆動信号で駆動される。一方、ステップS203で駆動信号の波形が補正された後は、その補正された波形を有する駆動信号で駆動される。
【0060】
なお、ステップS200で得られた蛍光画像は、スコープ先端部の前方に置かれた外部チャート51の画像(外部チャート画像GI)と、内蔵チャート部材20の画像(内蔵チャート画像CI)から成る基準チャート取得用蛍光画像SIである(図12参照)。
【0061】
ステップS201では、ステップS101と同様の方法で、基準チャート取得用蛍光画像SIが、外部チャート画像GIと、内蔵チャート画像CIに分離される。すなわち、画素信号の出力値が閾値より大きいと内蔵チャート画像CIの画素信号に、閾値以下であると外部チャート画像GIの画素信号とされ、基準チャート取得用蛍光画像SIが分離される。
【0062】
ステップS202では、外部チャート画像GIに歪みがあるかどうかが判定される。外部チャート画像GIに歪みがあるかどうかの判定は、図12に示すように、外部チャート画像GIの形状が、基準外部チャート画像HIの形状に一致するかどうかで判定される。ここで、一致すると判定された場合ステップS204に進む一方、一致しないと判定された場合ステップS203に進む。
【0063】
なお、外部チャート画像GIと基準外部チャート画像HIとが一致するかどうかは、例えば、2値化された外部チャート画像GIと基準外部チャート画像HIにおける、アルファベット“A”同士が一致するかどうかによって判断される。アルファベット“A”同士が一致するかどうかの判断は、公知のマッチングにより行われる。ただし、十字中心部22による画素欠落部MIが、アルファベット“A”に重なる場合には、本ルーチンでも、画素補間により画素欠落部MIの画素信号が生成される。
【0064】
また、基準外部チャート画像HIとは、予めコントローラ46のROMに保存さている外部チャート51についての歪みのない画像である。そのため、図12に示すように、外部チャート画像GIの形状が基準外部チャート画像HIの形状に一致していると、外部チャート画像GIにも歪みがないことになる。すなわち、ファイバ先端部12Aは、観察画像に歪みを生じさせない適切な経路(標準経路)に沿って変位していることになる。したがって、ステップS201で基準チャート取得用蛍光画像SIから得られる内蔵チャート画像CIも、ファイバ先端部12Aが適切な標準経路に沿って変位したときに生成されたものであり、内蔵チャート部材20の形状を歪みなく真に表わしたものとなる。
【0065】
そのため、ステップS204では、ステップS201で得られた内蔵チャート画像CIが、基準チャート画像としてROMに記憶される。また、その内蔵チャート画像CIを生成したときのファイバ先端部12Aの駆動信号の信号波形が、基準補正波形としてROMに記憶され、本ルーチンを終了する。基準チャート画像や基準補正波形は、上記したように、画像形成ルーチンで使用される。
【0066】
一方、外部チャート画像GIの形状が、図13に示すように歪んでおり、基準外部チャート画像HIの形状に一致しない場合、ファイバ先端部12Aは適切な基準経路に沿って変位していないことなる。そのため、ステップS203においてファイバ先端部の駆動信号の波形を補正して、ステップS200に戻る。そして、外部チャート画像GIが基準外部チャート画像HIに一致するまでステップS200〜S203が繰り返される。
【0067】
駆動信号の波形の補正は、例えば、2値化された外部チャート画像GIと基準外部チャート画像HIについての縦横比率、傾き等の差が無くなるように、波形の振幅、位相、及びx、y切片(オフセット)が調整される。
【0068】
なお、上記で説明した図12の例は、実際の内蔵チャート部材20が、スコープ先端部10Aにおいて、誤差なく取り付けられ真円を呈した例である。そのため、基準チャート画像の円環画像は真円となっている。
【0069】
一方、図14で示した例は、実際の内蔵チャート部材20の円環外側部21が、真円ではなく、楕円を呈している場合の基準チャート画像の例である。図14の例では、基準チャート画像において、円環画像DIの形状は、実際の内蔵チャート部材20の形状に合わせて楕円となる。また、図15の例は、内蔵チャート部材20の円環外側部21が、真円に形成されるが、十字中心部22に対して偏心している場合の基準チャート画像の例である。図15の例では、基準チャート画像において、円環画像DIは、中心画像EIに対して、偏心したものとなっている。
【0070】
以上のように、本実施形態では、スコープ先端部10Aに、内蔵チャート部材20が設けられたことにより、スコープ10が体内に挿入されているとき等であっても、観察対象物OBを観察しながら、キャリブレーションを実施することができる。
【0071】
また、内蔵チャート部材20は、光ファイバ12から出射される光の光路のうち、被写体観察を阻害しない外側部分や、被写体観察に使用される部分のうちサンプリング点が密である中心部に設けられる。そのため、キャリブレーションによって被写体観察が殆ど阻害されることはない。さらに、内蔵チャート部材20は、円環外側部21と十字中心部22とを備えるので、画像上におけるこれらの相対的な位置関係も考慮したうえでキャリブレーションを行うことが可能である。そのため、例えば、ファイバ先端部12Aが偏心して振動することが防止されるやすくなる。
【0072】
また、本実施形態では、内蔵チャート部材20の真の形状を表した基準チャート画像が、基準チャート取得ルーチンにおいて取得されている。したがって、スコープ先端10Aに取り付けられた内蔵チャート部材20が歪んでいたり、偏心したりしている場合であっても、キャリブレーションを適切に行うことができる。
【0073】
図16は、本発明の第2の実施形態に係る内視鏡装置の概要を示すブロック図である。
第1の実施形態では、内蔵チャート部材は、蛍光体から構成されたが、本実施形態における内蔵チャート部材70は、金属等から成る反射体から構成される。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。なお、第1の実施形態と同一の部材については、同一の符号を付す。
【0074】
本実施形態では、プロセッサ30には、フィルタ34の代わりに、フィルタ74A、74Bが設けられる。フィルタ74A、74Bは、入射した光の一部を透過し、残りを反射するハーフミラーである。また、受光素子として、蛍光受光素子35に加えて励起光受光素子75が設けられるとともに、励起光受光素子75、蛍光受光素子35それぞれの前方には、蛍光カットフィルタ79A、励起光カットフィルタ79Bが設けられる。励起光受光素子75は、例えばフォトダイオード(PD)である。蛍光カットフィルタ79A、励起光カットフィルタ79Bは、特定の波長の光をカットし、その他の波長の光を透過するフィルタである。
【0075】
レーザー光源32から出射した励起光は、一部がフィルタ74A、74Bを透過し、集光レンズ31で集光されて、光ファイバ12の基端部12Bに入射される。励起光は、光ファイバ12内部を通って、第1の実施形態と同様に、観察対象物OB及び内蔵チャート部材70に照射される。
【0076】
本実施形態では、内蔵チャート部材70が反射体であるため、内蔵チャート部材70に入射された励起光は、内蔵チャート部材70において反射され、光ファイバ12に入射される。一方、観察対象物OBからの戻り光は、第1の実施形態と同様に蛍光である。そのため、光ファイバ12の基端部12Bからは、励起光及び蛍光が出射される。
【0077】
基端部12Bから出射された励起光及び蛍光は、一部がフィルタ74Aを反射し、一部が透過する。フィルタ74Aで反射された励起光及び蛍光は、蛍光カットフィルタ79Aで蛍光がカットされたうえで、励起光のみが励起光受光素子75に受光される。フィルタ74Aを透過した励起光及び蛍光は、フィルタ74Bで一部が反射され、かつ励起光カットフィルタ79Bで励起光がカットされたうえで、蛍光のみが蛍光受光素子35に受光される。すなわち、本実施形態では、観察対象物からの戻り光(蛍光)と、内蔵チャート部材からの戻り光(励起光)は、波長が異なることが利用されて、ハーフミラーやカットフィルタ等の光学部材によって分離されたうえで、異なる受光素子で受光される。
【0078】
蛍光受光素子35は、第1の実施形態と同様に、所定の微小期間で受光した蛍光の強度に応じた画素信号を生成する。励起光受光素子75も、同様に、所定の微小期間で受光した励起光の強度に応じた画素信号を生成する。画素信号の生成は、いずれの受光素子においても、1フレーム期間において繰り返される。
【0079】
蛍光受光素子35で得られた画素信号は、第1の実施形態と同様に、デジタル画素信号として画像生成部38に送られ、画像生成部38では、その画素信号から1フレーム分の蛍光画像が得られる。ただし、本実施形態では、内蔵チャート部材70が蛍光を発しないため、蛍光画像は、観察対象物OBからの蛍光によって得られた観察画像OI(図9参照)のみから成る。観察画像OIは、一時的に画像メモリ40に格納された後、エンコーダ39を介してモニタ50に出力される。
【0080】
励起光受光素子75で得られた画素信号は、アンプ76で増幅された後、A/D変換器77によってデジタル画素信号に変換され画像生成部38に送られ、画像生成部38では蛍光画像と同様に、その画素信号から1フレーム分の励起光画像が得られる。励起光画像は、内蔵チャート部材70からの反射光によって形成された内蔵チャート画像CI(図9参照)である。内蔵チャート画像CIは、画像メモリ40に格納され、キャリブレーション用の画像として使用される。
【0081】
なお、本実施形態における観察画像生成ルーチン及び基準チャート取得ルーチンは、ステップS101、S201が省略される点を除いて第1の実施形態と実質的に同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0082】
以上のように、本実施形態では、内蔵チャート部材として反射体を使用したことにより、蛍光画像を画像処理により2つの画像に分離しなくても、キャリブレーションを実施することが可能になる。
【0083】
図17は、本発明の第3の実施形態に係る内視鏡装置の概要を示すブロック図である。
第1の実施形態では、励起光により共焦点観察を行う内視鏡装置であったが、本実施形態では白色光により、観察対象物OBを通常観察する内視鏡装置である。そのため、観察対象物OBは、カバーレンズ15から離されて観察される。以下、第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。なお、第1の実施形態と同一の部材については、同一の符号を付す。
【0084】
本実施形態では、光ファイバ12の前方に、共焦点光学系14に代えて、照明光学系94が配置される。また、スコープ10の内部には、光ファイバ12に加えて、観察対象物OBからの反射光を伝送する光ファイバ(以下、イメージファイバという)92が挿入されている。イメージファイバ92の先端は分岐しており、照明光学系94及びカバーレンズ15の周囲に配置されるとともに、その基端はプロセッサ30に接続される。
【0085】
また、プロセッサ30には、レーザー光源として、赤色、緑色、青色の光をそれぞれ発光するレーザー光源82R、82G、82Bが設けられ、これらはレーザードライバ83R、83G、83Bによって駆動される。本実施形態では、赤色、緑色、青色の光を同時発光させることにより、白色光を観察対象物OBに向けて照射する。また、レーザー光源82Bから発せられる青色光は、内蔵チャート部材20を励起させることが可能な波長を有する励起光である。
【0086】
プロセッサ30内部において、レーザー光源82R、82G、82Bから発する光の光路上には、フィルタ84R、フィルタ84G、フィルタ84Bが配置される。フィルタ84R、フィルタ84G、フィルタ84Bは、それぞれ赤色、緑色、青色の光を反射し、その他の光を透過するフィルタである。
【0087】
レーザー光源82R、82G、82Bから発した赤色、緑色、青色の光は、フィルタ84R、フィルタ84G、フィルタ84Bで反射されて1つの光束とされたうえで、白色光として、集光レンズ31によって、光ファイバ12の基端部12Bに集光される。白色光は、光ファイバ12を通って、ファイバ先端部12Aまで伝送される。
【0088】
白色光は、ファイバ先端部12Aから出射し、照明光学系94、カバーレンズ15を通って、観察対象物OBに照射される。本実施形態では、ファイバ先端部12Aは、第1の実施形態と同様に駆動され、そのため、ファイバ先端部12Aからの白色光は、第1の実施形態と同様に、走査期間において、観察対象物OBに加えて内蔵チャート部材20にも照射される。
【0089】
観察対象物OBに照射された白色光は、観察対象物OBで反射し、反射光としてイメージファイバ92に入射し、イメージファイバ92の基端まで導かれる。反射光は、イメージファイバ92の基端から出射して、光学レンズ85、ハーフミラー群86によって赤色、緑色、青色の光に分離され、それぞれ受光器87R、87G、87Bに入射される。受光器87R、87G、87Bは、それぞれ赤色、緑色、青色の光を、その強度に応じたR、G、Bの画素信号に変換する。
【0090】
R、G、Bの画素信号は、A/D変換器89R、89G、89Bにおいてデジタル画素信号に変換され、画像生成部38へ送られる。画像生成部38では、順次送られるR、G、Bのデジタル画素信号により、1フレームの通常観察画像が得られ、その通常観察画像は、画像メモリ40に一旦格納される。なお、通常観察画像は、第1の実施形態の観察画像と同様に、画素欠落部分があるが、画素欠落部分における画素信号は、画素補間により生成される。画像メモリ40に格納された通常観察画像は、エンコーダ39を介して、モニタ50に出力される。
【0091】
一方、本実施形態では、レーザー光源82Bから出射した青色光が励起光であるため、内蔵チャート部材20は、ファイバ先端部12Aから出射された光が照射されることにより、励起されて蛍光を発する。内蔵チャート部材20が発した蛍光は、第1の実施形態と同様に、光ファイバ12を通って、光ファイバ12の基端部12Bに導かれる。内蔵チャート部材20からの蛍光は、集光レンズ31、フィルタ84R、84G、84Bを透過して、蛍光受光素子35に受光される。蛍光受光素子35では、第1の実施形態と同様に、蛍光の強度に応じた画素信号が生成される。
【0092】
蛍光受光素子35で得られた画素信号は、第1の実施形態と同様に、デジタル画素信号として画像生成部38に送られ、画像生成部38では、1フレーム分の蛍光画像が得られる。本実施形態では、1フレーム分の蛍光画像は、内蔵チャート部材20からの戻り光のみによって生成され、内蔵チャート画像CI(図9参照)のみから成る。内蔵チャート画像CIは、画像メモリ40に格納され、キャリブレーション用の画像として使用される。
【0093】
なお、本実施形態における観察画像生成ルーチン及び基準チャート取得ルーチンは、ステップS101、S201が省略される点を除いて第1の実施形態と実質的に同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0094】
以上のように、白色光等によって通常観察を行う場合であっても、内蔵チャート部材20により得られた内蔵チャート画像CIによって、キャリブレーションを実施することが可能である。
【0095】
なお、本実施形態では、内蔵チャート部材は、第2の実施形態と同様に、反射体から構成されても良い。反射体は、R、G、Bの全ての光を反射する反射体であっても良いが、塗料等が塗られR、G、Bのうち少なくとも1つの光を反射するものであっても良い。この場合、反射光の光路を、レーザー光源の光路から分岐させるために、例えば、集光レンズ31とフィルタ84Rの間に、ハーフミラーが設けられるとともに、ハーフミラーで反射された光を受光するための受光素子が設けられる。
【0096】
さらに、本実施形態では、レーザー光源82Bから出射される青色光が、励起光として使用されたが、レーザー光源82Bとは別に、紫外線から成る励起光を出射するための励起光用レーザー光源が用いられても良い。
【0097】
励起光用レーザー光源からの励起光は、白色光に合成されてファイバ先端部12Aから出射されても良いが、白色光と別のタイミングで出射されても良い。この場合、例えば、キャリブレーションを開始させるためのスイッチが、プロセッサ等に設けられて、そのスイッチが入力されたときに、白色光に代えて励起光が出射されるようにしても良い。
【0098】
このような構成により、スイッチが入力されたときには、観察画像OIが生成されず、内蔵チャート画像CIのみが生成されてキャリブレーションが実施される。一方、通常の観察画像生成時には、内蔵チャート画像CIが作成されず、キャリブレーションは実施されなくなる。すなわち、被写体観察とキャリブレーションが別に行われることになる。なお、上記各実施形態でも、被写体観察とキャリブレーションが別に行われても良い。
【0099】
なお、上記各実施形態では、基準チャート取得ルーチンにおいて、多数の画素信号から構成される基準チャート画像の画像データがROMに保存されたが、その他の形式で画像データがROMに保存されても良い。例えば、ROMには、基準チャート画像の形状を表すためのパラメータが基準チャート画像のデータとして保存されていても良い。
【0100】
上記パラメータとしては、例えば、円環画像DIが中心画像EIを中心とする真円であるとしたときの理想画像に対する、実際の円環画像DIの歪み・ずれをアフィン変換の係数として表したものである。この場合には、ステップS104において、内蔵チャート画像CIが、同様にアフィン変換の係数として表され、その係数が基準チャート画像の係数と比較されて画像同士のマッチングが行われても良い。
【0101】
また、内蔵チャート部材が少ない誤差で成形・取付できる場合には、基準チャート取得ルーチンが省略され、基準チャート画像に関する画像データが、予めROM等に保存されていても良い。
【0102】
また、基準チャート取得ルーチンが省略される場合、円環外側部21が真円であるとしてキャリブレーションが実施されても良い。具体的には、円環外側部21が真円で、光ファイバが適切な経路に沿って円形螺旋状に変位される場合、図5に示すように、円環外側部21からの戻り光は、一定期間(t1〜t2)にわたって高い強度でコンスタントになる。一方、光ファイバが適切な経路に沿わず、例えば楕円形の螺旋状に変位される場合、一定期間(t1〜t2)において、出力値が弱くなる期間がある。そのため、例えばその一定期間において、出力値が弱くなる期間があるかどうかを検知して、光ファイバの経路が適切か否かを判断しても良い。
【0103】
また、各実施形態において、内蔵チャート部材が取り付けられる位置は、ハウジング18の内周面や、カバーレンズ15の背面に限定されず、カバーレンズ15の前面等その他の位置に取り付けられても良い。また、反射防止コートを被膜したカバーレンズ15において、一部に反射防止コートを被膜しないようにして、その部分を反射体としても良い。
【0104】
なお、以上の説明では、光ファイバの先端部が、渦巻状に走査される例について説明したが、本発明は、光ファイバの先端部が、例えばラスタ方式等の異なる方式で走査される光ファイバスキャン装置に適用されても良い。
【符号の説明】
【0105】
10 スコープ
10A スコープ先端部
12 光ファイバ
12A ファイバ先端部
13 アクチュエータ
20 内蔵チャート部材
21 円環外側部
22 十字中心部
30 プロセッサ
38 画像生成部
42 波形生成処理部
CR 一定領域
CI チャート画像
FI 蛍光画像
OI 観察画像
CP 一定の経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スコープ部と、
前記スコープ部内部に挿入され、かつ観察対象物に照射されるための照射光を先端から出射する光ファイバと、
前記光ファイバの先端を変位させる駆動手段と、
前記光ファイバの先端を、前記観察対象物を走査させるために一定の経路に沿うように変位させたときの前記観察対象物からの戻り光により、1フレームの観察画像を生成する画像生成手段と、
前記光ファイバの前方に配置され、かつ、前記一定の経路のうちの一部に変位された光ファイバからの照射光によって照射されるように、前記スコープ部に取り付けられるチャート部材と、
前記チャート部材からの戻り光に基づいて、光ファイバスキャン装置に対してキャリブレーションを行う較正手段と
を備えることを特徴とする光ファイバスキャン装置。
【請求項2】
前記一定の経路で変位した前記光ファイバの先端が、一定の領域内に変位されるときに、前記観察対象物に前記照射光が照射され、得られた前記観察対象物からの戻り光により前記1フレームの観察画像が生成されるとともに、
前記チャート部材の少なくとも一部は、前記先端が前記一定の領域の外側に変位されるとき、前記照射光によって照射されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項3】
前記チャート部材は、前方側から見ると、前記光ファイバを取り巻くように設けられた外側部を有することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項4】
前記外側部は、環状であることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項5】
前記チャート部材は、前方側から見ると、前記駆動手段により駆動されないときの前記光ファイバに一致し又は近接する位置に配置される中心部を備えることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項6】
前記光ファイバの先端部が、前記一定の経路に沿うように変位される間、前記照射光の戻り光が所定のサンプリングレートでサンプリングされて画素信号が生成され、
前記一定の経路のうち少なくとも一部は、他の部分に比べて前記画素信号をサンプリングするためのサンプリング点が相対的に密となっており、
前記チャート部材の少なくとも一部は、前記サンプリング点が相対的に密である部分に配置された光ファイバからの照射光によって照射されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項7】
前記チャート部材の戻り光から生成される画素信号は、前記観察対象物の戻り光から生成される画素信号と分離されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項8】
前記チャート部材からの戻り光は、前記観察対象物からの戻り光よりも高強度となるようにし、
出力値が相対的に大きい画素信号を前記チャート部材の戻り光から生成される画素信号とするとともに、出力値が相対的に小さい画素信号を前記観察対象物の戻り光から生成される画素信号として分離することを特徴とする請求項7に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項9】
前記チャート部材からの戻り光は、前記観察対象物からの戻り光と異なる波長にされていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項10】
前記チャート部材からの戻り光は、光学部材によって前記観察対象物からの戻り光と分離され、
前記観察画像は、第1の受光素子によって受光された前記観察対象物からの戻り光によって生成され、
前記キャリブレーションは、第2の受光素子によって受光された前記チャート部材からの戻り光によって行われることを特徴とする請求項9に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項11】
前記チャート部材からの戻り光は、前記光ファイバの先端から入射されて基端から出射されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項12】
前記観察対象物からの戻り光は、前記光ファイバの先端から入射されて基端から出射されることを特徴とする請求項11に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項13】
前記観察対象物からの戻り光を、先端から入射さるイメージファイバを備え、
前記画像生成手段は、前記イメージファイバに導かれた光によって前記観察画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項14】
前記チャート部材は前記照射光を反射してその反射光を戻り光とし、又は前記照射光によって励起され、蛍光を戻り光として発することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項15】
前記光ファイバ先端は、渦巻状の経路に沿って変位されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項16】
前記チャート部材からの戻り光に基づいてチャート画像を生成し、前記チャート画像が基準チャート画像に一致しない場合に前記キャリブレーションを行うことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項17】
前記光ファイバの先端を標準経路に沿って変位させたときに、前記チャート部材からの戻り光によって得られる基準チャート画像に関するデータを保存するメモリを備え、
前記基準チャート画像に関するデータと、前記チャート部材の戻り光から得られるチャート画像に関するデータとを比較して、前記チャート画像の形状が、前記基準チャート画像の形状に一致するように、キャリブレーションを行うことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項18】
前記較正手段は、前記光ファイバの変位を補正することにより、前記キャリブレーションを行うことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバスキャン装置。
【請求項19】
スコープ部と、
前記スコープ部内部に挿入され、かつ観察対象物に照射されるための照射光を先端から出射する光ファイバと、
前記光ファイバの先端を変位させる駆動手段と、
前記光ファイバの先端を、前記観察対象物を走査させるために一定の経路に沿うように変位させたときの前記観察対象物からの戻り光により、1フレームの観察画像を生成する画像生成手段と、
前記光ファイバの前方に配置され、かつ、前記一定の経路のうちの一部に変位された光ファイバからの照射光によって照射されるように、前記スコープ部に取り付けられるチャート部材と、
前記チャート部材からの戻り光に基づいて、前記チャート部材に関する画像データを取得するチャートデータ生成手段と
を備えることを特徴とする光ファイバスキャン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−152244(P2012−152244A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11370(P2011−11370)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】