説明

光ファイバテープ心線およびその分割方法

【課題】活線分岐の際に各心線に捻りや曲げが生じないように、多心の光ファイバテープ心線を少心の光ファイバテープ心線に分割し、さらに少心の光ファイバテープ心線を単心の光ファイバに容易に分割して伝送特性の劣化や断線を避ける。
【解決手段】光ファイバテープ心線1は、並列に配置した複数本の光ファイバ3の外周上に一括被覆5を設けている。また、隣接する前記光ファイバ3間の境目の位置に相当する一括被覆5の位置に、一括被覆5の長手方向にわたって窪み部5Aを設け、窪み部5Aに沿って一括被覆5の厚さ方向に貫通するスリット7を間欠的に設ける。スリット7の長さ及びスリット7間の間隔の寸法は、スリット7に縦裂き用部材を通して一括被覆5の長手方向に移動することで一括被覆5を縦裂く際に、縦裂き用部材13で広げられたスリット7に隣接する光ファイバ3の曲げ半径が活線分岐を可能とする構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容易に分岐可能な光ファイバテープ心線およびその分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、並列に配置した複数本の光ファイバの外周上に一括被覆を設けた光ファイバテープ心線としては、心線間で容易に引き裂くことができるように種々の工夫が行われており、例えば、特許文献1〜特許文献5に挙げるようなものがある。
【0003】
特許文献1のテープ型光ファイバケーブルとしては、2枚のプラスチックフィルム間に数グループの光ファイバが配列されており、前記グループ間にケーブルの長手方向にミシン目のような切り裂き線を設けることで、切り裂きやすくしたものである。
【0004】
特許文献2の光ファイバケーブルでは、光ファイバテープ心線の長手方向に、光ファイバ間に分断溝が設けられている。
【0005】
特許文献3の光ファイバユニットでは、光ファイバテープ心線の中央に凹部を設け、この凹部にはさらにスリット(空孔)を設けて切り裂きやすくなっている。
【0006】
特許文献4の光ファイバテープユニット及び光ファイバケーブルでは、分割する光ファイバ間の位置に、窪みを形成して引き裂きやすくしている。この場合は、一体化した光ファイバテープ心線を複数本並べ、これらの複数本の光ファイバテープ心線を連結用樹脂により連結させるので、前記連結用樹脂から容易に分割できる。
【0007】
特許文献5のテープ状光ファイバ心線およびその製造方法では、光ファイバテープ心線内の隣接する二本の光ファイバ間を一体化するための被覆層は若干くびれている。しかも、前記二本の光ファイバ間の被覆層には切り欠き開口部が形成され、(手で)引き裂きやすくしている。したがって、光ファイバテープ心線内の隣接する二本の光ファイバ間の被覆層に切り裂きが形成されているので容易に分割できる。
【特許文献1】特開平9−80297号公報
【特許文献2】特開2005−62427号公報
【特許文献3】実開昭59−22404号公報
【特許文献4】特開2005−292518号公報
【特許文献5】特開平1−138516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の光ファイバテープ心線においては種々の問題点があった。
【0009】
特許文献1では、ミシン目で切り離した後には、単心分割が困難であるという問題点があった。
【0010】
特許文献2では、テープ心線内で単心に分離されている箇所が多く、作業時に目的以外の光ファイバへダメージを与えてしまう恐れがある。かつ、スロットケーブルのスロット内での心線識別性が悪い、すなわち、何番の光ファイバテープ心線の何番の光ファイバ心線かを識別しにくいという問題点があった。
【0011】
特許文献3では、光ファイバテープ心線を中央の凹部で分割した後の単心分割に関する記載がないので、単心分割に関しては不十分である。
【0012】
特許文献4では、一体化した光ファイバテープ心線のテープ化材と連結用樹脂のテープ化材で、テープ化材を二回以上コートするために、光ファイバテープ心線が厚くなる。また、分岐作業時には、連結用にコートした連結用樹脂(テープ化材)を取り除かなければならないので、手間がかかるという問題点があった。
【0013】
特許文献5では、例えば、手で引き裂く時に、(1)光ファイバテープ心線を左右に引っ張ってちぎる。(2)引き裂き線の一方では上げ、他方では下げることで引き裂く。上記の(1)、(2)のどちらかの方法で引き裂くことになるが、これでは、光ファイバテープ心線に捻りや曲げが生じるので、伝送特性の劣化や、最悪の場合は光ファイバの断線の恐れがある。このように、光ファイバテープ心線の分割時にロス変動を考慮した分割方法は記載していない。また、活線分岐に適した切り欠き開口部の広さやピッチを考慮していない。
【0014】
この発明は、活線分岐の際に各心線に捻りや曲げが生じないように、多心の光ファイバテープ心線を少心の光ファイバテープ心線に分割し、さらに少心の光ファイバテープ心線を単心の光ファイバに容易に分割して伝送特性の劣化や断線を避けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、この発明の光ファイバテープ心線は、並列に配置した複数本の光ファイバの外周上に一括被覆を設けてなる光ファイバテープ心線において、
隣接する前記光ファイバ間の境目の位置に相当する前記一括被覆の位置に、この一括被覆の長手方向にわたって窪み部を設け、この窪み部に沿って前記一括被覆の厚さ方向に貫通するスリットを間欠的に設け、
前記スリットの長さ及び前記スリット間の間隔の寸法は、前記スリットに縦裂き用部材を通して前記一括被覆の長手方向に移動することで前記一括被覆を縦裂く際に、前記縦裂き用部材で広げられたスリットに隣接する前記光ファイバの曲げ半径が活線分岐を可能とする構成であることを特徴とするものである。
【0016】
また、この発明の光ファイバテープ心線は、前記光ファイバテープ心線において、前記縦裂き用部材の幅もしくは直径がXmmであるとき、
Ymm≦スリット長さ<500mm
Ymm<(スリット長さ+スリット間隔)≦500mm
0.01≦スリット長さ/(スリット長さ+スリット間隔)<1
【数2】

【0017】
であると共に、
光ファイバの外径をD、光ファイバの直上にある一括被覆の厚さをt1、窪み部の一括被覆の最小厚さt2が、
0<t2<D+2t1
であることが好ましい。
【0018】
また、この発明の光ファイバテープ心線は、前記光ファイバテープ心線において、前記複数の光ファイバを単心に分割可能とするための前記光ファイバの直上にある一括被覆の厚さt1は、
0<t1≦0.025mm
であることが好ましい。
【0019】
この発明の光ファイバテープ心線の分割方法は、並列に配置した複数本の光ファイバの外周上に一括被覆を設けた光ファイバテープ心線にあって、隣接する前記光ファイバ間の境目の位置に相当する前記一括被覆の位置に、この一括被覆の長手方向にわたって窪み部を設け、この窪み部に沿って前記一括被覆の厚さ方向に貫通するスリットを間欠的に設け、前記一括被覆の前記スリットに縦裂き用部材を通して前記一括被覆の長手方向に移動することで前記一括被覆を縦裂きすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の光ファイバテープ心線によれば、隣接する光ファイバ間の境目の位置に相当する一括被覆の位置に、この一括被覆の長手方向にわたって窪み部を設け、この窪み部に沿って設けたスリットに縦裂き用部材を通して前記一括被覆の長手方向に移動することで、活線分岐の際に光ファイバに捻りや曲げを生じさせないで、前記窪み部で一括被覆を縦裂きして容易に少心の光ファイバテープ心線に分割することができ、伝送特性の劣化や断線を避けることができる。
【0021】
また、従来の特許文献4のようにテープ化材を二回以上コートして連結用樹脂を設けることで光ファイバの分割性の向上を図らなくても、つまり、コートする一括被覆が一層のみの薄いテープ心線にすることができるので、光ファイバの分割性を良くすることができる。
【0022】
この発明の光ファイバテープ心線の分割方法によれば、スリットに縦裂き用部材を通して一括被覆の長手方向に移動するだけで、光ファイバに捻りや曲げを生じさせないで、一括被覆を縦裂きして容易に分割することができる。しかも、窪み部を設けたことで、窪み部が無い場合に比べてより一層容易に分割することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1を参照するに、この実施の形態に係る光ファイバテープ心線1(以下、単に、「テープ心線」という)は、例えば光ファイバ素線あるいは光ファイバ心線などの光ファイバ3が複数本を並列して構成されるものであり、前記複数本の光ファイバ3の外周上に一括被覆5(テープ化材)が施されている。したがって、一括被覆5(テープ化材)が一層のみで製作可能であるので、多心のテープ心線1の厚さを薄くすることが可能である。
【0025】
しかも、多心のテープ心線1を目的の光ファイバ3の間で分割し、心数の少ないテープ心線1A,1B,1C,・・・・に分割するために、目的の互いに隣接する光ファイバ3の間の境目の位置に相当する前記一括被覆5の位置には、この一括被覆5の窪み部5Aがテープ心線1すなわち、一括被覆5の長手方向全長に亘って設けられており、この窪み部5Aの位置には、前記窪み部5Aの厚さ方向に貫通するスリット7が前記窪み部5Aの長手方向にわたって間欠的に設けられている。なお、この場合の窪み部5Aは、その底部にほぼ平行な首部を形成している。
【0026】
なお、この実施の形態では合計8本の光ファイバ3としての例えば光ファイバ着色心線が並列に配置され、前記8本の光ファイバ3の外周上に一括被覆5(テープ化材)が施されている。この8心のテープ心線1を目的の光ファイバ3の間で分割し、心数の少ないテープ心線1A,1Bに分割するために、前記各光ファイバ3は、図1において左から順に#1,#2,#3,・・・,#7,#8とすると、この実施の形態では、#4と#5の間に窪み部5Aが設けられ、かつ、前記の窪み部5Aに沿ってスリット7が間欠的に設けられている。換言すれば、スリット7で分離されている部分(分離部)と、スリット7が無く互いに接着されているスリット間隔部9(接着部)が交互に設けられている。
【0027】
上記の窪み部5Aに沿ってスリット7を間欠的に設けたことで、容易に分割可能となるが、これだけでは、例えば、従来の特許文献5の光ファイバテープ心線のように、テープ心線1を左右に引っ張ってちぎるか、あるいは、引き裂き線11の図1において左右の一方では上げ、他方では下げることで引き裂くのでは、光ファイバ3の伝送特性の劣化(ロス変動)や断線を引き起こす要因となる捻りや曲げを生じさせてしまう。
【0028】
これを避けるために、この実施の形態では、図1に示されているように、前記スリット7に縦裂き用部材としての例えば縦裂き用線材13を挿通して、この縦裂き用線材13をテープ心線1の長手方向に移動することで、前記一括被覆5を縦裂くことを可能とするものである。
【0029】
したがって、この場合は、8心のテープ心線1の窪み部5Aのスリット7に、直径がXmmの縦裂き用線材13を挿入し、縦裂き用線材13をスリット7と平行にスライドさせることで、8心のテープ心線1を容易に2本の4心のテープ心線1A,1Bに分割することができる。
【0030】
ここで、所謂、多心のテープ心線1から少心のテープ心線へ分割可能とする光ファイバテープ心線の条件について説明する。
【0031】
つまり、多心のテープ心線1を目的の光ファイバ3の間で少心のテープ心線1A,1B,1C,・・・・に分割する際に、活線分岐を可能とするために光ファイバ3の間のスリット7(分離部)の大きさの条件を設定した。
【0032】
前記スリット7(分離部)のスリット長さをA(以下、単に「長さA」という)とし、前記スリット間隔部9(接着部)のスリット間隔をB(以下、単に「間隔B」という)とすると、長さA、(長さA+間隔B)、長さA/(長さA+間隔B)は、前記スリット7に通した縦裂き用線材13を前記長手方向に移動しても、光ファイバ3の伝送特性の劣化が生じない構成とすることが必要である。
【0033】
例えば、前記スリット7の幅Cが縦裂き用線材13の直径より小さい場合は、スリット7に縦裂き用線材13を挿入すると光ファイバ3が曲がり、#4と#5の光ファイバ3の間隔が広がることになる。そのために光ファイバ3が曲がることで、スリット7の幅Cよりも大きな直径の縦裂き用線材13を挿入することが可能となる。
【0034】
しかし、直径Xmmの縦裂き用線材13を用いる場合は、例えば、図2に示されているように、隣り合う光ファイバ3の離隔が無し(0mm)の場合を例にとると、スリット7に縦裂き用線材13を挿入したことにより、隣り合う光ファイバ3が離れる。つまり、光ファイバ3の離隔が広がって光ファイバ3に曲げが加わるが、スリット7の長さAが
【数3】

【0035】
以上あれば、光ファイバ3に加わる曲げ半径をR30mm以上に抑えることが可能であるため、分割時のロス変動を抑えることができる。このことから、この実施の形態ではスリット7の長さAは
【数4】

【0036】
以上が望ましいとしている。
【0037】
したがって、上記の直径Xmmの縦裂き用線材13をテープ心線1の分割のために用いる場合は、スリット7に前記縦裂き用線材13を入れたときの光ファイバ3の曲がりがR30mm以上であれば伝送ロス増は起こりにくいことから、
【数5】

【0038】
であることが望ましい。また、SZ型光ファイバケーブル等の光ファイバケーブルを中間分岐する際には、前記ケーブルのシースを剥ぐ長さが500mm程度であることから、500mm中に少なくとも一点以上のスリット間隔部9(接着部)を持たなければならない。
【0039】
以上をまとめると、前記縦裂き用線材13の直径がXmmであるとき、前記長さA、(長さA+間隔B)、長さA/(長さA+間隔B)は、
Ymm≦長さA<500mm
Ymm<(長さA+間隔B)≦500mm
0.01≦長さA/(長さA+間隔B)<1
【数6】

【0040】
でなければならない。なお、〔A/(A+B)〕は分離部比率という。
【0041】
なお、前述した実施の形態では、8心テープ心線1で#4と#5の間にスリット7を有しているが、テープ心線1の心線数は任意、つまり4心テープ、12心テープ、あるいはその他の複数の心線数でも良い。また、スリット7を設ける箇所は、前述した実施の形態のように#4と#5の間に限らず、任意の光ファイバ3の間に設けても良い。また、図3に示されているように、テープ心線1の複数の光ファイバ3の間に窪み部5Aを長手方向に設け、この窪み部5Aに沿ってスリット7を間欠的に設けてもよい。なお、この図3の窪み部5Aは、図1の場合と異なって断面が略V字形状をなしている。もちろん、図1の場合のように窪み部5Aの底部にほぼ平行な首部を形成したものであっても、あるいは、他の形状であってもよい。ちなみに、前述した図2のように隣り合う光ファイバ3の離隔が無し(0mm)の場合では、必然的に窪み部5Aの断面が図3のように略V字形状となる。
【0042】
また、分割に用いる縦裂き用部材としては、前述した縦裂き用線材13の替わりに、縦裂き用線材13の直径と同程度の厚さの縦裂き用板、あるいはその他の形態の分割工具を用いてもよい。
【0043】
さらに加えて、多心のテープ心線1から少心のテープ心線1A,1B,1C,・・・・へ分割可能とするには、次のような条件を満たす窪み部5Aを必要とする。
【0044】
すなわち、光ファイバ3の外径をDmmとし、光ファイバ3の直上にある一括被覆5(テープ化材)の厚さをt1mmとし、窪み部5Aのスリット間隔部9(接着部)における一括被覆5(テープ化材)の最小厚さをt2mmとすると、
0<t2<D+2t1
でなければならない。
【0045】
上記の窪み部5Aがあることで、スリット7を広げてスリット間隔部9(接着部)を切り裂く際に弱い力で分割することができるので、分割時に光ファイバ3に無駄な曲げが加わらなくなる。
【0046】
したがって、上記構成の多心のテープ心線は、目的の光ファイバ3間で分割して心数の少ないテープ心線に分割する際に、適切な分割工具を用いることで、分割時の最大ロス変動を抑えることが可能となる。
【0047】
次に、少心のテープ心線1A,1B,1C,・・・・から単心の光ファイバ3へ分割可能とする光ファイバテープ心線1の条件について説明する。
【0048】
多心のテープ心線1を分割した後の少心のテープ心線1A,1B,1C,・・・・を単心の光ファイバ3に分割可能とするには、光ファイバ3の直上にある一括被覆5の厚さt1は、
0<t1≦0.025
でなければならない。
【0049】
したがって、この実施の形態では、8心のテープ心線1を分割した2本の各4心のテープ心線1A,1Bは、0<t1≦0.025であれば、一括被覆5(テープ化材)が薄い一層のみであるので、一般的に用いられている線材やヤスリなどの単心分割工具で容易に単心の光ファイバ3に分割することが容易である。
【0050】
以上の事柄をより詳しく説明するために、この実施の形態の光ファイバテープ心線1として8心テープ心線を作製し、この8心のテープ心線1を2本の4心のテープ心線1A,1Bに分割した時と、前記4心のテープ心線1A,1Bを単心の光ファイバ3に分割した時の伝送特性のロス変動を測定した。
【0051】
なお、前者の分割に用いる縦裂き用部材(分割工具)としては、直径0.2mmである縦裂き用線材13を用いた工具、剪断を利用した工具が用いられており、後者の分割に用いる分割工具としては、線材を用いた工具、ヤスリを用いた工具、複数の小突起を利用した工具が用いられている。なお、剪断を利用した工具としては、特願2005−222084記載の光ファイバテープユニット分割工具がある。複数の小突起を利用した工具としては、特願2004−210639記載の光ファイバテープ心線の分割工具がある。
【0052】
また、作製した8心テープ心線1における光ファイバ3としては、SMFの光ファイバ、及びSR10相当の光ファイバの2種類が用いられている。なお、SMFとは、JISC6835又はITUT−G652で規定するシングルモード光ファイバである。一方、SR10相当とは、曲げ直径φを20mmとし、10ターン曲げた時の曲げ損失が測定波長1.550μmで0.50dB以下であり、ITUT−G652Bに準拠した光ファイバである。
【0053】
また、窪み部5Aは#4と#5の光ファイバ3の間に長手方向に設けられており、スリット7が前記窪み部5Aに沿って間欠的に設けられている。また、8心テープ心線1のテープ厚は0.255mmであり、テープ幅は1.990mmであり、光ファイバ3の直径Dは0.245mmであり、光ファイバ3の直上にある一括被覆5(テープ化材)の厚さt1は0.005mmであり、窪み部5Aの一括被覆5の最小厚さt2は0.175mmである。
【0054】
また、スリット7の長さAが72mmで、スリット間隔部9の間隔Bが8mmである。したがって、(長さA+間隔B)が80mmで、長さA/(長さA+間隔B)が0.9である。
【0055】
直径0.2mmの線材を用いる場合、
【数7】

【0056】
でなければならない。
【0057】
上記テープ心線は、これらの条件を満たす。
【0058】
以上の8心のテープ心線1に対して、上記の各分割工具を用いて2本の4心のテープ心線1A,1Bに分割した時の伝送特性のロス変動は、表1に示されている通りである。なお、表1の中で、○は分割時のロス変動が1dB以下であることを示すもので、△は分割時のロス変動が1dB以上であるが、分割は可能であることを示すもので、×は分割不可能であることを示すものである。
【表1】

【0059】
表1の結果から分かるように、線材を用いた工具、剪断を利用した工具のいずれも、SMFの光ファイバ3を用いた8心テープ心線1では、結果が○で、分割時のロス変動が1dB以下であった。また、SR10相当の光ファイバ3を用いた8心テープ心線1では、結果が○で、分割時のロス変動が1dB以下であった。
【0060】
したがって、スリット7に適する縦裂き用部材(分割工具)を通してスリット7の長手方向に移動することで、活線分岐の際に光ファイバ3に活線分岐を不可能とするほどの捻りや曲げを生じさせないで、一括被覆5を縦裂きして8心のテープ心線1を4心のテープ心線1A,1Bに容易に分割することができる。その結果、光ファイバ3の伝送特性の劣化や断線を避けることができる。
【0061】
次に、上記の4心のテープ心線1A,1Bに対して、分割工具を用いて単心の光ファイバ3に分割した時の伝送特性のロス変動は、表2に示されている通りである。なお、表2の中で、○は分割時のロス変動が1dB以下であることを示すもので、△は分割時のロス変動が1dB以上であるが、分割は可能であることを示すもので、×は分割不可能であることを示すものである。
【表2】

【0062】
表2の結果から分かるように、線材を用いた工具、ヤスリを用いた工具、複数の小突起を利用した工具のいずれも、SMFの光ファイバ3を用いた4心テープ心線1A,1Bでは、結果が△で、分割時のロス変動が1dB以上であるが、分割は可能であった。また、SR10相当の光ファイバ3を用いた4心テープ心線1A,1Bでは、結果が○で、分割時のロス変動が1dB以下であった。
【0063】
したがって、この実施の形態の光ファイバテープ心線1は一括被覆5(テープ化材)を一層のみで製作できることから、テープ厚を0.25mm程度に薄くすることが可能であった。その結果、4心のテープ心線1A,1Bは一括被覆5(テープ化材)が薄い一層のみであるので、容易に単心の光ファイバ3に分割することができる。
【0064】
ちなみに、従来の特許文献4のように、二層がけで二分割の8心のテープ心線を製作する従来方法では、少心テープ心線の連結用樹脂を取り除かないと、容易に単心に分割することができない。
【0065】
以上のことから、この実施の形態の光ファイバテープ心線1は、以下に示すような効果を奏する。
【0066】
隣接する光ファイバ3間の境目の位置に相当する一括被覆5の位置に、この一括被覆の長手方向にわたって窪み部5Aを設け、この窪み部5Aに沿って設けたスリット7に縦裂き用部材としての例えば縦裂き用線材13を通して前記長手方向に移動することで、活線分岐の際に光ファイバ3に捻りや曲げを生じさせないで、前記窪み部5Aで一括被覆5を縦裂きして容易に少心のテープ心線1A,1B,1C,・・・・に分割することができ、伝送特性の劣化や断線を避けることができる。しかも、窪み部5Aを設けたことで、窪み部5Aが無い場合に比べてより一層容易に分割することができる。
【0067】
また、コートする一括樹脂5(テープ化材)が一層のみであるので、薄いテープ心線1の製作が容易になり、その結果、所謂、多心のテープ心線1を分割した後の少心のテープ心線1A,1B,1C,・・・・のテープ厚が薄いので、単心の光ファイバ3に分割可能で、しかも単心分割の際の作業性を良くすることができる。すなわち、従来の特許文献4のようにテープ化材を二回以上コートして連結用樹脂を設けることで光ファイバ3の分割性の向上を図らなくても、つまり、従来のように二層のテープ化材を設けなくても多心のテープ心線から少心テープ心線への分割、および少心テープ心線から単心光ファイバへの分割が容易になる。
【0068】
また、この実施の形態の光ファイバテープ心線1は、分割前では多心のテープ心線1とほぼ同等のテープ構造であるので、目的の光ファイバ3を識別しやすく、取り扱いも容易である。
【0069】
また、活線分岐に適したスリット7(分離部)の広さ、ピッチ及び一括樹脂5(テープ化材)の厚さを規定したので、適切な分割工具を用いることで、多心のテープ心線1を少心のテープ心線1A,1B,1C,・・・・に分割する時、及び前記少心のテープ心線1A,1B,1C,・・・・を単心の光ファイバ3に分割する時のそれぞれのロス変動を抑えることができる。
【0070】
なお、図1のように窪み部5Aを設けた箇所の互いに隣接する光ファイバ3の間を離隔した一括被覆5に離隔部を設けた場合は、スリット7を設けやすいことと、スリット7に縦裂き用線材13を挿入した時にスリット7に隣接する光ファイバ3の曲げ半径が大きくなるという点で望ましいが、前記離隔部が無くてもよい。すなわち、例えば#4と#5の光ファイバ3同士が接触していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明の実施の形態の光ファイバテープ心線を示す斜視図である。
【図2】図1において縦裂き用部材を挿入したスリットの広がり状態を示す概略的な平面図である。
【図3】この発明の別の実施の形態の光ファイバテープ心線を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
1 光ファイバテープ心線
3 光ファイバ
5 一括被覆
5A 窪み部
7 スリット
9 スリット間隔部
11 引き裂き線
13 縦裂き用線材(縦裂き用部材;分割工具)
A スリット長さ
B スリット間隔
C スリットの幅
D 光ファイバの直径
t1 光ファイバの直上にある一括被覆の厚さ
t2 窪み部の一括被覆の最小厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置した複数本の光ファイバの外周上に一括被覆を設けてなる光ファイバテープ心線において、
隣接する前記光ファイバ間の境目の位置に相当する前記一括被覆の位置に、この一括被覆の長手方向にわたって窪み部を設け、この窪み部に沿って前記一括被覆の厚さ方向に貫通するスリットを間欠的に設け、
前記スリットの長さ及び前記スリット間の間隔の寸法は、前記スリットに縦裂き用部材を通して前記一括被覆の長手方向に移動することで前記一括被覆を縦裂く際に、前記縦裂き用部材で広げられたスリットに隣接する前記光ファイバの曲げ半径が活線分岐を可能とする構成であることを特徴とする光ファイバテープ心線。
【請求項2】
前記縦裂き用部材の幅もしくは直径がXmmであるとき、
Ymm≦スリット長さ<500mm
Ymm<(スリット長さ+スリット間隔)≦500mm
0.01≦スリット長さ/(スリット長さ+スリット間隔)<1
【数1】

であると共に、
光ファイバの外径をD、光ファイバの直上にある一括被覆の厚さをt1としたとき、窪み部の一括被覆の最小厚さt2が、
0<t2<D+2t1
であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバテープ心線。
【請求項3】
前記複数の光ファイバを単心に分割可能とするための前記光ファイバの直上にある一括被覆の厚さt1は、
0<t1≦0.025mm
であることを特徴とする請求項1又は2記載の光ファイバテープ心線。
【請求項4】
並列に配置した複数本の光ファイバの外周上に一括被覆を設けた光ファイバテープ心線にあって、隣接する前記光ファイバ間の境目の位置に相当する前記一括被覆の位置に、一括被覆の長手方向にわたって窪み部を設け、この窪み部に沿って前記一括被覆の厚さ方向に貫通するスリットを間欠的に設け、前記一括被覆の前記スリットに縦裂き用部材を通して前記一括被覆の長手方向に移動することで前記一括被覆を縦裂きすることを特徴とする光ファイバテープ心線の分割方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−163045(P2009−163045A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1278(P2008−1278)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】