説明

光ファイバピグテールおよびそれを用いた光モジュール

【課題】光ファイバ保持部材内での光ファイバの破断を改善し、長期信頼性を有する光ファイバピグテールおよび光素子モジュールを提供する。
【解決手段】光ファイバ保持部材8は、一端部側に形成された第1貫通孔2と、この第1貫通孔2と連なる第1貫通孔2より径の大きい第2貫通孔6と、第1貫通孔2と第2貫通孔6との間に両者をつなぐように形成され、第1貫通孔2から第2貫通孔6に向けて径の拡がっている光ファイバ素線導入口3とを有している。光ファイバ素線導入口3の内部には第1貫通孔と同じ内径の第3貫通孔を有する整列パッド12を備えていて、これによって接着剤溜まりを削減し、接着剤の膨潤によって光ファイバ11が破断し難くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信用送受信器に用いられる光モジュールに内蔵され、LD(レーザダイオード)等の発光素子やPD(フォトダオード)等の受光素子との間で光の導入又は導出を行う光ファイバを保持する部分に用いられる光ファイバピグテールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信用の光モジュールは、益々高速、広帯域化が進んでいる。また、特に長距離系で要求される光モジュールにおいては、より高信頼性であることが要求される。そして、このような光モジュールには、たとえば特許文献1、特許文献2および特許文献3に示されるような光ファイバピグテールが用いられている。
【0003】
図4は、このような従来の光ファイバピグテール500を示す縦断面図である。光ファイバピグテール500は、キャピラリ51とパイプ55とから成る光ファイバ保持部材58と、光ファイバ素線59と光ファイバ被覆60とから成る光ファイバ61と、を備えている。
【0004】
キャピラリ51は、ガラス又はジルコニアセラミックス等の材料から成り、中央に光ファイバ素線59を挿通して保持するための第1貫通孔52が設けられた円筒体である。
【0005】
筒状のパイプ55は、ステンレス合金等の金属からなり、中央に光ファイバ被覆60を挿通して保持するための第2貫通孔56が設けられている。また、一端部にはキャピラリ51を圧入するための座刳り部57が設けられている。
【0006】
キャピラリ51には、光ファイバ素線59を第1貫通孔52に導入するために、第1貫通孔52からパイプ55の第2貫通孔56に向けて径が拡がるように形成された光ファイバ導素線入口53が設けられている。そして、キャピラリ51の光ファイバ素線導入口53が形成された端部側がパイプ55の座刳り部57(キャピラリ51を挿入するようにキャピラリ51の長さ方向に設けられた穴)に圧入されて、光ファイバ保持部材58が形成されている。
【0007】
光ファイバ61の被覆60を除去した光ファイバ素線59部は、光ファイバ保持部材58の第2貫通孔56側から挿入され、光ファイバ素線導入口53で先端が第1貫通孔52に案内されて、第1貫通孔52に挿通される。光ファイバ被覆60の端部がキャピラリ51にほぼ当たる位置で第2貫通孔56及び第1貫通孔52に接着剤が注入され、100℃以下で硬化されて、光ファイバ61が光ファイバ保持部材58に固定される。キャピラリ51の端面から突き出した光ファイバ素線59の先端は切断された後、キャピラリ端面54と共に研磨されて光ファイバピグテール500が作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−220374号公報
【特許文献2】特開平11−125739号公報
【特許文献3】特開2007−17499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図4に示す従来の光ファイバピグテール500では、光ファイバ素線導入口53に接着剤溜まりが形成され、高温高湿試験(温度85℃−湿度85%の雰囲気中に2,000時間放置)において接着剤が膨潤すると、光ファイバ素線59に応力が加わり、光ファイバ素線59が破断する場合があった。
【0010】
本発明の目的は、上述の課題に鑑みて案出されたものであり、光ファイバ素線の耐高温高湿信頼性を改善した光ファイバピグテールおよび光素子モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑みて本発明の一実施形態に係る光ファイバピグテールは、一端部側に形成された第1貫通孔と、他端部側に形成され、前記第1貫通孔と連なる前記第1貫通孔より径の大きい第2貫通孔と、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との間に両者をつなぐように形成され、前記第1貫通孔から前記第2貫通孔に向けて径の拡がっている光ファイバ素線導入口とを有する光ファイバ保持部材と、前記光ファイバ素線導入口の内側に配置され、前記第1貫通孔と同じ内径の第3貫通孔を有する整列パッドと、前記光ファイバ保持部材の前記第2貫通孔から挿入されて、光ファイバ素線が前記第1貫通孔および前記第3貫通孔内に保持された光ファイバと、を具備したことを特徴とする。
【0012】
上記光ファイバピグテールにおいて、前記整列パッドは、前記第3貫通孔に代えて、外周面から中央部にかけて形成されるスリットを有しているのが好ましい。
【0013】
更に、前記光ファイバ保持部材は、前記第1貫通孔を有し前記光ファイバ素線を保持するキャピラリと、前記第2貫通孔を有し、前記キャピラリが一端側に挿入されて保持されるパイプ部とから成るのが好ましい。
【0014】
加えて、前記一端部側の前記第1貫通孔の開口を有する端面には、光学素子が接着されているのが好ましい。
【0015】
また、前記光学素子は、光アイソレータ素子であり、この光アイソレータ素子の周囲の前記一端部側の端面に磁石が接着されているのが好ましい。
【0016】
更に、本発明の光モジュールは、上記いずれかの光ファイバピグテールと、前記光ファイバ保持部材の一端部側が挿入される筒状の第1のホルダを備え、前記一端部側で前記光ファイバと光結合された発光素子を収納するケースと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形態に係る光ファイバピグテールによれば、光ファイバ素線導入口の内側に配置され、第1貫通孔と同じ内径の第3貫通孔を有する整列パッドを具備していることにより、光ファイバ素線導入口に形成される接着剤溜まりの体積を小さくすることができる。その結果、接着剤の膨潤によって光ファイバ素線に加わる応力を緩和することができる。
【0018】
また、整列パッドに外周面から中央部にかけて形成されるスリットを設けておくと、整列パッドの外周面およびスリットに沿わせて光ファイバ素線を整列パッドの中央部に導くことができ、光ファイバ素線の挿通を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は本発明の光ファイバピグテールの実施の形態の一例を示す縦断面図、(b)は光ファイバピグテールに用いられる整列パッドの実施の形態の一例を示す拡大斜視図、(c)は整列パッドの実施の形態の他の例を示す拡大斜視図である。
【図2】本発明の光ファイバピグテールの実施の形態の他の例を示す縦断面図である。
【図3】本発明の光素子モジュールの実施の形態の一例を示す縦断面図である。
【図4】従来の光ファイバピグテールの実施の形態の例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明の光ファイバピグテール100の実施の形態の一例を示すものであり、図1(a)は光ファイバピグテール100の縦断面図、図1(b)は図1(a)の光ファイバピグテール100に用いられる整列パッド12の拡大斜視図、(c)は整列パッド12の他の実施形態例を示す拡大斜視図である。
【0022】
光ファイバ保持部材8は、セラミックス,ガラスまたは金属等から成り、一端面とこれに対向する他端面とを有して、一端面から他端面にかけて貫通孔が形成されている。貫通孔は、一端部側に形成された第1貫通孔2と、第1貫通孔2と連なり、第1貫通孔2より径の大きい第2貫通孔6とを有している。また、光ファイバ保持部材8の一端部に形成された第1貫通孔2とこれに連通するように第1貫通孔2の軸の延長線上に配置された第2貫通孔6との間には、径の異なる第1貫通孔2と第2貫通孔6とを連続的に接続するように第1貫通孔2から第2貫通孔6に向けて径が拡がる光ファイバ素線導入口3が形成されている。
【0023】
この光ファイバ素線導入口3の内側には整列パッド12が配置される。整列パッド12は、光ファイバ保持部材8と同じ材料から成り、図1(b)に示すように、中央軸方向に光ファイバ素線9が挿通される第3貫通孔13を有している。この第3貫通孔13は、第1貫通孔2と同軸に配置され、第1貫通孔2と同じ程度の内径を有している。整列パッド12の外側形状は、光ファイバ素線導入口3の内周面と相似の形状に形成しておくのがよく、例えば光ファイバ素線導入口3の内側に収まる寸法の円錐形状に形成されている。そして、第3貫通孔13が第1貫通孔2と同軸に配置されるようにしておくのがよい。
【0024】
また、整列パッド12には、図1(c)に示すように、外周面から中央部にかけて形成された、または、上記第3貫通孔13の内壁面から外周面に通じるスリット14を設けるのが好ましい。スリット14は、光ファイバ素線9より僅かに広い幅を有している。これによって、光ファイバ素線9をスリット14内に通すのが容易になる。すなわち、光ファイバ素線9を整列パッド12の外周面に沿って移動させ、スリット14の位置に来たときにスリット14内に落とし込むようにして光ファイバ素線9をスリット14内に通せばよい。スリット14を設けない場合は、光ファイバ素線9の先端を第3貫通孔13の開口部位置に合わせ、次に光ファイバ素線9を第3貫通孔13に挿通する細かい作業が必要になるが、スリット14を設けることによりこれを容易に行なうことができる。
【0025】
そして、光ファイバ素線9部に整列パッド12を取り付けた光ファイバ11を光ファイバ保持部材8の第2貫通孔6側から挿入し、光ファイバ素線9の先端が第1貫通孔2から突き出すように光ファイバ11を光ファイバ保持部材8に挿通する。光ファイバ素線9の先端は、光ファイバ素線導入口3によって第1貫通孔2の開口に案内されるので、光ファイバ11を第2貫通孔6および第1貫通孔2に挿通するのはそれ程難しくない。このようにして、光ファイバ11の被覆10が除去された光ファイバ素線部9が第1貫通孔2および第3貫通孔13の内側に保持され、光ファイバ被覆部10は第2貫通孔6内に保持される。整列パッド12は光ファイバ素線導入口3に配置され、光ファイバ素線9部の光ファイバ被覆部10端面側に配置される。
【0026】
その後、第2貫通孔6の開口と光ファイバ11との間の隙間から接着剤を第1貫通孔2まで流し込む。接着剤は、第2貫通孔6の開口部から注入し、第1貫通孔2側から吸引するなどの手段によって第1貫通孔2まで充填されるように注入する。その後、ヒーターや恒温槽などによって100℃以下の高温で接着剤を硬化させる。硬化後、第1貫通孔2から飛び出した余分な光ファイバ素線9を切断して、光ファイバ保持部材8の端面4を光軸に対する垂直面に対し4°〜8°に傾斜する面に研磨して光ファイバピグテール100を形成する。端面4の研磨角度は、光の近端反射を抑止するために設けられるものである。光軸に対する垂直面に対し0°で研磨する場合は、端面4に反射防止膜をコーティングしても良い。
【0027】
このように、本発明の一実施形態に係る光ファイバピグテール100では、光ファイバ素線導入口3に整列パッド12を配置したことで、光ファイバ素線導入口3に形成される約0.13mmの接着剤溜まりのうち約85%を削減することができた。これによって、温度85℃−湿度85%の高温高湿試験条件下等において接着剤溜まりの接着剤が膨潤し、光ファイバ素線9へ加わる応力が緩和されるため、光ファイバ11の破断に至らず、長期信頼性を向上することができる。
【0028】
図2は、本発明の他の実施形態に係る光ファイバピグテール200の縦断面図である。本実施形態における光ファイバ保持部材8は、キャピラリ1とパイプ部5とが組み合わされたもので、パイプ部5の一端側に形成された座刳り部7にキャピラリ1が挿入されている。そして、キャピラリ1とパイプ部5とから成る光ファイバ保持部材8の全体的な形状は、図1(a)に示される光ファイバ保持部材8と同じである。したがって、図2において、図1(a)の光ファイバ保持部材8と共通する機能を有する部分には同じ符号を付している。
【0029】
なお、本実施形態の光ファイバピグテール100においては、光学素子24がキャピラリ1の先端面に、第1貫通孔の開口を覆うように、さらに取り付けられている例を示す。光学素子24は、例えば、光アイソレータ26であり、図2は光アイソレータ26が光ファイバ保持部材8の端面に取り付けられた光アイソレータ付き光ファイバピグテール200の一実施形態を示す。
【0030】
キャピラリ1は外径が1.4mm等の筒状で、セラミックスまたはガラスから成り、中央部軸方向に第1貫通孔2を有している。第1貫通孔2の直径は、光ファイバ素線9の直径0.125mmより僅かに大きい0.1255〜0.1265mmの内径に形成されている。第1貫通孔2の開口部のうち、キャピラリ1の光ファイバ保持部材8に挿入される側に光ファイバ素線導入口3が設けられている。光ファイバ素線導入口3の間口の大きさは、直径約1.0mmで第1貫通孔2の軸方向との間の角度が約45°で端面に向けて拡大する円錐形状を成している。この第1貫通孔2の軸方向との間の角度としては、約45°の他、約30°も使用される。
【0031】
パイプ部5は、ステンレス合金等の金属から成り、中央部軸方向に第2貫通孔6を有している。第2貫通孔6の直径は、光ファイバ被覆10の直径0.9mmより僅かに大きい約1.0mm程度に形成されている。パイプ部5の一端には、キャピラリ1を圧入するための座刳り部7が第2貫通孔6と同軸に設けられている。座刳り部7は、第2貫通孔6の内径より大きな内径を有する円柱形状に形成されており、この座刳り部7にキャピラリ1の光ファイバ素線導入口3側端部が圧入されて、光ファイバ保持部材8が形成されている。
【0032】
そして、光ファイバ保持部材8に、先端の被覆10を除去し、光ファイバ素線9が露出された光ファイバ11を第2貫通孔6側から挿入する。光ファイバ11の光ファイバ素線9には、上記図1(c)に示す整列パッド12を光ファイバ保持部材8に挿入する前に予め取り付けておく。そして、光ファイバ素線9の先端がキャピラリ1の第1貫通孔2から突出するまで光ファイバ11をパイプ部5およびキャピラリ1の内部に挿入する。最後に、図1(a)の光ファイバ保持部材8と同様に接着剤を注入して光ファイバ11を固定し、光ファイバピグテール200が完成する。
【0033】
また、必要に応じて光ファイバピグテール200に光学素子を取り付ける。図2において、光アイソレータ素子24は、偏光子21、ファラデー回転子22、検光子23から成る例を示している。偏光子21と検光子23の透過偏波面の角度は45°となるよう予め回転調芯された後、各々接着剤によりファラデー回転子22に貼り合わされ、その後光アイソレータ素子24の所定の大きさに裁断されて形成されたものである。光アイソレータ素子24の入射面および出射面は、キャピラリ8端面4の例えば傾斜角8°の面に平行に設置されるので、光軸に対して傾斜角8°の面となる。図2に示すように、光アイソレータ素子24の側面(入射面と出射面との間の面)は、光アイソレータ素子24を傾斜面に設置した際に、光軸に対して平行になるように形成しておくと、光アイソレータ素子24をコンパクトに収容することができる。また、入射面と側面とが成す角度から、透過偏波面の方向を見分けることができる。
【0034】
ファラデー回転子22に磁界を印加する円筒型の磁石25は、外径が一般に使用される光ファイバ保持部材8の外径の最小径である直径2mmと同じかそれ以下に設定されるのが好ましい。このような磁石25が、筒の内側に配置される光アイソレータ素子24を取り囲むようにパイプ5の端面に接着剤により固定される。そして、光アイソレータ素子24と磁石25とで光アイソレータ26が構成される。このように、光アイソレータ付き光ファイバピグテール200は、光ファイバピグテール200において、高温高湿試験条件下における光ファイバ破断が生じ難く、長期信頼性を改善できる。
【0035】
図3は、本発明の光素子モジュール300の一実施形態を示す縦断面図である。本発明の一実施形態に係る光素子モジュール300は、LD等の発光素子31、レンズ32、ステム33、電子冷却素子34からなる光学ユニット35と、光学ユニット35を収容するケース36と、光ファイバピグテール200を保持する第1のホルダ37と、第1のホルダに一端部側が挿入されて固定された光ファイバピグテール200とを備えている。なお、ケース36には、モニタ用PD(フォトダイオード)等が収納される場合もあるが、これらモニタ用PDおよびその配線用リード線等は省略して示している。
【0036】
光学ユニット35は、発光素子31を半田によりステム33上に搭載固定し、発光素子31の出射光を集光するレンズ32をステム33上に半田またはYAGレーザにより搭載し、ステム33を電子冷却素子34上に半田により搭載固定することによって形成される。この光学ユニット35は、ケース36内に収容して半田等により固定されている。
【0037】
また、光ファイバピグテール200は、光ファイバ保持部材8を第1のホルダ37に挿入して、第1のホルダ37のフランジ部37aをケース36に具備されたステンレス合金またはFe−Ni合金からなる第2のホルダ38に面合わせをする。次に、第1のホルダ37および光ファイバピグテール200をXYZ方向に調整し、光学ユニット35から出射された光信号が光ファイバピグテール200の光ファイバ11と光結合するように位置を調整した後、第1のホルダ37のフランジ部37aを第2のホルダ38に、光ファイバピグテール200の光ファイバ保持部材8を第1のホルダ37にYAGレーザにより溶接することによって光素子モジュール300が完成する。このような光素子モジュール300は、光ファイバピグテール200を備えているため、高温高湿試験条件下における光ファイバ破断が生じ難く、長期信頼性を改善できる。
【実施例】
【0038】
図2に示す光ファイバピグテール200を作製した。
【0039】
外径1.4mm、長さ3mmのジルコニアセラミックスから成るキャピラリ1を作製した。キャピラリ1は、中心軸位置に直径0.126mmの第1貫通孔2と、光ファイバ素線9が導入される側の一端に間口約1.0mmで第1貫通孔2の軸方向と成す角度が約45°の円錐形状の光ファイバ素線導入口3が設けられている。
【0040】
ステンレス合金から成るパイプ5には、外径2.0mm、長さ10mm、中心軸方向に直径1.0mmの第2貫通孔6と、キャピラリ1が圧入される一端に深さ2mm−直径1.4mmの座刳り部7を設けた。そして、パイプ5の座刳り部7にキャピラリ1の光ファイバ素線導入口3側を圧入して光ファイバ保持部材8を作製した。
【0041】
整列パッド12は、キャピラリ1と同じジルコニアセラミックス製で、底面の外径1.0mm、頂点角度が90°の円錐形状とし、底面の中央部から頂点に向けて直径0.126mmの第3貫通孔13を開け、その第3貫通孔13から外周面にかけて第3貫通孔13の直径と同じ幅のスリット14を設けた。
【0042】
光ファイバ11は、外径0.9mm、長さ約1mの光ファイバ被覆10の一端を約20mm程、被覆除去して光ファイバ素線9部を作った。
【0043】
整列パッド12の底面側を光ファイバ被覆10側に向け、光ファイバ素線9の側方からスリット14を通して光ファイバ素線9に整列パッド12を装着した。次に、光ファイバ保持部材8の第2貫通孔6側から光ファイバ素線9を挿通した。整列パッド12が光ファイバ素線導入口3に嵌め込まれ、光ファイバ被覆10が整列パッド12に当たって止まるところで光ファイバ11を保持した状態で、接着剤を第2貫通孔6側から注入した。同時に、キャピラリ1端面4側から吸引して光ファイバ保持部材8の第2貫通孔6から第1貫通孔1にかけて内側全域に接着剤が充填されるようにした。その後、80℃の恒温槽に投入し、接着剤を硬化させた。
【0044】
接着剤硬化後、キャピラリ1端面4から飛び出た余分な光ファイバ素線9を切断して、キャピラリ1端面4を8°に斜め研磨し、光ファイバピグテール100を完成した。
【0045】
従来の光ファイバピグテール500と本実施例による光ファイバピグテール200とを温度85℃、湿度85%の高温高湿試験機に投入し、光ファイバ保持部材8内の光ファイバ素線導入口3での光ファイバ破断発生率を確認した。光ファイバ破断は、光ファイバに光を導入して、破断があれば反射率と位置を特定できるプレシジョンリフレクトメータによって確認した。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
従来の光ファイバピグテール500は、2,000時間の85℃−85%高温高湿試験機投入後に光ファイバ破断が約50%の確立で発生するのに対し、本実施例の光ファイバピグテール200では、光ファイバ11の破断発生率ゼロの結果を得た。光ファイバ素線導入口3に整列パッド12を設けたことで、光ファイバ素線導入口3位置における接着剤溜まりの体積を従来より大幅に削減し、高温高湿条件下で発生する接着剤の膨潤による光ファイバ素線9への応力が緩和されたので、光ファイバ11の破断を防止することができたものと思われる。
【符号の説明】
【0048】
1…キャピラリ
2…第1貫通孔
3…光ファイバ素線導入口
5…パイプ
6…第2貫通孔
7…座刳り部
8…光ファイバ保持部材
9…光ファイバ素線
10…光ファイバ被覆
11…光ファイバ
12…整列パッド
13…第3貫通孔
14…スリット
21…偏光子
22…ファラデー回転子
23…検光子
24…光アイソレータ素子
25…磁石
26…光アイソレータ
31…発光素子または受光素子
32…レンズ
33…ステム
34…電子冷却素子
35…光学ユニット
36…ケース
37…第1のホルダ
37a…フランジ部
38…第2のホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部側に形成された第1貫通孔と、他端部側に形成された、前記第1貫通孔と連なる前記第1貫通孔より径の大きい第2貫通孔と、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との間に両者をつなぐように形成され、前記第1貫通孔から前記第2貫通孔に向けて径の拡がっている光ファイバ素線導入口とを有する光ファイバ保持部材と、
前記光ファイバ素線導入口の内側に配置され、前記第1貫通孔と同じ内径の第3貫通孔を有する整列パッドと、
前記光ファイバ保持部材の前記第2貫通孔から挿入されて、光ファイバ素線が前記第1貫通孔および前記第3貫通孔内に保持された光ファイバと
を具備したことを特徴とする光ファイバピグテール。
【請求項2】
前記整列パッドは、前記第3貫通孔に代えて、外周面から中央部にかけて形成されたスリットを有していることを特徴とする請求項1記載の光ファイバピグテール。
【請求項3】
前記光ファイバ保持部材は、前記第1貫通孔を有し前記光ファイバ素線を保持するキャピラリと、前記第2貫通孔を有し、前記キャピラリが一端部に挿入されて保持されるパイプ部とから成ることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバピグテール。
【請求項4】
前記一端部側の前記第1貫通孔の開口を有する端面には、前記第1貫通孔の開口を覆うように光学素子が接着されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバピグテール。
【請求項5】
前記光学素子は、光アイソレータ素子であり、該光アイソレータ素子の周囲の前記一端部側の端面に磁石が接着されていることを特徴とする請求項4記載の光ファイバピグテール。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の光ファイバピグテールと、
前記光ファイバ保持部材の一端部側が挿入される筒状の第1のホルダを備え、前記一端部側で前記光ファイバと光結合された発光素子を収納するケースと
を備えた光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−248048(P2011−248048A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120394(P2010−120394)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】