光ファイバ伝送システム及び光受信装置
【課題】本発明は、マルチモード光ファイバ伝送における長距離伝送を実現する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、光信号を送信する1個の光送信機1と、光信号を受信するM個(Mは2以上の整数)の光受信機2と、1個の光送信機1が送信した光信号を伝搬し、P個(Pは2以上の整数かつM以下の整数)の伝搬モードを有する光ファイバ3と、光ファイバ3が伝搬した光信号をM個の光受信機2に分波する分波器4と、各光受信機2が受信した光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償するFIRフィルタ装置5と、を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【解決手段】本発明は、光信号を送信する1個の光送信機1と、光信号を受信するM個(Mは2以上の整数)の光受信機2と、1個の光送信機1が送信した光信号を伝搬し、P個(Pは2以上の整数かつM以下の整数)の伝搬モードを有する光ファイバ3と、光ファイバ3が伝搬した光信号をM個の光受信機2に分波する分波器4と、各光受信機2が受信した光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償するFIRフィルタ装置5と、を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ伝送の群遅延差を補償する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ伝送システムでは、光ファイバ中で発生する非線形効果やファイバヒューズが問題となり、伝送の大容量化が制限されている。これらの制限を緩和するためには、光ファイバに導波する光の密度を低減する必要があり、非特許文献1、2に示すように大コアファイバが検討されている。
【0003】
しかし、曲げ損失低減、単一モード動作領域の拡大、実効断面積の拡大は互いにトレードオフの関係にあり、所定の条件下における実効断面積の拡大量には限界があるという課題があった。そこで、伝送路をマルチモード光ファイバとし、Finite inpulse response(FIR)フィルタと適応等化技術を用いて、光ファイバ中で発生するモード分散を補償する試みが行われている(例えば、非特許文献3参照)。
【0004】
これにより、先に述べた大コア光ファイバで制限要因であった単一モード動作条件が不要になるため、さらなる大コア化及び大容量化が可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T.Matsui,K.Nakajima and C.Fukai,“Applicability of Photonic Crystal Fiber With Uniform Air−Hole Structure to High−Speed and Wide−Band Transmission Over Conventional Telecommunication Bands”,J.Lightwave Technol.27,5410−5416,2009.
【非特許文献2】K.Mukasa,K.Imamura,R.Sugizaki and T.Yagi,“Comparisons of merits on wide−band transmission systems between using extremely improved solid SMFs with Aeff of 160μm2 and loss of 0.175dB/km and using large−Aeff holey fibers enabling transmission over 600nm bandwidth”,the Proceedings of OFC2008,OthR1,Feb.2008.
【非特許文献3】X.Zhao and F.S.Choa,“Demonstration of 10−Gb/s transmissions over a 1.5−km−long multimode fiber using equalization techniques”,IEEE Photonics Technology Letters,vol.14,pp.1187−1189,2002.
【非特許文献4】M.Taylor,“Coherent Detection for Fiber Optic Communications Using Digital Signal Processing”,in Optical Amplifiers and Their Applications/Coherent Optical Technologies and Applications,Technical Digest(CD)(Optical Society of America,2006),paper CThB1.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、伝送距離の長距離化に伴ってモード間の群遅延差が増大し、FIRフィルタによる信号の復元が困難になり、伝送距離が数kmに制限されることが問題となっている。
【0007】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、マルチモード光ファイバ伝送における長距離伝送を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、光送信機の個数が1個であるときに、光受信機の個数をマルチモード光ファイバの伝搬モード数以上となるようにし、FIRフィルタを利用してマルチモード光ファイバ伝送の群遅延差を補償することとした。これにより、FIRフィルタにおいて、タップ数を削減したとしても、マルチモード光ファイバ伝送において、群遅延差を補償することができ、長距離伝送を実現することができる。
【0009】
具体的には、本発明は、光信号をP個(Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバに送出する1個の光送信機と、前記光信号を受信するM個(Mは2以上の整数かつP以上の整数)の光受信機と、前記光ファイバが伝搬した前記光信号を前記M個の光受信機に分波する分波器と、各光受信機が受信した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する群遅延差補償装置と、を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【0010】
また、本発明は、光信号を送信する1個の光送信機と、前記光信号を受信するM個(Mは2以上の整数)の光受信機と、前記1個の光送信機が送信した前記光信号を伝搬し、P個(Pは2以上の整数かつM以下の整数)の伝搬モードを有する光ファイバと、前記光ファイバが伝搬した前記光信号を前記M個の光受信機に分波する分波器と、各光受信機が受信した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する群遅延差補償装置と、を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【0011】
また、本発明は、光信号を送信する1個の光送信機から、送信後の前記光信号を伝搬しP個(Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバを介して、伝搬後及び分波後の前記光信号を受信するM個(Mは2以上の整数かつP以上の整数)の光受信機と、各光受信機が受信した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する群遅延差補償装置と、を備えることを特徴とする光受信装置である。
【0012】
この構成によれば、光送信機の個数が1個であるときに、光受信機の個数をマルチモード光ファイバの伝搬モード数以上とするため、FIRフィルタにおいて、タップ数を削減したとしても、マルチモード光ファイバ伝送において、群遅延差を補償することができ、長距離伝送を実現することができる。
【0013】
また、本発明は、各光受信機が受信した前記光信号の群遅延差をDとし、前記1個の光送信機が送信した前記光信号の1シンボル時間をTとするとき、前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、D/T個以下の前記遅延素子及びD/T個以下の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【0014】
また、本発明は、各光受信機が受信した前記光信号の群遅延差をDとし、前記1個の光送信機が送信した前記光信号の1シンボル時間をTとするとき、前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、D/T個以下の前記遅延素子及びD/T個以下の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする光受信装置である。
【0015】
この構成によれば、FIRフィルタにおいて、タップ数を削減することができる。
【0016】
また、本発明は、前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、1個の前記遅延素子及び1個の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【0017】
また、本発明は、前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、1個の前記遅延素子及び1個の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする光受信装置である。
【0018】
この構成によれば、FIRフィルタにおいて、タップ数をより削減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、マルチモード光ファイバ伝送における長距離伝送を実現する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】FIRフィルタ装置を利用して、複数のモードの間の群遅延差を補償する、光ファイバ伝送システム及び光受信装置の構成を示す図である。
【図2】FIRフィルタ装置の構成を示す図である。
【図3】タップ係数を更新するための適応等化アルゴリズムを示す図である。
【図4】タップ係数を更新するためのトレーニングシンボルを示す図である。
【図5】FIRフィルタ装置を利用して、光送信機が1個であり光受信機が1個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差0.5nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図6】FIRフィルタ装置を利用して、光送信機が1個であり光受信機が1個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差1nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図7】FIRフィルタ装置を利用して、光送信機が1個、光受信機が1個、光ファイバの伝搬モード数が2個、それらのモードの間の群遅延差が1nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図8】光送信機が1個、光受信機が2個又は3個、光ファイバの伝搬モード数が2個、それらのモードの間の群遅延差が1nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図9】光送信機が1個、光受信機が2個、光ファイバの伝搬モード数が2個、タップ数が1個であるときに、それらのモードの間の群遅延差及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図10】光送信機が1個、光受信機が2個又は3個、光ファイバの伝搬モード数が3個、それらのモードの間の群遅延差が1ns、2nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図11】光送信機が1個、光受信機が3個又は4個、光ファイバの伝搬モード数が4個、それらのモードの間の群遅延差が1ns、2ns、3nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0022】
(FIRフィルタ装置を利用する群遅延差補償)
FIRフィルタ装置を利用して、複数のモードの間の群遅延差を補償する、光ファイバ伝送システム及び光受信装置の構成を図1に示す。光ファイバ伝送システムは、光送信機1、光受信機2−1、2−2、・・・、2−M、光ファイバ3、分波器4及びFIRフィルタ装置5から構成される。光受信装置Rは、光受信機2−1、2−2、・・・、2−M及びFIRフィルタ装置5から構成される。
【0023】
光送信機1は、光信号x(n)を送信する。ここで、光信号x(n)はn番目のシンボルとして送信される光信号である。
【0024】
光受信機2−1、2−2、・・・、2−Mは、それぞれ光信号y1(n)、y2(n)、・・・、yM(n)を受信する。ここで、Mは2以上の整数であり、光信号y1(n)、y2(n)、・・・、yM(n)はn番目のシンボルとして受信される光信号である。
【0025】
光ファイバ3は、光送信機1が送信した光信号を伝搬し、P個の伝搬モードを有する。ここで、Pは2以上の整数かつM以下の整数である。分波器4は、光ファイバ3が伝搬した光信号を光受信機2−1、2−2、・・・、2−Mに分波する。
【0026】
FIRフィルタ装置5は、群遅延差補償装置として、光受信機2−1、2−2、・・・、2−Mがそれぞれ受信した光信号y1(n)、y2(n)、・・・、yM(n)について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償し、光信号u(n)を復元する。ここで、光信号u(n)は、n番目のシンボルとして復元される光信号である。
【0027】
受信信号y1(n)、y2(n)、・・・、yM(n)は、複数のモードの間の群遅延差を包含する可能性がある。復元信号u(n)は、複数のモードの間の群遅延差を補償されていることが望ましく、送信信号x(n)と一致していることが望ましい。
【0028】
FIRフィルタ装置の構成を図2に示す。FIRフィルタ装置5は、FIRフィルタ51−1、51−2、・・・、51−M及び合波器52から構成される。
【0029】
FIRフィルタ51−1、51−2、・・・、51−Mは、それぞれ受信信号y1(n)、y2(n)、・・・、yM(n)を入力し、それぞれ光信号z1(n)、z2(n)、・・・、zM(n)を生成する。合波器52は、光信号z1(n)、z2(n)、・・・、zM(n)を合波し、復元信号u(n)を生成する。
【0030】
FIRフィルタ51−1、51−2、・・・、51−Mは、それぞれ1番目からL番目までのタップから構成される。1番目からL番目までのタップは、それぞれ遅延素子(図2ではτで示す)及び振幅位相調整器(図2ではwで示す)から構成される。遅延素子は、遅延時間を調整し、振幅位相調整器は、振幅及び位相を調整する。図2では、直接形のFIRフィルタを利用しているが、転置形のFIRフィルタを利用してもよい。
【0031】
受信信号yB(n)についてのi番目のタップにおいて、遅延素子での遅延時間をτiとし、振幅位相調整器でのタップ係数をwB(i)とする。遅延時間τi及びタップ係数wB(i)を調整することにより、光ファイバ3中で発生するモード分散、波長分散、偏波モード分散などによる信号劣化を補償することができる。局発光源、90°ハイブリッド、バランスレシーバ、アナログデジタルコンバータを利用することにより、受信信号y1(n)、y2(n)、・・・、yM(n)の電界の振幅及び位相の情報を取得することができる(例えば、非特許文献4参照)。
【0032】
タップ係数を更新するための適応等化アルゴリズムを図3に示す。タップ係数を更新するためのトレーニングシンボルを図4に示す。送信信号xは、前段にトレーニングシンボルx(1)、・・・、x(Ntraining)を有し、後段にデータ部x(Ntraining+1)、・・・、x(Nall)を有する。ここで、Ntraining>Lである必要がある。光受信装置Rは、データ部x(Ntraining+1)、・・・、x(Nall)を未知とするが、トレーニングシンボルx(1)、・・・、x(Ntraining)は既知とするため、以下のようにタップ係数を更新することができる。
【0033】
まず、トレーニングシンボルを受信中であり、n≦Ntrainingであるときについて説明する。FIRフィルタ装置5は、既に設定されたタップ係数を利用することにより、受信信号y(n)を復元信号u(n)に変換する。減算器7は、復元信号u(n)及び既知のトレーニング信号x(n)の差分を生成することにより、誤差信号e(n)を生成する。適応等化アルゴリズム6は、誤差信号e(n)を小さくするように、タップ係数を更新する。この処理を、すべてのトレーニングシンボルについて繰り返す。
【0034】
次に、データ部を受信中であり、n≧Ntraining+1であるときについて説明する。タップ係数の設定は、トレーニングシンボルの受信中に完了している。FIRフィルタ装置5は、既に設定されたタップ係数を利用することにより、受信信号y(n)を復元信号u(n)に変換する。この処理を、すべてのデータ部について繰り返す。
【0035】
なお、適応等化アルゴリズムには、非特許文献2に記載のLeast mean square(LMS)アルゴリズムやRecursive least square(RLS)アルゴリズムを利用することができる。
【0036】
FIRフィルタ装置5を利用して、光送信機1が1個であり光受信機2が1個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差D=0.5nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を図5に示す。FIRフィルタ装置5を利用して、光送信機1が1個であり光受信機2が1個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差D=1nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を図6に示す。
【0037】
図5及び図6において、送受信信号は、10GbpsのBinary phase shift keying(BPSK)変調されたNon return to zero(NRZ)信号の4096bit分である。光ファイバ3の伝搬モード数は2個であり、基本モード及び高次モードがそれぞれ2:1の割合で励振される。Ntrainingは400とし、Lは20とする。τiは10Gbpsのシンボル長T=0.1nsを単位とし、τ1=0、τ2=0.1ns、τ3=0.1×2ns、・・・、τL=0.1×(L−1)nsとする。適応等化アルゴリズムにはRLSを用いる。RLSにおけるステップサイズ及び忘却係数は、それぞれ0.001及び1とする。
【0038】
基本モード及び高次モードの間の群遅延差がD=0.5nsである図5の場合について説明する。図5の左上には、送信信号x(n)のコンスタレーションマップを示す。図5の右上には、受信信号y(n)のコンスタレーションマップを示す。受信信号y(n)は、モード分散に起因して、送信信号x(n)を正しく反映していない。図5の左下には、復元信号u(n)のコンスタレーションマップを示す。復元信号u(n)は、FIRフィルタ装置5を利用することにより、送信信号x(n)を正しく復元している。図5の右下には、タップ番号及びタップ係数の絶対値の間の関係を示す。タップ係数の絶対値は、周期的に大きな値を取っており、遅延時間が群遅延差D=0.5nsの整数倍に相当するタップ番号のタップ係数が、復元に大きく寄与していることが分かる。
【0039】
基本モード及び高次モードの間の群遅延差がD=1nsである図6の場合について説明する。図6の左上には、送信信号x(n)のコンスタレーションマップを示す。図6の右上には、受信信号y(n)のコンスタレーションマップを示す。受信信号y(n)は、モード分散に起因して、送信信号x(n)を正しく反映していない。図6の下段には、復元信号u(n)のコンスタレーションマップを示す。復元信号u(n)は、FIRフィルタ装置5を利用しているとしても、送信信号x(n)を正しく復元していない。復元の精度を向上させるためには、D/Tの数倍程度にLを設定する必要があることが分かる。
【0040】
FIRフィルタ装置5を利用して、光送信機1が1個、光受信機2が1個、光ファイバ3の伝搬モード数が2個、それらのモードの間の群遅延差が1nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を図7に示す。シミュレーション条件は、タップ数以外は、図6及び図7において同様である。
【0041】
EVM値とは、コンスタレーション上での送信信号x(n)と復元信号u(n)との距離の絶対値を、コンスタレーション上での送信信号x(n)の原点からの距離の絶対値で除したものである。つまり、EVM値が小さいならば、精度良く復元できていることになる。ここで、LをD/Tと比較して十分大きくすることにより、精度良く復元できる。しかし、Lを大きくすることにより、適応等化アルゴリズム6における計算量が増大するため、マルチモード光ファイバを用いた長距離伝送の実現が困難となっている。
【0042】
(光受信機数及び伝搬モード数の大小関係)
一般的には、FIRフィルタ及び適応等化を用いた復元では、光受信機2の数Mを増やすと、復元の精度を向上させることができる。本発明では、光受信機2の数Mを伝搬モードの数P以上に増やすと、タップ数を削減しても復元の精度を向上させることができる。
【0043】
光送信機1が1個、光受信機2が2個又は3個、光ファイバ3の伝搬モード数が2個、それらのモードの間の群遅延差が1nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を図8に示す。
【0044】
図8の左側は、光受信機2が2個である場合を示す。基本モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれ1:1の割合で分波され、高次モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれ3:2の割合で分波される。他の条件は、図7と同様である。タップ数がD/T=10以下であっても1であっても、復元の精度が向上している。
【0045】
図8の右側は、光受信機2が3個である場合を示す。基本モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ4:3:3の割合で分波され、高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ5:3:2の割合で分波される。他の条件は、図7と同様である。タップ数がD/T=10以下であっても1であっても、復元の精度が向上している。
【0046】
光送信機1が1個、光受信機2が2個、光ファイバ3の伝搬モード数が2個、タップ数が1個であるときに、それらのモードの間の群遅延差及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を図9に示す。他の条件は、図8の左側と同様である。群遅延差Dの増加に対して復元信号のEVM値は低い値を維持しており、マルチモード光ファイバの伝送距離を拡大した場合においても、精度良く復元できることを示している。
【0047】
光送信機1が1個、光受信機2が2個又は3個、光ファイバ3の伝搬モード数が3個、それらのモードの間の群遅延差が1ns、2nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を図10に示す。ここで、基本モード及び第1高次モードの間の群遅延差がD1=1nsであり、基本モード及び第2高次モードの間の群遅延差がD2=2nsである。そして、基本モード、第1高次モード及び第2高次モードが、それぞれ10:5:4の割合で励振される。
【0048】
図10の左側は、光受信機2が2個である場合を示す。基本モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれ1:1の割合で分波され、第1高次モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれ3:2の割合で分波され、第2高次モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれ4:1の割合で分波される。他の条件は、図9と同様である。光受信機数が伝搬モード数より小さく、タップ数がD1/T=10と同等でなければ、復元の精度が向上しない。
【0049】
図10の右側は、光受信機2が3個である場合を示す。基本モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ4:3:3の割合で分波され、第1高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ5:3:2の割合で分波され、第2高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ6:2:2の割合で分波される。他の条件は、図9と同様である。光受信機数が伝搬モード数と等しいため、タップ数がD1/T=10やD2/T=20以下であっても1であっても、復元の精度が向上している。
【0050】
光送信機1が1個、光受信機2が3個又は4個、光ファイバ3の伝搬モード数が4個、それらのモードの間の群遅延差が1ns、2ns、3nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を図11に示す。ここで、基本モード及び第1高次モードの間の群遅延差がD1=1nsであり、基本モード及び第2高次モードの間の群遅延差がD2=2nsであり、基本モード及び第3高次モードの間の群遅延差がD3=3nsである。そして、基本モード、第1高次モード、第2高次モード及び第3高次モードが、それぞれ10:5:4:3の割合で励振される。
【0051】
図11の左側は、光受信機2が3個である場合を示す。基本モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ4:3:3の割合で分波され、第1高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ5:3:2の割合で分波され、第2高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ6:2:2の割合で分波され、第3高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ7:2:1の割合で分波される。他の条件は、図9と同様である。光受信機数が伝搬モード数より小さく、タップ数がD1/T=10と同等でなければ、復元の精度が向上しない。
【0052】
図11の右側は、光受信機2が4個である場合を示す。基本モードが光受信機2−1、2−2、2−3、2−4にそれぞれ4:2:2:2の割合で分波され、第1高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3、2−4にそれぞれ5:2:1:1の割合で分波され、第2高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3、2−4にそれぞれ3:2:4:1の割合で分波され、第3高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3、2−4にそれぞれ2:2:3:3の割合で分波される。他の条件は、図9と同様である。光受信機数が伝搬モード数と等しいため、タップ数がD1/T=10やD2/T=20やD3/T=30以下であっても1であっても、復元の精度が向上している。
【0053】
光受信機数が伝搬モード数以上であるときに、タップ数がたとえ1であっても、復元の精度が向上する理由について、以下に説明する。
【0054】
まず、光送信機1が1個、光受信機2が1個、伝搬モード数が2個であるときについて説明する。光受信機2における受信信号Rは、基本モードの光信号E1及び高次モードの光信号E2を含んでおり、受信信号Rは数式1のように表される。
【数1】
E1及びE2についての方程式は1つしか存在しないため、所望の基本モードの光信号E1を求めることは不可能である。よって、タップ数を十分に確保する必要がある。
【0055】
次に、光送信機1が1個、光受信機2が2個、伝搬モード数が2個であるときについて説明する。基本モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれa:bの割合で分波されるとし、高次モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれa’:b’の割合で分波されるとすると、光受信機2−1、2−2における受信信号R1、R2は数式2のようになる。
【数2】
ここで、一般に用いられる分波器4であるマルチモードカプラは、伝搬モード毎に異なる分岐比を与える。そして、E1及びE2についての方程式は2つ存在するため、所望の基本モードの光信号E1を求めることが可能である。よって、タップ数が1個であっても、復元の精度が向上する。なお、マルチモードカプラの分岐比が既知であるならば、数式2の逆行列も既知であるが、マルチモードカプラの分岐比が既知でなくても、適応等化アルゴリズム6を利用して数式2の逆行列を推定することができる。
【0056】
次に、光送信機1が1個、光受信機2が3個、伝搬モード数が3個であるときについて説明する。基本モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれa:b:cの割合で分波されるとし、第1高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれa’:b’:c’の割合で分波されるとし、第2高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれa’’:b’’:c’’の割合で分波されるとすると、光受信機2−1、2−2、2−3における受信信号R1、R2、R3は数式3のようになる。
【数3】
この場合も上の場合と同様に、所望の基本モードの光信号E1を求めることが可能である。よって、タップ数が1個であっても、復元の精度が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る光ファイバ伝送システム及び光受信装置は、光ファイバ中で発生する非線形効果やファイバヒューズを低減しつつ、伝送容量を大容量化し伝送距離を長距離化する、光ファイバ伝送において適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
R:光受信装置
1:光送信機
2、2−1、2−2、2−M:光受信機
3:光ファイバ
4:分波器
5:FIRフィルタ装置
6:適応等化アルゴリズム
7:減算器
51、51−1、51−2、51−M:FIRフィルタ
52:合波器
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ伝送の群遅延差を補償する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ伝送システムでは、光ファイバ中で発生する非線形効果やファイバヒューズが問題となり、伝送の大容量化が制限されている。これらの制限を緩和するためには、光ファイバに導波する光の密度を低減する必要があり、非特許文献1、2に示すように大コアファイバが検討されている。
【0003】
しかし、曲げ損失低減、単一モード動作領域の拡大、実効断面積の拡大は互いにトレードオフの関係にあり、所定の条件下における実効断面積の拡大量には限界があるという課題があった。そこで、伝送路をマルチモード光ファイバとし、Finite inpulse response(FIR)フィルタと適応等化技術を用いて、光ファイバ中で発生するモード分散を補償する試みが行われている(例えば、非特許文献3参照)。
【0004】
これにより、先に述べた大コア光ファイバで制限要因であった単一モード動作条件が不要になるため、さらなる大コア化及び大容量化が可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T.Matsui,K.Nakajima and C.Fukai,“Applicability of Photonic Crystal Fiber With Uniform Air−Hole Structure to High−Speed and Wide−Band Transmission Over Conventional Telecommunication Bands”,J.Lightwave Technol.27,5410−5416,2009.
【非特許文献2】K.Mukasa,K.Imamura,R.Sugizaki and T.Yagi,“Comparisons of merits on wide−band transmission systems between using extremely improved solid SMFs with Aeff of 160μm2 and loss of 0.175dB/km and using large−Aeff holey fibers enabling transmission over 600nm bandwidth”,the Proceedings of OFC2008,OthR1,Feb.2008.
【非特許文献3】X.Zhao and F.S.Choa,“Demonstration of 10−Gb/s transmissions over a 1.5−km−long multimode fiber using equalization techniques”,IEEE Photonics Technology Letters,vol.14,pp.1187−1189,2002.
【非特許文献4】M.Taylor,“Coherent Detection for Fiber Optic Communications Using Digital Signal Processing”,in Optical Amplifiers and Their Applications/Coherent Optical Technologies and Applications,Technical Digest(CD)(Optical Society of America,2006),paper CThB1.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、伝送距離の長距離化に伴ってモード間の群遅延差が増大し、FIRフィルタによる信号の復元が困難になり、伝送距離が数kmに制限されることが問題となっている。
【0007】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、マルチモード光ファイバ伝送における長距離伝送を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、光送信機の個数が1個であるときに、光受信機の個数をマルチモード光ファイバの伝搬モード数以上となるようにし、FIRフィルタを利用してマルチモード光ファイバ伝送の群遅延差を補償することとした。これにより、FIRフィルタにおいて、タップ数を削減したとしても、マルチモード光ファイバ伝送において、群遅延差を補償することができ、長距離伝送を実現することができる。
【0009】
具体的には、本発明は、光信号をP個(Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバに送出する1個の光送信機と、前記光信号を受信するM個(Mは2以上の整数かつP以上の整数)の光受信機と、前記光ファイバが伝搬した前記光信号を前記M個の光受信機に分波する分波器と、各光受信機が受信した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する群遅延差補償装置と、を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【0010】
また、本発明は、光信号を送信する1個の光送信機と、前記光信号を受信するM個(Mは2以上の整数)の光受信機と、前記1個の光送信機が送信した前記光信号を伝搬し、P個(Pは2以上の整数かつM以下の整数)の伝搬モードを有する光ファイバと、前記光ファイバが伝搬した前記光信号を前記M個の光受信機に分波する分波器と、各光受信機が受信した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する群遅延差補償装置と、を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【0011】
また、本発明は、光信号を送信する1個の光送信機から、送信後の前記光信号を伝搬しP個(Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバを介して、伝搬後及び分波後の前記光信号を受信するM個(Mは2以上の整数かつP以上の整数)の光受信機と、各光受信機が受信した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する群遅延差補償装置と、を備えることを特徴とする光受信装置である。
【0012】
この構成によれば、光送信機の個数が1個であるときに、光受信機の個数をマルチモード光ファイバの伝搬モード数以上とするため、FIRフィルタにおいて、タップ数を削減したとしても、マルチモード光ファイバ伝送において、群遅延差を補償することができ、長距離伝送を実現することができる。
【0013】
また、本発明は、各光受信機が受信した前記光信号の群遅延差をDとし、前記1個の光送信機が送信した前記光信号の1シンボル時間をTとするとき、前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、D/T個以下の前記遅延素子及びD/T個以下の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【0014】
また、本発明は、各光受信機が受信した前記光信号の群遅延差をDとし、前記1個の光送信機が送信した前記光信号の1シンボル時間をTとするとき、前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、D/T個以下の前記遅延素子及びD/T個以下の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする光受信装置である。
【0015】
この構成によれば、FIRフィルタにおいて、タップ数を削減することができる。
【0016】
また、本発明は、前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、1個の前記遅延素子及び1個の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【0017】
また、本発明は、前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、1個の前記遅延素子及び1個の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする光受信装置である。
【0018】
この構成によれば、FIRフィルタにおいて、タップ数をより削減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、マルチモード光ファイバ伝送における長距離伝送を実現する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】FIRフィルタ装置を利用して、複数のモードの間の群遅延差を補償する、光ファイバ伝送システム及び光受信装置の構成を示す図である。
【図2】FIRフィルタ装置の構成を示す図である。
【図3】タップ係数を更新するための適応等化アルゴリズムを示す図である。
【図4】タップ係数を更新するためのトレーニングシンボルを示す図である。
【図5】FIRフィルタ装置を利用して、光送信機が1個であり光受信機が1個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差0.5nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図6】FIRフィルタ装置を利用して、光送信機が1個であり光受信機が1個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差1nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図7】FIRフィルタ装置を利用して、光送信機が1個、光受信機が1個、光ファイバの伝搬モード数が2個、それらのモードの間の群遅延差が1nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図8】光送信機が1個、光受信機が2個又は3個、光ファイバの伝搬モード数が2個、それらのモードの間の群遅延差が1nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図9】光送信機が1個、光受信機が2個、光ファイバの伝搬モード数が2個、タップ数が1個であるときに、それらのモードの間の群遅延差及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図10】光送信機が1個、光受信機が2個又は3個、光ファイバの伝搬モード数が3個、それらのモードの間の群遅延差が1ns、2nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図11】光送信機が1個、光受信機が3個又は4個、光ファイバの伝搬モード数が4個、それらのモードの間の群遅延差が1ns、2ns、3nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0022】
(FIRフィルタ装置を利用する群遅延差補償)
FIRフィルタ装置を利用して、複数のモードの間の群遅延差を補償する、光ファイバ伝送システム及び光受信装置の構成を図1に示す。光ファイバ伝送システムは、光送信機1、光受信機2−1、2−2、・・・、2−M、光ファイバ3、分波器4及びFIRフィルタ装置5から構成される。光受信装置Rは、光受信機2−1、2−2、・・・、2−M及びFIRフィルタ装置5から構成される。
【0023】
光送信機1は、光信号x(n)を送信する。ここで、光信号x(n)はn番目のシンボルとして送信される光信号である。
【0024】
光受信機2−1、2−2、・・・、2−Mは、それぞれ光信号y1(n)、y2(n)、・・・、yM(n)を受信する。ここで、Mは2以上の整数であり、光信号y1(n)、y2(n)、・・・、yM(n)はn番目のシンボルとして受信される光信号である。
【0025】
光ファイバ3は、光送信機1が送信した光信号を伝搬し、P個の伝搬モードを有する。ここで、Pは2以上の整数かつM以下の整数である。分波器4は、光ファイバ3が伝搬した光信号を光受信機2−1、2−2、・・・、2−Mに分波する。
【0026】
FIRフィルタ装置5は、群遅延差補償装置として、光受信機2−1、2−2、・・・、2−Mがそれぞれ受信した光信号y1(n)、y2(n)、・・・、yM(n)について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償し、光信号u(n)を復元する。ここで、光信号u(n)は、n番目のシンボルとして復元される光信号である。
【0027】
受信信号y1(n)、y2(n)、・・・、yM(n)は、複数のモードの間の群遅延差を包含する可能性がある。復元信号u(n)は、複数のモードの間の群遅延差を補償されていることが望ましく、送信信号x(n)と一致していることが望ましい。
【0028】
FIRフィルタ装置の構成を図2に示す。FIRフィルタ装置5は、FIRフィルタ51−1、51−2、・・・、51−M及び合波器52から構成される。
【0029】
FIRフィルタ51−1、51−2、・・・、51−Mは、それぞれ受信信号y1(n)、y2(n)、・・・、yM(n)を入力し、それぞれ光信号z1(n)、z2(n)、・・・、zM(n)を生成する。合波器52は、光信号z1(n)、z2(n)、・・・、zM(n)を合波し、復元信号u(n)を生成する。
【0030】
FIRフィルタ51−1、51−2、・・・、51−Mは、それぞれ1番目からL番目までのタップから構成される。1番目からL番目までのタップは、それぞれ遅延素子(図2ではτで示す)及び振幅位相調整器(図2ではwで示す)から構成される。遅延素子は、遅延時間を調整し、振幅位相調整器は、振幅及び位相を調整する。図2では、直接形のFIRフィルタを利用しているが、転置形のFIRフィルタを利用してもよい。
【0031】
受信信号yB(n)についてのi番目のタップにおいて、遅延素子での遅延時間をτiとし、振幅位相調整器でのタップ係数をwB(i)とする。遅延時間τi及びタップ係数wB(i)を調整することにより、光ファイバ3中で発生するモード分散、波長分散、偏波モード分散などによる信号劣化を補償することができる。局発光源、90°ハイブリッド、バランスレシーバ、アナログデジタルコンバータを利用することにより、受信信号y1(n)、y2(n)、・・・、yM(n)の電界の振幅及び位相の情報を取得することができる(例えば、非特許文献4参照)。
【0032】
タップ係数を更新するための適応等化アルゴリズムを図3に示す。タップ係数を更新するためのトレーニングシンボルを図4に示す。送信信号xは、前段にトレーニングシンボルx(1)、・・・、x(Ntraining)を有し、後段にデータ部x(Ntraining+1)、・・・、x(Nall)を有する。ここで、Ntraining>Lである必要がある。光受信装置Rは、データ部x(Ntraining+1)、・・・、x(Nall)を未知とするが、トレーニングシンボルx(1)、・・・、x(Ntraining)は既知とするため、以下のようにタップ係数を更新することができる。
【0033】
まず、トレーニングシンボルを受信中であり、n≦Ntrainingであるときについて説明する。FIRフィルタ装置5は、既に設定されたタップ係数を利用することにより、受信信号y(n)を復元信号u(n)に変換する。減算器7は、復元信号u(n)及び既知のトレーニング信号x(n)の差分を生成することにより、誤差信号e(n)を生成する。適応等化アルゴリズム6は、誤差信号e(n)を小さくするように、タップ係数を更新する。この処理を、すべてのトレーニングシンボルについて繰り返す。
【0034】
次に、データ部を受信中であり、n≧Ntraining+1であるときについて説明する。タップ係数の設定は、トレーニングシンボルの受信中に完了している。FIRフィルタ装置5は、既に設定されたタップ係数を利用することにより、受信信号y(n)を復元信号u(n)に変換する。この処理を、すべてのデータ部について繰り返す。
【0035】
なお、適応等化アルゴリズムには、非特許文献2に記載のLeast mean square(LMS)アルゴリズムやRecursive least square(RLS)アルゴリズムを利用することができる。
【0036】
FIRフィルタ装置5を利用して、光送信機1が1個であり光受信機2が1個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差D=0.5nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を図5に示す。FIRフィルタ装置5を利用して、光送信機1が1個であり光受信機2が1個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差D=1nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を図6に示す。
【0037】
図5及び図6において、送受信信号は、10GbpsのBinary phase shift keying(BPSK)変調されたNon return to zero(NRZ)信号の4096bit分である。光ファイバ3の伝搬モード数は2個であり、基本モード及び高次モードがそれぞれ2:1の割合で励振される。Ntrainingは400とし、Lは20とする。τiは10Gbpsのシンボル長T=0.1nsを単位とし、τ1=0、τ2=0.1ns、τ3=0.1×2ns、・・・、τL=0.1×(L−1)nsとする。適応等化アルゴリズムにはRLSを用いる。RLSにおけるステップサイズ及び忘却係数は、それぞれ0.001及び1とする。
【0038】
基本モード及び高次モードの間の群遅延差がD=0.5nsである図5の場合について説明する。図5の左上には、送信信号x(n)のコンスタレーションマップを示す。図5の右上には、受信信号y(n)のコンスタレーションマップを示す。受信信号y(n)は、モード分散に起因して、送信信号x(n)を正しく反映していない。図5の左下には、復元信号u(n)のコンスタレーションマップを示す。復元信号u(n)は、FIRフィルタ装置5を利用することにより、送信信号x(n)を正しく復元している。図5の右下には、タップ番号及びタップ係数の絶対値の間の関係を示す。タップ係数の絶対値は、周期的に大きな値を取っており、遅延時間が群遅延差D=0.5nsの整数倍に相当するタップ番号のタップ係数が、復元に大きく寄与していることが分かる。
【0039】
基本モード及び高次モードの間の群遅延差がD=1nsである図6の場合について説明する。図6の左上には、送信信号x(n)のコンスタレーションマップを示す。図6の右上には、受信信号y(n)のコンスタレーションマップを示す。受信信号y(n)は、モード分散に起因して、送信信号x(n)を正しく反映していない。図6の下段には、復元信号u(n)のコンスタレーションマップを示す。復元信号u(n)は、FIRフィルタ装置5を利用しているとしても、送信信号x(n)を正しく復元していない。復元の精度を向上させるためには、D/Tの数倍程度にLを設定する必要があることが分かる。
【0040】
FIRフィルタ装置5を利用して、光送信機1が1個、光受信機2が1個、光ファイバ3の伝搬モード数が2個、それらのモードの間の群遅延差が1nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を図7に示す。シミュレーション条件は、タップ数以外は、図6及び図7において同様である。
【0041】
EVM値とは、コンスタレーション上での送信信号x(n)と復元信号u(n)との距離の絶対値を、コンスタレーション上での送信信号x(n)の原点からの距離の絶対値で除したものである。つまり、EVM値が小さいならば、精度良く復元できていることになる。ここで、LをD/Tと比較して十分大きくすることにより、精度良く復元できる。しかし、Lを大きくすることにより、適応等化アルゴリズム6における計算量が増大するため、マルチモード光ファイバを用いた長距離伝送の実現が困難となっている。
【0042】
(光受信機数及び伝搬モード数の大小関係)
一般的には、FIRフィルタ及び適応等化を用いた復元では、光受信機2の数Mを増やすと、復元の精度を向上させることができる。本発明では、光受信機2の数Mを伝搬モードの数P以上に増やすと、タップ数を削減しても復元の精度を向上させることができる。
【0043】
光送信機1が1個、光受信機2が2個又は3個、光ファイバ3の伝搬モード数が2個、それらのモードの間の群遅延差が1nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を図8に示す。
【0044】
図8の左側は、光受信機2が2個である場合を示す。基本モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれ1:1の割合で分波され、高次モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれ3:2の割合で分波される。他の条件は、図7と同様である。タップ数がD/T=10以下であっても1であっても、復元の精度が向上している。
【0045】
図8の右側は、光受信機2が3個である場合を示す。基本モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ4:3:3の割合で分波され、高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ5:3:2の割合で分波される。他の条件は、図7と同様である。タップ数がD/T=10以下であっても1であっても、復元の精度が向上している。
【0046】
光送信機1が1個、光受信機2が2個、光ファイバ3の伝搬モード数が2個、タップ数が1個であるときに、それらのモードの間の群遅延差及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を図9に示す。他の条件は、図8の左側と同様である。群遅延差Dの増加に対して復元信号のEVM値は低い値を維持しており、マルチモード光ファイバの伝送距離を拡大した場合においても、精度良く復元できることを示している。
【0047】
光送信機1が1個、光受信機2が2個又は3個、光ファイバ3の伝搬モード数が3個、それらのモードの間の群遅延差が1ns、2nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を図10に示す。ここで、基本モード及び第1高次モードの間の群遅延差がD1=1nsであり、基本モード及び第2高次モードの間の群遅延差がD2=2nsである。そして、基本モード、第1高次モード及び第2高次モードが、それぞれ10:5:4の割合で励振される。
【0048】
図10の左側は、光受信機2が2個である場合を示す。基本モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれ1:1の割合で分波され、第1高次モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれ3:2の割合で分波され、第2高次モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれ4:1の割合で分波される。他の条件は、図9と同様である。光受信機数が伝搬モード数より小さく、タップ数がD1/T=10と同等でなければ、復元の精度が向上しない。
【0049】
図10の右側は、光受信機2が3個である場合を示す。基本モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ4:3:3の割合で分波され、第1高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ5:3:2の割合で分波され、第2高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ6:2:2の割合で分波される。他の条件は、図9と同様である。光受信機数が伝搬モード数と等しいため、タップ数がD1/T=10やD2/T=20以下であっても1であっても、復元の精度が向上している。
【0050】
光送信機1が1個、光受信機2が3個又は4個、光ファイバ3の伝搬モード数が4個、それらのモードの間の群遅延差が1ns、2ns、3nsであるときに、タップ数及び復元精度の間の関係を調べた、シミュレーション結果を図11に示す。ここで、基本モード及び第1高次モードの間の群遅延差がD1=1nsであり、基本モード及び第2高次モードの間の群遅延差がD2=2nsであり、基本モード及び第3高次モードの間の群遅延差がD3=3nsである。そして、基本モード、第1高次モード、第2高次モード及び第3高次モードが、それぞれ10:5:4:3の割合で励振される。
【0051】
図11の左側は、光受信機2が3個である場合を示す。基本モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ4:3:3の割合で分波され、第1高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ5:3:2の割合で分波され、第2高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ6:2:2の割合で分波され、第3高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれ7:2:1の割合で分波される。他の条件は、図9と同様である。光受信機数が伝搬モード数より小さく、タップ数がD1/T=10と同等でなければ、復元の精度が向上しない。
【0052】
図11の右側は、光受信機2が4個である場合を示す。基本モードが光受信機2−1、2−2、2−3、2−4にそれぞれ4:2:2:2の割合で分波され、第1高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3、2−4にそれぞれ5:2:1:1の割合で分波され、第2高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3、2−4にそれぞれ3:2:4:1の割合で分波され、第3高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3、2−4にそれぞれ2:2:3:3の割合で分波される。他の条件は、図9と同様である。光受信機数が伝搬モード数と等しいため、タップ数がD1/T=10やD2/T=20やD3/T=30以下であっても1であっても、復元の精度が向上している。
【0053】
光受信機数が伝搬モード数以上であるときに、タップ数がたとえ1であっても、復元の精度が向上する理由について、以下に説明する。
【0054】
まず、光送信機1が1個、光受信機2が1個、伝搬モード数が2個であるときについて説明する。光受信機2における受信信号Rは、基本モードの光信号E1及び高次モードの光信号E2を含んでおり、受信信号Rは数式1のように表される。
【数1】
E1及びE2についての方程式は1つしか存在しないため、所望の基本モードの光信号E1を求めることは不可能である。よって、タップ数を十分に確保する必要がある。
【0055】
次に、光送信機1が1個、光受信機2が2個、伝搬モード数が2個であるときについて説明する。基本モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれa:bの割合で分波されるとし、高次モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれa’:b’の割合で分波されるとすると、光受信機2−1、2−2における受信信号R1、R2は数式2のようになる。
【数2】
ここで、一般に用いられる分波器4であるマルチモードカプラは、伝搬モード毎に異なる分岐比を与える。そして、E1及びE2についての方程式は2つ存在するため、所望の基本モードの光信号E1を求めることが可能である。よって、タップ数が1個であっても、復元の精度が向上する。なお、マルチモードカプラの分岐比が既知であるならば、数式2の逆行列も既知であるが、マルチモードカプラの分岐比が既知でなくても、適応等化アルゴリズム6を利用して数式2の逆行列を推定することができる。
【0056】
次に、光送信機1が1個、光受信機2が3個、伝搬モード数が3個であるときについて説明する。基本モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれa:b:cの割合で分波されるとし、第1高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれa’:b’:c’の割合で分波されるとし、第2高次モードが光受信機2−1、2−2、2−3にそれぞれa’’:b’’:c’’の割合で分波されるとすると、光受信機2−1、2−2、2−3における受信信号R1、R2、R3は数式3のようになる。
【数3】
この場合も上の場合と同様に、所望の基本モードの光信号E1を求めることが可能である。よって、タップ数が1個であっても、復元の精度が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る光ファイバ伝送システム及び光受信装置は、光ファイバ中で発生する非線形効果やファイバヒューズを低減しつつ、伝送容量を大容量化し伝送距離を長距離化する、光ファイバ伝送において適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
R:光受信装置
1:光送信機
2、2−1、2−2、2−M:光受信機
3:光ファイバ
4:分波器
5:FIRフィルタ装置
6:適応等化アルゴリズム
7:減算器
51、51−1、51−2、51−M:FIRフィルタ
52:合波器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号をP個(Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバに送出する1個の光送信機と、
前記光信号を受信するM個(Mは2以上の整数かつP以上の整数)の光受信機と、
前記光ファイバが伝搬した前記光信号を前記M個の光受信機に分波する分波器と、
各光受信機が受信した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する群遅延差補償装置と、
を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システム。
【請求項2】
光信号を送信する1個の光送信機と、
前記光信号を受信するM個(Mは2以上の整数)の光受信機と、
前記1個の光送信機が送信した前記光信号を伝搬し、P個(Pは2以上の整数かつM以下の整数)の伝搬モードを有する光ファイバと、
前記光ファイバが伝搬した前記光信号を前記M個の光受信機に分波する分波器と、
各光受信機が受信した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する群遅延差補償装置と、
を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システム。
【請求項3】
各光受信機が受信した前記光信号の群遅延差をDとし、前記1個の光送信機が送信した前記光信号の1シンボル時間をTとするとき、
前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、D/T個以下の前記遅延素子及びD/T個以下の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光ファイバ伝送システム。
【請求項4】
前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、1個の前記遅延素子及び1個の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバ伝送システム。
【請求項5】
光信号を送信する1個の光送信機から、送信後の前記光信号を伝搬しP個(Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバを介して、伝搬後及び分波後の前記光信号を受信するM個(Mは2以上の整数かつP以上の整数)の光受信機と、
各光受信機が受信した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する群遅延差補償装置と、
を備えることを特徴とする光受信装置。
【請求項6】
各光受信機が受信した前記光信号の群遅延差をDとし、前記1個の光送信機が送信した前記光信号の1シンボル時間をTとするとき、
前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、D/T個以下の前記遅延素子及びD/T個以下の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする、請求項5に記載の光受信装置。
【請求項7】
前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、1個の前記遅延素子及び1個の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の光受信装置。
【請求項1】
光信号をP個(Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバに送出する1個の光送信機と、
前記光信号を受信するM個(Mは2以上の整数かつP以上の整数)の光受信機と、
前記光ファイバが伝搬した前記光信号を前記M個の光受信機に分波する分波器と、
各光受信機が受信した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する群遅延差補償装置と、
を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システム。
【請求項2】
光信号を送信する1個の光送信機と、
前記光信号を受信するM個(Mは2以上の整数)の光受信機と、
前記1個の光送信機が送信した前記光信号を伝搬し、P個(Pは2以上の整数かつM以下の整数)の伝搬モードを有する光ファイバと、
前記光ファイバが伝搬した前記光信号を前記M個の光受信機に分波する分波器と、
各光受信機が受信した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する群遅延差補償装置と、
を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システム。
【請求項3】
各光受信機が受信した前記光信号の群遅延差をDとし、前記1個の光送信機が送信した前記光信号の1シンボル時間をTとするとき、
前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、D/T個以下の前記遅延素子及びD/T個以下の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光ファイバ伝送システム。
【請求項4】
前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、1個の前記遅延素子及び1個の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバ伝送システム。
【請求項5】
光信号を送信する1個の光送信機から、送信後の前記光信号を伝搬しP個(Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバを介して、伝搬後及び分波後の前記光信号を受信するM個(Mは2以上の整数かつP以上の整数)の光受信機と、
各光受信機が受信した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する群遅延差補償装置と、
を備えることを特徴とする光受信装置。
【請求項6】
各光受信機が受信した前記光信号の群遅延差をDとし、前記1個の光送信機が送信した前記光信号の1シンボル時間をTとするとき、
前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、D/T個以下の前記遅延素子及びD/T個以下の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする、請求項5に記載の光受信装置。
【請求項7】
前記群遅延差補償装置は、各光受信機が受信した前記光信号について、1個の前記遅延素子及び1個の前記振幅位相調整器を利用して、群遅延差を補償することを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の光受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−227764(P2012−227764A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94052(P2011−94052)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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